説明

回転機構のストッパー構造

【課題】
ケーブルが断線するような捻じれが生じないよう、任意の角度以上に回転移動しないようようにした。
【解決手段】
回転軸心aに対して相対的に回転可能な、第1回転体11と第2回転体12とを備えた回転機構1において、第1回転体11に対する第2回転体12の回転移動を、任意の角度に規制するためのストッパー2を備え、ストッパー2が、回転軸心aに対して回転可能な少なくとも一の中間回転体13と、第1回転体11に設けられた第1突起部21と、第2回転体12に設けられた第2突起部22と、中間回転体13に設けられた中間係合部23とからなり、各回転体11,12,13が回転する際、第1及び第2突起部21,22は互いに干渉せず、中間係合部23は第1及び第2突起部21,22のそれぞれに係合可能なように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材を回転可能に連結する回転機構に設けられ、2つの部材の回転移動を任意の角度内に規制するためのストッパーの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロボット、印刷機、或いは建設機械等において、固定系と回転系を回転可能に連結する回転機構が備えられている。そして、この固定系と回転系の間で、信号を伝送したり電力を供給する場合、回転機構としてスリップリングが用いられる(例えば、特許文献1参照)。このスリップリング式の回転機構は、固定系の集電リングと回転系のブラシを備えており、集電リングにブラシが接触して回転するよう構成されている。
【0003】
しかし、このスリップリング式の回転機構は、ブラシとリングの間の摩擦やほこり等で接触不良や導通不良が生じたりすることがある。又構造が複雑で、高い部品精度が要求され、部品管理のコストも高くなる。そのため、ケーブルを用いて、固定系と回転系の間で電力を供給したりすることがある。しかしこの場合、固定系と回転系が同一方向に複数回転すると、ケーブルが捻じれ断線するおそれがある。
【0004】
回転系(例えばロボットハンド)には、自らの駆動モータDやその他のセンサー、アクチュエータを有し、この回転系側と固定系側とが給電線、信号線等で連結されることがある。このような場合に回転系に設けた駆動モータの制御不良で暴走回転によって回転系が回転しすぎることがあり、電線、信号線等の断線を招いたり、機器の破損を生じたりすることがある。
【特許文献1】特開平11−299182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、ケーブルが断線するような捻じれが生じないように、同一方向に任意の角度以上に回転移動しない回転機構のストッパー構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転機構のストッパー構造は、回転軸心に対して互いに回転可能な、第1回転体と第2回転体とを備えた回転機構において、第1回転体に対する第2回転体の回転移動を、任意の角度に規制するためのストッパーを備え、このストッパーが、回転軸心に対して回転可能な少なくとも一の中間回転体と、第1回転体に設けられた第1突起部と、第2回転体に設けられた第2突起部と、中間回転体に設けられた中間係合部とからなり、各回転体が回転する際、第1及び第2突起部は互いに干渉せず、中間係合部は第1及び第2突起部のそれぞれに係合可能なよう設けられている。
【0007】
好ましい実施例では、第1突起部と第2突起部とが、それらの回転軌跡が回転軸心の周りに径方向に略同一であって、軸方向に間隔を隔てて配置されている。
【0008】
別の好ましい実施例では、第1突起部と第2突起部とが、それらの回転軌跡が回転軸心の周りに径方向に異なるよう配置されている。
【発明の効果】
【0009】
前記したように、本発明の回転機構のストッパー構造によれば、各回転体が回転する際に、第1及び第2突起部は互いに干渉せず、中間係合部は第1及び第2突起部のそれぞれに係合するよう設けられている。このような構造にすることで、第1回転体に対して第2回転体が回転する際、先ず第2突起部が中間係合部に係合し、中間回転体が第2回転体に追従して回転して、中間係合部が第1突起部に係合する。これによって、第1回転体に対する第2回転体の、同一方向の回転移動が規制されるので、この回転機構で連結された固定系と回転系の間を渡るケーブルは、必要以上に捻られず断線しない。
