説明

回転型スイッチ

【課題】動作の要求に応じた設計自由度の高い回転型スイッチを提供する。
【解決手段】回転子70はそのディスク部72に複数の同心円で規定される複数の環状帯のそれぞれにおいて所定の数の所定の角度幅の接触領域を有する上側及び下側接触片7C1,7C2が互いに重ねられ、それぞれディスク部の一方と他方の面に露出するようインサート成型され、上側接触子ホルダ80と下側接触子ホルダ60は、回転子のディスク部の下半分と上半部に被せられ、ディスク部の下側及び上側面に複数の環状帯でそれぞれ弾性的に接触する複数の弾性コンタクトを有しており、回動操作軸10は回転子、下側接触子ホルダ、上側接触子ホルダをそれぞれ挿通し、回転子を回動可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は操作軸が回転により、複数の端子間のスイッチの開閉を行う回転型スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電子機器は多彩な機能を搭載することが求められる場合が多い。その機能の操作の1つの手段として回転型スイッチが使用される。従って、回転型スイッチに対しても、様々な操作に対応してスイッチの数、それぞれのスイッチの開閉(オフ、オン)の相対タイミング(相対角度位置)、複数スイッチの開閉の組み合わせ、操作感覚(クリック感)等の様々な要求がある。
【0003】
図7は特許文献1に示されている従来の回転型スイッチの例である。この従来例では、ほぼ正方形の絶縁ボディ110の中央に円形の収容凹部230が形成され、その床面には、中央に直立した支持軸240と、その支持軸240を囲むリング状のコモン接触片290と、そのコモン接触片290の外側に周方向に配列された複数の固定接触片220が設けられている。それらのコモン接触片290と固定接触片220はそれぞれ絶縁ボディ110の側縁まで延長され、それぞれ外部端子とされている。
【0004】
回動操作ノブ120は操作軸570と、操作軸570と一体形成された環状クリック板440を有し、環状クリック板440の上面には一定の角度間隔に段部490と凹部510が交互に形成されている。この環状クリック板440の下面に回動接触子130が固定され、回動操作ノブ120は絶縁ボディ110の収容凹部230内に、支持軸240に回動自在に支持されて収容される。
【0005】
バネ製の金属板を打ち抜いて形成される円形の回動接触子130は中央に窓を有し、その窓内に支持軸240を間に挟むように二股ホーク状のコモン摺動子790が突出形成されている。これらコモン摺動子790の先端部はコモン接触片290と弾性的に接触する。回動接触子130の周縁部に周方向にスリットを切り込んで形成した2本の弧状接触片の中央部がそれぞれ下方に突出され切替接点680が形成され、これら切替接点680は固定接触片220の配列上を摺動して任意の1つと弾性的に接触する。
【0006】
回動操作ノブ120の環状クリック板440の上にはリング状板バネ140が載せられる。リング状板バネ140には、その直径上の2箇所で外周縁から外側に延長された固定端子830が形成されており、それら固定端子830は中間部で90°下方に曲げられ、絶縁ボディ110の上面の対角角部に形成された係合穴250に挿入固定される。
【0007】
リング状板バネ140は2つの固定端子830を通る直径方向と直交する直径上の2箇所で下方に突出形成された係合突起840を有し、係合突起840が回動操作ノブ120の回動により環状クリック板440の段部490をバネ力に抗して乗り越え、バネ力により凹部510に落ち込むことにより、回動操作ノブ120の回動操作時にクリック感を生じさせる。
【0008】
ほぼ正方形の金属ケース150は中央に形成された軸穴920を通して操作軸570を外に突出させると共に、リング状板バネ140の上から絶縁ボディ110の収容凹部230を塞いで絶縁ボディ110に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-166158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この従来の回転型スイッチでは、外に突出した操作軸570を回転することによりコモン接触片290と選択した1つの固定接触片220との導通がなされ、対応する2つの外部端子間が導通される。