説明

回転炉床式還元炉を用いた還元鉄の製造方法および還元鉄ペレットの冷却装置

【課題】高炉向けの還元鉄製造において、回転炉床式還元炉で還元したペレットを再酸化させずに、比較的短時間で冷却し、安価な設備コストを実現可能となる還元鉄の製造方法、及び還元鉄ペレットの冷却装置を提供すること。
【解決手段】回転炉床式還元炉を用いた還元鉄の製造方法であって、回転炉床式還元炉にて還元した還元鉄ペレットを、ロータリークーラーにて、不活性ガス雰囲気下で200〜400℃の温度まで冷却後、当該還元鉄ペレットを、空中にて、冷却水の直接散水で、更に冷却する。その際、還元鉄ペレットを傾斜したシュート上から落下させて、落下途中の空中にて、前記冷却水の直接散水で更に冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転炉床式還元炉で、酸化鉄を含む粉から構成される成形体を加熱還元して、還元鉄ペレットを製造し、更に、これを冷却して還元鉄を製造する方法、及び、その際に用いる還元鉄ペレットの冷却設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
還元鉄を製造するプロセスとして、石炭などの炭素還元剤で還元を行う回転炉床法が実施されている。この技術では、酸化鉄を含む粉体と炭素粉を混合した後、ペレットに成形し、これを1100℃以上の温度で加熱することにより、酸化鉄と炭素を反応させて、還元鉄を製造している。
【0003】
回転炉床炉で還元された還元鉄ペレットは、還元後の使用先に応じた処理が必要である。例えば、高炉での使用の場合は、常温まで冷却した後に使用するのが一般的であり、電気炉で使用する場合は、熱の有効利用の観点から、還元鉄ペレットは高温のまま使用される。
【0004】
高炉にて使用する場合は、還元鉄ペレットに高い強度が要求されることから、冷却時の急冷により強度が低下することを配慮した冷却が必要とされる。合わせて、冷却時においては還元鉄ペレットの再酸化を抑制することが必要である。
【0005】
そのため、高炉向けの還元鉄製造の際には、還元鉄ペレットを不活性ガス雰囲気下においてロータリークーラーで冷却して再酸化を防止する方法が取られている。しかし、還元鉄ペレットを還元直後の高温域から、高炉へ搬送可能とするための100℃以下まで全て不活性雰囲気下のロータリークーラーで冷却することは、低温域になるほど冷却速度が低下するため、ロータリークーラー長が増大し且つ冷却時間が長くかかるため好ましくない。
【0006】
そこで、再酸化が起こり難くなる温度域までを、不活性雰囲気下のロータリークーラーで冷却し、その後は、冷却速度の大きな直接空冷や水槽への浸漬で冷却する方法が取られてきた。
【0007】
例えば、特許文献1では、回転炉床式の熱処理炉から排出された還元ペレットを、空気中での酸化(再酸化)を抑制するため、外周が水冷され、内部が無酸化雰囲気ガスに保持されたロータリークーラー中を通過させて400〜600℃に冷却した後に、当該装置より排出し、還元ペレットをさらに冷却水槽中に投入する設備が示されている。また、冷却水槽に投入する代わりに、コンベア上にて冷却水を直接吹き付ける設備が示されている。
【0008】
また、特許文献2では、再酸化速度は400℃までは大きく、400〜300℃に温度が下がる段階で急速に小さくなり、300℃以下では、再酸化が起こりにくくなることが示されており、回転炉床炉式還元炉から排出した還元ペレットを、酸素濃度を低下させたロータリークーラーなどで、接触伝熱と輻射伝熱により、200〜400℃まで冷却した後、更に、この温度以下では、空気気中で対流伝熱にて冷却する方法が示されている。
【0009】
また、特許文献3では、回転炉床炉式還元炉から排出した還元ペレットを、450℃以下まで、内部雰囲気の酸素濃度を低下させたロータリークーラーにて冷却後、更に、低温度域をロータリークーラー内で散水冷却するか、二次冷却装置を用いて空気流を当てることにより冷却する方法が示されている。
【0010】
【特許文献1】特開2001-255068号公報
【特許文献2】特開2004-218019号公報
