説明

回転駆動部材、これを用いた駆動伝達機構および定着装置

【課題】定着装置を構成する駆動伝達体と被駆動体とを接着する接着剤に生じる気泡の影響で両者が剥がれてしまうことを少なくする。
【解決手段】駆動伝達体10と環状被駆動体14とを組み立てる方法は、(a)冶具挿入工程、(b)接着剤塗布工程、(c)挿入工程、(d)接着剤潰し工程、(e)乾燥工程の手順で行う。特に、(d)接着剤潰し工程では、接合部位7を環状被駆動体14の径方向外側から押し付け、接着剤3中に発生する気泡Bを外部に排出する。接着剤3中の気泡Bに起因する接着強度の低下を無くして、接着剤3の接着強度が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動部材、これを用いた駆動伝達機構および定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、画像を記録用紙に定着する定着工程が行われる。特許文献1には駆動伝達部材となるギア部が円筒状の定着ベルト部材に配設された定着ベルトが開示されている。また、特許文献2には、円筒体(感光体ドラム)の両端にフランジ部(円板体)を接着する際の工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−227106号公報
【特許文献2】特開平7−333866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、定着装置を構成する駆動伝達体と被駆動体とを接着する場合に、両者が剥がれ難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の回転駆動部材は、回転駆動力が伝達される駆動伝達体と環状被駆動体とが接合される部位に接着剤を塗布し、当該部位が合わさるように前記被駆動体に前記駆動伝達体を挿入した状態で、前記部位において前記環状被駆動体を前記駆動伝達体に押し付けて前記接着剤を潰し、乾燥させて成ることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の回転駆動部材は、上記記載の回転駆動部材において、軸線が共通の2つの冶具に前記駆動伝達体および前記環状被駆動体をそれぞれ装着し、各々の前記冶具を共通の軸線上で近づけて前記環状被駆動体に前記駆動伝達体を挿入して成ることが好ましい。
【0007】
請求項3に記載の回転駆動部材は、上記記載の回転駆動部材において、前記環状被駆動体における前記部位の外周面の1または複数の箇所で当該環状被駆動体の外周面を前記駆動伝達体に押し付ける押付部材を、当該外周面に沿って移動させることで、前記部位における前記接着剤を潰して成ることが好ましい。
【0008】
請求項4に記載の回転駆動部材は、上記記載の回転駆動部材において、前記環状被駆動体における前記部位の外周面に、気体が供給されることで内径が縮む中空の環状体を位置させ、当該環状体の縮径する内径が前記部位を径方向外側から押し付けることで、前記部位における前記接着剤を潰して成ることが好ましい。
【0009】
請求項5に記載の回転駆動部材は、上記記載の回転駆動部材において、前記環状被駆動体における前記部位の外周面に、当該環状被駆動体の外径と等しいまたは大きい内径の円弧状部材を対向配置し、各円弧状部材を径方向外側から押し付けることで、前記部位における前記接着剤を潰して成ることが好ましい。
【0010】
請求項6に記載の駆動伝達機構は、上記記載の回転駆動部材と、駆動源からの駆動力に応じた回転駆動力を前記駆動伝達体及び前記環状被駆動体に伝達することを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の定着装置は、上記記載の回転駆動部材と、前記回転駆動部材の環状被駆動体を加熱する加熱手段と、前記環状被駆動体に向かい合う位置に配置された対向部材と、前記環状被駆動体の内側に配置されて前記対向部材との間で前記環状被駆動体を加圧する円弧部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、接着剤を潰す工程を行わないで製造した回転駆動部材に比べ、駆動伝達体と環状被駆動体とを剥がれ難くすることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、冶具を用いない場合に比べて、環状被駆動体に対する駆動伝達体の挿入を容易にして作業効率を高めることができる。
【0014】
請求項3乃至5に記載の発明によれば、接着剤中に気泡が生じていた場合でも、接着剤中に発生する気泡を外部に放出することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、接着剤を潰す工程を行わないで製造した回転駆動部材に比べ、駆動伝達体と環状被駆動体とを剥がれ難くした回転駆動部材を用いた駆動伝達機構を構築することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明によれば、接着剤を潰す工程を行わないで製造した回転駆動部材に比べ、駆動伝達体と環状被駆動体とを剥がれ難くした定着ベルトを用いた定着装置を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用される駆動処理装置、回転駆動部材および駆動伝達体を説明する図である。
【図2】駆動伝達体と環状被駆動体との接合状態を示す図である。
【図3】本発明による回転駆動部材を組み立てる方法を示す図である。
【図4】接着剤潰し工程の具体例を示す図である。
【図5】接着剤潰し工程において、接着剤中の気泡を逃がす状態を模式的に示す図である。
【図6】接着剤潰し工程の他の具体例を示す図である。
【図7】接着剤潰し工程の別の具体例を示す図である。
【図8】本発明が適用される画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図9】画像形成装置で用いられる定着装置を示す図である。
【図10】定着装置の詳細を示す斜視図である。
【図11】図10中の矢視XI方向から見た斜視図である。
【図12】図10中の矢視XII方向から見た斜視図である。
【図13】駆動伝達体としての駆動伝達ギアを示す図である。
【図14】駆動伝達ギアを示す図である。
【図15】駆動伝達ギアを示す図である。
【図16】駆動伝達ギアの製造方法の一例を示す説明図である。
【図17】変形例による駆動伝達ギアを示す図である。
【図18】駆動伝達ギアとベルト本体との接合部の状態を示す図である。
【図19】駆動伝達ギアとベルト本体との接合部の剥がれトルク試験結果を示す説明図である。
【図20】実施例及び比較例1〜3で用いられる駆動伝達ギアを夫々模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施の形態の概要>
図1(a)は本発明が適用される駆動処理装置の実施の形態の概要を示す説明図である。(b)は(a)の駆動処理装置で用いられる駆動伝達部品の一例を示す説明図、(c)は(b)の駆動伝達部品の斜視説明図である。
同図において、駆動処理装置15は、モータ等の駆動源11からの駆動力が駆動伝達機構12を介して伝達される回転駆動部材13を処理要素に含み、処理要素による処理を駆動するものである。
ここで、駆動処理装置とは例えば画像形成装置や記録材処理装置などを指す。
