説明

回転駆動装置及びロボット装置

【課題】高度な制御が実現でき、産業ロボット等に好適な回転駆動装置を提供する。
【解決手段】トラクション方式の減速機30や指令信号に基づいてモータ20の出力を制御する駆動制御機構40を備えた回転駆動装置10である。減速機30の入力側に第1ロータリエンコーダ22、減速機30の出力側に第2ロータリエンコーダ33を有している。駆動制御機構40は、指令信号Scと第1検出信号S1とに基づいてモータ20の出力を制御する制御信号Sdを生成する出力制御部43、制御信号Sdに従うドライバ44、第1検出信号S1と第2検出信号S2とを比較して、減速機30の入力と出力との間の誤差を演算する誤差演算部45を有している。出力制御部43が誤差演算部45の演算結果に基づいて制御信号Scを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクション方式の減速機を備えた回転駆動装置、及びその回転駆動装置を用いたロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクション方式の減速機を備えた回転駆動装置は公知である(特許文献1、2等)。トラクション方式の減速機は、その構造上、同一設計の減速機でも、個体毎に減速比が僅かに異なったり、運転中の負荷トルクの変化で滑りが発生したりして、入出力間で回転速度や回転位置の誤差が生じ得るという問題があるが、一般的なギア方式の減速機に比べて、バックラッシュ量を小さくすることが可能であり、また、モータを高回転で駆動でき、駆動音も小さいなどの利点がある。
【0003】
そこで、特許文献1や特許文献2に開示されている回転制御装置ではフィードバック制御を用いることにより、制御の精度を高める工夫が行われている。具体的には、トラクション方式の減速機の出力側にロータリエンコーダが配置されていて、このロータリエンコーダから出力される検出パルスを設定された基準パルスと比較し、その比較結果に基づいてモータの回転を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−331385号公報
【特許文献2】特開平10−215593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、工場の組み立てラインや搬送ラインなどには、多種多様な産業ロボットが導入されている。一般に、この種の産業ロボットは、自在に動かすことができる多関節アームを有しており、この多関節アームは、モータを駆動源とする回転駆動装置によって駆動制御されている。
【0006】
産業ロボットの普及により、その高性能化が進むにつれて、産業ロボットに用いられる回転駆動装置についても、よりいっそうの小型化、高速化が求められている。また、産業ロボット以外にも、様々な分野でロボットの利用が検討されており、小型で高性能な回転駆動装置の要望が高まっている。
【0007】
この点、トラクション方式の減速機はロボット向けの回転駆動装置に好適であるが、特許文献1等の回転制御装置のように、出力側の検出パルスを設定された基準パルスと比較してモータの出力を制御するだけでは、ロボットのような高度な制御においては十分とはいえない。
【0008】
そこで、本発明の主たる目的は、小型化、高性能化に有利で、高度な制御が実現できる回転駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、フィードバック制御の構成を工夫することにより、トラクション方式の減速機を用いても高精度な制御が安定して実現できるようにした。
【0010】
具体的には、本発明に係る回転駆動装置は、モータと、前記モータに連結されたトラクション方式の減速機と、外部から入力される指令信号に基づいて前記モータの出力を制御する駆動制御機構とを備え、前記減速機の入力側に配置された第1ロータリエンコーダと、前記減速機の出力側に配置された第2ロータリエンコーダとを有している。
【0011】
前記駆動制御機構は、前記指令信号と、前記第1ロータリエンコーダから入力される第1検出信号とに基づいて、前記モータの出力を制御する制御信号を生成する出力制御部と、前記制御信号に従って前記モータに供給する電力を増減するドライバと、前記第1検出信号と、前記第2ロータリエンコーダから入力される第2検出信号とを比較して、前記減速機の入力と出力との間の誤差を演算する誤差演算部とを有している。そして、前記出力制御部が、前記誤差演算部の演算結果に基づいて前記制御信号を補正する。
