説明

回転数センサ、特に有用車両で使用される回転数センサを選択的に接続するための電子回路装置

本発明は、対応する信号調整回路(1)を介して車両の少なくとも1つの回転数センサを電子制御ユニット(6)へ接続し、この電子制御ユニットにより回転数信号をさらに処理する、電子回路装置に関する。本発明では、信号調整回路(1)は能動型回転数センサ(5)または受動型回転数センサ(3)を選択的に接続するスイッチング手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号調整回路を介して車両の少なくとも1つの回転数センサを電子制御ユニットへ接続し、この電子制御ユニットにより回転数信号をさらに処理する、電子回路装置に関する。
【0002】
本発明のタイプの回転数センサは、車両技術において、車両の電子制御にとって重要な入力量を得るために必須である。従来のアンチロックシステムABS,スリップ防止制御システムARSおよび走行安定性制御システムFSR,ASMSは個々の車輪の回転数特性の持続的な測定および評価を要する。個々の車輪の回転数信号が検出され、センサ線路を介して電子制御ユニットへ評価のために伝送される。
【0003】
構造や能力の点できわめて多様な回転数センサが存在する。車両で使用される回転数センサは基本的には車輪とともに回転する歯付きディスク、ホールディスクなどの形態のエンコーダと定置の測定値ピックアップとから成る。技術的および費用上の理由から、これまでの誘導センサまたは測定値ピックアップでは、有利には車輪の回転運動に相応する交流信号を送出するエンコーダが主流である。回転数情報を得るために交流信号の周波数が種々に評価されるのである。
【0004】
現在、リラクタンス方式で動作するいわゆる受動型回転数センサは広汎に使用されている。こうした回転数センサは測定値ピックアップとして永久磁石を備えた銅コイルを有する。測定値ピックアップは測定値センサとして用いられる歯付きディスクまたはその他のエンコーダに磁気的に結合されており、銅コイル内に運動を表す交流電圧が誘導され、その周波数が測定量として車輪回転数を求めるために評価される。誘導された信号電圧のレベルは回転速度およびセンサと測定値ピックアップとの空隙またはセンサと歯付きディスクとのあいだの空隙に依存する。
【0005】
そのほかにいわゆる能動型回転数センサも一般に知られている。これは本発明に関連する。能動型回転数センサは永久磁石を備えた磁気感応性素子と組み合わせて用いられる。エンコーダはこの場合にも運動に同期して磁気結合リラクタンスまたは磁界方向を変調し、ここでセンサエレメントは磁束密度の変化または磁界ベクトルの運動に応答する。こうした磁気感応性素子の既知の例としてホールセンサおよびパーマロイ合金をベースとした磁気抵抗構造体が挙げられる。回転数センサの信号電圧のレベルは空隙に依存し、回転数および周波数からは独立である。したがって能動型回転数センサはその重要性を増しつつある。
【0006】
国際公開第95/17680号明細書から、この形式の能動型回転数センサが公知である。回転数センサの定置部分は、プレバイアス磁石として用いられる永久磁石および信号調整のための電子回路部を備えた磁気抵抗素子を有している。能動型回転数センサには電流供給が必要である。能動型回転数センサの出力信号は種々の振幅の印加電流から成るバイナリの電流信号である。回転数情報は周波数または2つの電流レベルの交番から得られる。この種の周知の回転数センサは矩形信号を送出し、この信号の周波数は測定回転数を反映する。
【0007】
能動型回転数センサから送出された情報をさらに処理するために、通常は、入力側で信号調整回路に前置接続されたマイクロコントローラが使用される。受動型回転数センサも電子制御ユニットとしてのマイクロコントローラへ接続し、回転数信号をさらに処理するために信号調整回路を要する。能動型回転数センサの接続される信号調整回路は受動型回転数センサの接続される信号調整回路とは異なっているので、センサのタイプにより使用される信号調整回路のタイプが定められることになる。
【0008】
本発明の課題は、対応する信号調整回路を交換せずに能動型回転数センサおよび受動型回転数センサの双方ともを駆動できる少なくとも1つの回転数センサを接続する電子回路装置を提供することである。
【0009】
この課題は請求項1の特徴部分に記載の構成を有する電子回路装置により解決される。請求項1に従属する請求項には本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0010】
本発明の技術的教説は、信号調整回路に、能動型回転数センサまたは受動型回転数センサを選択的に接続する手段を設けるということである。
