説明

回転電機および回転電機の製造方法

【課題】回転電機のコイルの占積率を向上させて小型化と高効率化を両立させる。
【解決手段】表面に絶縁皮膜が施され、放射方向に凹凸が形成されるように環状に成形したコイル18bの周囲に磁性材料を充填したものを固定子18とし、回転子12における固定子18の軸方向両端に対向する位置に放射状に複数の凸部20を設けられた。このため、固定子18におけるコイル18bと充填した磁性材料との間には、ほとんど隙間は形成されないため、磁性材料内のコイル装着部分に対するコイルの占積率を大幅に向上させることができる。このため、小型化と高効率化を両立させた回転電機とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータや発電機等の回転電機およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機が搭載されるものとして、自動車を例にとって説明すると、近年、自動車は、車両そのものの大きさを大きくせずに車室内を広くする傾向にある。そのため、各部品は、狭い空間内に搭載しなければならず小型化が要望されている。しかしながら、回転電機としては、効率を維持、または、向上させた上で小型化しなければならない。このような小型化と高効率化の両立の要望は、自動車に限らず、他の製品においても同様である。
【0003】
ここで従来、回転電機の小型化と高効率化を両立させるために、固定子に巻回されるコイルの高占積率化が考えられている。特許文献1によれば、回転電機としての交流発電機の固定子に断面が矩形状のコイルを巻回することによって各コイル間の隙間やコイルが巻回される固定子のスロットとコイル間の隙間を極力小さくしてスロット内でのコイルの占積率を向上させている。このため、同一の大きさの交流発電機であれば、断面が円形状のコイルを巻回したものに比べて発電効率を向上させることが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開平11−155270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の交流発電機においては、ある程度の高占積率化ができるものの、占積率の向上には限度がある。なぜならば、コイルの断面形状を完全に矩形状とすることは、成形する上で極めて困難だからである。例えコイルの断面形状を完全な矩形状とすることができたとしてもスロット内にコイルを挿入している以上、隙間が出来てしまうことはまぬがれない。このため、更なる高占積率化は望めないといった問題があった。
【0006】
本発明の目的は、コイルの占積率を今まで以上に向上させて小型化と高効率化を両立させた回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転電機は、内周側と外周側を連通する複数の連通部が形成されるように環状に成形されたコイルを内部に有し、該コイルの周囲に磁性材料を充填して環状の部材に構成された第1部材と、周方向に形成される環状隙間に第1部材が配置され、第1部材の軸方向両端に対向する夫々の面には、異なった磁極が生じ、かつ、夫々の磁極は周方向に複数形成されるよう構成された第2部材とを有していることを特徴としている。
【0008】
また、第1部材の内部に配置される第1コイルが放射方向に凹凸が形成されるように環状に成形し、第2部材における第1部材の軸方向両端に対向する夫々の面には、放射状に複数の凸部が設けられ、更に第1部材に第2コイルを設けたことを特徴としている。
【0009】
また、回転電機は発電機であって、内周側と外周側を連通する複数の連通部が形成されるように環状に成形されたコイルを内部に有し、該コイルの周囲に磁性材料を充填して環状の部材に構成された固定子と、該固定子を軸方向に通過する複数の磁路が形成される回転子とを有していることを特徴としている。
【0010】
また、回転電機は発電機であって、回転子における固定子の軸方向両端に対向する夫々の面には、径方向に延びる複数の永久磁石と磁性材料が周方向に交互に設けられていることを特徴としている。
【0011】
