固体照明に用いられる多層ポリマー発光ダイオード
多層ポリマー発光ダイオード(PLED)は、発光層である有機金属エミッタとブレンドした半導体ポリマーと、該発光層の適当な電子注入及びホール注入側の電子輸送層及びホール透明層の一方または双方とを用いて示される。輸送層は、ホール注入電極及び発光性ポリマーの間のエネルギーポテンシャルギャップと、電子注入電極及び発光性ポリマーの間のエネルギーポテンシャルギャップとを低下させる。これらのデバイスを調製するための溶媒処理に基づく手法も開示される。当該手法では、発光層を形成するための発光性ポリマーの非極性溶媒をベースとする溶液、及び、輸送層を形成するための極性溶媒をベースとする溶液を用いて、設置すべき多層として望ましくないエッチング及び他の相互作用を最小化する。「純粋な」白色光のそれに全てが近い、安定なCommission Internationale de l’Eclairage座標、安定な色温度、及び安定な色レンダリング指標を有する照明品質白色光を得ることができる。これらの多層白色発光PLEDは、液晶ディスプレイ及び固体照明に適用するバックライトとして有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ポリマーをベースとする発光ダイオードの分野に属する。さらに詳しくは、本発明は、ある態様において、固体照明における使用において有用な白色光を発する多層ポリマー発光ダイオード(PLED)に関する。本発明はこれらのダイオードを製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ポリマーを発光層として使用するポリマー発光ダイオード(PLED)が提示されている。発光層に存在する材料を変化させることにより、広範囲の色を発光させることができる。発光ポリマーのみを複数ブレンドしたもの、または発光ポリマーと有機金属エミッタとをブレンドしたものを用いて、白色光を含めた発光光のさらなるカラーシェード(color shades)を達成することができる。
【0003】
白色光を発するLEDは、(カラーフィルターを備えた)アクティブマトリックスディスプレイにおいてバックライトとして用いられ、また固体照明に適用可能であるため、興味深くかつ潜在的に重要である[A.J.Heeger,Solid State Comm.,1998.107,673 & Rev.Modem Phys.,2001,73,681、B.W.D’Andrade,S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,1585、R.H.Friend,R.W.Gymer,E.B.Holmes,J.H.Burroughes,R.N.Marks,C.Taliani,D.D.C.Bradley,D.A.Dos Santos,J.L.Bredas,M.J.Ogdlund,及びW.R.Salaneck,Nature,1999,397,121]。そのような用途において主な問題点は、大きな面積のデバイスの製造、及び低コストの製造技術の使用であろう。溶液から活性な材料を加工することによる(例えば、インクジェット印刷または他の印刷技術の使用による)PLEDの製造は、活性層の沈積に真空技術の使用を必要とするOLED(小分子に基づく有機発光ダイオード)の製造[B.W.D’Andrade,S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,1585]よりも低価格であると期待される。OLED及びPLEDから白色光及び他の色の光を生じさせるために、いくつかのアプローチが用いられてきた[J.Kido,H,Shionoya,K,Nagai,Appl.Phys.Lett.,1995,67,2281−2283、C.Zhang,A.J.Heeger,J.Appl.Phys.,1998,84,1579、Z.Shen,P.E.Burrows,V.Bulvic.S.R.Forrest,M.E.Thompson,Science,1997,276,2009、Y.Hamada,T.Sano,H.Fujii,Y.Nishino,Jpn.J.Appl.Phys.,1996,35,L1339、Y.Z.Wang,R.G.Sun,F.Meghdadi,G.Leising,A.J.Epstein,Appl.Phys.Lett.,1999,74,3613、M.Strukelg,R.H.Jordan,A.Dodabalapur,A.、J.Am.Chem.Soc.,1996,118,1213、B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,624]。前掲の論文におけるアプローチにおいて、効率は中程度であって、寿命は青色エミッタの寿命により制限されていた[J.Kido,H,Shinoyama,K,Nagai,Appl.Phys.Lett.,1995,67,2281、Y.Hamada,T.Sano,H.Fujii,Y.Nishino,Jpn.J.Appl.Phys.,1996,35,L1339、Y.Z.Wang,R.G.Sun,F.Meghdadi,G.Leising,A.J.Epstein,Appl.Phys.Lett.,1999,74,3613、M.Strukelj,R.H.Jordan,A.Dodabalapur,A.、J.Am.Chem.Soc.,1996,118,1213、U.Scherf,E.J.W.List,Adv.Mater.2002,14,477、S.Setayesh,D.Marsitzky,K.Mullen,Macromolecules,2000,33,2016、X.Gong,P.Iyer,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,Adv.Func.Mater.,2003,13,325]。