また、回転駆動部材13としては、環状被駆動体14を有し、駆動伝達機構12の一部品である駆動伝達体10(図1(b)・(c)参照)を通じて環状被駆動体14に駆動力が伝達されるものであればよい。つまり、回転駆動部材13は、駆動伝達体10と、この駆動伝達体10の接合要素2(図1(b)・(c)参照)に接着剤3を介して接合される環状被駆動体14とを備えたものであればよい。回転駆動部材13にあっては、環状被駆動体14が駆動伝達体10よりも高い弾性率を有する材質で形成されており、潰れやすくなっている。
【0019】
例えば、電子写真方式の画像形成装置を例に挙げると、回転駆動部材13が定着ベルトであれば定着装置を指し、これ以外の例としては、環状被駆動体14が環状中間転写ベルトであればこれを含む中間転写装置を指すなど適宜選定してもよい。
さらに、定着装置を例に挙げてより具体的に示すと、回転駆動部材13が未定着トナー像を加熱定着する定着ベルトとする態様がある。この構成は、加熱手段にて加熱される環状被駆動体14となるベルト本体と、定着ベルトに対向して接触転動する加圧ロールと、ベルト本体の径方向内側に配置されて加圧ロールとの間でベルト本体を加圧する円弧部材と、を備えたものとなる。
【0020】
本例では、接着剤3としては、環状被駆動体14(定着ベルト)の加熱範囲で接着性能を維持する耐熱性を備えたものが必要である。そして、この種の定着ベルト方式では、円弧部材と加圧ロールとの間に挟持されているベルト本体の移動性を良好に保つという観点から、ベルト本体の裏面に潤滑剤が塗布される潤滑剤塗布具を具備することがあるが、本態様では、接着剤3として潤滑剤が洩れない耐潤滑性を具備するものが好ましい。
また、駆動伝達機構12としては、駆動伝達体10(図1(b)・(c)参照)と、この駆動伝達体10の駆動伝達要素1に係わりあって駆動伝達する他の駆動伝達体(ギア、ベルト等)を少なくとも含み、駆動源11からの駆動力を環状被駆動体14に伝達するものであれば、他の伝達機構であってもよい。
【0021】
次に、本実施の形態で用いられる駆動伝達体10について説明する。
図1(b)・(c)において、駆動伝達体10は、回転駆動伝達可能な駆動伝達要素1と、この駆動伝達要素1と同軸に一体的に設けられ且つ接着剤3を介して環状被駆動体14に接合される接合要素2とを備え、前記接合要素2は、駆動伝達要素1の回転中心方向に延び且つ周面に接着剤3が塗布可能で、前記駆動伝達要素1よりも小径な円筒部4を有する。この円筒部4の周面には、円筒部4の周方向に交差する方向に沿って延び且つ円筒部4の周方向に並列配置される複数の並列溝5と、円筒部4の周方向に沿って延びる少なくとも一つの周方向溝6と、が形成される。
【0022】
このような技術的手段において、駆動伝達要素1としてはギア部が代表的な態様であるが、ギア部に限られず、プーリ部など駆動を伝達する要素であればよい。また、接合要素2としては、環状被駆動体14と接合が可能な円筒部4を有するものであればよく、接合要素2の外径寸法については通常は駆動伝達要素1の外径寸法より小さいことが多いが、等しいまたは大きい大きさでもよい。
【0023】
さらに、並列溝5は円筒部4の周方向に交差する方向に延びていればよく、円筒部4の中心方向である必要はない。また、この並列溝5は円筒部4の端部に面して開口する態様に限らず、円筒部4の端部に並列溝5を塞ぐ閉塞部を設けた態様をも含む。また、並列溝5の形成方向は通常同一方向であることが多いが、異なる方向を含んでいてもよい。
【0024】
さらにまた、周方向溝6は円筒部4の円周方向に沿って延びるものであれば、全周に亘って延びる態様に限られず、一部がせき止められる態様など適宜選定して差し支えない。また、周方向溝6は一本あればよいが、複数でも差し支えない。さらに、周方向溝6の配設位置は円筒部4の周面の任意の位置で差し支えなく、複数の並列溝5とは交差せずに周方向溝6を設けてもよいし、複数の並列溝5と交差した状態で設けるようにしてもよい。
【0025】
ここで、並列溝5、周方向溝6による接着剤3の作用については、以下のように推測される。
図2(a)は図1(b)に示す駆動伝達部品と環状被駆動体との接合部を模式的に示す説明図、(b)は(a)中の矢視IIb方向から見た側面図である。
図2に示すように、並列溝5周りに接着剤3を塗布すると、並列溝5周りの接着剤3のうち並列溝5に面した厚肉部が並列溝5の底壁及び両側壁に充填されて並列溝5に抱き込み固着される。このため、この並列溝5周りの接着剤3は環状被駆動体14と駆動伝達体10との間の回転方向についての接合強度が高められる。このため、駆動伝達体10から環状被駆動体14に回転力F2が伝達される際に、駆動伝達体10と環状被駆動体14との間の接着剤3が剥がれる可能性は少ない。
【0026】
一方、周方向溝6周りに接着剤3を塗布すると、周方向溝6周りの接着剤3は周方向溝6に抱き込み固着されることから、周方向溝6周りの接着剤3は環状被駆動体14と駆動伝達体10との間の離脱方向についての接合強度を高められる。このため、仮に、環状被駆動体14に対し離脱方向に向かう外力F1が作用したとしても、駆動伝達体10と環状被駆動体14との間の接着剤3が剥がれる可能性は少ない。
【0027】
次に、駆動伝達体10の好ましい態様や代表的態様について説明する。
先ず、駆動伝達体10の接合要素2の好ましい態様としては、円筒部4周面のうち駆動伝達要素1側に周方向溝6を、この周方向溝6に対し駆動伝達要素1とは反対側に複数の並列溝5を配置するものが挙げられる。本態様によれば、並列溝5周りの接着剤3と、周方向溝6周りの接着剤3とを分離して設けるため、例えば並列溝5周りの接着剤3の一部が剥がれようとしても、周方向溝6周りの接着剤3に影響し難い点で好ましい。
【0028】
また、接合要素2の好ましい態様としては、円筒部4周面に並列溝5と周方向溝6とを不連続に形成したものが挙げられる。本態様によれば、並列溝5と周方向溝6とを不連続にすることで、周方向溝6周りの接着剤3の一部が並列溝5周りの接着剤3側に流入することはない点で好ましい。
【0029】
さらに、接合要素2の好ましい態様としては、円筒部4周面が突出方向に向かって窄まる傾斜勾配を有するものが挙げられる。本態様においては、接合要素2に対して環状被駆動体14を嵌め込み易い点で好ましく、樹脂を型成型する際の容易性という観点から、傾斜勾配としては0.5〜3°程度であればよい。
【0030】
また、複数の並列溝5の代表的態様としては、円筒部4の中心方向に沿って延び、周方向溝6と直交配置される態様が挙げられる。一方、周方向溝6の代表的態様としては、円筒部4の周方向に沿って連続する凹溝が挙げられる。
さらに、周方向溝6の好ましい態様としては、周方向溝6に対する接着剤3の保持強度を高めるという観点からすれば、周方向溝6の深さ寸法が並列溝5の深さ寸法よりも深いものが挙げられる。
【0031】
さらにまた、駆動伝達体10、環状被駆動体14が合成樹脂製である場合の好ましい態様としては、合成樹脂製の環状被駆動体14と弾性接着剤3を介して接合される合成樹脂製の接合要素2を有するものが挙げられる。本態様によれば、弾性接着剤3は合成樹脂間を弾性を持って接合し、接着剤層に対して剥がれ力が作用しても、弾性にて吸収する点で好ましい。
【0032】
ここで、回転駆動部材13の組立方法について、図3乃至図7を参照しつつ説明する。
図3は組立方法の概要を示す模式図であり、図4は接着剤潰し工程の具体例を示す図であり、図5は、接着剤潰し工程において接着剤中の気泡を逃がす状態を模式的に示す図であり、図6および図7は、接着剤潰し工程の別の具体例を示す図である。
この組立方法は、(a)冶具挿入工程、(b)接着剤塗布工程、(c)挿入工程、(d)接着剤潰し工程、(e)乾燥工程からなる。
【0033】