また、第1部材は、複数相のコイルを有し、各相毎にコイルの周囲を磁性材料で充填して複数の第1部材構成体を成形し、各第1部材構成体を電気角で所定角度ずらした状態で重ね合わせて一体化されて製造されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明における第1部材、あるいは、固定子は、コイルの周囲に磁性材料を充填して構成されているため、極めて高い占積率を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施例]
本発明の回転電機における1つの実施形態である自動車に搭載される車両用交流発電機の第1実施例を図1に基づいて説明する。図1は、車両用交流発電機の軸方向側面の断面図である。
【0014】
本実施例の車両用交流発電機1は、図1中左側に配置されるフロントブラケット2と図1中左側に配置されるリアブラケット3とを有しており、夫々のブラケットは、内部に収容空間を有する有底筒状、つまり、椀形状を呈している。これらのブラケットには、空気が流通するための様々な形状の穴が多数開口している。また、フロントブラケット2及びリアブラケット3には、夫々、ボルト穴2a,3aが開口する固定部2b,3bが径方向外周側に突出して一体に設けられており、これらの固定部2a,3aが図示しないボルトによって車両に取り付けられる。
【0015】
リアブラケット3の軸方向端には、ブラケットよりも薄肉のリアカバー4が取り付けられており、このリアカバー4は、ブラケット同様、内部に収容空間を有する有底筒状、つまり、椀形状を呈している。このリアカバー4の軸方向外側端には、バッテリーに接続されるターミナル5が取り付けられている。
【0016】
フロントブラケット2及びリアブラケット3の軸方向外端部における径方向略中心位置には、夫々、軸受としてのボールベアリング6F,6Rが取り付けられているが、フロントブラケット2に取り付けられるボールベアリング6Fは、リアブラケット3に取り付けられるボールベアリング6Rよりも外径の大きなものが用いられている。
【0017】
これらのボールベアリング6F,6Rの内輪には、シャフト7が挿通され、このシャフト7はフロントブラケット2及びリアブラケット3に対して回転自在に支持されている。
【0018】
また、シャフト7のフロントブラケット2側端には、回転伝達部材としてのプーリ8がボルト9によって一体回転するように固定されており、このプーリ8には、図外のエンジンの回転が伝達されるクランクプーリから無端伝達帯としてのベルトによって回転が伝達される。このためシャフト7は、エンジンの回転数とプーリ8とクランクプーリのプーリ比に比例して回転する。
【0019】
更にシャフト7のリアブラケット3側の端部には、シャフト7と一体に回転するよう2つのスリップリング10が取り付けられており、夫々のスリップリング10に押付けられた状態で摺動する2つのブラシ11を介して電力が供給されるようになっている。
【0020】
シャフト7の回転軸方向の略中央部には、磁性材料にて成形されたフロント側ロータ部材12F,リヤ側ロータ部材12Rがシャフト7と一体に回転するよう別々にセレーション結合されており、また、フロント側ロータ部材12F,リヤ側ロータ部材12Rは、軸方向に向かい合って当接した状態で軸方向の移動が規制されるべく、夫々のロータ部材の外側端をシャフト7に形成した環状溝13内に塑性流動させている。このようにシャフト7に固定されたフロント側ロータ部材12F,リヤ側ロータ部材12Rによって第2部材及び回転子としてのロータ12が構成される。
【0021】
このロータ12の回転軸方向両端には、夫々、フロントファン14Fとリアファン14Rが設けられており、ロータ12と一緒に回転することによってフロントブラケット2及びリアブラケット3の外側にある空気を軸方向両端側に開口した穴から流入させ、径方向外側に開口する穴から流出させる。このため、ロータ12等のブラケット内蔵物は冷却されることとなる。
【0022】
