説明

回転式スイッチ

【課題】半田付け等の高温がかかっても回転つまみの回転トルクが減少したり、回転つまみが外れたりすることなく、機械的強度が強く、アース機構を有する回転式スイッチを提供する。
【解決手段】金属板製のアース板20に、スイッチパターン44を形成してなるフレキシブル回路基板40を載置すると共に、アース板20及びフレキシブル回路基板40の周囲を枠部材80でインサート成形してなる基板体10と、アース板20からフレキシブル回路基板40を貫通してスイッチパターン44を露出している表面から突出する軸部21に回動自在に取り付けられ、スイッチパターン44に摺接する摺動子140を取り付けてなる回転つまみ120と、を具備する回転式スイッチ1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式スイッチの中には、合成樹脂製の基台上に、スイッチパターンを形成したフレキシブル回路基板を取り付け、基台からフレキシブル回路基板を貫通してフレキシブル回路基板上に突出する軸部を設け、この軸部を回転つまみに設けた孔に挿入して軸部の先端を熱かしめすることでフレキシブル回路基板上に回動自在に回転つまみを設置した構造のものがある。そして回転つまみを回転すると、回転つまみに取り付けた摺動子が前記スイッチパターン上を摺動することでその電気的出力が変化する。
【0003】
しかしながら回転つまみを合成樹脂製の基台から突出する合成樹脂製の軸部に取り付けると、半田付け等の高温がかかった際に、軸部の回転つまみを取り付けている熱かしめ部分が変形して回転つまみの回転トルクが減少し、最悪の場合、回転つまみが基台から外れる恐れがあった。また基台が合成樹脂製なので、機械的強度が弱く、変形したりする恐れがあった。また前記回転式スイッチのスイッチパターンや摺動子等の電気回路部分に外部から静電気が侵入すると、電子機器の誤動作等の不都合を招く。この不都合を解消するには、電気回路部分に侵入する前にこの静電気を入射してアースするアース部材を設置すればよい。しかしながらアース部材を設置すると回転式スイッチの構造が複雑になるばかりか、組み立て作業が煩雑になる。これらのことから回転式スイッチの製造コストが上昇する。また回転式スイッチの厚みの薄型化や外形の小型化が図れない。
【特許文献1】特開2004−55218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、半田付け等の高温がかかっても回転つまみの回転トルクが減少したり、回転つまみが外れたりすることなく、また機械的強度の強い回転式スイッチを提供することにある。
【0005】
また本発明の目的は、例えアース部材を設置しても、構造が簡単で、組み立て作業も容易で、製造コストが低く抑えられ、また厚みの薄型化や外形の小型化を図ることができる回転式スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載の発明は、金属板製のアース板に、スイッチパターンを形成してなるフレキシブル回路基板を載置すると共に、前記アース板及びフレキシブル回路基板の周囲を枠部材でインサート成形してなる基板体と、前記アース板からフレキシブル回路基板を貫通して前記スイッチパターンを露出している表面から突出する軸部に回動自在に取り付けられ、前記スイッチパターンに摺接する摺動子を取り付けてなる回転つまみと、を具備することを特徴とする回転式スイッチにある。
【0007】
本願請求項2に記載の発明は、前記回転つまみの中央部に設けた軸支孔に、前記アース板に設けた軸部を挿入し、軸部先端をかしめることで、回転つまみを回動自在に取り付けることを特徴とする請求項1に記載の回転式スイッチにある。
【0008】
本願請求項3に記載の発明は、前記回転つまみの外周の一部を、この回転式スイッチを収納する電子機器のケースに設けた開口部から露出する露出部とし、前記ケースの開口部近傍に位置する前記枠部材から前記アース板を露出し、且つアース板を電子機器のアース回路に接続することを特徴とする請求項1に記載の回転式スイッチにある。
【0009】
本願請求項4に記載の発明は、前記ケースの開口部近傍の基板体の外周辺が、ケースに沿うように直線状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の回転式スイッチにある。
【0010】
本願請求項5に記載の発明は、前記回転つまみには、この回転つまみに摺動子を取り付ける際に回転つまみを位置決めする孔又は凹部からなる位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転式スイッチにある。
【0011】
