説明

回転軸工具

本発明は、工作機械用の軸工具であって、軸(10)と、軸端部に配置されかつ少なくとも1つの切削要素(12)が備えられた工具ヘッドとを備え、他方の軸端部に配置された、機械スピンドルに直接または間接的に接続される連結要素(16)を備える、軸工具に関する。本発明の一意の特徴は、軸(10)が、軸の外周に沿って延在しかつ半径方向に開放した周辺溝(18)と、周辺溝に係合し、かつその中で半径方向に調整されることが可能であり、それにより溝フランク(24’、24”)に対し拡開力および屈曲力が加わる、少なくとも1つの拡開要素(20)とを備える、ということである。周辺溝(18)の少なくとも拡開要素(20)の領域に充填材(32)が充填され、充填材は、汚染物質に対する封止機能および緩衝機能の両方を有する。充填材(32)は、拡開要素に対する回転防止としても作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャンクを有し、一方のシャンク端部に配置されかつ少なくとも1つの切削要素が備えられている工具ヘッドを有し、他方のシャンク端部に配置された、機械スピンドルに直接または間接的に取り付けられる連結要素を有する、工作機械用のシャンクタイプ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの回転工具は、たとえば、内面の微細切削加工のために設計されている。機械スピンドルおよびその工具受けにおけるかつ工具自体における不正確さが、シャンクタイプ工具の場合、許容できない振れ誤差となる可能性があることが分かった。このタイプの誤差をなくすために、実際には、連結軸のかつ工具軸の半径方向変位をもたらす作動機構を有する平衡ホルダが利用されている。前記作動機構は、従来、シャンクタイプ工具とは別個の構成部品であり、比較的寸法が大きくかつ設計が複雑な構成部品である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これを出発点として、本発明が基礎とする目的は、比較的わずかな費用で、振れ誤差を除去するために半径方向の補償を可能にする、導入部分で明記したタイプのシャンクタイプ工具を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、請求項1で明記している特徴を開示する。本発明の有利な実施形態および洗練形態は、従属請求項から明らかとなる。
【0005】
本発明による解決法は、半径方向調整用の調整機構をシャンクタイプ工具自体に組み込むことができるという概念に基づく。これを可能にするために、本発明によれば、シャンクが、シャンクの外周にわたって延在する半径方向に開放した周方向溝を有し、かつ、周方向溝内に係合し、その中で、溝フランクに対して拡開力および屈曲力を加えるように半径方向に調整可能な少なくとも1つの拡開要素を有することが提案される。したがって、周方向溝は、連結側および工具ヘッド側を互いに対して屈曲させることができるが、同時に、シャンクタイプ工具の中心コア領域における堅固な接続が維持されることを可能にする機能を有している。
【0006】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの拡開要素は、溝フランク内に形成されかつ周方向溝によって遮られる雌ねじ山内に係合するねじ部分を有する。したがって、本発明の1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つの拡開要素のねじ部分と雌ねじ山とは、相補的な円錐状設計である。
【0007】
これに加えてまたはこれとは別に、少なくとも1つの拡開要素は、溝フランク上の周方向溝の内側に支持される円錐状先端を有することができ、その場合、溝フランク自体が、円錐状先端に対して相補的であるくさび面を形成することができる。溝フランクの拡開が低応力で発生することを確実にするために、全周溝は、外周方向に対して横切る方向に凹状に湾曲している溝基部を有する。
【0008】
周方向溝に沿って互いに間隔をあけて配置されている複数の別個に調整可能な拡開要素により、連結端部に対して工具ヘッドを任意の所望の方向において半径方向に調整することが可能になる。有利には、好都合には互いに等しい間隔で配置されている少なくとも4つの拡開要素が設けられる。基本的に、拡開要素の数を、必要な振れ精度に対して適合させることが可能であり、その場合、外周にわたって広がるように設けられる拡開要素が多くなるほど、調整費用が増大することを考慮しなければならない。
【0009】
