説明

回転駆動装置

【課題】簡素な構造で耐久性に優れ、回転方向、回転速度、およびトルクの制御性が良好な回転駆動装置を提供する。
【解決手段】基台11と、該基台11に揺動可能に支持された揺動台16と、基台11に回転可能に支承された出力軸21と、揺動台16を異なる少なくとも2方向に傾斜させる変位手段18と、揺動台16の平面と軸線が直交し該揺動台16に回転可能に支承されるとともに出力軸21に連結される回転軸12と、回転軸12の半径方向に離間して設けられ回転軸12と連結部材によって連結された錘13と、錘13の回転位置を検出する位置検出装置19と、錘13の回転位置に応じて変位手段18を制御し揺動台16の傾きを変える制御手段20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトルクを出力する回転駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を機械的動力に変換して出力する駆動装置として電磁力を利用するモータが一般的に用いられるが、電子機器や精密機械などに内蔵する駆動装置には特に小形化や位置制御の高精度化が必要とされる。このような小形化、高精度化への要求に応えて、電磁力によらず、超音波振動などを利用した別の駆動方式の駆動装置が実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される超音波モータは、圧電体によって励振されて表面に進行波を発生する固定子と、固定子に当接されて相対的に可働する回転子とを有し、固定子および回転子の少なくとも一方を弾性変形する薄板円板で支持している。そして、圧電体に高周波電圧を印加すると固定子には屈曲振動によって進行波が発生し、加圧接触している回転子が回転するようになっている。
【0004】
また、特許文献2に開示される超音波リニアモータは、胴部から延びる少なくとも2本の脚部を有する振動体と、振動体に設けられて胴部および脚部の少なくとも一方に交差する方向に向けられた振動素子とを備え、振動素子として圧電素子が例示されている。そして、圧電素子に電圧を印加することにより、脚部の先端が楕円状に回転して振動体がレール上を移動するようになっている。これにより、エネルギ変換効率が高く、高速動作をさせることができ、しかも極めてコンパクトに構成することができる、とされている。
【0005】
さらに、特許文献3の超音波リードスクリューモータを含む機構には、ねじ付きシャフトおよびねじ付きナットを含み、ねじ付きナットを超音波振動に供し、それによってねじ付きシャフトを回転させながら軸方向に移動させる光学アセンブリが開示されている。また、超音波振動を発生させる手段として圧電管が開示されている。この発明の目的は、従来技術よりも実質的に高い効率を有し、かつ高い精度、大きな力および速度を提供することとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−77068号公報
【特許文献2】特開平2−266881号公報
【特許文献3】特開2008−510445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の3つの特許文献に開示された技術は、駆動力・推進力に制約が生じる点、および、摩擦面の摩耗による耐久性の低下の点で難点があった。特許文献1では、固定子と回転子とが対向する面で加圧接触しているが、加圧方向における圧電体の変形力は小さく、したがって小さな駆動力しか得られない。また、加圧接触している面が荒れると、性能が低下してしまう。特許文献2でも同様であり、振動体の脚部先端をレールに押し当てながら駆動するので、面接触による摩擦分だけの推進力しか得られず、脚部先端の摩耗も懸念される。特許文献3では、ねじ付きシャフトおよびねじ付きナットが螺合面で擦れ合い摩擦力によりシャフトが回転するので、摩擦力以上の推進力は得られない。