【0004】
有機金属エミッタをドープした半導体ポリマーで製造されたPLEDは、「可塑性」エレクトロニクスのさらなる誘導性を供する。そのようなデバイスの代表的な例は、2003年10月3日に出願された米国出願第10/680,084号に記載されている。PLEDの発光層は、ポリマー及びブレンドを溶液からキャスト(cast)し、それにより、比較的単純かつ低コストの製造プロセスを可能とすることによって製造可能である[G.D.Muller,A.Falcou,N.Reckefuss,M.Roijhn,V.Wiederhirn,P.Rudati,H.Frohne,O.Nuyken,H.Becker,K.Meerholz,Nature,2003,421,829]。
【0005】
多層PLEDを生産するのに最も好適な製造技術としては、高仕事関数金属−金属酸化物接触(電極)及び保護金属上塗り層のような無機層を設置するためのスパッタリング及び種々の蒸着方法の使用が挙げられる。溶液からの順次のスピン−キャスティングや層の印刷などの溶媒沈積方法を用いて、有機ポリマー発光層ならびに他の層をデバイスに設置することができる。有機層が複数存在する場合、連続する層が相互作用する問題が存在し得る。より後に設けられる層の溶媒は先に設けられる層を溶解または変形(エッチング)させ得る。各層を平滑化かつ合着(coherent)化するのが望ましいことがしばしばであり、このように、該相互作用は破壊的であり得る。
【0006】
光は3つの量、CIE(Comission Internationale de l’Eclairage)座標、色温度(CT)及び色レンダリング指標(CRI)によって特徴付けることができる。「純粋な」白色光は(0.333,0.333)のCIE座標を有し、使用される色の発光のバランスを取ることによって得られる。照明用途においては、CTは、3000°K及び7500°Kの間の黒体源のCTと同様であることが必要である。平均日中光はCT=6500°Kを有し、他方、蛍光灯(温白色)はCT=3000°Kを有する[R.W.G.Hunt,Measuring Color,2nd Ed.Ellis Horwood,1991]。CRIは、光源を用いて見た場合に、どれほど「真の」色が見えるかの数値的尺度である。CRI値は0〜100の範囲であり、100は真の色の再現を表す。蛍光灯は60〜99の間のCRIレーティングを有する。ある種の用途では少なくとも70のCIU値で許容可能であるが、好ましい白色光源は約80またはそれより高いCRIを有するであろう。明るさ、高効率、適当なCT、高いCRI及び安定なCIE座標を持つ照明品質白色光を発するPLEDを提示することは、固体照明の将来に対して重要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
今回、本発明者らは、多層PLEDにおいて、効率を増強させ、製造を容易とする改良を見出した。
【0008】
我々は、PLEDの発光層に隣接する電子輸送層及び/又はホール輸送層を付加することによりPLEDの性能を改良することを見出した。我々は、さらに、もしこれらの付加層で使用する材料が、発光層を溶解し、かつ溶媒処理に用いる溶媒と極性が異なる溶媒に対し差異的な可溶性を有するならば、溶媒処理技術によってこれらの付加層をPLEDに取り込むことが可能であることを見出した。
【0009】
このように、本発明は、ある具体例においては、白色光を発し、かつ固体照明用途において有用な多層ポリマー発光ダイオード(PLED)を提供することができる。より具体的には、本発明は、比較的非極性である溶媒に可溶性を有する発光層である、有機金属エミッタとブレンドされた半導体ポリマー、及び、ホール注入/輸送層(HIL/HTL)及び/又は電子注入/輸送層(EIL/ETL)である、比較的極性である溶媒に可溶性を有する有機材料(ポリマーまたは小分子)を含む、多層白色PLEDを提供することができる。全ての層は、好ましくは、対応する溶液からキャストされる。本発明のこれらの好ましい材料の白色発光は、液晶ディスプレイ(LCD)におけるバックライト、及び固体照明に適用することができる。白色光は、単一の発光層におけるポリマーブレンドから発せられる。本発明で開発された戦略では、発光ポリマーブレンド、HIL/HTL、及びEIL/ETLを、対応する溶液からキャストすることによって、多層白色発光PLEDの製造を可能とする。本発明は、青色から赤色まで渡りかつ白色光を含めた全ての色において照明品質光を発する多層PLEDEを、比較的単純に製造することも可能とする。本発明で示される方法は、高明度、高効率、適当な色温度、高い色レンダリング指標、及び安定なCIE(Comission Internationale de l’Eclairage)座標を持つ照明品質の白色光を発する多層PLEDの、比較的単純な製造を可能とする。本発明で示される多層PLEDの製造方法は、種々の層を溶液からキャストすることによって製造される、大きな面積の多層ディスプレイ、及び他の大きな面積の多層オプトエレクトロニクス・デバイスで用いることができる。
