説明

回転率センサ

【課題】衝撃印加に強く、信頼性も高い回転率センサおよび多軸検出型回転率センサを提供することを目的とする。
【解決手段】検知素子と回路部が収納され、かつ、検知素子と回路部とが電気的に接続されると同時に、回路部への入出力信号を伝達するための配線が施されたセラミックス製の気密容器2と、この気密容器2の外側表面の一平面に連接され、気密容器2に施された配線と電気的に接続するためのパッド電極3と、さらに気密容器2に貼着されたシリコンゴム4とを備えた構成からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転率センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転率センサとしての振動ジャイロには、例えば、特許文献1に示すようなものが知られている。この振動ジャイロにおいては、振動子のノード点付近をコ字状の細い線により支持し、この線の両端部をガラスエポキシ等からなる矩形状の取付基板に固着している。さらに、この取付基板は振動子の振動により発生する取付基板の振動モードのノード点部分で、ベースプレート上に保持し、固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−287658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような振動ジャイロは、系全体の共振周波数を小さくすることで機械的なフィルタ効果により振動分離を図ろうとするものであるために、コ字状の細い線により振動子のノード点付近を支持しなければならない。しかし、このような細い線による支持の仕方は、極めて複雑であるため、信頼性に乏しいばかりか衝撃印加に対して極めて弱いという課題を有していた。
【0005】
本発明はこの課題を解決するためのものであり、衝撃印加に強く、信頼性の高い回転率センサおよび多軸検出型回転率センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、検知素子と、前記検知素子に電気的に接続され、
前記検知素子を駆動方向の共振周波数で駆動制御し、前記検知素子から得られた回転率に応じた信号を調整し出力する回路部と、前記検知素子が収納された容器と、前記容器に取り付けられたシート状の弾性体と、を有する回転率センサであって、前記弾性体を含む前記回転率センサの支持系の伝達特性曲線における共振周波数のピーク周波数が、前記検知素子の駆動方向および回転率を検出する方向の共振周波数よりも小さい回転率センサとしたものである。
【発明の効果】
【0007】
このような構成により、衝撃印加に強く、信頼性も高い回転率センサを実現することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における回転率センサの斜視図
【図2】同センサのA−A断面図
【図3】同センサを構成する振動子を説明するための斜視図
【図4】同振動子の共振特性図
【図5】(a)同振動子の周波数スペクトル図、(b)同センサの回路部内のローパスフィルタの特性図、(c)同振動子のローパスフィルタを通過後の出力の周波数−ゲイン特性図
【図6】(a)同振動子の共振特性図、(b)同センサの支持系伝達特性図
【図7】同センサの外乱衝撃が印加される様子を説明するための説明図
【図8】(a)気密容器と弾性体の寸法関係を説明するための説明図、(b)同気密容器と弾性体の寸法と回転率との相関図
【図9】別のセンサの支持系伝達特性図
【図10】(a)同センサに印加される回転率の変化の様子を示す説明図、(b)回路部から出力されるPWM出力を説明するための出力図、(c)同センサの質量と出力温度ドリフト量との関係を示す特性図
【図11】本発明の実施の形態2における回転率センサの斜視図
【図12】本発明の実施の形態3における回転率センサの斜視図
【図13】(a)本発明の実施の形態4における回転率センサの斜視図、(b)同センサのB−B断面図、(c)振動子の共振特性図および支持系伝達特性図、(d)弾性体の厚さと振動伝達量との関係を示す特性図
【図14】(a)本発明の実施の形態5における回転率センサの斜視図、(b)同センサの基板と引き出しリードを一体にした状態の斜視図
【図15】(a)本発明の実施の形態6における回転率センサの斜視図、(b)同センサの導体切片を線状にした状態の斜視図
【図16】本発明の実施の形態7における多軸検出型回転率センサの斜視図
【図17】本発明の実施の形態8における多軸検出型回転率センサの斜視図