【0011】
本発明による解決手段は、例えば受動型回転数センサに代えて受動型回転数センサを接続する際に、対応する信号調整回路を交換しなくてよいという利点を有する。信号調整回路は接続されるセンサのタイプから独立に動作し、能動型回転数センサの回転数信号も受動型回転数センサの回転数信号も処理することができる。
【0012】
有利には、能動型回転数センサまたは受動型回転数センサを選択的に接続するスイッチング手段は、能動型回転数センサに対する第2の部分回路と受動型回転数センサに対する第1の部分回路とを含む。これらの部分回路はそれぞれ接続されたセンサのタイプがいずれであるかに応じて少なくとも1つのスイッチング素子を介して作動される。
【0013】
有利には、電子制御ユニットはその時点で接続されているセンサのタイプを自動識別し、少なくとも1つのスイッチング素子は適切なほうの部分回路を選択して操作する。これに代えて、相応のスイッチング素子の操作を手動で、例えばトグルスイッチにより行ってもよい。ただし電子制御ユニットを介した自動操作には、接続されているセンサのタイプに適合させる調整を完全に省略でき、取り付けコストを低減し、また生じうる誤接続を回避できるという利点がある。有利な実施形態では、部分回路を選択するスイッチング素子はバイポーラトランジスタの形態に構成されており、そのベース端子は電子制御ユニットにより制御される。これに代えて、スイッチング素子をFETトランジスタまたはリレーその他として構成してもよい。
【0014】
別の有利な実施形態では、各スイッチング素子は受動型回転数センサに対する第1の部分回路のセンサ入力側A,Bに対して並列に接続されており、受動型回転数センサが接続されている場合に能動型回転数センサに対する第2の部分回路からの電流を阻止する保護ダイオードが前置接続されている。本発明では、受動型回転数センサに対する第1の部分回路から出発して、能動型回転数センサに対する第2の部分回路が設けられて拡張されている。保護ダイオードにより2つの部分回路を回路技術的に容易に結合することができる。
【0015】
本発明の他の手段を以下に図示の有利な実施例に則して詳細に説明する。図1には、能動型回転数センサまたは受動型回転数センサを選択的に有用車両(輸送用車両など)の電子制御ユニットへ接続するための電子回路装置が示されている。
【0016】
信号調整回路1は受動型回転数センサ3に対する第1の部分回路2と能動型回転数センサ5に対する第2の部分回路4とから成る。2つの部分回路2,4は回転数センサ3,5から出力された回転数信号のレベルを後置接続された電子制御ユニット6に対して適合化するために用いられる。電子制御ユニットはこの実施例ではマイクロコントローラの形態で構成されている。受動型回転数センサ3に対する第1の部分回路2は2つのセンサ入力側A,Bの抵抗部のほか比較器7を有しており、その出力信号は第1の信号入力側Xを介して電子制御ユニット6へ供給される。これに対して能動型回転数センサ5に対する第2の部分回路4はここでは抵抗部およびこれに後置接続されたトランジスタドライバ8として構成されており、その出力信号は第2の信号入力側Yを介して電子制御ユニット6へ供給される。
【0017】
信号調整回路1はさらに、それぞれのセンサのタイプに応じて2つの部分回路2,4のいずれかを作動する2つのスイッチング素子9a,9bを有している。スイッチング素子9a,9bはバイポーラトランジスタとして構成されており、図中破線で示されているように、電子制御ユニット6によって駆動される。電子制御ユニット6はその時点で接続されているセンサのタイプを識別し、2つのスイッチング素子9a,9bを操作して、対応する第1の部分回路2または第2の部分回路4のいずれかを選択する。相応のソフトウェアを備えた電子制御ユニット6は、使用開始時に、能動型回転数センサ5がセンサ入力側A,Bに接続されているか否かを検査する。車両の静止時に接続されている回転数センサが信号を送出している場合、このことは能動型回転数センサ5がセンサ入力側A,Bに接続されていることを表す。これに対して車両の静止時に信号が送出されていない場合、このことは受動型回転数センサ3がセンサ入力側A,Bに接続されていることを表す。そもそも回転数センサが接続されているか否かについては、センサ入力側Aおよび図示されていない結合素子を介して電子制御ユニット6が監視する。
【0018】
駆動電圧電位とセンサ入力側Aとのあいだおよびアースとセンサ入力側Bとのあいだに直列に、かつ付加的な能動型回転数センサ5に対する第2の部分回路4の前方に、それぞれ保護ダイオード10a,10bが接続されている。2つの保護ダイオード10a,10bは、受動型回転数センサ3がセンサ入力側A,Bに接続されている場合に、能動型回転数センサ5に対する第2の部分回路4からの障害電流を阻止するために用いられる。また入力電圧が副次端子に印加された場合にも同様である。
