説明

回転可能なマグネトロンの大面積アセンブリを有するコーター

【課題】材料損失を少なく抑えた大面積の基板への均等コーティング可能なコーター及び陰極アセンブリを提供する。
【解決手段】大面積の基板を陰極スパッタによってコーティングするためのコーターであって、コーティングチャンバを有し、その内部に、スパッタされる材料がコーティングプロセス中に回転するとともに湾曲面を有するターゲット4上に配置されている陰極アセンブリ2を備える。スパッタされる材料は、回転可能な湾曲したターゲットを持つ陰極アセンブリを少なくとも3つ以上、凝集コーティング領域のための単一のコーティングチャンバ内に並行して配置する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載されたコーターに関する。
【背景技術】
【0002】
陰極スパッタによって基板へコーティングを施すコーターは、以前から周知であり、多岐にわたるコーティング目的のために使用されている。そのようなコーターの設計および技術は、コーティングが満たすべき特定の要件に従って大幅に変化する。例えば、多くのさまざまな種類の陰極があり、例えば平面陰極、マグネトロン陰極、回転可能なマグネトロン等がある。平面陰極では、スパッタされるべきコーティング材料が平坦な平面ターゲットの形状に構成される一方で、いわゆる回転可能な陰極のターゲット表面は、湾曲され、特に、円筒状の管の形態に構成される。コーティングプロセス中に円筒状の管の連続的な回転のため、ターゲット材料は均等にスパッタされ、従って局所に集中したスパッタとそれに伴う溝の形成が防止され、最終的にはコーティング品質の低下の可能性を防止する。
【0003】
いわゆるマグネトロン陰極つまりマグネトロンの使用により、スパッタターゲットの背後の磁石アセンブリが、ターゲットの前面のプラズマ形成を容易にし、同時にプラズマを安定化し、プラズマを均等にし、同様に、堆積の改善を実現することも可能である。特に、いわゆる回転可能なマグネトロンの使用も公知であり、回転可能なマグネトロンでは磁石または磁石アセンブリが円筒管状ターゲット内に同心円で備えられる。この種類の回転可能なマグネトロンは、例えば、建築用ガラスのコーティングのために連続稼動のインラインコーターに使用される。最新の実施は、通常、そのようなマグネトロンの2つをコーティングチャンバ内で並べて配置している。この配置の欠点は、ほとんど一定のコーティング厚を持つ均等なコーティングが得られる利用可能なコーティング領域が小さいことである。これは、大きい面すなわち大面積の基板をコーティングする場合、基板を移動させることを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、大面積の基板が均等にコーティングでき、特に、コーティングプロセス中の過剰散布の形態による材料損失を低く維持すべきコーター、特に、陰極アセンブリを提供することである。加えて、コーターは設定および操作が簡単である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を有するコーターによって達成される。有用な実施の形態が従属請求項の主題を形成する。
【0006】
本発明は、大きいコーティング領域を均一な厚さの均等なコーティングで、コーティング材料の大きな損失を考慮することなく提供できるという課題を初めて解決する。換言すれば、本発明は、大面積の基板を静止してすなわち基板を移動させることなく、コーティングすることを可能にする。驚くべきことに、回転可能な湾曲したターゲット(特に円筒管の形態のターゲット)を有する陰極アセンブリを使用すれば、複数の陰極、特に少なくとも3つ好ましくは4、5、6つまたはそれより多くの陰極が、互いの横に位置決めでき、従って、湾曲したターゲット表面での特有のスパッタによって均等なコーティングを施すことができる。結果として、特に均等で均一なコーティング厚さを、コーティング材料の過剰な損失を我慢する必要なく得ることができるため、大きなコーティング領域を生成することが可能である。この利点は、大部分が湾曲したターゲット表面であることによる。好ましい実施の形態によれば、良好な効果が更に強調または強化されるように、陰極自体を構成するとともに多くの陰極を互いに集めることによって、堆積された大面積のコーティングの均等性をより一層改善しつつ、材料損失を低く維持することができる。
【0007】
