回転機の制御装置
【課題】モータジェネレータの端子を直流電源の正極及び負極のそれぞれに接続するスイッチング素子を備えるインバータを操作することでモータジェネレータの制御量を制御するに際し、回転速度の上昇に伴って制御性を維持することが困難となること。
【解決手段】スイッチング素子の操作信号を規定する1電気角周期分のパターン波形に基づき、インバータを操作する。パターン波形のパルス間隔がデッドタイムよりも短くなる場合、隣接するパルス信号を伸張補正する。ここで、図10(a)は、第1象限におけるパターン波形について、論理「H」のパルスの間隔がデッドタイムよりも短くなった場合を示し、図10(b)は、第1象限におけるパターン波形について、論理「L」のパルスの間隔がデッドタイムよりも短くなった場合を示す。
【解決手段】スイッチング素子の操作信号を規定する1電気角周期分のパターン波形に基づき、インバータを操作する。パターン波形のパルス間隔がデッドタイムよりも短くなる場合、隣接するパルス信号を伸張補正する。ここで、図10(a)は、第1象限におけるパターン波形について、論理「H」のパルスの間隔がデッドタイムよりも短くなった場合を示し、図10(b)は、第1象限におけるパターン波形について、論理「L」のパルスの間隔がデッドタイムよりも短くなった場合を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機の端子を直流電源の正極及び負極のそれぞれに接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、3相電動機の各相に流れる電流を指令値にフィードバック制御すべく、各相に印加すべき電圧の指令値(指令電圧)を算出し、算出される指令電圧とキャリアとの大小に基づきインバータのスイッチング素子を操作するPWM制御を行うものも実用化されている。これにより、3相電動機の各相に印加される電圧を指令電圧とすることができ、ひいては各相に流れる電流を所望に制御することができる。
【0003】
ただし、3相電動機の高回転速度領域においては、指令電圧が上昇し、その振幅がインバータの入力電圧の「1/2」以上となることで、インバータの実際の出力電圧を指令電圧とすることができなくなる。ここで、3相電動機の高回転速度領域においては、インバータのスイッチング素子のオン・オフ周期と3相電動機の電気角の回転周期とを略一致させるいわゆる矩形波制御を行うことも実用化されている。ただし、矩形波制御の電圧利用率は、上記PWM制御における指令電圧の振幅がインバータの入力電圧の「1/2」の値となる時点での電圧利用率と比較して不連続的に大きいものとなっている。
【0004】
そこで従来は、例えば下記特許文献1に見られるように、3相電動機の指令電圧の振幅がインバータの入力電圧の「1/2」以上となる場合、電流フィードバック制御のためのdq軸上での指令電圧に基づき算出される位相と、ROMに格納されたパルスパターンとに基づき、インバータを操作することも提案されている。これにより、電圧利用率を、矩形波制御の電圧利用率へと上昇させていくことができる。
【0005】
更に、上記文献には、矩形波制御となるまでのパルスパターンを、高調波成分が最小となるように設計することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−47100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、インバータの上側アーム及び下側アームの短絡を防止すべく、上側アームのスイッチング素子及び下側アームのスイッチング素子のいずれか一方に対するオン操作指令タイミングといずれか他方に対するオフ操作指令タイミングとの間には、通常、デッドタイムが設けられる。このため、インバータのスイッチング素子をオン状態とする期間やオフ状態とする期間は、デッドタイムよりも長い期間であることが要求される。ここで、上記パルスパターンによってインバータを操作する場合、3相電動機の回転速度が上昇することで、パルスパターンによって規定される最小パルス間隔がデッドタイム以下となるおそれがある。そしてこの場合には、パルスパターンの指示通りにスイッチング素子を操作することができなくなる。そして、この場合には、3相電動機に印加する電圧が所望の電圧に対して誤差を有するものとなるため、3相電動機の制御性が低下する。
【0008】
なお、上記パルスパターンを有するものに限らず、操作信号パターンを生成してこれに基づき電力変換回路を操作するものにあっては、回転速度の上昇に伴って回転機の制御性が低下するおそれのあるこうした実情も概ね共通したものとなっている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、回転機の端子を直流電源の正極及び負極のそれぞれに接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御するに際し、回転機の回転速度の上昇にかかわらず、制御性を維持することのできる回転機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0011】
請求項1記載の発明は、回転機の端子を直流電源の正極及び負極のそれぞれに接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、矩形波制御よりも小さい電圧利用率についての前記電力変換回路の出力電圧のパターン波形を記憶する記憶手段と、該記憶されるパターン波形に基づき前記スイッチング素子を操作する手段とを備え、前記パターン波形は、電気角の1周期の中央に対して対称性を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるインバータの操作信号の生成に関する処理を示すブロック図。
【図3】同実施形態にかかる電圧ベクトルノルムの設定手法を示す図。
【図4】同実施形態にかかる電圧ベクトルノルムの設定手法を示す図。
【図5】同実施形態にかかるトルクと速度規格化ノルムとの関係を示す図。
【図6】同実施形態にかかる操作信号生成部の処理の詳細を示すブロック図。
【図7】同実施形態にかかるパターン波形の一例を示すタイムチャート。
【図8】スイッチング素子のオン状態とオフ状態との切替に要する時間を示すタイムチャート。
【図9】上記実施形態にかかるデッドタイムの生成手法を示す図。
【図10】同実施形態にかかるパターン波形の補正手法を説明するタイムチャート。
【図11】同実施形態にかかるパターン波形の補正態様を例示するタイムチャート。
【図12】同実施形態にかかるパターン波形の補正処理手順を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる回転機の制御装置をハイブリッド車の制御装置に適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に、本実施形態にかかるモータジェネレータの制御システムの全体構成を示す。モータジェネレータ10は、3相の永久磁石同期モータである。また、モータジェネレータ10は、突極性を有する回転機(突極機)である。詳しくは、モータジェネレータ10は、埋め込み磁石同期モータ(IPMSM)である。
【0015】
モータジェネレータ10は、インバータIV及び昇圧コンバータCVを介して高圧バッテリ12に接続されている。ここで、昇圧コンバータCVは、高圧バッテリ12の電圧(
例えば「288V」)を所定の電圧(例えば「666V」)を上限として昇圧するものである。一方、インバータIVは、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnとして、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードDup,Dun,Dvp,Dvn,Dwp,Dwnが逆並列に接続されている。
【0016】
本実施形態では、モータジェネレータ10やインバータIVの状態を検出する検出手段として、以下のものを備えている。まずモータジェネレータ10の回転角度θ(電気角)を検出する回転角度センサ15を備えている。また、モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwを検出する電流センサ16,17,18を備えている。更に、インバータIVの入力電圧(電源電圧VDC)を検出する電圧センサ19を備えている。
【0017】
上記各種センサの検出値は、インターフェース13を介して低圧システムを構成する制御装置14に取り込まれる。制御装置14では、これら各種センサの検出値に基づき、インバータIVやコンバータCVを操作する操作信号を生成して出力する。ここで、インバータIVのスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnを操作する信号が、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnである。また、昇圧コンバータCVの2つのスイッチング素子を操作する信号が、操作信号gup,gcnである。
【0018】
図2に、上記インバータIVの操作信号の生成に関する処理のブロック図を示す。
【0019】
図示されるように、本実施形態では、電流フィードバック制御部20及びトルクフィードバック制御部30を備えている。以下では、「電流フィードバック制御部20の処理」、「トルクフィードバック制御部30の処理」、「電流フィードバック制御部20の処理とトルクフィードバック制御部30の処理との切り替え処理」、「トルクフィードバック制御部30の設計」の順に説明した後、本実施形態の中心部分となる「操作信号生成部38の処理の詳細」について説明する。
<電流フィードバック制御部20の処理>
モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwは、2相変換部40において、回転2相座標系の実電流であるd軸上の実電流idとq軸上の実電流iqとに変換される。一方、指令電流設定部22は、要求トルクTdに基づき、回転2相座標系の電流の指令値であるd軸上の指令電流idc及びq軸上の指令電流iqcを設定する。ここでは、例えば最大トルク制御を実現するように指令電流idc,iqcを設定すればよい。フィードバック制御部24は、d軸上の実電流idを指令電流idcにフィードバック制御するための操作量としてのd軸上の電圧を算出する。一方、フィードバック制御部25は、q軸上の実電流iqを指令電流iqcにフィードバック制御するための操作量としてのq軸上の電圧を算出する。詳しくは、フィードバック制御部24,25では、比例積分制御を用いて上記算出を行う。
【0020】
一方、非干渉制御部26では、実電流id,iq及び電気角速度ωに基づき、上記フィードバック制御部24,25の出力をフィードフォワード補正するための項を算出する。これにより、フィードバック制御部24の出力が非干渉制御部26によって補正された値が、d軸上の指令電圧vdcとなる。また、フィードバック制御部25の出力が非干渉制御部26によって補正された値が、q軸上の指令電圧vqcとなる。
【0021】
3相変換部28では、回転2相座標系の指令電圧vdc、vqcを、3相の指令電圧vuc,vvc,vwcに変換する。PWM信号生成部29では、3相の指令電圧vuc,vvc,vwcと、電源電圧VDCとに基づき、PWM処理によって、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する。これは、例えば、指令電圧vuc,vvc,vwcのそれぞれを電源電圧VDCにて規格化したものと三角波形状のキャリアとの大小比較に基づき行えばよい。
<トルクフィードバック制御部30の処理>
トルク推定器42では、回転2相座標系の実電流id,iqに基づき、モータジェネレータ10のトルクの推定値である推定トルクTeを算出する。一方、偏差算出部32では、推定トルクTeに対する要求トルクTdの差を算出する。位相設定部34は、偏差算出部32の出力の比例積分演算に基づき、インバータIVの出力電圧の回転2相座標系での位相δを設定する。ここでは、要求トルクTdに対して推定トルクTeが不足する場合に位相δを進角させて且つ、要求トルクTdに対して推定トルクTeが過剰となる場合に、位相δを遅角させるようにする。
ノルム設定部36では、モータジェネレータ10の電気角速度ωと、要求トルクTdとに基づき、回転2相座標系におけるインバータIVの出力電圧ベクトルのノルムVnを設定する。ここで、ベクトルのノルムは、ベクトルの各成分の2乗の和の平方根によって定義される。
【0022】