このストッパー構造によれば、中間回転体の数や各係合部の形状によって、所望の回転や角度に対応できるよう調節することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る回転機構のストッパー構造について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係るストッパー構造の回転機構を備えた固定系と回転系の全体を示す概略斜視図である。
図1の如く、回転系Rと固定系Fは、回転機構1を介して連結されている。この回転機構1は、回転軸心に対して相対的に回転可能な第1回転体11と第2回転体12とを備えている。そして、第1回転体11が固定系Fに固定され、第2回転体12が回転系Rに固定されている。
回転系Rにはモーター等の駆動源Dが設けられており、この駆動源Dの駆動軸D1と、回転機構1の第1回転体11とが、ベルトBで架け渡されている。そして、この駆動源Dのための電源Pが、固定系Fに設けられており、この電源Pから駆動源Dへ電力を供給するためのコードCが、回転機構1の中空軸部10内を通じて設けられている。
【0012】
従って、駆動軸D1の回転駆動によって、ベルトBを介してモータD、第2回転体12を含む回転系R全体が、中空軸10のまわりに回転する。この場合、第1回転体11は固定系Fに固定してあるので、第1回転体11は回転することなく、ベルトBと回転系Rが一体的に軸10のまわりを公転することになる。そして、回転系Rが多数回転することによって、コードCが捻じれて断線しないよう、回転機構1にストッパー2が設けられている。このストッパー2は、後述で詳細に説明するが、第1回転体11に対して、第2回転体12の回転を任意の角度内に規制するような構造になっており、これによって、回転系Rが必要以上に同一方向に回転しないよう制御できるので、コードCの捻じれによる断線を防止することができる。
【0013】
図2は、本発明に係る回転機構のストッパー構造を説明するための図であって、(a)は分解した状態の回転機構を示す斜視図、(b)は組立てた状態の回転機構を示す正面図である。
図2(a)の如く、回転機構1は、第1回転体11、第2回転体12及び中間回転体13を備えている。第1回転体11は、円板状のベース部111を有し、このベース部111の下面側にベルトBを掛けるための掛止部112が設けられている。そして、ベース部111の上面の中心に、中空軸部10を備えた円筒部110が設けられている。更に、ベース部111の上面の周縁側に、上方に突出する第1突起部21が設けられている。
【0014】
第2回転体12はリング状であって、中心に形成された中空部120が、第1回転体11の円筒部110に回転可能にはまるようになっている。そして、第2回転体12の下面の周縁側に、下方に突出する第2突起部22が設けられている。
中間回転体13もリング状になっており、第2回転体12と同様に、中心の中空部130は円筒部110に回転可能にはまるよう形成されている。そして、中間回転体13の周面に、径方向に突出する中間係合部23が設けられている。
【0015】
そして、第1回転体11の円筒部110に、中間回転体13及び第2回転体12を挿入することにより、図2(b)に示すように、第1回転体11と第2回転体12の間に、中間回転体13が配され、各回転体11,12,13が回転軸心aに対して相対的に回転可能な、回転機構1が形成される。各回転体11,12,13が相対的に回転する際、第1突起部21及び第2突起部22は互いに干渉せず、中間係合部23は、第1及び第2突起部21,22に係合するよう構成されている。即ち、本例では、図2(b)の如く、第1突起部21の上面が、第2突起部22の下面より低くなっており、中間係合部23の上面が、第2突起部22の下面より高く、中間係合部23の下面が、第1突起部21の上面より低くなっている。そして、第1突起部21と第2突起部22とは、後述で詳細に説明するが、それら21,22の回転軌跡が回転軸心aの周りに径方向に略同一であって、軸方向に間隔を隔てて配置されている。
この第1突起部21、第2突起部22、及び中間係合部23により、回転機構1のストッパー2が構成されている。
【0016】
次に、図3に基づいて、回転機構1の動作に伴うストッパー2の作用について説明する。図3は、回転機構の回転動作の状態を示しており、各図の上方側が回転機構の平面図、下方側が回転機構の正面図である。
