説明

回転駆動力伝達装置

【課題】消費電力等入力に要するエネルギーを減少させ、出力効率を向上させ得る回転駆動力伝達装置を提供することを課題とする。
【解決手段】入力軸5と、入力軸と同一軸線上にて軸支される出力軸30とを備え、軸支フレーム2に静止内ギア7が設置され、入力軸には入力ギア13の外、回転アーム15と複合軸受ブロック25と出力用カサ歯車28とがこの順に回転自在に取り付けられ、回転アームには、入力ギアに噛合する被動ギア10と静止内ギアに噛合する内接ギア9と駆動カサ歯車11とを一軸上に備えた複合ギア8が一対、自転自在且つ入力軸を軸に公転自在にして配設され、回転アームの各端部の軸受と複合軸受ブロックの軸受との間において回転自在に軸支されるように、駆動カサ歯車と出力用カサ歯車とに噛合する中間カサ歯車21、22が配置され、出力用カサ歯車は、その中心に出力軸の内端が固定されて軸支フレーム3に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転駆動力伝達装置、より詳細には、車両、自転車、発電機、内燃機関、古紙裁断機(シュレッダー)、各種工作機械、その他の回転駆動力が必要となる機械器具にモータ等の回転駆動源からの回転駆動力を伝達するに当り、上記機械器具と回転駆動源との間に介在させ、あるいは、上記機械器具に組み込んで用いる回転駆動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記発電機等の回転駆動力が必要となる機械器具においては、単に回転速度を変換するに過ぎない変速装置を介在させることはあっても、モータ等に対する負荷の軽減、出力効率の向上といった観点から、何らかの回転駆動力伝達装置を介在させるといった試みは行われておらず、専らモータ等を直結して駆動する方法が採用されている。それは、そのような伝達装置を介在させると、機械損失が大きく、却って消費電力を増大させるおそれがあると考えられているからである。
【0003】
しかるに、本発明者らは、上記機械器具と回転駆動源との間に介在させ、あるいは、上記機械器具に組み込んで用いる回転駆動力伝達装置であって、上述したようなおそれのない回転駆動力伝達装置を種々提案してきており、それなりの成果を上げている。ただ、従来提案してきたものは、部品点数が多くて複雑なものとなり、また、重量が嵩むという問題があり、更なる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2008/142855号公報
【特許文献2】PCT/JP2010/071097
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように従来の発電機等の回転駆動力が必要となる機器においては、機械損失が大きく、消費電力を増大させる結果となってしまうような伝達装置を介することなく直接モータ等で駆動しており、モータ等に対する負荷の軽減、出力効率の向上といったことは余り考えられておらず、また、本発明者らの提案する従来のこの種装置の場合は、部品点数が多くて複雑なものとなり、また、重量が嵩むという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記入力用モータ等に対する負荷を軽減し、消費電力等入力に要するエネルギーを減少させ、出力効率を向上させることが可能であり、しかも、比較的シンプルな構成であって部品点数が少なく、また、比較的軽量に構成することができる回転駆動力伝達装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、対設された軸支フレームのうちの一方の側において軸支される入力軸と、他方の側の前記軸支フレームにおいて前記入力軸と同一軸線上にて軸支される出力軸とを備え、前記一方の側の軸支フレームには、前記入力軸が中心となるように静止内ギアが固定設置され、前記入力軸には、入力ギアが固定されると共に、回転アームと複合軸受ブロックと出力用カサ歯車とがこの順に回転自在に取り付けられ、前記回転アームには、前記入力ギアに噛合する被動ギアと前記静止内ギアに内接噛合する内接ギアと駆動カサ歯車とを一軸上に備えた複合ギアが一対、自転自在且つ前記入力軸を軸に公転自在にして配設され、前記複合ギアの駆動カサ歯車と前記出力用カサ歯車とに噛合する中間カサ歯車が、前記回転アームの各端部に設置されている軸受と前記複合軸受ブロックに設置されている軸受との間において回転自在に軸支されるように設置され、前記出力用カサ歯車は、その中心に前記出力軸の内端が固定されて前記他方の側の軸支フレームに支持されることを特徴とする回転駆動力伝達装置である。
【0008】