【特許文献3】特開2002-194412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、400〜600℃という高い温度域から、水槽に浸漬又はコンベア上で散水して冷却するため、再酸化が生じやすいという問題があった。また、水槽に浸漬した場合、ペレットが内部まで十分に水分を吸収してしまうため、水分を含んでいる時間が長くなり、より再酸化が進みやすいという問題があることが判った。これはコンベア上で散水する方法でも同様で、余分な水がコンベア上に堆積するため、ペレットが十分に内部まで水分を吸収してしまい、水槽に浸漬する場合と同じ問題を持つことが判った。
【0012】
また、含有水分を除去するには、送風ファンや乾燥機などの新たな対応を行う設備が必要となるため設備コストの増大も招いていた。
【0013】
なお、コンベア上で散水する方法において、内部まで水分が吸収するのを抑制するため、水量を絞ってコンベア上にて散水することが考えられるが、コンベア上で多数層に堆積した還元鉄ペレットに、コンベア上方の一方向から散水しただけでは、表層のペレットにのみ冷却水が浸透し、下方のペレットには冷却水が浸透しなくなるため、ペレットの冷却に不均一が発生して、冷却不足や冷却時間増を招くものである。
【0014】
また、特許文献2記載の方法では、冷却されたペレットを、空気により冷却する実施形態が示されているが、空冷にて搬送(トラックなどでの輸送を含む)が可能な温度(例えば100℃以下)まで冷却するには、空冷での冷却能力が小さいことから冷却装置を大型化する必要があり、設備コストが増大するという問題を有していた。
【0015】
また、特許文献3記載の方法では、低酸素濃度雰囲気下におけるロータリークーラーでの冷却の後、ロータリークーラー内で散水冷却しているが、ロータリークーラー内での冷却のため、余分な水がロータリークーラー底面上に堆積するため、ペレットが内部まで十分に水分を吸収してしまい、特許文献1での水槽への浸漬やコンベア上での散水と同様の問題を持つことが判った。
【0016】
また、特許文献3記載の方法では、2段目の冷却として空気流による冷却設備を設けた例も挙げられているが、新たに複雑な冷却設備を作る必要があり、更に、空気流による対流伝熱冷却では、水による冷却に比べて冷却能力が低いことから、それに対応するため、設備が大型化することから、設備コストが増大するという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、再酸化しない温度域まで不活性雰囲気下でロータリークーラーにて冷却した後、低温域で冷却速度の高い冷却方法で冷却する方法において、低温域での冷却を、空気冷却に比べて冷却速度が大きな散水による冷却とした際に生じる、還元鉄ペレット内部まで水分が吸収されて、再酸化が進行する問題や、余分な水分を除去するために乾燥機等の新たな設備を設置する必要があるといった従来技術の問題点を解決することを目的とする。
【0018】
すなわち、高炉向け還元鉄の製造において、回転炉床式還元炉で還元したペレットを再酸化させずに、比較的短時間で冷却でき、設備構造がシンプルで、安価な設備コストで実現可能となる還元鉄の製造方法、及び還元鉄ペレットの冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明者等は鋭意検討の結果、還元鉄ペレットを水槽に浸漬した場合はペレット内に水分が長く止まるため、常温域においても再酸化が進行することを確認すると共に、散水により冷却してもペレット内に水分が長く止まらなければ、200〜400℃から散水冷却しても再酸化は殆ど進行しないことを見出した。そして、散水による冷却を空中で行うことにより、ペレット内に水分が長く止まらず、再酸化を防止できることを見出して発明をなすに至った。
【0020】
その要旨とするところは、以下に記載の通りである。
(1)回転炉床式還元炉にて還元した還元鉄ペレットを、ロータリークーラーにて、不活性ガス雰囲気下で200〜400℃の温度まで冷却した後、当該還元鉄ペレットを、空中にて、冷却水の直接散水で更に冷却することを特徴とする回転炉床炉式還元炉を用いた還元鉄の製造方法。