フロント側ロータ部材12F,リヤ側ロータ部材12Rは、小径の軸部12aと、大径の磁極部12bとからなり、両ロータ部材の軸部12aの軸方向端部同士が向かい合って当接することにより、ロータ12の回転軸方向略中間位置には環状隙間15が形成される。この環状隙間15の底部には、第2コイルとしての界磁コイル16が回転軸周りに巻装され、この界磁コイル16の両端は、シャフト7に沿って延出され、前述のスリップリング10に夫々接続されている。このため、ブラシ11からスリップリング10を介して供給される直流電流は、界磁コイル16を流れ、それに伴いロータ12が磁化され、界磁コイル16周りを周回するようロータ12に磁路が形成される。尚、界磁コイル16に供給される電流は、車両のバッテリーの状態に応じて制御されるが、発電電圧を調整するためのICレギュレータ(図示せず)はリアカバー4の内部に配置され、ターミナル5の端子電圧が常に一定電圧となるように制御している。
【0023】
また、フロントブラケット2とリアブラケット3の軸方向に向かい合う箇所には、環状の段差17が形成されており、この段差17には、環状に形成された第1部材としての固定子18が狭持固定されている。この固定子18の内周側は、ロータ12に形成された環状隙間15内に非接触状態で挿入されている。ロータ12の磁極部12bの回転軸方向側面と、固定子18の軸方向両端面との間の長さは、小さいほどよいため、可能な限り小さな隙間となっている。
【0024】
また、固定子18は、磁性材料からなる固定子コア18aと、その内部に内蔵された複数の第1コイルとしての固定子コイル18bとによって構成されており、固定子コイル
18bは、リアカバー4内に取り付けられた整流回路19に接続されており、この整流回路19は、ターミナル5を介してバッテリーと接続している。尚、請求項1,請求項3,請求項6に記載のコイルは、本実施例における固定子コイル18bに相当する。
【0025】
尚、図示していないが整流回路19は、複数のダイオードで構成されており、これらのダイオードに関しては、独立した3相2Yコイルを構成しているため12個のダイオードで全波整流する構成となっている。
【0026】
次に図2及び図3に基づいて、回転子としてのロータ及び固定子の詳細について説明する。尚、図2は、回転子としてのロータと固定子の磁気回路部分において全周の1/3を部分的に断面としたものの斜視図であり、図3は、固定子コイルを斜視図にしたものである。
【0027】
図2に示すようフロント側ロータ部材12F,リヤ側ロータ部材12Rの磁極部12bは、板状を呈し、固定子18の軸方向両端に対向している。また、夫々の磁極部12bには、放射状に複数(本実施例では6つ)の凸部20が形成されている。このようにフロント側ロータ部材12F,リヤ側ロータ部材12Rは、共に略同一形状に磁極部12bが成形され、夫々のロータ部材の凸部20は、回転方向に略同一の位置となった状態で固定される。このように形成されたロータ12は、一方のロータ部材がN極磁極となり、他方のロータ部材がS極磁極となる。このため、フロント側ロータ部材12Fの凸部20とリヤ側ロータ部材12Rの凸部20の軸方向に対向する対の数(本実施例では6つ)だけ磁路が形成される。尚、本実施例においては、フロント側ロータ部材12Fの磁極部12bをN極磁極とし、リヤ側ロータ部材12Rの磁極部12bをS極磁極としている。
【0028】
次に固定子18について説明する。固定子18は、前述したとおり、固定子コア18aと、固定子コイル18bとによって構成されている。まず、固定子コイル18bの1相分について説明すると、固定子コイル18bは、線材をロータ12の磁極部12bの外縁にほぼ沿った波巻き形状に成形し、その後、軸方向から潰すことで断面を略四角形、詳細には軸方向に薄くなる断面略長方形としている。また、固定子コイル18bは、放射方向に凹凸が形成されるように環状に成形されており、このように成形することにより、凸の先端である外周部21と凹の底部である内周部22を径方向に連通する連通部23が形成される。尚、固定子コイル18bの外周表面には絶縁皮膜が施されている。このように成形された固定子コイル18bは、電気角で30度ずつずらした状態で6相分、つまり、6段を軸方向に整列して配置している。尚、各相で所定の角度ずらすことが可能なように固定部分に切り欠きや合わせマーク等を施すと組み付けが容易となる。これらの固定子コイル18bは、外周側の周方向一部分から取り出され、整流回路19に接続される。