【図18】本発明の実施の形態9における多軸検出型回転率センサの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図1から図18を用いて説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における回転率センサの斜視図である。図2は、図1に示す同センサのA−A断面図を示している。図3は、同センサを構成する振動子を説明するための斜視図を示している。図4は、同振動子の共振特性図を示している。図5(a)は、同振動子のY軸回りに周波数fωの回転が印加された時の駆動側共振周波数(fd)近傍の変調側波を説明するための周波数スペクトル図を示している。図5(b)は、同センサの回路部内のローパスフィルタの特性図を示している。図5(c)は、同振動子のY軸回りに離調周波数A相当の回転率が印加された時のローパスフィルタを通過後の出力の周波数−ゲイン特性図を示している。図6(a)は同振動子の共振特性図、図6(b)は同センサの支持系の機械的な周波数−ゲイン特性図(支持系伝達特性図)を示している。図7は、同センサが基板に実装されている時の外乱衝撃が印加される様子を説明するための説明図を示している。図8(a)は、気密容器と弾性体の寸法関係を説明するための説明図を示している。図8(b)は、図8(a)に示す気密容器と弾性体の寸法と回転率との相関図を示している。図9は、図6に示す同センサの支持系の別の設計仕様における機械的な周波数−ゲイン特性図(支持系伝達特性図)を示している。図10(a)は、同センサに印加される回転率の変化の様子を示す説明図、図10(b)は、図10(a)に示す回転率の変化に対応して回路部から出力されるPWM出力を説明するための出力図、図10(c)は同センサの検知素子の質量、回路部と気密容器の合計質量と出力温度ドリフト量との関係を示す特性図である。
【0011】
図1において、1は回転率センサ、2はセラミックス製またはエポキシ系等の樹脂製からなる直方体形状の気密容器、3は気密容器2の下方部に設けられた回転率センサ1への電源供給および出力の取り出しのためのパッド電極、4は気密容器2の底に一体に形成された弾性体としてのシリコンゴム、5は金等からなるパッド電極3と基板等に設けられた外部電極とを接続するためにシリコンゴム4の表面に設けられた導体部である。弾性体としてのシリコンゴム4は、気密容器2の底に貼着しても構わない。また、シリコンゴム4の表面および裏面に設けられた導体部には、それぞれ少なくとも電源、出力、グランドのための3系統の電極機能を有するとともに、電源とグランドの間に出力を担う電極機能が位置するように配置されているため、本センサを基板にハンダ付けする際にハンダの潜り込みによる電極−グランド間のショートの発生確率を低減させることができる。
【0012】
図1に示すX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ気密容器2の幅方向、長手方向、厚さ方向である。
【0013】
図2において、6は検知素子としての水晶音叉型振動子、7は気密容器2の内部に設けられた層状の配線、8は水晶音叉型振動子6を駆動方向の共振周波数で駆動制御し、水晶音叉型振動子6から得られた回転率に応じた信号を調整し出力するための回路部、9は水晶音叉型振動子6を接着剤等を用いて支持固定するための台座、10a、10bは金属等からなる蓋である。回路部8は、例えば半導体ベアチップからなり、気密容器2内に設けられたパッド電極(図示せず)とワイヤボンディングあるいはバンプにより接続されている。また、気密容器2の内部にガスを充填した後、気密容器2内の気密を保つために、気密容器2は蓋10a、10bにより溶接あるいは接着で封止されている。
【0014】
図3において、水晶音叉型振動子6は、2枚の水晶板を原子間結合のレベルで直接接合し、作成されている。11、12は水晶音叉型振動子6のアーム、13はアーム11、12を連結する基部、14はアーム11、12上にクロムと金を蒸着し形成した音叉駆動するための電極(図示せず)及び回転率に応じた信号を検出するための電極(図示せず)にそれぞれ接続された、同じくクロムと金を蒸着し形成したパッド電極である。パッド電極14は、気密容器2に設けられたパッド電極(図示せず)とワイヤボンディングあるいはバンプにより接続されている。基部13には振動を分離するための梁構造やくびれ構造が存在しないため、コンクリート面より1m上方からの落下衝撃(瞬間的には1万Gを超える衝撃)に対しても水晶音叉型振動子6が破損するようなことがない。
【0015】
図1から図3において、回路部8より水晶音叉型振動子6上のパッド電極14に駆動信号が供給されることにより、アーム11、12がX軸方向に往復振動する。また、Y軸回りに回転率ωが印加されると、アーム11、12の質量に比例し、その振幅速度ベクトルと回転率ベクトルの外積方向(Z軸方向)に働く力(コリオリ力)により、アーム11、12が回転率を検出する方向(Z軸方向)に撓む。この撓み量に比例した信号を水晶音叉型振動子6上の検出電極(図示せず)により検出し、この検出された信号を回路部8内で駆動信号により同期検波し、同期検波後の信号を増幅し、ローパスフィルタにて処理することにより、回転率に応じたセンサ信号を得ることができる。
