回転角検出装置
【課題】本発明は、組み付け性や整備性が良好な回転角検出装置の提供を目的とする。
【解決手段】回転体150の回転角を検出する回転角検出装置800であって、径方向に2分割される本体を有する回転角センサ100(200,300等)を備えることを特徴とする。回転角センサは、回転体と共に回転するロータ104と、ステータ106と、コイル(励磁コイル及び検知コイル)108とを備え、回転角検出装置は、ロータの回転に伴って周期的に変化する磁束抵抗を利用して回転体の回転角を検出する。
【解決手段】回転体150の回転角を検出する回転角検出装置800であって、径方向に2分割される本体を有する回転角センサ100(200,300等)を備えることを特徴とする。回転角センサは、回転体と共に回転するロータ104と、ステータ106と、コイル(励磁コイル及び検知コイル)108とを備え、回転角検出装置は、ロータの回転に伴って周期的に変化する磁束抵抗を利用して回転体の回転角を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転角を検出する回転角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軸方向に貫通孔が設けられ、該貫通孔にレゾルバが軸方向を合わせて収納された分割ハウジングを、複数個軸方向を合わせて接合しハウジングを構成したことを特徴とする回転角センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−43140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の回転角検出装置は、上記の特許文献1に記載の発明のように、回転角検出装置の中央の穴に、回転軸を挿通して脱着する構成であるため、組み付け性や整備性が悪いという問題点がある。例えば、回転角検出装置を回転軸から外すとき、回転軸に他の部品が取り付けられている場合には、当該他の部品を取り外してから、回転角検出装置を回転軸の軸方向に沿って抜く必要があり、作業が煩雑になる。
【0004】
そこで、本発明は、組み付け性や整備性が良好な回転角検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明は、回転体の回転角を検出する回転角検出装置であって、
径方向に2分割される本体を有する回転角センサを備えることを特徴とする。これにより、回転体と回転角センサとの間の組み付け性や回転角センサの整備性が向上する。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る回転角検出装置において、
前記回転角センサが、回転体と共に回転するロータと、ステータと、励磁コイル及び検知コイルとを備え、回転角検出装置が、ロータの回転に伴って周期的に変化する磁束抵抗を利用して回転体の回転角を検出する場合において、
回転角検出装置が、検知コイルから入力される出力信号を処理して、回転体の回転角情報を出力する信号処理部を備え、
前記信号処理部が、分割されたロータの合わせ目に起因して発生する出力信号の特徴を利用して、回転体の回転角情報を生成することを特徴とする。これにより、ロータの分割構造を利用して角度検出精度を高めることができる。
【0007】
第3の発明は、第1又は2の発明に係る回転角検出装置において、
ロータの径は、ロータの回転角を変数とし軸倍角により周期が定まる略正弦波関数に従って、変化するように決定され、
ロータは、分割されたロータの合わせ目の両側に起因した出力信号の2点の特徴が、該正弦波関数における異なる位相で出現するように、分割されることを特徴とする。これにより、出力信号の2点(分割されたロータの合わせ目の両側に対応する2点)の特徴がそれぞれ異なる位相で生ずるので、混同されることがない。従って、2点の出力信号の特徴を利用する場合には、補正の機会が機械角1周期で2回確保することができる。
【0008】
第2の発明は、第1〜3の発明に係る回転角検出装置において、
ロータは、径が分割された合わせ目で急変するように、構成されることを特徴とする。これにより、出力信号の特徴が強調され、精度良く当該特徴の出現を検出することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、とりわけ、組み付け性や整備性が良好な回転角検出装置が得られる。また、ロータの分割構造を利用して角度検出精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明による回転角検出装置における回転角センサ100の一実施例を示す2面図であり、図1(A)は、組み付け状態の回転角センサ100の平面図であり、図1(B)は、同回転角センサ100の側面図である。本実施例の回転角センサ100は、例えばステアリングシャフトの回転角度を検出するために用いられるものであってよい。
【0012】
回転角センサ100は、例えばVR型(可変リラクタンス)レゾルバとして構成され、回転角度の検出対象である回転体150(例えばステアリングシャフト)の回転軸に対して同軸に配置される。
【0013】
図2は、図1のラインA−Aに沿って切断した際の断面図であり、図2(A)は、本実施例の回転角センサ100の断面図であり、図2(B)は、その他の実施例の回転角センサ200の断面図である。
【0014】
回転角センサ100は、ケーシング(ハウジングカバー)102を備える。ケーシング102は、組み付け状態で円環状の形状を有する。ケーシング102は、PBT(ポリブチレンテレフタレート:Polybutylene terephthalate)のような樹脂材料を射出成形して製造されてよい。
【0015】
ケーシング102の内部には、図2(A)に示すように、回転体150と共に回転するロータ104、ステータ106、コイル108、及びベアリング110,112が収容されている。ケーシング102は、図示しないブラケット等を介して、車体に固定支持される。
【0016】
コイル108は、回転角センサ100が1相入力/2相出力タイプのセンサの場合、励磁コイルと、2つの検知コイル(sin相及びcos相の出力コイル)を備える。
【0017】
ステータ106は、鉄系の磁性材料からなり、ケーシング102の内部における外周側に組み付けられる。ステータ106は、組み付け状態(図1に示す回転角センサ100の閉状態)で円環状の形状を有する。ステータ106は、回転中心に向かって突出する突起(歯)を、周方向に沿って複数有する。突起には、励磁コイルと検知コイルとが適切に巻回される。
【0018】
ベアリング110,112は、ケーシング102の内周側に組み付けられる。ベアリング110,112は、組み付け状態(図1に示す回転角センサ100の閉状態)で、回転体150のまわりに円環状に配列され、ケーシング102に対して回転体150を回転可能に支持する。
【0019】
ケーシング102には、図2(A)に示すように、ロータ104に対向する表面に、軸方向に凸となる突起103が周方向に沿って形成されている。突起103は、ロータ104の対応する部分に形成された周溝109内に摺動可能に嵌合し、ロータ104の回転軌道を画成する機能を果たす。但し、図2(B)に示す他の実施例による回転角センサ200のように、かかる突起に代えて、スペーサ202によりロータの回転軌道を維持することも可能である。
【0020】
回転角センサ100は、図1に示した分割ラインTに沿って、略対称な2部分を径方向で合わせることで構成されている。即ち、回転角センサ100は、径方向に2分割された構成を有する。以下では、分割された一方の部分の構成要素の参照符号の最後に、記号「L」を付し、他方の部分の構成要素の参照符号の最後に、記号「R」を付す。
【0021】
かかる分割構成では、ケーシング102Lの内部には、ロータ104L、ステータ106L、コイル108L、及びベアリング110L,112Lが収容される。ケーシング102Lは、ステータ106L、コイル108L、及びベアリング110L,112Lと一体となって(これらの部品がアセンブリされた状態で)、回転角センサ100の一方の半分の本体を構成する。
【0022】
同様に、ケーシング102Rの内部には、ロータ104R、ステータ106R、コイル108R、及びベアリング110R,112Rが収容される。ケーシング102Rは、ステータ106R、コイル108R、及びベアリング110R,112Lと一体となって、回転角センサ100の他方の半分の本体を構成する。
【0023】
図3は、本実施例の回転角センサ100の開状態を示す図である。図3では、回転角センサ100の内部を示すために、B部が一部切開された状態で図示されている。