一方、操作信号生成部38では、上記位相設定部34の設定する位相δと、電気角速度ωと、ノルム設定部36の設定するノルムVnと、電源電圧VDCと、回転角度θとに基づき、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する。
<電流フィードバック制御部20の処理とトルクフィードバック制御部30の処理との切り替え処理>
本実施形態では、切替制御部46によって、電流フィードバック制御部20による制御を行うか、トルクフィードバック制御部30による制御を行うかを切り替える。特に、本実施形態では、電圧利用率が小さい領域では、電流フィードバック制御部20による制御を行い、電圧利用率が大きい領域では、トルクフィードバック制御部30による制御を行う。これは、電圧利用率が小さい領域では、電流フィードバック制御部20による制御の方がトルクの応答性が高い反面、電圧利用率が大きい領域では、トルクフィードバック制御部30による制御の方がトルクの応答性が高いことに鑑みたものである。詳しくは、本実施形態では、電圧利用率が「0.61」以下である領域において、電流フィードバック制御部20による制御を行う。これは、電流フィードバック制御部20による指令電圧vuc,vvc,vwcを電源電圧VDCによって実現できる上限の電圧利用率が「0.61」程度であることを理由としている。
<トルクフィードバック制御部30の設計>
先の図2に示したように、トルクフィードバック制御部30では、要求トルクTd及び電気角速度ωに基づき、ノルムVnを設定した。これにより、要求トルクTdが与えられた場合に、比較的自由にノルムVnを設定することができる。このため、例えばノルムVnを極力小さくすることで、電圧利用率を抑制することができる。そしてこの場合には、操作信号生成部38の生成する操作信号波形として、よりパルス数の多い波形を選択することなどができ、ひいてはインバータIVの出力電圧を正弦波形状の電圧により近づけることができる。このため、インバータIVの出力電圧の高調波歪を低減することができ、ひいては高調波電流を抑制することが可能となる。
【0023】
以下、本実施形態にかかるノルム設定部36によるノルムVnの設定について説明する。図3に、本実施形態において、モータジェネレータ10の力行時にノルムVnに課せられる基本的な制約を示す。図示されるように、本実施形態では、ノルムVnを、境界線BL1〜BL4によって囲われる領域内とするとの制約が課せられている。ここで、境界線BL4は、電圧利用率が「0.78」であること示すものである。これは、矩形波制御の電圧利用率が実現可能な電圧利用率の最大値であることに対応している。以下では、境界線BL1〜BL3のそれぞれに対応する条件の導出に先立って、モータジェネレータ10のトルクTと電流ベクトル(id,iq)とを、ノルムVn、位相δ及び電気角速度ωによって表現する式を導出する。
【0024】
モータジェネレータ10のトルクTは、電機子巻線鎖交磁束数Φ、q軸インダクタンスLq,d軸インダクタンスLd、抵抗R、及び極対数Pを用いて、下記の式(c1)にて表現される。
【0025】
【数1】
また、電圧方程式は、以下の式(c2)となる。
【0026】
【数2】
上記の式(c2)から、下記の式(c3)を得る。
【0027】
【数3】
上記の式(c3)を上記の式(c1)に代入することで、下記の式(c4)を得る。
【0028】
【数4】
ここで、図4に示す境界線BL1に対応する条件である「トルクTの位相δによる偏微分が正となるとの条件」は、上記の式(c4)に基づき、下記の式(c5a)及び(c5b)によって表現される。この条件は、要求トルクTdに対して推定トルクTeが不足する場合に、位相δを進角させることによってその不足を低減させて且つ、要求トルクTdに対して推定トルクTeが過剰である場合に、位相δを遅角させることによってその過剰分を低減させることを可能とするための条件である。
【0029】
【数5】
なお、本実施形態では、位相δは、力行時には、「0≦δ<π/2」、回生時には、「π/2<δ≦3π/2」となるように制御設計をするとの前提を設けているため、位相δが「3π/2」以上となる条件を削除した。
【0030】
また、境界線BL2に対応する条件である「d軸電流がゼロ以下であるとの条件」は、下記の式(c6)等よって表現される。
【0031】
【数6】
また、境界線BL3に対応する条件である「q軸電流が力行時においてはゼロ以上である旨の条件」は、下記の式(c7)によって表現される。
【0032】
【数7】
なお、回生時においては、q軸電流がゼロ以下であるとの条件を課す。
【0033】
本実施形態では、先の図3に例示するような許容領域内において、ノルムVnを設定する。このノルムVnは、位相δと電気角速度ωを設定しても一義的には定まらない。このため、ノルムVnの設定に際してはある程度の自由度があることとなるため、ノルムVnを自由に設計することができる。ここで、インバータIVの出力電圧の高調波歪を抑制する観点からは、ノルムVnを極力低減することが望ましい。ノルムVnを最小とするためには、トルクTのノルムVnによる偏微分係数がゼロとなるとの条件を課すことが要求される。ただし、この場合、上記モデルを用いる場合には、位相δとノルムVnとの間に1対1の対応関係を持たせることができないことが発明者らによって見出されている。
【0034】
そこで、本実施形態では、最小の電流で最大のトルクを実現する最大トルク制御を行うことができるようにノルムVnを設定する。これによっても、要求トルクTdを実現するうえでノルムVnを極力低減することができる。
【0035】
図4に、本実施形態にかかるノルム設定部36の詳細を示す。
【0036】
図示されるように、本実施形態では、最大トルク制御を実行すべく下記の式(c8)にて表現される条件を課す。ここで、最大トルク制御とは、最小の電流で最大のトルクを実現する制御であり、ここでいう最大トルクとは、力行制御時には正の最大トルク、回生制御時には、負であって絶対値が最大のトルクを意味する。
【0037】
【数8】
この式は、例えば「埋込磁石同期モータの設計と制御:武田洋次ら オーム社」の23ページに記載されている。上記の式(c8)から、上記の式(c3)によって電流ベクトル(id,iq)を消去することで、ノルムVnを、電気角速度ωと位相δとの関数とすることができる。特に、トルクフィードバック制御を行う領域は電気角速度ωが大きい領域のため、抵抗Rを無視することで、以下の式(c9)とすることができる。
【0038】
【数9】
上記の式(c9)では、ノルムVnが、位相δ及び電気角速度ωの関数とされている。以下では、これに基づき、ノルムVnを、要求トルクTdと電気角速度ωとによって表現することを考える。上記の式(c4)において、抵抗Rが小さいとする近似を行うことで、下記の式(c10)を得る。
【0039】
【数10】
上記の式(c10)における関数fは、位相δを独立変数として、電気角速度ωによって規格化されたノルムVn(速度規格化ノルム)を従属変数とするものである。ここで、ノルムVnが、電気角速度ωに依存しない関数fと電気角速度ωとの積として定義できるのは、上記の式(c9)を根拠としている。すなわち、抵抗Rが無視できるとの近似を前提としている。上記の式(c10)によれば、位相δを独立変数として且つトルクTを従属変数とする関数gを定義することができる。このため、関数gの逆関数を用いることで、上記関数fの独立変数を位相δからトルクTに変換することができる。これにより、トルクTを独立変数として且つ速度規格化ノルム(Vn/ω)を従属変数とする関数hを定義することができる。
【0040】
図5(a)に上記関数hを示す。なお、この関数hは、必ずしも解析的に求める必要はない。ちなみに、図5(a)に示すグラフは、図5(b)示すように、位相δと速度規格化ノルムとの関係を示す関数f、及び位相δとトルクTとの関係を示す関数gを数値計算によって算出することで算出されたものである。これにより、要求トルクTdとノルムVnとの関係を、ノルムVnが先の図4に示した領域内となるようにして、予めマップ化しておくことが可能となる。そしてこれにより、要求トルクTdと電気角速度ωが与えられた際に、最小の電流にてモータジェネレータ10を駆動することができる。
【0041】
なお、本明細書において、「マップ」とは、離散的な入力値のそれぞれに対して出力値が1つ定義された写像のことである。
<操作信号生成部38の処理の詳細>
図6に、本実施形態にかかる操作信号生成部38の詳細を示す。図示されるように、操作信号生成部38は、ノルムVnと電源電圧VDCとに基づき、電圧利用率を算出する電圧利用率算出部38aを備えている。電圧利用率算出部38aの出力は、パルスパターン選択部38bに取り込まれる。パルスパターン選択部38bは、電圧利用率毎に、各相の一対のスイッチング素子についての1電気角周期分の操作信号を生成するためのパルスパターン(パターン波形)を記憶している。詳しくは、パターン波形は、その互いに相違する論理値によって、上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpのオン期間と、下側アームのスイッチング素子Sun,Svn,Swnのオン期間とを指定する。具体的には、本実施形態では、論理値「H」によって上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpのオン期間を規定し、論理値「L」によって下側アームのスイッチング素子Sun,Svn,Swnのオン期間を規定する。
【0042】
特に本実施形態では、パターン波形の論理値を、図示されるように、論理反転タイミングの位相角として記憶する。すなわち、位相角αi(i=2n:n=1,2,3、…)は、立ち上がりエッジを規定し、位相角αj(j=2n−1n=1,2,3、…)は、立ち下がりエッジを規定する。このように、偶数でラベリングされた位相角αiと、奇数でラベリングされた位相角αjとを用いることで、パターン波形の論理反転タイミングを記憶することができる。ちなみに、本実施形態では、電圧利用率が「0.61」から「0.78」の領域について、所定間隔毎に、各別のパターン波形が記憶されている。これは、本実施形態では、電圧利用率が「0.61」以下の領域では、電流フィードバック制御部20による制御がなされることに基づいた設定である。
【0043】
図7に、上記パターン波形を例示する。この例では、位相角α1〜α22によって規定されるパターン波形を例示している。図示されるように、パターン波形は、高電位側のスイッチング素子Sup,Svp,Swpがオン状態とされる期間と低電位側のスイッチング素子Sun,Svn,Swnがオン状態とされる期間とが半々となる波形となっている。これは、インバータIVの出力電圧を電気角の1回転周期で均衡の取れたものとするための設定である。更に、パターン波形は、電気角の1回転周期の中央(180°)に対して対称性を有するものとなっている。詳しくは、中央に対して等距離にある一対のタイミングの論理値が逆となるものとなっている。これは、インバータIVの出力電圧を、電気角を直接の独立変数とする正弦関数(sinθ)に極力近似させるための設定である。換言すれば、位相ずれのない正弦関数に極力近似させるための設定である。
【0044】
なお、図7に示した例では、第1象限(0〜90°)及び第2象限(90°〜180°)における論理「H」のパルス数が5となるものを例示したがこれに限らない。例えば、電圧利用率に応じて、上記パルス数が3、5、7、9,11等となるように設定してもよい。ここで、正弦波形状の電圧を近似する観点から、第1象限及び第2象限における論理「H」のパルス数は奇数個として且つ、第3象限及び第4象限における論理「H」のパルス数は偶数個とする。更に、論理「L」のパルス間隔は、電気角の「1/4」周期毎に、減少、増加を繰り返して且つ、論理「H」のパルス間隔は、電気角の「1/4」周期毎に、増加、減少を繰り返す。換言すれば、論理「L」のパルス間隔は、第1象限及び第4象限において減少して且つ、第2象限及び第3象限において増加し、論理「H」のパルス間隔は、第1象限及び第4象限において増加して且つ、第2象限及び第3象限において減少する。ここで、象限間で連続するパルスについては、特定の象限におけるパルス間隔を、隣接する象限間にまたがって連続するパルス間隔と定義する。すなわち、第1象限及び第2象限において最もパルス間隔の大きい論理「H」のパルスのパルス間隔は、位相角α5〜α6のパルス間隔とする。なお、上記パターン波形の設定に際しては、パターン波形のフーリエ級数展開の高調波成分が極力小さくなるように適合することが望ましい。
【0045】
上記態様にてパターン波形を設定することで、インバータIVの出力電圧を、1電気角周期毎に、位相ずれのない正弦関数に極力近似させることができる。
【0046】
