説明

回転濃縮機における原液供給装置

【課題】 スクリュー軸に設けた供給孔から供給する原液をろ過室の始端部に移送して、濃縮効率の高い回転濃縮機における原液供給装置を提供する。
【解決手段】 外筒(1)とスクリュー軸(3)を差速回転させながら固液分離を行なうろ過脱水装置において、スクリュー軸(3)に設けた原液の供給孔(12)をろ過室(6)の始端部に開口し、この供給孔(12)を被覆する始端側を開放した環状筒(13)をスクリュー軸(3)に止着すると共に、スクリュー羽根(2)を環状筒(13)にも巻き掛けたもので、供給される汚泥がろ過室(6)の始端部に移送されて濃縮時間とろ過面積が大きくなる。環状筒(13)から外筒(1)のろ過面までの落差が小さくなり、凝集フロックの破壊が防止され、濃縮効率が高くなる。そして、スクリュー羽根(2)で原液を撹拌することもなく、水負荷が高く目詰まりしやすい始端部の外筒(1)のろ過面を再生することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、凝集剤を添加した難ろ過性の凝集汚泥や、上水汚泥等の細かい粒子を含む無薬注汚泥を、外筒とスクリュー軸の間のろ過室に供給し、スクリュー羽根で汚泥を移送しながら外筒からろ液を分離する回転濃縮機における原液供給装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、懸濁物質を含有する汚泥をろ過室に供給し、スクリュー軸を回転させながら、スクリュー羽根で外筒のろ過面を再生し、汚泥をろ過・脱水させる装置として、スクリュープレスは良く知られている。そして、スクリュープレスを濃縮ゾーンと、ろ過・脱水ゾーンに分割し、濃縮ゾーンの外筒スクリーンとスクリュー軸を互いに逆方向に差速回転をさせながら、スクリュー軸に設けた原液供給路の供給孔からろ過室に汚泥を供給し、ろ液を分離した濃縮ゾーンの濃縮汚泥をろ過・脱水ゾーンに送り出す回転濃縮機能を有するスクリュープレスは、特許文献1に記載してあるように公知である。また、大量の濃度が低く水負荷の大きい汚泥を処理するスクリュープレス型の回転濃縮機も良く知られている。そして、スクリーンを張設した外筒とスクリュー羽根を巻き掛けたスクリュー軸を同心状に構成し、外筒とスクリュー軸を逆回転させながら、スクリュー軸に設けた供給路の供給孔からろ過室に汚泥を供給し、ろ過室の終端部から濃縮汚泥を抜出す回転濃縮機も、特許文献2に記載してあるように公知である。
【0003】
【特許文献1】特開2004−66306号公報(請求項10、図2)
【特許文献2】特開2004−17014号公報(段落番号0007,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の外筒とスクリュー軸を逆方向に差速回転させるスクリュープレスや回転濃縮機は、スクリュー軸の相対速度が速くなり、スクリュー羽根が外筒のろ過面を早く再生して、濃度が低く水負荷の大きい汚泥の大量処理が可能となる。スクリュー軸の軸芯から供給する汚泥は、スクリュー軸に巻き掛けたスクリュー羽根の回転に影響されることがなく、ろ過室に供給した軟弱な凝集フロックを破壊することがなく、脱水性も損なわれることがない長所がある。しかしながら、従来のスクリュー軸に設けた供給孔からろ過室に供給される汚泥は、流下して前後に流動し、ろ過室の始端部に原液が充満せずに、ろ過室での濃縮時間とろ過室の全長が有効に機能していなかった。充満していないろ過室の汚泥が流下する汚泥で掻き乱され、軟弱な凝集フロックを破壊する恐れもあった。
【0005】