【0024】
回転角センサ100は、好ましくは、図3に示すように、分割された2つの部分が、互いに連結された状態で、径方向に開閉可能に構成される。具体的には、ケーシング102L及びケーシング102Rを開閉可能に連結するヒンジ部122を介して、径方向に開閉可能に構成される。図示の構成では、ケーシング102L及びケーシング102Rは、ヒンジ部122を介して互いに連結された状態で、回動軸123まわりに回転可能に構成されている。
【0025】
尚、分割ラインTは、コイル108L及びコイル108Rの組み付け性を考慮して、図示のように、ステータ106の歯と歯の間を通るように設定されるのが望ましい。もっとも、回転角センサ100は、必ずしも対称的に分割される必要はない。分割ラインTの好ましい設定態様については、後述する。
【0026】
図4は、図3のB部の拡大図であり、図4(A)は、本実施例の回転角センサ100の断面図であり、図4(B)は、その他の実施例の回転角センサ300の断面図である。
【0027】
コイル108Lとコイル108Rとは、ケーシング102L及びケーシング102Rが連結される一方の側で、互いに接続される。一方、コイル108L及びコイル108Rは、他方の側で、それぞれ、図示しない交流電源又は信号処理装置700(後述)に接続される。図示の例では、コイル108L及びコイル108Rは、開側(図3の上側)では、互いに接続されず、図示しないコネクタを介して、交流電源又は信号処理装置700と接続される。
【0028】
コイル108Lとコイル108Rとの接続は、図4(A)に示すように、繋がっている状態(連続した状態)で巻回されることで実現されてもよい。即ち、コイル108Lとコイル108Rは、組となる2つのステータ106L,106Rを組み合わせた状態で、閉側(図3の下側)で巻き線を分断することなく形成されてもよい。或いは、図4(B)に示す他の実施例による回転角センサ300のように、ステータ306側のコイル308Lとステータ308側のコイル308Rとが、閉側(図3の下側)でコネクタ360を介して互いに接続されてもよい。
【0029】
図5は、ロータ104の形状の一例を示す図であり、図5(A)は、本実施例の回転角センサ100のロータ104の平面図であり、図5(B)は、その他の実施例(周溝109の存在しないタイプ)の回転角センサ200のロータ204の平面図である。
【0030】
図6は、図5(A)のラインC−Cに沿って切断した際の断面図であり、図6(A)及び図6(B)は、2つの異なる連結態様をそれぞれ示す断面図である。
【0031】
図7は、図5(B)のラインD−Dに沿って切断した際の断面図であり、図7(A)及び図7(B)は、2つの異なる連結態様をそれぞれ示す断面図である。
【0032】
ロータ104は、鉄系の磁性材料からなる。ロータ104は、中央部に、回転体150が挿通される穴105を有する。図示の例では、穴105は、円形であり、当該円形の一部に、回転体150の表面に形成される凸部(図示せず)に対応して、凹部114が形成されている。これにより、ロータ104は、回転体150に対して回転方向が拘束され、回転体150と共に一体的に回転することになる。
【0033】
ロータ104の外形輪郭線は、図5に示すように、組み付け状態(図1に示す回転角センサ100の閉状態)で、一定の径ではなく、周期的に変化する径により画成される。即ち、ロータ104の径は、ロータ104の回転角を変数とし軸倍角Nにより周期が定まる略正弦波関数に従って、変化するように決定される。径の変化周期を定める軸倍角Nは、必要な分解能に応じて適宜決定されてよい。尚、図示の例は、軸倍角が3であり、3Xレゾルバとなる。
【0034】
ロータ104は、上述の如く、2分割された2つのロータ104L,104Rからなる。2つのロータ104L,104Rは、互いに重なり合う部分を有し、当該重なり合う部分にて、図6(A)及び図6(B)に示すように、締結具130(例えば、ピンの圧入又は螺子による締結等)により互いに連結可能に構成される。尚、ケーシング102L,102Rには、図1や図3に示すように、締結具130が挿通するための穴140が形成されている。
【0035】
尚、図5(B)に示すその他の実施例のロータ204についても、同様に、互いに重なり合う部分を有し、当該重なり合う部分にて、ピン又は螺子等により互いに連結可能に構成されてよい。
【0036】
ロータ104における分割ラインTは、好ましくは、図5(A)に示すように、分割されたロータの合わせ目の最外周(両側)の点α、βが、互いに異なる径(r2≠r1)上に来るように決定される。また、ロータ104は、好ましくは、図5(A)に示すように、ロータ104の径が、分割されたロータ104の合わせ目の最外周の点α、βの少なくとも何れか一方で急変するように、構成される。図示の例では、ロータ104は、最大径となる最外周の点αにて、切り欠き(凹部)107が形成されている。これにより、ロータ104の径が、最大径となる最外周の点αにて、急変することになる。これらの構成の技術的な意義については、後述する。
【0037】
尚、図5(B)に示すその他の実施例のロータ204についても、分割されたロータの合わせ目の最外周(両側)の2点が互いに異なる径上にあり、同様に、切り欠き207を有してよい。
【0038】
次に、以上の構成による回転角センサ100と回転体150との組み付け態様について説明する。尚、他の実施例による回転角センサ200,300についても同様であるので、説明を省略する。
【0039】
組み付け方法は極めて簡易であり、先ず、図3に示す回転角センサ100の開状態を形成し、開側から図3の矢印Pの向きで、回転体150を回転角センサ100の内部(ベアリング110,112の内周側)に受け入れる。次いで、回転角センサ100を閉じて図1に示す閉状態を形成する。次いで、開閉側の連結部124にてスクリュウ132(図1(B))を締め込んで、ケーシング102L,102Rを一体化する。また、ロータ104L,104Rの重なり部分同士を、上述の如く締結具130により連結し、ロータ104L,104Rを一体化する。これにより、回転角センサ100と回転体150との組み付けが完了する。
【0040】
図8は、その他の実施例による回転角センサ400を示す図であり、図8(A)は、組み付け状態(閉状態)の回転角センサ400の平面図であり、図8(B)は、同回転角センサ400の側面図である。図9は、開状態の回転角センサ400を示す図である。
【0041】
図8に示す実施例の回転角センサ400は、分割された2部分がスナップフィットにより互いに連結される点が、上述の実施例による回転角センサ100と異なる。回転角センサ400は、上述の実施例と同様に、2分割されたケーシング402L,402Rを有する。
【0042】
ケーシング402L内には、上述の実施例と同様に、ロータ、ステータ、コイル、及びベアリングの半分が収容される。ケーシング402Lは、内部に収容されるこれらの部品と一体となって(これらの部品がアセンブリされた状態で)、回転角センサ400の一方の半分の本体を構成する。同様に、ケーシング102Rの内部には、ロータ、ステータ、コイル、及びベアリングの半分が収容される。ケーシング402Rは、内部に収容されるこれらの部品と一体となって、回転角センサ400の一方の半分の本体を構成する。
【0043】
ケーシング402Lには、爪410が両側に形成される。ケーシング102Rには、爪410が係合する非係合部412が形成される。ケーシング402Lとケーシング102Rとは、爪410が非係合部412に係合(スナップフィット)することで、互いに連結される。
【0044】
組み付け態様については、図9に示す回転角センサ400の開状態を形成し、回転体150を回転角センサ400の内部(ベアリングの内周側)に受け入れる。次いで、ケーシング402Lとケーシング102Rとを合わせ(図9のQ方向参照)、回転角センサ400を閉じて図8に示す閉状態を形成する。このとき、スナップフィットによりケーシング402L,402Rが一体化する。次いで、2分割されたロータの重なり部分同士を、上述の実施例と同様に、締結具130により連結し、2分割されたロータ同士を一体化する。これにより、回転角センサ400と回転体150との組み付けが完了する。
【0045】
以上説明したように、本実施例(その他の実施例を含む。以下同じ。)によれば、とりわけ以下の効果が奏される。
【0046】