【0012】
このように構成された回転駆動装置によれば、まず、出力制御部が、指令信号と第1検出信号とに基づいて制御信号を生成し、ドライバが、その制御信号に従ってモータに供給する電流を増減するので、回転駆動装置は、減速機の動きをフィードバックしながら指令信号に応じてモータの出力を変化させる。
【0013】
減速機の入力側と出力側の双方にロータリエンコーダが配置され、駆動制御機構に誤差演算部が設けられているので、減速機の入力側と出力側の回転速度等の実測値をフィードバックすることができ、簡単な演算処理を行うだけで減速機の入出力間の誤差をリアルタイムで取得することができる。
【0014】
そして、その演算結果に基づいて出力制御部が制御信号を補正するので、タイムラグをほとんど生じることなく、減速機で実際に生じる誤差を出力制御に反映させることができる。減速機にトラクション方式の減速機が用いられているので、バックラッシュのおそれもない。従って、減速機で誤差が生じてもその影響が制御に及ぶのを効果的に阻止できるので、高精度な制御を安定して実現することができる。
【0015】
例えば、前記減速機の出力側にギア方式の第2減速機が連結されているように構成してもよい。
【0016】
そうすれば、第1段目にトラクション方式の減速機が配置されているため、モータを高回転で駆動することができ、出力を向上することができる。そして、出力が減速される2段目に第2減速機が配置されているため、更に減速比を高めて出力トルクの範囲を拡大することができる。ちなみに、第2減速機はギア方式であるため、入出力間で生じる減速比は、減速機内部のギアの歯数によって定まる。従って、第1減速機をトラクション方式にしたメリットを生かして高トルクを得ることができる。
【0017】
一方、前記第2ロータリエンコーダを前記第2減速機の出力側に配置すれば、新たな効果を得ることができる。
【0018】
例えば、第2減速機のバックラッシュ等の影響も制御に反映させることができるので、よりいっそう高精度な制御が実現できる。
【0019】
また、例えば、前記第2ロータリエンコーダは、前記減速機の出力側かつ前記第2減速機の入力側に配置され、前記第2減速機の出力側に配置された第3ロータリエンコーダを更に有し、前記駆動制御機構は、更に、前記第1検出信号と、前記第3ロータリエンコーダから入力される第3検出信号とに基づいて、前記減速機の入力と前記第2減速機の出力との間の誤差を演算する第2誤差演算部を有し、前記出力制御部が、前記誤差演算部及び前記第2誤差演算部の演算結果に基づいて前記制御信号を補正するように構成してもよい。
【0020】
そうすれば、出力誤差をフィードバックする回路が多重化されるので、よりいっそう制御の精度や安定性を向上させることができる。
【0021】
これら回転駆動装置は、高性能であるうえに小型化にも有利であるため、産業ロボット等のロボット装置に好適である。
【0022】
例えば、ロボット装置が、装置本体と、前記装置本体に設けられた多関節アームとを備え、前記多関節アームは、第1要素アームと、前記第1要素アームの先端部に、基端部が回動自在に連結された第2要素アームとを含む場合には、前記第2要素アームの駆動源として、前記回転駆動装置を、前記第1要素アームと前記第2要素アームとの連結部位に設けることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の回転駆動装置によれば、トラクション方式の減速機の入出力間で生じる誤差を出力制御に効果的に反映させることができ、高度な制御を安定して実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用したロボット装置を例示する概略斜視図である。
【図2】本発明の回転駆動装置の構成を示す概略図である。
【図3】駆動制御機構の構成を示すブロック図である。
【図4】第2実施形態における回転駆動装置の構成を示す概略図である。
【図5】第2実施形態における駆動制御機構の構成を示すブロック図である。
【図6】第3実施形態における回転駆動装置の構成を示す概略図である。
【図7】第3実施形態における駆動制御機構の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0026】