そして、大型の回転濃縮機では、スクリュー軸の強度を確保するために一対の供給孔が、スクリュー羽根を挟み、スクリュー軸の軸芯方向に前後にずらせて左右に開口してある。一対の供給孔の一方が下方に回動した時に、原液が原液供給路からろ過室に供給される。一対の供給孔から流下する原液は、前後に分散されてろ過室の始端部に充満せずに、ろ過室での濃縮時間とろ過室の全長が有効に機能していなかった。特に、回転濃縮機が大型化すると、スクリュー軸の供給孔から外筒のろ過面までの落差があり、ろ過室の始端部に充満していない汚泥が掻き乱され、軟弱な凝集フロックを破壊する恐れもあった。この発明は、スクリュー軸の前後の供給孔から供給される原液の全量をろ過室の始端部に供給し、効率の良い濃縮脱水を行なう回転濃縮機における原液供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る回転濃縮機における原液供給装置の要旨は、ろ過面を有する外筒にスクリュー羽根を巻き掛けたスクリュー軸を内設し、スクリュー軸に設けた原液供給路から汚泥を供給し、外筒とスクリュー軸を差速回転させながら固液分離を行なうろ過脱水装置において、スクリュー軸の原液供給路に連通する供給孔をろ過室の始端部に開口し、スクリュー軸の供給孔を被覆する環状筒をスクリュー軸に止着して、環状筒の始端側を開放したもので、供給孔から流入した原液が、ろ過室の始端側に移送され、ろ過室の始端部から終端部まで有効に利用でき、濃縮時間とろ過面積が大きく取れる。そして、原液供給用の環状筒がスクリュー軸に外環してあるので、外筒のスクリーンまでの落差が小さくなり、凝集フロックの破壊が防止され、濃縮効率が高くなる。また、スクリュー軸に巻き掛けたスクリュー羽根を、スクリュー軸に止着した環状筒に連設して巻き掛けたので、スクリュー羽根で原液を撹拌することもなく、目詰まりしやすい水負荷が高い始端部の外筒のろ過面を再生することができる。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る回転濃縮機における原液供給装置は上記のように構成してあり、スクリュー軸から供給された原液は、供給孔を被覆する環状筒に案内されて、全量がろ過室の始端側に移送され、外筒の全ろ過面を有効に使うことができる。そして、環状筒から原液が供給されるので、外筒のろ過面までの落差が小さくなり、フロックの破壊も防止される。しかも、一連に巻き掛けられたスクリュー羽根で汚泥を掻き乱すこともなく濃縮効率が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明に係る実施の形態を図面に基づき詳述すると、先ず、図1は回転濃縮機の縦断面図であって、周部にろ過面を有する外筒1に、スクリュー羽根2を巻き掛けたスクリュー軸3を同心状に内設してある。外筒1の両端部に入口外筒フランジ4と出口外筒フランジ5が嵌着してあり、外筒1とスクリュー軸3の間にろ過室6を形成してある。外筒1の入口外筒フランジ4がスクリュー軸3に軸支してあり、出口外筒フランジ5がろ液受槽7の軸受8に軸支した外筒駆動軸9に連結してある。図1に示すように、スクリュー軸3にスクリュー駆動軸10が連結してあり、スクリュー駆動軸10は外筒駆動軸9に挿通してある。外筒駆動軸9とスクリュー駆動軸10が駆動機(図示せず)に連動連結してある。外筒1とスクリュー軸3は同方向に差速回転させてもよいが、外筒1とスクリュー軸3を逆回転させれば、相対的にスクリュー羽根2の回転数を高め、外筒1のろ過面の摺接回数を増加させることができる。
【0009】
図1に示すように、スクリュー軸3の始端側に原液供給路11が設けてあり、この原液供給路11に連通する一対の供給孔12、12が、強度を保つために位置をずらせてスクリュー軸3の左右の外周面に開口してある。図2はスクリュー羽根を巻き掛けたスクリュー軸の外形図であって、スクリュー軸3の供給孔12を被覆する環状筒13がスクリュー軸3に止着してあり、環状筒13の始端側13aを開放してある。図1に示すように、スクリュー軸3の前後の供給孔12、12から環状筒13に供給された原液は、密封された環状筒13の内部を供給側に逆流し、スクリュー軸3の外周面の環状筒13の始端側13aの開口から、ろ過室6の入口外筒フランジ4の近傍に流入する。