コモン接触片290と同時に導通となる固定接触片220は常に1つである。固定接触片220の周方向の数、及び周方向の長さ(角度幅)を変えることにより選択できる固定接触片220の数、同一固定接触片と導通を保つ回動操作ノブ120の回動角度幅、を所望に設定することができるが、図7の例では複数の固定接触片220と同時に導通させることはできない。2つの切替接点680の周方向角度位置をずらせば、複数の固定接触片220と同時に導通可能とできるが、同一床面に配置できる固定接触片220の形状、配置パターンなどの多様性には限界があり、携帯電子機器に要求される複雑な機能操作に十分対応できないこともある。この発明の目的は、多様な機能操作に対応できるよう、複数スイッチの開閉の組み合わせ、開閉の相対角度位置、閉状態の角度幅、などを多様に設計可能な回転型スイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による回転型スイッチは、円板状のディスク部と、その中心に軸穴が形成された回動軸を有し、ディスク部に複数の第1の同心円で規定される複数の第1の環状帯のそれぞれにおいて所定の数で所定の角度幅の接触領域を有する金属の第1接触片と複数の第2の同心円で規定される複数の第2の環状帯のそれぞれにおいて所定の数の所定の角度幅の接触領域を有する金属の第2接触片が互いに重ねられ、それぞれディスク部の一方と他方の面に露出するようインサート成型された回転子と、ディスク部の軸方向ほぼ1半分を収容する第1回転子収容凹部を有し、ディスク部の一方の面に複数の第1の環状帯でそれぞれ弾性的に接触する複数の第1弾性コンタクトを有する第1接触子ホルダと、第1接触子ホルダに取り付けられ、ディスク部の軸方向ほぼ他半分を収容する第2回転子収容凹部を有し、ディスク部の他方の面に複数の第2の環状帯でそれぞれ弾性的に接触する複数の第2弾性コンタクトを有する第2接触子ホルダと、第1ホルダと回転子の回動軸と第2ホルダとを挿通し、回転子を回動可能な回動操作軸とを含むように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、回転子のディスク部の上側面と下側面において別々に半径方向に異なる環状領域においてそれぞれ別々に360°内で接触片領域を決めることができるので、複数のスイッチの開閉の角度範囲、相対タイミングを要求に応じて設計できる自由度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明による回転型スイッチの第1実施形態の分解斜視図。
【図2】Aはクリックバネとそれを取り付ける前のクリックバネ支持板の斜視図、Bは取り付けた後の斜視図。
【図3】Aは回転子の上面図、Bは断面図、Cは下面図。
【図4】Aは上側及び下側接触片の連結パターンを示す図、Bは連結パターンを折り重ねて形成した摺動接触片を示す図。
【図5】Aは上側回転子ホルダの上面図、Bは下側回転子ホルダの下面図。
【図6】この発明による回転型スイッチの第2実施形態の分解斜視図。
【図7】従来の回転型スイッチの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1はこの発明による回転型スイッチの第1実施形態を示す。この実施形態の回転型スイッチは回動操作軸10と、軸受20と、クリック円板30と、クリックバネ40と、クリックバネ支持板50と、下側接触子ホルダ60と、回転子70と、上側接触子ホルダ80と、カバー90と、その他の部品から構成される。
【0015】
回動操作軸10は金属棒を加工して形成され、操作部11と、その先端から同軸に延長され、操作部11より径の細い保持部12と、保持部12の先端より同軸に延長され、保持部12より径の細い駆動部13とを有している。保持部12の先端に隣接して外周面に環状溝12aが形成されている。駆動部13には中心軸線と平行に切り落とされて形成された少なくとも1つの平面13aが形成されている。図の例では2つの互いに平行な平面が形成されている。
【0016】
軸受20には、中心に回動操作軸10の保持部12が回動自在に挿通される軸穴24が形成されている。軸受20は取付け用ネジが外周に形成された円筒部21と、円筒部21の一端に一体に形成された矩形のハウジング部22とを有している。ハウジング部22の上面には一組の対角角部に位置決め穴22aと、もう一組の対角角部に固定穴22bが形成されている。更に、ハウジング部22の上面中央には円筒部21と同軸に円形のクリック円板収容凹部23が形成されており、その底面に軸穴24が開通している。軸受20に挿通された回動操作軸10の保持部12の先端部がクリック円板収容凹部23の底面から突出し、その先端部の環状溝12aにリング12Aを装着して抜け止めとされている。