【0016】
図4において、20、21はそれぞれ図3に示す水晶音叉型振動子6の駆動方向の共振周波数(fdと略す)、回転率を検出する方向の共振周波数(fsと略す)、Aは駆動方向の共振周波数(fd)と回転率を検出する方向の共振周波数(fs)の差に相当する周波数(以下、離調周波数と称す)である。横軸は周波数、縦軸はアドミタンス(振動しやすさ)である。ここでは、水晶音叉型振動子6のfdとして、10kHzを用いている。通常、回転率を検出する方向の感度を向上させるために、fdとfsを近づけて検出方向の振動を励起させやすいように水晶音叉型振動子6の寸法形状を設計する。水晶音叉型振動子6は、離調周波数Aが小さくなるほど、近共鳴状態となり検出感度を向上させることができる。例えば、ナビゲーションシステム、ロールオーバーシステム、アドバンスドABSの場合、離調周波数Aはそれぞれ200Hz〜400Hz、300Hz〜500Hz、300Hz〜400Hzに設定するのが適当である。
【0017】
図5(a)から図5(c)において、22a、22bはそれぞれ変調側波(fd+fω)、変調側波(fd−fω)、23は回転率ωに相当する周波数fω、24はローパスフィルタのカットオフ周波数を示す点、25はローパスフィルタの周波数に対するゲイン降下特性を示す直線、26はビート成分である。横軸は周波数、縦軸はゲインである。
【0018】
図5(a)に示すように、回転率ωに相当する周波数(fω)23が水晶音叉型振動子6のY軸回りに印加されると、周波数(fω)23によりfdが振幅変調され、fdの上下に変調側波(fd+fω)22a、変調側波(fd−fω)22bが発生する。この変調側波(fd+fω)22a、変調側波(fd−fω)22bのピーク量は、駆動方向(X軸方向)の振幅量、検出方向(Z軸方向)の機械的共振先鋭度(Q値)および離調周波数Aにより定まる。この変調側波(fd+fω)22a、変調側波(fd−fω)22bを復調(検波、平滑)すれば、印加された回転率に応じたセンサ出力を得ることができる。
【0019】
図5(b)に示すように、復調時には、通常不必要なノイズ成分を抑制するために、ローパスフィルタ(カットオフ周波数を示す点24)により平滑される。ローパスフィルタを通過後の出力は、周波数に対するゲイン降下特性を示す直線25に従い、周波数が大きくなるにつれ、単調に減少していくように設定されている。例えば、ローパスフィルタのカットオフ周波数を示す点24は、ナビゲーションシステム、ロールオーバーシステム、アドバンスドABSの場合、それぞれ10Hz、50Hz、100Hzに設定するのが適当である。同じく、ローパスフィルタの周波数に対するゲイン降下特性を示す直線25の次数は、ナビゲーションシステム、ロールオーバーシステム、アドバンスドABSの場合、2次〜4次、3次〜4次、3次〜5次である。
【0020】
図5(c)に示すように、印加される回転率の周波数(fω)23が離調周波数A(=fd−fs)近傍になると、例えば変調側波(fd−fω)22bがfsに重なるようになり、この変調側波(fd−fω)22bが起振力となり検出方向(Z軸方向)に実際の回転率に相関しない振動レベルの信号が発生する。この信号が復調されると、離調周波数A(=fd−fs)近傍に相当する回転率の周波数(fω)のところで、センサ出力の鋭いピークとなって現れる。これは、いわゆるビート成分と呼ばれるものであり、共振型回転率センサに共通の現象である。原則、このビート成分は、図5(b)に示すローパスフィルタにより抑制される。
【0021】
図6(a)は、図4に示す同振動子の共振特性図と同じ図であり、図6(b)はセンサの支持系の機械的な周波数−ゲイン特性図(支持系伝達特性図)である。
【0022】
図6(a)、(b)において、30は主に水晶音叉型振動子6、回路部8、気密容器2とシリコンゴム4とから構成されたセンサの支持系伝達特性曲線、31は支持系伝達特性曲線30における共振周波数でのピーク、32は離調周波数A(=fd−fs)=fω、33は支持系伝達特性曲線30上でのfd近傍における減衰量である。共振周波数31は、2kHz〜4kHzの範囲であり、好ましくは2kHzである。図6(b)において、図5(a)から図5(c)にて述べた離調周波数Aがほぼ200Hzから500Hz、ローパスフィルタのカットオフ周波数を示す点24が100Hz以下、ローパスフィルタの次数が実質的に3次以上に設定されることにより、衝撃印加に対して強くなると同時に、印加回転率の周波数により発生しやすいビートをより効率的に抑制できるため、センサの検出周波数領域における出力の信頼性が極めて高くなる。
【0023】
図7において、40は駆動方向(X軸方向)の衝撃加速度、41は回転率を検出する方向(Z軸方向)の衝撃加速度、42は本来の回転率によらずに外乱の衝撃加速度によりY軸回りに発生した衝撃回転モーメント、43は実装基板である。図1に示す気密容器2の底に一体に形成されたシリコンゴム4が前記実装基板43に接着され固定されている。