先ず、上述の如く、回転角センサ100(回転角センサ200,300,400についても同様、以下同じ。)を径方向に分割して構成したことにより、回転角センサ100と回転体150との組み付けが容易となる。例えば、回転体としてのシャフトの軸方向の端部から、回転角センサの中央の穴をシャフトに通して組み付ける従来的な構成では、図10に示すように、段付きのシャフトが回転体150である場合に、段に起因して所定の位置まで回転角センサを軸方向に移動させて組み付けることができない。段に代わって、他の部品が取り付けられる場合も同様であり、当該他の部品は、回転角センサの後から組み付けなければならないという制約が生ずる。このような不都合は、回転角センサの組み付け時のみならず、回転角センサの交換時(取り外し時)にも生ずることは、「発明が解決しようとする課題」の欄にて摘示した通りである。これに対して、本実施例によれば、上述の如く、回転角センサ100を径方向に分割して構成したことにより、図10に示すような段付きのシャフトであっても、径方向から直接的に組み付けることができる。即ち、本実施例によれば、回転体150の径や回転体150に取り付けられる部品の影響を受けることなく、回転角センサ100を容易に回転体150に対して脱着することができ、組み付けや交換作業が非常に容易となる。
【0047】
また、特に図8に示したその他の実施例では、ケーシング402Lとケーシング102Rとは、爪410によるスナップフィットに連結されるので、スクリュウ等による締結が不要であり、部品点数と共に作業工数を低減することができる。
【0048】
また、回転角センサ100を径方向に分割して構成したことにより、コイル108を構成するための巻き線の巻回作業が容易となる。
【0049】
また、ロータ104を分割した部分(合わせ目)に起因して、コイル108から出力される正弦波に歪が発生するので、当該歪を利用して位相合わせを行うことができる。以下、これについて詳説する。
【0050】
図11は、本発明による回転角検出装置800の一実施例を示すシステム構成図である。回転角検出装置800は、上述した回転角センサ100を備える。尚、回転角センサとしては、回転角センサ100に代えて、他の実施例による回転角センサ200,300,400が用いられてもよい。
【0051】
回転角検出装置800は、回転角センサ100からの出力信号を処理して、回転体150の回転角情報を出力する信号処理部700を備える。
【0052】
信号処理部700は、レゾルバデジタルコンバータ710(以下、「R/D710」という。)と、0点通過判定部720と、0点カウントアップ補正部730を含む。尚、0点通過判定部720の機能は、0点カウントアップ補正部730の機能と同様、マイクロコンピューターにより実現されてよいし、IC等を用いてハードウェア的に実現されてもよい。また、0点通過判定部720及び0点カウントアップ補正部730は、R/D710内に組み込まれてもよい。
【0053】
動作時、回転角センサ100の励磁コイルには、図示しない交流電源により励磁電圧が印加される。例えば、交流電源は、例えば4Vの交流の入力電圧を、励磁コイルの両端に印加する。励磁コイルが励磁されてそれに磁気力が発生すると、それに伴い、検知コイルが起電する。上述の如く、ロータ104の外形輪郭線は、一定の径ではなく、周期的に変化する径により画成されている。従って、ロータ104が回転すると、ロータ104とステータ106の歯の径方向の距離が周期的に変化するので、それに伴って、磁束抵抗が変化して、当該ステータ106の歯まわりの検知コイルに誘起される電流(出力電圧)が変化する。このような現象を利用して、ロータ104の回転角ひいては回転体150の回転角θが磁気的に検出される。
【0054】
回転角センサ100には、R/D710が接続される。R/D710には、コイル108の検知コイルからの出力信号(sin相の出力電圧とcos相の出力電圧)が入力される。
【0055】
R/D710は、sin相の出力電圧とcos相の出力電圧とに基づいて、ロータ104の回転角θを表すデジタル信号を出力する。ロータの回転角θは、例えば、次式の関係を用いて導出される。
θ=1/N・tan−1(ESIN−GND/ECOS−GND)
ここで、ECOS−GNDは、cos相の出力電圧を表し、ESIN−GNDは、sin相の出力電圧を表す。
【0056】
図12(A)は、通常のsin相の出力波形とcos相の出力波形、及び、sin相のピークの波形(包絡線の波形)とcos相のピークの波形を示す。図12(B)は、通常の相対角の出力波形を示す。
【0057】
図13は、上述の如く2分割されたロータ104を備える回転角センサ100の同出力波形を示す。図14は、上述の如く2分割されたロータ104を備える回転角センサ100の他の出力波形を示す。
【0058】
通常の構成、即ちロータが分割されていない構成では、sin相の出力波形とcos相の出力波形に歪が生じないためが、上述の如く2分割されたロータ104を備える回転角センサ100の場合、分割されたロータ104の合わせ目に起因して、出力波形に歪が発生する。
【0059】
図13に示す例では、分割されたロータ104の合わせ目における切り欠き107(図5(A)参照)が機械角180度付近に対応した位置に設定されており、従って、図13(A)でR1にて示すように、機械角180度付近で、ロータ104とステータ106との間に急激なギャップの増加が生じ、sin相の出力波形とcos相の出力波形に歪が発生する。これに伴い、図13(B)でR2にて示すように、機械角180度付近で、相対角の出力波形にも歪が発生する。
【0060】
同様に、図14に示す例では、分割されたロータ104の合わせ目における切り欠き107(図5(A)参照)が機械角150度付近に対応した位置に設定されており、従って、図14(A)でS1にて示すように、機械角150度付近で、ロータ104とステータ106との間に急激なギャップの増加が生じ、sin相の出力波形とcos相の出力波形に歪が発生する。これに伴い、図14(B)でS2にて示すように、機械角150度付近で、相対角の出力波形にも歪が発生する。
【0061】
回転角検出装置800は、このような波形の歪(出力信号の特徴)を利用して、位相合わせを行う。以下、この構成について具体的に説明する。
【0062】
図15は、信号処理部700により実現される主要な処理の流れを示すフローチャートである。図16は、0点通過判定処理の説明図である。以下では、前提として、上述の歪が発生するポイントを相対角の「ゼロ点」とする場合について説明する。図15の示す処理ルーチンは、回転角度の演算周期(分解能)に対応した周期で繰り返し実行される。
【0063】
ステップ100では、信号処理部700の0点通過判定部720は、今回周期での機械角の変化に対する電気角の変化量θe/θmに基づいて、即ち、図16に示す相対角の波形の勾配θe/θmに基づいて、0点通過が生じたか否かを判定する。ここで、判定条件は、以下のとおりであってよい。
Xa<θe/θm<Xb、又は、−Xb<θe/θm<−Xa
ここで、Xaは、図16に概念的に示すように、通常時の変化量、即ち0点及び符号変化点を通過していない場合の変化量に対応し、Xbは、cos相とsin相の符号変化時の変化量に対応する。
【0064】
0点通過が生じた場合には、Xbよりも小さいものの、上述の歪に起因して比較的大きな変化量が生ずる。上記の条件は、このような現象に着目して設定されたものであり、高い精度でゼロ点通過を判定することができる。
【0065】
0点通過判定部720は、0点通過が生じたと判定した場合には、信号処理部700の0点カウントアップ補正部730によるゼロ点カウントアップ補正処理が実行される。一方、0点通過判定部720は、0点通過が生じていないと判定した場合には、次回周期で入力される相対角度情報を用いて、ステップ100の判定を繰り返す。
【0066】
図17は、0点カウントアップ補正部730により実現される0点カウントアップ補正処理の流れを示すフローチャートである。図18は、0点カウントアップ補正処理の説明図であり、各状況下でのカウントアップ値の状態を示す図である。カウントアップ値は、図18(A)に示すように、電気角180度毎に変化し、例えばcos相とsin相の符号変化時に、カウントアップ値が増減される。図18に示す例では、カウントアップ値「4」の位置で、波形に歪が存在する。即ち、カウントアップ値「4」の位置で、ゼロ点通過の判別ポイントが存在する。
【0067】
ステップ112では、0点カウントアップ補正部730は、今回のゼロ点通過時のゼロ点カウントアップ値Naと、基準ゼロ点カウントアップ値Nb(本例の場合には、Nb=4)との比較処理を行う。ゼロカウントアップ値とは、0点通過が判定された際のカウントアップ値である。
【0068】
