説明

回転子積層鉄心の樹脂封止方法

【課題】従来行っていた樹脂部材の除去工程を不要とし、しかも除去専用の装置も不要にして、作業性よく経済的に製造可能な回転子積層鉄心の樹脂封止方法を提供する。
【解決手段】複数の鉄心片10を積層して形成され中央の軸孔11の周囲に複数の磁石挿入部12を有する鉄心本体13の磁石挿入部12に永久磁石14を挿入した後、これを上型15と下型16で挟んだ状態で、そのいずれか1の金型に設けられた樹脂溜め部17から、磁石挿入部12に樹脂部材18を充填して永久磁石14を固定する回転子積層鉄心20の樹脂封止方法において、鉄心本体13の表面に、樹脂溜め部17と磁石挿入部12とを連通する樹脂注入孔21が形成されたダミー板19を配置し、ダミー板19の樹脂注入孔21を介して樹脂溜め部17から磁石挿入部12に樹脂部材18を注入し硬化させた後、ダミー板19を鉄心本体13から除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸孔の周囲に複数設けられた磁石挿入部に永久磁石を挿入し、これを樹脂部材によって固定した回転子積層鉄心の樹脂封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータに使用する回転子積層鉄心(ロータコアともいう)は、複数の鉄心片を積層し、中央のシャフト孔(軸孔ともいう)の周囲に形成された複数のマグネット孔(磁石挿入部ともいう)に永久磁石を挿入した後、金型に設けられた樹脂溜めポット(樹脂溜め部ともいう)により、マグネット孔に樹脂部材を充填し固定することにより製造している(例えば、特許文献1参照)。この樹脂部材の充填は、例えば、金型の樹脂溜めポットから、この樹脂溜めポットと平面視して異なる位置に設けられた積層鉄心のマグネット孔へ、樹脂溜めポットとマグネット孔とを連通する樹脂流路とゲートを通じて行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−34187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した樹脂部材の充填方法では、回転子積層鉄心の表面の樹脂流路部分とゲート部分に、樹脂部材(ランナーとカルともいう)が残留する。
このため、樹脂部材の充填工程後に、表面に残留した樹脂部材を除去する工程が必要となり、手間と時間を要していた。また、残留する樹脂部材の除去には、除去専用の装置を準備しなければならないため、回転子積層鉄心の製造コストを削減することができず経済的でなかった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、従来行っていた樹脂部材の除去工程を不要とし、しかも除去専用の装置も不要にして、作業性よく経済的に製造可能な回転子積層鉄心の樹脂封止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、複数の鉄心片を積層して形成され中央の軸孔の周囲に複数の磁石挿入部を有する鉄心本体のそれぞれの前記磁石挿入部に永久磁石を挿入した後、該鉄心本体を上型と下型で挟んだ状態で、該上型及び該下型のいずれか1の金型に設けられた樹脂溜め部から、前記磁石挿入部に樹脂部材を充填して前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記鉄心本体の表面に、前記樹脂溜め部と前記磁石挿入部とを連通する樹脂注入孔が形成されたダミー板を配置し、該ダミー板の該樹脂注入孔を介して前記樹脂溜め部から前記磁石挿入部に前記樹脂部材を注入し硬化させた後、前記ダミー板を前記鉄心本体から除去する。
【0007】
本発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板に形成された前記樹脂注入孔は、前記鉄心本体に形成された前記磁石挿入部と平面視して同一形状であることが好ましい。
本発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板に形成された前記樹脂注入孔は、前記鉄心本体に形成された前記磁石挿入部と平面視して重なる領域内で、しかも該磁石挿入部より小さく形成されていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板は、前記鉄心本体の製造工程で該鉄心本体に結合されていることが好ましい。
本発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板は、前記鉄心本体の製造後、前記上型及び前記下型で挟み込まれる前に、前記鉄心本体に配設されていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板は、前記鉄心片と同じ金属材料で構成されることが好ましい。