ところで、パターン波形に基づき操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する際には、上下アームの短絡を確実に回避すべく、デッドタイムが生成される。以下、これについて詳述する。
【0047】
図8(a)は、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnのいずれかを示し、図8(b)は、スイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnのいずれかの入出力端子の電圧の推移を示す。図示されるように、操作信号が論理「H」とされることで、入出力端子間の電圧は、漸減し、やがて安定する。このときの電圧は、略ゼロである。ここで、操作信号が論理「H」となるタイミングから入出力端子間の電圧の安定タイミングまでの所要時間は、オン操作のスイッチング遅れ時間Δtonである。一方、操作信号が論理「L」とされることで、入出力端子間の電圧が漸増し、所定の高電圧で安定する。ここで、操作信号が論理「L」となるタイミングから入出力端子間の電圧が上昇して安定するまでの所要時間は、オフ操作のスイッチング遅れ時間Δtoffである。
【0048】
上記遅れ時間Δton、Δtoffがあるにもかかわらず、上下アームの短絡を確実に回避すべく、本実施形態では、図9に示す態様にてデッドタイムを設ける。詳しくは、図9(a)は、パターン波形の推移を示し、図9(b)は、上側アームの操作信号gup,gvp,gwpの推移を示し、図9(c)は、下側アームの操作信号gun,gvn,gwnの推移を示す。
【0049】
図示されるように、パターン波形のエッジに対して、上側アームの操作信号gup,gvp,gwpの立ち上がりエッジや、下側アームの操作信号gun,gvn,gwnの立ち上がりエッジを、デッドタイムDTだけ遅延させる。これに対し、上側アームの操作信号gup,gvp,gwpの立ち下がりエッジや、下側アームの操作信号gun,gvn,gwnの立ち下がりエッジは、パターン波形のエッジに同期させる。ここで本実施形態では、デッドタイムDTを、上記遅れ時間Δton、Δtoffのうちの大きい方とする。
【0050】
このようにデッドタイムDTを設けることで、上下アームの短絡を確実に回避することができる。ただし、この場合、パターン波形のパルス間隔を時間換算した場合に、デッドタイムDT以下となるものについては、そのパルスが消失することとなる。
【0051】
そこで本実施形態では、パターン波形によって規定されるスイッチング素子のオン期間のうちにデッドタイムDTによって消失するものがある場合、パターン波形を補正する処理を行う。以下、これについて詳述する。
【0052】
図10(a)に、第1、第4象限において、位相角α(i−1)、αi間に渡って論理「H」となるパルスが消失する場合のパターン波形の補正手法を例示する。図示されるように、この場合、消失する論理「H」パルスに隣接する進角側のパルスの立ち上がりエッジを補正することで、この隣接する進角側の論理「H」のパルスのパルス間隔を伸張補正する。特に、この伸張補正は、パルスの消失に起因したパターン波形のフーリエ級数の基本波成分の変化を補償するように行う。これは、伸張補正量xに渡る基本波成分の積分値が、位相角α(i−1)、αiの角度間隔に渡る基本波成分の積分値に一致するように伸張補正量xを算出することで実現できる。ただし、本実施形態では、この積分値を解析的に求める代わりに、台形近似を行う。
【0053】
すなわち、伸張補正量xに渡る基本波成分の積分値に比例した量は、台形近似によって、「xsinα(i+1)」と近似できる。また、位相角α(i−1)、αiの角度間隔に渡る基本波成分の積分値に比例した量は、台形近似によって、「{αi―α(i−1)}sinαi」と近似できる。これらが等しいとすることで、下記の式(c11)を得る。
【0054】
【数11】
一方、図10(b)に、第1、第4象限において、位相角α(i−1)、αi間に渡って論理「L」となるパルスが消失する場合のパターン波形の補正手法を例示する。図示されるように、この場合、消失する論理「L」パルスに隣接する遅角側のパルスの立ち上がりエッジを補正することで、この隣接する遅角側の論理「L」のパルスのパルス間隔を伸張補正する。特に、この伸張補正は、パルスの消失に起因したパターン波形のフーリエ級数の基本波成分の変化を補償するように行う。これは、伸張補正量xに渡る基本波成分の積分値が、位相角α(i−1)、αiの角度間隔に渡る基本波成分の積分値に一致するように伸張補正量xを算出することで実現できる。ただし、ここでも、この積分値を解析的に求める代わりに、台形近似を行う。
【0055】
すなわち、伸張補正量xに渡る基本波成分の積分値に比例した量は、台形近似によって、「xsinα(i−2)」と近似できる。また、位相角α(i−1)、αiの角度間隔に渡る基本波成分の積分値に比例した量は、台形近似によって、「{αi―α(i−1)}sinα(i−1)」と近似できる。これらが等しいとすることで、下記の式(c12)を得る。
【0056】
【数12】
ちなみに、台形近似を用いることは、本実施形態のように制御装置14が正弦関数のマップのみを備えている場合には、特に有効である。すなわち、解析的に積分を行う場合には、余弦関数を計算することとなるが、台形近似を行うことで、正弦関数にて積分値を近似的に求めることができる。
【0057】
ここで、第1象限と第3象限とは、これら象限の最遅角位置を基準として同一の位相角を有するもの同士で論理値が互いに逆となり、第2象限及び第4象限とも、これら象限の最遅角位置を基準として同一の位相角を有するもの同士で論理値が互いに逆となる。このため、図11に示すように、第2象限及び第3象限において論理「H」のパルスが消失する場合には、上記の式(c12)を用いてパターン波形の立ち下がりエッジを補正することで、パルス間隔を伸張補正し、論理「L」のパルスが消失する場合には、上記の式(c11)を用いて、パターン波形の立ち下がりエッジを補正することで、パルス間隔を伸張補正する。すなわち、第2象限及び第3象限において論理「H」のパルスが消失する場合には、隣接する遅角側のパルスの立ち下がりエッジを遅角側に補正し、第2象限及び第3象限において論理「L」のパルスが消失する場合には、隣接する進角側のパルスの立ち下がりエッジを進角側に補正する。
【0058】
こうした補正を実施すべく、操作信号生成部38は、先の図6に示すように、パルスパターン選択部38bの出力する位相角α1、α2のベクトルを補正するパターン補正部38cを備える。そして、こうして補正されたパターン波形に基づき、相補信号生成部38eでは、上下アームの操作信号を生成する。この際、相補信号生成部38eでは、補正部38dにおいて回転角度θが位相δにて補正された信号を利用する。これにより、位相設定部34の設定する位相δに基づき、パターン波形によって規定される操作信号を好適に出力することができる。
【0059】
図12に、本実施形態にかかるパターン波形の補正処理の手順を示す。この処理は、パターン補正部38cによって例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0060】
この一連の処理では、まずステップS10において、上記パターン波形によって規定される各パルスのパルス間隔hiを算出する。ここで、パルス間隔hiは、「αi―α(i−1)」にて定義される。更に、変数iを0とする。続くステップS12においては、変数iをインクリメントする。続くステップS14においては、パルス間隔hiが、「ωDT」よりも大きいか否かを判断する。そして、パルス間隔hiの方が大きいと判断される場合、ステップS16において、変数iがnであるか否かを判断する。この処理は、パターン波形によって規定される全てのパルス間隔が、デッドタイムによって消失しないか否かを判断するためのものである。そして、ステップS16において否定判断される場合、ステップS12に戻る。
【0061】
これに対し、ステップS14においてパルス間隔hiが「ωDT」以下であると判断される場合、ステップS18において、変数iが「1」であるか否かを判断する。この処理は、矩形波制御を実行するか否かを判断するためのものである。すなわち、第1象限においては、論理「L」のパルス間隔は、徐々に短くなるため、最初のパルス間隔h1が最大となる。このため、最初のパルス間隔h1すら消失する場合には、もはやパターン波形を修正したのでは対処できないため、矩形波制御に移行する(ステップS32)。すなわち、立ち上がりエッジの位相角を「0°」とし、立ち下がりエッジの位相角を「180°」とすることで、1電気角周期において上側アームのスイッチング素子と下側アームのスイッチング素子とを各1回オン状態とする。
【0062】
これに対し、ステップS18において否定判断される場合には、ステップS20に移行する。ステップS20では、変数iが奇数であるか否かを判断する。この処理は、消失するパルスが論理「L」のパルスであるのか否かを判断するためのものである。そして、消失するパルスが論理「L」のパルスであると判断される場合、ステップS22において、パルス間隔hiが第1象限又は第4象限にあるか否かを判断する。この処理は、上記の式(c12)を用いて伸張補正を行うか否かを判断するためのものである。
【0063】
一方、ステップS20において否定判断される場合には、消失するパルスが論理「H」のパルスであると判断し、ステップS26に移行する。ステップS26においては、パルス間隔hiが第1象限又は第4象限のものであるか否かを判断する。この処理は、上記の式(c11)を用いて伸張補正を行うか否かを判断するためのものである。
【0064】
そして、ステップS22において肯定判断される場合や、ステップS26において否定判断される場合には、ステップS24において、上記の式(c12)に基づき、位相角α(i−1)を進角補正する。これに対し、ステップS22において否定判断される場合や、ステップS26において肯定判断される場合には、ステップS28において、上記の式(c11)に基づき、位相角α(i+1)を遅角補正する。
【0065】
そして、ステップS24、S28の処理が完了する場合には、ステップS30において、位相角αi、α(i−1)を消去し、α(i+1)〜αnを順次、α(i−1)〜α(n−2)とする。そして、ステップS30の処理が完了する場合、上記ステップS10に戻る。
【0066】
なお、上記ステップS32の処理が完了する場合や、ステップS16において肯定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0067】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0068】
(1)パターン波形によって規定されるパルスに消失するものがある場合、パターン波形に関するフーリエ級数の基本波成分を保持すべく、パルスを補正した。これにより、パルスパターン選択部38bによって選択されたパターン波形に関する基本波成分を維持することができる。
【0069】
(2)消失パルスに起因した基本波成分のずれを補償すべく、消失パルスに隣接するパルスを伸長補正した。これにより、パルスパターン選択部38bによって選択されたパターン波形の変更を極力抑制しつつも、選択されたパターン波形に関する基本波成分を維持することができる。
【0070】
(3)パルスパターン選択部38bによって、1電気角周期分のパターン波形に関する情報を記憶した。これにより、基本波成分の周期と同一の周期毎にパターン波形が生成されるため、基本波成分を適切に設計したり、上記補正を適切に行ったりすることができる。
【0071】
(4)パターン波形を、1電気角周期の中央に対して対称性を有するものとした。これにより、インバータIVの出力電圧を、正弦波形状の電圧を好適に模擬したものとすることができる。
【0072】
(5)パターン波形を、論理「H」のパルスのパルス間隔が「1/4」周期で増加、減少を繰り返して且つ論理「L」のパルスのパルス間隔が「1/4」周期で減少、増加を繰り返すものとした。これにより、インバータIVの出力電圧を、電気角を直接の独立変数とする正弦関数又は余弦関数を好適に模擬したものとすることができる。
【0073】
(6)パターン波形を、1電気角周期の中央から互いに逆方向に等回転角度だけ離間した一対のタイミングのうちの一方と他方とで論理値が逆の信号とした。これにより、インバータIVの出力電圧を、電気角を直接の独立変数とする正弦関数を好適に模擬したものとすることができる。このため、電圧利用率の上昇に伴って、操作信号パターンが矩形波制御のためのパターンへと移行する際、パターン波形の急激な変化を抑制しつつも、矩形波制御のためのパターンを電気角の1周期内に上側アームのスイッチング素子と下側アームのスイッチング素子とを各1回オン状態とするパターンとすることができる。