【0010】
本発明のデバイスは、発光層、及び、該発光層に隣接するホール注入/輸送層(HIL/HTL)及び電子注入/輸送層(EIL/ETL)のうちの少なくとも1つを使用する。これら輸送層の利点は、ホール輸送層が時に「ホール注入/輸送層」または「HIL/HTL」と呼ばれる、単一層ホール注入アノードを使用したデバイスにおいて、また、それ自体の第二の層が「ホール注入層」である二層アノードを使用するデバイスにおいて、観察することができる。この第二の場合において、混乱を避けるために、該輸送層は、単に、「ホール輸送層」または「HTL」といい、当該分野で知られた「ホール注入層」または「HIL」はその通常の名称を保有する。本発明のデバイスは、それらの発光層として、有機金属エミッタとブレンドされた比較的非極性の溶媒に可溶性を有する半導体ポリマーを使用し、また、HIL/HTL及びEIL/ETL層の双方として、極性溶媒(例えば、水及び/または低級アルカノール)に可溶性を有するポリマー及び小分子を使用する。本発明のデバイスは、観察者によって平均化された場合に白色に見える異なる領域における赤色、緑色及び青色発光よりはむしろ、単一の発光領域における、(実施例においてI型及びII型デバイスとして表される)2つまたは3つの発光エミッタを使用することができる。同様に、3つを超えるエミッタを用いることもできる。発光エミッタは、(シングレット状態からの)蛍光、または(シングレット状態からの)蛍光及び(トリプレット状態からの)リン光の組合せを介して白色光を発することができる。白色光は、単一の発光性の薄いフィルム層を形成する単一の材料へブレンドされた2つまたは3つの発光エミッタから、及び、ホストポリマーにブレンドされた緑色及び赤色−発光成分のようなさらなるエミッタから、(共役ポリマーのような)ホストポリマーからの組合せ発光を通じて達成され得る。2つまたは3つ以上の発光中心を含む単一の発光層により、溶液処理による、発光性PLED、特に白色発光PLEDの製造が可能となる。
【0011】
HIL/HTL及び/またはEIL/ETL層は、電子及びホール電流を平衡化させ、かつデバイスの効率を増大させる手段を提供する。重要なことには、HTL及びETL双方である、極性溶媒に可溶性を有する材料の使用、及び、発光層である、極性が低い溶媒に可溶性を有する材料の使用により、種々の層を溶液から加工することによって、青色〜赤色、特に白色の、可視スペクトル内の異なる色を持つ光を発する多層PLEDの製造が可能となる。本発明の戦略は、高い色レンダリング指標、適当な色温度、及び所望のCIE座標によって特徴付けられる、白色発光PLEDを含めた、明るくかつ効率的な多層PLEDの、比較的単純な製造を可能とする。さらに、これらの多層エレクトロホストレセントPLEDからの色レンダリング指標、色温度及びCIE座標は、明るさに対して感受性を有さず、適応された電圧に対して感受性を有さず、かつ電流密度に対しても感受性を有していない。さらに、本発明で示される多層PLEDの製造方法は、印刷技術によって溶液から製造される、多層発光ダイオードを含む大きな面積のディスプレイ、及び他の大きな面積の多層オプトエレクトロニクス・デバイスの開発で用いることができる。
【0012】
本発明の1つの目的は、固体照明用途に、かつ液晶ディスプレイ(LCD)用のバックライトとして適した高い発光効率、高い外部量子効率及び明るさを呈する多層PLED、特に白色発光PLEDを生産する方法を提供することにある。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、極性溶媒に可溶性を有するポリマー及び小分子を、ホール注入/輸送層、及び/または電子注入/輸送層として用いることによって、高い性能の多層PLEDを生産することにある。
【0014】
本発明の第3の目的は、印刷技術によって溶液から製造される、発光ダイオードを含む多層デバイス、及び他の多層オプトエレクトロニクス・デバイスの開発で用いることができる技術を提供することにある。
【0015】
本発明のさらにもう1つの目的は、高い色レンダリング指標、適当な色温度及び所望のCIE座標をもつ白色光を呈する多層白色PLEDを製造することにある。
【0016】
本発明のさらなる目的は、PLEDにおいてホール注入/輸送層として、及び/または電子注入/輸送層として極性溶媒に可溶性を有するポリマー及び小分子を利用することにある。
【0017】
本発明の追加的な目的は、その全ては明るさ、適用された電圧及び電流密度に対して感受性でない、安定した色レンダリング指標、安定した色温度、及び安定したCIE座標を持つ多層白色発光PLEDを生産することにある。
【0018】
本発明のさらにもう1つの目的は、純粋な白色光のCIE座標(0.333,0.333)に近いCIEx,y−色度座標を有する白色発光を生じる多層白色光発光PLEDを生産することにある。
【0019】
本発明の追加の目的は、平均日中光に特徴的な6400°K値に近い色温度か、または太陽高度20°における日光に特徴的な4500°K値に近い色温度を有する白色発光を生じる多層白色光発光PLEDを製造することにある。
【0020】
本発明のさらなる目的は、色レンダリング指標が80を超える白色発光を生じる多層白色光発光PLEDを製造することにある。
【0021】
本発明のもう1つの目的は、色レンダリング指標が90を超える白色発光を生じる多層白色光−発光PLEDを製造することにある。