組立方法を説明する前に、この組立方法に使用される冶具の構成について説明する。図3に示すように、冶具201は、中心軸となる軸体202と、この軸体202の軸線方向に離間して設けられた円板体203,203とを具備する。この円板体203の外径寸法φ1については通常は環状被駆動体14の内径寸法φ2より小さいことが多いが、等しいまたは大きい大きさでもよい。また、冶具201は図示しない貴台に下側が固定される。
【0034】
冶具205は、軸体202が挿入される貫通孔206と、この貫通孔206の軸線を中心線として大径部207と小径部208とを具備する。小径部208の外径寸法φ3については通常は駆動伝達体10の内径寸法φ4より小さいことが多いが、等しいまたは大きい大きさでもよい。
【0035】
(a)冶具挿入工程においては、図3中(a)に示すように、冶具201を環状被駆動体14に挿入する。この際、円板体203の外径寸法φ1と環状被駆動体14の内径寸法φ2との関係から、軸体202の軸線が環状被駆動体14の軸線に一致する。
一方、冶具205を、小径部208と大径部207との段差に駆動伝達体10が当たるまで挿入する。この際、小径部208の外径寸法φ3と駆動伝達体10の内径寸法φ4との関係から、貫通孔206の軸線が駆動伝達体10の軸線に一致する。このように、冶具201,205を環状被駆動体14,駆動伝達体10に挿入することにより、冶具201,205の軸線に環状被駆動体14,駆動伝達体10の軸線を併せて、所謂芯あわせを行う。
【0036】
(b)接着剤塗布工程においては、接着剤3を冶具205が挿入された駆動伝達体10の円筒部4に塗布する。この際、冶具205を回転させながら接着剤3を塗布することで、円筒部4の全周に接着剤3を行き渡らせる。
【0037】
(c)挿入工程においては、冶具201の軸体202に冶具205の貫通孔206を挿入する。これにより、環状被駆動体14の一側縁部に駆動伝達体10の円筒部4が挿入され、この円筒部4と環状被駆動体14とが合わさる環状の部分が接合部位7となり、各部材間には接着剤3が介在する。冶具201,205を使うことで、冶具を使わない場合に比べて挿入動作が容易になる。
なお、説明の便宜上、以下の説明において、冶具201,205によって駆動伝達体10に環状被駆動体14が仮接合された回転駆動部材13を未完成製品13Aという。
【0038】
(d)接着剤潰し工程においては、接合部位7を環状被駆動体14の径方向外側から押し付け、接着剤3中に発生する気泡Bを外部に排出する。
【0039】
<加圧装置>
接着剤潰し工程に用いられる具体的な装置について説明する。図4(a)は押付動作を行う加圧装置を示す斜視図、(b)は部分断面図である。
加圧装置300は、中央に軸体202が挿入される貫通孔302を有して冶具205の径寸法よりも大きい長さの貴台301に対し、その両側には蝶番303を介して脚部304,304が設けられ、この各脚部304の先端には押付手段となるローラ305が回転可能に支持される。ローラ304の厚さ寸法dは、接合部位7の幅寸法Wよりも小さくなっている(図5参照)。
各脚部304は貴台301との間には、コイルバネ306が斜めに架設され、両脚部304が近づく方向、つまり内側に向けて押付力(例えば、0.01N/mm2以上1N/mm2以下)を発生させる。
【0040】
このように構成される加圧装置300は、前の挿入工程で形成された未完成製品13Aに装着する。この際、図4(a)に示すように、コイルバネ306の付勢力に抗して、各脚部304を開いて軸体202を貫通孔302に挿入すると共に、各ローラ305が未完成製品13Aの接合部位7に当たる位置で、当該加圧装置300の高さ方向が決められる。
この状態で、各ローラ305を環状被駆動体14の径方向外側から加圧を加えると、弾性材料から成る環状被駆動体14が湾曲して接合部位7の位置にある接着剤3を潰す形となる。
【0041】
さらに、加圧装置300の貴台301に未完成製品13aの軸体202が支持されているため、この軸体202を回転中心として貴台301を矢視R方向に回転させることにより、接着剤3を潰す動作を円筒部4の全周に亘って行う。つまり、各ローラ305は、接合部位7の周面に沿って自転しつつ公転する動きとなる。
【0042】
次に、ローラ305が接合部位7を径方向外側から加圧することによって行われる作用を説明する。
図5(a)はローラ305が環状被駆動体14に当たる前の状態を示し、(b)はローラ305が環状被駆動体14を湾曲させて接着剤3を潰した状態を示す図である。
同図に示すように、先の挿入工程で、環状被駆動体14の一側縁部に駆動伝達体10の円筒部4を挿入して、接着剤3が介在される接合部位7が形成される。しかし、この接着剤3には気泡Bが発生することがある。
【0043】
そこで、加圧装置300のローラ305を接合部位7に径方向外側から押し付けて加圧することにより、図5(b)に示すように、環状被駆動体14が湾曲し、さらに接着剤3が潰れて、気泡Bが外部に押し出されることになる。この状態を保ちつつ、各ローラ305は、軸体202を中心として径方向に対向する位置で、接合部位7の周面に沿って自転しつつ公転するから、接合部位7の全体において気泡Bの排除が行われる。
【0044】
(e)乾燥工程においては、図示は省略するが、所定の乾燥条件(例えば、温度150℃、30分)で乾燥させることで、環状被駆動体14の一側縁部と駆動伝達体10の円筒部4とを気泡を排除した接着剤3で接着固定する。
このように、本発明による組立方法では、環状被駆動体14の一側縁部と駆動伝達体10の円筒部4とを接着する接着剤3から気泡を排除する接着剤潰れ工程を採用しているから、接着剤3中の気泡Bに起因する接着強度の低下を無くして、接着剤3の接着強度が高められる。
【0045】
<他の加圧装置>
次に、(d)接着剤潰し工程に用いられる加圧装置について、他の具体例を示す。
図6に示す加圧装置310は、空気圧によって接合部位7を径方向外側から加圧するものである。
加圧装置310は、接合部位7を径方向外側から押し付けるゴム製の中空体となる環状体311を有する。この環状体311内に供給される空気は、空気ポンプ312から供給される空気を切替弁313で制御することによって調整される。切替弁313は3ポート2位置のスプール弁で構成され、位置(イ)の場合には、空気ポンプ312から環状体311に空気を供給し、位置(ロ)の場合には、環状体311内の空気をタンク314に排出する。
【0046】
このように構成される加圧装置310であっても、先の加圧装置300と同様に、接合部位7における接着剤3中に発生した気泡Bを排除する。
なお、環状体311は、空気が供給されることで、径方向内側が膨らむ形状とするため、当該環状体311の径方向内側を外側に比べて柔らかくなるように、その厚さを薄く形成してもよく、要は、接合部位7に対して押付力を発生させる形状であればよい。
【0047】
図7に示す加圧装置320は、油圧によって接合部位7を径方向の対向する位置から円弧状の部材で加圧するものである。
加圧装置320は、先端に円弧状の円弧部322を有する一対の油圧アクチュエータ321,321を有し、各油圧アクチュエータ321に供給される油圧は、油圧ポンプ323から供給される油圧を切替弁324で制御することによって調整される。切替弁324は4ポート2位置で、位置(イ)・(ロ)で切り換えられるスプール弁で構成される。
【0048】
切替弁324において位置(イ)の場合には、油圧ポンプ323から油圧アクチュエータ321のボトム側油室321Aに油を供給し、ロッド側油室321B内の油をタンク325に絞り弁326を介して排除する。これにより、円弧部322を油圧アクチュエータ321から押し出す。