(2)前記ロータリークーラーにて冷却した後の還元鉄ペレットを、傾斜したシュート上から空中に落下させ、落下途中の空中にて、前記冷却水の直接散水で、還元鉄ペレットを更に冷却することを特徴とする前記(1)に記載の回転炉床式還元炉を用いた還元鉄の製造方法。
(3)前記冷却水の直接散水で、前記還元鉄ペレットを100℃以下に冷却することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の回転炉床式還元炉を用いた還元鉄の製造方法。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の還元鉄の製造方法で使用する還元鉄ペレットの冷却装置であって、回転炉床式還元炉から排出された還元鉄ペレットを不活性ガス雰囲気下でガス冷却及び輻射冷却するロータリークーラーと、還元鉄ペレットの落下面が板状で且つ傾斜するシュートを有すると共に、当該シュートを水平方向に回転可能とするシュート旋回駆動装置を有する還元鉄ペレット冷却シュートと、前記冷却後の還元鉄ペレットを前記ロータリークーラーから還元鉄ペレット冷却シュートまで搬送する還元鉄ペレット搬送装置と、前記シュートの先端部に取り付けられて、前記シュートから落下して空中に放出される還元鉄ペレットに対して、冷却水を直接散水する散水装置とからなる還元鉄ペレットの冷却装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高炉向けの還元鉄製造において、回転炉床式還元炉で還元したペレットを再酸化させずに、比較的短時間で冷却することができる。また、設備構造をシンプルにすることができ、安価な設備コストで実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、回転炉床法にて、炭素を還元剤として、酸化鉄を固体状態で還元して還元鉄ペレットを生成し、その後、搬送可能な温度(100℃以下)まで冷却して、高強度の高炉向け還元鉄ペレットを製造する方法と装置に関するものである。
【0023】
図1の設備は、本発明に係る回転炉床法による還元プロセスの設備構成の例であり、回転炉床式還元炉1、還元鉄ペレット冷却装置(ロータリークーラー)2、還元鉄ペレット搬送装置3、還元鉄冷却シュート4、散水装置5、水回収ピット6、循環ポンプ7から構成されている。
【0024】
回転炉床式還元炉1に供給された、原料ペレットは、炉内にて1200〜1400℃程度まで加熱され還元反応を起こし、還元鉄粒状物(以下還元鉄ペレットと称す)として製造される。
【0025】
高温の還元鉄ペレットは、再酸化を防止するため、内部の雰囲気の酸素濃度を調整(N2などの不活性ガスを導入して不活性ガス雰囲気とすることで酸素濃度を3%程度まで低下)したロータリークーラーからなる還元鉄ペレット冷却装置2にて、冷却される。還元鉄ペレットは200〜400℃まで冷却されると再酸化されにくくなることから、この温度範囲までは、酸素濃度を制御した冷却装置の内部にて冷却される必要がある。このように、再酸化を起こさない温度、200〜400℃までを、不活性ガス雰囲気下での冷却に限定することで、還元鉄ペレット冷却装置(ペレットクーラー)2は、適正な設備サイズとなり、経済的にも合理性の高い設備となる。
【0026】
本発明では、再酸化しない温度まで冷却された還元鉄ペレットを、搬送装置3により、還元鉄ペレット冷却シュート4まで搬送し、シュートから落下する還元鉄ペレットに対し、散水装置5を用いて、直接散水して冷却するものである。尚、還元鉄ペレット搬送装置3を省略して、還元鉄ペレット冷却装置(ロータリークーラー)2を出た直後に散水してもよい。冷却された還元鉄ペレット8は、壁に囲まれた製品ヤード9へ落下し、一時保管されたのち、搬送トラックに積載され、所定の利用元へ搬送される。
【0027】
散水した水は、製品ヤードに設置される水回収ピット6にて回収され、細粒などを沈殿分離した後に循環ポンプ7にて再び散水するラインへ戻され、循環使用される。循環使用は必ずしも必要ではないが、水処理の効率化という面から、循環が好ましい。
【0028】