【0022】
好ましい具体例の記載
命名法及び略語
本発明のこの明細書において、種々の化学化合物に言及する。命名される化合物のいくつかを図1に示す。
【0023】
加えて、以下の略語を使用する。
CIE: Comission Internationale de l’Eclairage
CT: 色−レンダリング指標
EIL/ETL: 電子注入−輸送層
ETM: 電子−輸送層
HIL/HTL: ホール注入−輸送層
HIL: ホール注入層
HTL: ホール輸送層
HFP: 9,9−ジヘキシルフルオレンピリジン
HOMO: 最高占有分子軌道
ITO: 酸化インジウムスズ
Ir(HFP)3: トリス2,5−ビス−2’(9’、9’ジヘキシルフルオレン)ピリジンイリジウム(III)
LCD: 液晶ディスプレイ
LUMO: 最低非占有分子軌道
MEH−PPV: ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン
MBL−PPV: ポリ[5−メトキシ−2−(4−スルホブトキシ)−1,4−フェニレンビニレン
OLED: 有機−発光ダイオード
PLED: ポリマー発光ダイオード
PPV: ポリ(フェニレンビニレン)
PFO: ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)
PFO−ETM:電子−輸送−部位を末端にキャップしたポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、例えば、5−ビフェニル−1,3,4オキサジアゾールを末端にキャップしたポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)
PFO−F: ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)−フルオレノン
t−Bu PBD−SO3Na:4−(5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサシアゾール−2−イル)ビフェニル−4’−イルスルホン酸
PVK: ポリ(ビニルカルバゾール)
PVK−SO3Na: ポリ(ビニルカルバゾール)スルホン酸ナトリウム
PVK−SO3Li: ポリ(ビニルカルバゾール)スルホン酸リチウム
PEDOT:SSS: ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):スチレンスルホン酸
ポリ(BT[PD−Si−PFCB]: ポリ(ビス)テトラフェニルジアミノ)ビフェニル−ペルフルオロシクロブタン
THF: テトラヒドロフラン
DMSO: ジメチルスルホキシド
DMF: ジメチルホルムアミド
【0024】
定義
本発明のこの明細書において、及び請求項において、時に、「極性」または「非極性」である溶媒に言及し、また、「極性」または「非極性」溶媒について「差異的な可溶性を示す(being differentially soluble)」、または「差異的な可溶性を有する(having differential solubility)」材料に言及する。
【0025】
溶媒極性は、ここではChristian Reichart,Solvevnts and Solvent Effects in Organic Chemistry,VCH Publishers 2nd ed.,1988の教示に従って定義される。Reichartは、水の値である高い値1.000から、シクロヘキサンの値である低い値0.006の範囲の、相対的極性値を提供する。これらの相対的極性値を用い、「極性溶媒」は、0.400〜1.000の相対的極性を有する溶媒であると定義される。そのような溶媒の例には、水、グリセリン、エチレングリコール、メタノール、ジエチレングリコール、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルホルムアミド(DMF)及びその混合物が含まれる。水、低級アルカノール(炭素数1〜3)及びその混合物が好ましい極性溶媒である。
【0026】
「非極性溶媒」は、0.006〜約0.300の相対的極性を有する溶媒であると定義される。そのような溶媒は、例えば、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、四塩化炭素、キシレン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチル−エーテル(MTBE)、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、グライム、ジグライム及びクロロホルムを含む。炭素数6〜8炭化水素、特に、ベンゼン及びトルエンは好ましい非極性溶媒である。
【0027】
本発明の加工において、種々の材料は、「極性」溶媒または「非極性」溶媒に「差異的な可溶性を有する(differentially soluble)」といわれる。これは、最も一般的には、該材料が他の材料よりも溶媒の1つのファミリーにより高い可溶性を有することを意味する。好ましくは、「差異化された溶解度(differential solubility)」は、材料が他のファミリーにおけるように1つのファミリーにおいて、少なくとも150%、より好ましくは少なくとも200%、最も好ましくは少なくとも300%可溶性であることを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