一方、切替弁324において位置(ロ)の場合には、油圧ポンプ323から油圧アクチュエータ321のロッド側油室321Bに油を供給し、ボトム側油室321A内の油をタンク325に絞り弁326を介して排除する。これにより、円弧部322を油圧アクチュエータ321に引き戻す。
なお、円弧部322は、外側をなす外形部323Aと、この円弧部323Aの内側に張り付けられ、外形部323Aよりも柔らかい材料で形成あれたクッション部323Bと、を有する。
【0049】
このように構成される加圧装置320であっても、先の加圧装置300と同様に、接合部位7における接着剤3中に発生した気泡Bを円弧状の円弧部322を径方向外側から同時に押し付けるることで、接着剤3中に発生する気泡Bを排除する。
【0050】
<加圧装置の変形例>
前記加圧装置300では、ローラ305を対向する位置に設ける場合を例示したが、1個或いは3個以上のローラを接合部位7の外周部に配置して、押し付けた状態で回転させる構成であってもよい。
また、加圧装置300は機械的に加圧する構成、加圧装置310は空気を用いて加圧する構成、加圧装置320は油圧を用いた加圧する構成を記載したが、加圧装置の構成はこれに限らず、接合部位7を径方向外側から押し付ける構成の装置であれば、他の構成であってもよい。さらに、押し付ける部位の形状もローラ305、環状体311、円弧状の円弧部322に限らず、他の形状であってもよい。
さらに、本例では、駆動伝達体10(円筒部4)の外側とその外側に挿入される環状被駆動体14の部分を接着剤3によって接合する接合部位7としたが、円筒部4の内側とその内側に挿入される環状被駆動体14の部分を接着剤3によって接合する接合部位とした場合にも適用可能である。つまり、加圧装置は、環状被駆動体の内側から外側の円筒部に向けて押し付ける構成とすればよい。
【0051】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
<実施形態>
<画像形成装置の全体構成>
図8は実施の形態1に係る駆動処理装置としての画像形成装置の全体構成を示す。
同図において、画像形成装置は、複数の色成分(例えばイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))トナー像を形成する複数の画像形成部20(具体的には20Y、20M、20C、20K)を有し、各画像形成部20に対向した部位には所定方向に循環する中間転写ベルト21を配設される。この中間転写ベルト21の下部には記録材供給装置22が配設され、この記録材供給装置22から供給された記録材Sを搬送経路23に沿って搬送する。この搬送経路23のうち中間転写ベルト21からの画像転写部位には一括転写装置(二次転写装置)24が配設され、一括転写装置24の下流には、記録材Sに転写された各色成分トナー像が加熱定着される定着装置25が配設される。搬送経路23は搬送ローラ26によって経路が形成され、一括転写装置24で一括転写装置24を通過した記録材Sは、搬送ベルト27によって定着装置25に向けて搬送される。
【0052】
ここで、各画像形成部20は、いずれも例えばドラム状の感光体30と、この感光体30を帯電する帯電装置31と、この帯電装置31にて帯電された感光体30に静電潜像を書込むレーザ走査装置などの露光装置32と、この露光装置32にて感光体30に形成された静電潜像を夫々対応する色成分トナーにて可視像化する現像装置33と、感光体30上の残留トナーを清掃する清掃装置34とを備えている。
【0053】
また、中間転写ベルト21は、複数の張架ロール41〜45に掛け渡され、例えば張架ロール41を駆動ロールとして所定方向に循環回転されている。そして、各画像形成部20の感光体30に対向する中間転写ベルト21の裏面には例えば転写ロールからなる一次転写装置46が配設されており、感光体30上の各色成分トナー像が中間転写ベルト21に静電転写される。そして、中間転写ベルト21の例えば張架ロール41に対向する部位には中間転写ベルト21上の残留トナーを清掃するベルト清掃装置47が配設される。中間転写ベルト21のうち張架ロール42に対向する部位には、色ずれ補正のための検出器48が配設されている。
【0054】
さらに、一括転写装置24は、張架ロール44に対向する中間転写ベルト21の表面に転写ロール51を配設し、例えば張架ロール44に転写バイアスを印加することで転写ロール51と張架ロール44との間に転写電界を形成し、中間転写ベルト21上の各色成分トナー像を記録材Sに一括静電転写するようになっている。
【0055】
<定着装置>
本実施の形態において、定着装置25は、図9に示すように、環状のベルト本体61と、このベルト本体61の外周面に圧接配置されてベルト本体61に追従回転し且つベルト本体61との間に定着ニップ域を形成する加圧ロール62と、前記ベルト本体61の裏面に配置されて加圧ロール62との定着ニップ域間でベルト本体61を加圧する加圧パッド63と、前記ベルト本体61を電磁誘導加熱する電磁誘導加熱器67とを備えている。ベルト本体61の定着ニップ域の出口側には、ベルト本体61に巻き付いた記録材Sを剥離する剥離部材71が設けられる。
以下に定着装置25の主要要素について詳述する。
【0056】
<ベルト本体(環状被駆動体)>
先ず、ベルト本体61は、内周面側から順に、耐熱性の高いシート状部材からなる基層61aと、この基層61a上に積層される導電層61bと、この導電層61b上に積層される弾性層61cと、この弾性層61c上に積層される表面離型層61dとを備えている。
【0057】
ここで、基層61aとしては、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂等のフレキシブルで機械的強度に優れ、耐熱性を有する材料が好適に用いられる。厚さは10〜150μmが適している。厚さが10μmより小さい場合にはベルト本体61としての強度が得られず、厚さが150μmより大きい場合には、フレキシブル性が損なわれ、また熱容量が大きくなって温度立ち上がり時間が長くなるからである。
【0058】
また、導電層61bは、電磁誘導加熱器67が誘起する磁界により誘導発熱する層(発熱層)であり、鉄、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、クロム等の金属層を1〜80μm程度の厚さで形成したものが用いられる。また、導電層61bの材質および厚さは、電磁誘導による渦電流によって充分な発熱が得られる固有抵抗値を実現するように適宜選択される。
さらに、弾性層61cは、厚さが10〜500μmであって、耐熱性、熱伝導性に優れたシリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等が用いられる。
【0059】
カラー画像を印刷する場合、特に写真画像等の印刷時には、記録材S上で大きな面積領域に亘ってベタ画像が形成されることが多い。そのため、記録材Sやトナー像の凹凸にベルト本体61の表面(表面離型層61d)が追従できない場合には、トナー像に加熱ムラが発生して、伝熱量が多い部分と少ない部分とで定着画像に光沢ムラが発生する。すなわち、伝熱量が多い部分は光沢度が高く、伝熱量が少ない部分では光沢度が低くなる。このような現象は、弾性層61cの厚さが10μmより小さい場合に生じ易い。そこで、弾性層61cの厚さは、10μm以上に設定することが好ましい。一方、弾性層61cが500μmより大きい場合には、弾性層61cの熱抵抗が大きくなり、定着装置25のクイックスタート性能が低下する。そこで、弾性層61cの厚さは、500μm以下に設定することが好ましい。