【0008】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、簡素な構造で耐久性に優れ、回転方向、回転速度、およびトルクの制御性が良好な回転駆動装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に係る回転駆動装置の発明は、基台と、該基台に揺動可能に支持された揺動台と、前記基台に回転可能に支承された出力軸と、前記揺動台を異なる少なくとも2方向に傾斜させる変位手段と、前記揺動台の平面と軸線が直交し該揺動台に回転可能に支承されるとともに前記出力軸に連結される回転軸と、前記回転軸の半径方向に離間して設けられ前記回転軸と連結部材によって連結された錘と、該錘の回転位置を検出する位置検出装置と、前記錘の回転位置に応じて前記変位手段を制御し前記揺動台の傾きを変える制御手段と、を備えたことである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記変位手段は圧電体であり、少なくとも2つの前記圧電体が前記基台上で前記回転軸の揺動の支点を中心とした円周面上に90度の位相差をもって配置されていることである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る回転駆動装置の発明では、回転軸の半径方向に離間して錘を設け、回転軸を回転可能に支承する揺動台を揺動可能に設け、変位手段により錘の回転位置に応じて揺動台を異なる少なくとも2方向に順次傾斜させて錘が連続的に回転するように制御する。このように異なる2方向に揺動台を傾斜させて錘を回転軸回りに回転制御するという簡素な構造及び方法により回転方向、回転速度、および出力されるトルクの制御性が良好で耐久性に優れた回転駆動装置を提供することができる。即ち本発明に係る回転駆動装置は重力を利用し錘が落下する力によって回転トルクを発生させるため摩擦力によるトルク伝達を行なわないので耐久性の向上が期待できる。そして回転する錘はフライホイールに類似した機能で慣性エネルギを蓄積することにより所望の回転速度を容易に得たり、トルク変動に対しても良好に対応できる。また異なる少なくとも2方向に揺動台を傾斜させて錘を回転軸回りに回転制御するので、回転方向の確実な制御が実施できる。
【0012】
請求項2に係る発明では、揺動台を傾斜させるための変位手段は幅広い振動範囲で駆動可能な圧電体を使用しその配置角度には90度の位相差がある。圧電体によって低振動域から超音波領域までの広い範囲で錘の傾斜動作が得られるので回転駆動装置は低速回転から高速回転まで駆動が可能となる。また各圧電体を90度の位相差で配置することにより各圧電体に持ち上げられた錘の位置エネルギを効率よく適切に利用することができ回転軸の良好な回転作動を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の回転駆動装置を模式的に説明する上面図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】本実施形態の錘の回転作動状態を説明する模式図である。
【図4】図3の回転作動時に対応する圧電体の電圧印加状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る回転駆動装置について、図1乃至図4を参照して説明する。図1、及び図2に図示されるように、回転駆動装置10は、基台11、回転軸12、錘13、揺動台16、圧電体(変位手段)17、18、位置検出装置19、制御装置(制御手段)20、出力軸21などにより構成されている。
【0015】
基台11は、回転駆動装置10の駆動によって出力されるトルクを出力する出力軸21を、軸受け23、24を介して回転可能に軸承している。また基台11は出力軸21を支持することによって出力軸21に連結される回転軸12を支持している。
【0016】
回転軸12は、揺動可能なジョイント22を介して出力軸21と回転可能に連結されている。また回転軸12は後述する揺動台16に固定される軸受け26に軸承されている。回転軸12の一端の半径方向には錘13が離間して設けられており、錘13は回転軸12と所定の剛性を有する連結部材25によって連結されている。なお、ここで所定の剛性とは、回転軸12が回転停止しているときに重力方向に撓まない程度の剛性をいう。
【0017】
錘13は、どのような材質、形状、及び作り方でもよく、例えば、鉄部材を連結部材25の先端に溶接してもよいし、連結部材25の先端部を加工し、連結部材25と一体で形成してもよい。また錘13の質量は、出力したいトルクの大きさによって任意に決定される。つまり錘13の質量が大きい場合には、回転軸12の回転速度の上昇に応じて錘13に発生する遠心力が大きくなり、該遠心力回転トルクが大きくなるので大きな出力トルクを回転軸から取り出せる。逆に錘13の質量が小さい場合には、錘13に発生する遠心力が小さくなり回転トルクが小さくなるので小さな回転トルクに応じた出力トルクが回転軸から取り出せるものである。
【0018】