図1に、本発明の回転駆動装置を適用したロボット装置1を例示する。このロボット装置1は、いわゆる産業ロボットであり、例えば、工場の組み立てラインや搬送ラインに設置される。
【0027】
ロボット装置1は、装置本体2や多関節アーム3などで構成されている。装置本体2は、工場の床面等に設置されるベース2aと、ベース2a上に設けられた装置基部2bとを有している。この装置基部2bの上部に多関節アーム3が設けられている。ロボット装置1は、図外の制御装置と接続されており、予め設定されたプログラムに従って、多関節アーム3が所定の動作を行うように構成されている。
【0028】
本実施形態の多関節アーム3は、3つの要素アーム3a,3b,3cで構成されている。1節目の要素アーム3aは、その基端部が装置基部2bの上部に縦軸回りに回動自在に連結されている。2節目の要素アーム3bは、その基端部が1節目の要素アーム3aの先端部に縦軸回りに回動自在に連結されている。そして、3節目の要素アーム3cは、その基端部が2節目の要素アーム3bの先端部に横軸回りに回動自在に連結されている。
【0029】
これら要素アーム3a,3b,3cを駆動制御するために、各要素アーム3a,3b,3cの連結部位には回転駆動装置10が設けられている。特に、本発明の回転駆動装置10は、小型で高出力が得られることから、このロボット装置1では、設置スペースが限られる各要素アーム3a,3b,3cの連結部位に設けられている。
【0030】
図2に、その回転駆動装置10の構成を示す。回転駆動装置10は、モータ20や減速機30、駆動制御機構40などで構成されている。
【0031】
モータ20は、いわゆるサーボモータである。モータ20の内部には、駆動軸21の回転速度や回転位置(角度)を検出する第1ロータリエンコーダ22が設けられている。モータ20の出力側には減速機30が連結され、モータ20は減速機30と一体に構成されている。
【0032】
減速機30は、いわゆるトラクション方式の減速機である。減速機30には、出力軸31やトラクション減速機構32、第2ロータリエンコーダ33などが設けられている。トラクション減速機構32は、太陽ローラやその周囲に圧接された複数の遊星ローラなど、公知の機構で構成されている。また、第1ロータリエンコーダ22及び第2ロータリエンコーダ33は、複数のセンサやスリット付きの円板など、公知の機構で構成されている。
【0033】
トラクション減速機構32の入力側には、モータ20の駆動軸21が連結されている。そして、トラクション減速機構32の出力側には、出力軸31がモータ20の駆動軸21と回転中心を一致させて連結されている。第2ロータリエンコーダ33は、出力軸31の回転速度や回転位置を検出するために、減速機30の出力側に配置されている。減速機30の出力軸31には駆動対象Tが連結されている。例えば、このロボット装置1の場合、要素アーム3b等の基端部が駆動対象Tとなっている。
【0034】
駆動制御機構40は、モータ20及び減速機30と配線を介して接続されている。具体的には、駆動制御機構40と第1ロータリエンコーダ22とが制御配線51を介して接続されており、駆動制御機構40と第2ロータリエンコーダ33とが制御配線52を介して接続されている。また、駆動制御機構40は、モータ20及び図外の電源と駆動配線55を介して接続されている。更に、図外の制御装置とも制御配線53を介して接続されている。
【0035】
図3に、駆動制御機構40の構成を示す。駆動制御機構40は、指令信号Scに基づいてモータ20の回転出力を制御する機能を有し、位置制御部41や速度制御部42を含む出力制御部43、ドライバ44、誤差演算部45などで構成されている。位置制御部41は、モータ20の回転位置(角度)を制御する機能を有し、速度制御部42は、モータ20の回転速度を制御する機能を有している。
【0036】
第1ロータリエンコーダ22は、駆動軸21の回転に応じて変化するパルス列を検出し、検出したパルス列(第1検出信号S1)を出力制御部43に出力する。第2ロータリエンコーダ33は、出力軸31の回転に応じて変化するパルス列を検出し、検出したパルス列(第2検出信号S2)を出力制御部43に出力する。
【0037】
なお、第1ロータリエンコーダ22と第2ロータリエンコーダ33とでは、後述するように、第1検出信号S1と第2検出信号S2とが相対比較される。
【0038】