本願請求項6に記載の発明は、前記摺動子は、基部から摺動冊子を突出してなる摺動子片を3組具備し、3組の摺動子片を中央に開口を有する連結部に一体に連結した構造であり、一方前記回転つまみの摺動子を取り付ける摺動子取付面の中央に、内部に前記軸支孔を有する基板体当接部を突出して設け、この基板体当接部を前記摺動子の開口に挿入した状態で、回転つまみの摺動子取付面に載置した摺動子の3つの基部をそれぞれ回転つまみに固定することを特徴とする請求項1に記載の回転式スイッチにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、回転つまみを軸支する軸部をアース板と同じ金属板製としたので、例え半田付け等の高温がかかっても変形することはなく、回転つまみの回転トルクが減少したり、回転つまみが基板体から外れる恐れはない。またアース板が金属板製なので、機械的強度が強く、基板体は変形しない。またアース板とフレキシブル回路基板とを枠部材によって一体化して基板体を形成したので、この基板体に、摺動子を取り付けた回転つまみを取り付けるだけで、回転式スイッチを構成できる。つまりこの回転式スイッチは、アース機構を有しており、且つ構造が簡単で、組み立て作業も容易で、製造コストを低く抑えられる。また基板体の厚みを、アース板の厚みとフレキシブル回路基板の厚みを加えた厚み程度に薄くできる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、回転つまみの軸支孔に、アース板の軸部を挿入して軸部先端をかしめるだけで回転つまみを回動自在に取り付けることができるので、回転式スイッチの組み立て作業が容易に行える。また軸部が半田付け等によって高温になっても、回転つまみの取付強度が弱くなることもなく、回転つまみの回転トルクが減少したり、回転つまみが外れる恐れはない。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、ケースの開口部近傍に位置する回転式スイッチの枠部材からアース板を露出したので、ケースの開口部から侵入する静電気を枠部材から露出するアース板に導入することができる。これによって回転式スイッチの内部の電気回路への静電気の侵入を防止できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、基板体の直線状の外周辺を、ケースの開口部近傍の内面に沿わせて設置することができ、その分回転式スイッチの設置スペースを小さくでき、電子機器の小型化が図れる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、回転つまみに摺動子を取り付ける際に、その取付位置を間違えることがなくなる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、3組ある摺動子片を1枚の金属板で1部品として構成でき、部品点数が増加しない。また3組ある摺動子片の各基部を回転つまみに固定するので、各摺動子片の回転つまみへの固定が確実となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の1実施形態にかかる回転式スイッチ1の分解斜視図、図2は組み立てた回転式スイッチ1の概略側断面図である。図1に示すようにこの回転式スイッチ1は、基板体10の上に回転つまみ120を設置して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0019】
図3は基板体10の製造方法説明図である。同図に示すように基板体10は、アース板20上にフレキシブル回路基板40を載置し、フレキシブル回路基板40の3つの端子接続パターン51と2つのダミーパターン53上にそれぞれ金属端子70の一端(当接部71)を載置した上で、アース板20及びフレキシブル回路基板40の周囲(外周)に図1に示すように樹脂製の枠部材80を成形することによって構成されている。なお枠部材80を成形する際、各端子接続パターン51と各金属端子70は圧接接続される。
【0020】
アース板20は図3に示すように薄い金属板(例えば厚み0.3mm)によって構成されており、その中央に筒状に絞って突出させた軸部21を設け、またその外周辺の左右両側2ヶ所ずつから、それぞれ舌片状(帯状)の一対の係止片23とリードフレーム連結片25と取付部27とを突出して設け、また両取付部27の間の外周辺から1つの舌片状の係止片29と1つのアース突起31とを突出して構成されている。係止片23はその先端側の面をアース板20の面よりも少し軸部21の突出側に平行移動して突出するように屈曲されている。リードフレーム連結片25はアース板20の面と同一面の平面状であり略矩形状に形成されている。取付部27もアース板20の面と同一面の平面状であり略矩形状で長尺に形成されている。係止片29はその先端を軸部21の突出側に略直角に屈曲させている。アース突起31はアース板20の面と同一面の平面状であり略矩形状に形成されている。なお枠部材80を成形する前のアース板20の一対のリードフレーム連結片25と一対の取付部27とアース突起31とは、何れも点線で示すように連結部33によって図示しないフープ材に設けられたリードフレームに連結されている。なおアース板20は下記するように、電子機器のアース回路(具体的には下記する図2に示す回路基板200に設けたアース回路等)に接続されることで、アースされるものである。