【0024】
本センサは、図3に示すような水晶音叉型振動子6、図6(a)、(b)に示すような機械的な周波数−ゲイン特性と図5(c)に示すような回路のローパスフィルタの特性が組み合わされているため、落下衝撃に対して水晶音叉型振動子6が強いばかりか、離調周波数A(=fd−fs)に相当する回転率の周波数(fω)が印加された場合にもビート成分が抑制される。さらに、共振周波数のピーク31が離調周波数A(=fd−fs)に相当する回転率の周波数(fω)32より大きく設定されているため、機械的な系の共振でビート成分26を不用意に増加させることもない。また、fd近傍での機械的な系の減衰量33が大きいため、外部からの衝撃加速度40、41や衝撃回転モーメント42に対しても強くなる。例えば、本回転率センサ1の質量が5グラム、シリコンゴム4の硬度が30度、厚さが0.5mmの場合、コンクリート面への落下の際の衝撃が約1000G未満に減衰されることが確認されている。
【0025】
図8(a)において、a、bはそれぞれ図1および図7に示す、気密容器2の幅(X軸方向の長さ)、気密容器2の厚さ(Z軸方向の長さ)とシリコンゴム4の厚さ(Z軸方向の長さ)を合わせた厚さである。矢印Bは、外部から実装基板43に気密容器2の幅方向(X軸方向)と平行に加わる衝撃加速度40の方向であり、この衝撃加速度40によりY軸回りに衝撃回転モーメント42が発生する。
【0026】
図8(b)において、図8(a)に示すa/b比が、ほぼ1.0の時の衝撃印加時の検知軸回りの回転モーメントω´を基準の1.0とすると、a/b比がほぼ1.0以上になると気密容器が徐々に実質的に扁平な形状となり、衝撃印加時の検知軸回りの回転モーメントω´の発生を軽減できる。
【0027】
図9において、34は水晶音叉型振動子6、回路部8、気密容器2とシリコンゴム4とから構成される図6(b)に示したものとは異なる別のセンサの支持系の機械的な周波数−ゲイン特性曲線(支持系伝達特性曲線)、35は支持系伝達特性曲線34における共振周波数でのピーク、36は離調周波数A(=fd−fs)=fωである。共振周波数のピーク35は、300Hz〜600Hzの範囲であり、好ましくは500Hzである。また、図5(a)から図5(c)にて述べた離調周波数Aがほぼ1kHzから2kHz、ローパスフィルタのカットオフ周波数を示す点24が100Hz以下、ローパスフィルタの次数が実質的に3次以上に設定される場合によっても、衝撃印加に対して強くなると同時に、印加回転率の周波数により発生しやすいビートをより効率的に抑制できるため、センサの検出周波数領域における出力の信頼性が高くなる。
【0028】
図10(a)に示すような回転率が本センサに印加された時に、本センサからアナログの出力が発生する。本センサの回路部にはパルス幅処理変換部を有しているため、この出力に応じて図10(b)に示すようなパルス幅のデューティ比が変化するPWM形式の出力が発生する。この出力をマイコンを用いて処理する場合、AD変換器を必要とせず、デジタルポート1つだけで済む。
【0029】
図10(c)において、横軸は回路部8と気密容器2の合計質量M/検知素子としての水晶音叉型振動子6の質量m、縦軸は本回転率センサ1の出力温度ドリフト量(deg./sec)である。図10(c)に示すように、M/mが5.0以上になると水晶音叉型振動子6の振動が安定化し、漏れ振動量が減少する。これにより本センサの出力温度ドリフト量も10deg./sec以下まで低減する。
【0030】
本実施の形態のような構成により、本センサの小型化に伴う検知素子の小型化においても、製造上のばらつきによる本センサの特性の悪化を招くことのない、外乱加速度や衝撃の印加に対しても信頼性の高い超小型の回転率センサを安価に提供できる。特に、面実装型の回転率センサを安価に提供できる。
【0031】
本実施の形態においては、弾性体としてシリコンゴムを用いた例について説明してきたが、必ずしもこれに特定されるものではなく、厚み方向に電気伝導性を有するように金属細線が埋め込まれたシート状のゴム、ウレタンまたは空孔を有するシリコン、磁性体または磁石が含有された弾性材料、繊維状のガラスまたは樹脂からなるシートを用いることもできる。また、弾性体を積層構造とすることもできる。さらに、気密容器の表面に薄く付着させる構成も可能である。
【0032】
また、本実施の形態においては、検知素子として水晶音叉型振動子を用いた例について説明してきたが、必ずしもこれに特定されるものではなく、PZT系の圧電膜が表面に設けられたシリコン板から形成された一端閉鎖型音叉振動子、H型振動子、エッチングによりシリコン板から形成されたビーム型振動子、エッチングによりシリコン板から形成されたリング状振動子、エッチングによりシリコン基板から共振型振動子アームと基部とこの基部を支える梁とこの梁を支える矩形状の枠体とが一体に形成され、かつ、アームの主面上に厚さが1〜5μmのPZT系の圧電膜が蒸着などにより形成された振動子、角柱または円柱状のセラミックス製の振動子、弾性表面波を用いた振動子等さまざまなものを用いることが可能である。