デバイスの構成
図2中の「A」で示される先行技術のPLEDは、低仕事関数電子注入電極113及び高仕事関数ホール注入電極118と接触した半導性発光層115で作成されていた。「A」に示すように、PLEDは、機械的強度を供し、通常、支持体から遠ざかる側の電極を機械的かつ化学的に保護するための不動態層112を含有する基材119上に支持される。ホール注入電極118及び電子注入電極113に対する、支持体119及び不動態層112の位置は、最も普通には、図2に示した通りである。所望があれば、これらの位置を逆にし、電子注入電極を本発明の精神から逸脱することなく支持体上に置くことができる。同様に、本発明及びその利点を記載するにおいては時に、これらの「支持体」119に言及し、「保護外側層112」の層を、簡略化のために省略する。
【0029】
図2中の「B」で示される先行技術では、さらに、ホール注入電極118及び発光層115の間に位置する有機ホール注入層117で作成された二層アノードを含むPLEDが考えられた。この二層アノードホール注入の構成は知られている[D.Braun and A.Heeger,Appln,Phys.Lett,119,58,1982]。
【0030】
図2において10、11及び12は、本発明のデバイスについての3つの構成を示す。そこには、1つまたは2つの追加の「輸送」層114及び116が存在する。2つの「輸送」層が存在する場合、それらは発光層115の対向側にある(10参照)。1つの「輸送」層が存在する場合、それはEIL/ETL114として層115の電子注入側(11参照)、またはHTL116として層115のホール注入側(12参照)に存在し得る。本発明者らは、EIH/ETL及びHTLが共に存在する場合に最良の結果を得た。
【0031】
図2における先行技術Bの二層アノードホール注入電極が有機ホール注入層117を含むことに留意されたい。具体例13において、ホール注入層は単一のHIL/HTL有機層120としてホール輸送層と組み合わされている。
【0032】
これらの個々の層を次に記載する。
【0033】
発光層(115)
図2に示される発光層115は、1つ以上の発光性ポリマー(またはコポリマー)と1つ以上の有機金属エミッタとのブレンド(混合物)を含む。好ましい発光性ポリマーは一般には供役している。好ましい例は、トリス(2,5−ビス−2’−(9’、9’−ジヘキシルフルオレン)ピリジン)イリジウム(III)Ir(HFP)3)をブレンドした5−ビフェニル−1,3,4−オキサジアゾール(PFO−ETM)が末端にキャップされたPFOまたはポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)から作成されたデバイス、及び、PFO−ETMと、1%フルオレン(PFO−F(1%))及びIr(HFP)3を含むポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−フルオレン)とのブレンドから作成されたデバイスを含む。図1は、PFO−ETM、PFO−F(1%)及びIr(HFP)3の分子構造を示す。PFO−ETMの合成は科学文献に報告されている[X.Gong,W.L.Ma,J.C.Ostrowski,K.Bechgaad,G.C.Bazan,D.Moses,A.J.Heeger,S.Xiao,Adv.Func.Mater.,2004,14,393]。他の発光性ポリマー、特に、青色−発光性ポリマーもまた本発明の実施で用いることもできる。Ir(HFP)3の合成は科学文献に報告されている[J.C.Ostrowski,M.R.Robinson,A.J.Heeger,and G.C.Bazan,Chem.Commun.,2002,7,784]。PFO−F(1%)の合成も報告されている[X.Gong,D.Moses and A.J.Heeger,Synth.Met.2004,141,17]。Ir(HFP)3は、中心原子としてIr、Pr、Os、RuまたはAu等を有する錯体及び化合物である有用な有機金属エミッタの代表である。
【0034】
ホストとしてのPFO−ETM、及びゲストとしての有機金属エミッタに基づく高性能PLEDは従前に示されている。[X.Gong,W.L.Ma,J.C.Ostrowski,K.Bechgaad,G.C.Bazan,D.Moses,A.J.Heeger,S.Xiao,Adv.Func.Mater.,2004,14,393、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,V.J.Heeger,M.S.Liu,A.K−Y.Jen,Adv.Mat.2003,15,45、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,J.Poly.Sci.Poly.Phys.,2003,41,2691]。
【0035】
これらの発光層で用いるポリマー材料は、通常、炭化水素溶媒等に対する差異的な可溶性を示す。
【0036】
好適例として本明細書中に記載された材料は、白色光発光が望まれる状況で好ましい。PFO−ETMのようなポリマーそれ自体は青色発光材料である。有機金属エミッタ及び他のホストポリマーにより、白色全体発光(white overall emission)をもたらすエミッタを作成することができる。
【0037】
電子注入/輸送層(114)