【0021】
フレキシブル回路基板40は可撓性を有する略円形の合成樹脂フイルム(この実施形態ではポレエチレンテレフタレートフイルムを用いているが、他の各種熱可塑性又は熱硬化性の合成樹脂フイルムを用いてもよい)41の中央に貫通する挿通孔43を設け、挿通孔43の周囲の上面にスイッチパターン44(一対の同心円状のオンオフパターン45,45とオンオフパターン45,45の外周側に形成される一本の円弧状のコモンパターン47からなる)を設け、さらに合成樹脂フイルム41の一辺に3つの端子接続パターン51を設け、また各端子接続パターン51の間の位置に1つずつダミーパターン53を設け、各端子接続パターン51と前記オンオフパターン45,45及びコモンパターン47とをそれぞれ連結する連結パターン55,55,59を設けて構成されている。2つのダミーパターン53はダミーであり、この回転式スイッチ1を組み込む電子機器の何れの電気回路にも接続されない。上記各パターンは導電ペースト(銀ペーストやカーボンペースト等)の印刷によって形成されているが、その方法以外に金属箔のエッチングなどによって形成してもよい。また中央の端子接続パターン51と両ダミーパターン53の間には樹脂挿通用の貫通する樹脂挿通孔61が設けられている。
【0022】
5本の金属端子70は金属板(この実施形態では鉄板)からなる長尺平板形状であり、その一端近傍に抜け防止用の幅方向に突出する突起を設けた当接部71を設けて構成されている。なお枠部材80を成形する前の各金属端子70の当接部71とは反対側の端部は、点線で示すようにリードフレーム73に連結されている。
【0023】
そして基板体10を製造するには、まずアース板20の上にフレキシブル回路基板40を載置すると同時に、フレキシブル回路基板40の各端子接続パターン51上と各ダミーパターン53上に各金属端子70の当接部71を当接する。このとき軸部21は挿通孔43に挿通される。またフレキシブル回路基板40の端子接続パターン51及びダミーパターン53を設けた部分の下面側にはアース板20は位置しない。
【0024】
そしてこれらアース板20とフレキシブル回路基板40と金属端子70とを図示しない金型によって挟持し、アース板20とフレキシブル回路基板40の周囲の部分に形成される金型のキャビティー(枠部材80と同一形状)内に高温高圧の溶融成形樹脂(例えばポリアミド樹脂等)を圧入して満たし、冷却後に金型を取り外せば、図1に示すようにアース板20とフレキシブル回路基板40の周囲に枠部材80がインサート成形される。そして5本の金属端子70から図3に示すリードフレーム73を切断し、同時に図3に示すリードフレーム連結片25と取付部27とアース突起31とに連結しているリードフレームの連結部33を切断する。このときダミーパターン53に接続している2本の金属端子70と、リードフレーム連結片25及びアース突起31に接続している連結部33とは、枠部材80から突出したところで切断する。そして各端子接続パターン51に接続している3本の金属端子70と、2本の取付部27とを下方向に向けてほぼ直角に折り曲げれば、図1に示す基板体10が完成する。
【0025】
このとき枠部材80の下面は図1,図2に示すように、アース板20の下面と同一面となっており(即ちアース板20の下面は露出しており)、またフレキシブル回路基板40の端子接続パターン51及びダミーパターン53を形成している部分の下面にはアース板20がなく、その上下を枠部材80が挟持し、これによって端子接続パターン51と金属端子70の当接部71間が確実に電気的に接続されている。また枠部材80の上面(フレキシブル回路基板40のパターン形成面側)には、フレキシブル回路基板40のスイッチパターン44が露出しており、その周囲を囲むフレキシブル回路基板40の表面上には枠部材80が設けられている。枠部材80の一辺からは端子接続パターン51に接続した3本の金属端子70が突出し下方向に折り曲げられ、また金属端子70を突出しない枠部材80の対向する左右両側壁からは一対の取付部27(図1では一方のみ示す)が突出し下方向に折り曲げられている。アース板20の係止片23と係止片29は、何れも枠部材80内に埋設され、アース板20と枠部材80間を強固に固定している。アース板20のアース突起31は図2に示すように、その先端が枠部材80の外周側面に露出している。また基板体10の外周辺(即ち枠部材80の外周辺)の内の金属端子70を突出している外周辺の反対側の外周辺80aは直線状に形成されている。
