説明

回転検出装置

【課題】磁気センサでは困難な、高速な回転の検出に好適な回転検出装置を提供する。また同時に、耐環境性に優れ、低コストな装置とする。
【解決手段】本発明の回転検出装置は、ターゲット1との対向距離に反応するインダクタンス(又はキャパシタンスも可)を含む回路の共振周波数に基づく周波数の第1信号を発生する第1信号発生器9、及び、基準となる周波数の第2信号を発生する第2信号発生器10を具備し、第1信号発生器9には電圧制御発振器2が含まれている。位相同期回路12は、第1信号及び第2信号について、位相及び周波数が相互に一致するように、電圧制御発振器2に制御電圧を付与する。出力回路8は、制御電圧が変化している時期を捉えた矩形波信号、すなわち、ターゲットの凹部又は凸部に対応した信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物の変位すなわち距離の変化を検出する装置、及び、変位検出の繰り返しに基づいて回転を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の車軸の回転速度を検出するためのセンサは、車軸の軸受ユニットに搭載されている。従来、典型的に用いられているセンサは、回転する車軸側に多数の磁極(N・S)が並んだパルサーリングを装着し、このパルサーリングと径方向に対向する磁気センサによって、車軸の回転による検知領域の磁界の変化を検出するように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−270257号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、自動車におけるターボチャージャのファンの回転数を、上記のような磁気センサによって検出しようとすると、車軸の回転数をはるかに上回るファンの高速回転(例えば200,000rpm)に対して、磁気センサの応答速度が十分ではなく、従って精度良く検出することは困難である。また、ターボチャージャのような高い環境温度に耐え得る磁気センサを製作することは困難である。さらに、磁気センサは、検出対象物に永久磁石を装着する必要があるため、コストが比較的高くなる。
なお、磁気センサに代えて光センサによって回転検出を行うことも可能であるが、光センサは、センサヘッドの汚れによって検出感度が低下するという弱点がある。
【0005】
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、磁気センサでは困難な、高速な変位/回転の検出に好適な変位検出装置/回転検出装置を提供することを目的とする。また同時に、耐環境性に優れ、低コストな、変位検出装置/回転検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の変位検出装置は、検出対象物と対向してその対向距離に反応するインダクタンス又はキャパシタンスを含む回路の共振周波数に基づく周波数の第1信号を発生する第1信号発生器、及び、基準となる周波数の第2信号を発生する第2信号発生器を具備し、当該第1信号発生器及び第2信号発生器の一方に電圧制御発振器が含まれている信号発生器と、前記第1信号及び第2信号について、位相及び周波数が相互に一致するように、前記電圧制御発振器に制御電圧を付与する位相同期回路と、前記制御電圧に基づいて、前記検出対象物との対向距離に応じて変化する信号を出力する出力回路とを備えている。
【0007】
上記のように構成された変位検出装置では、検出対象物との対向距離に応じてインダクタンス又はキャパシタンスが変化し、共振周波数及び、第1信号の周波数が変化する。このとき、位相同期回路は、電圧制御発振器に制御電圧を付与して、第1信号及び第2信号についての位相及び周波数を、相互に一致させる制御を行う。その結果、検出対象物との対向距離の変化が位相同期回路のループにおける制御電圧の変化として現れる。そこで、出力回路により、この制御電圧を取り出し、検出対象物との対向距離に応じて変化する信号を出力する。このようにして、変位を、電気的現象に対するアナログ処理のみで、制御電圧として取り出すことができ、検出対象物の変位を検出することができる。
【0008】
(2)また、上記(1)の変位検出装置において、第1信号発生器は電圧制御発振器を含んで構成されており、位相同期回路は、検出対象物との対向距離が変化しても電圧制御発振器の発振周波数が一定に維持されるように制御電圧を変化させるものであってもよい。
この場合、発振周波数を一定に維持しようとする制御電圧の変化に基づいて、変位が検出されることになる。