典型的には20〜30nmの厚みである電子注入/輸送層(EIL/ETL)は、図2に示す発光層115の頂部表面に溶液からキャストされる。電子注入/輸送層は、比較的大きな電子親和性を持つ、すなわち、発光層における発光ポリマーのπ*−バンドの底のそれにエネルギーが近い最低非占有分子軌道(LUMO)を持つ、例えば、約eV内の半導性有機ポリマー材料から製造される。好ましくは、EIL/ETLは、低仕事関数電子注入電極の仕事関数よりも発光層のLUMOに近いLUMOを有する材料から製造される。その例はt−Bu−PBD SO3Naを含む[T.J.Boyd,R.R.Schrock,Macromolecules,1999,32,6608]。この層は、水性及び/または低級アルカノール溶媒のような極性溶媒をベースとする溶液からキャストされる。
【0038】
ホール輸送層(116)
典型的には20〜30nmの厚みであるホール輸送層(HTL)は、ホール注入層117の頂部表面へ溶液からキャストされる。もしホール注入電極が、層117を有しない単一の層アノード118であるならば、該層116は、次段落に説明するように、HIL/HTLとして電極118に直接的に沈積されるであろう。ホール注入/輸送層は、比較的小さなイオン化ポテンシャルを持つ。すなわち、発光層における発光ポリマーのn−バンドの頂部のそれにエネルギーが近い最高占有分子軌道(HOMO)を持つ、例えば、約1eV以内の半導性有機ポリマー材料から製造される。好ましくは、HTLはホール注入電極の仕事関数のそれよりも発光層のHOMOにより近いHOMOを有する材料から製造される。その例はPVK−S03Liを含む[S.Wang,Z.Zeng,S.Yang/L.,T.Weng,P.C.L.Wong,K.Ho,Macromolecules,2000,33,3232]。この層は、水性及び/または低級アルカノール溶液のような極性溶媒をベースとする溶液からキャストされる。
【0039】
本発明のデバイスは二層アノードを含むことができる。二層アノードの1つの層は、一般には、「ホール注入層」または「HIL」という。そのような層が存在する場合、層116は「ホール輸送層」または「HTL」という。もし別のホール注入層が存在しなければ、層116は双方の機能を発揮することができ、「ホール注入輸送層」または「HIL/HTL」ということもできる。
【0040】
任意のホール注入層(117)
ホール注入層117が二層アノードを供するべく存在する場合、該層は典型的には20〜30nmの厚みであり、溶液から電極118上にキャストされる。層117で用いる材料の例は、極性(水性)溶液からキャストされるPED0T:PSSのような半導性有機ポリマー、またはポリ(BTPD−Si−PFCB)を含む[S.Liu,X.Z.Jiang,H.Ma,M.S.Liu,A.K.−Y.Jen,Macro.,2000,33,3514、X.Gong,D.Moses,E.J.Heeger,S.Liu and A.−Y.Jen,Appl.Phys.Lett.,2003,83,183]。PEDOT:PSSが好ましい。他方、ポリ(BTPD−Si−PFCB)をホール注入層として用いることによって、発光性ポリマーの望ましくないエッチング、ITO電極の望ましくないエッチング、及びミクロ−ショートの形成のような、PEDOT:PSSの使用によってもたらされる、PLEDに存在する多くの加工問題を回避することができる[G.Greczynski,Th.Kugler and W.R.Salaneck,Thin Solid Films,1999,354,129、M.P.de Jong,L.J.van Ijzendoorn,M.J.A.de Voigt,Appl.Phys.Lett.2000,77,2255]。
【0041】
極性溶媒に差異的な可溶性を有する材料で作成された移動層と共に、非極性溶媒に差異的な可溶性を有するポリマーで作成された発光層を用いる利点は、任意のホール注入層が極性溶媒に差異的な可溶性を有する材料で作成される場合にも達成されることに注意すべきである。これは、単一のホール注入/輸送層120が使用される図2の具体例13において、所望の加工利点を達成するには極性溶媒に差異的な可溶性を有することが有利であることを意味する。この層120における材料は、所望であれば、層117及び層116において材料と実質的に重複することができる。
【0042】
高仕事関数電極(118)
高仕事関数ホール注入電極は、典型的には、20オーム/平方以下の低効率、及び89%以上の透過率を550nmにおいて持つ酸化インジウム−スズ(ITO)のような透明な導電性金属−金属酸化物または硫化物材料である。金または銀の薄い透明層のような他の材料も入手可能である。ここで「高仕事関数」は、一般には、約4.5eV以上の仕事関数であると考えられる。この電極は、通常、熱気相蒸着、電子ビーム蒸発、RFまたはマグネトロンスパッタリング、化学蒸着等によって固体支持体112上に蒸着される。これらと同様のプロセスで、低仕事関数電極113を同様に蒸着することができる。高仕事関数電極の主な要件は、適当な仕事関数、低い低効率及び高い透明性の組み合わせである。
【0043】
低仕事関数電極(113)