一実施形態においては、前記回転アームの各端部と前記複合軸受ブロックとの間で軸支される前記中間カサ歯車は、カサ歯車1つで構成したものとされる。
【0009】
また、他の実施形態においては、前記回転アームの各端部と前記複合軸受ブロックとの間で軸支される前記中間カサ歯車は、2つのカサ歯車を二段にして構成したものとされる。
【0010】
上記課題を解決するための請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の装置を複数連結して構成され、前記連結は、前段の前記装置の前記出力軸を次段の前記装置の入力軸とすることにより行い、末端の前記装置の前記出力軸から出力するようにしたことを特徴とする回転駆動力伝達装置である。
【0011】
上記課題を解決するための請求項5に記載の発明は、請求項2及び3に記載の装置を混在させて複数連結して構成され、前記連結は、前段の前記装置の前記出力軸を次段の前記装置の入力軸とすることにより行い、末端の前記装置の前記出力軸から出力するようにしたことを特徴とする回転駆動力伝達装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る回転駆動力伝達装置は上記構成のものであり、本装置においては、入力ギアに噛合する複合ギアが静止内ギアに噛合しているため、その接点において梃子の原理が働いて増力され、且つ、入力の戻りがないためにその増力された回転駆動力が伝達されて出力される。従って、本装置を回転駆動力伝達過程に介在させることにより、回転駆動力を実質的に増大させることができ、以て、出力効率を向上させることが可能であって省エネルギーに寄与でき、車両、発電機、工作機械その他種々の回転駆動力を必要とする機器に利用し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る回転駆動力伝達装置の構成例を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る回転駆動力伝達装置の構成例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明に係る回転駆動力伝達装置の他の構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図面に依拠して説明する。図中1はベースで、その両端部に軸支フレーム2、3が立設される。一方の側の軸支フレーム2の中間部には、軸受を内挿した軸受筒4が設置され、そこに入力軸5が挿入されて軸支される。図示してないが、入力軸5の外端には、モータ等の回転駆動源からの回転駆動力を受けるスプロケット、ギア、プーリ等の入力手段が設置される。また、入力軸5の内端側は、他方の側の軸支フレーム3まで達することなく、その手前まで延ばされ、後述する軸支フレーム3の軸筒部31において軸支される。
【0015】
軸支フレーム2には、静止内ギア7を設置するためのギア取付板6が複数設置される。この軸支フレーム2に設置された静止内ギア7に、1本のギア軸12に3つのギア9、10、11を備えた複合ギア8のうちの、中間に位置する内接ギア9が内接噛合する。複合ギア8は、後述する回転アーム15を介し、入力軸5に対して一対、対称的に配設される。また、入力軸5の軸受筒4近接位置に、通例平歯車である入力ギア13が固定され、この入力ギア12に、各複合ギア8の、軸支フレーム2側に位置する内接ギア9よりも小径の被動ギア10が噛合する。内接ギア9を挟んで被動ギア10の反対側に設置されるギア11は、後述する中間カサ歯車21を駆動する駆動カサ歯車11である。
【0016】
各複合ギア8のギア軸12は、内接ギア9と駆動カサ歯車11の間に介在する回転アーム15において軸支される。回転アーム15はコの字形を呈し、その縦杆部に3つの軸受16、17、18を備え、その中間の軸受17に入力軸5が挿通されることにより、入力軸5に回転自在に軸支される。また、回転アーム15の上下の横杆部に、後述する中間カサ歯車21を軸支するための軸受19、20が配備される。上記複合ギア8の各ギア軸12は、それぞれ回転アーム5の軸受16、18によって軸支される。従って、各複合ギア8は、回転アーム15が回転するに伴い、自転すると共に、入力軸5を軸に公転動作することになる。
【0017】
回転アーム15の上下の軸受19、20にはそれぞれ、1つ又は2つの中間カサ歯車21(21a)、22(22a)のギア軸23、24の一端部(外方端部)が挿通され、ギア軸23、24の他端部(内方端部)は、入力軸5に回転自在に取り付けられた複合軸受ブロック25の、両端部に設置されている軸受26、27によって軸支される。
【0018】