【0029】
固定子コイル18b以外の全ての部分には、磁粉の表面を絶縁被覆して固めた圧粉磁心が充填されており、この部分が固定子コア18aとなる。つまり、固定子コア18aは、固定子コイル18bの周囲を完全に埋めており、外形は、円環状に成形される。尚、各図では、固定子コア18aを一体形状で示しているが、1相毎に固定子コイル18bと固定子コア18aからなる構成体を作成し、この構成体を組み立てるときに電気角で所定の角度ずらし、重ねたものの夫々が溶接等で一体化されて製造される。本実施例の場合には6相コイルであるため、構成体は6段積み重なって構成されている。
【0030】
次に本実施例の作動について説明する。
【0031】
まず、エンジンの始動に伴ってクランクシャフトからベルトを介してプーリ8に回転が伝達されため、シャフト7を介して回転子としてのロータ12を回転させる。ここでロータ12に設けられた界磁コイル16にスリップリング10を介してブラシ11から直流電流を供給すると界磁コイル16の内外周を周回する磁束が生じるため、ロータ12における磁極部12bのそれぞれの凸部20にN極、又は、S極を形成する。この界磁コイル
16による磁束は、フロント側ロータ部材12FのN極の凸部20から固定子18を軸方向に通過して、リヤ側ロータ部材12RのS極の凸部20に到達し、更に軸部12aを通って周回するよう磁気回路が形成される。この磁気回路の磁束が固定子コイル18bにおける連通部23を鎖交することにより、固定子コイル18bのそれぞれに6相の交流誘起電圧が発生する。
【0032】
このように発電された交流電圧は、整流回路19によって、全波整流されて直流電圧に変換される。整流された直流電圧は約14.3V 程度の一定電圧になるようにICレギュレータ(図示せず)で界磁コイル電流を制御することで達成している。
【0033】
次に本実施例の作用効果について説明する。
【0034】
本実施例では、第1部材としての固定子を内周側と外周側を連通する複数の連通部が形成されるように環状に成形されたコイルを内部に有し、このコイルの周囲に磁性材料を充填して環状の部材に構成したのでコイルと磁性材料との間には、ほとんど隙間は形成されない。このため、磁性材料内のコイル装着部分に対するコイルの占積率を大幅に向上させることができる。
【0035】
尚、この固定子は、コイルの周囲を磁性材料で埋めているが、第2部材としての回転子を固定子の軸方向両端に対向する夫々の面に異なった磁極が生じ、かつ、夫々の磁極は周方向に複数形成されるよう構成したので固定子を軸方向に通過する複数の磁路が形成されるだけであり、固定子内で周回してしまう磁束は、ほとんどない。このため、コイルの周囲を磁性材料で埋めた固定子を使用することが可能となるのである。
【0036】
また、第1部材としての固定子内のコイルを放射方向に凹凸が形成されるように環状に成形し、第2部材としての回転子には、固定子の軸方向両端に対向する夫々の面に放射状に複数の凸部を設けたので簡単な構成で、かつ、確実に複数の磁束が固定子を軸方向に通過できるようにすることができる。
【0037】
また、本実施例では、第1部材としての固定子は、各相毎にコイルの周囲に磁性材料を充填して複数の第1部材構成体を成形し、各第1部材構成体を電気角で所定角度ずらした状態で重ね合わせて一体化されるので、複数相としても磁性材料が入り難い箇所に確実に磁性材料を充填させることができる。
【0038】
また、本実施例では、回転電機として発電機に用いているので、回転子の構造を従来の爪形磁極から凸型磁極形状とすることができる。このため、本発明は、爪形磁極特有の遠心力による爪の起きあがりを考慮して固定子との間を空ける必要が無くなる。また、ステータにスロットがないためスロットリプルによる渦電流損失が低減でき効率向上の効果が有る。
【0039】
また、本実施例では、固定子コイルの成形後に絶縁処理して固定子の中に配置するため、固定子には特に絶縁処理の必要が無く組立性に優れた構造となる。
【0040】