【0009】
(3)また、上記(1)の変位検出装置において、第1信号発生器は、検出対象物と対向する平面コイルを備えているものであってもよい。
この場合、検出対象物が金属である場合に変位の検出が可能となる。また、平面コイルは非常にコンパクトで、かつ、平面であるので、コイル全体を、検出対象物に容易に接近させることができる。
【0010】
(4)また、上記(1)の変位検出装置において、第1信号発生器は、検出対象物と対向するコンデンサを備えているものであってもよい。
この場合、検出対象物が金属でなくても、変位の検出が可能である。
【0011】
(5)また、上記(4)の変位検出装置において、コンデンサは同軸ケーブルであってもよい。
この場合、同軸ケーブルの長さによって所望のキャパシタンスを容易に確保することができる。また、同軸ケーブルは柔軟性があるので、自在に曲げて所望の位置へ先端(端面)を配置することができる。
【0012】
(6)一方、本発明の回転検出装置は、回転検出の対象物である回転体に設けられ、周方向に等間隔で凹部又は凸部が形成されたターゲットと、前記ターゲットの凹部又は凸部と対向してその対向距離に反応するインダクタンス又はキャパシタンスを含む回路の共振周波数に基づく周波数の第1信号を発生する第1信号発生器、及び、基準となる周波数の第2信号を発生する第2信号発生器を具備し、当該第1信号発生器及び第2信号発生器の一方に電圧制御発振器が含まれている信号発生器と、前記第1信号及び第2信号について、位相及び周波数が相互に一致するように、前記電圧制御発振器に制御電圧を付与する位相同期回路と、前記制御電圧に基づいて、前記回転体の回転により前記対向距離に応じて変化する信号を出力する出力回路とを備えている。
【0013】
上記のように構成された回転検出装置では、検出対象物との対向距離に応じてインダクタンス又はキャパシタンスが変化し、共振周波数及び、第1信号の周波数が変化する。このとき、位相同期回路は、電圧制御発振器に制御電圧を付与して、第1信号及び第2信号についての位相及び周波数を、相互に一致させる制御を行う。その結果、検出対象物との対向距離の変化が位相同期回路のループにおける制御電圧の変化として現れる。そこで、出力回路により、この制御電圧を取り出し、検出対象物との対向距離に応じて変化する信号を出力する。このようにして、回転を、電気的現象に対するアナログ処理のみで、制御電圧として取り出すことができ、検出対象物の回転を検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、変位/回転を、電気的現象に対するアナログ処理のみで、制御電圧として取り出すことができるので、磁気センサでは困難な高速な変位/回転の検出に好適な変位検出装置/回転検出装置を提供することができる。また同時に、磁気検出素子や光素子を要しないので、耐環境性に優れ、低コストに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る変位検出装置の一例としての、回転検出装置の構成を示すブロック回路図である。
【図2】平面コイルを示す図である。
【図3】図1における電圧制御発振器の回路図の一例である。
【図4】(a)は、ターゲットの形状を簡略化して示す図、(b)及び(c)はそれぞれ、電圧制御発振器の出力する発振周波数及び位相同期回路の制御電圧が、ターゲットの形状によってどのように変化するかの一例を示す図である。
【図5】出力回路の入出力変化を示す図であり、(a)に示す制御電圧が所定の閾値と比較され、(b)に示す矩形波(パルス)の出力信号となる様子を示す。
【図6】玉軸受の断面図である。
【図7】センサヘッドとして利用可能な同軸ケーブルの断面図である。
【図8】第4実施形態に係る回転検出装置の構成を示すブロック回路図である。
【図9】一般的に知られている位相同期回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《第1実施形態》
図1は、本発明の第1実施形態に係る変位検出装置の一例としての、回転検出装置の構成を示すブロック回路図である。図において、ターゲット(検出対象物)1は、金属製で、例えば歯車状の外周形状を有し、中心軸1aを中心として回転する。このようなターゲット1は、回転を検出しようとする対象の回転体そのものであってもよいし、対象の回転体と一体回転するように取り付けられたものであってもよい。また、歯車状としたのは一例であり、周方向に等間隔で凹部又は凸部が形成されたターゲットであればよい。さらに、タービンブレードや、プロペラ等の、羽状のものをターゲットとしてもよい。ターボチャージャであれば、例えばファンのプロペラを、径方向外方から検知すべきターゲットとすることができる。