互いに180°でない角度間隔で配置されている2つの拡開要素のみが設けられる場合、特に単純な作動が可能となる。拡開要素は、有利には、角度間隔が、一方の側では互いに対して90°であり、他方の側では互いに対して270°である。それにも関らず両方向における2次元調整を可能にするために、工具シャンクの周方向溝の領域において、拡開要素の拡開作用とは反対の屈曲方向に、弾性的に予荷重がかけられる。予荷重を、工具シャンクの溝領域における機械的かつ熱的材料処理によるか、または基部においてシャンク軸に対して偏心である周方向溝を形成することにより生成することができる。
【0010】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、周方向溝は、少なくとも拡開要素の領域において充填材で充填される。ここでは、充填材を、リングの形態でまたはリング切片の形態で周方向溝内に挿入することができる。これに対して別法として、充填材を、鋳造材の形態で周方向溝内に導入することができる。好都合には、延性の耐摩耗性かつ粘着性材料から構成される充填材が利用される。充填材は、好ましくは、弾性材料、好ましくはエラストマープラスチックから構成される。
【0011】
充填材は、まず、封止機能を有し、それにより汚染物質が全周溝内に染み込むことが防止される。充填材のさらなる機能は、ねじ部分にねじ込まれる調整ねじの回転を係止することにある。さらに、充填材は、特にエラストマー材料から構成される場合、振動緩衝効果を有する。
【0012】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、シャンクタイプ工具のシャンクは実質的に円筒状設計であり、シャンクが、周方向溝の領域において半径方向に厚い部分を有することが可能である。
【0013】
周方向溝の開放幅もまた、その調整機能に対しては重要ではない。基本的に、周方向溝を、充填材で充填することが不要となるほど狭いように設計することも可能である。狭い周方向溝を、たとえば、ワイヤエロージョンによって形成することができる。このように、0.3mm未満の溝幅でさえ生成することが可能である。
【0014】
本発明を、図面に概略的に示す例示的な実施形態に基づいて、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】リーマとして設計されかつ位置合せ機構が組み込まれたシャンクタイプ工具の概略図を示す。
【図2】緩められている、円錐形先端を備えた円筒状調整ねじとともに、図1によるシャンクタイプ工具を示す。
【図3】図1によるシャンクタイプ工具の長手方向断面を概略図で示す。
【図4a】調整ねじがねじ込まれている、図1によるシャンクタイプ工具の長手方向断面を示す。
【図4b】調整ねじが緩められている、図4aに対応する長手方向断面を示す。
【図4c】調整ねじがなくかつ開放した全周溝を有する、シャンクタイプ工具の長手方向断面を切断面で示す。
【図4d】溝に充填材が充填されている、図4cに対応する図を示す。
【図5】円錐状調整ねじとともに、図3に対応するシャンクタイプ工具の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面に示す回転シャンクタイプ工具は、工作機械で使用されるように設計されたリーマである。このシャンクタイプ工具は、シャンク10と、一方のシャンク端部に配置されかつ複数の切削要素12が備えられている工具ヘッド14と、他方のシャンク端部に配置され、機械スピンドル(図示せず)に直接または間接的に取り付けられる連結要素16とを有している。
【0017】
このシャンクタイプ工具の特異性は、シャンク10が、その中心領域に、半径方向に開放した周方向溝18を有しており、それが、シャンクの外周にわたって延在し、かつ凹状に湾曲した溝基部35を有し、その中に、外周方向に互いに間隔を有する複数の半径方向に調整可能な拡開要素20が挿入される、ということである。拡開要素20は、ねじ部分22を有しており、それは、いずれの場合も、溝フランク24’、24”内に形成されかつ周方向溝18によって遮られる雌ねじ山26内に係合する。工具シャンク10は実質的に円筒状設計である。前記工具シャンク10は、全周溝の領域に半径方向に厚い部分34を有している。
【0018】
図1〜図4に示す例示的な実施形態では、拡開要素のねじ部分22は円筒状設計であり、一方で、溝フランクの雌ねじ山26は、相補的な内筒を形成するように互いを相補する。さらに、拡開要素20は、円錐状先端28を有しており、それは、溝フランクの領域において、全周溝によって分割されている相補的な内部円錐面30を圧迫する。拡開要素20の半径方向調整中、拡開力が、この場合、内部円錐面30の領域において溝フランク24’、24”に対しそれぞれの円錐状先端28によって加えられ、その結果、工具ヘッド14が連結要素16に対して半径方向に調整される。外周にわたって広がって配置されている合計4つの拡開要素20が設けられるため、それらを作動させることにより、工具ヘッド14の連結要素16との軸方向に平行な位置合せを任意の所望の半径方向で行うことが可能であり、それにより、工具スピンドルまたはアダプタに締め付けられる工具のいかなる振れ誤差も排除され得る。