【0060】
弾性層61cのゴム硬度としては、高すぎると記録材Sやトナー像の凹凸に追従しきれず定着画像に光沢ムラが発生し易い。そこで、弾性層61cのゴム硬度としては50゜(JIS−A:JIS−K A型試験機)以下が適している。
さらに、弾性層61cの熱伝導率λに関しては、λ=6×10-4〜2×10-3[cal/cm・sec・deg]が適している。これは、熱伝導率λが6×10-4[cal/cm・sec・deg]よりも小さい場合には熱抵抗が大きく、ベルト本体61の表層(表面離型層61d)における温度上昇が遅くなり、一方、熱伝導率λが2×10-3[cal/cm・sec・deg]よりも大きい場合には、硬度が過度に高くなったり、圧縮永久歪みが悪化することになる。
また、表面離型層61dは、記録材S上に転写された未定着トナー像と直接的に接触する層であるため、離型性および耐熱性に優れた材料を使用する必要がある。したがって、表面離型層61dを構成する材料としては、例えばテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等が好適に用いられる。
【0061】
そして、表面離型層61dの厚さは、5〜50μmが好ましい。これは、表面離型層61dの厚さが5μmよりも小さい場合には、塗膜時に塗りムラが生じて離型性の悪い領域が形成されたり、耐久性が不足するといった問題が発生する。また、表面離型層61dが50μmを越える場合には、熱伝導が悪化するという問題が発生し、特に樹脂系の材質で形成された表面離型層61dでは硬度が高くなりすぎ、弾性層61cが有する機能を低下させることによる。なお、表面離型層61dにおけるトナー離型性を向上するため、表面離型層61dにトナーオフセット防止のためのオイル(離型剤)を塗布するオイル塗布機構をベルト本体61に当接させて配設することもある。
【0062】
<加圧ロール>
また、加圧ロール62は、芯材(コア)としての金属製の円筒状ロール部材62aと、円筒状ロール部材62aの表面にシリコーンゴム、発泡シリコーンゴム、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性を有する弾性層62bと、最外表面の表面離型層62cとで構成されている。
【0063】
<加圧パッド>
さらに、加圧パッド63は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性材料や、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)や液晶ポリマー(LCP)等の耐熱性樹脂等で形成されている。そして、加圧パッド63は、ベルト本体61の幅方向に対した記録材Sが通過する領域よりもやや広い領域に亘って配設されており、この加圧パッド63の長手方向の略全長に亘って加圧ロール62を加圧するように構成されている。
【0064】
また、加圧パッド63と加圧ロール62との間のベルト本体61の挟持部(定着ニップ部N)における加圧パッド63とベルト本体61との摺動性を向上するため、加圧パッド63とベルト本体61との間には、摺動性に優れ、耐摩耗性が高いポリイミドフィルムやフッ素樹脂を含浸させたガラス繊維シート等からなる摺動シート(図示せず)が配設される。さらに、ベルト本体61の内周面には潤滑剤が塗布されている。潤滑剤としては、アミノ変性シリコーンオイルやジメチルシリコーンオイル等が用いられる。これらにより、ベルト本体61と加圧パッド63との間の摩擦抵抗が小さくなり、ベルト本体61が円滑に回動させることを可能としている。
【0065】
<支持部材>
さらに、ベルト本体61内には加圧パッド63を支持する支持部材64が配設されている。
この支持部材64は加圧パッド63の長手方向に沿って延びる棒状に形成されており、加圧パッド63が抱き込み保持される保持片64aを有している。ここで、支持部材64の材料としては、加圧ロール62からの圧接力を受けたときのたわみ量が少なくなるように(例えば1mm以下)、所定以上の剛性が必要であり、鉄・SUS・アルミニウムなどの金属が好ましい。
さらにまた、本実施の形態では、ベルト本体61内には例えばFe−Ni合金などの感温磁性金属65が支持部材64に止め具66を介して固定されており、この感温磁性金属65は加圧パッド63とは反対側に位置し、ベルト本体61とは所定の空隙を有してベルト本体61の内側に対向配置されている。
【0066】
<電磁誘導加熱器>
また、ベルト本体61の外側で感温磁性金属65に対向する部位には電磁誘導加熱器67が配設されている。本例では、電磁誘導加熱器67は、ベルト本体61に対応する曲面を備えた台座68と、この台座68に支持された励磁コイル69と、この励磁コイル69に高周波電流を供給する図示外の励磁回路とを有している。
ここで、台座68は、絶縁性及び耐熱性を有する材料からなり、例えばフェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマ樹脂などを用いることが可能である。
また、励磁コイル69は、略円筒状のベルト本体61と一定の間隔で対向するように、ベルト本体61との対向面が略円筒曲面となっている。
【0067】
さらに、本例では、台座68の背面側には、高透磁率の材質(フェライトやパーマロイ等)から構成されて励磁コイル69にて生成される磁束を保持する磁束保持部材70が設けられている。
このような電磁誘導加熱器67にあっては、図示外の励磁回路から励磁コイル69に高周波電流が供給されると、励磁コイル69の周囲に磁束が生成消滅を繰り返す。高周波電流の周波数としては例えば10〜500kHz程度に設定される。そして、生成された磁束がベルト本体61の導電層61bを横切るとき、その磁界の変化を妨げる磁界を生ずるように導電層61b中に渦電流が発生し、導電層61bの表皮抵抗に比例した電力でジュール熱が発生する。
【0068】
<定着装置の駆動伝達機構>
次に、定着装置25の駆動伝達機構80の全体構成を図10乃至図12に基づいて説明する。
図10は定着装置を具体的に示す斜視図であり、図11は図10中の矢視XI方向から見た斜視図であり、図12は、図10中の矢視XII方向から見た斜視図である。
同図において、駆動伝達機構80は、ベルト本体61及び加圧ロール62を回転駆動させる回転駆動伝達機構81と、ベルト本体61に対して加圧ロール62を接離自在に移動する接離機構90とを備えている。
ここで、回転駆動伝達機構81は、図5〜図7に示すように、定着装置25の長手方向一方側に図示外の駆動モータを配設し、この駆動モータに連結される駆動ギア82を設けると共に、この駆動ギア82に加圧ロール62駆動伝達用の駆動伝達ギア83を噛み合わせることで加圧ロール62を回転駆動するようになっている。
【0069】
また、前記回転駆動伝達機構81は、前記駆動ギア82に対し複数段の駆動伝達ギアからなる駆動伝達ギア列84の一段目駆動伝達ギア84aを噛み合わせると共に、駆動伝達ギア列84の最終段駆動伝達ギア84eにはクラッチ入りギア85を噛み合わせ、このクラッチ入りギア85に対しベルト本体61の長手方向反対側には定着ベルト駆動伝達用の駆動伝達ギア87を配設する。さらに、この駆動伝達ギア87と前記クラッチ入りギア85とを連結ロッド86にて連結し、前記駆動伝達ギア87には駆動伝達ギア88を介して最終駆動伝達体となるエンドキャップ100を噛み合わせ、ベルト本体61を回転駆動させるようになっている。
なお、エンドキャップ100の詳細は後述する。
【0070】