【0017】
センサヘッド2sは、回転するターゲット1に対して径方向に対向し、ターゲット1の最外周に対してエアギャップを設けて、非接触で配置される。このエアギャップは、例えば0.1〜1.0mmである。センサヘッド2sは、具体的には図2に示す平面コイルである。図2において、平面コイル21は、絶縁基板22上に、図示のように導電部を渦巻状に形成して成る。渦巻の直径は、例えば0.7mm程度である。渦巻の直径は、識別して検出できる歯車状の歯の最小ピッチと関連性があり、この場合、ピッチ0.5mmで隣接する歯をも識別可能である。なお、このような平面コイル21は、例えば、エッチングやスパッタリングにより形成される。平面コイル21は非常にコンパクトで、かつ、平面であるので、コイル全体を、検出対象物に容易に接近させることができる。
【0018】
上記平面コイル21によるセンサヘッド2sを含む電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)2は、制御電圧によって発振周波数を制御する発振器である。図3は、この電圧制御発振器2の回路図の一例である。電圧制御発振器2は、インダクタンスL1、可変容量ダイオード(バリキャップ)D1,D2、トランジスタQ2,Q3、コンデンサC1〜C6及び抵抗R1〜R7を、図示のように接続して構成されている。
【0019】
平面コイル21は、回路上は、インダクタンスL1である。インダクタンスL1は、可変容量ダイオードD1,D2その他のキャパシタンス(コンデンサC1,C3,C4の各キャパシタンス及びトランジスタQ2のベース−エミッタ間容量)と共に共振回路を構成し、共振周波数に基づく発振周波数で信号が出力される。可変容量ダイオードD1,D2のキャパシタンスは、制御電圧Vfにより変化する。発振周波数は例えば352MHzである。インダクタンスL1の周囲には高周波磁界が生じ、インダクタンスL1(平面コイル21)と、金属であるターゲット1との対向距離の変化に応じて実際のインダクタンスの値Lが変化する。
【0020】
図1に戻り、電圧制御発振器2から出力される信号の周波数(例えば352MHz)は、分周器3によって(1/N)に分周される。分周された周波数fの信号は、位相比較器4に入力される。一方、基準周波数発生器6は典型的には水晶発振器である。基準周波数発生器6から出力される信号の周波数(例えば10MHz)は分周器7によって(1/R)に分周される。分周された周波数frの信号は、位相比較器4に入力される。上記分周器3,7におけるN,Rの値は、分周した結果の周波数f,frが互いに等しくなるように設定される。例えば、Rが10、Nが352であれば、分周した結果の周波数f,frは共に1MHzとなる。位相比較器4は、入力された2つの信号の位相及び周波数を比較し、その差に応じた電圧を出力する。
【0021】
すなわち、図1に示すように、位相比較器4へは、2系統の信号発生器11から入力信号が与えられている。第1信号発生器9は、ターゲット1と、センサヘッド2sを含む電圧制御発振器2と、分周器3とによって構成されており、ターゲット1との対向距離に反応する(影響を受ける)インダクタンスを含む回路の共振周波数に基づく周波数fの第1信号を発生する。また、第2信号発生器10は、基準周波数発生器6と分周器7とによって構成されており、基準となる周波数frの第2信号を発生する。
【0022】
ループフィルタ5は、例えばローパスフィルタであり、不要な短周期変動を遮断して、必要な制御電圧Vfのみを電圧制御発振器2に与える。位相比較器4からループフィルタ5、電圧制御発振器2、分周器3を経て位相比較器4に帰還するフィードバックループは、位相同期回路(PLL:Phase-Locked Loop)12を構成している。この位相同期回路12は、第1信号発生器9における分周器3から位相比較器4に入力される信号の位相及び周波数を、第2信号発生器10における分周器7から位相比較器4に入力される信号の位相及び周波数に合わせるように動作する。
【0023】
上記の制御電圧Vfは、電圧制御発振器2に与えられるのみならず、位相同期回路12から取り出されて、出力回路8に与えられる。出力回路8は、例えばコンパレータを含むものであり、制御電圧Vfを所定値と比較して2値(1,0)の矩形波信号を生成し、これを出力信号として出力する。
【0024】