【0010】
原液の全量がろ過室6の始端部に移送され、外筒1の全ろ過面を効率よく使うことができる。スクリュー軸3を囲繞する環状筒13から原液が供給されるので、ろ過室の汚泥面までの落差が小さくなり、フロックの破壊が防止され、濃縮効率が良くなる。スクリュー軸3に巻き掛けたスクリュー羽根2は、スクリュー軸3に止着した環状筒13に連設して巻き掛けてあり、一連のスクリュー羽根2は、原液を掻き混ぜることがなく、フロックを破壊することもない。図3は出口外筒フランジの一部縦断側面図であって、外筒1に嵌着する出口外筒フランジ5の円周方向に濃縮汚泥の排出用の複数の排出口14が設けてあり、スクリュー羽根2で移送しながら外筒のろ過面からろ液を分離して、出口外筒フランジ5の排出口14から濃縮汚泥を排出する。なお、符号15は外筒1に沿って配設した洗浄管であって、目詰まりした外筒1のろ過面を再生させる。
【0011】
図4は他の実施例の濃縮機能を有するスクリュープレスの縦断面図であって、ろ過面を有する円筒状の外筒16の内部に、スクリュー羽根17を巻き掛けて汚泥の供給側からケーキの排出側に向って拡大させたスクリュー軸18が配設してあり、外筒16とスクリュー軸18との間のろ過室19を供給側から脱水側に向って減少させてある。
スクリュー軸18の後端部にスクリュー駆動軸20が連結してあり、スクリュー駆動軸20に嵌着したスプロケット21がスクリュー駆動機22に連動連結してある。外筒16に内設したスクリュー軸18をスクリュー駆動機22で回転させて、スクリュー羽根17でろ過室19内の汚泥を供給側から排出側に向って移送させながら、外筒16のろ過面からろ液を排出する。
【0012】
図4に示すように、円筒状の外筒16が前半部の濃縮ゾーンAの外筒16aと、後半部のろ過・脱水ゾーンBの外筒16bに分割されており、濃縮ゾーンAの外筒16aとろ過・脱水ゾーンBの外筒16bの間に中間軸受23が介装してある。図5はスクリュープレスの濃縮ゾーンの拡大図であって、外筒16aの供給側に連結したフランジ24にスプロケット25が嵌着してあり、正逆転可能な外筒駆動機26に連動連結してある。濃縮ゾーンA側の外筒16aが、ろ過・脱水ゾーンB側の外筒16bと切離して回転できるようにしてあり、濃縮ゾーンAが回転濃縮機を構成している。スクリュー軸18の始端側に原液供給路27が設けてあり、この原液供給路27に連通する一対の供給孔28、28が、濃縮ゾーンAのろ過室19に開口してある。この一対の供給孔28、28はスクリュー軸18の軸芯方向に位置をずらせて対象に外周面に開口してある。
【0013】
スクリュー軸18の供給孔28、28を被覆する環状筒29がスクリュー軸18に止着してあり、環状筒29の始端側29aを開放してある。
図5に示すように、スクリュー軸18の一対の供給孔28、28から前後に分割されて環状筒29に供給された原液を、スクリュー軸18の外周面の環状筒29の始端側29aからフランジ24近傍のろ過室19に流入させる。
原液の全量がろ過室19の始端側に移送され、外筒16の全ろ過面を効率よく使うことができ、フロックの破壊も防止されて濃縮効率が高くなる。環状筒29から原液が供給されるので、外筒16aのろ過面までの落差が小さくなり、フロックの破壊が防止され、濃縮効率が良くなる。
スクリュー軸18に巻き掛けたスクリュー羽根17を、スクリュー軸18に止着した環状筒29に連設して巻き掛けてあり、スクリュー羽根17で原液を撹拌することもない。
【0014】
