説明

回転数検出装置及び回転飛翔体

【課題】 外乱の影響を受けることなく、正確に回転飛翔体の回転数を検出することを目的とする。
【解決手段】 回転体が回転することによって生じる遠心加速度と重力加速度とを検知すると共に当該遠心加速度と重力加速度との合成加速度に応じた加速度検出信号を出力する加速度検出手段と、前記加速度検出信号の変動周期に基づいて前記回転体の回転数を検出する信号処理手段とを具備する、という手段を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転数検出装置及び回転飛翔体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転飛翔体の回転数を検出する方法の1つとして、当該回転飛翔体の表面に受光センサを設けて太陽光を検出し、当該太陽光の受光量に応じた電気信号の変動周期に基づいて上記回転飛翔体の回転数を検出する技術がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術において受光センサを用いる方法では、回転飛翔体の飛翔時刻によって太陽光量が変動したり、太陽光が地面に反射されて生じる反射光の影響を受ける等、受光センサの検出光量が不安定になり、回転数検出精度が低下するという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来のように外乱の影響を受けることなく、正確に回転飛翔体の回転数を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、回転数検出装置に係わる第1の解決手段として、回転体が回転することによって生じる遠心加速度と重力加速度とを検知すると共に当該遠心加速度と重力加速度との合成加速度に応じた加速度検出信号を出力する加速度検出手段と、前記加速度検出信号の変動周期に基づいて前記回転体の回転数を検出する信号処理手段とを具備する、という手段を採用する。
【0006】
また、回転数検出装置に係わる第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、2つの加速度検出手段を前記回転体の回転中心に対して対称となる位置に各々備え、信号処理手段は、前記2つの加速度検出手段から各々出力される加速度検出信号の差の変動周期に基づいて前記回転体の回転数を検出する、という手段を採用する。
【0007】
一方、回転飛翔体に係わる解決手段として、目標物に向かって回転しつつ飛翔する回転飛翔体であって、前記目標物までの距離を計測する距離計測手段と、上記回転数検出装置に係わる第1または第2の解決手段と、前記回転飛翔体の地表に対する仰角φ、前記重力加速度g、前記加速度検出信号の最大値(合成加速度の最大値A1max)及び最小値(合成加速度の最小値A1min)に関する下記関係式(5)によって前記仰角φを算出し、当該仰角φ、前記目標物までの距離L、前記回転飛翔体の地表からの高さHに関する下記関係式(6)によって前記回転飛翔体の地表からの高さHを算出する演算処理手段とを具備する、という手段を採用する。
【0008】
【数1】