【0074】
(7)特定の象限におけるパターン波形の論理「H」のパルスに消失するものがある場合、その象限内における消失パルスに隣接する論理「H」のパルスを伸長補正し、特定の象限におけるパターン波形の論理「L」のパルスに消失するものがある場合、その象限内における消失パルスに隣接する論理「L」のパルスを伸張補正した。これにより、パターン波形についての上記伸張補正に起因した変化を極力抑制することができ、ひいては電流歪を好適に抑制することができる。
【0075】
(8)任意の象限における論理「H」のパルスのパルス間隔の最大値と、論理「L」のパルスのパルス間隔の最大値とのうちの小さい方が消失すると判断される場合、位相角「0°」から「180°」までを論理「H」とする矩形波制御を行った。これにより、パターン波形によって規定されるパルスの実現が過度に困難な状況下にあっても、モータジェネレータ10の制御性を高く維持することができる。
【0076】
(9)消失すると判断されるパルス間隔に渡る基本波の積分値と、伸長補正される期間に渡る基本波の積分値とが等しくなるように伸長補正を行った。これにより、消失パルスに起因する基本波成分の誤差を、伸張補正によって好適に補償することができる。
【0077】
(10)パターン波形によって規定されるパルスが消失するか否かを、デッドタイムに基づき判断した。これにより、パルスが消失するか否かを好適に判断することができる。
【0078】
(11)パターン波形のエッジに対して上側アームのスイッチング素子の操作信号の立ち上がりエッジと下側アームのスイッチング素子の操作信号の立ち上がりエッジとの双方をデッドタイムだけずらして且つ、パルス間隔hiが「ωDT」以下となる場合にパルスが消失すると判断した。これにより、パルスが消失するか否かを好適に判断することができる。
【0079】
(12)要求トルクTdと電気角速度ωとを入力として、回転2相座標系におけるインバータIVの出力電圧ベクトルの位相δとノルムVnとを設定し、設定されるノルムVnに基づき、これを実現するためのパターン波形を予め記憶されたもののうちから検索して出力するようにした。これにより、ベクトルのノルムを要求トルクTdと電気角速度ωとに基づき自由に設計することができる。このため、例えば電流フィードバック制御を行う場合と比較して、パターン波形の設計の自由度も向上し、ひいてはモータジェネレータ10の制御性を高く維持することができる。また、パターン波形を予め記憶するため、パターン波形を予め最適なパターンに適合しておくこともできる。
【0080】
(13)電流フィードバック制御において変調率が「1」となる電圧利用率よりも大きい電圧利用率となる領域において、トルクフィードバック制御部30による制御を行った。これにより、電圧利用率に応じてより適切な制御を行うことができる。
【0081】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0082】
・実現できないと判断される1又は複数のオン期間のうちの1つの期間に渡る基本波成分の積分値と、伸張補正される期間に渡る基本波成分の積分値とを一致させるように伸張補正期間を算出する手法としては、上記実施形態で例示したように、台形近似を用いるものに限らない。例えば、積分演算を直接行ってもよい。
【0083】
・パターン波形としては、基本波成分として、電気角の1周期に渡る正弦関数を仮定するものに限らず、例えば余弦関数を仮定するものであってもよい。この場合、上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpをオン状態とする期間が、「1/4」周期毎に減少、増加を繰り返して且つ、下側アームのスイッチング素子Sun,Svn,Swnをオン状態とする期間が、「1/4」周期毎に増加、減少を繰り返すものとなる。このため、この場合であっても、同一象限内において実現できないと判断される1又は複数のオン期間のうちの1つに隣接する期間を伸長補正する手法を用いることで適切な補正を行うことができる。特に、こうした処理は、電気角の小さい値に対応する期間から順に実現可能であるか否かを判断し、実現できないと判断される都度伸張補正することで行うことができる。
【0084】
・パターン波形としては、1電気角周期に渡るスイッチング素子の操作信号を規定するものに限らない。例えば、2電気角周期に渡る操作信号を規定するものであってもよい。
【0085】
・上記実施形態では、電気角の小さい側から順にパターン波形の論理「H」期間や論理「L」期間を実現できるか否かを判断し、実現できないと判断される都度、隣接する期間を伸張補正したがこれに限らない。例えば、1電気角周期内において、論理「H」期間や論理「L」期間のうちの短いものから順に実現できるか否かの判断を行い、その判断結果に応じて伸張補正を行ってもよい。
【0086】
・スイッチング素子のパターン波形を生成する生成手段としては、予め記憶されたパターン情報から電圧利用率に応じたものを検索して出力する手段に限らない。例えば、正弦波形状の指令電圧とキャリアとの大小関係の比較に基づき操作信号を生成する周知のPWM処理を行うものであってもよい。こうした周知のPWM処理は、通常、キャリアの1周期毎に操作信号を生成するものであるが、これに代えて、指令電圧をキャリアの1周期毎に更新しつつも例えば1電気角周期毎に操作信号を生成するようにするなら、PWM処理によって規定されるオン期間を実現できない場合にこれを補償することができる。
【0087】
・デッドタイムの生成手法としては、先の図8に例示したものに限らない。例えば、パターン波形のエッジに対して、上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpの操作信号の立ち下がりエッジと下側アームのスイッチング素子Sun,Svn、Swnの操作信号の立ち下がりエッジとをデッドタイムだけずらしてもよい。更に、パターン波形のエッジに対して、上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpと下側アームのスイッチング素子Sun,Svn、Swnとの双方の操作信号についてのいずれか一方のエッジをずらす手法にも限らない。例えば、パターン波形の各エッジに対して、上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpと下側アームのスイッチング素子Sun,Svn、Swnとの双方の操作信号をデッドタイムの半分ずつずらしてもよい。ただし、この場合、パターン波形の各論理「H」又は論理「L」の期間が、「ωDT/2」以下となることで、この期間を実現できないと判断することが望ましい。
【0088】
・上記実施形態では、パターン波形によって規定されるオン期間が消失する場合を、同オン期間を実現できない場合と定義したが、これに限らない。例えば、スイッチング素子がオン状態とされるまでの遅延によって、そのオン期間が所定以上減少する場合にも、伸張補正を行ってもよい。この場合、所定以上減少することで「オン期間を実現できない」と判断されたオン期間そのものを伸張補正することもできる。
【0089】
・操作信号生成部38において、インバータIVの入力電圧が一定とみなせるなら、電圧利用率に代えて、ノルム設定部36の出力するノルムのみを、操作信号波形を検索するパラメータとしてもよい。
【0090】
・位相設定部34による実際のトルク(推定トルクTe)の要求トルクTdへのフィードバック制御の操作量としての位相δの設定手法としては、これらの差の比例積分制御によって位相δを設定するものに限らない。例えば、要求トルクTdと推定トルクTeとの差の積分制御や比例積分微分制御によって位相δを設定してもよい。
【0091】
・電圧利用率に応じてパターン波形を生成する生成手段としては、上記実施形態やその変形例で例示したものにも限らない。例えば、上記特許文献1において、電圧のノルムに加えて、電源電圧を入力としてパルスパターンを検索する手段としてもよい。
【0092】
・フィードバック制御部25,25としては、比例積分制御を行うものに限らず、例えば積分制御や、比例積分微分制御等を行うものであってもよい。
【0093】
・PWM信号生成部29としては、指令電圧vuc,vvc,vwcとキャリアとを比較することで操作信号を生成するものに限らず、例えば指令電圧vuc,vvc,vwcを2相変調処理した信号とキャリアとを比較することで操作信号を生成するものであってもよい。ただし、この場合、電流フィードバック制御部20による制御を、電圧利用率「0.71」まで行うようにすることが望ましい。
【0094】
・上記実施形態では、電流フィードバック制御部20において、非干渉制御部26を用いたが、これを用いなくても、フィードバック制御部24,25の出力を用いることで指令電圧vdc、vqcを算出することはできる。
【0095】
・要求トルクと回転速度を入力として、回転2相座標系におけるインバータIVの出力電圧ベクトルの位相とノルムとを設定する設定手段としては、上記実施形態で例示したものに限らない。例えば、ノルム設定部36として、要求トルクTdに代えて位相δを入力としてノルムVnを設定するものであってもよい。これは、ノルム設定部36を、上記の式(c9)に基づき設計することで実現することができる。
【0096】
・回転機の制御量としては、トルクに限らず、例えば回転速度であってもよい。
【0097】
・突極機としては、IPMSMに限らない。例えば、同期リラクタンスモータ(SynRM)であってもよい。
【0098】
・回転機としては、突極機に限らず、非突極機であってもよい。この際、位相δ及びノルムVnによってトルクを表現したモデルについて、ノルムVnによるトルクTの偏微分係数がゼロとなる条件の下、ノルムVnと位相δとが1対1に対応する関係を有するなら、この条件を満たすノルムVnに基づき操作信号を生成してもよい。
【0099】
・回転機としては、ハイブリッド車に搭載されるものに限らず、例えば電気自動車に搭載されるものであってもよい。更に、回転機としては、車両の駆動系を構成するものにも限らない。
【符号の説明】
【0100】
10…モータジェネレータ、12…高圧バッテリ、14…制御装置(電力変換回路の制御装置の一実施形態)、20…電流フィードバック制御部、30…トルクフィードバック制御部、34…位相設定部、36…ノルム設定部、38…操作信号生成部、38a…電圧利用率算出部、38b…パルスパターン選択部、38c…パターン補正部、IV…インバータ、CV…コンバータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機の端子を直流電源の正極及び負極のそれぞれに接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、3相電動機の各相に流れる電流を指令値にフィードバック制御すべく、各相に印加すべき電圧の指令値(指令電圧)を算出し、算出される指令電圧とキャリアとの大小に基づきインバータのスイッチング素子を操作するPWM制御を行うものも実用化されている。これにより、3相電動機の各相に印加される電圧を指令電圧とすることができ、ひいては各相に流れる電流を所望に制御することができる。
【0003】
ただし、3相電動機の高回転速度領域においては、指令電圧が上昇し、その振幅がインバータの入力電圧の「1/2」以上となることで、インバータの実際の出力電圧を指令電圧とすることができなくなる。ここで、3相電動機の高回転速度領域においては、インバータのスイッチング素子のオン・オフ周期と3相電動機の電気角の回転周期とを略一致させるいわゆる矩形波制御を行うことも実用化されている。ただし、矩形波制御の電圧利用率は、上記PWM制御における指令電圧の振幅がインバータの入力電圧の「1/2」の値となる時点での電圧利用率と比較して不連続的に大きいものとなっている。
【0004】
そこで従来は、例えば下記特許文献1に見られるように、3相電動機の指令電圧の振幅がインバータの入力電圧の「1/2」以上となる場合、電流フィードバック制御のためのdq軸上での指令電圧に基づき算出される位相と、ROMに格納されたパルスパターンとに基づき、インバータを操作することも提案されている。これにより、電圧利用率を、矩形波制御の電圧利用率へと上昇させていくことができる。
【0005】