濃縮機能を有するスクリュープレスの運転は、スクリュー軸18をスクリュー駆動機22で回転させながら、濃縮ゾーンAの外筒16aを外筒駆動機26でスクリュー軸18の反対方向に逆回転させて汚泥の濃縮、脱水を行なう。固形物負荷よりも水負荷が大きい汚泥でも、濃縮ゾーンAの外筒16aをスクリュー軸18の回転の逆方向に差速回転させることにより、濃縮ゾーンAの外筒16aのろ過面にスクリュー羽根17の摺接回数が増加する。目詰りを未然に防止した外筒16aからろ液が分離され、濃度の高い濃縮汚泥がろ過・脱水ゾーンBへ移送され、汚泥の処理量が増加する。
【0015】
図4に示すように、ろ過・脱水ゾーンBの外筒16bの後端に密閉円筒状の調整室30を形成して、調整ゾーンCとしてある。調整室30の排出口に背圧調整用のプレッサー31が配設してあり、排出口の開口量を調節しながら調整室30のケーキに背圧を加え、ろ過・脱水ゾーンBから移送されたケーキに調整室30の内部で圧密して含水率のバラツキを均一化させる。更に、調整ゾーンCの調整室30からろ過・脱水ゾーンBの外筒16b内に背圧を加えて、固液分離を促進させて水分を調整する。なお、符号32は外筒16の周面に沿って配設した洗浄管である。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明は、スクリュー軸の供給孔から供給される原液の全量をろ過室の始端側に供給し、濃縮時間とろ過面積を長くして濃縮効率を高めると同時に、汚泥の掻き乱しを防止した回転濃縮機における原液供給装置となるもので、固形物負荷よりも水負荷の大きい濃度の低い大量の汚泥でも、目詰まりを防止しながら濃縮脱水が可能となる。従って、上水、下水及び工場排水などの細かい粒子の浮遊物を無薬注で処理する回転濃縮機に適用できる。そして、下水、し尿、或いは食品生産加工排水などに凝集剤を添加して、フロックを生成させてろ過・脱水を行なう濃縮機能を有するスクリュープレスにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明に係る回転濃縮機の縦断面図である。
【図2】同じく、環状筒を配設したスクリュー軸の側面図である。
【図3】同じく、濃縮機の出口外筒フランジの一部切欠き側面図である。
【図4】同じく、他の実施例の濃縮機能を有するスクリュープレスの縦断面図である。
【図5】同じく、スクリュープレスの濃縮ゾーンの要部拡大図である。
【符号の説明】
【0018】
1、16 外筒
2、17 スクリュー羽根
3、18 スクリュー軸
6、19 ろ過室
11、27 原液供給路
12、28 供給孔
13、29 環状筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過面を有する外筒(1、16)にスクリュー羽根(2、17)を巻き掛けたスクリュー軸(3、18)を内設し、スクリュー軸(3、18)に設けた原液供給路(11、27)から汚泥を供給し、外筒(1、16a)とスクリュー軸(3、18)を差速回転させながら固液分離を行なうろ過脱水装置において、スクリュー軸(3、18)の原液供給路(11、27)に連通する供給孔(12、28)をろ過室(6、19)の始端部に開口し、スクリュー軸(3、18)の供給孔(12、28)を被覆する環状筒(13、29)をスクリュー軸(3、18)に止着して、環状筒(13、29)の始端側を開放したことを特徴とする回転濃縮機における原液供給装置。
【請求項2】
上記スクリュー軸(3、18)に巻き掛けたスクリュー羽根(2、17)を、スクリュー軸(3、18)に止着した環状筒(13、29)に連設して巻き掛けたことを特徴とする請求項1に記載の回転濃縮機における原液供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−55706(P2006−55706A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238012(P2004−238012)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】