低仕事関数電極113は電子注入接触部として働く。これは、典型的には、電極118からアクティブ発光性ポリマー層115の反対側におかれた低仕事関数金属または合金から作成される。ここで低仕事関数材料は、約4.3eV以下の仕事関数を持つ材料を含み、例えばBa、Ca、Mg、In及びTbを含む事が、当該分野で知られている。それらには、しばしば、Ag、Au、Al等のような安定な金属の層が伴う。該層は、Ba、Ca、Tbのような反応性材料の頂部上の保護層として働く。他の低仕事関数(低イオン化ポテンシャル)導電性材料を、電子注入接触部として、慣用的な金属の代わりに用いてもよい。電子注入電極フィルムの厚みは臨界的ではなく、所望の表面抵抗(表明抵抗またはシート抵抗は、厚みで割った抵抗率で定義される)を達成するように調整することができ、典型的には、有意には、100Å未満から約2000Å以上の範囲で変化させることができる。これらの材料は、一般には、電極118の記載において記述された技術により薄いフィルムの状態で設置される。
【0044】
支持体(119)
種々の活性な層113〜118及び不動態層112は、通常、固体基材119によって支持される。これは、プラスチック、ガラス、シリコン、セラミック等のような剛体、または同様に柔軟なプラスチックのような柔軟性のある材料であり得る。この支持体は(図2に示す支持体の場合のように)透明であってよく、その場合、光は該支持体及び透明電極118を通って発されることが可能である。または、支持体は非透明であり得るが、その場合、それを通って光が発する透明電極118は、支持体から離れた発光層の表面にある。
【0045】
不動態層(112)
カソード上の不動態(保護)層は、通常、低仕事関数金属カソードの頂部表面上に、典型的には真空中で熱蒸着された、安定な金属から作成される。不動態層のための有用な金属は当該分野で公知であり、例えば、Ag及びAl等を含む。不動態層の厚みは臨界的ではなく、所望の表面抵抗(表面抵抗またはシート抵抗は、厚みで割った抵抗率で定義される)を達成するように調整することができ、数百オングストロームから1000オングストロームを超える範囲で変化させることができる。
【0046】
製造方法
本発明のPLEDは、発光ポリマーブレンド層115、ホール注入層117、及び1つまたは2つの輸送層114及び116を設置するための、溶液キャスティング、スクリーン印刷、接触印刷、前駆体ポリマー加工、溶融加工等のような当該分野で公知の技術を用いて製造することができる。スパッタリング、蒸発等を用いて、層113及び118において電極材料を、また層112において不動態材料を設置することができる。
【0047】
好ましい具体例において、本発明は、溶液加工によって効果的なエレクトロホスホレセントPLEDを得る方法を提供する。該PLEDは前記の層順を以って形成される。最も典型的な具体例において、有機層のうち第一のものである、二層電極のホール注入層117は、基材119上に存在する透明金属/金属酸化物電極118自体の上に蒸着される。層117は溶液の状態で電極の上にキャスト、または印刷される。その溶媒は蒸発によって除去され、層順における次の層、ホール輸送層116が、また溶液の状態で、既に沈積された層117の上にキャストされ、再度、その溶媒が蒸発によって除去される。次に、発光層115が溶液からキャストされる。この溶液は、発光層を形成する発光ポリマー及び有機金属エミッタを含有する。溶媒が除去され、次の層である電子輸送層114が、溶液の状態で沈積され、これは真空蒸着電子注入電極113により乾燥されオーバーコートされる。続いて、不動態層112がオーバーコートされる。この具体例においては、発光層に結合する層が、水のようなより極性の溶媒、またはメタノール、エタノール、プロパノールまたはイソプロパノールのような炭素数1〜3のアルカノール、または水とこれらのアルカノールとのブレンドである、比較的極性の有機液体に対し差異的な可溶性を有するか、層115を形成する有機金属エミッタとブレンドされた発光ポリマーの溶液が、比較的非極性である有機溶媒、特に、比較的極性である炭化水素等のような、適切な比較的極性の溶媒中で形成されることが有利である。これは、これらの順次の層が、相互を破壊し、エッチングし、溶解するのを防止する。
【0048】
発光層及び2つ以上の輸送層を溶液、特に、極性が低い溶媒中の発光層用溶液、及びより極性が高い溶媒中の輸送層用溶液から製造することによって、発せられる光を濃度の変化によって調節することができる。このように、溶液から製造することにより、安定なCIE座標を持つ高性能の発色光、高いCRI値及び安定な色温度を、エレクトロホスホレセントPLEDで達成することができる。
【0049】
本発明は、高い明度、純粋な白色光のCIE座標(0.333,0.333)に近い安定なCIE座標、高いCRI値及び安定な色温度を有する白色エレクトロホスホレセントPLEDを提供する。より重要なことには、本明細書中に記載された白色エレクトロホスホレセントPLEDは、明るさ、適用された電圧、及び適用された電流密度に対して感受性でない、CIE座標、CIU値及び色温度を有する。
【0050】
高い明度、純粋な白色光の(0.333,0.333)に近い安定なCIE座標、高いCRI値、及び安定な色温度は、固体照明用途において有用である光源に関する臨界的なパラメーターである[D.B.Judd and G.Wyszelki,Color in Business,Science and Industry,3th ed.(John Wiley & Sons)1975,pp.91−388、G.Wyszelk and W.S.Stiles,Color Science,2nd ed.(Wiley,New York)1982、pp.117−2321]。このように、溶液から全ての活性層を製造することによって、高い明度、(0.333,0.333)に近い安定なCIE座標、高いCRI値及び安定な色温度を、多層白色発光PLEDから得ることができる。こうして本発明は、高性能多層白色PLEDを得る方法、固体照明用途において有用な方法を開示する。