ギア軸23、24に取り付けられるカサ歯車は、図1、2に示される実施形態のように二段に配備されることもあるが(中間カサ歯車21、21a並びに中間カサ歯車22、22a)、図3に示される実施形態のように、一段のみ(中間カサ歯車21、22のみ)の場合もある。二段に配備される場合は、一方の中間カサ歯車21、22は駆動カサ歯車11に噛合し、他方の中間カサ歯車21a、22aは、出力軸30に軸支された出力用カサ歯車28に噛合する。また、一段の場合は、各中間カサ歯車21、22は、駆動カサ歯車11に噛合すると共に、出力用カサ歯車28に噛合する。
【0019】
出力用カサ歯車28の中心部には軸筒部31が形成され、軸筒部31の入力軸側に、入力軸5の端部を軸支する軸受が嵌装される。また、軸筒部31の反対側に、出力軸30の端部が嵌合されて固定される。従って、出力用カサ歯車28は、出力軸30と一体になって回転するが、入力軸5の回転に対しては空回り状態となる。出力軸30には、回転駆動力を出力するプーリ、スプロケット、ギア等の出力手段32が取り付けられる。出力手段32としては、好ましくはカサ歯車が用いられる。
【0020】
なお、上記各カサ歯車は、スグバカサ歯車であってもよいが、高速回転する場合が多いことを考慮して、マガリバカサ歯車を採用することが推奨される。また、出力用カサ歯車28は、冠歯車であってもよい。
【0021】
上記構成において、入力軸5が図示せぬ回転駆動源から入力を受けて回転すると、その回転は入力ギア13にのみ伝達され、入力軸5に軸受を介して取り付けられている回転アーム15、複合軸受ブロック26及び出力用カサ歯車28に直接伝達されることはない。即ち、入力軸5と出力軸30とは完全に切り離されていて、両軸は独立に回転し、入力軸5の回転が直接出力軸30に伝達されることはない。入力ギア13の回転は、それに噛合している一対の複合ギア8の各被動ギア10に伝達され、被動ギア10の回転に伴い、それにギア軸12を介して一体化されている内接ギア9及び駆動カサ歯車11が、被動ギア10と一体となって回転する。
【0022】
各内接ギア9は、複合ギア8の自転動作に伴い、それが内接噛合する静止内ギア7を回転駆動しようと作用し続けるが、静止内ギア7は軸支フレーム2に固定されていて回転することができないため、各内接ギア9は、逆に静止内ギア7から反作用を受け続けることになる。その結果各内接ギア9は、この静止内ギア7からの反作用をかわすために、静止内ギア7に沿い、入力軸5を回転中心にして、その自転方向とは逆の方向に公転する。その結果、回転アーム15が、入力軸5を中心にして回転する。
【0023】
この回転アーム15の回転に伴って中間カサ歯車21、22(21a、22a)は、入力軸5を回転中心として公転する。その際中間カサ歯車21、22(21a、22a)は、そのギア軸23、24が、回転アーム15の軸受と複合軸受ブロック25の軸受との間において回転自在に軸支され、また、駆動カサ歯車11に噛合しているために、複合ギア8の自転に伴って自転駆動されつつ、回転アーム15の回転に伴って公転駆動されることになる。
【0024】
図1及び図2に示す実施形態においては、中間カサ歯車21が自転するに伴い、中間カサ歯車21aも同時に一体となって自転し、中間カサ歯車21aはその自転及び公転に伴い、それに噛合している出力用カサ歯車28を回転駆動する。また、図3に示す実施形態においては、中間カサ歯車21が、その自転及び公転に伴って、それに噛合している出力用カサ歯車28を回転駆動する。かくして出力用カサ歯車28が回転駆動されて、その回転が、それに固定されている出力軸30、並びに、出力軸30に設置されている出力手段32を介して出力される。
【0025】
図示した実施形態は、上記構成の単体の回転駆動力伝達装置を多連に連結して構成されるもので、その場合は、前段の装置の出力軸30が次段の装置の入力軸5となるようにして連結されていく。そして、末端に位置する装置の出力軸30に出力手段32が取り付けられる。この多連にする実施形態の場合は、単体の場合の増力作用が、連数に応じて倍加することになる。
【0026】
上記構成の装置における回転駆動力の伝達過程をみると、入力軸5からの入力は、入力ギア13から被動ギア10、ギア軸12、内接ギア9を介して伝達されて、静止内ギア7に作用する。しかるに、静止内ギア7は固定されていて回転しないために、静止内ギア7と複合ギア8との間において、梃子の原理が働いて増力されるものと推測される(静止内ギア7と内接ギア9との接点が支点、入力ギア13と被動ギア10の接点が力点、ギア軸12が作用点)。
【0027】
そして、増力された内接ギア9の回転駆動力は、同軸の被動ギア10及び駆動カサ歯車11に振り分けられるが、被動ギア10に対して入力軸1からの入力供給が継続するために入力の戻りがなく、その増力された回転駆動力は、そのままカサ歯車群11、21、22、(21a、22a)を介して出力用カサ歯車28に伝達され、出力軸30から出力される。もちろんこの出力される回転駆動力は、上記カサ歯車群を介しての伝達過程において若干の損失はあるが、それは上記増力分を超えることはなく、必ず、入力に対して増力された回転駆動力が出力される。