比較処理の結果、ゼロ点カウントアップ値Naと基準ゼロ点カウントアップ値Nbとが等しい場合(ステップ114のYES),ゼロ点カウントアップ値Naがそのまま保持される。一方、ゼロ点カウントアップ値Naと基準ゼロ点カウントアップ値Nbとが異なる場合(ステップ114のNO)、ゼロ点カウントアップ値Naが基準ゼロ点カウントアップ値Nbに変更されて記憶される(ステップ118)。
【0069】
ここで、図18(A)に示す状態、即ち現在のカウントアップ値が「7」の状態でイグニッションスイッチがオフとされた場合を想定する。イグニッションスイッチがオフとされた状態で、ステアリングホイールが操作されない場合は、次のイグニッションスイッチがオンとされた際に、カウントアップ値の記憶値「7」は有効であり、そのまま用いることができる。しかしながら、ここでは、イグニッションスイッチがオフとされた状態で、ステアリングホイールが操作され(電気角で約1周期だけ戻され)、実際のカウントアップ値が「5」になった場合を想定する。この場合、次のイグニッションスイッチがオンとされた際に、カウントアップ値の記憶値が「7」であるとしてカウントアップ値の増減が実行される。その後の運転中等に、ステアリングホイールが操作され、0点を通過した時点で、図17に示した0点カウントアップ補正処理が実行される。ここでは、図18(C)に示すように、ステアリングホイールが電気角で約半周期だけ戻された場合を想定する。この際、今回のゼロ点通過時のゼロ点カウントアップ値Naは、「6」となる。即ち、イグニッションスイッチオフ状態でステアリングホイールが操作された分だけ誤差が発生することになる。この際、図17に示した0点カウントアップ補正処理(ステップ116参照)により、ゼロ点カウントアップ値Naが「6」から正しいカウントアップ値「4」に補正される。
【0070】
このように本実施例によれば、例えばイグニションスイッチオフ状態でステアリングホイールが操作された場合や、電源の一時的な遮断等によりカウントアップ値を見失った場合にも、分割されたロータ104の合わせ目に起因して発生する出力波形の特徴を利用して、位相合わせ(カウントアップ値の補正)を行うことができる。これにより、常に高い精度で回転角情報を得ることができる。
【0071】
尚、本実施例では、上述の如く、ロータ104の合わせ目の一方の側に、切り欠き107を設定し、当該切り欠き107に起因して機械角1周期で1回だけ発生する1点の特徴点を用いて、位相合わせを行っている。即ちロータ104の合わせ目の他方の側で発生する比較的微少な歪は無視し、切り欠き107に起因した比較的に大きな歪を利用して、機械角1周期で1点の特徴点を用いて位相合わせを行っている。しかしながら、ロータ104の合わせ目の両側で発生する2点の特徴点を用いて位相合わせを行うことも可能である。この場合、分割されたロータ104の合わせ目に起因した出力波形の特徴が、異なる電気角の位相で発生するように上述の分割ラインTを設定すれば、それぞれの特徴点間を識別できる。この場合、機械角1周期で2回、位相合わせの機会を得ることができる。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0073】
例えば、上述の実施例では、1つの回転角センサ(レゾルバ)を用いているが、2以上の回転角センサを、同様に分割して構成することも可能である。例えば、図19に示すように、冗長性確保のため2系統の回転角センサを近接して設ける場合、当該2つの回転角センサを共に(一体として)径方向に分割して構成することも可能である。
【0074】
また、上述の実施例では、回転角を相対角で検出しているが、本発明はこれに限定されることは無く、軸倍角の異なる第2のレゾルバを設定して、回転角を絶対角で検出することも可能である。
【0075】
また、上述の実施例では、2分割であったが、3分割以上も可能である。
【0076】
また、上述の実施例では、ロータ104の合わせ目に、径が急減する切り欠き107を設定して、出力波形に発生する歪をより顕在化させているが、切り欠き107に代えて、径が急増する凸部を設定してもよい。
【0077】
また、上述の実施例では、1相入力/2相出力の構成であったが、2相入力/1相出力であってもよいし、相の態様は任意である。
【0078】
また、回転角センサ(レゾルバ)は、上述の実施例のような、ロータに対して径方向に対向する凸状のステータ(歯)に巻線(励磁コイル及び検知コイル)を巻き付け、径方向の磁気抵抗の変化を利用して角度検出を行うタイプに限られない。例えば、回転角センサは、ロータに対して軸方向に対向する凸状のステータコアに巻線(励磁コイル及び検知コイル)を巻き付け、軸方向の磁気抵抗の変化を利用して角度検出を行うタイプであってよい。このタイプの場合、ロータが回転すると、ロータの外周部とステータコアの上面との遮蔽幅が変化し、ステータコアを通る磁束が遮へいされる幅が周期的に変化するので、それに伴って、磁束抵抗が変化して、当該コアまわりの検知コイルに誘起される電流(出力電圧)が変化する。この場合、励磁コイル及び検知コイルは、必ずしも巻き線を巻くタイプである必要はなく、フィルム上のコイル(基板上にプリントされたコイル)を用いて薄型化を図ることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のとおり本発明は、パワーステアリング装置におけるステアリングシャフトの回転角度を検出する回転角検出装置を始めとして、回転体の回転角の検出が必要なあらゆる装置において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】回転角センサの一実施例を示す2面図である。
【図2】図1のラインA−Aに沿って切断した際の断面図である。
【図3】本実施例の回転角センサ100の開状態を示す図である。
【図4】図3のB部の拡大図であり、コイルの接続態様を示すための図である。
【図5】ロータ104の形状の一例を示す図である。
【図6】図5(A)のラインD−Dに沿って切断した際の断面図である。
【図7】図5(B)のラインD−Dに沿って切断した際の断面図である。
【図8】その他の実施例による回転角センサ400を示す2面図である。
【図9】開状態の回転角センサ400を示す図である。
【図10】回転体150としての段付きのシャフトに対する組み付け性の説明図である。
【図11】本発明による回転角検出装置800の一実施例を示すシステム構成図である。
【図12】通常の波形を示す図である。
【図13】2分割されたロータ104を備える回転角センサ100の同出力波形を示す図である。
【図14】2分割されたロータ104を備える回転角センサ100の他の出力波形を示す図である。
【図15】信号処理部700により実現される主要な処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】0点通過判定処理の説明図である。
【図17】0点カウントアップ補正部730により実現される0点カウントアップ補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】0点カウントアップ補正処理の説明図である。
【図19】他の実施例による回転角センサの設置状態を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
100 回転角センサ
102 ケーシング
104 ロータ
106 ステータ
107 切り欠き
108 コイル
110,112 ベアリング
122 ヒンジ部
130 締結具
150 回転体
410 爪
700 信号処理部
710 R/D
720 0点通過判定部
730 0点カウントアップ補正部
800 回転角検出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転角を検出する回転角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軸方向に貫通孔が設けられ、該貫通孔にレゾルバが軸方向を合わせて収納された分割ハウジングを、複数個軸方向を合わせて接合しハウジングを構成したことを特徴とする回転角センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−43140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の回転角検出装置は、上記の特許文献1に記載の発明のように、回転角検出装置の中央の穴に、回転軸を挿通して脱着する構成であるため、組み付け性や整備性が悪いという問題点がある。例えば、回転角検出装置を回転軸から外すとき、回転軸に他の部品が取り付けられている場合には、当該他の部品を取り外してから、回転角検出装置を回転軸の軸方向に沿って抜く必要があり、作業が煩雑になる。
