説明

回転電機の固定子

【課題】固定子コイルの端末から引出して電源ケーブルに結線する渡り線を、縛り紐で括って絶縁カバーに支持する際に、縛り紐に緩みが生じても絶縁カバーから外れないようにした縛り紐の括縛構造を提供する。
【解決手段】ヨークの内周にティースを形成した固定子コア1と、該固定子コアに被せてヨーク内周面,およびティース周面を覆う絶縁カバー2と、絶縁カバー2を介して前記ティースに巻回されたコイル3からなり、各相に対応するコイル3の端末から引き出した渡り線4を周方向に引き回して電源ケーブル5に結線した上で、渡り線4、および電源ケーブル5に縛り紐7を絡げて絶縁カバー2に括縛保持した回転電機の固定子において、前記コイルの渡り線4,電源ケーブル5に対応して前記絶縁カバー2の周壁部2aに縛り紐7を絡げる紐通し穴2dを開口し、該紐通し穴2dに縛り紐7を通して括縛する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPM電動機,誘導電動機などを対象とする回転電機の固定子に関し、詳しくは固定子コアのティースに絶縁カバーを被せて巻回したコイルの端末から引出した渡り線,該渡り線に結線した電源ケーブルの結線部を縛り紐で括って絶縁カバーに括縛する支持構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
頭記回転電機の固定子として、環状ヨークの内周に沿って複数のティースを延設した固定子コアに、そのヨーク内周面,およびティースの周面を覆う通称“インシュレータ”と称される絶縁カバーを被せ、この絶縁カバーを介して前記各ティースの周面にコイルを集中巻き式に巻回した上で、各相に対応するコイルの端末から引き出した渡り線を周方向に引き回して電源ケーブルに結線し、前記渡り線,電源ケーブルの結線部に縛り紐を絡げて絶縁カバーに括縛するようにした配線支持構造が従来から採用されている。
【0003】
また、前記の縛り紐を絶縁カバーに固定する手段として、固定子コアのティースに被せた絶縁カバーのボビン部に係合突起,ないし切欠溝の掛け止めフックを形成しておき、このフックに縛り紐を引っ掛けてコイルと電源ケーブルとの間の渡り線,結線部を括縛するようにした構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−219959号公報
【特許文献2】特開2010−213527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1,2に開示されている縛り紐の括縛方式は、その支持機能に十分な信頼性が確保できない課題がある。
すなわち、コイルの端末から引き出した渡り線を括る縛り紐を、固定子コアのティースに被せた絶縁カバー(ボビン部材)に形成した先記の係合突起,ないし切欠溝部に掛け渡して括縛した構造では、その組立工程で縛り紐の張り具合に緩みがあってずれ動いたりすると、縛り紐が前記絶縁カバーの係合フックから抜けて外れてコイル渡り線,電源ケーブルの支持機能が喪失し、その結果として垂れ下がった渡り線が回転中の回転子に触れて断線するなどの事故を引き起こすおそれがある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解消して信頼性の高い括縛機能を確保できるように改良した固定子コイルの渡り線支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、環状ヨークの内周に沿って複数のティースを形成した固定子コアと、該固定子コアに被せてヨークの内周面,およびティースの周面を覆う絶縁カバーと、該絶縁カバーを介して前記ティースに巻回されたコイルとからなり、各相に対応するコイルの端末から引き出した渡り線を周方向に引き回して電源ケーブルに結線した上で、その渡り線、および電源ケーブルの結線部に縛り紐を絡げて前記絶縁カバーに括縛保持した回転電機の固定子において、
前記コイルの渡り線,電源ケーブルに対応して前記絶縁カバーに縛り紐を絡げる紐通し穴を開口し、該紐通し穴に縛り紐を通して前記渡り線,電源ケーブルの結線部を括縛するものとし(請求項1)、具体的には、前記絶縁カバーが固定子コアのヨーク内周面を覆う環状の周壁部,および該周壁部からその内周側に突き出して固定子コアのティース周面を覆うボビン部を有する樹脂成型品になり、その周壁部に縛り紐を絡げる紐通し穴を開口する(請求項2)。
【発明の効果】
【0008】
上記のように、固定子コアのティースに巻回して周方向に引き回し配線したコイルの渡り線,該渡り線に結線した電源ケーブルを縛り紐で括った上で、この縛り紐を絶縁カバーの壁面に開口した紐通し穴に通して縛り付けることにより、縛り紐に緩みが生じたとしても、従来構造のように縛り紐が絶縁カバーに形成した係合フックから抜けてその括縛機能が喪失するおそれが無く、これにより安定した括縛機能と高い信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例による固定子の組立構造図であって、(a)は端面図、(b)は(a)の側面図である。
