説明

回転対称に溶接された部品

この発明は、回転対称に溶接されて、回転対称な溶接部(16)によって連結された二個の部品(12,14)を有し、溶接部(16)の近傍に主要負荷領域(22)が存在する部品(10)であって、縁部の硬化により、そこが強化されるように、溶接部(16)および、それの周囲(22)だけが強化された部品(10)、および、回転対称に溶接されて、二個の部品(12,14)を有する部品(10)を、前記二個の部品(12,14)間の、回転対称な溶接部(16)を溶接することにより製造する方法であって、前記二個の部品(12,14)の溶接後、焼入れゾーン(16,22)の熱入れにより、溶接部(16)および、それの周囲(22)を直ちに硬化させる方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として、連続的な交番曲げ荷重を受ける、回転対称な溶接部品、とくに、溶接シームによって連結されたボールとシャフトとを含むボールピンに関するものである。そのようなボールピンは、たとえば、ガス圧式ばね緩衝器もしくはステアリングシステムその他の様々な用途に用いられるものであって、かかるシステムが動作中に連続的な交番曲げ圧力を受けることに起因して、高い安定性が必要とされる。この場合、とくに、ボールとシャフトとの遷移域は、極めて高い荷重が負荷されることになる。従って、ボールピンは、それらの荷重に耐えるような寸法としなければならない。
【背景技術】
【0002】
先行技術においては、この種の回転対称な部品は、製造コストが極めて嵩むが単一品として作製し、あるいは、単に溶接して作製することだけが知られている。回転対称な部品としてのボールピンを形成するための、ボールとシャフトとのそのような溶接は、たとえば特許文献1により知られている。後者では、ボールとシャフトとの間に亀裂が頻繁に生じていた。
【0003】
また、先行技術、たとえば特許文献2によれば、対称部品を全体として硬化させ、および/または、エッジ層を硬化させることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第856256号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102004053935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この先行技術を起点として、そのような回転対称な部品において、強度、とくに屈曲疲労強度を大きく高め、それに応じて寿命を向上させることで、該部品をさらに改善するとともに、かかる部品の製造方法を提供することが、この発明の目的とするところである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の課題の解決するための、回転対称な溶接部品および、所要に応じて、それの周囲の、エッジ層の溶接シームを初めて提案するものであり、このことについて、先行技術には、溶接シームのエッジ層の硬化が、引張荷重下で溶接シームを脆弱なものとする、溶接シームのエッジ層の脆化を招くことから常に非生産的であるという先入観があった。
【発明の効果】
【0007】
多くの用途、ここではボールピンにおいて、引張荷重は全く生じないが、部品の寿命は、それ自身の屈曲疲労強度によって制限される。
【0008】
この特許出願の新手法により、専門家の見解は、溶接シームのエッジ層の硬化が、それの結果として生じる脆化を理由として、むしろ不利益であるというものであったが、この発明に従う手段によれば、ボールピンの屈曲疲労強度は、たとえば、約10年、すなわち10倍に増えることが明らかとなった。
【0009】
この発明では、固有の圧縮応力によって強化されるエッジ層を設けることで、エッジ層の硬化により、溶接シームおよび、それの周囲を強化して、エッジファイバーにおける主要負荷領域が強化されることで、一般的な、回転対称な溶接部品におけるこの課題は解決される。
【0010】
この場合においては、とくに、エッジ層の硬化と、その直後の、硬化されたゾーンの焼入れによってもたらされるエッジ層の強化を引き起こすことが好ましい。
【0011】
この発明は、とくに、回転対称な溶接シームによって連結されたボールおよびシャフトからなるボールピンの製造に適している。そのようなボールピンは、通常はエッジ層の硬化が不都合となり得るどのような引張荷重にもさらされないが、その寿命は専ら、屈曲疲労強度によって制限される。また、溶接シームに限定されるエッジ層の硬化を含む、この発明に従う製造方法によれば、ボールの光沢度を保つことが可能である。
【0012】
この発明に従う回転対称な部品は、誘導焼入れ、レーザー焼入れ、または、プラズマイオン焼入れ等によって製造することができる。
【0013】