【0019】
図5に示す例示的な実施形態は、拡開要素20が円錐状ねじ部分23を有し、一方で、溝フランク24’、24”において周方向溝18によって分割されている雌ねじ山27が同様に円錐状設計であるという点で、図1〜図4による例示的な実施形態と異なる。円錐状ねじ部分23により、拡開要素20がねじ込まれると、溝フランク24’、24”に拡開力および屈曲力が加えられ、この拡開力および屈曲力により、連結要素16に対する工具ヘッド14の位置合せが可能になることが確実になる。
【0020】
本発明のさらなる特異性は、周方向溝18の少なくとも拡開要素の領域において、充填材32が充填されているということである。ここで、充填材32を、リングの形態でまたはリング切片の形態で周方向溝18内に挿入することができ、または鋳造材の形態で周方向溝18内に導入することができる。充填材32は、好都合には、延性がある耐摩耗性かつ粘着性材料、好ましくはエラストマープラスチックから構成される。充填材32は、第1に、外部からの汚染物質に対して封止機能を行う。前記充填材32はまた、拡開要素20の回転を係止する役割も果たし、それにより、拡開要素20は、それ自体でそれらの雌ねじ山から緩むことができない。さらに、充填材は、回転工具に対して振動減衰効果を有している。拡開要素20によって、長いシャンクタイプ工具の振れ精度の誤差を簡単な手段によって除去することができる。
【0021】
上述した例示的な実施形態のすべてにおいて、外周にわたって間隔をあけて広がるように配置されている4つの拡開要素20が設けられていた。基本的に、拡開要素20の数を必要な振れ精度に対して適合させることが可能であり、そこでは、外周にわたって広がるように設けられる拡開要素20が多くなるほど、調整費用が増大することを考慮しなければならない。
【0022】
また、基本的に、溝フランクの間に、拡開要素の拡開作用に対して反対方向において弾性予荷重がある場合、互いに90°の角度間隔の2つの拡開要素のみにより、2次元調整を行うことも可能である。予荷重を、工具シャンクの溝領域における機械的かつ熱的材料処理によるか、または偏心周方向溝の形成により生成することができる。これに関する改良を、調整プロセス中に復元作用に影響を与える充填材が周方向溝内に配置される場合に得ることができる。
【0023】
要約すると、以下を述べることができる。本発明は、シャンク10を有し、一方のシャンク端部に配置されかつ少なくとも1つの切削要素12が備えられている工具ヘッドを有し、他方のシャンク端部に配置された、機械スピンドルに直接または間接的に取り付けられる連結要素16を有する、工作機械用のシャンクタイプ工具に関する。本発明の特異性は、シャンク10が、シャンク外周にわたって延在する半径方向に開放した周方向溝18を有し、かつ周方向溝内に係合し、その中で、溝フランク24’、24”に対して拡開力および屈曲力を加えるように半径方向に調整可能である少なくとも1つの拡開要素20を有する、ということである。ここで、周方向溝18の少なくとも拡開要素20の領域に、充填材32が充填され、充填材32は、汚染物質に対して封止機能を行うとともに緩衝機能も行う。さらに、充填材32は、拡開要素20の回転を係止する役割を果たす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンク(10)を有し、一方のシャンク端部に配置されかつ少なくとも1つの切削要素(12)が備えられている工具ヘッド(14)を有し、他方のシャンク端部に配置され、機械スピンドルに直接または間接的に取り付けられる連結要素(16)を有する、工作機械用のシャンクタイプ工具において、
前記シャンク(10)が、前記シャンクの外周にわたって延在する半径方向に開放した周方向溝(18)を有し、かつ、前記周方向溝(18)内に係合し、そこで、溝フランク(24’、24”)に対して拡開力や屈曲力を加えるように半径方向に調整可能である少なくとも1つの拡開要素(20)を有することを特徴とするシャンクタイプ工具。
【請求項2】
前記少なくとも1つの拡開要素(20)が、前記溝フランク(24’、24”)内に形成されかつ前記周方向溝(18)によって遮られる雌ねじ山(26、27)内に係合するねじ部分(22、23)を有することを特徴とする、請求項1に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項3】
前記少なくとも1つの拡開要素(20)の前記ねじ部分(23)と前記雌ねじ山(27)とが相補的に円錐状設計であることを特徴とする、請求項2に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項4】