揺動台16は、本実施形態においては円板状に形成され揺動台16の中心部の平面上には前述の軸受け26が立設されている。そして揺動台16は回転軸12の軸線と揺動台16の円板平面とが直交するように配置され、回転軸12を揺動台16に立設された軸受け26の内周面と、軸受け26の内周面と同軸に設けられた揺動台16の摺動穴とによって軸承している。回転軸12には揺動台16の軸受け26側と反対側の平面を摺動可能に支持する支持部12aが設けられており、支持部12aの揺動台16を支持する上面によって揺動台16が支持部12aに対しなめらかに相対回転可能に支持されている。このように揺動台16は、回転軸12を介して出力軸21、及び基台11に揺動可能に支持されている。よって揺動台16がジョイント22を支点に揺動すると回転軸12が一体で揺動し、同時に回転軸12に連結されている錘13も一体で揺動される。
【0019】
変位手段である各圧電体17、18は、制御装置20にそれぞれ接続されている。各圧電体17、18は、図1、図2に示すように基台11上に設けられた段部上面に回転軸12の揺動の支点を中心とした円周面上で揺動台16の周縁部を越えない範囲の周縁部近傍に90度の位相差をもってそれぞれ配置されている。各圧電体17、18は揺動台16を異なる少なくとも2方向に傾斜させるための装置であり、本実施形態においては2つの圧電体17、18によって構成している。詳細には制御装置20が各圧電体17、18に電圧をそれぞれ印加することによって各圧電体17、18を変形させ、変形部の先端で揺動台16の円板平面の周縁を重力方向上方に持ち上げ揺動台16をジョイント22を支点にして傾斜させるものである。揺動台16は前述したとおり回転軸12、及び回転軸12に連結される錘13と連動している。これによって錘13も各圧電体17、18が揺動台16の周縁を持ち上げたことによって生じる変位に応じた変位分だけ持ち上げられ位置エネルギが付与される。そしてこのとき錘13のバランスが崩れ、錘13が安定方向である重力方向下方に向って落下し回転軸12を右又は左のいずれかの方向に回転させる。そして制御装置20がタイミングを計りながら2つの圧電体17、18に順次電圧を印加し各圧電体17、18を順次変形させることによって錘13のバランスを順次崩し回転軸12の回転作動を得る。なお、このとき圧電体17、18を変位させる量については回転軸の回転効率等を考慮し任意に設定すればよい。
【0020】
位置検出装置19は、出力軸21に設けられ制御装置20に接続されている。位置検出装置19は、出力軸21を回転中心としたときの錘13の回転方向における位置を検出する。本実施形態においては、出力軸21と、回転軸12と、錘13とは一体的に回転する。よって初期に出力軸21と錘13との相対的な位置関係を把握しておき、位置検出装置19によって出力軸21の回転位置を検出することによって、錘13の位置を導出する。そのため出力軸21に出力軸21の絶対回転位置を検出できる位置検出装置19を設け、出力軸21の絶対回転位置を検出する。なお、位置検出装置19はどのような方式でもよく、本実施形態においては絶対角を検出可能なアブソリュート型のロータリエンコーダを適用する。しかし、例えば自動車で利用されるクランク角センサ、及びカム角センサ等を利用してもよい。
【0021】
制御手段である制御装置20は、圧電体17、18と位置検出装置19とに接続されている。制御装置20は位置検出装置19によって検出された出力軸21の回転位置信号を受信し、出力軸21の回転位置信号から錘13の回転位置を導出する。そして導出された錘13の回転位置に応じて2つの圧電体17、18を制御し揺動台16の傾きを異なる2つの方向に順次、切替える。これによって位置エネルギを錘13に付与し、錘13の重力による落下の力、及び錘13に加わる遠心力を利用して回転軸12を連続回転させる。
【0022】
次に、第1の実施形態の回転駆動装置10の動作および作用について図3、及び図4に基づいて説明する。図3は錘13と各圧電体17、18の位置及び作動状態を示す図であり、図4は図3の各状態に対応する錘13の位置と各圧電体17、18への電圧の印加状態との関係を示した図である。なお、図3において塗りつぶされている圧電体17、18は、電圧が印加されていることを示している。
【0023】
本発明においては、回転駆動装置10の回転軸12を所定の方向に回転駆動させるために、初期に基台11上に設けられた2つの圧電体17、18のうちいずれかの圧電体に電圧を印加し変形させておく。例えば、図1において右回りに回転駆動させる場合には、はじめに圧電体17に電圧を印加し先端を変形させ変形した圧電体17の先端によって揺動台16のP3位置を持ち上げておく。これにより錘13は図3の(1)に示す位置に移動し揺動台16のP1位置に錘13が配置され安定して静止している。このとき圧電体17には図4(1)のa部に示すように電圧が印加されている。