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転飛翔体が回転することによって生じる遠心加速度と重力加速度とを検知し、それらの合成加速度に応じた加速度検出信号の変動周期に基づいて回転数を検出するので、従来のような受光センサを用いる方法に比べ、外乱の影響を受けることなく正確に回転数を検出することができる。
【0010】
また、前記加速度検出信号に基づいて上記関係式(5)から回転飛翔体の地表に対する仰角φを求めることができ、さらに目標物までの距離Lを計測することによって、当該距離Lと前記地表に対する仰角φとを上記関係式(6)に代入することによって前記回転飛翔体の飛行高度Hを求めることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態に係わる回転飛翔体の構成ブロック図である。この図において、回転飛翔体Mは略円筒形状であって、先端に向かって徐々に縮径された形状になっており、回転しつつ飛行するものである。上記回転飛翔体Mは、内部構成として、第1の加速度センサ1、第2の加速度センサ2、差動アンプ3、電波レーダ4、演算処理部5を備えている。
【0012】
図1(b)は、本回転飛翔体MのA−A矢視図である。この図に示すように、第1の加速度センサ1及び第2の加速度センサ2は、回転中心に対して対称となるような位置に設置されている。上記第1の加速度センサ1及び第2の加速度センサ2は、例えば圧電型加速度センサであり、本回転飛翔体Mの回転によって発生する遠心加速度と重力加速度とを検知し、それらの合成加速度に応じた電圧信号を出力するものである。ここで第1の加速度センサ1から出力される第1の電圧信号V1は、差動アンプ3の正相入力端に入力されると共に演算処理部5に入力される。また、第2の加速度センサ2から出力される第2の電圧信号V2は、差動アンプ3の逆相入力端に入力される。
【0013】
差動アンプ3は、上記第1の電圧信号V1と第2の電圧信号V2との差(V1−V2)を取り、第3の電圧信号V3として演算処理部5に出力する。
【0014】
電波レーダ4は、例えば、FM−CW(周波数変調連続波)レーダであり、本回転飛翔体Mの先端部に設置され、所定周波数の変調信号で周波数変調して得られた周波数変調信号を送信波として目標物へ向けて放射し、当該送信波が目標物に反射して受信された反射波と上記送信波との位相差、具体的には当該位相差に起因する反射波と送信波とのビート信号の周波数(ビート周波数)に基づいて目標物までの距離Lを計測するものである。電波レーダ4は上記のようにして得た目標物までの距離データを演算処理部5に出力する。
【0015】
演算処理部5は、上記第3の電圧信号V3の変動周期に基づいて本回転飛翔体Mの回転数を検出するものである。また、詳細は後述するが、演算処理部5は、本回転飛翔体Mの地表に対する仰角φに関する下記関係式(5)、飛行高度Hに関する下記関係式(6)及び重力加速度g(9.8m/s)を記憶しており、上記第1の電圧信号V1の最大値及び最小値、すなわち、第1の加速度センサ1が検知した合成加速度A1の最大値A1max及び最小値A1minから上記関係式(5)に基づいて地表に対する仰角φを算出し、さらに、電波レーダ4から得た目標物までの距離データ(距離L)と上記仰角φを上記関係式(6)に代入することによって本回転飛翔体Mの飛行高度Hを算出する。
【0016】
次に、このように構成された本回転飛翔体Mの動作について説明する。
【0017】
図2(a)は、本回転飛翔体Mの飛行状態を示す模式図である。この図のように、本回転飛翔体Mが地表(水平面)に対して仰角φで目標物へ向かって飛行しているとする。本回転飛翔体Mが図示の回転方向に回転し、第1の加速度センサ1が回転角θの位置Piに存在する場合、当該第1の加速度センサ1が検知する合成加速度A1は、遠心力による遠心加速度aから重力加速度gを差し引いた値となるため下記関係式(1)で表される。
【0018】
【数2】

【0019】
また、上記の場合、第2の加速度センサ2は、第1の加速度センサ1と回転中心に対して対称の位置(位置Pj)に設置されているため、上記関係式(1)において回転角θが180°進んでいることになる。従って、当該第2の加速度センサ2が検知する合成加速度A2は、下記関係式(2)で表される。
【0020】
【数3】