【0004】
そこで、本発明は、組み付け性や整備性が良好な回転角検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明は、回転体の回転角を検出する回転角検出装置であって、
径方向に2分割される本体を有する回転角センサを備えることを特徴とする。これにより、回転体と回転角センサとの間の組み付け性や回転角センサの整備性が向上する。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る回転角検出装置において、
前記回転角センサが、回転体と共に回転するロータと、ステータと、励磁コイル及び検知コイルとを備え、回転角検出装置が、ロータの回転に伴って周期的に変化する磁束抵抗を利用して回転体の回転角を検出する場合において、
回転角検出装置が、検知コイルから入力される出力信号を処理して、回転体の回転角情報を出力する信号処理部を備え、
前記信号処理部が、分割されたロータの合わせ目に起因して発生する出力信号の特徴を利用して、回転体の回転角情報を生成することを特徴とする。これにより、ロータの分割構造を利用して角度検出精度を高めることができる。
【0007】
第3の発明は、第1又は2の発明に係る回転角検出装置において、
ロータの径は、ロータの回転角を変数とし軸倍角により周期が定まる略正弦波関数に従って、変化するように決定され、
ロータは、分割されたロータの合わせ目の両側に起因した出力信号の2点の特徴が、該正弦波関数における異なる位相で出現するように、分割されることを特徴とする。これにより、出力信号の2点(分割されたロータの合わせ目の両側に対応する2点)の特徴がそれぞれ異なる位相で生ずるので、混同されることがない。従って、2点の出力信号の特徴を利用する場合には、補正の機会が機械角1周期で2回確保することができる。
【0008】
第2の発明は、第1〜3の発明に係る回転角検出装置において、
ロータは、径が分割された合わせ目で急変するように、構成されることを特徴とする。これにより、出力信号の特徴が強調され、精度良く当該特徴の出現を検出することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、とりわけ、組み付け性や整備性が良好な回転角検出装置が得られる。また、ロータの分割構造を利用して角度検出精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明による回転角検出装置における回転角センサ100の一実施例を示す2面図であり、図1(A)は、組み付け状態の回転角センサ100の平面図であり、図1(B)は、同回転角センサ100の側面図である。本実施例の回転角センサ100は、例えばステアリングシャフトの回転角度を検出するために用いられるものであってよい。
【0012】
回転角センサ100は、例えばVR型(可変リラクタンス)レゾルバとして構成され、回転角度の検出対象である回転体150(例えばステアリングシャフト)の回転軸に対して同軸に配置される。
【0013】
図2は、図1のラインA−Aに沿って切断した際の断面図であり、図2(A)は、本実施例の回転角センサ100の断面図であり、図2(B)は、その他の実施例の回転角センサ200の断面図である。
【0014】
回転角センサ100は、ケーシング(ハウジングカバー)102を備える。ケーシング102は、組み付け状態で円環状の形状を有する。ケーシング102は、PBT(ポリブチレンテレフタレート:Polybutylene terephthalate)のような樹脂材料を射出成形して製造されてよい。
【0015】
ケーシング102の内部には、図2(A)に示すように、回転体150と共に回転するロータ104、ステータ106、コイル108、及びベアリング110,112が収容されている。ケーシング102は、図示しないブラケット等を介して、車体に固定支持される。
【0016】
コイル108は、回転角センサ100が1相入力/2相出力タイプのセンサの場合、励磁コイルと、2つの検知コイル(sin相及びcos相の出力コイル)を備える。
【0017】
ステータ106は、鉄系の磁性材料からなり、ケーシング102の内部における外周側に組み付けられる。ステータ106は、組み付け状態(図1に示す回転角センサ100の閉状態)で円環状の形状を有する。ステータ106は、回転中心に向かって突出する突起(歯)を、周方向に沿って複数有する。突起には、励磁コイルと検知コイルとが適切に巻回される。
【0018】
ベアリング110,112は、ケーシング102の内周側に組み付けられる。ベアリング110,112は、組み付け状態(図1に示す回転角センサ100の閉状態)で、回転体150のまわりに円環状に配列され、ケーシング102に対して回転体150を回転可能に支持する。
【0019】
ケーシング102には、図2(A)に示すように、ロータ104に対向する表面に、軸方向に凸となる突起103が周方向に沿って形成されている。突起103は、ロータ104の対応する部分に形成された周溝109内に摺動可能に嵌合し、ロータ104の回転軌道を画成する機能を果たす。但し、図2(B)に示す他の実施例による回転角センサ200のように、かかる突起に代えて、スペーサ202によりロータの回転軌道を維持することも可能である。
【0020】
回転角センサ100は、図1に示した分割ラインTに沿って、略対称な2部分を径方向で合わせることで構成されている。即ち、回転角センサ100は、径方向に2分割された構成を有する。以下では、分割された一方の部分の構成要素の参照符号の最後に、記号「L」を付し、他方の部分の構成要素の参照符号の最後に、記号「R」を付す。
【0021】
かかる分割構成では、ケーシング102Lの内部には、ロータ104L、ステータ106L、コイル108L、及びベアリング110L,112Lが収容される。ケーシング102Lは、ステータ106L、コイル108L、及びベアリング110L,112Lと一体となって(これらの部品がアセンブリされた状態で)、回転角センサ100の一方の半分の本体を構成する。
【0022】
同様に、ケーシング102Rの内部には、ロータ104R、ステータ106R、コイル108R、及びベアリング110R,112Rが収容される。ケーシング102Rは、ステータ106R、コイル108R、及びベアリング110R,112Lと一体となって、回転角センサ100の他方の半分の本体を構成する。
【0023】
図3は、本実施例の回転角センサ100の開状態を示す図である。図3では、回転角センサ100の内部を示すために、B部が一部切開された状態で図示されている。
【0024】
回転角センサ100は、好ましくは、図3に示すように、分割された2つの部分が、互いに連結された状態で、径方向に開閉可能に構成される。具体的には、ケーシング102L及びケーシング102Rを開閉可能に連結するヒンジ部122を介して、径方向に開閉可能に構成される。図示の構成では、ケーシング102L及びケーシング102Rは、ヒンジ部122を介して互いに連結された状態で、回動軸123まわりに回転可能に構成されている。
【0025】
尚、分割ラインTは、コイル108L及びコイル108Rの組み付け性を考慮して、図示のように、ステータ106の歯と歯の間を通るように設定されるのが望ましい。もっとも、回転角センサ100は、必ずしも対称的に分割される必要はない。分割ラインTの好ましい設定態様については、後述する。
【0026】
図4は、図3のB部の拡大図であり、図4(A)は、本実施例の回転角センサ100の断面図であり、図4(B)は、その他の実施例の回転角センサ300の断面図である。
【0027】
コイル108Lとコイル108Rとは、ケーシング102L及びケーシング102Rが連結される一方の側で、互いに接続される。一方、コイル108L及びコイル108Rは、他方の側で、それぞれ、図示しない交流電源又は信号処理装置700(後述)に接続される。図示の例では、コイル108L及びコイル108Rは、開側(図3の上側)では、互いに接続されず、図示しないコネクタを介して、交流電源又は信号処理装置700と接続される。
【0028】
コイル108Lとコイル108Rとの接続は、図4(A)に示すように、繋がっている状態(連続した状態)で巻回されることで実現されてもよい。即ち、コイル108Lとコイル108Rは、組となる2つのステータ106L,106Rを組み合わせた状態で、閉側(図3の下側)で巻き線を分断することなく形成されてもよい。或いは、図4(B)に示す他の実施例による回転角センサ300のように、ステータ306側のコイル308Lとステータ308側のコイル308Rとが、閉側(図3の下側)でコネクタ360を介して互いに接続されてもよい。