また、接離機構90は、加圧ロール62の軸方向に沿って延びる回転自在な回転ロッド91を有し、この回転ロッド91の軸方向両側には夫々偏心カム92を固定する。一方、この偏心カム92に対応した部位には揺動自在な揺動レバー93を設け、この揺動レバー93の一部には偏心カム92のカム面に接触するロール状のカムフォロワ94を設ける。弾性バネ95による付勢力にて偏心カム92のカム面に対して前記カムフォロワ94を常時押し付け、例えば図示外の駆動モータにて回転ロッド91を回転させることで、偏心カム92のカム面を移動させ、カムフォロワ94を介して揺動レバー93の姿勢を変化させ、この揺動レバー93にてベルト本体61に対して加圧ロール62を接離させるようになっている。
さらに、図10及び図12において、回転検出器96は、ベルト本体61の回転動作を制御するものであり、本例では、エンドキャップ100の回転動作を取り出す検出用ギア97を備え、この検出用ギア97と同軸に回転する回転検出板98を取付け、この回転検出板98の回転動作を光学センサ99にて検出するようになっている。
【0071】
<エンドキャップ>
次に、図13乃至図15に基づいてエンドキャップ100の構成を説明する。
図13(a)は実施形態で用いられる駆動伝達体としての駆動伝達ギア(エンドキャップ)を示す斜視図、(b)は(a)中の矢視XIIIB方向から見た正面図、(c)は(a)中の矢視XIIIC方向から見た側面図である。図14(a)は図13(b)中の矢視XIVA−XIVA方向から見た断面図、(b)は図14(a)中のXIVB部を拡大した図である。図15(a)は図13(b)中のXVA部を拡大した図、(b)は図13(c)中の矢視XVB−XVB方向から見た断面図である。
同図において、エンドキャップ100(具体的には100a,100b)はベルト本体61の両端部に挿入装着される端部覆い蓋であり、ベルト本体61の内側に配設した支持部材64の両端部に形成された軸部(図示せず)に回転自在に嵌り合うようになっている。
このエンドキャップ100は、回転駆動伝達可能なギア部110と、このギア部110と同軸に一体的に形成されてベルト本体61の両側縁部内側に挿入して接合される接合部120とを有し、前記支持部材64の軸部(図示せず)に対して軸受部材105(図14参照)を介して回転自在に支持するようにしたものである。
【0072】
特に、本例では、外部から回転駆動力が伝達される一方のエンドキャップ100(例えば100a)は、接合部120とベルト本体61との間が接着剤(図示せず)にて挿入固定されるようになっているのに対し、外部から回転駆動力が伝達されない他方のエンドキャップ100(例えば100b)は、前述した接着剤を使用してもよい。例えばベルト本体61の内径より接合部120の外径をやや大きく形成しておき、両者を単に嵌め合わせるようにしてもよいし、あるいは、ベルト本体61の外周面から前記接合部120に対応した部位をリング状のバンドにて締め付けるようにしてもよい。
【0073】
また、エンドキャップ100aは駆動伝達のためにベルト本体61と接着されるが、エンドキャップ100bはベルト本体61の内周部を支持するにとどめることもできる。すなわち、エンドキャップ100bに設けられた接合部120とベルト本体61は接着せず、両者は滑りながら回転する(空転する)。さらに、100bの外径部は周囲に配置されたギア間の駆動を仲介する駆動伝達ギアとして採用することも可能である。
【0074】
このエンドキャップ100の材料としては、機械的特性や絶縁性に優れ、耐熱性に良いと言われるエンジニアリングプラスチックスがよい。例えばフェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PPS樹脂、LCP樹脂などを選択することができる。
【0075】
また、ベルト本体61回転時にエンドキャップ100に内部から余分な外力が加わらないようにするために、本例では、ベルト本体61に挿入されるエンドキャップ100の端部は、支持部材64に保持されている加圧パッド63の長手方向端部位置から距離を遠ざけるべく配置されている。
【0076】
ここで、外部から回転駆動力が伝達されるエンドキャップ100とベルト本体61との接合構造について接着方式を採用した理由について補足すると、以下の通りである。
つまり、エンドキャップと定着ベルトとの接合としてピン留め方式を用いた場合には、ピン部分にて応力が集中してしまい、その部分で定着ベルトが裂ける虞がある。
また、一部に応力が集中しないように、定着ベルトにエンドキャップを嵌め込み、嵌め込んだ部分に対し定着ベルトの外側からリング状のバンドを圧入する方式が考えられるが、この方式でも定着ベルトとエンドキャップとが滑ってしまう場合がある。
このため、応力が一部分集中せず、かつ、滑りが発生しない接合方式として接着剤による接着方式を採用するに至ったものである。
【0077】
本実施の形態において、エンドキャップ100(具体的には100a,100b)は別々の構成を有していても差し支えないが、取付作業性を考慮し、左右共用した構成になっている。
<ギア部>
より具体的に述べると、ギア部110は円筒体111の外周にギア歯(図示略)を所定ピッチ間隔にて形成したものであり、前記ギア歯の数についてはギア比に応じて適宜選定して差し支えなく、また、ギア形状については平ギアの平行歯に限られるものではなく、はすばギアの斜歯などは適宜選定して差し支えない。
【0078】
<接合部>
一方、本実施の形態では、接合部120は、図13(a)〜(c)に示すように、ギア部110の回転中心方向に延び、且つギア部110の最大外径よりも小径な円筒体121を有している。なお、接合部120の円筒体121の内径とギア部110の円筒体111の内径とは同じでもよいし、別個でもよい。また、夫々の円筒体111,121の内周壁は段付きでも差し支えない。
そして、本実施の形態では、接合部120の円筒体121の周面には、円筒体121の中心方向に沿って延び、且つ円筒体121の周方向に並列配置される複数の並列溝130と、これらの複数の並列溝130に対して直交配置され且つ円筒体121の周方向に沿って延びる一つの周方向溝140とが形成されている。
【0079】
特に、本実施の形態では、複数の並列溝130は円筒体121周面のうちギア部110とは反対側に配置されると共に、周方向溝140は円筒体121周面のうちギア部110側に配置されており、さらに、複数の並列溝130と周方向溝140とは仕切り壁150を残して不連続的に形成されている。
さらに、本実施の形態では、接合部120は、円筒体121周面が突出方向に向かって窄まる傾斜勾配θを有している。この傾斜勾配θは、円筒体121周面の最大外径部の半径寸法と円筒体121先端の外径部の半径寸法との間の差分を円筒体121の突出方向における両者間の離間距離にて除したものであり、傾斜勾配が徐々に変化するものにあってはその平均的な傾斜勾配を意味するものである。
本例では、傾斜勾配θしては、ベルト本体61に対するエンドキャップ100の接合部120の嵌め込み易さと製造容易性、接着強度の観点から、0.5〜3°程度が好ましい。ここで、0.5°未満であると、接合部120の嵌め込み易さ、製造容易性という点で不十分であり、3°を超えてしまうと接着剤による接着性が不十分になり易い。
【0080】
さらに、本実施の形態では、複数の並列溝130は、図13(a)・(b)、図14(a)・(b)及び図15(a)に示すように、断面略矩形状の凹溝131で円筒体121の突出方向先端に向かって開口132すると共に、凹溝131の底部開口132縁に湾曲部133を形成したものである。
【0081】
本例では、凹溝131は例えば最大外径部が約30mmの円筒体121に対し例えば20〜40箇所(例えば32箇所)形成されており、その深さh1は約0.1〜1.0mm程度に設定されている。