【0017】
クリック円板30はその中心部に軸部31を有し、その軸部31の外側の上面には図6の従来技術の環状クリック板44と同様に放射状に伸びる凸条32により、周方向に凹凸が配列形成されている。軸部31には軸方向に回転子70の回動軸71が挿入される軸穴33が形成されており、この軸穴33の内周の一箇所から中心に向かって突出し、かつ、軸方向に伸びる係合キー34が形成されている。
【0018】
環状のクリックバネ40はバネ性の金属板を打ち抜いて形成し、環状部の1つの直径上の2箇所にクリック円板30に向けて突出した係合突起41が形成されており、更にその直径と直角なもう1つの直径上の二箇所からその直径の延長線上を互いに外側に延長された2つの固定端子42を有している。固定端子42は中間部で板面に対しほぼ45°にクリック円板30と反対側に曲げられている。このクリックバネ40は図6の従来技術におけるものとほとんど同じであるが、従来では固定端子は90°曲げていたのに対し、この実施形態では45°曲げられており、それにより、後述のクリックバネ支持板50の係止溝55に対する係合を浅くでき、従って、クリックバネ支持板50の厚さを薄くできる。
【0019】
クリックバネ40はクリックバネ支持板50の下面に取り付けられる。図2A,2Bはクリックバネ40の取り付け前と後の斜視図を示している。ただし、ここでは図1におけるクリックバネ40とクリックバネ支持板50の組を、中心線5Xを中心に180°回転して示している。クリックバネ支持板50はハウジング部22と同じ矩形であり、その下面にリング状のクリックバネ40を受ける環状凹部52が形成され、中央に軸穴51が形成されている。軸穴51の径は後述の回転子70の回動軸71が回動自在に挿通できる径とされている。クリックバネ支持板50の一辺に隣接して2つの位置決め穴53aが形成され、一組の対角角部にはそれぞれ固定穴53bが形成され、もう一組の対角角部の下面にはそれぞれ位置決め突起54が形成されている。
【0020】
クリックバネ40の2つの固定端子42は支持板50の固定穴53bから中心方向に延びて形成された係止溝55に挿入係止される。その状態でクリックバネ支持板50はその軸穴51に駆動部13を挿通させ、クリック円板30を収容したクリック板収容凹部23を上から塞いでハウジング部22の上面に取り付けられる。このとき、クリックバネ支持板50の固定用突起54はハウジング部22の上面の位置決め穴22aに圧入固定される。
【0021】
図3Aは回転子70の上面図、図3Bは図3Aにおける3B−3B線に沿った断面図、図3Cは図3Aにおける3B−3B線を中心に180°回転した下面図を示す。回転子70は回動軸71と,回動軸71の長さ方向中間に位置し、回動軸71と同軸のディスク部72と、ディスク部72に保持された摺動接触片7Cとが一体にインサート成型により形成されている。回動軸71にはクリック円板30の軸穴33と同じ断面形状の軸穴73が形成されている。更に、回動軸71の下端の一円弧部が下端から軸方向に予め決めた長さだけ切除された切欠き部74が形成されている。この切欠き部74は、回動軸71が軸穴51を通してクリック円板30の軸穴33内の係合キー34と嵌合し、これにより回動軸71が、切欠き部74の軸方向長さだけ軸穴33aに挿入される。
【0022】
摺動接触片7Cは上側接触片7C1と下側接触片7C2から成り、図4Aに示すように1枚の金属板を打ち抜いて得られる互いに連結された上側、下側接触片7C1,7C2のパターンを図4Bのように連結部7Ccで折り曲げ、下側接触片7C2を上側接触片7C1の下側に重ね合わせることにより形成される。
【0023】
この実施形態では、上側、下側接触片7C1,7C2は図4Bに破線で示す共通の円C1に内接するパターンに形成され、その円C1と同心で、径が順次小さくなる円C2,C3,C4によりそれぞれ挟まれた幅を有する互いに隣接した環状帯B1,B2,B3を規定し、これら環状帯B1,B2,B3内でそれぞれ周方向に所望の長さ(角度範囲)の所望の数の円弧領域をそれぞれ接触片領域とする接触片のパターンが予め決められている。