【0026】
なおこの実施形態において、フレキシブル回路基板40に端子接続パターン51の他にダミーパターン53を設けて金属端子70を当接して枠部材80で固定した後に、この金属端子70を切断したのは以下の理由による。即ちこの実施形態にかかるフレキシブル回路基板40のスイッチパターン44には3つの端子接続パターン51だけが必要であるが、スイッチパターン44の機能によっては4つや5つの端子接続パターン51が必要な場合がある。そのような異なるスイッチパターン44を有するフレキシブル回路基板40毎に別々の本数の金属端子70を有するリードフレーム73を用いるよりも、金属端子70の本数を同一(最も多い5本)にしてフレキシブル回路基板40のスイッチパターン44の形状だけを変更し、最後に不要な金属端子70を切断する作業の方が、生産効率がよいからである。
【0027】
図4は摺動子140を取り付けた回転つまみ120を下面側から見た斜視図である。また図5は回転つまみ120と摺動子140の斜視図である。図1,図4,図5に示すように回転つまみ120は、合成樹脂(例えばポリアミド樹脂)を略円板状に成形して構成されており、その中央部には前記基板体10の軸部21を回動自在に挿通する軸支孔121が設けられ、またその下面の軸支孔121の周囲の面を摺動子取付面123としている。摺動子取付面123には摺動子140が取り付けられる。摺動子取付面123の中央には、内部に前記軸支孔121を有する筒状の基板体当接部125が突出して設けられている。摺動子取付面123には下記する摺動子140に設けた各取付部151を挿入する小突起状の摺動子取付部127が設けられている。また回転つまみ120の前記軸支孔121の近傍には、回転つまみ120を上下に貫通する貫通孔からなる位置決め部129が設けられている。
【0028】
摺動子140は弾性金属板(例えばリン青銅板)製であり、略三角形状の基部145の1辺から摺動冊子147を突出してなる摺動子片143を3組具備し、3組の摺動子片143を中央に開口149を有するリング状の連結部141に一体に連結して構成されている。言い換えれば摺動子140はリング状の連結部141から放射状に3つの摺動子片143を突出している。各摺動冊子147は各基部145から同一円周方向に向けて2対ずつ突出している。2対ある摺動冊子147の内のそれぞれ一方は前記フレキシブル回路基板40に設けたオンオフパターン45,45に摺接する位置に、それぞれ他方はコモンパターン47に摺接する位置になるように設置されている。各基部145の前記摺動子取付面123から突出する3本の摺動子取付部127に対向する位置には小孔からなる取付部151が設けられている。
【0029】
そして回転つまみ120に摺動子140を取り付けるには、まず回転つまみ120の軸支孔121と位置決め部129を図示しない固定された取付治具に設けられた2つの突部にそれぞれ挿入することで、回転つまみ120の位置決め・固定を行う。次に摺動子140を前記固定されている回転つまみ120の摺動子取付面123上に載置する。このとき回転つまみ120の基板体当接部125が摺動子140の開口149に挿入され、同時に摺動子140の3つの基部145の取付部151にそれぞれ摺動子取付部127が挿入される。そして各摺動子取付部127の先端を熱かしめすれば、図4に示すように摺動子140が回転つまみ120に固定される。
【0030】
そして回転式スイッチ1を組み立てるには、図1,図2に示すように、基板体10の上に、摺動子140を取り付けた回転つまみ120を載置し、回転つまみ120の軸支孔121に基板体10の軸部21を回動自在に挿通し、軸部21の先端をかしめれば、回転式スイッチ1が完成する。このとき摺動子140の摺動冊子147はオンオフパターン45,45とコモンパターン47に弾接している。
【0031】
回転式スイッチ1は、図2に示すように、例えばこの回転式スイッチ1を組み込む電子機器に設けられている硬質の回路基板200(点線で示す)上に取り付けられる。その際各金属端子70は回路基板200に設けた図示しない小孔に挿入され、回路基板200の表面に設けた図示しない端子接続パターンに半田等によって電気的・機械的に固定される。同時に取付部27も回路基板200に設けた図示しない小孔に挿入され、回路基板200の表面に設けた図示しないアースパターンに半田等によって電気的・機械的に固定され、電子機器のアース回路に接続される。回路基板200に固定された回転式スイッチ1は、図2に示すように、その回転つまみ120の一部が、この回転式スイッチ1を収納する電子機器のケース250に設けた開口部251から外部に露出する。この回転つまみ120の開口部251から露出している部分を露出部120Aという。このとき前記アース板20のアース突起31は、ケース250の開口部251近傍に位置する枠部材80から露出している。