更に、上記文献には、矩形波制御となるまでのパルスパターンを、高調波成分が最小となるように設計することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−47100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、インバータの上側アーム及び下側アームの短絡を防止すべく、上側アームのスイッチング素子及び下側アームのスイッチング素子のいずれか一方に対するオン操作指令タイミングといずれか他方に対するオフ操作指令タイミングとの間には、通常、デッドタイムが設けられる。このため、インバータのスイッチング素子をオン状態とする期間やオフ状態とする期間は、デッドタイムよりも長い期間であることが要求される。ここで、上記パルスパターンによってインバータを操作する場合、3相電動機の回転速度が上昇することで、パルスパターンによって規定される最小パルス間隔がデッドタイム以下となるおそれがある。そしてこの場合には、パルスパターンの指示通りにスイッチング素子を操作することができなくなる。そして、この場合には、3相電動機に印加する電圧が所望の電圧に対して誤差を有するものとなるため、3相電動機の制御性が低下する。
【0008】
なお、上記パルスパターンを有するものに限らず、操作信号パターンを生成してこれに基づき電力変換回路を操作するものにあっては、回転速度の上昇に伴って回転機の制御性が低下するおそれのあるこうした実情も概ね共通したものとなっている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、回転機の端子を直流電源の正極及び負極のそれぞれに接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御するに際し、回転機の回転速度の上昇にかかわらず、制御性を維持することのできる回転機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0011】
請求項1記載の発明は、回転機の端子を直流電源の正極及び負極のそれぞれに接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、矩形波制御よりも小さい電圧利用率についての前記電力変換回路の出力電圧のパターン波形を記憶する記憶手段と、該記憶されるパターン波形に基づき前記スイッチング素子を操作する手段とを備え、前記パターン波形は、電気角の1周期の中央に対して対称性を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるインバータの操作信号の生成に関する処理を示すブロック図。
【図3】同実施形態にかかる電圧ベクトルノルムの設定手法を示す図。
【図4】同実施形態にかかる電圧ベクトルノルムの設定手法を示す図。
【図5】同実施形態にかかるトルクと速度規格化ノルムとの関係を示す図。
【図6】同実施形態にかかる操作信号生成部の処理の詳細を示すブロック図。
【図7】同実施形態にかかるパターン波形の一例を示すタイムチャート。
【図8】スイッチング素子のオン状態とオフ状態との切替に要する時間を示すタイムチャート。
【図9】上記実施形態にかかるデッドタイムの生成手法を示す図。
【図10】同実施形態にかかるパターン波形の補正手法を説明するタイムチャート。
【図11】同実施形態にかかるパターン波形の補正態様を例示するタイムチャート。
【図12】同実施形態にかかるパターン波形の補正処理手順を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる回転機の制御装置をハイブリッド車の制御装置に適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1に、本実施形態にかかるモータジェネレータの制御システムの全体構成を示す。モータジェネレータ10は、3相の永久磁石同期モータである。また、モータジェネレータ10は、突極性を有する回転機(突極機)である。詳しくは、モータジェネレータ10は、埋め込み磁石同期モータ(IPMSM)である。
【0015】
モータジェネレータ10は、インバータIV及び昇圧コンバータCVを介して高圧バッテリ12に接続されている。ここで、昇圧コンバータCVは、高圧バッテリ12の電圧(
例えば「288V」)を所定の電圧(例えば「666V」)を上限として昇圧するものである。一方、インバータIVは、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnとして、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードDup,Dun,Dvp,Dvn,Dwp,Dwnが逆並列に接続されている。
【0016】
本実施形態では、モータジェネレータ10やインバータIVの状態を検出する検出手段として、以下のものを備えている。まずモータジェネレータ10の回転角度θ(電気角)を検出する回転角度センサ15を備えている。また、モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwを検出する電流センサ16,17,18を備えている。更に、インバータIVの入力電圧(電源電圧VDC)を検出する電圧センサ19を備えている。
【0017】
上記各種センサの検出値は、インターフェース13を介して低圧システムを構成する制御装置14に取り込まれる。制御装置14では、これら各種センサの検出値に基づき、インバータIVやコンバータCVを操作する操作信号を生成して出力する。ここで、インバータIVのスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnを操作する信号が、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnである。また、昇圧コンバータCVの2つのスイッチング素子を操作する信号が、操作信号gup,gcnである。
【0018】
図2に、上記インバータIVの操作信号の生成に関する処理のブロック図を示す。
【0019】
図示されるように、本実施形態では、電流フィードバック制御部20及びトルクフィードバック制御部30を備えている。以下では、「電流フィードバック制御部20の処理」、「トルクフィードバック制御部30の処理」、「電流フィードバック制御部20の処理とトルクフィードバック制御部30の処理との切り替え処理」、「トルクフィードバック制御部30の設計」の順に説明した後、本実施形態の中心部分となる「操作信号生成部38の処理の詳細」について説明する。
<電流フィードバック制御部20の処理>
モータジェネレータ10の各相を流れる電流iu,iv,iwは、2相変換部40において、回転2相座標系の実電流であるd軸上の実電流idとq軸上の実電流iqとに変換される。一方、指令電流設定部22は、要求トルクTdに基づき、回転2相座標系の電流の指令値であるd軸上の指令電流idc及びq軸上の指令電流iqcを設定する。ここでは、例えば最大トルク制御を実現するように指令電流idc,iqcを設定すればよい。フィードバック制御部24は、d軸上の実電流idを指令電流idcにフィードバック制御するための操作量としてのd軸上の電圧を算出する。一方、フィードバック制御部25は、q軸上の実電流iqを指令電流iqcにフィードバック制御するための操作量としてのq軸上の電圧を算出する。詳しくは、フィードバック制御部24,25では、比例積分制御を用いて上記算出を行う。
【0020】
一方、非干渉制御部26では、実電流id,iq及び電気角速度ωに基づき、上記フィードバック制御部24,25の出力をフィードフォワード補正するための項を算出する。これにより、フィードバック制御部24の出力が非干渉制御部26によって補正された値が、d軸上の指令電圧vdcとなる。また、フィードバック制御部25の出力が非干渉制御部26によって補正された値が、q軸上の指令電圧vqcとなる。
【0021】
3相変換部28では、回転2相座標系の指令電圧vdc、vqcを、3相の指令電圧vuc,vvc,vwcに変換する。PWM信号生成部29では、3相の指令電圧vuc,vvc,vwcと、電源電圧VDCとに基づき、PWM処理によって、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する。これは、例えば、指令電圧vuc,vvc,vwcのそれぞれを電源電圧VDCにて規格化したものと三角波形状のキャリアとの大小比較に基づき行えばよい。
<トルクフィードバック制御部30の処理>
トルク推定器42では、回転2相座標系の実電流id,iqに基づき、モータジェネレータ10のトルクの推定値である推定トルクTeを算出する。一方、偏差算出部32では、推定トルクTeに対する要求トルクTdの差を算出する。位相設定部34は、偏差算出部32の出力の比例積分演算に基づき、インバータIVの出力電圧の回転2相座標系での位相δを設定する。ここでは、要求トルクTdに対して推定トルクTeが不足する場合に位相δを進角させて且つ、要求トルクTdに対して推定トルクTeが過剰となる場合に、位相δを遅角させるようにする。
ノルム設定部36では、モータジェネレータ10の電気角速度ωと、要求トルクTdとに基づき、回転2相座標系におけるインバータIVの出力電圧ベクトルのノルムVnを設定する。ここで、ベクトルのノルムは、ベクトルの各成分の2乗の和の平方根によって定義される。
【0022】
一方、操作信号生成部38では、上記位相設定部34の設定する位相δと、電気角速度ωと、ノルム設定部36の設定するノルムVnと、電源電圧VDCと、回転角度θとに基づき、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する。
<電流フィードバック制御部20の処理とトルクフィードバック制御部30の処理との切り替え処理>
本実施形態では、切替制御部46によって、電流フィードバック制御部20による制御を行うか、トルクフィードバック制御部30による制御を行うかを切り替える。特に、本実施形態では、電圧利用率が小さい領域では、電流フィードバック制御部20による制御を行い、電圧利用率が大きい領域では、トルクフィードバック制御部30による制御を行う。これは、電圧利用率が小さい領域では、電流フィードバック制御部20による制御の方がトルクの応答性が高い反面、電圧利用率が大きい領域では、トルクフィードバック制御部30による制御の方がトルクの応答性が高いことに鑑みたものである。詳しくは、本実施形態では、電圧利用率が「0.61」以下である領域において、電流フィードバック制御部20による制御を行う。これは、電流フィードバック制御部20による指令電圧vuc,vvc,vwcを電源電圧VDCによって実現できる上限の電圧利用率が「0.61」程度であることを理由としている。
<トルクフィードバック制御部30の設計>
先の図2に示したように、トルクフィードバック制御部30では、要求トルクTd及び電気角速度ωに基づき、ノルムVnを設定した。これにより、要求トルクTdが与えられた場合に、比較的自由にノルムVnを設定することができる。このため、例えばノルムVnを極力小さくすることで、電圧利用率を抑制することができる。そしてこの場合には、操作信号生成部38の生成する操作信号波形として、よりパルス数の多い波形を選択することなどができ、ひいてはインバータIVの出力電圧を正弦波形状の電圧により近づけることができる。このため、インバータIVの出力電圧の高調波歪を低減することができ、ひいては高調波電流を抑制することが可能となる。
【0023】
以下、本実施形態にかかるノルム設定部36によるノルムVnの設定について説明する。図3に、本実施形態において、モータジェネレータ10の力行時にノルムVnに課せられる基本的な制約を示す。図示されるように、本実施形態では、ノルムVnを、境界線BL1〜BL4によって囲われる領域内とするとの制約が課せられている。ここで、境界線BL4は、電圧利用率が「0.78」であること示すものである。これは、矩形波制御の電圧利用率が実現可能な電圧利用率の最大値であることに対応している。以下では、境界線BL1〜BL3のそれぞれに対応する条件の導出に先立って、モータジェネレータ10のトルクTと電流ベクトル(id,iq)とを、ノルムVn、位相δ及び電気角速度ωによって表現する式を導出する。
【0024】
モータジェネレータ10のトルクTは、電機子巻線鎖交磁束数Φ、q軸インダクタンスLq,d軸インダクタンスLd、抵抗R、及び極対数Pを用いて、下記の式(c1)にて表現される。
【0025】
【数1】
また、電圧方程式は、以下の式(c2)となる。
【0026】
【数2】
上記の式(c2)から、下記の式(c3)を得る。
【0027】
【数3】
上記の式(c3)を上記の式(c1)に代入することで、下記の式(c4)を得る。
【0028】
【数4】