また、本実施例では、固定子コアを圧粉磁心としたので渦電流損は、ほとんど発生せず効率向上が期待できる。また、リサイクル性向上の効果も期待できる。
【0041】
また、本実施例では、固定子コイルを軸方向に薄くなった形状としたので固定子コイル断面積を確保した上で固定子の軸方向幅を小さくすることができ、更なる装置の小型化が図れる。
【0042】
また、本実施例では、固定子コイルを複数相としたので交流電圧を整流回路にて直流電圧に変換した際、電圧の変化を極力小さくすることができる。
【0043】
尚、本実施例では、固定子コアを圧粉磁心としたが磁性材料であればよく、例えば、磁性材料を溶かして固定子コイルが配置された成形型内に流し込んでもよい。また、この場合には各相毎に構成体を成形する必要はなく複数相分を一体に成形することも可能である。
【0044】
また、本実施例では、固定子コアを円環状としたが環状であればどのような形状でもよく、例えば、多角形状であってもよい。
【0045】
また、本実施例では、固定子コイルを断面四角形状としたが通常の断面丸形状のコイルであってもよい。
【0046】
また、本実施例では、固定子コイルを波巻き形状としたが、内周側と外周側を連通する複数の連通部が形成されていればよく、例えば、外周側に凸形状となる部分を内外周にて周回させながら成形することもできる。
【0047】
また、本実施例では、固定子コイルを6相としたが単相とすることも可能である。
【0048】
また、本実施例では、固定子コアの磁性材料内に固定子コイルが完全に埋められるよう構成したが、外側に面する部分は磁性材料が包囲されていなくてもかまわない。つまり、請求項に記載のコイルの周囲とは、コイルの全周のことではなく、磁性材料が面する周囲のことである。
【0049】
また、本実施例では、磁極部を凹凸形状としたが、凹部を非磁性体で埋めることも可能である。
【0050】
また、本実施例では、回転電機の一例として車両用交流発電機で説明したが、インバータを追加することでモータとしての動作させることも可能である。
【0051】
また、本実施例では、回転子内に界磁コイルを設けて磁束を生じさせたが回転子における凸部の代わりに永久磁石を設けて磁束を生じさせてもよい。
【0052】
[第2実施例]
次に本発明の第2実施例を図4に基づいて説明する。図4は、図2と同様に回転子と固定子の磁気回路部分において全周の1/3を部分的に断面としたものの斜視図である。尚、第1実施例と共通する部位については、同一称呼,同一の符号で表す。
【0053】
第1実施例と第2実施例の相違点は、回転子としてのロータ12の磁極部12bに設けられた凸部20の数が多い点、及び、凸部20間に永久磁石24を配置した点である。
【0054】
図4に示すように第2実施例には、フロント側ロータ部材12FのN極の凸部20間及びリヤ側ロータ部材12RにおけるS極の凸部20間に永久磁石24が配置された状態となっているが、ロータ12と永久磁石24は、2つの異なる材料を一体として成形する二色成形を用いて一体化している。尚、フロント側ロータ部材12Fの凸部20間に配置された永久磁石24の着磁方向は、固定子18との対向面側がフロント側ロータ部材12Fの凸部20の極と異なるS極で、回転軸方向外端面側がフロント側ロータ部材12Fの凸部20の極と同様のN極である。また、リヤ側ロータ部材12Rの凸部20間に配置された永久磁石24の着磁方向は、固定子18との対向面側がリヤ側ロータ部材12Rの凸部20の極と異なるN極で、回転軸方向外端面側がリヤ側ロータ部材12Rの凸部20の極と同様のS極となる。
【0055】
このように本実施例では、回転子における固定子の軸方向両端に対向する夫々の面に、径方向に延びる複数の永久磁石と磁性材料を周方向に交互に設けたことにより、軸方向に対向する永久磁石間にも磁束が生じて発電作用を行う。このため、第1実施例に対して発電効率が向上する。
【0056】
尚、本実施例では、永久磁石をロータと一体成形したが、別々に製造したものを接着剤等で固定しても構わない。
【0057】
また、本実施例では、永久磁石を図面上略扇形の形状となっているが径方向に延びていればどのような形状であっても構わない。
【0058】
[第3実施例]