前記少なくとも1つの拡開要素(20)が、前記溝フランク(24’、24”)にて前記周方向溝(18)の内側に支持される円錐状先端(28)を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項5】
前記周方向溝(18)が、外周方向に対して横切る方向に凹状に湾曲している溝基部(35)を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項6】
別個に調整可能な複数の拡開要素(20)が、互いに間隔をあけて取り巻いている前記周方向溝(18)に沿って配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項7】
互いに間隔をあけて配置されている少なくとも4つの拡開要素(20)が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項8】
前記拡開要素(20)が、互いに等しい間隔で配置されていることを特徴とする、請求項6または7に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項9】
前記周方向溝(18)が、少なくとも前記拡開要素(20)の領域にて充填材(32)で充填されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項10】
前記充填材(32)が、リングまたはリング切片の形態で前記周方向溝(18)内に挿入されることを特徴とする、請求項9に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項11】
前記充填材(32)が、鋳造材の形態で前記周方向溝(18)内に導入されることを特徴とする、請求項9に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項12】
前記充填材(32)が、延性の耐摩耗性かつ粘着性の材料から構成されることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項13】
前記充填材(32)が、弾性材料、好ましくはエラストマープラスチックから構成されることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか一項に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項14】
前記シャンク(10)が円筒状設計であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項15】
前記シャンク(10)が、前記周方向溝の領域にて半径方向に厚い部分(34)を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項16】
互いに180°でない角度間隔で配置されている2つの拡開要素のみが設けられていることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項17】
前記拡開要素が、前記周方向溝の外周方向にて互いに90°または270°の間隔を有することを特徴とする、請求項16に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項18】
前記工具シャンクの前記周方向溝の領域にて、前記拡開要素の拡開作用とは反対の屈曲方向に、弾性的に予荷重がかけられることを特徴とする、請求項16または17に記載のシャンクタイプ工具。
【請求項19】
前記周方向溝の前記溝基部(35)が、前記シャンクの軸に対して偏心的に配置されることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載の工具シャンク。
【請求項20】
前記周方向溝が、2つの前記拡開要素の間の角度間隔の広い領域の方で、角度間隔の狭い側より深いことを特徴とする、請求項19に記載の工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−501860(P2012−501860A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525501(P2011−525501)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060782
【国際公開番号】WO2010/026055
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(504453074)コメート グループ ゲーエムベーハー (22)
【Fターム(参考)】