ここで、図4に示す境界線BL1に対応する条件である「トルクTの位相δによる偏微分が正となるとの条件」は、上記の式(c4)に基づき、下記の式(c5a)及び(c5b)によって表現される。この条件は、要求トルクTdに対して推定トルクTeが不足する場合に、位相δを進角させることによってその不足を低減させて且つ、要求トルクTdに対して推定トルクTeが過剰である場合に、位相δを遅角させることによってその過剰分を低減させることを可能とするための条件である。
【0029】
【数5】
なお、本実施形態では、位相δは、力行時には、「0≦δ<π/2」、回生時には、「π/2<δ≦3π/2」となるように制御設計をするとの前提を設けているため、位相δが「3π/2」以上となる条件を削除した。
【0030】
また、境界線BL2に対応する条件である「d軸電流がゼロ以下であるとの条件」は、下記の式(c6)等よって表現される。
【0031】
【数6】
また、境界線BL3に対応する条件である「q軸電流が力行時においてはゼロ以上である旨の条件」は、下記の式(c7)によって表現される。
【0032】
【数7】
なお、回生時においては、q軸電流がゼロ以下であるとの条件を課す。
【0033】
本実施形態では、先の図3に例示するような許容領域内において、ノルムVnを設定する。このノルムVnは、位相δと電気角速度ωを設定しても一義的には定まらない。このため、ノルムVnの設定に際してはある程度の自由度があることとなるため、ノルムVnを自由に設計することができる。ここで、インバータIVの出力電圧の高調波歪を抑制する観点からは、ノルムVnを極力低減することが望ましい。ノルムVnを最小とするためには、トルクTのノルムVnによる偏微分係数がゼロとなるとの条件を課すことが要求される。ただし、この場合、上記モデルを用いる場合には、位相δとノルムVnとの間に1対1の対応関係を持たせることができないことが発明者らによって見出されている。
【0034】
そこで、本実施形態では、最小の電流で最大のトルクを実現する最大トルク制御を行うことができるようにノルムVnを設定する。これによっても、要求トルクTdを実現するうえでノルムVnを極力低減することができる。
【0035】
図4に、本実施形態にかかるノルム設定部36の詳細を示す。
【0036】
図示されるように、本実施形態では、最大トルク制御を実行すべく下記の式(c8)にて表現される条件を課す。ここで、最大トルク制御とは、最小の電流で最大のトルクを実現する制御であり、ここでいう最大トルクとは、力行制御時には正の最大トルク、回生制御時には、負であって絶対値が最大のトルクを意味する。
【0037】
【数8】
この式は、例えば「埋込磁石同期モータの設計と制御:武田洋次ら オーム社」の23ページに記載されている。上記の式(c8)から、上記の式(c3)によって電流ベクトル(id,iq)を消去することで、ノルムVnを、電気角速度ωと位相δとの関数とすることができる。特に、トルクフィードバック制御を行う領域は電気角速度ωが大きい領域のため、抵抗Rを無視することで、以下の式(c9)とすることができる。
【0038】
【数9】
上記の式(c9)では、ノルムVnが、位相δ及び電気角速度ωの関数とされている。以下では、これに基づき、ノルムVnを、要求トルクTdと電気角速度ωとによって表現することを考える。上記の式(c4)において、抵抗Rが小さいとする近似を行うことで、下記の式(c10)を得る。
【0039】
【数10】
上記の式(c10)における関数fは、位相δを独立変数として、電気角速度ωによって規格化されたノルムVn(速度規格化ノルム)を従属変数とするものである。ここで、ノルムVnが、電気角速度ωに依存しない関数fと電気角速度ωとの積として定義できるのは、上記の式(c9)を根拠としている。すなわち、抵抗Rが無視できるとの近似を前提としている。上記の式(c10)によれば、位相δを独立変数として且つトルクTを従属変数とする関数gを定義することができる。このため、関数gの逆関数を用いることで、上記関数fの独立変数を位相δからトルクTに変換することができる。これにより、トルクTを独立変数として且つ速度規格化ノルム(Vn/ω)を従属変数とする関数hを定義することができる。
【0040】
図5(a)に上記関数hを示す。なお、この関数hは、必ずしも解析的に求める必要はない。ちなみに、図5(a)に示すグラフは、図5(b)示すように、位相δと速度規格化ノルムとの関係を示す関数f、及び位相δとトルクTとの関係を示す関数gを数値計算によって算出することで算出されたものである。これにより、要求トルクTdとノルムVnとの関係を、ノルムVnが先の図4に示した領域内となるようにして、予めマップ化しておくことが可能となる。そしてこれにより、要求トルクTdと電気角速度ωが与えられた際に、最小の電流にてモータジェネレータ10を駆動することができる。
【0041】
なお、本明細書において、「マップ」とは、離散的な入力値のそれぞれに対して出力値が1つ定義された写像のことである。
<操作信号生成部38の処理の詳細>
図6に、本実施形態にかかる操作信号生成部38の詳細を示す。図示されるように、操作信号生成部38は、ノルムVnと電源電圧VDCとに基づき、電圧利用率を算出する電圧利用率算出部38aを備えている。電圧利用率算出部38aの出力は、パルスパターン選択部38bに取り込まれる。パルスパターン選択部38bは、電圧利用率毎に、各相の一対のスイッチング素子についての1電気角周期分の操作信号を生成するためのパルスパターン(パターン波形)を記憶している。詳しくは、パターン波形は、その互いに相違する論理値によって、上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpのオン期間と、下側アームのスイッチング素子Sun,Svn,Swnのオン期間とを指定する。具体的には、本実施形態では、論理値「H」によって上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpのオン期間を規定し、論理値「L」によって下側アームのスイッチング素子Sun,Svn,Swnのオン期間を規定する。
【0042】
特に本実施形態では、パターン波形の論理値を、図示されるように、論理反転タイミングの位相角として記憶する。すなわち、位相角αi(i=2n:n=1,2,3、…)は、立ち上がりエッジを規定し、位相角αj(j=2n−1n=1,2,3、…)は、立ち下がりエッジを規定する。このように、偶数でラベリングされた位相角αiと、奇数でラベリングされた位相角αjとを用いることで、パターン波形の論理反転タイミングを記憶することができる。ちなみに、本実施形態では、電圧利用率が「0.61」から「0.78」の領域について、所定間隔毎に、各別のパターン波形が記憶されている。これは、本実施形態では、電圧利用率が「0.61」以下の領域では、電流フィードバック制御部20による制御がなされることに基づいた設定である。
【0043】
図7に、上記パターン波形を例示する。この例では、位相角α1〜α22によって規定されるパターン波形を例示している。図示されるように、パターン波形は、高電位側のスイッチング素子Sup,Svp,Swpがオン状態とされる期間と低電位側のスイッチング素子Sun,Svn,Swnがオン状態とされる期間とが半々となる波形となっている。これは、インバータIVの出力電圧を電気角の1回転周期で均衡の取れたものとするための設定である。更に、パターン波形は、電気角の1回転周期の中央(180°)に対して対称性を有するものとなっている。詳しくは、中央に対して等距離にある一対のタイミングの論理値が逆となるものとなっている。これは、インバータIVの出力電圧を、電気角を直接の独立変数とする正弦関数(sinθ)に極力近似させるための設定である。換言すれば、位相ずれのない正弦関数に極力近似させるための設定である。
【0044】
なお、図7に示した例では、第1象限(0〜90°)及び第2象限(90°〜180°)における論理「H」のパルス数が5となるものを例示したがこれに限らない。例えば、電圧利用率に応じて、上記パルス数が3、5、7、9,11等となるように設定してもよい。ここで、正弦波形状の電圧を近似する観点から、第1象限及び第2象限における論理「H」のパルス数は奇数個として且つ、第3象限及び第4象限における論理「H」のパルス数は偶数個とする。更に、論理「L」のパルス間隔は、電気角の「1/4」周期毎に、減少、増加を繰り返して且つ、論理「H」のパルス間隔は、電気角の「1/4」周期毎に、増加、減少を繰り返す。換言すれば、論理「L」のパルス間隔は、第1象限及び第4象限において減少して且つ、第2象限及び第3象限において増加し、論理「H」のパルス間隔は、第1象限及び第4象限において増加して且つ、第2象限及び第3象限において減少する。ここで、象限間で連続するパルスについては、特定の象限におけるパルス間隔を、隣接する象限間にまたがって連続するパルス間隔と定義する。すなわち、第1象限及び第2象限において最もパルス間隔の大きい論理「H」のパルスのパルス間隔は、位相角α5〜α6のパルス間隔とする。なお、上記パターン波形の設定に際しては、パターン波形のフーリエ級数展開の高調波成分が極力小さくなるように適合することが望ましい。
【0045】
上記態様にてパターン波形を設定することで、インバータIVの出力電圧を、1電気角周期毎に、位相ずれのない正弦関数に極力近似させることができる。
【0046】
ところで、パターン波形に基づき操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnを生成する際には、上下アームの短絡を確実に回避すべく、デッドタイムが生成される。以下、これについて詳述する。
【0047】
図8(a)は、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnのいずれかを示し、図8(b)は、スイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnのいずれかの入出力端子の電圧の推移を示す。図示されるように、操作信号が論理「H」とされることで、入出力端子間の電圧は、漸減し、やがて安定する。このときの電圧は、略ゼロである。ここで、操作信号が論理「H」となるタイミングから入出力端子間の電圧の安定タイミングまでの所要時間は、オン操作のスイッチング遅れ時間Δtonである。一方、操作信号が論理「L」とされることで、入出力端子間の電圧が漸増し、所定の高電圧で安定する。ここで、操作信号が論理「L」となるタイミングから入出力端子間の電圧が上昇して安定するまでの所要時間は、オフ操作のスイッチング遅れ時間Δtoffである。
【0048】
上記遅れ時間Δton、Δtoffがあるにもかかわらず、上下アームの短絡を確実に回避すべく、本実施形態では、図9に示す態様にてデッドタイムを設ける。詳しくは、図9(a)は、パターン波形の推移を示し、図9(b)は、上側アームの操作信号gup,gvp,gwpの推移を示し、図9(c)は、下側アームの操作信号gun,gvn,gwnの推移を示す。
【0049】
図示されるように、パターン波形のエッジに対して、上側アームの操作信号gup,gvp,gwpの立ち上がりエッジや、下側アームの操作信号gun,gvn,gwnの立ち上がりエッジを、デッドタイムDTだけ遅延させる。これに対し、上側アームの操作信号gup,gvp,gwpの立ち下がりエッジや、下側アームの操作信号gun,gvn,gwnの立ち下がりエッジは、パターン波形のエッジに同期させる。ここで本実施形態では、デッドタイムDTを、上記遅れ時間Δton、Δtoffのうちの大きい方とする。
【0050】
このようにデッドタイムDTを設けることで、上下アームの短絡を確実に回避することができる。ただし、この場合、パターン波形のパルス間隔を時間換算した場合に、デッドタイムDT以下となるものについては、そのパルスが消失することとなる。
【0051】
そこで本実施形態では、パターン波形によって規定されるスイッチング素子のオン期間のうちにデッドタイムDTによって消失するものがある場合、パターン波形を補正する処理を行う。以下、これについて詳述する。
【0052】
図10(a)に、第1、第4象限において、位相角α(i−1)、αi間に渡って論理「H」となるパルスが消失する場合のパターン波形の補正手法を例示する。図示されるように、この場合、消失する論理「H」パルスに隣接する進角側のパルスの立ち上がりエッジを補正することで、この隣接する進角側の論理「H」のパルスのパルス間隔を伸張補正する。特に、この伸張補正は、パルスの消失に起因したパターン波形のフーリエ級数の基本波成分の変化を補償するように行う。これは、伸張補正量xに渡る基本波成分の積分値が、位相角α(i−1)、αiの角度間隔に渡る基本波成分の積分値に一致するように伸張補正量xを算出することで実現できる。ただし、本実施形態では、この積分値を解析的に求める代わりに、台形近似を行う。
【0053】