次に本発明の第3実施例を図5,図6,図7に基づいて説明する。図5は、図2及び図3と同様に回転子としてのロータと固定子の磁気回路部分において全周の1/3を部分的に断面としたものの斜視図である。また、図6は、図5のフロント側ロータ部材側の補助磁極板を除いた斜視図であり、図7は、更に、フロント側ロータ部材,永久磁石,固定子コアを省略した斜視図にしたものである。尚、他の実施例と共通する部位については、同一称呼,同一の符号で表す。
【0059】
図5に示すように第3実施例と第2実施例は、磁極部12bの軸方向外端側に磁性材料からなる補助磁極部材としての補助磁極板25を設けた点、及び、固定子コイル18bを3相とした点が第2実施例と異なる。
【0060】
図6に示すようにフロント側ロータ部材12F及びリヤ側ロータ部材12Rの磁極部
12bの軸方向外端側には、段差22が設けられている。詳細には、磁極部12bにおける凸部20の外周側に段差26が設けられることとなるが凸部20の内周側の根元部分から段差26が形成されるわけではなく、根元部分から若干、外周に間をあけて段差26が形成されている。このように各凸部20に段差26が設けられることにより、全体としては、略円環状の補助磁極板25となる。
【0061】
また、永久磁石24は、凸部20の外周側と略同一の軸方向厚さとなっているため、永久磁石24には、段差は設けられておらず、凸部20の内周側の根元部分まで延びている。このため、夫々の凸部20における外周側の薄肉部間は、完全に永久磁石24にて埋められることになる。
【0062】
補助磁極板25には、図5に示すよう補助磁極板25の薄肉部の形状に合わせた、つまり、略円環状の補助磁極板25が圧入によって固定されている。また、この補助磁極板
25は、磁性材料によって成形されており、内周側には、凸部20の内周側に残された厚肉部が挿入できるよう凹形状の部位が凸部20と同一数形成されている。
【0063】
また、本実施例における固定子コイル18bは、第2実施例の6相とは異なり、3相としている。このため、図7に示すよう夫々の相は、第2実施例の固定子18も薄くなる。
【0064】
ここで永久磁石の磁束は、一方の永久磁石から固定子を軸方向に通過し、他方の永久磁石の軸方向外端側から回転子の内周側を通って戻るよう周回するが、本実施例では永久磁石の軸方向外側位置に磁性材料としての補助磁極板を設けたことにより、他方の永久磁石における軸方向外側位置から回転子の内周側に磁束を通しやすくすることができる。このため、第2実施例に対して、より効率を向上させることができる。
【0065】
また、本実施例では、補助磁極板を円環状の一体構造としたことにより部品点数の増加を最小限にとどめることができ、また、取り付けも容易である。
【0066】
また、本実施例では、補助磁極板の内周に凹凸を形成すると共に、ロータに設けられた段差にも凹凸を形成し、夫々が合致するように固定した為、補助磁極板が慣性力等によってロータに対して回転してしまうことを防止することができる。更に、永久磁石をロータと別々に構成し、その後に両者を組み付ける場合には、ロータに形成された凹形状部に沿って軸方向から永久磁石を挿入することができる。このため、組み付けが容易となる。
【0067】
また、本実施例では、固定子コイルを3相としているため、固定子を薄くすることができ、コンパクトな装置とすることができる。
【0068】
尚、本実施例においては、補助磁極板をロータと別の部材で構成したが、ロータと一体化することも可能である。この場合、部品点数を削減することができる。
【0069】
[第4実施例]
次に本発明の第4実施例を図8に基づいて説明する。図8は、固定子と回転子としてのロータの一部分を切り取った状態の斜視図である。尚、他の実施例と共通する部位については、同一称呼,同一の符号で表す。
【0070】
図8に示すように第4実施例と第3実施例は、補助磁極板25を第3実施例のように円環状とするのではなく、永久磁石25の背面だけに配置した点が異なる。
【0071】
本実施例の補助磁極板25は、永久磁石25の軸方向端面形状と同様に略扇形に形成され、永久磁石25における軸方向外側端面に密着した状態で内周側をロータ12に溶接や接着剤による接着によって固定されている。