【0017】
第1突起部21の右側に中間係合部23が当接し、中間係合部23の右側に第2突起部22が当接した状態(図3(a)参照)から、第1回転体11を固定し、第2回転体12を回転する際について説明する。図3(a)の状態から、第2回転体12が反時計方向(矢印方向)に回転することによって(図3(b)参照)、第2突起部22の右側が、中間係合部23の左側に当接する(図3(c)参照)。この状態で、更に第2回転体12が反時計方向に回転することで、第2突起部22が中間係合部23に係合して、中間回転体13が第2回転体12に追従して反時計方向に回転する(図3(d)参照)。そして、第2回転体12と中間回転体13が共に反時計方向に回転し、中間係合部23の右側が第1突起部21の左側に当接する(図3(e)参照)。これにより、第2回転体12と中間回転体13が第1回転体11に係合するので、第2回転体12の回転が、第1回転体11に対して停止することになる。
前記したように本例では、第2回転体12が、第1回転体11に対し、約2回転可能なよう構成されている。
【0018】
図4は、第2実施例の回転機構を示し、図4(a)は正面図、図4(b)は平面図である。図4の如く、この実施例の回転機構1は、前記した例の回転機構1とほぼ同様の構成であるので、異なる点についてのみ詳細に説明する。この回転機構1は、第1回転体11と第2回転体12の間に、第1中間回転体13’と第2中間回転体13’’の2つの中間回転体13が回転可能に設けられている。そして、第1中間回転体13’に第1中間係合部23’が、第2中間回転体13’’に第2中間係合部23’’が設けられている。第1中間係合部23’は、第1突起部21と第2中間係合部23’’に係合可能であって、第2突起部22には干渉しない。第2中間係合部23’’は、第1中間係合部23’と第2突起部22に係合可能であって、第1突起部21には干渉しないよう構成されている。
【0019】
このように構成することにより、図4の状態から、第2回転体12を反時計方向(図の裏側)に回転することで、先ず第2突起部22が第2中間係合部23’’に係合する。これにより第2中間回転体13’’が、第2回転体12に追従して反時計方向に回転する。そして、第2回転体12と第2中間回転体13’’が一体で回転することにより、第2中間係合部23’’が、第1中間係合部23’に係合する。これにより第1中間回転体13’が、第2回転体12及び第2中間回転体13’’に追従して回転する。そして、第1中間係合部23’が、第1突起部21に係合することにより、第2回転体12の回転が、第1回転体11に対して停止する。
【0020】
この説明のように、本例では、第2回転体12は、第1回転体11に対して、約3回転するよう構成されている。従って、中間回転体13の数で、第1回転体11に対する第2回転体12の回転数を調節することができる。また、各係合部21,22,23の幅によって、回転角度の微調節も可能である。
【0021】
図5及び図6は、第3実施例の回転機構を説明するための図である。図5は、回転機構を示しており、図5(a)は、図5(b)に示すB−B’矢視方向の断面平面図、図5(b)は、図5(a)に示すA−A’矢視方向の断面正面図である。図6は、回転機構の回転動作の状態を示す、図5(b)のB−B’矢視方向の断面平面図である。
【0022】
この実施例の回転機構1も、前記した回転機構1と略同様の構成である。図5の如く、第1回転体11に円筒部110が設けられており、この円筒部110の外側にすっぽりはまって回転する円筒部131が、中間回転体13に設けられている。第2回転体12は、中央に、中間回転体13の円筒部131が回転可能にはまる中空部120が設けられている。そして、第1回転体11、第2回転体12及び中間回転体13が、回転軸心aの周りを互いに回転可能に嵌合されている。
【0023】
図5(b)のように、第1回転体11には、上方に突出する第1突起部21が設けられ、第2回転体12には、下方に突出する第2突起部22が設けられている。中間回転体13には、円筒部131から径方向にのびる中間係合部23が設けられている。そして、各回転体11,12,13の回転によって、第1突起部21は第2突起部22に干渉しないよう、又中間係合部23は第1及び第2突起部21,22に係合するよう構成されている。即ち、図5(b)の如く、各係合部21,22,23は、同じ高さに設けられているが、図5(a)のように、第1突起部21は周縁側に設けられ、第2突起部22はそれより中心側に設けられ、中間係合部23は中心側から周縁側にのびている。従って、第1突起部21と第2突起部22とは、それら21,22の回転軌跡が回転軸心aの周りに径方向に異なるよう配置されている。