【0028】
このことを実証するために、図3に示す実施形態において、レンチを使用して人手で入力軸5を軽く回転させ、出力軸30に取り付けたレンチを人手により押さえ、どの程度押え切れるかという簡易な試験を行ったところ、大雑把ではあるが、1の入力に対して5の出力があることが確認された。
【0029】
かくして、本装置を車両、発電機、工作機械その他種々の回転駆動力を必要とする機器の回転駆動力伝達過程に介在させることにより、回転駆動力を実質的に増大させて伝達させることで、出力効率を向上させることが期待でき、また、増力される分入力を軽減することができるので、大いに省エネルギーに資するものである。
【0030】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発
明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは
明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制
約されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 ベース
2 軸支フレーム
3 軸支フレーム
4 軸受筒
5 入力軸
6 ギア取付板
7 静止内ギア
8 複合ギア
9 内接ギア
10 被動ギア
11 駆動カサ歯車
12 ギア軸
13 入力ギア
15 回転アーム
16〜20 軸受
21、22 カサ歯車
21a、22a カサ歯車
23、24 ギア軸
25 複合軸受ブロック
26、27 軸受
28 出力用カサ歯車
30 出力軸
31 軸筒部
32 出力手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
対設された軸支フレームのうちの一方の側において軸支される入力軸と、他方の側の前記軸支フレームにおいて前記入力軸と同一軸線上にて軸支される出力軸とを備え、
前記一方の側の軸支フレームには、前記入力軸が中心となるように静止内ギアが固定設置され、
前記入力軸には、入力ギアが固定されると共に、回転アームと複合軸受ブロックと出力用カサ歯車とがこの順に回転自在に取り付けられ、
前記回転アームには、前記入力ギアに噛合する被動ギアと前記静止内ギアに内接噛合する内接ギアと駆動カサ歯車とを一軸上に備えた複合ギアが一対、自転自在且つ前記入力軸を軸に公転自在にして配設され、
前記複合ギアの駆動カサ歯車と前記出力用カサ歯車とに噛合する中間カサ歯車が、前記回転アームの各端部に設置されている軸受と前記複合軸受ブロックに設置されている軸受との間において回転自在に軸支されるように設置され、
前記出力用カサ歯車は、その中心に前記出力軸の内端が固定されて前記他方の側の軸支フレームに支持されることを特徴とする回転駆動力伝達装置。
【請求項2】
前記回転アームの各端部と前記複合軸受ブロックとの間で軸支される前記中間カサ歯車は、カサ歯車1つで構成したものである、請求項1に記載の回転駆動力伝達装置。
【請求項3】
前記回転アームの各端部と前記複合軸受ブロックとの間で軸支される前記中間カサ歯車は、2つのカサ歯車を二段にして構成したものである、請求項1に記載の回転駆動力伝達装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の装置を複数連結して構成され、前記連結は、前段の前記装置の前記出力軸を次段の前記装置の入力軸とすることにより行い、末端の前記装置の前記出力軸から出力するようにしたことを特徴とする回転駆動力伝達装置。
【請求項5】
請求項2及び3に記載の装置を混在させて複数連結して構成され、前記連結は、前段の前記装置の前記出力軸を次段の前記装置の入力軸とすることにより行い、末端の前記装置の前記出力軸から出力するようにしたことを特徴とする回転駆動力伝達装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−229740(P2012−229740A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98010(P2011−98010)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(591075906)
【出願人】(399031126)
【出願人】(397060773)
【出願人】(511104716)
【出願人】(511104727)
【Fターム(参考)】