ここで、陰極構成に関しては、ターゲット表面の前面にプラズマを形成するとともにこのプラズマを安定化するために、ターゲットの背後に(円筒形ターゲットの場合では円筒管のコア内部に)磁界アレイを呈するマグネトロン陰極を使用することが有利であると判明した。
【0008】
磁石アセンブリは、好ましくは、陰極の長手軸を中心として、すなわち、円筒管状ターゲットの場合では円筒の長手軸を中心として、回転可能または旋回可能であり、磁石または磁石アセンブリが基板に面するように調節または設定される。このように磁石または磁石アセンブリを回転または旋回することによって、ターゲット表面上のスパッタ領域は、基板への向きを変更でき、正しい設定により、この配置は、基板上への均等なコーティング堆積すなわち均等な厚さのコーティングを可能にする。
【0009】
特に、好ましい実施の形態によれば、コーターは、コーティングプロセス中に、磁石または磁石アセンブリが所定の位置を中心として連続的に揺動し、すなわち、往復運動するように構成されてもよい。それは同様に、均等なコーティングの堆積という結果を生じる。
【0010】
加えて、磁石または磁石アセンブリは、磁石アセンブリ内でも旋回可能または変位可能であってもよく、従って、磁界領域を変化させ、コーティングの堆積に良好に影響を及ぼすことを可能にする。円筒管状ターゲットの場合、磁石アセンブリは、例えば、円筒管セグメントにおいて、陰極の長手軸に沿って基板に向けられた25度のセグメント内に位置決めされてもよい。磁界領域を増大するために、セグメントは、例えば、外側磁石を陰極の長手軸を中心として外向きに変位または旋回することによって拡張されてもよい。よって、磁石は、例えば、35度のセグメント内に集められてもよい。
【0011】
磁石または磁石アセンブリの位置を中心とした揺動つまり振動(揺れ)の場合、磁石または磁石アセンブリが運動する速度は、異なる方法で追加して規定つまり設定されてもよい。例えば、ゼロ位置を中心とした磁石または磁石アセンブリの往復運動中に、絶対速度が位置に応じて異なってもよい。例えば、反転点で低速度が選択され、その間で高速度が選択されてもよい。
【0012】
有用な実施形態によると、円筒管状ターゲットつまり陰極では、コーティング領域に面しない陰極の側面において、ターゲットの端面の近傍に追加の磁石アセンブリまたは磁石を備えることが有利である。それによって、プラズマがそのターゲット表面の前方に形成される。この対策はターゲット上への再堆積を防止する。
【0013】
堆積プロセスに良好な影響を及ぼすために好適な磁石および磁石アセンブリを持つ回転可能な湾曲したターゲットを有する陰極アセンブリを備えることに加えて、コーティングチャンバ内で並んで備えられる陰極アセンブリを位置決めして、コーティング領域すなわち基板から異なる距離に単一の大面積の凝集コーティング領域を確保することによって、特にコーティング領域の周りに湾曲する面上に陰極アセンブリを位置決めすることによって、大面積のコーティング領域上への均一な厚さのコーティングの均等な堆積は、さらに改善および強調される。
【0014】
これに関連して、この湾曲面を円筒面として構成し、断面から見て、陰極が、実質的に円形経路上に、好ましくは互いから等距離に、互いに平行な長手軸を有して配置されることが良案であると判明した。
【0015】
別の有用な実施形態では、陰極の並びの端にある2つの陰極が内向き且つ基板に向けて変位される方法、および/または、その2つの陰極を隣接する陰極に接近させる方法で、陰極アセンブリは位置決めされてもよい。これは、特にコーティング領域の端領域で、コーティングの均等な堆積に良好な影響を持つ。
【0016】
陰極が位置決めされる円形経路すなわち円筒の横側面の半径は、陰極と基板つまりコーティング領域との間の距離に比較して非常に大きく選択されるのが好ましい。よって、陰極が位置決めされる面は、僅かに湾曲されるのが好ましい。
【0017】
円形経路つまり円筒の横側面上に位置決めされた陰極では、マグネトロン陰極の磁石または磁石アセンブリが半径方向にコーティング領域に向けられると特に有利である。換言すれば、好ましくは全ての陰極の磁石セットを通る中央垂線が、陰極が位置決めされる円形つまり円筒の中心に向けられると、特に有利である。しかし、ここでもまた、この位置を中心とした磁石または磁石アセンブリの旋回または揺動が考えられる。
【0018】