【0024】
次に、図3の(2)に示すように回転軸12が図1において右回りの回転駆動を開始するため圧電体17の電圧を解除し、圧電体18に電圧を印加する(図4のb部参照)。これにより揺動台16のP4位置が持ち上げられる。そして図3の(1)に示す錘13のバランスは崩れ、錘13は重力方向下方である揺動台16のP2の方向に向って落下し、これによって回転軸12は右回りに回転を開始する。そして錘13は安定状態に移行するため、図3の(2)の状態に近づいていく。
【0025】
このとき錘13には回転速度に応じた遠心力(慣性力)が右回転方向に付与される。そして錘13が、錘13の落下が終了し上昇に転じるP2位置に到達したか、または所定量だけ超えたことを位置検出装置19が検出すると制御装置20は圧電体18の電圧印加を解除し揺動台16の平面が出力軸21と直交する方向、つまり揺動台16を水平状態にする。これによって錘13が回転軸12を回転中心として水平面上を慣性力によって回転し、やがて図3の(3)に示すように揺動台16のP3位置を通過する。そして、位置検出装置19によって錘13が揺動台16のP3位置を所定量だけ超えて通過したことが検出されると制御装置20は圧電体17に電圧を印加(図4のc部参照)し、揺動台16のP3位置を持ち上げる。これにより錘13の重力方向下方への落下の力が加わり回転軸12の回転速度が増し回転トルクが増加する。このように本実施形態においては、錘13の慣性力を利用して錘13を回転軸12周りに慣性力のみで回転させる区間を有し、その回転角度は略90度である。
【0026】
なお、上記において、P2位置、及びP3位置を越える所定量とは、揺動台16を傾けることによって、錘13が回転中の回転軸12に逆向きの回転力を与えず、さらには回転軸12の回転が加速できるようになる量のことをいう。よってP2位置、及びP3位置を越える所定量は錘13の重さ、回転軸12の回転速度、圧電体17、18によって変位される揺動台16の変位量(傾き量)等によって異なり、実験等によって求められ決定される。以降、P1、P2、P3、P4位置を越える所定量とは上記所定量のことをいう。
【0027】
次に、位置検出装置19によって錘13が揺動台16のP4位置を所定量だけ通過したことが検出されると制御装置20は図3(5)に示すように圧電体17の電圧を解除し圧電体18に電圧を印加する(図4のd部参照)。これによって錘13は重力方向下方であるP2位置に向かって落下し、これによって速度が増し回転トルクがさらに増加する。
【0028】
さらに、位置検出装置19によって錘13が図3(5)に示すように揺動台16のP2位置の所定量だけ手前、またはP2位置を所定量だけ通過したことが検出されると制御装置20は図3(6)に示すように、圧電体18の電圧を解除し回転軸12を垂直状態、即ち揺動台16の平面、及び錘13の連結部材25を水平状態にする。これによって回転軸12は錘13の慣性力によって回転し錘13が揺動台16のP3位置を通過する。そして、位置検出装置19によって錘13が揺動台16のP3位置を所定量だけ通過したことが検出されると図3(1)および(4)と同様に、圧電体17に電圧を印加する(図3では図示せず、図4のe部参照)。これによって錘13の重力方向下方であるP1方向への落下の力がさらに加わり、速度が増し回転トルクが増加する。
【0029】
このように位置検出装置19によって錘13の位置を検出しながら各圧電体17、18の駆動制御を順次行なっていくことにより、回転軸12の回転速度がさらに増し回転トルクが増加していく。そして回転軸12の回転速度がさらに増せば、超音波領域の振動での駆動も可能である各圧電体17、18の駆動速度をさらに上げていき、回転速度が上がった錘13はフライホイールに類似した機能で慣性エネルギを蓄積することにより所望の回転速度を容易に得たり、トルク変動に対しても良好に対応できる。
【0030】
次に図1において左回りに回転駆動させる場合について図3(7)〜(12)、および図4(2)に基づき説明する。左回りに回転駆動させる場合は、はじめに圧電体18に電圧を印加し変形させ先端部で揺動台16のP4位置を持ち上げておく。これにより錘13は図3の(7)の状態で安定して静止している。このとき図4にはj部に示すように圧電体18に電圧が印加されていることが示されている。
【0031】