本発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板は、前記鉄心片と異なる金属材料で構成されることが好ましい。
【0010】
本発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板の片面又は両面には、剥離性を良好にするコーティング材が被覆されていることが好ましい。
本発明に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板の厚みは、前記鉄心片の厚みより厚いことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜9記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、鉄心本体の表面に、樹脂注入孔が形成されたダミー板を配置し、この樹脂注入孔を介して樹脂溜め部から磁石挿入部に樹脂部材を注入し硬化させるので、例えば、カル又はランナーのような不要な樹脂部材を、ダミー板の表面に付着させ残存させることができる。これにより、ダミー板を除去することで、不要な樹脂部材をダミー板と共に鉄心本体から除去できるので、従来行っていた樹脂部材の除去工程を不要とし、しかも除去専用の装置も不要として、作業性よく経済的に回転子積層鉄心を製造できる。
【0012】
特に、請求項2記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、樹脂注入孔が、磁石挿入部と平面視して同一形状であるので、ダミー板と鉄心片とを同じ打抜き金型により一体的に製造することができ、作業性に優れる。
また、磁石挿入部への永久磁石の挿入は、ダミー板が配置された反対側からだけでなく、ダミー板が配置された側からも、樹脂注入孔を介してできることとなり、永久磁石の挿入の自由度が増す。
【0013】
請求項3記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、樹脂注入孔が、磁石挿入部と平面視して重なる領域内で、磁石挿入部より小さく形成されているので、樹脂溜め部の配置可能な領域を広くできる。これにより、ダミー板に対する樹脂溜め部の配置位置の自由度を向上できるので、例えば、樹脂部材の流動性に悪影響を及ぼすことなく、しかも不必要な樹脂部材の残りを造らない好適な樹脂流路のパターン形成ができる。
更に、複数の磁石挿入部に一つの樹脂溜め部から同時に樹脂部材を注入するパターン形成も可能となり、磁石挿入部への樹脂部材の注入を効率的に行うことができる。
【0014】
請求項4記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、ダミー板を鉄心本体の製造工程で鉄心本体に結合させることにより、ダミー板と鉄心片とを同じ打抜き金型で一体的に製造できるため生産性に優れる。また、鉄心本体の搬送時において、鉄心本体からダミー板が外れにくくなり、その取り扱いが容易となる。
請求項5記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、ダミー板を、鉄心本体の製造後、上型と下型とで挟み込まれる前に、鉄心本体に配設することにより、ダミー板と鉄心本体とが接合されず、鉄心本体からのダミー板の剥ぎ取り作業が容易となる。
【0015】
請求項6記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、ダミー板と鉄心片とを同じ金属材料から製造でき、更に同じ打抜き金型により一体的に製造することができるため、生産性に優れる。
請求項7記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、ダミー板を鉄心片と異なる金属材料で構成することで、例えば、ダミー板を高強度の金属材料で製造した場合は、別途、ダミー板表面に残留する樹脂部材を除去することで、ダミー板を繰り返し使用することができ、省資源化を図ることができる。
また、ダミー板を、安価な金属材料又はスクラップを再利用した金属材料で構成することもでき、この場合は、省資源化を図ることができると共に、製造コストの低減も図ることができる。
【0016】
請求項8記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、鉄心本体と接触する側のダミー板の表面に、剥離性を良好にするコーティング材を被覆した場合、鉄心本体からのダミー板の剥ぎ取りが容易となる。
また、樹脂部材が注入される側のダミー板の表面に、剥離性を良好にするコーティング材を被覆した場合には、ダミー板の表面に付着した樹脂部材を容易に除去することができ、ダミー板を繰り返し使用する際に役立つ。