図2は、還元鉄ペレット冷却シュート4の近傍を拡大した図である。還元鉄ペレット冷却シュート4は、シュート旋回駆動装置10により水平方向左右に往復回転できるような構造になっており、冷却シュート4から製品ペレットを落下させるとき、該シュートが左右に往復旋回することにより、冷却された製品ペレットが、製品ヤードに均等に堆積されるようになっている。また、その際、散水装置5は還元鉄ペレット冷却シュート4と稼動が同じになるように、該シュートに固定されていることが望ましい。
【0029】
図2では、シュート旋回駆動装置10として、冷却シュート4側に取り付けられた歯部12に噛み合う歯車13をモータ14により回転させて、シュートを往復回転させる装置構造の例を示している。
【0030】
更に、製品ペレットの散水冷却を補助的に調整(冷却の不均一発生時には、補助的に追加冷却を行う)するために、ヤード壁には、ヤード用追加制御用散水ノズル11の配置が好ましい。
【0031】
図3、4には、還元鉄ペレット冷却シュート4と散水装置5の詳細を示す。
【0032】
冷却シュートの形状は、落下面が落下する横幅方向に広い板状とし、還元鉄ペレット8が、極力薄い層となって、傾斜部を落下することが望ましく、設備の処理量より算出し、概ね1〜2層程度になるように設備の寸法を決定することが望ましい。シュートの傾斜角度は、製品の安息角以上(例えば30度)とすることで、内部での閉塞を防止することができて好ましい。
【0033】
また、シュートの底部には、図4に示すように段差のある構造を設け、還元鉄ペレットが、この段差部分に堆積することで、セルフライニング効果を発揮し、磨耗に対する耐久性を考慮した構造を設けることが好ましい。図4では、シュートの底部に、板片23をところどころに配置して段部を形成した例を示す。
【0034】
この還元鉄ペレットの堆積によるセルフライニング15構造により、還元鉄ペレットの落下速度が減速され、ペレットが散水を均一に受けることが可能となり、冷却効果を向上させる上で、望ましい構造である。
【0035】
シュートの先端には、左右の支持フレーム16を介してヘッダ17が取り付けられており、ヘッダには、導管18から送られてきた水19を空中に散水するための散水ノズル20が設けられている。
【0036】
シュートから排出された還元鉄ペレット8は、落下途中で散水ノズル20により形成された散水部21に衝突し、散水を受けながら冷却される。散水ノズル20の配置、本数としては、1本では周辺部への散水が十分でないことから、シュートの幅方向に複数本配置することが望ましい。還元鉄ペレットは、散水ノズル20により形成されたカーテン状となった散水部21に衝突し、カーテン状の散水を直接受けながら、下方へ落下し、冷却される。
【0037】
本発明の特徴は、空間中にて、落下しながら、還元鉄ペレットが表面全体に散水を受けることで効率的に短時間で冷却されること、更に、空中で散水されることで、還元鉄ペレットに衝突しなかった余分な水は落下途中で蒸発するために、蒸発潜熱により周囲の雰囲気温度を下げて還元鉄ペレットの冷却を補助すると共に、還元鉄ペレットがヤードに落下した際に、還元鉄ペレットが余分な水分を吸収することがない点である。このことにより、本発明においては、再酸化を防止しながら効率的に還元鉄ペレットを搬送可能な低温域(100℃以下)まで冷却することができる。
【0038】
更に、カーテン状の散水の先には、ペレット衝突板22を設けることにより、シャワーを通過したペレットを同衝突板22で反射させることで、確実にシャワー状の散水を受ける空間内を落下するようにすることが好ましい。
【0039】
このように、自由落下の状態を利用することで、例えば、流動層のような特別な設備を必要とせず、また、ベルトコンベア上での散水や水槽への浸漬での冷却における余分な吸収水分の乾燥設備も必要とせず、シンプルな構造からなることで、設備費用が低減され、かつ、設備のメンテナンス性の向上も可能となるものである。
【0040】
散水による冷却効果を確認するために、加熱炉にて200〜400℃に加熱したペレットを金属製の網かごに入れて、ペレットを1〜2層とし、散水により冷却する試験を実施、この時のペレットの温度変化を熱電対にて計測した。