【0021】
図2(b)は、図2(a)のB−B矢視図である。この図において、回転角θ=0°、90°、180°、270°の時の第1の加速度センサ1の位置をそれぞれ位置P1、P2、P3、P4とする。
【0022】
上記関係式(1)、(2)より、合成加速度A1及び合成加速度A2の回転角θに対する変化は図3(a)のようになる。この図に示すように、合成加速度A1及び合成加速度A2は、遠心加速度aに対して振幅g・cosφを持つコサイン波であり、合成加速度A1と合成加速度A2との間には180°の位相差が存在する。このような合成加速度A1と合成加速度A2との差(A1−A2)をとると、図3(b)のように加速度零に対して振幅2g・cosφを持つコサイン波を得ることができる。ここで、回転角θは時間変化を示すものなので、本回転飛翔体Mが一回転する間の時間、すなわち第1の加速度センサ1が位置P1から再び当該位置P1に戻ってくるまでの時間T(繰り返し周期)を検出することで、回転数(1/T)を求めることができる。
【0023】
なお、上記のような図3(b)の波形の最大値2g・cosφの繰り返し周期を検出しようとすると、当該最大値は地表に対する仰角φによって変化してしまうため、常に上記最大値を監視する必要がある。そこで、本実施形態では上記最大値の繰り返し周期を検出するのではなく、図3(b)の波形において、振幅が零になる位置P2から再び位置P2に戻る時間を検出することによって回転数を求めるようにする。これにより、常に振幅が零になる時間を検出すれば良いため、地表に対する仰角φに依存せず簡単に回転数を求めることができる。
【0024】
次に、上記のように合成加速度A1と合成加速度A2との差をとる理由について説明する。例えば、第1の加速度センサ1のみを用いた場合、図3(a)のような合成加速度A1に関する波形を得ることができるので、当該合成加速度A1の最大値であるa+g・cosφの繰り返し周期を検出すれば回転数を求めることができる。または、合成加速度A1の値が遠心加速度aに等しくなる周期を検出することによっても回転数を求めることができる。
【0025】
しかしながら、本回転飛翔体Mの回転速度は、空気抵抗等によって徐々に減少するため、遠心加速度aも一定ではない。さらに実際には、本回転飛翔体Mは僅かに歳差運動をしながら飛行しているため当該歳差運動の影響を受け、遠心加速度aはある周期で変動してしまうことになる。従って、上記のように合成加速度A1の最大値であるa+g・cosφの繰り返し周期を検出する場合、もしくは、合成加速度A1の値が遠心加速度aに等しくなる周期を検出する場合に、遠心加速度aが変動するために正確な繰り返し周期を検出することができない恐れがあり、また、遠心加速度aの変動に追従して繰り返し周期を検出するようにすると信号処理が複雑になるという問題がある。
【0026】
よって、本実施形態のように加速度センサを2つ(第1の加速度センサ1及び第2の加速度センサ2)を備え、差動アンプ3によって第1の電圧信号V1と第2の電圧信号V2
との差をとり、すなわち、合成加速度A1と合成加速度A2との差をとることで、図3(b)のように遠心加速度aの影響をキャンセルすることができ、その結果、演算処理部5での信号処理を簡単にすることができ、且つ正確に回転数を求めることが可能である。
【0027】
以上のように、第1の加速度センサ1は、上記のような合成加速度A1に対応する第1の電圧信号V1を差動アンプ3の正相入力端子に出力し、また、第2の加速度センサ2は合成加速度A2に対応する第2の電圧信号V2を差動アンプ3の逆相入力端子に出力する。これら第1の電圧信号V1及び第2の電圧信号V2は図3(a)のような変化を示し、また、差動アンプ3から出力される第3の電圧信号V3は図3(b)のような変化を示すものである。演算処理部5は、差動アンプ3から入力された第3の電圧信号V3の電圧値が零(合成加速度A1と合成加速度A2との差が零)になる繰り返し周期Tを検出することによって回転数(1/T)を算出する。
【0028】
次に、上記関係式(1)から地表に対する仰角φを求める方法について説明する。合成加速度A1の最大値をA1maxとすると、上記のようにA1max=a+g・cosφになる。従って、仰角φは下記関係式(3)で表され、また、合成加速度A1の最小値をA1minとすると、遠心加速度aは、下記関係式(4)式で表される。
【0029】
【数4】

【0030】
上記関係式(4)を上記関係式(3)に代入すると、下記関係式(5)が得られる。
【0031】
【数5】

【0032】
よって、演算処理部5は、第1の電圧信号V1の最大値(A1maxに対応する電圧値)と最小値(A1minに対応する電圧値)を検出し、上記関係式(5)に代入することによって地表に対する仰角φを算出する。
【0033】
また、電波センサ4によって目標物までの距離Lが求まれば、上記のようにして得た仰角φから本回転飛翔体Mの飛行高度Hも下記関係式(6)から算出することができる。
【0034】
【数6】