請求項9記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、ダミー板の厚みが鉄心片の厚みよりも厚いので、ダミー板の強度を向上でき、付着した樹脂部材の剥ぎ取り時の作業性が向上するほか、耐用性に優れ、更にダミー板を長期に渡って繰り返し使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る回転子積層鉄心の製造方法によって製造する回転子積層鉄心の部分側断面図、同回転子積層鉄心に載置したダミー板の部分平面図である。
【図2】同回転子積層鉄心に載置した他のダミー板の部分平面図である。
【図3】回転子積層鉄心の使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る回転子積層鉄心の樹脂封止方法は、複数の鉄心片10を積層して形成され中央の軸孔11の周囲に複数の磁石挿入孔(磁石挿入部の一例)12を有する鉄心本体13のそれぞれの磁石挿入孔12に永久磁石14を挿入した後、鉄心本体13を上型15と下型16(上型15及び下型16を総称して金型という)で挟んだ状態で、上型15に設けられた樹脂溜めポット(樹脂溜め部の一例)17から、磁石挿入孔12に樹脂部材18を充填して永久磁石14を固定する際に、ダミー板19を使用して回転子積層鉄心(以下、単に積層鉄心ともいう)20を製造する方法である。以下、詳しく説明する。
【0019】
まず、厚みが、例えば、0.5mm以下程度の電磁鋼板(図示しない)を環状に打抜き、この打ち抜かれた複数の鉄心片10を順次積層して鉄心本体13を形成する。この複数の鉄心片10の積層方法としては、かしめ、溶接、及び接着のいずれか1又は2以上を組み合わせて使用できるが、単に平積みするだけでもよい。
これにより、鉄心本体13の軸孔11の周囲に、上下方向に貫通した磁石挿入孔12が複数形成される。なお、磁石挿入孔の配置位置及び形状は、これに限定されるものではなく、例えば、従来公知の配置位置又は形状でもよい。
このように、鉄心本体13の表面(上型15側に位置し樹脂部材18が注入される側の表面)に、ダミー板19を配置する。このダミー板19は、鉄心本体13の最上部の鉄心片10に、鉄心本体13の製造工程で、例えば、かしめにより結合されているが、鉄心本体13の製造後、上型15と下型16とで挟み込まれる前に、鉄心片10と結合することなく鉄心片10の表面に単に平積みして載置してもよい。
【0020】
ダミー板19は、鉄心片10を打抜く金型(図示しない)を使用して、鉄心片10と同じ金属材料である電磁鋼板から打抜き、鉄心本体13の表面に配置し、かしめ結合している。なお、ダミー板は、鉄心片10を打抜く金型とは異なる金型で打抜き、磁石挿入孔12への樹脂部材18の注入前に、鉄心本体13の表面に載置してもよい。この場合、ダミー板は、鉄心片10と同じ金属材料で構成してもよく、また鉄心片10と異なる金属材料で構成してもよい。
ここで、ダミー板を鉄心片と異なる金属材料、例えば、ステンレス材、鋼材、又はアルミニウム合金で構成する場合、ダミー板の片面、即ち鉄心片10との接触面に、剥離性を良好にするコーティング材(例えば、潤滑油)を被覆する。また、ダミー板の厚みを、鉄心片の厚みより厚く(例えば、鉄心片の1.2倍以上2倍以下程度)することで、その強度を向上させることができる。
【0021】
図1(A)、(B)に示すように、ダミー板19には、鉄心本体13に形成された磁石挿入孔12と平面視して重なる領域内に、樹脂溜めポット17と磁石挿入孔12とを連通して液状の樹脂部材18を注入する樹脂注入孔21が形成されている。
この樹脂注入孔21は、磁石挿入孔12の平断面の面積より小さく、磁石挿入孔12と重なる領域内の半径方向内側に形成されているが、例えば、磁石挿入孔12に挿入する永久磁石14の配置位置、又は樹脂溜めポット17の位置に応じて、半径方向外側又は中央に配置することもできる。なお、樹脂注入孔21の形状は、平面視して長方形となっているが、磁石挿入孔12の形状又は充填する樹脂部材18の流動特性に応じて、例えば、正方形、円形、楕円形、又は多角形等に、適宜選択することが好ましい。
【0022】
また、樹脂注入孔21の大きさは、樹脂部材18の流動性を保ちつつ充填を安定に行うため、磁石挿入孔12と平面視して重なる領域の面積が、できる限り広い程好ましい。
ここで、樹脂注入孔21の大きさは、永久磁石14の断面積より小さく設定されているので、積層鉄心20の製造に際しては、鉄心本体13の磁石挿入孔12に永久磁石14を挿入した後、この鉄心本体13の最上部に、樹脂注入孔21が形成されたダミー板19を配置したり、また、ダミー板19とは反対の端面側(鉄心本体13の下型16に当接する側)から、磁石挿入孔12に永久磁石14を挿入してもよい。
なお、樹脂注入孔を、鉄心本体13に形成される磁石挿入孔12と平面視して同一形状とすることで、この樹脂注入孔を介して磁石挿入孔12に永久磁石14を挿入することもできる。
【0023】