このコーターまたは陰極アセンブリもしくは陰極構成が、特に、大面積の領域の静止した、すなわち、基板を移動させる必要のないコーティングを許容するとはいえ、勿論、基板を移送装置によって移動することも可能である。この場合においても、また、大きいコーティング領域の利点が活用できる。
【0019】
コーティング領域自体は、一般的に平面であるけれども、それは湾曲されてもよい。後者の場合、単に、陰極アセンブリの位置を適切に調節し、コーティング領域の位置と陰極の配置との間の関係が維持されるようにすることが必要である。
【0020】
円筒管ターゲットを有する回転可能なマグネトロンは、好ましくは一方の終端、終端面で、特に可動キャリッジに支持される。可動キャリッジは、マグネトロンのコーティングチャンバへの挿入およびマグネトロンのコーティングチャンバからの除去を容易にする。
【0021】
本発明の更なる利点、特性および特徴は、好ましい実施の形態の以下の説明から明らかになる。図は単なる概略である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コーティングチャンバ内の陰極および基板の配置構成を示す断面図である。
【図2】基板の長さの関数としてプロットした規格化コーティング厚を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、単に概略の断面図において、基板、すなわち、コーティング領域1と、複数の陰極2とを示す。
【0024】
陰極2は、いわゆる回転可能なマグネトロン陰極であり、円筒形ターゲット4が陰極の長手方向軸を中心として回転可能である。磁石アセンブリの磁石3が、ターゲット表面の直近に形成するプラズマ5を生成および安定化する。コーティングプロセス中のターゲット4の連続的な一貫した回転により、結果としてコーティング材料がターゲットの全表面にわたり均等に除去、すなわち、スパッタされる。
【0025】
コーティング領域1において基板の最適なコーティングを実現するために、磁石アセンブリは、基板に向けて面するように位置決めされ、角度範囲6で示すように、陰極の長手方向軸を中心として所定の角度範囲内で旋回可能であり、従って、ターゲット表面のスパッタ領域が基板に向けて最適に整列されることを確実にする。
【0026】
磁石アセンブリ3を基板に面する固定位置に固定させる代わりに、基板上のコーティング厚の均等性を改善するために、磁石アセンブリ3をコーティングプロセス中に往復運動させることも可能である。
【0027】
特にマグネトロン陰極の最遠部分における再堆積、すなわち、円筒管状ターゲット4の端面近傍の横側面上への再堆積を防止するために、第2の追加磁石アセンブリ7を磁石アセンブリ3の反対側に備えていてもよい。それにより、円筒形マグネトロン陰極の最遠部分でのプラズマの生成によって、再堆積が防止される。
【0028】
回転可能なマグネトロンは、個々に、その終端領域を介して、コーティングチャンバの端部上に支持されてもよい。陰極の交換を容易にするために、回転可能なマグネトロンは、コーティングチャンバから引出すことのできるキャリッジ上に搭載されるのが好ましい。回転可能なマグネトロンは、前記ターゲット管に同心円で係合する支持エレメントによって、一方の終端でターゲット管の端面領域において、1つのチャンバ壁上に支持される。この種類の片持ちマグネトロンは、対向するチャンバ壁上に追加して支持される必要がないので有利であるが、この選択も可能である。
【0029】
図1から同様に明白であるように、陰極2は、単一平面内に配置されるのでなく、コーティング領域1、すなわち、基板から異なる距離の間隔が空けられている。図1に示す実施の形態において、回転可能なマグネトロン陰極2は、特に、回転可能なマグネトロン陰極と基板との間の距離よりもずっと大きな半径rを持つ円形経路上に配置されている。これを矢印およびrで示す。結果としての空間的配置は、図面の紙面に対して直角に延びる円筒管状ターゲット4すなわち回転可能なマグネトロン陰極が、半径rを持つ円筒の横側面上に配置され、それに対して基板すなわちコーティング領域1は平坦且つ平面である。この空間的配置の効果は、大面積の基板、例えば、1500×1800mm寸法の基板が、基板を移動する必要なく(静止コーティング)均等にコーティングできることである。連続稼動のインラインコーターの場合のように、基板を移動させる場合でも、これは、大きいコーティング領域に均等な厚さのコーティングがなされることを意味している。
【0030】