次に、回転軸12が回転駆動を開始するため圧電体18の電圧を解除し、圧電体17に電圧を印加する(図4のk部参照)。これにより揺動台16のP3位置が持ち上げられる。そして錘13のバランスが崩れ、錘13が重力方向下方である揺動台16のP1方向に向って落下して回転軸12は左回りに回転を開始する。そして安定状態である、図3の(8)の状態に近づいていく。このとき錘13には回転速度に応じた慣性力が左回転方向に付与される。
【0032】
次に、錘13が、錘13の落下が終了し上昇に転じるP1位置を所定量だけ超えたことを位置検出装置19が検出すると制御装置20は図3の(9)に示すように圧電体17の電圧印加を解除し揺動台16の平面が出力軸21と直交する方向、つまり揺動台16を水平状態にする。これによって錘13が回転軸12を回転中心として水平面上を慣性力によって回転し、やがて揺動台16のP4位置を通過する。
【0033】
そして、位置検出装置19によって錘13が揺動台16のP4位置を所定量だけ通過したことが検出されると制御装置20は図3の(10)に示すように圧電体18に電圧を印加(図4のm部参照)し、揺動台16のP4位置を持ち上げる。これにより錘13の重力方向下方であるP2方向への落下の力が加わり回転軸12の回転速度が増し回転トルクが増加する。
【0034】
次に、位置検出装置19によって錘13が揺動台16のP3位置を所定量だけ通過したことが検出されると制御装置20は図3(11)に示すように圧電体18に電圧を解除し、圧電体17に電圧を印加する(図4のn部参照)。これによって錘13の重力方向下方であるP1方向への落下の力がさらに加わり、速度が増し回転トルクがさらに増加する。
【0035】
さらに、位置検出装置19によって錘13が揺動台16のP1位置を所定量だけ通過したことが検出されると制御装置20は、図3(9)に示す圧電体17、18の状態と同様に、圧電体17の電圧の印加を解除し回転軸12を垂直状態、即ち揺動台16の平面、及び錘13の連結部材25を水平状態にする。これによって回転軸12は錘13の慣性力によって回転し錘13が揺動台16のP4位置を通過する(図3(12))。
【0036】
そして位置検出装置19によって錘13が揺動台16のP4位置を所定量だけ通過したことが検出されると圧電体18に電圧を印加する(図4のp部参照)。これによって回転軸12には錘13の重力方向下方であるP2方向への落下の力がさらに加わり、速度が増し回転トルクが増加する。このように回転軸12の左回転においても上記と同様に制御することによって回転駆動できる。
【0037】
上述の説明から明らかなように、本実施形態において、回転駆動装置10は、回転軸12の半径方向に離間して錘13を設け、回転軸12を回転可能に支承する揺動台16を揺動可能に設け、変位手段である圧電体17、18を用い錘13の回転位置に応じて揺動台16を異なる2方向に順次傾斜させて錘13が連続的に回転するように制御する。このように異なる2方向に揺動台16を傾斜させて錘13を回転軸12回りに回転制御するという簡素な構造及び方法により回転方向、回転速度、および出力されるトルクの制御性が良好で耐久性に優れた回転駆動装置を提供することができる。即ち本発明に係る回転駆動装置10は重力を利用し錘13が落下する力によって回転トルクを発生させるため摩擦力によるトルク伝達を行なわないので耐久性の向上が期待できる。また異なる2方向に揺動台16を傾斜させて錘13を回転軸12回りに回転制御するので、回転方向の確実な制御が実施できる。つまり待機時に一方向の傾斜状態にし、錘13の安定状態を作っておき、回転開始時に、一方向の傾斜を解除した後、他方向の傾斜状態とすれば初期の錘13の安定状態が崩れ錘13は所定の方向である例えば右方向に回転を開始する。また反対に待機時に他方向の傾斜状態にし、錘13の安定状態を作っておき、回転開始時に他方向の傾斜を解除した後、一方向の傾斜状態とすれば初期の錘13の安定状態が崩れ錘13は上述した所定の方向と逆の方向である例えば左方向に回転を開始する。このように簡素な方法によって確実に回転軸12の回転方向を制御することができる。
【0038】
また、本実施形態においては、揺動台16を傾斜させるための変位手段として幅広い振動範囲で駆動可能な2つの圧電体17、18を使用し、回転軸12を中心とした圧電体17、18の配置角度には90度の位相差がある。これにより圧電体17、18によって低振動域から超音波領域までの広い範囲で錘13の傾斜状態が得られるので回転駆動装置は低速回転から高速回転まで駆動が可能となる。また各圧電体17、18を90度の位相差で配置することにより各圧電体17、18に持ち上げられた錘13の位置エネルギを効率よく適切に利用することができ回転軸12の良好な回転作動を得ることができる。