前記したように、上型15と接触するダミー板19には、磁石挿入孔12が形成されないので、上型15とダミー板19との接触面積を、磁石挿入孔12が形成された鉄心本体13を上型15と直接接触させる場合と比較して広くできる。これにより、上型15に当接するダミー板19に、樹脂溜めポット17内の樹脂部材18が接触可能な領域、更には上型15に形成された樹脂溜めポット17と樹脂注入孔21とを連通する樹脂流路22内の樹脂部材18が接触可能な領域が確保される。従って、上型15に設ける樹脂溜めポット17の形成位置の自由度が増す。
なお、樹脂溜めポット17は、上型15に当接するダミー板19に設けられた樹脂注入孔21と平面視して重なる位置に配置してもよい。この場合、上型に樹脂流路を設ける必要はない。
【0024】
そして、ダミー板19が配置された鉄心本体13を傾け、ダミー板19とは反対の端面側から、各磁石挿入孔12内に永久磁石14を挿入する。次に、この鉄心本体13を、樹脂封止装置23の上型15と下型16で挟んだ状態で予熱して、上型15に設けられた樹脂溜めポット17から、各磁石挿入孔12に液状の樹脂部材18を充填して、樹脂部材18を硬化させ磁石挿入孔12内に永久磁石14を固定する。
なお、樹脂部材としては、例えば、従来半導体装置の製造に使用しているエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を使用できる。また、鉄心本体13を、樹脂封止装置23の上型15と下型16に挟む前に、予め予熱装置で予熱するのがよい。
【0025】
図1(A)、(B)に示すように、樹脂封止装置23の上型15には、樹脂部材18の原料(ペレット状)を加熱して液状にする樹脂溜めポット17が、ダミー板19に当接する上型15の端部まで延在した状態で設けられている。
また、樹脂封止装置23には、樹脂溜めポット17内を上下方向に昇降可能なプランジャ24が設けられている。このプランジャ24より、樹脂溜めポット17から押し出された液状の樹脂部材18が、樹脂溜めポット17の下流側端部に連通し、上型15の下部表面とダミー板19の上部表面との間に形成された樹脂流路22を通り、樹脂注入孔21を介して最終的に磁石挿入孔12に充填される。そして、磁石挿入孔12に充填した樹脂部材18を加熱し硬化させることで、磁石挿入孔12内に挿入された永久磁石14を樹脂部材18で固定できる。
【0026】
なお、上型と下型とを有し、下型に樹脂部材の原料(ペレット状)を加熱して液状にする樹脂溜めポットが形成された樹脂封止装置を使用することもできる。
この場合、樹脂注入孔21が形成されたダミー板19は、鉄心本体13の下端面側に配置されるため、下型と当接することになる。これにより、鉄心本体13に形成される磁石挿入孔12は、上方へ向けて開口するため、ダミー板19とは反対の端面側に位置する鉄心片10側から、各磁石挿入孔12に永久磁石14を挿入できる。そして、プランジャにより、樹脂溜めポットから押し出された液状の樹脂部材が、樹脂溜めポットの下流側端部に連通し下型の上部表面とダミー板の下部表面との間に形成された樹脂流路を通り、樹脂注入孔21を介して最終的に各磁石挿入孔12に充填される。
【0027】
図1(A)、(B)に示すように、上型15に設けた樹脂溜めポット17は、1個の樹脂溜めポット17から1個の磁石挿入孔12に、樹脂部材18を充填できるように、周方向に等間隔に複数設けられている。これにより、樹脂溜めポット17から磁石挿入孔12に、樹脂溜めポット17に連通して上型15の底部に設けられた樹脂流路22とダミー板19の樹脂注入孔21を介して、液状の樹脂部材18を供給できる。
なお、積層鉄心の形状によっては、1個の樹脂溜めポット17から複数(例えば、2個又は3個)の磁石挿入孔12に、複数の樹脂流路と樹脂注入孔を介して樹脂部材18を注入することもできる。
ここで、樹脂溜めポット17は、平面視して鉄心本体13の半径方向内側に設けているが、半径方向外側に設けてもよい。
【0028】
このように、ダミー板19の各樹脂注入孔21を介して磁石挿入孔12に樹脂部材18を注入し硬化させた後、ダミー板19を鉄心本体13から除去する。
ダミー板19の除去に際しては、機械を使用して剥がしてもよいが、特別な工程と設備を要することなく、作業者の手作業のみで剥ぎ取ってもよい。この場合、図2に示すように、ダミー板19aの半径方向外側に、1個(複数個でもよい)のつかみ部25を設けたもの使用することで、ダミー板19aの剥ぎ取り作業の作業性を更に向上することもできる。
ダミー板19の除去により、ダミー板19の表面に付着し残存した余剰樹脂26(例えば、ランナーとカル)を、ダミー板19と共に鉄心本体13から除去できる。
【0029】
なお、ダミー板19の片面、即ち上型15との接触面に、剥離性を良好にするコーティング材(例えば、潤滑油)を被覆することが好ましい。これにより、ダミー板19からの余剰樹脂26の剥離を容易にでき、ダミー板19の繰り返し使用が可能になる。ここで、剥離性を良好にするコーティング材は、ダミー板19の両面に被覆してもよい。