【0032】
そして図2に示す回転つまみ120の露出部120Aを回転すれば、摺動子140がオンオフパターン45,45とコモンパターン47上を摺動して各金属端子70間のオンオフ出力が変化する。この実施形態において、3組の摺動子片143を設けたのは、それぞれの摺動子片143をそれぞれ2つのオンオフパターン45,45とコモンパターン47とに摺接させるためである。2つのオンオフパターン45,45への2組の摺動子片143の当接タイミングは少しずれており、両オンオフパターン45,45の出力波形は少しずれる。またコモンパターン47には何れかの摺動子片143が常に当接する。
【0033】
またアース板20はアースされているので、フレキシブル回路基板40のスイッチパターン44や摺動子140等の電気回路への静電気の侵入を防止することができる。特にこの実施形態の場合、ケース250の開口部251から侵入する静電気の多くは、この開口部251に最も近い位置にあるアース板20のアース突起31に導かれ、アース板20に導入される。従ってスイッチパターン44や摺動子140等の電気回路に静電気が入射することはない。また回転つまみ120には貫通する位置決め部129が設けられているが、位置決め部129は軸支孔121近傍に設けられていて開口部251から遠い位置にあるので、この位置決め部129に静電気が侵入することはない。
【0034】
以上のように回転式スイッチ1は、金属板製のアース板20にスイッチパターン44を形成してなるフレキシブル回路基板40を載置すると共にアース板20及びフレキシブル回路基板40の周囲を枠部材80でインサート成形してなる基板体10と、アース板20からフレキシブル回路基板40を貫通してスイッチパターン44を露出している表面から突出する軸部21に回動自在に取り付けられ、スイッチパターン44に摺接する摺動子140を取り付けてなる回転つまみ120と、を具備して構成されている。即ちこの回転式スイッチ1は、回転つまみ120を軸支する軸部21をアース板20と同じ金属板製としたので、例え半田付け等の高温がかかっても変形することはなく、回転つまみ120の回転トルクが減少したり、回転つまみ120が基板体10から外れる恐れはない。またアース板20が金属板製なので、機械的強度が強く、基板体10は変形しない。またアース板20とフレキシブル回路基板40とを枠部材80によって一体化して基板体10を形成したので、この基板体10に、摺動子140を取り付けた回転つまみ120を取り付けるだけで、回転式スイッチ1を構成できる。つまりこの回転式スイッチ1は、アース板20によるアース機構を有しており、且つ構造が簡単で、組み立て作業も容易で、製造コストが低く抑えられる。また基板体10の厚みを、アース板20の厚みとフレキシブル回路基板40の厚みを加えた厚み程度に薄くできる。
【0035】
また回転式スイッチ1は、上述のように、回転つまみ120の中央部に設けた軸支孔121に、アース板20の軸部21を挿入して軸部21先端をかしめるだけで回転つまみ120を回動自在に取り付けることができるので、回転式スイッチ1の組み立て作業が容易に行える。また軸部21が半田付け等によって高温になっても、回転つまみ120の取付強度が弱くなることもなく、回転つまみ120の回転トルクが減少したり、回転つまみ120が外れる恐れはない。
【0036】
また回転式スイッチ1は、回転つまみ120の外周の一部を、この回転式スイッチ120を収納する電子機器のケース250に設けた開口部251から露出する露出部120Aとし、且つケース250の開口部251近傍に位置する枠部材80からアース板20(具体的にはアース突起31の先端)を露出している。これによってケース250の開口部251から侵入する静電気をアース板20に導入することができる。これによって回転式スイッチ1の内部の電気回路への静電気の侵入を防止できる。
【0037】
また回転式スイッチ1は、ケース250の開口部251近傍の基板体10(具体的には枠部材20)の外周辺80aが、ケース250に沿うように直線状に形成されているので、この外周辺80aを、ケース250の開口部251近傍の内面に沿わせて設置することができ、その分回転式スイッチ1の設置スペースを小さくでき、電子機器の小型化が図れる。
【0038】
また回転式スイッチ1の回転つまみ120には、回転つまみ120に摺動子140を取り付ける際に回転つまみ120を位置決めする孔からなる位置決め部129を設けたので、回転つまみ120に摺動子140を取り付ける際に、回転方向の取付位置を間違えることがなくなる。なお位置決め部129は貫通する孔ではなく、凹部で構成しても良い。
【0039】