【0024】
図3Aの上側接触片7C1では、環状帯B1は、予め決めた角度範囲の1つの接触片領域C1aと、残りの角度範囲の空領域G1aにより埋められている。環状帯B2は、それぞれ予め決めた角度範囲の2つの接触片領域C1b1, C1b2と、それら2つの接触片領域の隣接間の空領域G1b1, G1b2とにより埋められている。環状帯B3は、1つ(360°)の空領域G1cにより埋められている。接触片領域C1a, C1b1, C1b2は接触片7C1の金属表面が露出している領域であり、空領域G1a, G1b1, G1b2, G1cは接触片領域の表面と同一面内にあるディスク部72の絶縁体表面である。
【0025】
一方、図3Cに示す下側接触片7C2では、環状帯B1は、それぞれ予め決めた角度範囲の4つの接触片領域C2a1, C2a2, C2a3, C2a4と、それら4つの接触片領域の隣接間の空領域G2a1, G2a2, G2a3, G2a4により埋められている。環状帯B2は、それぞれ予め決めた角度範囲の2つの接触片領域C2b1, C2b2と、それら2つの接触片領域の隣接間の空領域G2b1, G2b2とにより埋められている。環状帯B3は、1つ(360°)の接触片領域C2cにより埋められている。接触片領域C2a1, C2a2, C2a3, C2a4, C2b1, C2b2, C2cは接触片の金属表面が露出している領域であり、空領域G2a1, G2a2, G2a3, G2a4, G2b1, G2b2は接触片領域の表面と同一面内にあるディスク部72の絶縁体表面である。
【0026】
この実施形態においては、上側接触子ホルダ80と下側接触子ホルダ60は全く同じ構造であり、同一の部品として形成した接触子ホルダを上下の向きを変えて上側用、下側用として使用することができる。同様に、カバー90とクリックバネ支持板50は全く同じ構造である。このように同一構造とすることによりスイッチの製造コストを下げることができる。
【0027】
図5Aは上側接触子ホルダ80の上面と、その下に見える回転子70の上面の一部を示している。ハウジング部22と同じほぼ矩形の上側接触子ホルダ80の下面には円形の回転子収容凹部82が形成され、その回転子収容凹部82の天井にはほぼ矩形の窓81が形成されている。上側接触子ホルダ80の一側辺に隣接する回転子収容凹部82の側壁部には、その下面から下側接触子ホルダ60の側に突出する係合凸部85と、その係合凸部85と隣接して同じ幅で側壁部が切り取られた係合凹部86が形成されている。上側接触子ホルダ80の一組の対角角部には位置決め穴84aが形成され、もう一組の対角角部には固定穴84bが形成されている。更に、端子8T1,8T2,8T3が導出されている一側辺に隣接して2つの位置決め突起83が形成されている。
【0028】
上側接触子ホルダ80は、3つの弾性コンタクト8C1, 8C2, 8C3とそれらから一体に延長され、上側接触子ホルダ80の一側面から外に突出された端子8T1, 8T2, 8T3と共にインサート成型により形成される。3つの弾性コンタクト8C1, 8C2, 8C3は窓81の縁から内側に延び、それらの先端はそれぞれ、回転子70の摺動接触片7Cに規定した環状帯B1,B2,B3の上に位置している。この例では各弾性コンタクト8C1, 8C2, 8C3はそれぞれ2つの分岐腕を有し、各環状帯において2点接触させることにより接触の安定性(信頼性)と寿命を高めている。
【0029】
図5Bは下側接触子ホルダ60の下面と、その上に見える回転子70の下面の一部を示している。前述のように、下側接触子ホルダ60の構造は上側接触子ホルダ80とまったく同じである。下側接触子ホルダ60の上面には円形の回転子収容凹部62が形成され、その回転子収容凹部62の床にはほぼ矩形の窓61が形成されている。下側接触子ホルダ60の一側辺に隣接する回転子収容凹部62の側壁部には、その下面から上側接触子ホルダ80の側に突出する係合凸部65と、その係合凸部65と隣接して同じ幅で側壁部が切り取られた係合凹部66が形成されている。下側接触子ホルダ60の一組の対角角部には位置決め穴64aが形成され、もう一組の対角角部には固定穴64bが形成されている。更に、端子6T1,6T2,6T3が導出されている一側辺に隣接して2つの位置決め突起63が形成されている。
【0030】