すなわち、伸張補正量xに渡る基本波成分の積分値に比例した量は、台形近似によって、「xsinα(i+1)」と近似できる。また、位相角α(i−1)、αiの角度間隔に渡る基本波成分の積分値に比例した量は、台形近似によって、「{αi―α(i−1)}sinαi」と近似できる。これらが等しいとすることで、下記の式(c11)を得る。
【0054】
【数11】
一方、図10(b)に、第1、第4象限において、位相角α(i−1)、αi間に渡って論理「L」となるパルスが消失する場合のパターン波形の補正手法を例示する。図示されるように、この場合、消失する論理「L」パルスに隣接する遅角側のパルスの立ち上がりエッジを補正することで、この隣接する遅角側の論理「L」のパルスのパルス間隔を伸張補正する。特に、この伸張補正は、パルスの消失に起因したパターン波形のフーリエ級数の基本波成分の変化を補償するように行う。これは、伸張補正量xに渡る基本波成分の積分値が、位相角α(i−1)、αiの角度間隔に渡る基本波成分の積分値に一致するように伸張補正量xを算出することで実現できる。ただし、ここでも、この積分値を解析的に求める代わりに、台形近似を行う。
【0055】
すなわち、伸張補正量xに渡る基本波成分の積分値に比例した量は、台形近似によって、「xsinα(i−2)」と近似できる。また、位相角α(i−1)、αiの角度間隔に渡る基本波成分の積分値に比例した量は、台形近似によって、「{αi―α(i−1)}sinα(i−1)」と近似できる。これらが等しいとすることで、下記の式(c12)を得る。
【0056】
【数12】
ちなみに、台形近似を用いることは、本実施形態のように制御装置14が正弦関数のマップのみを備えている場合には、特に有効である。すなわち、解析的に積分を行う場合には、余弦関数を計算することとなるが、台形近似を行うことで、正弦関数にて積分値を近似的に求めることができる。
【0057】
ここで、第1象限と第3象限とは、これら象限の最遅角位置を基準として同一の位相角を有するもの同士で論理値が互いに逆となり、第2象限及び第4象限とも、これら象限の最遅角位置を基準として同一の位相角を有するもの同士で論理値が互いに逆となる。このため、図11に示すように、第2象限及び第3象限において論理「H」のパルスが消失する場合には、上記の式(c12)を用いてパターン波形の立ち下がりエッジを補正することで、パルス間隔を伸張補正し、論理「L」のパルスが消失する場合には、上記の式(c11)を用いて、パターン波形の立ち下がりエッジを補正することで、パルス間隔を伸張補正する。すなわち、第2象限及び第3象限において論理「H」のパルスが消失する場合には、隣接する遅角側のパルスの立ち下がりエッジを遅角側に補正し、第2象限及び第3象限において論理「L」のパルスが消失する場合には、隣接する進角側のパルスの立ち下がりエッジを進角側に補正する。
【0058】
こうした補正を実施すべく、操作信号生成部38は、先の図6に示すように、パルスパターン選択部38bの出力する位相角α1、α2のベクトルを補正するパターン補正部38cを備える。そして、こうして補正されたパターン波形に基づき、相補信号生成部38eでは、上下アームの操作信号を生成する。この際、相補信号生成部38eでは、補正部38dにおいて回転角度θが位相δにて補正された信号を利用する。これにより、位相設定部34の設定する位相δに基づき、パターン波形によって規定される操作信号を好適に出力することができる。
【0059】
図12に、本実施形態にかかるパターン波形の補正処理の手順を示す。この処理は、パターン補正部38cによって例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0060】
この一連の処理では、まずステップS10において、上記パターン波形によって規定される各パルスのパルス間隔hiを算出する。ここで、パルス間隔hiは、「αi―α(i−1)」にて定義される。更に、変数iを0とする。続くステップS12においては、変数iをインクリメントする。続くステップS14においては、パルス間隔hiが、「ωDT」よりも大きいか否かを判断する。そして、パルス間隔hiの方が大きいと判断される場合、ステップS16において、変数iがnであるか否かを判断する。この処理は、パターン波形によって規定される全てのパルス間隔が、デッドタイムによって消失しないか否かを判断するためのものである。そして、ステップS16において否定判断される場合、ステップS12に戻る。
【0061】
これに対し、ステップS14においてパルス間隔hiが「ωDT」以下であると判断される場合、ステップS18において、変数iが「1」であるか否かを判断する。この処理は、矩形波制御を実行するか否かを判断するためのものである。すなわち、第1象限においては、論理「L」のパルス間隔は、徐々に短くなるため、最初のパルス間隔h1が最大となる。このため、最初のパルス間隔h1すら消失する場合には、もはやパターン波形を修正したのでは対処できないため、矩形波制御に移行する(ステップS32)。すなわち、立ち上がりエッジの位相角を「0°」とし、立ち下がりエッジの位相角を「180°」とすることで、1電気角周期において上側アームのスイッチング素子と下側アームのスイッチング素子とを各1回オン状態とする。
【0062】
これに対し、ステップS18において否定判断される場合には、ステップS20に移行する。ステップS20では、変数iが奇数であるか否かを判断する。この処理は、消失するパルスが論理「L」のパルスであるのか否かを判断するためのものである。そして、消失するパルスが論理「L」のパルスであると判断される場合、ステップS22において、パルス間隔hiが第1象限又は第4象限にあるか否かを判断する。この処理は、上記の式(c12)を用いて伸張補正を行うか否かを判断するためのものである。
【0063】
一方、ステップS20において否定判断される場合には、消失するパルスが論理「H」のパルスであると判断し、ステップS26に移行する。ステップS26においては、パルス間隔hiが第1象限又は第4象限のものであるか否かを判断する。この処理は、上記の式(c11)を用いて伸張補正を行うか否かを判断するためのものである。
【0064】
そして、ステップS22において肯定判断される場合や、ステップS26において否定判断される場合には、ステップS24において、上記の式(c12)に基づき、位相角α(i−1)を進角補正する。これに対し、ステップS22において否定判断される場合や、ステップS26において肯定判断される場合には、ステップS28において、上記の式(c11)に基づき、位相角α(i+1)を遅角補正する。
【0065】
そして、ステップS24、S28の処理が完了する場合には、ステップS30において、位相角αi、α(i−1)を消去し、α(i+1)〜αnを順次、α(i−1)〜α(n−2)とする。そして、ステップS30の処理が完了する場合、上記ステップS10に戻る。
【0066】
なお、上記ステップS32の処理が完了する場合や、ステップS16において肯定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0067】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0068】
(1)パターン波形によって規定されるパルスに消失するものがある場合、パターン波形に関するフーリエ級数の基本波成分を保持すべく、パルスを補正した。これにより、パルスパターン選択部38bによって選択されたパターン波形に関する基本波成分を維持することができる。
【0069】
(2)消失パルスに起因した基本波成分のずれを補償すべく、消失パルスに隣接するパルスを伸長補正した。これにより、パルスパターン選択部38bによって選択されたパターン波形の変更を極力抑制しつつも、選択されたパターン波形に関する基本波成分を維持することができる。
【0070】
(3)パルスパターン選択部38bによって、1電気角周期分のパターン波形に関する情報を記憶した。これにより、基本波成分の周期と同一の周期毎にパターン波形が生成されるため、基本波成分を適切に設計したり、上記補正を適切に行ったりすることができる。
【0071】
(4)パターン波形を、1電気角周期の中央に対して対称性を有するものとした。これにより、インバータIVの出力電圧を、正弦波形状の電圧を好適に模擬したものとすることができる。
【0072】
(5)パターン波形を、論理「H」のパルスのパルス間隔が「1/4」周期で増加、減少を繰り返して且つ論理「L」のパルスのパルス間隔が「1/4」周期で減少、増加を繰り返すものとした。これにより、インバータIVの出力電圧を、電気角を直接の独立変数とする正弦関数又は余弦関数を好適に模擬したものとすることができる。
【0073】
(6)パターン波形を、1電気角周期の中央から互いに逆方向に等回転角度だけ離間した一対のタイミングのうちの一方と他方とで論理値が逆の信号とした。これにより、インバータIVの出力電圧を、電気角を直接の独立変数とする正弦関数を好適に模擬したものとすることができる。このため、電圧利用率の上昇に伴って、操作信号パターンが矩形波制御のためのパターンへと移行する際、パターン波形の急激な変化を抑制しつつも、矩形波制御のためのパターンを電気角の1周期内に上側アームのスイッチング素子と下側アームのスイッチング素子とを各1回オン状態とするパターンとすることができる。
【0074】
(7)特定の象限におけるパターン波形の論理「H」のパルスに消失するものがある場合、その象限内における消失パルスに隣接する論理「H」のパルスを伸長補正し、特定の象限におけるパターン波形の論理「L」のパルスに消失するものがある場合、その象限内における消失パルスに隣接する論理「L」のパルスを伸張補正した。これにより、パターン波形についての上記伸張補正に起因した変化を極力抑制することができ、ひいては電流歪を好適に抑制することができる。
【0075】
(8)任意の象限における論理「H」のパルスのパルス間隔の最大値と、論理「L」のパルスのパルス間隔の最大値とのうちの小さい方が消失すると判断される場合、位相角「0°」から「180°」までを論理「H」とする矩形波制御を行った。これにより、パターン波形によって規定されるパルスの実現が過度に困難な状況下にあっても、モータジェネレータ10の制御性を高く維持することができる。
【0076】
(9)消失すると判断されるパルス間隔に渡る基本波の積分値と、伸長補正される期間に渡る基本波の積分値とが等しくなるように伸長補正を行った。これにより、消失パルスに起因する基本波成分の誤差を、伸張補正によって好適に補償することができる。
【0077】
(10)パターン波形によって規定されるパルスが消失するか否かを、デッドタイムに基づき判断した。これにより、パルスが消失するか否かを好適に判断することができる。
【0078】
(11)パターン波形のエッジに対して上側アームのスイッチング素子の操作信号の立ち上がりエッジと下側アームのスイッチング素子の操作信号の立ち上がりエッジとの双方をデッドタイムだけずらして且つ、パルス間隔hiが「ωDT」以下となる場合にパルスが消失すると判断した。これにより、パルスが消失するか否かを好適に判断することができる。
【0079】
(12)要求トルクTdと電気角速度ωとを入力として、回転2相座標系におけるインバータIVの出力電圧ベクトルの位相δとノルムVnとを設定し、設定されるノルムVnに基づき、これを実現するためのパターン波形を予め記憶されたもののうちから検索して出力するようにした。これにより、ベクトルのノルムを要求トルクTdと電気角速度ωとに基づき自由に設計することができる。このため、例えば電流フィードバック制御を行う場合と比較して、パターン波形の設計の自由度も向上し、ひいてはモータジェネレータ10の制御性を高く維持することができる。また、パターン波形を予め記憶するため、パターン波形を予め最適なパターンに適合しておくこともできる。
【0080】
(13)電流フィードバック制御において変調率が「1」となる電圧利用率よりも大きい電圧利用率となる領域において、トルクフィードバック制御部30による制御を行った。これにより、電圧利用率に応じてより適切な制御を行うことができる。
【0081】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0082】
・実現できないと判断される1又は複数のオン期間のうちの1つの期間に渡る基本波成分の積分値と、伸張補正される期間に渡る基本波成分の積分値とを一致させるように伸張補正期間を算出する手法としては、上記実施形態で例示したように、台形近似を用いるものに限らない。例えば、積分演算を直接行ってもよい。
【0083】