【0039】
なお、本実施形態においては、変位手段である圧電体17、18を2つ用い、回転軸12を中心として90度の位相差で配置した。しかし、これに限らず、圧電体を3つ、もしくは4つ設け、回転軸12を中心としたそれぞれの位相差が90度毎になるようP1〜P4位置に配置してもよい。これにより圧電体17、18が2つのときには圧電体17、18を2つとも作動させず、錘13を慣性力のみで回転させる範囲が略90度分であったものが、圧電体を3つ、もしくは4つにした場合には、錘13を慣性力のみで回転させる範囲は発生せず、効果的に回転駆動装置10の回転軸12を回転駆動させることができる。
【0040】
また、本実施形態においては圧電体17、18に電圧が印加されて作動すると、圧電体17、18は変形し揺動台16の外周縁を上方に押し上げるよう構成されている。しかしこれに限らず、圧電体17、18と揺動台16とを連結し、圧電体17、18に電圧が印加されると、圧電体17、18が上方、および下方に屈曲し揺動台16の外周縁を上方に押し上げるとともに外周縁を下方に引き下げるようにしてもよい。これにより1つの圧電体でより広い範囲の変位幅をカバーすることができ効率的である。
【0041】
また、本実施形態においては圧電体17、18を回転軸12を中心として90度の位相差で配置した。しかしこれに限らず、該位相差は回転軸12の回転駆動を開始するときに重力によって錘13がスムーズに回転を開始することができる範囲であればよい。位相差の範囲は例えば45度〜135度であり、これによっても、相応の効果が期待できる。なお、45度〜135度を超える範囲であっても、回転軸12の回転駆動がスムーズに開始できればもちろん適用してもよい。
【0042】
また、本実施形態においては錘13を1つだけ設けたがこれに限らず、錘を2個設けてもよい。ただしこのとき、各錘同士の回転軸12を中心とした位相差は45度を越えない範囲にあることが望ましい。このように各錘が配置されることにより回転軸12を中心として90度の位相差で配置された圧電体17、18が順次作動すると効果的に各錘のバランスが崩れ各錘は重力方向下方に向って落下し回転軸12に回転駆動力を付与することができる。このように構成しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態においては、圧電体17、18への電圧の印加タイミングを示す図4のグラフは、あくまで一例を示したものであり、各種条件によって電圧が印加されるタイミングは異なるものであり、図4に示すものに限らない。
【0044】
さらに、変位手段として圧電体の他に、電流を流すことで歪みが生じる磁歪体や、電圧を印加すると内部電子が移動して歪みが発生する高分子樹脂などを用いることができる。本発明は、その他様々な応用が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10・・・回転駆動装置、11・・・基台、12・・・回転軸、13・・・錘、16・・・揺動台、17、18・・・変位手段(圧電体)、19・・・位置検出装置、20・・・(制御手段)制御装置、21・・・出力軸、25・・・連結部材。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
該基台に揺動可能に支持された揺動台と、
前記基台に回転可能に支承された出力軸と、
前記揺動台を異なる少なくとも2方向に傾斜させる変位手段と、
前記揺動台の平面と軸線が直交し該揺動台に回転可能に支承されるとともに前記出力軸に連結される回転軸と、
前記回転軸の半径方向に離間して設けられ前記回転軸と連結部材によって連結された錘と、
該錘の回転位置を検出する位置検出装置と、
前記錘の回転位置に応じて前記変位手段を制御し前記揺動台の傾きを変える制御手段と、
を備えたことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記変位手段は圧電体であり、少なくとも2つの前記圧電体が前記基台上で前記回転軸の揺動の支点を中心とした円周面上に90度の位相差をもって配置されていることを特徴とする回転駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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