説明

回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造

【課題】 簡易な構成で必要なシェーピングエアを得ることができる回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造を提供する。
【解決手段】 回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造であって、塗装装置本体2の先端に回転自在に配設されたベル型霧化頭3の回転軸5を中心にして、このベル型霧化頭3を囲むリング状のエアキャップ4を配置し、このエアキャップ4には、塗装装置本体2のエア供給路15に連通するリング状のマニホールド10と、このマニホールド10と先端面7に設けた開口8を連通するシェーピングエア噴出孔11と、先端面7に設けた開口8と外周面12に設けた開口13を連通するアシストエア孔14が形成され、このアシストエア孔14は、シェーピングエア噴出孔11に対し傾斜角45度をもって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転霧化頭により霧化された塗料を塗装面に適正に塗着させるための回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転霧化塗装装置においては、回転霧化頭により霧化された塗料を適正に塗装面に塗着させるために、適正な塗料の噴霧パターンを形成する必要から、高速で大流量のシェーピングエアを必要としていた。
【0003】
そこで、特許文献1には、メインエアチャンバからのシェーピングエアが各エア噴出孔から噴出されるまでの経路の途中に、エアを一時的に貯える環状溝及びサブエアチャンバなどを形成し、且つメインエアチャンバと各連通孔、環状溝とサブエアチャンバとの間をそれぞれ距離の短い連通孔やエア流通孔により連通し、各連通孔と各エア流通孔におけるシェーピングエアの圧力損出を少なくすることにより、サブエアチャンバ内に貯えられるシェーピングエアの圧力を高め、各エア噴出孔から噴出されるエアの流量を多くすると共に、シェーピングエアの速度を速くする構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、必要なエア量の増加を極力抑えつつ吐出量の増加が可能な回転霧化塗装機および回転霧化塗装機のシェーピングエア供給方法を提供するため、エアモータ排気側に設けられるタービンエア排気流路に、タービン排気エアの少なくとも一部をシェーピングエアとしてノズルへ取り出す取出弁を設ける構成を採用することにより、従来工場エア配管からのみではシェーピングエアの流量が足りない場合、必ず必要であったシェーピングエア用のブースタコンプレッサを不要とした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−008847号公報
【特許文献2】特開2010−137166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された技術においては、高圧のコンプレッサが必要となり、コスト高になってしまう。また、特許文献2に記載された技術においては、塗装部位や塗料の種類に対応してシェーピングエアの流量や流速を制御する場合、取出弁の制御が複雑になるという問題や配管系が複雑になるという問題があった。
【0007】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で必要なシェーピングエアを得ることができる回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造であって、塗装装置本体の先端に回転自在に配設されたベル型霧化頭の回転軸を中心にして、このベル型霧化頭を囲むリング状のエアキャップを配置し、このエアキャップには、前記塗装装置本体のエア供給路に連通するリング状のマニホールドと、このマニホールドと先端面に設けた開口を連通するシェーピングエア噴出孔と、前記先端面に設けた開口と外周面に設けた開口を連通するアシストエア孔が形成され、このアシストエア孔は、前記シェーピングエア噴出孔に対し傾斜角をもって形成されているものである。
【0009】
また、シェーピングエア噴出孔に対するアシストエア孔の傾斜角は、30度から60度の範囲であることが望ましい。また、シェーピングエア噴出孔とアシストエア孔の径はほぼ等しく、アシストエア孔の長さはその径の3倍から6倍程度であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、エア供給源からシェーピングエア噴出孔を介して供給されるエアの流量が少ない場合でも、アシストエア孔を介して供給されるエアをアシストエアとして用いることにより、十分なシェーピングエアを得ることができ、省エネルギーに寄与すると共に、装置の小型化も可能になる。
【0011】
また、シェーピングエア噴出孔に対するアシストエア孔の傾斜角を、30度から60度の範囲にすれば、アシストエア孔からのエアを効率よく誘引することができる。
【0012】
また、シェーピングエア噴出孔とアシストエア孔の径がほぼ等しく、アシストエア孔の長さをその径の3倍から6倍程度にすれば、アシストエア孔内のエアを流路抵抗の影響を余り受けずに、円滑に誘引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造の平面図
【図2】本発明に係る回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造の断面図
【図3】本発明に係る回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造の正面図
【図4】図1のA−A線断面矢視図
【図5】要部断面拡大図
【図6】作用説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明を施した回転霧化塗装装置1は、図1及び図2に示すように、塗装装置本体2の前端中央部に回転自在に配設したベル型霧化頭3と、このベル型霧化頭3を囲むように配設したリング状のエアキャップ4を備えている。