【0035】
演算処理部5は、上記のように第1の加速度センサ1から入力される第1の電圧信号V1から上記関係式(5)に基づいて仰角φを求めると、さらに電波センサ4から入力される距離データから上記関係式(6)に基づいて本回転飛翔体Mの飛行高度Hを算出する。
このような飛行高度Hは、本回転飛翔体Mが着地体制に入るための情報等として活用される。
【0036】
なお、上記のような電圧信号V1、V3及び距離データは、演算処理部5において全てデジタル信号として処理されている。すなわち、電圧信号V1及びV3は演算処理部5に入力された時点でアナログ信号からデジタル信号に変換され、距離Lを表す距離データはデジタル信号として電波レーダ4から出力される。
【0037】
また、上記関係式(1)、(2)からわかるように、地表に対する仰角φが90°の場合は回転数を検出することはできない。このように、本回転飛翔体Mが地表に対して垂直に飛行している場合に回転数を検出しようとすると、本回転飛翔体Mは第1の加速度センサ1及び第2の加速度センサ2が重力加速度(正確にはg・cosφ)を検知できる程度の大きさで歳差運動をしている必要がある。
【0038】
以上のように、本回転飛翔体Mによれば、第1の加速度センサ1及び第2の加速度センサ2を用いることで当該回転飛翔体Mが回転することによって生じる遠心加速度と重力加速度との合成加速度A1及びA2を検知し、それらに応じた第1の電気信号V1と第2の電気信号V2との差である第3の電気信号V3の変動周期に基づいて回転数を検出するので、従来のような外乱の影響を受けず、正確に回転数を検出することができる。
【0039】
さらに、合成加速度A1に応じた第1の電気信号V1から本回転飛翔体Mの地表に対する仰角φを求めることができるので、電波レーダ4によって目標物までの距離Lを計測することによって、当該距離Lと上記仰角φとから本回転飛翔体Mの飛行高度Hを求めることも可能である。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
【0041】
上記実施形態では、回転飛翔体Mの回転数を検出したが、これに限らず、地上に固定されている回転体の回転数を検出することも勿論可能である。この場合、回転体の回転軸が地表に対して水平ならば問題なく回転数を検出できるが、上記回転軸が地表に対して垂直ならば上記実施形態と同じく回転数を検出することはできない。ただし、回転軸が地表に対して垂直であっても、回転体が回転しつつ大きな歳差運動をしている場合は回転数を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係わる回転飛翔体Mの構成ブロック図である。
【図2】本実施形態における第1の加速度センサ1及び第2加速度センサ2の動作原理を示す図である。
【図3】本実施形態における回転数検出方法の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1…第1の加速度センサ、2…第2の加速度センサ、3…差動アンプ、4…電波レーダ、5…演算処理部、M…回転飛翔体、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体が回転することによって生じる遠心加速度と重力加速度とを検知すると共に当該遠心加速度と重力加速度との合成加速度に応じた加速度検出信号を出力する加速度検出手段と、
前記加速度検出信号の変動周期に基づいて前記回転体の回転数を検出する信号処理手段と
を具備することを特徴とする回転数検出装置。
【請求項2】
2つの加速度検出手段を前記回転体の回転中心に対して対称となる位置に各々備え、
信号処理手段は、前記2つの加速度検出手段から各々出力される加速度検出信号の差の変動周期に基づいて前記回転体の回転数を検出することを特徴とする請求項1記載の回転数検出装置。
【請求項3】
目標物に向かって回転しつつ飛翔する回転飛翔体であって、
前記目標物までの距離を計測する距離計測手段と、
請求項1または2記載の回転数検出装置と、
前記回転飛翔体の地表に対する仰角φ、前記重力加速度g、前記加速度検出信号の最大値(合成加速度の最大値A1max)及び最小値(合成加速度の最小値A1min)に関する下記関係式(5)によって前記仰角φを算出し、当該仰角φ、前記目標物までの距離L、前記回転飛翔体の地表からの高さHに関する下記関係式(6)によって前記回転飛翔体の地表からの高さHを算出する演算手段と
を具備することを特徴とする回転飛翔体。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−300702(P2006−300702A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122180(P2005−122180)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000232357)横河電子機器株式会社 (109)
【Fターム(参考)】