【0033】
また、本実施の形態においては、検知素子と回路部をそれぞれ離れた位置に設けた例について説明してきたが、必ずしもこれに特定されるものではなく、例えばシリコン板から形成された一端閉鎖型音叉振動子の同一面上に回路が一体に形成されたような構成とすることも可能である。このようにすることで小型化を図り易くなる。
【0034】
(実施の形態2)
図11は、本発明の実施の形態2における回転率センサの斜視図である。図11において、図1と同一構成部分には同一の番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。図11において、4aは図1に示すシリコンゴム4がY軸方向に延長された弾性体としてのシリコンゴム、5aは導体部、50はシリコンゴム4aに設けられた突起、60は実装基板、61は導体パターン、62は実装基板60に形成された突起50を位置決め収納するための孔である。この突起50と孔62が設けられていることにより、本センサを位置ずれさせたまま基板に誤接続させてしまうのを防止できる。
【0035】
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3における回転率センサの斜視図である。図12において、図1と同一構成部分には同一の番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。図12において、70は弾性体としての断面が楕円を含む円形状である柱状体のシリコンゴム、5bは金等からなるパッド電極3と実装基板(図示せず)等に設けられた外部電極とを接続するためにシリコンゴム70の表面に設けられた導体部である。気密容器2の底にシリコンゴム70が貼着され、シリコンゴム70が実装基板に接着されている。これにより、本センサを実装基板に実装する際に、本センサと実装基板との間に空隙ができ、この空隙に種々の部品を実装させることが可能となり、実装効率の改善を図ることができる。
【0036】
本実施の形態においては、シリコンゴムの形状として、断面が楕円を含む円形状である柱状体について説明したが、球状体等さまざまな形状のものを用いることが可能である。また、弾性体としてシリコンゴムを用いて説明したが、これも弾性を有するものであればさまざまな材質のものを用いることが可能である。
【0037】
(実施の形態4)
図13(a)は本発明の実施の形態4における回転率センサの斜視図、図13(b)は同センサのB−B断面図、図13(c)は振動子の共振特性図およびセンサ全体系の機械的な周波数−ゲイン特性図、図13(d)は弾性体の厚さと振動伝達量との関係を示す特性図である。図13において、実施の形態1〜3と同一構成部分には同一の番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0038】
図13において、80はフレキシブル基板、80aは回転率センサ1を実装するフレキシブル基板80上の実装部、80bは実装部80aから配線を引き出すための移行部、80cは実装基板60と接続するためのフレキシブル基板80の端子部、81はフレキシブル基板80上に設けられた導体パターン、82は移行部80bに設けられた孔、83は移行部80bに設けられた切り欠き、84は端子部80c上の導体パターン81に接続された第1の導体切片、85は実装基板60に位置決めし、固定するための第2の導体切片、86はフレキシブル基板80上にパッド電極3と対応するように設けられた接続パッド、87はパッド電極3と接続パッド86を電気的に接続するためのハンダ、88は弾性体としてのシリコンゴム、88aはシリコンゴムからなる突起、89はシリコンゴム88を実装基板60に固定するための粘着層、90は認識用マーキングである。
【0039】
シリコンゴム88はフレキシブル基板80に貼着され、かつ、実装基板60への実装時にフレキシブル基板80と回転率センサ1を支えるだけでなく、振動絶縁の働きもする。また、パッド電極3と接続パッド86を電気的に接続するためにハンダ87を用いているが、導電接着剤を使用してもよい。また、粘着層89があるため、回転率センサ1の実装基板60への固定が容易である。さらに、移行部80bに設けられた切り欠き83は、回転率センサ1からの漏れ振動がフレキシブル基板80を伝播しないようにするためのものであり、また、シリコンゴム88の振動絶縁機能がフレキシブル基板80の移行部80bの剛性などにより損なわれないようにするためのものである。
【0040】