下側接触子ホルダ60は3つの弾性コンタクト6C1, 6C2, 6C3とそれから一体に延長され、下側接触子ホルダ60の一側面から外に突出された端子6T1, 6T2, 6T3と共にインサート成型により形成される。3つの弾性コンタクト6C1, 6C2, 6C3は窓61の縁から内側に延び、それらの先端はそれぞれ、回転子70の摺動接触片7Cに規定した環状帯B1,B2,B3の上に位置している。各弾性コンタクト6C1, 6C2, 6C3はそれぞれ2つの分岐腕を有し、各環状帯において2点接触する。
【0031】
下側接触子ホルダ60の位置決め突起63がクリックバネ支持板50の位置決め穴53aに嵌合され、クリックバネ支持板50の上に下側接触子ホルダ60が位置決め固定される。その上から、下側接触子ホルダ60の回転子収容凹部62内に回転子70のディスク部72のほぼ下半分を配置するように、回転子70の軸穴73に回動操作軸10の駆動部13を挿通させつつ、回動軸71の下端部をクリックバネ支持板50の軸穴51を通してクリック円板30の軸穴33に挿入係合させる。
【0032】
その回転子70のディスク部72のほぼ上半分を上側接触子ホルダ80の回転子収容凹部82に収容するように、回転子70の上から上側接触子ホルダ80を被せ、下側接触子ホルダ60に重ねて固定する。このとき上側接触子ホルダ80の係合凸部85と係合凹部86が下側接触子ホルダ60の係合凹部66と係合凸部65にそれぞれ嵌合し、互いに位置決めされる。更に、カバー90の軸穴91に回転子70の回動軸71の上端部を挿入させて上側接触子ホルダ80の上からカバー90を重ねて位置決め突起94を位置決め穴84aに嵌合し、位置決め穴93aに位置決め突起83を嵌合する。これにより下側接触子ホルダ60の弾性コンタクト6C1, 6C2, 6C3は回転子70のディスク部72の下面と弾性的に接触維持され、上側接触子ホルダ80の弾性コンタクト8C1, 8C2, 8C3は回転子70のディスク部72の上面と弾性的に接触維持される。
【0033】
このようにして部品を合体した状態で、カバー90の固定穴93b、上側接触子ホルダ80の固定穴84b、下側接触しホルダ60の固定穴64b、クリックバネ支持板50の固定穴53b、軸受20の固定穴22bに2本の固定ピン8を挿通してピン8の先端をリベットでつぶし、互いに一体に固定する。
【0034】
このようにして回転型スイッチを組み立てることにより、駆動部13は、クリック円板30、クリックバネ支持板50、を挿通した回転子70の回動軸71の軸穴73に挿通され、カバー90の軸穴91内で支持される。回転子70の軸穴73の軸心と直角な断面は駆動部13の断面と同じように円の弧を直線で切り取った形状をしており、従って、回動操作軸10の回動により回転子70が回動されると共にクリック円板30も回動される。その結果、クリックバネ支持板50に固定されているクリックバネ40の突起41が回動するクリック円板30の放射状凹凸と係合して回動操作軸10の回動操作時にクリック感を生じさせ、また、回転子70の上側及び下側面の接触片7C1,7C2と、上側及び下側接触子ホルダの弾性コンタクト8C1, 8C2, 8C3及び6C1, 6C2, 6C3との間で摺動接触、乖離を生じさせることができる。
【0035】
以上の説明から理解されるように、従来では1つの固定接触片の周方向長さ(角度幅)を360°内で決めると、他の固定接触片の周方向長さは残りの角度内で決めなければならないので、設計の自由度が狭い。それに対し、この発明では回転子70のディスク部の上側面と下側面において別々に半径方向に異なる環状領域においてそれぞれ別々に360°内で接触片領域を決めることができるので、設計自由度が高い利点がある。つまり、複数のスイッチの開閉の角度範囲、相対タイミングを要求に応じて設計できる自由度が高い。
【0036】
上述の実施形態では、回転子70の上側及び下側面の接触片7C1,7C2に対し共通に環状帯B1,B2,B3を規定する場合を示したが、環状帯の数、及び幅を上側及び下側に対し別々に規定し、上側接触子ホルダ80及び下側接触子ホルダ60の弾性コンタクトの数、及び配置をそれぞれ側の環状帯に合わせて決めてもよいことは当然である。
[第2実施形態]