また、本例では、周方向溝140は円筒体121の周方向に沿って連続的に延びる凹溝141にて構成されている。
この凹溝141の幅wは接着剤を充填し易い程度の寸法であればよく、例えば0.5〜2.5mm程度が選定される。但し、凹溝141幅×円周長さが、引き抜き力に対して接着剤が応力を受ける剪断面積になるので、剪断面積×接着剤強度を引き抜き力より大きく設定する必要がある。
【0082】
一方、この凹溝141の深さh2は適宜選定して差し支えないが、並列溝130の凹溝131の深さh1よりも深く設定されている。ここで、深さh2としては約0.3〜1.5mm(例えば0.5mm)程度に設定されている。
さらに、周方向溝140の凹溝141の底壁は、例えば図13(c)及び図15(b)に示すように、円周形状に沿った円周形状部142と、この円周形状部142の相対向する部位を直線状に切断した直線部143とを有している。この直線部143は元々は型製造上の要請に基づくものであるが、接着剤層と凹溝141との間の回転方向の滑りを抑制する作用を奏する。
【0083】
<エンドキャップの製造例>
次に、エンドキャップ100の製造例を図16に示す。
実施形態で用いられる駆動伝達ギアの製造方法の一例を示す説明図である。
同図において、エンドキャップ100が所定の樹脂材料(例えばPPS)で製造される場合を例に挙げると、図16に示すように、成形型160として、エンドキャップ100の内周面形状に対応した型形状を有する内型161と、エンドキャップ100のギア部110、接合部120(並列溝130,周方向溝140,仕切り壁150)の外周面形状に対応した型形状を有する例えば一対の割り型からなる外型162(具体的には162a,162b)とを用い、外型162と内型161との空間部163に溶融した樹脂材料164を流し込んでエンドキャップ100を型成形した後、割り型からなる外型162を取り外すと共に内型161から成形されたエンドキャップ100を取り外すようにすればよい。
【0084】
そして、成形されたエンドキャップ100については、型抜き後の後処理をすればよく、また、エンドキャップ100の接合部120の表面については、さらに摩擦抵抗を高めるという観点から、必要に応じてシボ加工やブラスト処理をしてもよいし、また、UV表面処理(UV照射)を行い、表面を洗浄/改質して接着性を向上させてもよい。
なお、エンドキャップ100の製造法としては、上述した型成形に限られるものではなく、例えば溝のない状態で成型されたエンドキャップに機械加工を施し、溝を形成するようにしてもよい。
【0085】
<エンドキャップの取付例>
次に、ベルト本体61(環状被駆動体14)の両側縁部にエンドキャップ100(駆動伝達体10)を組み立てて定着ベルト60(回転駆動部材13)を製造する方法については、前述した如く、(a)冶具挿入工程、(b)接着剤塗布工程、(c)挿入工程、(d)接着剤潰し工程、(e)乾燥工程によって組立られ、接着剤中の気泡を排除した状態で接着固定される。
しかも、本例では、エンドキャップ100(例えばPPS)、ベルト本体61(例えばポリイミド)が合成樹脂製であることから、両者間に剥がれ力が作用したとしてもその剥がれ力を弾性にて吸収可能なように弾性接着剤が用いられている。この種の弾性接着剤としては、耐熱性を考慮するとシリコーン系が最適である。
【0086】
<定着装置の作動>
次に、本実施の形態に係る定着装置の作動について説明する。
定着装置25は通常使用されていない時は、加圧ロール62はベルト本体61から離間した状態で待機している。
今、図10乃至図12に示すように、定着装置25を作動させる場合には、図示外の駆動モータからの駆動力を回転駆動伝達機構81に伝え、ベルト本体61及び加圧ロール62を駆動回転させる。駆動回転が始まり、エンドキャップ100の回転動作を回転検出板98の回転動作として光学センサ99にて検出すると、励磁コイル69に高周波の電流が流れ、ベルト本体61が加熱される。ベルト本体61の温度が所定の温度にまで上昇すると、加圧ロール62は接離機構90にてベルト本体61に対して接触して定着ニップを形成すると同時に、クラッチ入りギア85のクラッチが切れ、ベルト本体61の駆動は加圧ロール62の従動回転となる。
そして、加圧ロール62がベルト本体61に当接し、定着ニップが形成された数秒後に、未定着トナー像を乗せた記録材が定着ニップを通過し、熱と圧力によりトナーが記録材上に定着される。
また、定着動作中は、図示外の制御装置により、回転検出器96からの検出信号に基づいてベルト本体61の周速度が所定の速度となるように、加圧ロール62の回転数を制御するようになっている。
【0087】
<エンドキャップの接合評価>
エンドキャップ100の接合評価について検討してみるに、エンドキャップ100とベルト本体61との接着剤200による接合性能は、例えば図18(a)に示すように、通常作用する荷重に対して接着された部材(本例ではエンドキャップ100,ベルト本体61)を一体の部材として振る舞わせることを要する。
ここで、ベルト本体61の弾性係数をk1、エンドキャップ100の弾性係数をk2とすると、接着剤200を介在させた全体としての弾性係数kは以下の通りである。
k=k1・k2/k1+k2
そして、エンドキャップ100とベルト本体61との間の接着剤200による接合性能は、例えば図18(b)に示すように、弾性域ではフックの法則に従い、変位xと荷重yとが略比例関係になるが、塑性域に至れば前記接着剤200による接合性能は塑性限度にて破断することになる。
よって、通常作用する荷重に対して接着剤による接合性能が維持されるように設計することが必要である。
【0088】
本実施の形態の定着装置では、エンドキャップ100を介してベルト本体61を回転駆動する方式であるが、長期に亘って連続的に使用したとしても、エンドキャップ100がベルト本体61から剥がれる事態は見られなかった。
これは、既述したように、エンドキャップ100の接合部120の溝構成(複数の並列溝130+周方向溝140)による作用(ベルト本体61の回転方向と離脱方向とに対する剥がれ阻止作用)と推測される。
【0089】
本実施の形態における接合部120の溝構成については各種の工夫が施されており、本来の作用に加えて以下のような作用をも奏するものである。
(1)並列溝、周方向溝のレイアウト
周方向溝140がギア部110寄りに配置され、仕切り壁150を介して複数の並列溝130がギア部110の反対側に配置されていることから、複数の並列溝130及び周方向溝140周りの接着剤層が夫々他方側に流入することは少ない。
【0090】
(2)並列溝の形状
複数の並列溝130が接合部120の先端にて開口しているため、並列溝130周りの接着剤層が接合部120の先端に至るまで並列溝130内に充填されることになり、並列溝130の先端が塞がれている態様に比べて、ベルト本体61の回転方向に作用する剥がれ力に抗する力が大きい。
特に、複数の並列溝130を構成する凹溝131の底部開口132縁が湾曲部133として構成されているため、並列溝130周りの接着剤層が接合開始時に不均一に分布していたとしても、その不均一な接着剤部分が並列溝130の先端開口湾曲部133側に押し出され易く、並列溝130周りの接着剤層表面が均一になり易い。
さらに、本例では、並列溝130の凹溝131幅が凹溝131間の段差部幅よりも広く設けられているため、並列溝130周りの接着剤層が凹溝131内に充填され易くなっている。
【0091】
(3)周方向溝の形状