駆動制御機構40と、第1ロータリエンコーダ22及び第2ロータリエンコーダ33との間には、リアルタイムで回転駆動装置10の出力を制御に反映させることができるフィードバックループが構成されている。詳しくは、駆動制御機構40と第1ロータリエンコーダ22との間に1つのフィードバックループ(メインループL1)が構成され、駆動制御機構40と第2ロータリエンコーダ33との間にもう一つのフィードバックループ(サブループL2)が構成されている。
【0039】
出力制御部43では、メインループL1を用いた主体的なフィードバック制御が行われている。
【0040】
具体的には、出力制御部43には、指令信号Sc(パルス列)と第1検出信号S1とが入力されている。なお、指令信号Scが電流や電圧で駆動制御機構40に入力される場合には、指令信号Scは、出力制御部43に入力する前に変換器によってパルス列に変換される。
【0041】
位置制御部41では、指令信号Scと第1検出信号S1との間で位相が比較される。位置制御部41は、その比較結果に基づいてモータ20の回転を増速させるか減速させるかを判断する。また、速度制御部42では、指令信号Scと第1検出信号S1との間で周波数が比較される。速度制御部42は、その比較結果に基づいてモータ20の回転を増速させるか減速させるかを判断する。
【0042】
出力制御部43では、これら位置制御部41及び速度制御部42の判断結果に基づいて、モータ20の出力を制御する制御信号Sdを生成し、ドライバ44に出力する。ドライバ44は、入力された制御信号Sdに従ってモータ20に供給する電力を増減し、その電力の増減に応じてモータ20の回転速度が変化する。
【0043】
従って、メインループL1だけでも回転駆動装置10を制御することはできるが、この回転駆動装置10では、更にサブループLを設けることで、応答性に優れ、安定した高精度な制御を実現している。
【0044】
すなわち、トラクション方式の減速機30は、その機構上、ギア方式の減速機30と異なり、入力側と出力側との間で回転速度や回転角度がずれて誤差が生じる場合がある。その場合、メインループL1によるフィードバック制御のみでは、その誤差が反映されないため、誤差分の精度低下を招くおそれがある。そこで、この回転駆動装置10では、減速機30の出力側に第2ロータリエンコーダ33を配置して、減速機30の出力側の出力をフィードバックするサブループLを構成し、減速機30の入出力間で生じる誤差も制御に反映できるようにしている。
【0045】
通常、そうした場合には、特許文献1や特許文献2の回転制御装置もそうであるように、メインループL1と同様のフィードバック制御が行われる。すなわち、第2ロータリエンコーダ33から出力される第2検出信号S2は、出力制御部43に入力され、指令信号Scと第2検出信号S2とを比較する処理が行われる。それに対し、この回転駆動装置10では、応答性や安定性をよりいっそう向上させるために、第2検出信号S2は、出力制御部43に入力せずに誤差演算部45に入力するように構成している。
【0046】
誤差演算部45にはまた、第1ロータリエンコーダ22から出力される第1検出信号S1も入力されている。そして、誤差演算部45では、同期して入力される第1検出信号S1と第2検出信号S2とを比較し、減速機30の入力と出力との間で生じる誤差を演算する処理が行われる。
【0047】
具体的には、第1検出信号S1と第2検出信号S2とが比較できるように、例えばレートマルチプライヤ等を用いて、第1検出信号S1に対し、減速比に応じた割合でパルス列を減少させる処理が行われる(分周処理)。そうして、比較可能になった第1検出信号S1と第2検出信号S2とに対し、周波数やパルスの周期が比較され、その誤差の有無が判断される。
【0048】
その結果、両者の周波数等に差がなければ、誤差無しと判断される。両者の周波数等に差があれば、誤差有りと判断され、その誤差量が演算される。例えば、第2検出信号S2が分周処理された第1検出信号S1よりも大きい場合には、正の値として誤差量が演算され、第2検出信号S2が分周処理された第1検出信号S1よりも小さい場合には、負の値として誤差量が演算される。
【0049】
演算された誤差量は、誤差演算部45から誤差信号Seとして出力され、出力制御部43に入力される。出力制御部43では、入力される誤差信号Seに基づいて制御信号Sdを補正する処理が行われる(補正処理)。
【0050】