以上の方法で製造した積層鉄心20からは、余剰樹脂26のほとんどが除去されるが、ダミー板19の樹脂注入孔21に相当する部分に、余剰樹脂27が残存する。しかし、積層鉄心20は、使用に際しては、図3に示すように、積層鉄心20の厚み方向(鉄心片10の積層方向)両側からエンドプレート28、29で挟み込むため、エンドプレート28に余剰樹脂27を逃がす溝部30を形成することで、余剰樹脂27の残存による問題はない。なお、余剰樹脂27は僅かであるため、エンドプレート28、29で挟み込む前に、予め除去してもよい。
このように、本発明を適用することで、従来行っていた回転子積層鉄心の表面からの樹脂部材の除去工程を不要とし、しかも除去専用の装置も不要にして、作業性よく経済的に製造できる。
【0030】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の回転子積層鉄心の樹脂封止方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、樹脂部材として熱硬化性樹脂を使用したが、熱可塑性樹脂を使用することもできる。
そして、前記実施の形態においては、ダミー板を、鉄心片を打抜く金型を使用して打抜き、鉄心本体の表面に配置した場合について説明したが、ダミー板を上型に対して昇降可能に設け、繰り返し使用することもできる。
【符号の説明】
【0031】
10:鉄心片、11:軸孔、12:磁石挿入孔(磁石挿入部)、13:鉄心本体、14:永久磁石、15:上型、16:下型、17:樹脂溜めポット(樹脂溜め部)、18:樹脂部材、19、19a:ダミー板、20:回転子積層鉄心、21:樹脂注入孔、22:樹脂流路、23:樹脂封止装置、24:プランジャ、25:つかみ部、26、27:余剰樹脂、28、29:エンドプレート、30:溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄心片を積層して形成され中央の軸孔の周囲に複数の磁石挿入部を有する鉄心本体のそれぞれの前記磁石挿入部に永久磁石を挿入した後、該鉄心本体を上型と下型で挟んだ状態で、該上型及び該下型のいずれか1の金型に設けられた樹脂溜め部から、前記磁石挿入部に樹脂部材を充填して前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、
前記鉄心本体の表面に、前記鉄心本体に形成された前記磁石挿入部と平面視して重なる領域に、前記樹脂溜め部と前記磁石挿入部とを連通する樹脂注入孔が形成されて前記磁石挿入部が形成されていないダミー板を配置し、該ダミー板の該樹脂注入孔を介して前記樹脂溜め部から前記磁石挿入部に前記樹脂部材を注入し硬化させた後、前記ダミー板を前記鉄心本体から除去することを特徴とする回転子積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項2】
請求項記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板は、前記鉄心本体の製造工程で該鉄心本体に結合されていることを特徴とする回転子積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項3】
請求項記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板は、前記鉄心本体の製造後、前記上型及び前記下型で挟み込まれる前に、前記鉄心本体に配設されていることを特徴とする回転子積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板は、前記鉄心片と同じ金属材料で構成されることを特徴とする回転子積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項5】
請求項1又は3記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板は、前記鉄心片と異なる金属材料で構成されることを特徴とする回転子積層鉄心の樹脂封止方法。
【請求項6】
請求項記載の回転子積層鉄心の樹脂封止方法において、前記ダミー板の厚みは、前記鉄心片の厚みより厚いことを特徴とする回転子積層鉄心の樹脂封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−158164(P2010−158164A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90561(P2010−90561)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【分割の表示】特願2009−229772(P2009−229772)の分割
【原出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000144038)株式会社三井ハイテック (300)
【Fターム(参考)】