【0041】
網かごを使用することで、余分の散水は、下方に抜け、本発明の散水状態を実現できる試験となるようにした。散水する水量:水量比(水リットル/ペレットkg)、並びにペレットの重量を変化させて、冷却試験を行った。その結果、300℃に加熱したペレットにおいては、1kgあたりのペレットに、0.1リットル以上を散水することで、80〜90℃まで冷却できることを確認できた。また、ペレットを400℃まで加熱した後に100℃以下まで散水冷却しても、再酸化は殆ど発生しないことを確認した。
【0042】
なお、ペレットの積層厚みを厚くした場合、層厚が薄い場合は、均一に冷却されるが、層厚みを厚くすると温度の不均一と冷却不足が発生することが判った。散水する場合には、層厚みを薄くすることが重要であり、望ましくは、1〜2層程度の厚みとすべきである。
【実施例】
【0043】
図1に示される還元用回転炉床法の回転炉とその冷却設備に、図2及び図4で示す冷却装置を組み合わせた設備を用いて操業した結果を実施例として示す。
【0044】
回転炉床式還元炉1は、毎時26トンの高炉向け還元鉄ペレットを製造するものである。1200℃にて還元され、得られた還元鉄ペレットを、N2ガスを吹きこむことで不活性雰囲気としたロータリ−クーラー方式の還元鉄ペレット冷却装置2にて、平均温度(金属製容器に複数回サンプリングした還元鉄ペレットを温度測定し平均を算出)として、300℃まで冷却した。尚、ペレットの温度は、還元鉄ペレット冷却装置(ロータリークーラー)2の排出部にて、採取したペレットを温度測定(放射温度計)して、当該温度以下であることを確認した。再酸化しにくい条件である400℃以下まで十分冷却されたことが確認された。
【0045】
その後、一次冷却された製品は、搬送装置3にて、垂直方向に搬送され、還元鉄ペレット冷却シュート4上部から、同装置に投入される。
【0046】
シュートを落下する還元鉄ペレットは、閉塞することなく、安定的に排出し、散水ノズル20により形成されたカーテン状の散水を表面に受け冷却される。尚、図4に示すように、カーテン状の散水領域を突き抜ける製品が存在することから、ペレットの衝突板22を設置して、確実にカーテン状の散水領域内にて散水を受けながら落下する調整が施されている。
【0047】
散水装置5での散水水量としては、1m3/h程度の散水を行い、冷却され落下した還元鉄ペレット温度を測定(放射温度計)したところ、平均温度として、100℃以下に冷却されており、搬送するために必要な条件を満足することができた。
【0048】
また、ペレット衝突板22の設置により、還元鉄ペレットは、還元鉄ペレット冷却シュート4から飛び出した際の速度が減衰され、確実に直接散水を受けて冷却される効果があることが確認できた。
【0049】
また、ヤード用追加制御用散水ノズル11による散水が無い場合還元鉄ペレットの冷却温度を確認したが、本処理量においては、ヤード用追加制御用散水ノズル11による散水のない条件においても、搬送に必要な条件(100℃以下)を満たすことができた。
【0050】
更にまた、ペレット衝突板22を外した場合には、還元鉄ペレットの落下部直下へ落下せずに、より離れた場所であるヤードの壁近傍に存在する還元鉄ペレットが増えて、それらの壁近傍の還元鉄ペレットの温度が比較的高くなる傾向が見られたが、ヤード用追加制御用散水11を行うことで、確実に搬送温度(100℃)以下に冷却することができた。
【0051】
また、強度(圧潰強度)も高炉にて使用するために十分な強度条件を満足することを確認した。
【0052】
同等の原料を用いて成型し、同等の還元条件にて還元したペレットを不活性ガス中でロータリークーラーにて200〜400℃まで冷却した後に、100℃以下に散水冷却した還元ペレット(本発明)と、100℃以下まで不活性ガス中(ロータリークーラー)にて冷却した還元ペレットの品質を比較した結果を、表1に示す。本結果より、両者の還元ペレットに大きな差は見られず、再酸化度に大きな差がないことが確認された。
【0053】
【表1】

【0054】