【図2】図1矢視X−Xに沿った拡大断面図である。
【図3】図1における固定子コアの構成図であって、(a)正面図、(b)は側面図である。
【図4】図1における接続側絶縁カバーの構成図であって、(a)は正面図、(b)は外形斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に示す実施例に基づいて説明する。
各図において、1は環状ヨーク1aの内周に沿って複数のティース(磁極部)1bを形成した電磁鋼板の打ち抜き積層体からなる固定子コア(図3(a),(b)参照)、2は前記ヨーク1aの内周面,および各ティース1bの周面を覆って固定子コア1の両端に嵌着した二分割構造の絶縁カバー、3は絶縁カバー2を介して固定子コア1の各ティース1bに集中巻式に巻回したコイル、4は各相に対応するコイル3の端末から引き出してコア1の周方向に引き回した渡り線、5は渡り線5に結線した電源ケーブル、6は電源ケーブル5の結線部に被覆した絶縁チューブ、7は前記渡り線4の途中箇所,および電源ケーブル5の結線部に絡げて後記のように絶縁カバー2に括縛した縛り紐である。
【0011】
ここで、ケーブル接続側の絶縁カバー2は、図4(a),(b)で示すように固定子コア1のヨーク1aの内周面を覆う環状の周壁部2aと、該周壁部2aから内周側に突出して前記ティース1bの周面を覆うボビン部2bを有する樹脂成型品であり、先記した縛り紐7の括縛部位に対応して前記周壁部2aには周縁バー2cを残して壁面に縛り紐7を通す角窓状の紐通し穴2dが形成されている。
【0012】
そして、固定子の組立工程では、固定子コア1に絶縁カバー2を嵌着した状態で、コアのティース1bに巻回したコイル3の端末から引出した各相に対応する渡り線4を周方向に引き回して電源ケーブル5に結線し、電源ケーブル5には絶縁チューブ6を被せる。この組立状態で、渡り線4の途中箇所,および電源ケーブル5の結線部に縛り紐7を括りつけ、さらに、この縛り紐7を図2で示すように絶縁カバー2の周壁部2aに開口した紐通し穴2dに通して括縛する。
【0013】
これにより、固定子の組立状態で縛り紐7に緩みが生じても、従来構造のように縛り紐が絶縁カバーに形成した係合フックから抜けてその括縛機能が喪失するおそれが無く、安定した括縛機能と信頼性を確保できる。
【0014】
なお、図示実施例はコイル3の端末から引き出して電源ケーブル5に接続する渡り線4,および電源ケーブル5を括縛する縛り紐7について述べたが、各相のコイル端末の相互間を結線する中性点側の渡り線についても同様に実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0015】
1 固定子コア
1b ティース
2 絶縁カバー
2a 周壁部
2b ボビン部
2d 紐通し穴
3 コイル
4 渡り線
5 電源ケーブル
7 縛り紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ヨークの内周に沿って複数のティースを形成した固定子コアと、該固定子コアに被せてヨークの内周面,およびティースの周面を覆う絶縁カバーと、該絶縁カバーを介して前記ティースに巻回されたコイルとからなり、各相に対応するコイル端末から引き出した渡り線を周方向に引き回して電源ケーブルに結線した上で、その渡り線,および電源ケーブルの結線部に縛り紐を絡げて絶縁カバーに括縛保持した回転電機の固定子において、
前記コイルの渡り線,電源ケーブルに対応して前記絶縁カバーに縛り紐を絡げる紐通し穴を開口し、該紐通し穴に縛り紐を通して前記渡り線,電源ケーブルを括縛したことを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
請求項1に記載の固定子において、絶縁カバーが、固定子コアのヨーク内周面を覆う環状の周壁部,および該周壁部からその内周側に突き出して固定子コアのティース周面を覆うボビン部を有する樹脂成型品になり、その周壁部の壁面に紐通し穴を開口したことを特徴とする回転電機の固定子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−94038(P2013−94038A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236306(P2011−236306)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】