なお、参考までに、図9は一般的に知られている位相同期回路の構成を示すブロック図である。すなわち、入力側から位相比較器L1、ループフィルタL2、電圧制御発振器L3を経て出力側に至り、電圧制御発振器L3の出力信号(周波数)が分周器L4を介して位相比較器L1にフィードバックされる。これにより、入力信号と同じ位相・周波数を持つ信号が出力され、入出力信号間の位相同期が実現される。このような一般的位相同期回路と、図1における位相同期回路12とを比較すると、基本的な構成要素は共通するが、ループにおける出力の位置が異なり、取り出そうとする情報(制御電圧)が全く異なる。
【0025】
次に、上記の回転検出装置の動作を、信号波形を用いて具体的に説明する。
図4の(b)及び(c)はそれぞれ、電圧制御発振器2の出力する発振周波数及び位相同期回路12の制御電圧Vfが、ターゲット1の形状によってどのように変化するかの一例を示す図である。なお、発振周波数の初期値は352MHz、制御電圧Vfの初期値は、この352MHzに対応した一定値とする。
【0026】
簡略化のため、ターゲット1の形状を(a)に示すような矩形波で表すと、当該矩形波の立ち上がりすなわち、センサヘッド2sの平面コイル21に対向している部位が、凹部から凸部に変わるとき、対向距離が相対的に短くなることにより、発振周波数が僅かに下がる。なお、下がるタイミングは、対向距離の変化の発生よりも電圧制御発振器2のごく僅かな応答時間の分だけ遅れる。
【0027】
このような発振周波数の低下が発生すると、位相同期回路12は直ちに周波数を元に戻すように制御電圧Vfを上昇させる。その結果、周波数の低下は迅速に解消され、元の周波数(352MHz)に戻る。戻る時期は、次に凸部から凹部への変化が起こる時期よりも早い。変位が凸で一定の状態になると、制御電圧Vfは上昇した後の一定値に維持される。
【0028】
次に、矩形波の立ち下がりすなわち、センサヘッド2sの平面コイル21に対向している部位が、凸部から凹部に変わるとき、対向距離が相対的に長くなることにより、発振周波数が僅かに上がる。このときも、上がるタイミングは、対向距離の変化の発生よりも電圧制御発振器2のごく僅かな応答時間の分だけ遅れる。
このような発振周波数の上昇が発生すると、位相同期回路12は直ちに周波数を元に戻すように制御電圧Vfを低下させる。その結果、周波数の上昇は迅速に解消され、元の周波数(352MHz)に戻る。戻る時期は、次に凹部から凸部への変化が起こる時期よりも早い。変位が凹で一定の状態になると、制御電圧Vfは低下した後の一定値に維持される。
【0029】
こうして、発振周波数の僅かな変化の発生に位相同期回路12が反応して変化を解消させる、という動作が繰り返し行われる。その結果、ターゲット1の凹凸の変化に対応した制御電圧Vfの変化が得られる。言い換えれば、変位が、周波数という物理量を媒介して制御電圧Vfに変換されることになる。
【0030】
図5は、出力回路8の入出力変化を示す図である。(a)に示す制御電圧Vfは所定の閾値と比較され、(b)に示す矩形波(パルス)の出力信号となる。この信号は、図4の(a)に示すターゲット1の形状と対応しており、周期は一致する。従って、単位時間内のパルス数をカウントするか又は周期を求めることにより、ターゲット1の回転速度(回転数)を求めることができる。なお、回転検出装置として基本的に必要な機能は、ターゲット1の回転に応じて図5の(b)に示す出力信号を提供することであり、そこから回転速度を求める既知の機能は、回転検出装置の機能の一部として搭載してもよいし、外部の測定装置、演算装置等に委ねてもよい。
【0031】
以上のように、上記回転検出装置によれば、回転するターゲット1と平面コイル21との間の対向距離の変化が位相同期回路12のループにおける制御電圧Vfの変化として現れる。従って、この制御電圧Vfを取り出すことにより、ターゲット1との対向距離に応じて変化する信号を出力することができる。出力される信号に基づいて、ターゲット1の回転速度を容易に検出することができる。この回転検出装置は、回転を、電気的現象(共振周波数の変化)に対するアナログ処理のみで、制御電圧として取り出すことができるので、磁気センサでは困難な、高速な回転の検出に好適である。具体的には、300,000rpmもの極めて高速な回転の検出が可能である。
【0032】
また、磁気検出素子や光素子を要しないので、熱や汚れ等の耐環境性に優れ、かつ、低コストに製造することができる。例えば、平面コイル21を含むセンサヘッド2sは、−40℃〜200℃の温度範囲で使用可能である。
【0033】