【0024】
次に、この回転機構1の回転動作について、図6に基づき詳細に説明する。第1突起部21の図6における上側に中間係合部23が当接し、中間係合部23の上側に第2突起部22が当接した状態(図6(a)参照)から、第1回転体11を固定し、第2回転体12を回転する際について説明する。図3(a)の状態から、第2回転体12が反時計方向(矢印方向)に回転することによって(図3(b)参照)、第2突起部22の上側が、中間係合部23の下側に当接する(図3(c)参照)。この状態で、更に第2回転体12が反時計方向に回転することで、第2突起部22が中間係合部23に係合した状態で、中間回転体13が第2回転体12に追従して反時計方向に回転する(図3(d)参照)。そして、第2回転体12と中間回転体13が共に反時計方向に回転し、中間係合部23の上側が第1突起部21の下側に当接する(図3(e)参照)。これにより、第2回転体12と中間回転体13が第1回転体11に係合するので、第2回転体12の回転が、第1回転体11に対して停止することになる。
これにより本例の回転機構1も、第2回転体12が、第1回転体11に対し、約2回転可能なよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るストッパー構造の回転機構を備えた固定系と固定系の全体を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係る回転機構のストッパー構造を説明するための図であって、(a)は分解した状態の回転機構を示す斜視図、(b)は組立てた状態の回転機構を示す正面図である。
【図3】回転機構の回転動作の状態を示しており、各図の上方側が回転機構の平面図、下方側が回転機構の正面図である。
【図4】第2実施例の回転機構を示しており、図4(a)は正面図、図4(b)は平面図である。
【図5】第3実施例の回転機構を示しており、図5(a)は、図5(b)に示すB−B’矢視方向の断面平面図、図5(b)は、図5(a)に示すA−A’矢視方向の断面正面図である。
【図6】第3実施例の回転機構の回転動作の状態を示す、図5(b)のB−B’矢視方向の断面平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1・・・回転機構
2・・・ストッパー
11・・・第1回転体
12・・・第2回転体
13・・・中間回転体
21・・・第1突起部
22・・・第2突起部
23・・・中間係合部
a・・・回転軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心に対して相対的に回転可能な、第1回転体と第2回転体とを備えた回転機構において、前記第1回転体に対する前記第2回転体の回転移動を、任意の角度に規制するためのストッパーを備え、前記ストッパーが、前記回転軸心に対して回転可能な少なくとも一の中間回転体と、前記第1回転体に設けられた第1突起部と、前記第2回転体に設けられた第2突起部と、前記中間回転体に設けられた中間係合部とからなり、前記各回転体が回転する際、前記第1及び第2突起部は互いに干渉せず、前記中間係合部は前記第1及び第2突起部のそれぞれに係合可能なように設けられていることを特徴とする回転機構のストッパー構造。
【請求項2】
前記第1突起部と前記第2突起部とが、それらの回転軌跡が前記回転軸心の周りに径方向に略同一であって、軸方向に間隔を隔てて配置されていることを特徴とする請求項1記載の回転機構のストッパー構造。
【請求項3】
前記第1突起部と前記第2突起部とが、それらの回転軌跡が前記回転軸心の周りに径方向に異なるよう配置されていることを特徴とする請求項1記載の回転機構のストッパー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−202072(P2006−202072A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13531(P2005−13531)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】