周方向溝140は複数の並列溝130よりも深い凹溝141で構成されているため、同じ深さである態様に比べて、ベルト本体61の離脱方向に対する剥がれ阻止力がより大きく確保されることになり、ベルト本体61の離脱方向に対する接着剥がれがより生じ難い。
【0092】
(4)接合部の形状
接合部120は円筒体121周面が突出方向に向かって窄まる傾斜勾配θを有しているため、ベルト本体61に対してエンドキャップ100の接合部120を嵌め込み易いばかりか、接合部120に塗布した接着剤層が接合開始時に不均一に分布していたとしても、その不均一部分が傾斜勾配θに従って円筒体121の先端側に押し出され易いことから、接合部120周りの接着剤層表面が均一になり易い。
このようなエンドキャップ100の接合評価は後述した実施例にて裏付けられる。
【0093】
<エンドキャップの変形例>
本実施の形態では、エンドキャップ100の接合部120の溝構成は、ギア部110側に周方向溝140を有し、仕切り壁150を介してギア部110の反対側に複数の並列溝130を有している態様であるが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば図17に示すように、エンドキャップ100の接合部120の円筒体121周面に複数の並列溝130を形成し、この複数の並列溝130と交差するように円筒体121の周面に沿って周方向溝140を例えば一つ形成するようにしてもよいし、あるいは、実施の形態1の周方向溝140に加えて図17に示す周方向溝を付加するようにしてもよいし、あるいは、複数の並列溝130に交差する複数の周方向溝140を形成する等適宜選定して差し支えない。
【実施例】
【0094】
実施例1〜3及び比較例1〜4に係るエンドキャップと定着ベルトとをシリコーン接着剤で接合した態様につき剥がれトルク試験を行った。
ここで、実施例1〜3及び比較例1〜4に係るエンドキャップについて説明すると以下の通りである。
実施例1:実施の形態1に係るエンドキャップ100の態様(接合部120に複数の並列溝130と周方向溝140とを設けた態様:図20(a)参照)。
比較例1:エンドキャップ100’の接合部120’の円筒部周面を平滑面122’(表面粗さRa=0.2μm程度)とした態様(図20(b)参照)。
比較例2:エンドキャップ100’の接合部120’の円筒部周面に複数の並列溝130’のみを設けた態様(図20(c)参照)。
比較例3:エンドキャップ100’の接合部120’の円筒部周面にローレット加工溝180’を設けた態様(図20(d)参照)。
比較例4:比較例1のエンドキャップ100’の接合部120’の円筒部周面の平滑面122’を粗面(表面粗さRa=2.0μm程度)とした態様。
また、剥がれトルク試験とは、各実施例、各比較例に係るエンドキャップの接合部と定着ベルトとをシリコーン接着剤にて接合した態様につき、エンドキャップ及び定着ベルトの一方を固定した状態で他方にトルクを作用させ、接着剤層が剥がれた時点の接着破壊に要する力を夫々2回測定したものである。
結果を図19(a)に示す。
同図によれば、比較例1を除いて接着破壊に要する力(剥がれ力)はある程度大きいことが理解される。
【0095】
次に、実施例1及び比較例1〜3につき、エンドキャップの性能評価を実施した。
このエンドキャップの性能評価は、図19(a)に示す剥がれ力評価の他に、実機に夫々のエンドキャップを用いた定着装置を組込み、記録材を通過させたランニングストレス評価、並びに、加工性評価について行った。
結果を図19(b)に示す。
同図において、剥がれ力評価は、図19(a)に示すように、比較例1を除いて実施例1及び比較例2,3が良好であることが理解される。
【0096】
また、ランニングストレス評価では、実施例1は記録材550kでエンドキャップと定着ベルトとの間の接着剥がれは未発生であり、比較例3も記録材200kでエンドキャップと定着ベルトとの間の接着剥がれは未発生であることが確認されたが、比較例1は記録材通過初期の段階で接着剥がれが発生し、比較例2も記録材約1kのときに接着剥がれが発生することが確認された。
【0097】
さらに、加工性評価については、比較例3はローレット加工溝について型成形などの方式で量産することが困難であるのに対し、実施例1及び比較例1,2は型成形などの方式にて量産することが可能であることが理解される。
このことからすれば、実施例1が、剥がれ力評価、ランニングストレス評価、加工性評価の全ての点において良好であり、比較例1〜3に比べて優れていることが理解される。
なお、実施例2,3も実施例1に比べてさらに良好であることが確認されている。
【符号の説明】
【0098】
10…駆動伝達体、12…駆動伝達機構、13…回転駆動部材、13A…未完成製品、14…環状被駆動体、60…定着ベルト(回転駆動部材)、61…ベルト本体(環状被駆動体)、100…エンドキャップ(駆動伝達体)、300,310,320…加圧装置、305…ローラ(押付部材)、311…環状体、322…円弧部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力が伝達される駆動伝達体と環状被駆動体とが接合される部位に接着剤を塗布し、当該部位が合わさるように前記被駆動体に前記駆動伝達体を挿入した状態で、前記部位において前記環状被駆動体を前記駆動伝達体に押し付けて前記接着剤を潰し、乾燥させて成る回転駆動部材。
【請求項2】
請求項1記載の回転駆動部材において、
軸線が共通の2つの冶具に前記駆動伝達体および前記環状被駆動体をそれぞれ装着し、各々の前記冶具を共通の軸線上で近づけて前記環状被駆動体に前記駆動伝達体を挿入して成る
ことを特徴とする回転駆動部材。
【請求項3】
請求項1または2記載の回転駆動部材において、
前記環状被駆動体における前記部位の外周面の1または複数の箇所で当該環状被駆動体の外周面を前記駆動伝達体に押し付ける押付部材を、当該外周面に沿って移動させることで、前記部位における前記接着剤を潰して成る回転駆動部材。
【請求項4】
請求項1または2記載の回転駆動部材において、
前記環状被駆動体における前記部位の外周面に、気体が供給されることで内径が縮む中空の環状体を位置させ、当該環状体の縮径する内径が前記部位を径方向外側から押し付けることで、前記部位における前記接着剤を潰して成る回転駆動部材。
【請求項5】
請求項1または2記載の回転駆動部材において、
前記環状被駆動体における前記部位の外周面に、当該環状被駆動体の外径と等しいまたは大きい内径の円弧状部材を対向配置し、各円弧状部材を径方向外側から押し付けることで、前記部位における前記接着剤を潰して成る回転駆動部材。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1に記載の回転駆動部材と、
駆動源からの駆動力に応じた回転駆動力を前記駆動伝達体及び前記環状被駆動体に伝達する
ことを特徴とする駆動伝達機構。
【請求項7】
請求項1ないし5いずれか1に記載の回転駆動部材と、
前記回転駆動部材の環状被駆動体を加熱する加熱手段と、
前記環状被駆動体に向かい合う位置に配置された対向部材と、
前記環状被駆動体の内側に配置されて前記対向部材との間で前記環状被駆動体を加圧する円弧部材と、を備える
ことを特徴とする定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−22475(P2011−22475A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169042(P2009−169042)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】