上記の回転検出装置におけるセンサヘッド2sやターゲット1は、例えば軸受に設けることができる。図6は、玉軸受の断面図である。図において、玉軸受は、固定輪としての外輪101、回転輪としての内輪102、転動体としての玉103、当該玉103の保持器104、内外輪間の隙間を塞ぐシール105,106の他、パルサーリング100、センサヘッド2s、当該センサヘッド2sと接続されるケーブル107、ケーブル107及びセンサヘッド2sを支持するリング状の支持部材108を備えている。
【0034】
パルサーリング100は、図1のターゲット1に相当するリング状の金属部材で、その外周には、歯車状の凹凸が一定ピッチで周方向に形成されている。センサヘッド2sは、パルサーリング100との間に僅かなギャップを空けて径方向に対向している。このような構成においては、内輪102が回転するとパルサーリング100も回転する。パルサーリング100の凹凸が通過することによりセンサヘッド2s(平面コイル21)との間の対向距離の変化が繰り返し生じるので、上記の回転検出装置によって、回転速度を検出することができる。
【0035】
《第2実施形態》
上記第1実施形態では回転検出装置について説明したが、回転に限らず、変位を検出することも可能である。例えば、図1の構成において、出力回路8をコンパレータではなくA/Dコンバータやアンプに変えることによって、容易に、変位検出装置を構成することができる。
【0036】
変位の検出対象物とセンサヘッド2sの平面コイル21との間の対向距離は、制御電圧Vfと1対1の対応関係にあり、距離の変化すなわち変位に応じて制御電圧Vfが変化する。従って、予め対向距離と制御電圧Vfとの関係を求めておくことにより、制御電圧Vfから対向距離を求めることができる。この場合は、制御電圧Vfそのもの、又は、その増幅値を出力回路8の出力信号とすればよい。そこで、アナログ信号で出力する場合は、アンプで単に増幅した信号とすればよい。デジタル信号で出力する場合は、出力回路8でA/D変換を行って、デジタル値で出力すればよい。なお、この場合も、変位検出装置として基本的に必要な機能は、変位に応じて変化する出力信号を提供することであり、そこから変位を求める機能は、変位検出装置の機能の一部として搭載してもよいし、外部の測定装置、演算装置等に委ねてもよい。
【0037】
《第3実施形態》
上記第1実施形態におけるセンサヘッド2sは、インダクタンスとしての平面コイル21を含むものとしたが、これに代えて、キャパシタンスを含むセンサヘッドとしてもよい。
図7は、センサヘッドとして利用可能な同軸ケーブル200の断面図である。図において、同軸ケーブル200は、銅の内導体201、絶縁物202、及び、銅の外導体203によって構成されている。絶縁物202としては、誘電体損失を小さくするため、及び、耐熱性の点で、ポリエチレンよりも、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いたものが、より好ましい。長さは、所望のキャパシタンスが得られる長さにすればよいが、例えば60mm程度でよい。内導体201の直径は0.1〜1mm程度が好ましい。全体の外径は、1〜3mm程度が好ましい。例えば、内導体201の左端部と、これに対向するターゲット1との間のギャップ(最短距離)は、0.1〜1mmの範囲内とする。
【0038】
上記のような同軸ケーブル200は、外導体203と内導体201との間に絶縁物202を挟んでいるので、コンデンサとなる。そして、このコンデンサのキャパシタンスは、ターゲット1が有している電荷(接地していない物体は電荷を有している。)の影響を受ける。その影響の受け方は、内導体201の左端部と、ターゲット1との対向距離によって異なる。すなわち、ターゲット1との対向距離に応じて、同軸ケーブル200のキャパシタンスが変化する。
【0039】
従って、このような同軸ケーブル200を図1のセンサヘッド2sとして、電圧制御発振器2内に当該キャパシタンスとLC共振を起こす回路を設けておけば、ターゲット1との対向距離の変化に応じて共振周波数を変化させることができる。
この場合、ターゲット1の材質が金属に限定されないので、例えばプラスチックであってもよい。また、同軸ケーブルは柔軟性があるので、自在に曲げて所望の位置へ先端(端面)を配置することができる。
【0040】
《第4実施形態》
図8は、第4実施形態に係る回転検出装置の構成を示すブロック回路図である。図1との違いは、図1における基準周波数発生器6が電圧制御発振器6Aに替わっていること、図1における電圧制御発振器2が単なる発振器2Aに替わっていること、及び、位相同期回路12の構成が異なること、である。すなわち位相同期回路12は、位相比較器4からループフィルタ5、電圧制御発振器6A、分周器7を経て位相比較器4に帰還するフィードバックループとして構成されている。発振器2Aは、発振周波数を一定に維持するのではなく、センサヘッド2sの平面コイル21とターゲット1との対向距離が変化すれば、それに応じて発振周波数を変化させる。