【0015】
ベル型霧化頭3は、塗装装置本体2に挿通された回転軸5の先端に取り付けられている。また、回転軸5の後端は駆動源(不図示)に連結されている。そして、回転軸5の中心部には塗料供給路6が形成され、この塗料供給路6を通じてベル型霧化頭3内に塗料が供給される。
【0016】
エアキャップ4は、ベル型霧化頭3の回転軸5を中心にして配置され、塗装装置本体2に螺着されている。そして、エアキャップ4の先端面7には、図3及び図4に示すように、ベル型霧化頭3の周縁に対向する開口8が同一円周上に等間隔に複数設けられている。本発明の実施の形態では、開口8は36個設けられている。
【0017】
また、エアキャップ4の後端面9側には、リング状のマニホールド10が形成されている。そして、先端面7の開口8とマニホールド10を連通するシェーピングエア噴出孔11が回転軸5と平行にエアキャップ4に形成されている。
【0018】
更に、エアキャップ4には、図1及び図2に示すように、エアキャップ4の外周面12に等間隔に複数設けた開口13と先端面7の開口8を連通するアシストエア孔14が形成されている。本発明の実施の形態では、開口13は開口8と同様に36個設けられている。
【0019】
アシストエア孔14は、図5に示すように、回転軸5と平行に設けられたシェーピングエア噴出孔11に対して傾斜しており、その傾斜角度は45度である。また、シェーピングエア噴出孔11とアシストエア孔14の径は、ほぼ同径に形成されている。更に、アシストエア孔14の長さは、アシストエア孔14の径の3倍から6倍程度にしている。
【0020】
また、塗装装置本体2には、エア供給源(不図示)より供給されるエアをマニホールド10に導くエア供給孔15が複数(4つ)形成されている。そして、エア供給源(不図示)より供給されるエアは、エア供給孔15、マニホールド10、シェーピングエア噴出孔11を経て開口8より噴出される。
【0021】
以上のように構成された本発明に係る回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造の作用について説明する。回転霧化塗装装置1により塗装を行う場合、駆動源(不図示)により回転軸5を高速回転させながら、塗料供給源(不図示)より塗料供給路6を介してベル型霧化頭3内に塗料を供給すると共に、ベル型霧化頭3に通電して塗料を霧化する。
【0022】
そして、エア供給源(不図示)よりエア供給孔15を介してエアキャップ4に形成されたマニホールド10にエアを供給する。すると、マニホールド10に供給されたエアは、シェーピングエア噴出孔11を通って先端面7の開口8よりシェーピングエアとして噴出される。このシェーピングエアが、ベル型霧化頭3に通電して霧化した塗料を、一定のパターンで被塗装面に向けて吹き付け、塗装を行う。
【0023】
この時のシェーピングエアの流量は、図6に示すように、マニホールド10からシェーピングエア噴出孔11を通って先端面7の開口8から噴出するエア(矢印B)と、シェーピングエア噴出孔11を流下するエア流に誘引され、外周面12の開口13からアシストエア孔14を介して供給されるエア(矢印C)を合算した流量となる。
【0024】
このため、エア供給源(不図示)からのエア流量が不十分でも、外周面12の開口13からアシストエア孔14を介して供給されるエア(矢印C)をアシストエアとして用いることができるので、必要なシェーピングエアの流量を得ることができる。
【0025】
本発明の実施の形態では、アシストエア孔14の傾斜角度を45度としているが、30度から60度の範囲であれば、シェーピングエア噴出孔11を流下するエア流により、アシストエア孔14からのエアを効率よく誘引することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、エア供給源から供給されるエアの流量が少ない場合でも、アシストエア孔を介して供給されるエアをアシストエアとして用いることにより、十分なシェーピングエアの流量が得られるシェーピングエアの供給構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…回転霧化塗装装置、2…塗装装置本体、3…ベル型霧化頭、4…エアキャップ、5…回転軸、6…塗料供給路、7…先端面、8,13…開口、9…後端面、10…マニホールド、11…シェーピングエア噴出孔、12…外周面、14…アシストエア孔、15…エア供給孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造であって、塗装装置本体の先端に回転自在に配設されたベル型霧化頭の回転軸を中心にして、このベル型霧化頭を囲むリング状のエアキャップを配置し、このエアキャップには、前記塗装装置本体のエア供給路に連通するリング状のマニホールドと、このマニホールドと先端面に設けた開口を連通するシェーピングエア噴出孔と、前記先端面に設けた開口と外周面に設けた開口を連通するアシストエア孔が形成され、このアシストエア孔は、前記シェーピングエア噴出孔に対し傾斜角をもって形成されていることを特徴とする回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造。
【請求項2】
請求項1に記載の回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造において、前記傾斜角は30度から60度の範囲であることを特徴とする回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造において、前記シェーピングエア噴出孔と前記アシストエア孔の径はほぼ等しく、前記アシストエア孔の長さはその径の3倍から6倍程度であることを特徴とする回転霧化塗装装置におけるシェーピングエアの供給構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−86165(P2012−86165A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235664(P2010−235664)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】