具体的には、位置制御部41では、誤差信号Seが入力されると、その誤差信号Seも含めて指令信号Scと第1検出信号S1との間でパルス誤差の集積や位相が比較される。また、速度制御部42では、誤差信号Seが入力されると、その誤差信号Seも含めて指令信号Scと第1検出信号S1との間で周波数等が比較される。
【0051】
従って、減速機30の入出力間で実際に生じる出力の誤差をリアルタイムで制御に反映させることができるので、高精度な制御が実現できる。しかも、極めて簡単な演算処理でフィードバックできるので、応答性に優れる。通常行われる多重のフィードバックループに比べてダンピングを抑制できるので、安定性も向上する。
【0052】
(第2実施形態)
図4及び図5に、本実施形態の回転駆動装置10Aを示す。この回転駆動装置10Aでは、特に、減速機30(第1減速機30ともいう)の出力側に更に第2減速機60が連結され、2段減速構造になっている点で、先の実施形態と異なっている。モータ20等の基本的な構成は、先の実施形態と同様であるため、同じ構成には同じ符号を用いてその説明は省略する。
【0053】
第2減速機60は、いわゆるギア方式の減速機である。第2減速機60には、第2出力軸61やギア減速機構62などが設けられている。ギア減速機構62は、太陽ギアやその周囲に噛み合った複数の遊星ギアなど、公知の機構で構成されている。ギア減速機構62の入力側には、第1減速機30の出力軸31が連結されている。そして、ギア減速機構62の出力側には、出力軸31と回転中心が一致した第2出力軸61が連結されている。
【0054】
この回転駆動装置10Aでは、第2ロータリエンコーダ33は、第1減速機30ではなく、第2減速機60に配置されている。すなわち、第2出力軸61の回転速度や回転位置を検出するために、第2ロータリエンコーダ33が第2減速機60の出力側に配置されている。
【0055】
この回転駆動装置10Aでは、まず、第1段目にトラクション方式の第1減速機30が配置されているため、モータ20を高回転で駆動することができ、出力を向上することができる。2段目の減速機の場合、入力が減速されているため、ギア方式の減速機を用いることができる。
【0056】
そして、第2減速機60を2段目に配置することで、更に減速比を高めることができるので、出力トルクの範囲を拡大することができる。第2減速機60はギア方式であるため、個体毎に入出力間で減速比がばらつくおそれはない。
【0057】
なお、第2ロータリエンコーダ33は、図5に仮想線で示すように、第2減速機60でなく第1減速機30に配置してもよい。ただし、第2減速機60のバックラッシュ等の影響を制御に反映させることができるので、第2ロータリエンコーダ33は第2減速機60に配置する方が好ましい。
【0058】
(第3実施形態)
図6及び図7に、回転駆動装置10A等を応用した本実施形態の回転駆動装置10Bを示す。この回転駆動装置10Bでは、特に、更に、第3ロータリエンコーダ70を追加してサブループL3を構成し、フィードバック構造を多重化した点で、第2実施形態等と異なっている。
【0059】
具体的には、第2ロータリエンコーダ33は、当初の実施形態と同様に、第1減速機30に配置され、第3ロータリエンコーダ70が第2減速機60の出力側に配置されている。そして、この第3ロータリエンコーダ70と駆動制御機構40とが制御配線54を介して接続され、第2のサブループL3が構成されている。そして、第3ロータリエンコーダ70は、第2出力軸61の回転に応じて変化するパルス列を検出し、検出したパルス列(第3検出信号S3)を駆動制御機構40に出力する。
【0060】
図7に示すように、駆動制御機構40には、第3ロータリエンコーダ70に対応して第2誤差演算部71が設けられている。第2誤差演算部71は、第1誤差演算部45と同様の機能を有している。
【0061】
具体的には、第2誤差演算部71にも、第1ロータリエンコーダ22から出力される第1検出信号S1が入力されている。そして、第2誤差演算部71では、同期して入力される第1検出信号S1と第3検出信号S3とを比較し、第1誤差演算部45と同様にして、第1減速機30の入力と第2減速機60の出力との間で生じる誤差を演算する処理が行われる。
【0062】
そして演算された誤差量は、第2誤差演算部71から第2誤差信号Se’として出力され、出力制御部43に入力される。出力制御部43では、第1誤差演算部45から入力される誤差信号Seと第2誤差演算部71から入力される第2誤差信号Se’とに基づいて制御信号Sdを補正する処理が行われる。