【0072】
本実施例の補助磁極板は、周方向に分散させて配置しているので第3実施例に対して回転子の質量を低減できる。
【0073】
尚、本実施例における補助磁極板は、略扇形としたが形状は、どのようなものでもよく、永久磁石の軸方向端面の面積より大きくする必用もない。しかしながら、補助磁極板を永久磁石の軸方向端面の面積より大きくした方がより磁束を通過させやすくすることができる。
【0074】
次に、上記の各実施形態から把握し得る請求項に記載以外の発明について、以下にその作用効果と共に記載する。
【0075】
(1)請求項1に記載の回転電機において、前記第1部材の磁性材料は、磁粉の表面を絶縁被覆して固めた圧粉磁心であることを特徴とする回転電機。このような構成によれば、渦電流損は、ほとんど発生せず効率向上が期待できる。また、リサイクル性向上の効果も期待できる。
【0076】
(2)請求項1に記載の回転電機において、前記コイルの断面が軸方向に薄くなっていることを特徴とする回転電機。このような構成によれば、コイルの断面積を確保した上で第1部材の軸方向幅を小さくすることができる。
【0077】
(3)請求項2に記載の回転電機において、前記コイルは、前記第2部材における前記第1部材の軸方向両端に対向する夫々の面の外縁にほぼ沿った形状に成形されていることを特徴とする回転電機。このような構成によれば、効率よくコイルが磁束を横切るため、回転電機の効率を向上させることができる。
【0078】
(4)請求項4に記載の回転電機において、前記回転子における前記永久磁石と前記磁性材料とを一体成形したことを特徴とする回転電機。このような構成によれば、遠心力によって永久磁石が回転子から脱落するのを防止することができる。
【0079】
(5)請求項5に記載の回転電機において、前記永久磁石の軸方向外側位置には環状に形成された磁性材料にて構成された補助磁極板が前記回転子に取り付けられていることを特徴とする回転電機。このような構成によれば、夫々の永久磁石毎に補助磁極板を設けなくてもよいため、部品点数が少なく、かつ、組み付けを容易とすることができる。
【0080】
(6)(5)に記載の回転電機において、前記補助磁極板と前記回転子との固定部には、回り止め部が設けられていることを特徴とする回転電機。このような構成によれば、慣性力が作用しても補助磁極板と回転子との相対回転を防止することができる。
【0081】
(7)(6)に記載の回転電機において、前記永久磁石は、前記回転子に装着されて一体化されると共に、前記回り止め部は、前記補助磁極板と前記回転子の双方に設けられ、夫々が嵌合可能な凹凸部とで構成され、前記回転子には前記永久磁石の装着部位に沿って前記凹凸部の凹部が位置することを特徴とする回転電機。このような構成によれば、永久磁石を回転子に対して軸方向から容易に挿入することができる。
【0082】
(8)(5)に記載の回転電機において、前記補助磁極板は、前記永久磁石の対向部毎に複数設けられていることを特徴とする回転電機。このような構成とすることにより、回転子の軽量化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施例としての車両用交流発電機の軸方向側面の断面図を示す。
【図2】本発明の第1実施例における回転子と固定子の磁気回路部分において全周の1/3を部分的に断面としたものの斜視図を示す。
【図3】本発明の第1実施例における固定子コイルの斜視図を示す。
【図4】本発明の第2実施例における回転子と固定子の磁気回路部分において全周の1/3を部分的に断面としたものの斜視図を示す。
【図5】本発明の第3実施例における回転子と固定子の磁気回路部分において全周の1/3を部分的に断面としたものの斜視図を示す。
【図6】本発明の第3実施例における一方側の補助磁極板を除いた斜視図を示す。
【図7】本発明の第3実施例における一方側のロータ部材,永久磁石,固定子コアを省略した斜視図を示す。
【図8】本発明の第4実施例における固定子と回転子の一部分を切り取った状態の斜視図を示す。
【符号の説明】
【0084】