【0029】
図5は、ロータ104の形状の一例を示す図であり、図5(A)は、本実施例の回転角センサ100のロータ104の平面図であり、図5(B)は、その他の実施例(周溝109の存在しないタイプ)の回転角センサ200のロータ204の平面図である。
【0030】
図6は、図5(A)のラインC−Cに沿って切断した際の断面図であり、図6(A)及び図6(B)は、2つの異なる連結態様をそれぞれ示す断面図である。
【0031】
図7は、図5(B)のラインD−Dに沿って切断した際の断面図であり、図7(A)及び図7(B)は、2つの異なる連結態様をそれぞれ示す断面図である。
【0032】
ロータ104は、鉄系の磁性材料からなる。ロータ104は、中央部に、回転体150が挿通される穴105を有する。図示の例では、穴105は、円形であり、当該円形の一部に、回転体150の表面に形成される凸部(図示せず)に対応して、凹部114が形成されている。これにより、ロータ104は、回転体150に対して回転方向が拘束され、回転体150と共に一体的に回転することになる。
【0033】
ロータ104の外形輪郭線は、図5に示すように、組み付け状態(図1に示す回転角センサ100の閉状態)で、一定の径ではなく、周期的に変化する径により画成される。即ち、ロータ104の径は、ロータ104の回転角を変数とし軸倍角Nにより周期が定まる略正弦波関数に従って、変化するように決定される。径の変化周期を定める軸倍角Nは、必要な分解能に応じて適宜決定されてよい。尚、図示の例は、軸倍角が3であり、3Xレゾルバとなる。
【0034】
ロータ104は、上述の如く、2分割された2つのロータ104L,104Rからなる。2つのロータ104L,104Rは、互いに重なり合う部分を有し、当該重なり合う部分にて、図6(A)及び図6(B)に示すように、締結具130(例えば、ピンの圧入又は螺子による締結等)により互いに連結可能に構成される。尚、ケーシング102L,102Rには、図1や図3に示すように、締結具130が挿通するための穴140が形成されている。
【0035】
尚、図5(B)に示すその他の実施例のロータ204についても、同様に、互いに重なり合う部分を有し、当該重なり合う部分にて、ピン又は螺子等により互いに連結可能に構成されてよい。
【0036】
ロータ104における分割ラインTは、好ましくは、図5(A)に示すように、分割されたロータの合わせ目の最外周(両側)の点α、βが、互いに異なる径(r2≠r1)上に来るように決定される。また、ロータ104は、好ましくは、図5(A)に示すように、ロータ104の径が、分割されたロータ104の合わせ目の最外周の点α、βの少なくとも何れか一方で急変するように、構成される。図示の例では、ロータ104は、最大径となる最外周の点αにて、切り欠き(凹部)107が形成されている。これにより、ロータ104の径が、最大径となる最外周の点αにて、急変することになる。これらの構成の技術的な意義については、後述する。
【0037】
尚、図5(B)に示すその他の実施例のロータ204についても、分割されたロータの合わせ目の最外周(両側)の2点が互いに異なる径上にあり、同様に、切り欠き207を有してよい。
【0038】
次に、以上の構成による回転角センサ100と回転体150との組み付け態様について説明する。尚、他の実施例による回転角センサ200,300についても同様であるので、説明を省略する。
【0039】
組み付け方法は極めて簡易であり、先ず、図3に示す回転角センサ100の開状態を形成し、開側から図3の矢印Pの向きで、回転体150を回転角センサ100の内部(ベアリング110,112の内周側)に受け入れる。次いで、回転角センサ100を閉じて図1に示す閉状態を形成する。次いで、開閉側の連結部124にてスクリュウ132(図1(B))を締め込んで、ケーシング102L,102Rを一体化する。また、ロータ104L,104Rの重なり部分同士を、上述の如く締結具130により連結し、ロータ104L,104Rを一体化する。これにより、回転角センサ100と回転体150との組み付けが完了する。
【0040】
図8は、その他の実施例による回転角センサ400を示す図であり、図8(A)は、組み付け状態(閉状態)の回転角センサ400の平面図であり、図8(B)は、同回転角センサ400の側面図である。図9は、開状態の回転角センサ400を示す図である。
【0041】
図8に示す実施例の回転角センサ400は、分割された2部分がスナップフィットにより互いに連結される点が、上述の実施例による回転角センサ100と異なる。回転角センサ400は、上述の実施例と同様に、2分割されたケーシング402L,402Rを有する。
【0042】
ケーシング402L内には、上述の実施例と同様に、ロータ、ステータ、コイル、及びベアリングの半分が収容される。ケーシング402Lは、内部に収容されるこれらの部品と一体となって(これらの部品がアセンブリされた状態で)、回転角センサ400の一方の半分の本体を構成する。同様に、ケーシング102Rの内部には、ロータ、ステータ、コイル、及びベアリングの半分が収容される。ケーシング402Rは、内部に収容されるこれらの部品と一体となって、回転角センサ400の一方の半分の本体を構成する。
【0043】
ケーシング402Lには、爪410が両側に形成される。ケーシング102Rには、爪410が係合する非係合部412が形成される。ケーシング402Lとケーシング102Rとは、爪410が非係合部412に係合(スナップフィット)することで、互いに連結される。
【0044】
組み付け態様については、図9に示す回転角センサ400の開状態を形成し、回転体150を回転角センサ400の内部(ベアリングの内周側)に受け入れる。次いで、ケーシング402Lとケーシング102Rとを合わせ(図9のQ方向参照)、回転角センサ400を閉じて図8に示す閉状態を形成する。このとき、スナップフィットによりケーシング402L,402Rが一体化する。次いで、2分割されたロータの重なり部分同士を、上述の実施例と同様に、締結具130により連結し、2分割されたロータ同士を一体化する。これにより、回転角センサ400と回転体150との組み付けが完了する。
【0045】
以上説明したように、本実施例(その他の実施例を含む。以下同じ。)によれば、とりわけ以下の効果が奏される。
【0046】
先ず、上述の如く、回転角センサ100(回転角センサ200,300,400についても同様、以下同じ。)を径方向に分割して構成したことにより、回転角センサ100と回転体150との組み付けが容易となる。例えば、回転体としてのシャフトの軸方向の端部から、回転角センサの中央の穴をシャフトに通して組み付ける従来的な構成では、図10に示すように、段付きのシャフトが回転体150である場合に、段に起因して所定の位置まで回転角センサを軸方向に移動させて組み付けることができない。段に代わって、他の部品が取り付けられる場合も同様であり、当該他の部品は、回転角センサの後から組み付けなければならないという制約が生ずる。このような不都合は、回転角センサの組み付け時のみならず、回転角センサの交換時(取り外し時)にも生ずることは、「発明が解決しようとする課題」の欄にて摘示した通りである。これに対して、本実施例によれば、上述の如く、回転角センサ100を径方向に分割して構成したことにより、図10に示すような段付きのシャフトであっても、径方向から直接的に組み付けることができる。即ち、本実施例によれば、回転体150の径や回転体150に取り付けられる部品の影響を受けることなく、回転角センサ100を容易に回転体150に対して脱着することができ、組み付けや交換作業が非常に容易となる。
【0047】
また、特に図8に示したその他の実施例では、ケーシング402Lとケーシング102Rとは、爪410によるスナップフィットに連結されるので、スクリュウ等による締結が不要であり、部品点数と共に作業工数を低減することができる。
【0048】
また、回転角センサ100を径方向に分割して構成したことにより、コイル108を構成するための巻き線の巻回作業が容易となる。
【0049】
また、ロータ104を分割した部分(合わせ目)に起因して、コイル108から出力される正弦波に歪が発生するので、当該歪を利用して位相合わせを行うことができる。以下、これについて詳説する。
【0050】
図11は、本発明による回転角検出装置800の一実施例を示すシステム構成図である。回転角検出装置800は、上述した回転角センサ100を備える。尚、回転角センサとしては、回転角センサ100に代えて、他の実施例による回転角センサ200,300,400が用いられてもよい。