第2の導体切片85は、実装基板60にハンダ付けされた第1の導体切片84に直接機械的ストレスがかからないように補強するためのものである。これにより、第1の導体切片84の断線、または、実装基板60に固定された第1の導体切片84のハンダ付け部分のクラック発生の抑制も可能となる。
【0041】
また、第1の導体切片84には、それぞれ電源、GND、回転に応じてデューティ比を変化させて出力するPWM出力またはアナログ出力が割り当てられている。より好ましくは、信頼性を考慮した設計上、電源の供給に割り当てられている第1の導体切片84とGNDとして割り当てられている第1の導体切片84は、隣接させない方がよい。
【0042】
認識用マーキング90は、回転率センサ1を高精度に実装する時の角度ずれを低減させるためのものである。
【0043】
図13(c)において、91はセンサの支持系伝達特性曲線、92は支持系伝達特性曲線91における0dBのレベル、93は支持系伝達特性曲線91における共振周波数での第1のピーク、94は0dBのレベル92からの減衰量、95はピーク93からシフトした第2のピークである。図13(c)に示すように、振動絶縁効果を有するシリコンゴム88により、周波数の高い領域において水晶音叉型振動子6の駆動方向の共振周波数(fdと略す)20付近での振動伝達量を破線で示す0dBのレベル92から減衰量94になるように抑えることができる。この減衰量94により、振動漏れが低減されるため、漏れ振動による影響が緩和される。また、第1のピーク93は、弾性体(ここでは、シリコンゴム88で説明)の損失、硬度、厚さ、形状、あるいは検知素子(ここでは、水晶音叉型振動子6)の質量m、外形等により決定される共振周波数(fdと略す)20との干渉を避けたい等さまざまな目的により任意の周波数に設計可能である。例えば、弾性体(ここでは、シリコンゴム88で説明)の硬度を大きくすると、第1のピーク93はより高い周波数の第2のピーク95側に遷移する。
【0044】
また、図13(d)に示すように、シリコンゴム88の厚さにより、図13(c)に示す減衰量94を可変することが可能である。
【0045】
以上により、振動分離設計の自由度が向上するばかりでなく、小型化、高信頼性化、高精度化に対応できる。
【0046】
(実施の形態5)
図14(a)は本発明の実施の形態5における回転率センサの斜視図、図14(b)は同センサの基板と引き出しリードを一体にした状態の斜視図である。図14において、実施の形態1〜4と同一構成部分には同一の番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0047】
図14において、100は支持手段としてのガラスエポキシからなる基板、100aは基板100に設けられた孔、100bは基板100に設けられた切り欠き、100cは基板100上に設けられた引き出しパッド、101はクランク型に成形された引き出しリード、102はハンダである。引き出しリード101は引き出しパッド100cにハンダ102によりハンダ付けされている。また、切り欠き100bは基板100の剛性を部分的に落として、引き出しリード101を介して外部から伝わる振動、あるいは、回転率センサ1からの漏れ振動が伝播しにくくするためのものである。
【0048】
また、本実施の形態においては、引き出しリード101と引き出しパッド100cの接続にハンダ付けを用いる例について説明したが、抵抗溶接、超音波溶接を用いることも可能である。さらに、基板100にガラスエポキシを用いる例について説明したが、成形樹脂、セラミック系の材料やインナビアホール型の多層基板を用いても良い。
【0049】
また、図14(b)に示すように、基板100と引き出しリード101を一体にする構成も可能である。
【0050】
以上のような構成により、低コスト化を実現することができる。
【0051】
(実施の形態6)
図15(a)は本発明の実施の形態6における回転率センサの斜視図、図15(b)は同センサの導体切片を線状にした状態の斜視図である。図15において、実施の形態1〜5と同一構成部分には同一の番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0052】
105は基板100に設けられた導体パターン、110は基板100に設けられた孔、111は長く伸びた基板100の一部に設けられたくびれ部、112、113は基板100上の導体パターン105と接続された導体切片である。
【0053】
基板100が長く伸びているため、種々の物体への搭載自由度が向上する。例えば、回転率センサ1をケース(図示せず)の壁面に貼着し、基板100から離れた回路基板(図示せず)と接続することも可能とする。また、基板100に孔110が設けられているため、衣類や靴等へ縫い付けることも可能とする。また、孔110に別の物体に設けられたガイドピン(図示せず)を通し、このガイドピンを折り曲げることで固定することも可能である。このように構成することで、回転率センサ1の着脱が簡単になる。