また回転式スイッチ1の摺動子140は、基部145から摺動冊子147を突出してなる摺動子片143を3組具備し、3組の摺動子片143を中央に開口149を有する連結部141に一体に連結した構造である。このように摺動子140を構成すれば、3組ある摺動子片143を1枚の金属板で1部品として構成でき、部品点数が増加しない。一方回転つまみ120はその摺動子取付面123の中央に、内部に軸支孔121を有する基板体当接部125を突出して設け、この基板体当接部125を摺動子140の開口149に挿入した状態で、回転つまみ120の摺動子取付面123に載置した摺動子140の3つの基部145をそれぞれ回転つまみ120に固定している。このように3組ある摺動子片143の各基部145を回転つまみ120に固定するので、各摺動子片143の回転つまみ120への固定が確実になる。
【0040】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態では薄型化のため、アース板20の下面を枠部材80の下面と同一面とすることでアース板20の下面を露出させたが、場合によってはアース板20の下面に所定の厚みの枠部材80を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】回転式スイッチ1の分解斜視図である。
【図2】回転式スイッチ1の概略側断面図である。
【図3】基板体10の製造方法説明図である。
【図4】摺動子140を取り付けた回転つまみ120を下面側から見た斜視図である。
【図5】回転つまみ120と摺動子140の斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 回転式スイッチ
10 基板体
20 アース板
21 軸部
31 アース突起
40 フレキシブル回路基板
41 合成樹脂フイルム
44 スイッチパターン
45 オンオフパターン
47 コモンパターン
70 金属端子
80 枠部材
80a 外周辺
120 回転つまみ
120A 露出部
121 軸支孔
123 摺動子取付面
125 基板体当接部
129 位置決め部
140 摺動子
141 連結部
143 摺動子片
145 基部
147 摺動冊子
149 開口
200 回路基板
250 電子機器のケース
251 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板製のアース板に、スイッチパターンを形成してなるフレキシブル回路基板を載置すると共に、前記アース板及びフレキシブル回路基板の周囲を枠部材でインサート成形してなる基板体と、
前記アース板からフレキシブル回路基板を貫通して前記スイッチパターンを露出している表面から突出する軸部に回動自在に取り付けられ、前記スイッチパターンに摺接する摺動子を取り付けてなる回転つまみと、を具備することを特徴とする回転式スイッチ。
【請求項2】
前記回転つまみの中央部に設けた軸支孔に、前記アース板に設けた軸部を挿入し、軸部先端をかしめることで、回転つまみを回動自在に取り付けることを特徴とする請求項1に記載の回転式スイッチ。
【請求項3】
前記回転つまみの外周の一部を、この回転式スイッチを収納する電子機器のケースに設けた開口部から露出する露出部とし、
前記ケースの開口部近傍に位置する前記枠部材から前記アース板を露出し、且つアース板を電子機器のアース回路に接続することを特徴とする請求項1に記載の回転式スイッチ。
【請求項4】
前記ケースの開口部近傍の基板体の外周辺が、ケースに沿うように直線状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の回転式スイッチ。
【請求項5】
前記回転つまみには、この回転つまみに摺動子を取り付ける際に回転つまみを位置決めする孔又は凹部からなる位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転式スイッチ。
【請求項6】
前記摺動子は、基部から摺動冊子を突出してなる摺動子片を3組具備し、3組の摺動子片を中央に開口を有する連結部に一体に連結した構造であり、
一方前記回転つまみの摺動子を取り付ける摺動子取付面の中央に、内部に前記軸支孔を有する基板体当接部を突出して設け、
この基板体当接部を前記摺動子の開口に挿入した状態で、回転つまみの摺動子取付面に載置した摺動子の3つの基部をそれぞれ回転つまみに固定することを特徴とする請求項1に記載の回転式スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−152967(P2008−152967A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337239(P2006−337239)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】