【0051】
回転角検出装置800は、回転角センサ100からの出力信号を処理して、回転体150の回転角情報を出力する信号処理部700を備える。
【0052】
信号処理部700は、レゾルバデジタルコンバータ710(以下、「R/D710」という。)と、0点通過判定部720と、0点カウントアップ補正部730を含む。尚、0点通過判定部720の機能は、0点カウントアップ補正部730の機能と同様、マイクロコンピューターにより実現されてよいし、IC等を用いてハードウェア的に実現されてもよい。また、0点通過判定部720及び0点カウントアップ補正部730は、R/D710内に組み込まれてもよい。
【0053】
動作時、回転角センサ100の励磁コイルには、図示しない交流電源により励磁電圧が印加される。例えば、交流電源は、例えば4Vの交流の入力電圧を、励磁コイルの両端に印加する。励磁コイルが励磁されてそれに磁気力が発生すると、それに伴い、検知コイルが起電する。上述の如く、ロータ104の外形輪郭線は、一定の径ではなく、周期的に変化する径により画成されている。従って、ロータ104が回転すると、ロータ104とステータ106の歯の径方向の距離が周期的に変化するので、それに伴って、磁束抵抗が変化して、当該ステータ106の歯まわりの検知コイルに誘起される電流(出力電圧)が変化する。このような現象を利用して、ロータ104の回転角ひいては回転体150の回転角θが磁気的に検出される。
【0054】
回転角センサ100には、R/D710が接続される。R/D710には、コイル108の検知コイルからの出力信号(sin相の出力電圧とcos相の出力電圧)が入力される。
【0055】
R/D710は、sin相の出力電圧とcos相の出力電圧とに基づいて、ロータ104の回転角θを表すデジタル信号を出力する。ロータの回転角θは、例えば、次式の関係を用いて導出される。
θ=1/N・tan−1(ESIN−GND/ECOS−GND)
ここで、ECOS−GNDは、cos相の出力電圧を表し、ESIN−GNDは、sin相の出力電圧を表す。
【0056】
図12(A)は、通常のsin相の出力波形とcos相の出力波形、及び、sin相のピークの波形(包絡線の波形)とcos相のピークの波形を示す。図12(B)は、通常の相対角の出力波形を示す。
【0057】
図13は、上述の如く2分割されたロータ104を備える回転角センサ100の同出力波形を示す。図14は、上述の如く2分割されたロータ104を備える回転角センサ100の他の出力波形を示す。
【0058】
通常の構成、即ちロータが分割されていない構成では、sin相の出力波形とcos相の出力波形に歪が生じないためが、上述の如く2分割されたロータ104を備える回転角センサ100の場合、分割されたロータ104の合わせ目に起因して、出力波形に歪が発生する。
【0059】
図13に示す例では、分割されたロータ104の合わせ目における切り欠き107(図5(A)参照)が機械角180度付近に対応した位置に設定されており、従って、図13(A)でR1にて示すように、機械角180度付近で、ロータ104とステータ106との間に急激なギャップの増加が生じ、sin相の出力波形とcos相の出力波形に歪が発生する。これに伴い、図13(B)でR2にて示すように、機械角180度付近で、相対角の出力波形にも歪が発生する。
【0060】
同様に、図14に示す例では、分割されたロータ104の合わせ目における切り欠き107(図5(A)参照)が機械角150度付近に対応した位置に設定されており、従って、図14(A)でS1にて示すように、機械角150度付近で、ロータ104とステータ106との間に急激なギャップの増加が生じ、sin相の出力波形とcos相の出力波形に歪が発生する。これに伴い、図14(B)でS2にて示すように、機械角150度付近で、相対角の出力波形にも歪が発生する。
【0061】
回転角検出装置800は、このような波形の歪(出力信号の特徴)を利用して、位相合わせを行う。以下、この構成について具体的に説明する。
【0062】
図15は、信号処理部700により実現される主要な処理の流れを示すフローチャートである。図16は、0点通過判定処理の説明図である。以下では、前提として、上述の歪が発生するポイントを相対角の「ゼロ点」とする場合について説明する。図15の示す処理ルーチンは、回転角度の演算周期(分解能)に対応した周期で繰り返し実行される。
【0063】
ステップ100では、信号処理部700の0点通過判定部720は、今回周期での機械角の変化に対する電気角の変化量θe/θmに基づいて、即ち、図16に示す相対角の波形の勾配θe/θmに基づいて、0点通過が生じたか否かを判定する。ここで、判定条件は、以下のとおりであってよい。
Xa<θe/θm<Xb、又は、−Xb<θe/θm<−Xa
ここで、Xaは、図16に概念的に示すように、通常時の変化量、即ち0点及び符号変化点を通過していない場合の変化量に対応し、Xbは、cos相とsin相の符号変化時の変化量に対応する。
【0064】
0点通過が生じた場合には、Xbよりも小さいものの、上述の歪に起因して比較的大きな変化量が生ずる。上記の条件は、このような現象に着目して設定されたものであり、高い精度でゼロ点通過を判定することができる。
【0065】
0点通過判定部720は、0点通過が生じたと判定した場合には、信号処理部700の0点カウントアップ補正部730によるゼロ点カウントアップ補正処理が実行される。一方、0点通過判定部720は、0点通過が生じていないと判定した場合には、次回周期で入力される相対角度情報を用いて、ステップ100の判定を繰り返す。
【0066】
図17は、0点カウントアップ補正部730により実現される0点カウントアップ補正処理の流れを示すフローチャートである。図18は、0点カウントアップ補正処理の説明図であり、各状況下でのカウントアップ値の状態を示す図である。カウントアップ値は、図18(A)に示すように、電気角180度毎に変化し、例えばcos相とsin相の符号変化時に、カウントアップ値が増減される。図18に示す例では、カウントアップ値「4」の位置で、波形に歪が存在する。即ち、カウントアップ値「4」の位置で、ゼロ点通過の判別ポイントが存在する。
【0067】
ステップ112では、0点カウントアップ補正部730は、今回のゼロ点通過時のゼロ点カウントアップ値Naと、基準ゼロ点カウントアップ値Nb(本例の場合には、Nb=4)との比較処理を行う。ゼロカウントアップ値とは、0点通過が判定された際のカウントアップ値である。
【0068】
比較処理の結果、ゼロ点カウントアップ値Naと基準ゼロ点カウントアップ値Nbとが等しい場合(ステップ114のYES),ゼロ点カウントアップ値Naがそのまま保持される。一方、ゼロ点カウントアップ値Naと基準ゼロ点カウントアップ値Nbとが異なる場合(ステップ114のNO)、ゼロ点カウントアップ値Naが基準ゼロ点カウントアップ値Nbに変更されて記憶される(ステップ118)。
【0069】
ここで、図18(A)に示す状態、即ち現在のカウントアップ値が「7」の状態でイグニッションスイッチがオフとされた場合を想定する。イグニッションスイッチがオフとされた状態で、ステアリングホイールが操作されない場合は、次のイグニッションスイッチがオンとされた際に、カウントアップ値の記憶値「7」は有効であり、そのまま用いることができる。しかしながら、ここでは、イグニッションスイッチがオフとされた状態で、ステアリングホイールが操作され(電気角で約1周期だけ戻され)、実際のカウントアップ値が「5」になった場合を想定する。この場合、次のイグニッションスイッチがオンとされた際に、カウントアップ値の記憶値が「7」であるとしてカウントアップ値の増減が実行される。その後の運転中等に、ステアリングホイールが操作され、0点を通過した時点で、図17に示した0点カウントアップ補正処理が実行される。ここでは、図18(C)に示すように、ステアリングホイールが電気角で約半周期だけ戻された場合を想定する。この際、今回のゼロ点通過時のゼロ点カウントアップ値Naは、「6」となる。即ち、イグニッションスイッチオフ状態でステアリングホイールが操作された分だけ誤差が発生することになる。この際、図17に示した0点カウントアップ補正処理(ステップ116参照)により、ゼロ点カウントアップ値Naが「6」から正しいカウントアップ値「4」に補正される。
【0070】
このように本実施例によれば、例えばイグニションスイッチオフ状態でステアリングホイールが操作された場合や、電源の一時的な遮断等によりカウントアップ値を見失った場合にも、分割されたロータ104の合わせ目に起因して発生する出力波形の特徴を利用して、位相合わせ(カウントアップ値の補正)を行うことができる。これにより、常に高い精度で回転角情報を得ることができる。