【0019】
本発明は上述の実施例のみに限定されない。種々のバリエーションが可能であり、それらも特許請求の範囲によって保護される。本発明の解決手段は受動型回転数センサの信号をアースへ接続する部分回路にも適している。この場合、第3のスイッチング素子、有利には第3のトランジスタをアース線路へ挿入することにより、アースの電位が分離される。全体として有利には電子制御ユニットを介して自動で駆動される3つのスイッチング素子が必要となる。また、能動型回転数センサに対する部分回路をヒステリシス付きの比較器の形態で構成し、適切なレベル適合化を達成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の電子回路装置の回路図である。
【符号の説明】
【0021】
1 信号調整回路、 2 第1の部分回路、 3 受動型回転数センサ、 4 第2の部分回路、 5 能動型回転数センサ、 6 電子制御ユニット、 7 比較器、 8 トランジスタドライバ、 9 スイッチング素子、 10 保護ダイオード、 A 第1のセンサ入力側、 B 第2のセンサ入力側、 X 第1の信号入力側、 Y 第2の信号入力側


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する信号調整回路(1)を介して車両の少なくとも1つの回転数センサを電子制御ユニット(6)へ接続し、該電子制御ユニットにより回転数信号をさらに処理する、
電子回路装置において、
信号調整回路(1)は能動型回転数センサ(5)または受動型回転数センサ(3)を選択的に接続するスイッチング手段を有する
ことを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
前記能動型回転数センサまたは受動型回転数センサを選択的に接続するスイッチング手段は、前記能動型回転数センサに対する第2の部分回路(4)と前記受動型回転数センサに対する第1の部分回路(2)とを含み、各部分回路は接続されたセンサがいずれのタイプであるかに応じて少なくとも1つのスイッチング素子(9a,9b)を介して作動される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記電子制御ユニットはその時点で接続されているセンサのタイプを識別し、前記少なくとも1つのスイッチング素子は適切なほうの部分回路を選択して操作する、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子はバイポーラトランジスタの形態に構成されている、請求項2または3記載の装置。
【請求項5】
各スイッチング素子は、駆動電圧の電位と前記受動型回転数センサに対する第1の部分回路の第1のセンサ入力側(A)とのあいだ、およびアースと前記受動型回転数センサに対する第1の部分回路の第2のセンサ入力側(B)とのあいだに直列に接続されており、前記受動型回転数センサが接続されている場合に前記能動型回転数センサに対する第2の部分回路からの電流を阻止する保護ダイオード(10a,10b)が前置接続されている、請求項3記載の装置。
【請求項6】
前記信号調整回路は少なくとも1つの比較器(7)を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記電子制御ユニットは入力側で回転数信号を受け取るマイクロコントローラである、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の電子回路装置を備えていることを特徴とする有用車両。

【公表番号】特表2007−508529(P2007−508529A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530120(P2006−530120)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011247
【国際公開番号】WO2005/035329
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(597007363)クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (110)
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D−80809 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】