【0063】
この回転駆動装置10Bでは、出力の誤差を検出してフィードバックする回路が多重化されているため、よりいっそう制御の精度や安定性を向上させることができる。
【0064】
なお、本発明にかかる回転駆動装置及びロボット装置は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0065】
例えば、ロボット装置は、産業ロボットに限らない。回転駆動装置は、様々な分野で用いられるロボットにも適用できる。
【0066】
上述した実施形態では、出力制御部43に位置制御部41が設けられているが、位置制御部41は必須ではなく、無くてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 ロボット装置
2 装置本体
3 多関節アーム
10 回転駆動装置
20 モータ
22 第1ロータリエンコーダ
30 減速機
33 第2ロータリエンコーダ
40 駆動制御機構
41 位置制御部
42 速度制御部
43 出力制御部
44 ドライバ
45 誤差演算部
60 第2減速機
70 第3ロータリエンコーダ
71 第2誤差演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータに連結されたトラクション方式の減速機と、
外部から入力される指令信号に基づいて前記モータの出力を制御する駆動制御機構と、
を備えた回転駆動装置であって、
前記減速機の入力側に配置された第1ロータリエンコーダと、
前記減速機の出力側に配置された第2ロータリエンコーダと、
を有し、
前記駆動制御機構は、
前記指令信号と、前記第1ロータリエンコーダから入力される第1検出信号とに基づいて、前記モータの出力を制御する制御信号を生成する出力制御部と、
前記制御信号に従って前記モータに供給する電力を増減するドライバと、
前記第1検出信号と、前記第2ロータリエンコーダから入力される第2検出信号とを比較して、前記減速機の入力と出力との間の誤差を演算する誤差演算部と、
を有し、
前記出力制御部が、前記誤差演算部の演算結果に基づいて前記制御信号を補正する回転駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転駆動装置において、
前記減速機の出力側にギア方式の第2減速機が連結されている回転駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転駆動装置において、
前記第2ロータリエンコーダが前記第2減速機の出力側に配置されている回転駆動装置。
【請求項4】
請求項2に記載の回転駆動装置において、
前記第2ロータリエンコーダは、前記減速機の出力側かつ前記第2減速機の入力側に配置され、
前記第2減速機の出力側に配置された第3ロータリエンコーダを更に有し、
前記駆動制御機構は、更に、前記第1検出信号と、前記第3ロータリエンコーダから入力される第3検出信号とに基づいて、前記減速機の入力と前記第2減速機の出力との間の誤差を演算する第2誤差演算部を有し、
前記出力制御部が、前記誤差演算部及び前記第2誤差演算部の演算結果に基づいて前記制御信号を補正する回転駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の回転駆動装置を搭載したロボット装置。
【請求項6】
請求項5に記載のロボット装置において、
装置本体と、
前記装置本体に設けられた多関節アームと、
を備え、
前記多関節アームは、
第1要素アームと、
前記第1要素アームの先端部に、基端部が回動自在に連結された第2要素アームと、
を含み、
前記第2要素アームの駆動源として、前記回転駆動装置が、前記第1要素アームと前記第2要素アームとの連結部位に設けられているロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−110874(P2013−110874A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254551(P2011−254551)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000107147)日本電産シンポ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】