12…ロータ(回転子,第2部材)、12b…磁極部、15…環状隙間、16…界磁コイル(第2コイル)、18…固定子(第1部材)、18a…固定子コア、18b…固定子コイル(コイル,第1コイル)、20…凸部、23…連通部、24…永久磁石、25…補助磁極板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの部材が相対回転を行う回転電機であって、
表面に絶縁皮膜が施され、内周側と外周側を連通する複数の連通部が形成されるように環状に成形されたコイルを内部に有し、該コイルの周囲に磁性材料を充填して環状の部材に構成された第1部材と、
周方向に環状隙間が形成されると共に、該環状隙間に前記第1部材が所定の間隔を隔てて配置され、前記第1部材の軸方向両端に対向する夫々の面には、異なった磁極が生じ、かつ、夫々の磁極は周方向に複数形成されるよう構成された第2部材とを有し、
前記第1部材と前記第2部材は相対回転を行うことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
互いの部材が相対回転を行う回転電機であって、
表面に絶縁皮膜が施され、放射方向に凹凸が形成されるように環状に成形した第1コイルを内部に有し、該第1コイルの周囲を磁性材料で埋めて環状の部材に構成された第1部材と、
周方向に環状隙間が形成されると共に、該環状隙間に前記第1部材が所定の間隔を隔てて配置され、前記第1部材の軸方向両端に対向する夫々の面には、放射状に複数の凸部が設けられた第2部材と、
前記第1部材に対して所定の間隔を隔てて前記第2部材の前記環状隙間の底部に設けられた第2コイルとを有し、
前記第1部材と前記第2部材は相対回転を行うことを特徴とする回転電機。
【請求項3】
互いの部材が相対回転を行うことによって発電を行う回転電機であって、
表面に絶縁皮膜が施され、内周側と外周側を連通する複数の連通部が形成されるように環状に成形されたコイルを内部に有し、該コイルの周囲に磁性材料を充填して環状の部材に構成された固定子と、
該固定子を軸方向に通過する複数の磁路が形成される回転子とを有し、
前記回転子が前記固定子に対して回転することにより前記コイルに電圧が生じることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
互いの部材が相対回転を行うことによって発電を行う回転電機であって、
表面に絶縁皮膜が施され、内周側と外周側を連通する複数の連通部が形成されるように環状に成形された第1コイルを内部に有し、該第1コイルの周囲に磁性材料を充填して環状の部材に構成された固定子と、
周方向に環状隙間が形成されると共に、該環状隙間に前記固定子が所定の間隔を隔てて配置され、前記固定子の軸方向両端に対向する夫々の面には、径方向に延びる複数の永久磁石と磁性材料が周方向に交互に設けられた回転子と、
前記固定子に対して所定の間隔を隔てて前記回転子の前記環状隙間の底部に設けられた第2コイルとを有し、
前記回転子が前記固定子に対して回転することにより前記第1コイルに電圧が生じることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項4に記載の回転電機において、
前記永久磁石の軸方向外側位置に磁性材料を設けたことを特徴とする回転電機。
【請求項6】
表面に絶縁皮膜が施された径方向に延びる部位を有する複数相のコイルの周囲に磁性材料を充填した環状の第1部材と、該第1部材を軸方向に通過する複数の磁路を形成する第2部材とを有する回転電機の製造方法であって、
前記第1部材は、各相毎にコイルの周囲に磁性材料を充填して複数の第1部材構成体を成形し、各第1部材構成体を電気角で所定角度ずらした状態で重ね合わせて一体化されることを特徴とする回転電機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−221953(P2007−221953A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41802(P2006−41802)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】