図6はこの発明による回転型スイッチの第2実施形態を示す。前述の第1実施形態では、下側接触子ホルダ60を弾性コンタクト6C1,6C2,6C3と共にインサート成型により一体形成してから窓61内で弾性コンタクト6C1,6C2,6C3を所望の角度に折り曲げるため、下側接触子ホルダ60とクリックバネ支持板50とは別体にしたが、弾性コンタクト6C1,6C2,6C3を予め所定の角度に曲げた上体で下側接触子ホルダ60をインサート成型できる場合は、図6中に示すように下側接触子ホルダ60とクリックバネ支持板50を互いに一体とした下側接触子ホルダ(第1ホルダ)60’として形成してもよい。同様に、第1実施形態における上側接触子ホルダ80とカバー90も図6に示すように互いに一体とした上側ホルダ(第2ホルダ)80’として形成してもよい。その他の構成は第1実施形態と同様なので説明を省略する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状のディスク部と、その中心に軸穴が形成された回動軸を有し、上記ディスク部に複数の第1の同心円で規定される複数の第1の環状帯のそれぞれにおいて所定の数の所定の角度幅の接触領域を有する金属の第1接触片と複数の第2の同心円で規定される複数の第2の環状帯のそれぞれにおいて所定の数の所定の角度幅の接触領域を有する金属の第2接触片が互いに重ねられ、それぞれ上記ディスク部の一方と他方の面に露出するようインサート成型された回転子と、
上記ディスク部の軸方向ほぼ1半分を収容する第1回転子収容凹部を有し、上記ディスク部の一方の面に上記複数の第1の環状帯でそれぞれ弾性的に接触する複数の第1弾性コンタクトを有する第1接触子ホルダと、
上記第1接触子ホルダに取り付けられ、上記ディスク部の軸方向ほぼ他半分を収容する第2回転子収容凹部を有し、上記ディスク部の他方の面に上記複数の第2の環状帯でそれぞれ弾性的に接触する複数の第2弾性コンタクトを有する第2接触子ホルダと、
上記第1ホルダと、上記回転子の回動軸と、上記第2ホルダとを挿通し、上記回転子を回動可能な回動操作軸、
とを含むことを特徴とする回転型スイッチ。
【請求項2】
請求項1記載の回転型スイッチにおいて、上記第1及び第2接触片は、型抜きされた1枚の金属板を折り曲げ形成されたものであることを特徴とする回転型スイッチ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の回転型スイッチにおいて、更に、
円形のクリック円板収容凹部が形成されたハウジング部を有する軸受と、
上記クリック円板収容凹部に収容され、中心に軸穴を有し、一面に放射状に延びる凹凸が形成されたクリック円板と、
上記クリック円板の凹凸に弾性的に係合する少なくとも1つの係合突起を有するリング状のクリックバネ、
とを含み、
上記第1接触子ホルダは上記ハウジング部に取り付けられ、上記回動操作軸は更に上記軸受及びクリック円板を挿通し、上記回転子と共に上記クリック円板を回動可能とされていることを特徴とする回転型スイッチ。
【請求項4】
請求項3記載の回転型スイッチにおいて、上記回動軸の一端に切欠きが形成されており、上記クリック円板の軸穴には中心に向かって突出した係合キーが形成されており、上記回動軸の上記一端は上記クリック円板の軸穴に挿入され、上記切欠きと上記係合キーが互いに係合していることを特徴とする回転型スイッチ。
【請求項5】
請求項3記載の回転型スイッチにおいて、上記第1ホルダは上記第1回転子収容凹部と上記第1弾性コンタクトを有する第1接触子ホルダと、上記第1回転子収容凹部を覆う一方の面と、上記クリックバネを支持する他方の面を有し、上記第1回転子収容凹部に連通する軸穴が形成されたクリックバネ支持板とから構成されていることを特徴とする回転型スイッチ。
【請求項6】
請求項3記載の回転型スイッチにおいて、上記第2ホルダは上記第2回転子収容凹部と上記第2弾性コンタクトを有する第2接触子ホルダと、上記第2回転子収容凹部を覆う面を有し、上記第2回転子収容凹部に連通する軸穴が形成されたカバーとから構成されていることを特徴とする回転型スイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−218883(P2010−218883A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64245(P2009−64245)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000220033)東京コスモス電機株式会社 (26)
【Fターム(参考)】