この発明は、そのような回転対称な溶接部品を製造するに当り、個別の部品を接合した後、溶接シームおよび、それの周囲の、エッジ層の硬化と、その直後の、硬化されたゾーンの焼入れを行う方法をも提供する。
【0014】
この発明は、以下に、ボールピンの形態で、図面に示す例示的な実施の形態を参照しつつ、詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に従うボールピンを側面から示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すところにおいて、図示のボールピン10は、シャフトもしくはピン12および、ボール14を具える。このボールピン10は側面から視たものであり、そしてここでは、とくに関心のある、シャフト12とボール14との遷移域を、断面図で示す。
【0017】
ここに示すこの発明のボールピン10は、溶接ボール14およびシャフト12で形成される。対応する溶接シーム16は、この断面図の縁部に見ることができる。それは、シャフト12の回転軸20の周りに回転対称的に延びる。
【0018】
ボールとシャフトとの溶接部は、溶接シーム16の周囲に、断面図で断続的な陰影を付して示す熱流入ゾーンを形成し、これは、三次元で視た場合に、シャフト12の回転軸20に対して回転対称的に略レンズ形状をなす。断面では、図示のように、対称な楕円形状を有する。
【0019】
この発明では、断面図に無地で示す領域22がとくに硬く、それにより、この発明に従うボールピンは、ここでは、最適硬質領域を有する。
【0020】
この発明では、溶接工程の後の、一連の特別な工程段階において、溶接ゾーン22の主要負荷領域を、エッジファイバー内で硬化させ、それにより、エッジの層化が、溶接シーム16および、それの周囲の強化をもたらす。その結果として、この発明では、極めて厳しい振動応力にさらされる場合であっても、ボールピンの寿命の大幅な増加を実現することができる。
【0021】
この発明で、このような、溶接ゾーン22の主要負荷領域における強化をもたらすための、とくに好ましい工程は、以下のようにして行われる。
【0022】
ボール14をピン12上に溶接する。回転対称な溶接シーム16を形成する。その後は、溶接ゾーン22の硬化をもたらすエッジ層の硬化と、その直後の、硬化されたゾーン22の焼入れを実施する。そのような硬化は、たとえば、誘導焼入れ、レーザー焼入れ、またはプラズマイオン焼入れ等によって実現することができる。
【0023】
このようにして、ノッチ応力やクラックの形成に弱い溶接ゾーン22の強度は、かなり改善される。それ故に、既製部品の寿命は実質的に改善される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転対称な溶接シーム(16)により連結された二個の個別部品(12,14)を有し、前記溶接シーム(16)の近傍に主要負荷領域(22)が存在する、回転対称な溶接部品(10)であって、エッジファイバー内でのエッジ層の硬化により、前記溶接シーム(16)および、それの周囲(22)だけが強化されて、そこでエッジ層が強化されていることを特徴とする部品。
【請求項2】
前記エッジ層の強化が、エッジ層の硬化と、その直後の、硬化されたゾーン(16,22)の焼入れによりもたらされることを特徴とする、請求項1に記載の部品(10)。
【請求項3】
回転対称な溶接シーム(16)により連結されたボール(14)およびシャフト(12)を有するボールピン(10)である、請求項1もしくは2に記載の部品(10)。
【請求項4】
二個の部品(12,14)を有する回転対称な溶接部品(10)を、前記二個の部品(12,14)間の、回転対称な溶接シーム(16)を溶接することにより製造する方法であって、前記二個の部品(12,14)の溶接後、前記溶接シーム(16)および、それの周囲(22)の、エッジ層の硬化と、その直後の、硬化されたゾーン(16,22)の焼入れを行う方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−505409(P2013−505409A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530128(P2012−530128)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国際出願番号】PCT/DE2010/050070
【国際公開番号】WO2011/035780
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(511051649)ルイ グローバル ファスナー アーゲー (4)
【氏名又は名称原語表記】RUIA GLOBAL FASTENERS AG
【Fターム(参考)】