コーティング領域1に対する陰極の空間的配置はまた、高い収集効率も確実にし、結果として、スパッタされるのに必要な材料の量が低減され、陰極アセンブリの数は最小限にされ得る。
【0031】
図2は、1800mmの基板長および9台の回転可能なマグネトロン陰極を持つ図1による陰極アセンブリについての基板長さに対するコーティング厚分布のプロットを示す。図2に示すグラフでは、1に規格化したコーティング厚を基板長さに対してプロットした。図から分るように、最外端から中央まで、規格化コーティング厚は、実質的に0.95から1の範囲内で変化している。
【符号の説明】
【0032】
1…コーティング領域、2…マグネトロン陰極、3…磁石アセンブリ、4…ターゲット、5…プラズマ、6…角度範囲、7…追加磁石アセンブリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大面積の基板を陰極スパッタによってコーティングするためのコーターであって、コーティングチャンバと、前記コーティングチャンバ内に配置された陰極アセンブリ(2)と、
を有しており、前記陰極アセンブリ(2)では、スパッタされる材料が、円筒面を有するターゲット(4)上に配置されており、前記ターゲット(4)の内部には、磁石(3)または磁石アセンブリが配置されており、当該コーターがコーティングプロセス中に前記磁石または磁石アセンブリの周囲において前記ターゲットを連続的に回転させるコーターにおいて、
凝集コーティング領域のための単一のコーティングチャンバ内において、回転可能な円筒のターゲット(4)を持つ4つ以上の陰極アセンブリ(2)が、並んで位置決めされており、前記陰極の並びの端にある2つの陰極が、内向き且つ前記基板に向けて変位される、且つ/又は、隣接する陰極に接近することを特徴とする、コーター。
【請求項2】
前記回転可能な円筒のターゲット(4)を持つ前記陰極アセンブリ(2)が、終端面領域の一方の終端において支持されることを特徴とする、請求項1に記載のコーター。
【請求項3】
前記回転可能な円筒のターゲット(4)を持つ陰極アセンブリ(2)が、陰極の長手軸を中心として回転可能または旋回可能である前記磁石(3)または前記磁石アセンブリを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のコーター。
【請求項4】
前記磁石アセンブリの端領域にある前記磁石(3)が、磁界領域(6)を拡張するために、旋回または変位可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコーター。
【請求項5】
前記陰極アセンブリの前記磁石または磁石アセンブリは、半径方向に前記コーティング領域に向けられ、前記磁石または磁石アセンブリは、この位置を中心として、規定の速度で旋回可能であることを特徴とする、請求項3又は4に記載のコーター。
【請求項6】
追加の磁石または磁石アセンブリが、前記コーティング領域に面しない側面に備えられ、前記追加の磁石または磁石アセンブリが前記コーティングプロセス中にプラズマを生成することによって再堆積を防止することを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載のコーター。
【請求項7】
前記基板が、前記コーティングプロセス中に移送装置によって移動されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコーター。
【請求項8】
前記コーティング領域が平面であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のコーター。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−209470(P2010−209470A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−87024(P2010−87024)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【分割の表示】特願2005−135222(P2005−135222)の分割
【原出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(505051976)アプライド マテリアルズ ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー (17)
【Fターム(参考)】