【0071】
尚、本実施例では、上述の如く、ロータ104の合わせ目の一方の側に、切り欠き107を設定し、当該切り欠き107に起因して機械角1周期で1回だけ発生する1点の特徴点を用いて、位相合わせを行っている。即ちロータ104の合わせ目の他方の側で発生する比較的微少な歪は無視し、切り欠き107に起因した比較的に大きな歪を利用して、機械角1周期で1点の特徴点を用いて位相合わせを行っている。しかしながら、ロータ104の合わせ目の両側で発生する2点の特徴点を用いて位相合わせを行うことも可能である。この場合、分割されたロータ104の合わせ目に起因した出力波形の特徴が、異なる電気角の位相で発生するように上述の分割ラインTを設定すれば、それぞれの特徴点間を識別できる。この場合、機械角1周期で2回、位相合わせの機会を得ることができる。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0073】
例えば、上述の実施例では、1つの回転角センサ(レゾルバ)を用いているが、2以上の回転角センサを、同様に分割して構成することも可能である。例えば、図19に示すように、冗長性確保のため2系統の回転角センサを近接して設ける場合、当該2つの回転角センサを共に(一体として)径方向に分割して構成することも可能である。
【0074】
また、上述の実施例では、回転角を相対角で検出しているが、本発明はこれに限定されることは無く、軸倍角の異なる第2のレゾルバを設定して、回転角を絶対角で検出することも可能である。
【0075】
また、上述の実施例では、2分割であったが、3分割以上も可能である。
【0076】
また、上述の実施例では、ロータ104の合わせ目に、径が急減する切り欠き107を設定して、出力波形に発生する歪をより顕在化させているが、切り欠き107に代えて、径が急増する凸部を設定してもよい。
【0077】
また、上述の実施例では、1相入力/2相出力の構成であったが、2相入力/1相出力であってもよいし、相の態様は任意である。
【0078】
また、回転角センサ(レゾルバ)は、上述の実施例のような、ロータに対して径方向に対向する凸状のステータ(歯)に巻線(励磁コイル及び検知コイル)を巻き付け、径方向の磁気抵抗の変化を利用して角度検出を行うタイプに限られない。例えば、回転角センサは、ロータに対して軸方向に対向する凸状のステータコアに巻線(励磁コイル及び検知コイル)を巻き付け、軸方向の磁気抵抗の変化を利用して角度検出を行うタイプであってよい。このタイプの場合、ロータが回転すると、ロータの外周部とステータコアの上面との遮蔽幅が変化し、ステータコアを通る磁束が遮へいされる幅が周期的に変化するので、それに伴って、磁束抵抗が変化して、当該コアまわりの検知コイルに誘起される電流(出力電圧)が変化する。この場合、励磁コイル及び検知コイルは、必ずしも巻き線を巻くタイプである必要はなく、フィルム上のコイル(基板上にプリントされたコイル)を用いて薄型化を図ることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のとおり本発明は、パワーステアリング装置におけるステアリングシャフトの回転角度を検出する回転角検出装置を始めとして、回転体の回転角の検出が必要なあらゆる装置において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】回転角センサの一実施例を示す2面図である。
【図2】図1のラインA−Aに沿って切断した際の断面図である。
【図3】本実施例の回転角センサ100の開状態を示す図である。
【図4】図3のB部の拡大図であり、コイルの接続態様を示すための図である。
【図5】ロータ104の形状の一例を示す図である。
【図6】図5(A)のラインD−Dに沿って切断した際の断面図である。
【図7】図5(B)のラインD−Dに沿って切断した際の断面図である。
【図8】その他の実施例による回転角センサ400を示す2面図である。
【図9】開状態の回転角センサ400を示す図である。
【図10】回転体150としての段付きのシャフトに対する組み付け性の説明図である。
【図11】本発明による回転角検出装置800の一実施例を示すシステム構成図である。
【図12】通常の波形を示す図である。
【図13】2分割されたロータ104を備える回転角センサ100の同出力波形を示す図である。
【図14】2分割されたロータ104を備える回転角センサ100の他の出力波形を示す図である。
【図15】信号処理部700により実現される主要な処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】0点通過判定処理の説明図である。
【図17】0点カウントアップ補正部730により実現される0点カウントアップ補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図18】0点カウントアップ補正処理の説明図である。
【図19】他の実施例による回転角センサの設置状態を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
100 回転角センサ
102 ケーシング
104 ロータ
106 ステータ
107 切り欠き
108 コイル
110,112 ベアリング
122 ヒンジ部
130 締結具
150 回転体
410 爪
700 信号処理部
710 R/D
720 0点通過判定部
730 0点カウントアップ補正部
800 回転角検出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転角を検出する回転角検出装置であって、
径方向に2分割される本体を有する回転角センサを備えることを特徴とする、回転角検出装置。
【請求項2】
前記回転角センサが、回転体と共に回転するロータと、ステータと、励磁コイル及び検知コイルとを備え、ロータの回転に伴って周期的に変化する磁束抵抗を利用して回転体の回転角を検出する請求項1に記載の回転角検出装置であって、
検知コイルから入力される出力信号を処理して、回転体の回転角情報を出力する信号処理部を備え、
前記信号処理部が、分割されたロータの合わせ目に起因して発生する出力信号の特徴を利用して、回転体の回転角情報を生成することを特徴とする、回転角検出装置。
【請求項3】
ロータの径は、ロータの回転角を変数とし軸倍角により周期が定まる略正弦波関数に従って、変化するように決定され、
ロータは、分割されたロータの合わせ目の両側に起因した出力信号の2点の特徴が、該正弦波関数における異なる位相で出現するように、分割される、請求項1又は2に記載の回転角検出装置。
【請求項4】
ロータは、径が分割された合わせ目で急変するように、構成される、請求項1〜3の何れかに記載の回転角検出装置。
【請求項1】
回転体の回転角を検出する回転角検出装置であって、
径方向に2分割される本体を有する回転角センサを備えることを特徴とする、回転角検出装置。
【請求項2】
前記回転角センサが、回転体と共に回転するロータと、ステータと、励磁コイル及び検知コイルとを備え、ロータの回転に伴って周期的に変化する磁束抵抗を利用して回転体の回転角を検出する請求項1に記載の回転角検出装置であって、
検知コイルから入力される出力信号を処理して、回転体の回転角情報を出力する信号処理部を備え、
前記信号処理部が、分割されたロータの合わせ目に起因して発生する出力信号の特徴を利用して、回転体の回転角情報を生成することを特徴とする、回転角検出装置。
【請求項3】
ロータの径は、ロータの回転角を変数とし軸倍角により周期が定まる略正弦波関数に従って、変化するように決定され、
ロータは、分割されたロータの合わせ目の両側に起因した出力信号の2点の特徴が、該正弦波関数における異なる位相で出現するように、分割される、請求項1又は2に記載の回転角検出装置。
【請求項4】
ロータは、径が分割された合わせ目で急変するように、構成される、請求項1〜3の何れかに記載の回転角検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−45913(P2008−45913A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219759(P2006−219759)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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