・パターン波形としては、基本波成分として、電気角の1周期に渡る正弦関数を仮定するものに限らず、例えば余弦関数を仮定するものであってもよい。この場合、上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpをオン状態とする期間が、「1/4」周期毎に減少、増加を繰り返して且つ、下側アームのスイッチング素子Sun,Svn,Swnをオン状態とする期間が、「1/4」周期毎に増加、減少を繰り返すものとなる。このため、この場合であっても、同一象限内において実現できないと判断される1又は複数のオン期間のうちの1つに隣接する期間を伸長補正する手法を用いることで適切な補正を行うことができる。特に、こうした処理は、電気角の小さい値に対応する期間から順に実現可能であるか否かを判断し、実現できないと判断される都度伸張補正することで行うことができる。
【0084】
・パターン波形としては、1電気角周期に渡るスイッチング素子の操作信号を規定するものに限らない。例えば、2電気角周期に渡る操作信号を規定するものであってもよい。
【0085】
・上記実施形態では、電気角の小さい側から順にパターン波形の論理「H」期間や論理「L」期間を実現できるか否かを判断し、実現できないと判断される都度、隣接する期間を伸張補正したがこれに限らない。例えば、1電気角周期内において、論理「H」期間や論理「L」期間のうちの短いものから順に実現できるか否かの判断を行い、その判断結果に応じて伸張補正を行ってもよい。
【0086】
・スイッチング素子のパターン波形を生成する生成手段としては、予め記憶されたパターン情報から電圧利用率に応じたものを検索して出力する手段に限らない。例えば、正弦波形状の指令電圧とキャリアとの大小関係の比較に基づき操作信号を生成する周知のPWM処理を行うものであってもよい。こうした周知のPWM処理は、通常、キャリアの1周期毎に操作信号を生成するものであるが、これに代えて、指令電圧をキャリアの1周期毎に更新しつつも例えば1電気角周期毎に操作信号を生成するようにするなら、PWM処理によって規定されるオン期間を実現できない場合にこれを補償することができる。
【0087】
・デッドタイムの生成手法としては、先の図8に例示したものに限らない。例えば、パターン波形のエッジに対して、上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpの操作信号の立ち下がりエッジと下側アームのスイッチング素子Sun,Svn、Swnの操作信号の立ち下がりエッジとをデッドタイムだけずらしてもよい。更に、パターン波形のエッジに対して、上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpと下側アームのスイッチング素子Sun,Svn、Swnとの双方の操作信号についてのいずれか一方のエッジをずらす手法にも限らない。例えば、パターン波形の各エッジに対して、上側アームのスイッチング素子Sup,Svp,Swpと下側アームのスイッチング素子Sun,Svn、Swnとの双方の操作信号をデッドタイムの半分ずつずらしてもよい。ただし、この場合、パターン波形の各論理「H」又は論理「L」の期間が、「ωDT/2」以下となることで、この期間を実現できないと判断することが望ましい。
【0088】
・上記実施形態では、パターン波形によって規定されるオン期間が消失する場合を、同オン期間を実現できない場合と定義したが、これに限らない。例えば、スイッチング素子がオン状態とされるまでの遅延によって、そのオン期間が所定以上減少する場合にも、伸張補正を行ってもよい。この場合、所定以上減少することで「オン期間を実現できない」と判断されたオン期間そのものを伸張補正することもできる。
【0089】
・操作信号生成部38において、インバータIVの入力電圧が一定とみなせるなら、電圧利用率に代えて、ノルム設定部36の出力するノルムのみを、操作信号波形を検索するパラメータとしてもよい。
【0090】
・位相設定部34による実際のトルク(推定トルクTe)の要求トルクTdへのフィードバック制御の操作量としての位相δの設定手法としては、これらの差の比例積分制御によって位相δを設定するものに限らない。例えば、要求トルクTdと推定トルクTeとの差の積分制御や比例積分微分制御によって位相δを設定してもよい。
【0091】
・電圧利用率に応じてパターン波形を生成する生成手段としては、上記実施形態やその変形例で例示したものにも限らない。例えば、上記特許文献1において、電圧のノルムに加えて、電源電圧を入力としてパルスパターンを検索する手段としてもよい。
【0092】
・フィードバック制御部25,25としては、比例積分制御を行うものに限らず、例えば積分制御や、比例積分微分制御等を行うものであってもよい。
【0093】
・PWM信号生成部29としては、指令電圧vuc,vvc,vwcとキャリアとを比較することで操作信号を生成するものに限らず、例えば指令電圧vuc,vvc,vwcを2相変調処理した信号とキャリアとを比較することで操作信号を生成するものであってもよい。ただし、この場合、電流フィードバック制御部20による制御を、電圧利用率「0.71」まで行うようにすることが望ましい。
【0094】
・上記実施形態では、電流フィードバック制御部20において、非干渉制御部26を用いたが、これを用いなくても、フィードバック制御部24,25の出力を用いることで指令電圧vdc、vqcを算出することはできる。
【0095】
・要求トルクと回転速度を入力として、回転2相座標系におけるインバータIVの出力電圧ベクトルの位相とノルムとを設定する設定手段としては、上記実施形態で例示したものに限らない。例えば、ノルム設定部36として、要求トルクTdに代えて位相δを入力としてノルムVnを設定するものであってもよい。これは、ノルム設定部36を、上記の式(c9)に基づき設計することで実現することができる。
【0096】
・回転機の制御量としては、トルクに限らず、例えば回転速度であってもよい。
【0097】
・突極機としては、IPMSMに限らない。例えば、同期リラクタンスモータ(SynRM)であってもよい。
【0098】
・回転機としては、突極機に限らず、非突極機であってもよい。この際、位相δ及びノルムVnによってトルクを表現したモデルについて、ノルムVnによるトルクTの偏微分係数がゼロとなる条件の下、ノルムVnと位相δとが1対1に対応する関係を有するなら、この条件を満たすノルムVnに基づき操作信号を生成してもよい。
【0099】
・回転機としては、ハイブリッド車に搭載されるものに限らず、例えば電気自動車に搭載されるものであってもよい。更に、回転機としては、車両の駆動系を構成するものにも限らない。
【符号の説明】
【0100】
10…モータジェネレータ、12…高圧バッテリ、14…制御装置(電力変換回路の制御装置の一実施形態)、20…電流フィードバック制御部、30…トルクフィードバック制御部、34…位相設定部、36…ノルム設定部、38…操作信号生成部、38a…電圧利用率算出部、38b…パルスパターン選択部、38c…パターン補正部、IV…インバータ、CV…コンバータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機の端子を直流電源の正極及び負極のそれぞれに接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、
矩形波制御よりも小さい電圧利用率についての前記電力変換回路の出力電圧のパターン波形を記憶する記憶手段と、
該記憶されるパターン波形に基づき前記スイッチング素子を操作する手段とを備え、
前記パターン波形は、電気角の1周期の中央に対して対称性を有することを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項2】
前記パターン波形は、電気角の「1/4」周期で増加、減少を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項3】
前記パターン波形は、前記電力変換回路の出力電圧の極大値に近づくにつれて、該出力電圧の増大に寄与するパルスについて、それらの間の間隔を短くするものであることを特徴とする請求項1または2記載の回転機の制御装置。
【請求項4】
前記パターン波形は、電気角の1周期において、前記回転機を前記直流電源の正極に接続する期間と前記回転機を前記直流電源の負極に接続する期間とを等しくするものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記パターン波形を、該波形の立ち上がりタイミングおよび立ち下がりタイミングの位相として記憶するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項6】
前記回転機の回転速度を入力として、デッドタイムに起因したパターン波形からのずれを補償すべく、前記パターン波形によって規定される前記スイッチング素子のオン期間を補正する補正手段を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項7】
前記回転機を流れる電流を指令値にフィードバック制御するための操作量としての指令電圧のPWM処理に基づき前記電力変換回路を操作する電流フィードバック制御手段を更に備え、
前記パターン波形に基づく前記スイッチング素子の操作は、前記電流フィードバック制御において変調率が「1」となる電圧利用率よりも大きい電圧利用率となる領域で行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項1】
回転機の端子を直流電源の正極及び負極のそれぞれに接続するスイッチング素子を備える電力変換回路を操作することで前記回転機の制御量を制御する回転機の制御装置において、
矩形波制御よりも小さい電圧利用率についての前記電力変換回路の出力電圧のパターン波形を記憶する記憶手段と、
該記憶されるパターン波形に基づき前記スイッチング素子を操作する手段とを備え、
前記パターン波形は、電気角の1周期の中央に対して対称性を有することを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項2】
前記パターン波形は、電気角の「1/4」周期で増加、減少を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項3】
前記パターン波形は、前記電力変換回路の出力電圧の極大値に近づくにつれて、該出力電圧の増大に寄与するパルスについて、それらの間の間隔を短くするものであることを特徴とする請求項1または2記載の回転機の制御装置。
【請求項4】
前記パターン波形は、電気角の1周期において、前記回転機を前記直流電源の正極に接続する期間と前記回転機を前記直流電源の負極に接続する期間とを等しくするものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記パターン波形を、該波形の立ち上がりタイミングおよび立ち下がりタイミングの位相として記憶するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項6】
前記回転機の回転速度を入力として、デッドタイムに起因したパターン波形からのずれを補償すべく、前記パターン波形によって規定される前記スイッチング素子のオン期間を補正する補正手段を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項7】
前記回転機を流れる電流を指令値にフィードバック制御するための操作量としての指令電圧のPWM処理に基づき前記電力変換回路を操作する電流フィードバック制御手段を更に備え、
前記パターン波形に基づく前記スイッチング素子の操作は、前記電流フィードバック制御において変調率が「1」となる電圧利用率よりも大きい電圧利用率となる領域で行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−65549(P2012−65549A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−289295(P2011−289295)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2008−167077(P2008−167077)の分割
【原出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2008−167077(P2008−167077)の分割
【原出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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