【0041】
上記第4実施形態の構成において、位相同期回路12は、第2信号発生器10における分周器7から位相比較器4に入力される信号の位相及び周波数を、第1信号発生器9における分周器3から位相比較器4に入力される信号の位相及び周波数に合わせるように動作する。すなわち、第1実施形態における位相同期回路12は、ターゲット1側の周波数を基準値に合わせるよう制御していたが、第4実施形態における位相同期回路12は、対向距離の変化に応じて変化するターゲット1側の周波数に、基準値側の周波数が追随する、という主従逆転した制御を行う。この場合も、ターゲット1とセンサヘッド2sの平面コイル21との間の対向距離の変化が制御電圧Vfの変化として現れるので、同様に、回転を検出することができる。
【0042】
《その他》
なお、第3実施形態では、センサヘッドを構成するキャパシタンスとしての同軸ケーブルを示したが、電極と絶縁物とを交互に重ねるように多層に巻いた構成であってもよい。さらに、絶縁板を2枚の平板電極でサンドイッチ状に挟む構成、又は、それをさらに複数層にした構成であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 ターゲット(検出対象物)
2 電圧制御発振器
2s センサヘッド
6A 電圧制御発振器
9 第1信号発生器
10 第2信号発生器
11 信号発生器
12 位相同期回路
21 平面コイル
100 パルサーリング(検出対象物)
200 同軸ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物と対向してその対向距離に反応するインダクタンス又はキャパシタンスを含む回路の共振周波数に基づく周波数の第1信号を発生する第1信号発生器、及び、基準となる周波数の第2信号を発生する第2信号発生器を具備し、当該第1信号発生器及び第2信号発生器の一方に電圧制御発振器が含まれている信号発生器と、
前記第1信号及び第2信号について、位相及び周波数が相互に一致するように、前記電圧制御発振器に制御電圧を付与する位相同期回路と、
前記制御電圧に基づいて、前記検出対象物との対向距離に応じて変化する信号を出力する出力回路と
を備えていることを特徴とする変位検出装置。
【請求項2】
前記第1信号発生器は前記電圧制御発振器を含んで構成されており、
前記位相同期回路は、前記検出対象物との対向距離が変化しても前記電圧制御発振器の発振周波数が一定に維持されるように前記制御電圧を変化させる請求項1記載の変位検出装置。
【請求項3】
前記第1信号発生器は、前記検出対象物と対向する平面コイルを備えている請求項1記載の変位検出装置。
【請求項4】
前記第1信号発生器は、前記検出対象物と対向するコンデンサを備えている請求項1記載の変位検出装置。
【請求項5】
前記コンデンサは同軸ケーブルである請求項4記載の変位検出装置。
【請求項6】
回転検出の対象物である回転体に設けられ、周方向に等間隔で凹部又は凸部が形成されたターゲットと、
前記ターゲットの凹部又は凸部と対向してその対向距離に反応するインダクタンス又はキャパシタンスを含む回路の共振周波数に基づく周波数の第1信号を発生する第1信号発生器、及び、基準となる周波数の第2信号を発生する第2信号発生器を具備し、当該第1信号発生器及び第2信号発生器の一方に電圧制御発振器が含まれている信号発生器と、
前記第1信号及び第2信号について、位相及び周波数が相互に一致するように、前記電圧制御発振器に制御電圧を付与する位相同期回路と、
前記制御電圧に基づいて、前記回転体の回転により前記対向距離に応じて変化する信号を出力する出力回路と
を備えていることを特徴とする回転検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−21937(P2012−21937A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161639(P2010−161639)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(505406604)
【氏名又は名称原語表記】Alexei VINOGRADOV
【出願人】(509311780)
【Fターム(参考)】