【0054】
また、基板100の一部にくびれ部111が設けられているため、振動絶縁効果を維持することも可能である。
【0055】
また、図15(b)に示すように、導体切片113が線状であるため、コネクタとの嵌合が容易である。
【0056】
本実施の形態においては、フレキシブル基板を用いる例について説明したが、切り欠き、複数の孔、くびれ部または薄肉部を適当に組み合わせることにより、厚さがほぼ0.1mm以上1mm以下の支持手段としての硬質なガラスエポキシからなる基板を用いることも可能である。このような基板を用いることにより、気密容器の実装性がより向上するばかりか、さまざまな電気部品を実装し、その他の基板とワイヤボンディング接続をすることもできる。
【0057】
(実施の形態7)
図16は本発明の実施の形態7における多軸検出型回転率センサの斜視図である。図16において、実施の形態1〜6と同一構成部分には同一の番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0058】
図16において、120は基板、121はホルダである。基板120上に2個の回転率センサ1の回転検出軸方向ωが互いに同一になるように実装され、さらに、ホルダ121に収められている。これにより、冗長性のあるセンサを構成することができる。
【0059】
本実施の形態のような構成とすることにより、2個の回転率センサの各検知素子の駆動方向の共振周波数をほぼ同一にすることができるため、各検知素子を相互にわざわざ異なる共振周波数に設計する必要もなくなり、安価なセンサを実現できる。
【0060】
また、2個の回転率センサ1の回転検出軸方向ωが互いに逆向きになるように配置し、2個の回転率センサ1の出力の差動をとれば、コモンノイズなどの弁別も可能となる。
【0061】
以上のように構成することにより、センサ出力の信頼性が飛躍的に高まり、例えば自動車など高い信頼性を要求される用途に適する。また、形状およびコスト面の制約を無くすることもできる。
【0062】
本実施の形態においては、2個の回転率センサ1の回転検出軸方向ωが互いに同一になるように実装された例について説明したが、これに特定されるものではなく用途に応じて3個以上の回転率センサ1の回転検出軸方向ωが互いに同一になるように実装することも可能である。
【0063】
(実施の形態8)
図17は本発明の実施の形態8における多軸検出型回転率センサの斜視図である。図17において、実施の形態1〜7と同一構成部分には同一の番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0064】
基板120上に2個の回転率センサ1の回転検出軸方向ωが互いに直交するように実装され、さらに、ホルダ121に収められている。以上のように構成することにより、2個の回転率センサ1の振動が互いに分離、独立し、保証されているため、近接するように配置させても干渉などの悪影響を受けることなく、高密度に実装された多軸検出型回転率センサを実現することができる。
【0065】
(実施の形態9)
図18は本発明の実施の形態9における多軸検出型回転率センサの斜視図である。図18において、実施の形態1〜8と同一構成部分には同一の番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0066】
図18において、130はウレタンからなるホルダ、130a、130bは回転検出軸方向ωが互いに直交する2個の回転率センサ1を埋設するための空洞、131はホルダ130の底面に設けられた固定手段としての粘着シートである。粘着シート131が設けられているため、セットのフレームなど基板以外への効率的な装着も可能となる。また、本実施の形態においては、粘着シート131を用いた例について説明したが、粘着シート以外に磁性シートなどの磁石を用いてもよい。
【0067】
本実施の形態においては、ウレタンからなるホルダ130を用いる例について説明したが、ゴムを用いることも可能である。また、ホルダ130は箱型であるが、筒型等さまざまな形状とすることができる。
【0068】
また、本実施の形態においては、空洞が2個設けられた例について説明したが、用途に応じて3個以上設けることも可能である。
【0069】