ロータリークーラー方式による冷却では、還元鉄ペレットのもつ熱量は、円筒内壁へ輻射及び接触伝導による伝熱にて移動し、外周を水冷することで抜熱される。高温度域においては、冷却に対する輻射伝熱の寄与する比率が高く、還元鉄ペレットの冷却速度は高い。一方、還元鉄ペレットの温度低下に伴い、輻射伝熱の寄与する割合は低下し、300〜400℃以下においては、冷却速度は大きく低下する。
【0055】
従って、ロータリークーラー方式にて1100℃から300℃程度まで冷却する装置に対して、300℃から100℃以下という低温度域まで当該クーラーにて冷却するには、約2倍ほどの冷却時間を必要とし、(円筒の直径を一定とした場合)装置の長さは、約2倍ほど必要となり、設備の設置スペースもさることながら、設備費用の増大を招いてしまう。本発明では、300℃以下のロータリークーラーにて冷却するには効率の悪い低温度領域を、直接散水により冷却速度を高くすることが可能であり、結果として設備費用の低減が達成され、コンパクトな設備の構築が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の還元用回転炉床法の回転炉とその冷却設備の実施形態を示す全体の概略図。
【図2】本発明の冷却装置を示す図。
【図3】本発明の冷却部分の詳細を示す図。
【図4】本発明の冷却部分の詳細を示す、断面図。
【符号の説明】
【0057】
1 回転炉床式還元炉
2 還元鉄ペレット冷却装置(ロータリークーラー)
3 還元鉄ペレット搬送装置
4 還元鉄ペレット冷却シュート
5 散水装置
6 水回収ピット
7 循環ポンプ
8 還元鉄ペレット
9 製品ヤード
10 シュート旋回駆動装置
11 ヤード用追加制御用散水ノズル
12 シュート側に設けた歯部
13 歯車
14 モータ
15 セルフライニング
16 支持フレーム
17 ヘッダ
18 導管
19 水
20 散水ノズル
21 散水部
22 ペレット衝突板
23 段部形成用板片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転炉床式還元炉にて還元した還元鉄ペレットを、ロータリークーラーにて、不活性ガス雰囲気下で200〜400℃の温度まで冷却した後、当該還元鉄ペレットを、空中にて、冷却水の直接散水で更に冷却することを特徴とする回転炉床式還元炉を用いた還元鉄の製造方法。
【請求項2】
前記ロータリークーラーにて冷却した後の還元鉄ペレットを、傾斜したシュート上から空中に落下させ、落下途中の空中にて、前記冷却水の直接散水で、還元鉄ペレットを更に冷却することを特徴とする請求項1に記載の回転炉床式還元炉を用いた還元鉄の製造方法。
【請求項3】
前記冷却水の直接散水で、前記還元鉄ペレットを100℃以下に冷却することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転炉床式還元炉を用いた還元鉄の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の還元鉄の製造方法で使用する還元鉄ペレットの冷却装置であって、回転炉床式還元炉から排出された還元鉄ペレットを不活性ガス雰囲気下でガス冷却及び輻射冷却するロータリークーラーと、還元鉄ペレットの落下面が板状で且つ傾斜するシュートを有すると共に、当該シュートを水平方向に回転可能とするシュート旋回駆動装置を有する還元鉄ペレット冷却シュートと、前記冷却後の還元鉄ペレットを前記ロータリークーラーから還元鉄ペレット冷却シュートまで搬送する還元鉄ペレット搬送装置と、前記シュートの先端部に取り付けられて、前記シュートから落下して空中に放出される還元鉄ペレットに対して、冷却水を直接散水する散水装置とからなる還元鉄ペレットの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−138464(P2010−138464A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317431(P2008−317431)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】