本実施の形態のような構成により、本センサの小型化に伴う検知素子の小型化においても、製造上のばらつきによる本センサの特性の悪化を招くことのない、外乱加速度や衝撃の印加に対しても信頼性の高い超小型の多軸検出型回転率センサを安価に提供できる。特に、面実装型の多軸検出型回転率センサを安価に提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明にかかる回転率センサは、検知素子と、この検知素子を駆動方向の共振周波数で駆動制御し、前記検知素子から得られた回転率に応じた信号を調整し出力するための回路部と、前記検知素子と回路部が収納され、かつ、前記検知素子と回路部とが電気的に接続されると同時に、前記回路部への入出力信号を伝達するための配線が施されたセラミックス製または樹脂製の気密容器と、この気密容器の外側表面の少なくとも一平面に連接され、前記気密容器に施された配線と電気的に接続するための導体部を有し、さらに前記気密容器と一体に形成されるか、または、貼着されるかした弾性体とを備え、前記検知素子、回路部、気密容器と弾性体とから構成された系の合成共振周波数が、前記検知素子の駆動方向および回転率を検出する方向の共振周波数よりも小さく、前記検知素子の駆動方向の共振周波数と回転率を検出する方向の共振周波数の周波数の差に相当する印加回転率の周波数よりも大きく、かつ、前記回路部内のローパスフィルタのカットオフ周波数は、前記差に相当する印加回転率の周波数よりも小さくなるようにしているため、衝撃印加に強く、信頼性も高くなる。この回転率センサを硬質基板上に固定手段を用いて複数、近接して実装することにより、センサ同士が相互干渉し難く、かつ、多軸検出を可能とする多軸検出型回転率センサに有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 回転率センサ
2 気密容器
3、14 パッド電極
4、4a、70、88 シリコンゴム
5、5a、5b 導体部
6 水晶音叉型振動子
7 配線
8 回路部
9 台座
10a、10b 蓋
11、12 アーム
13 基部
20 共振周波数fd
21 共振周波数fs
22a 変調側波(fd+fω)
22b 変調側波(fd−fω)
23 周波数fω
24 カットオフ周波数を示す点
25 ゲイン降下特性を示す直線
26 ビート成分
30 支持系伝達特性曲線
31 支持系伝達特性曲線30における共振周波数でのピーク
32、36 離調周波数A(=fd−fs)=fω
33 fd近傍における減衰量
34 別のセンサの支持系伝達特性曲線
35 支持系伝達特性曲線34における共振周波数でのピーク
40 駆動方向(X軸方向)の衝撃加速度
41 回転率を検出する方向(Z軸方向)の衝撃加速度
42 Y軸回りに発生した衝撃回転モーメント
43、60 実装基板
50、88a 突起
61、81、105 導体パターン
62、82、100a、110 孔
80 フレキシブル基板
80a 実装部
80b 移行部
80c 端子部
83、100b 切り欠き
84 第1の導体切片
85 第2の導体切片
86 接続パッド
87、102 ハンダ
89 粘着層
90 認識用マーキング
91 センサの支持系伝達特性曲線
92 支持系伝達特性曲線91における0dBのレベル
93 支持系伝達特性曲線91における共振周波数での第1のピーク
94 0dBのレベル92からの減衰量
95 ピーク93からシフトした第2のピーク
100、120 基板
100c 引き出しパッド
101 引き出しリード
111 くびれ部
112、113 導体切片
121、130 ホルダ
130a、130b 空洞
131 粘着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知素子と、
前記検知素子に電気的に接続され、
前記検知素子を駆動方向の共振周波数で駆動制御し、
前記検知素子から得られた回転率に応じた信号を調整し出力する回路部と、
前記検知素子が収納された容器と、
前記容器に取り付けられたシート状の弾性体と、
を有する回転率センサであって、
前記弾性体を含む前記回転率センサの支持系の伝達特性曲線における共振周波数のピーク周波数が、
前記検知素子の駆動方向および回転率を検出する方向の共振周波数よりも小さい
回転率センサ。
【請求項2】
前記支持系の伝達特性曲線における共振周波数のピーク周波数が、
前記検知素子の駆動方向の共振周波数と回転率を検出する方向の共振周波数の差である
離調周波数よりも大きい
請求項1に記載の回転率センサ。
【請求項3】
前記回路部内のローパスフィルタのカットオフ周波数が、
前記離調周波数よりも小さい
請求項2に記載の回転率センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−162778(P2009−162778A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101834(P2009−101834)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【分割の表示】特願2003−357695(P2003−357695)の分割
【原出願日】平成15年10月17日(2003.10.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】