【0051】
白色光を生じさせるメカニズム
本発明のI型PLEDから白色光を達成するためのメカニズムは、Ir(HFP)3:PFO−ETMブレンドから形成される代表的な発光層に関して記載することができる。この場合、該メカニズムはIr(HFP)3上へのホールのトラッピング、引き続いての、Ir(HFP)3+カチオン上への電子のトラッピングを含む[X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,and A.J.Heeger,Appl.Phys.Lett.,2002,81,3711]。この代表的な白色発光PLEDにおいて、(ITO/PEDOT:PSSまたはポリ(BTPD−Si−PFCB)からの)吸入されたホール、及び(Ca/AgまたはBa/Alからの)電子の一部はPFO−ETM主鎖上で再結合して、青色及び/または緑色光を生じる[X.Gong,P.Iyer,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,Adv.Func.Mater.,2003,13,325]。注入されたホール及び電子の他の部分はIr(HFP)3によってトラップされ、Ir(HFP)3のトリプレットから赤色光が引き続いて発光される[X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,M.S.Liu,A.K−Y.Jen,Adv.Mat.2003,15,45、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,J.Poly.Sci.Poly.Phys.2003,41,2691、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,and A.J.Heeger,Appl.Phyls.Lett.,2002,81,3711]。
【0052】
Ir(HFP)3:PFO−F(1%):PFO−ETMのブレンドから作成されたもののようなII型PLEDにおいて、注入されたホール及び電子は2つのプロセス、フルオレノンユニット上での、及びIr(HFP)3上での電子及びホールトラッピングと平行しての青色及び/または緑色発酵を生じさせる主査(PFO−ETM)上での直接的再結合、続いての、PFO−F(1%)からの緑色光[X.Gong,D.Moses and A.J.Heeger,Synthe.Met.,2004,141,171]及びIr(HFP)3のトリプレット励起状態からの赤色光[X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,M.S.Liu,A.K−Y.Jen,Adv.Mat.2003,15,45、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,J.Poly.Sci.Poly.Phys.2003,41,2691、X.Gong,J,C,Ostrowski,M.R.Robinson,D.Moses,G。C.Bazan,and A.J.Heeger,Adv.Mat.,2002,14,581、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan.and A.J.Heeger,Appl.Phys.Lett.,2002,81,3711]を伴う放射的再結合によって再結合する。
【0053】
白色PLEDにおける平衡化された電荷注入及び輸送へのアプローチ
ホール輸送層及び電子輸送層の付加によって達成される性能改良は、図3及び4を参照することによって説明することができる。図3は、5−ビフェニル−1,3,4−オキサジアゾール(PFO−ETM)、ポリ(ビニルカルバゾール)スルホン酸リチウム(PVK−SO3Li)及び4−(5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−ビフェニル−4’−イルスルホン酸ナトリウム(t−Bu−PBD−SO3Na)を末端にキャップしたポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)のπ−バンドの頂部(最高占有分子軌道、HOMO)及びπ*−バンドの底(最低非占有分子軌道、LUMO)のエネルギー順位、及びバリウム(Ba)及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PED0T:PSS)の仕事関数を示す。図4は、PFO−ETM、トリス(2,5−ビス−2’−(9’,9’−ジヘキシルフルオレン)ピリジン)イリジウム(III)、Ir(HFP)3、及びフルオレンの対応するエネルギー順位を示す。
【0054】
−5.75eVにおけるPVK−SO3LiのHOMOエネルギー順位は、−5.80eVにおけるPFO−ETMのHOMOエネルギー順位によく整列し、これは、PVK−SO3LiからPFO−ETMへのホール注入についてのほとんどオーム性の接触を意味する。−2.60eVにおけるt−Bu−PBD−SO3NaのLUMOは、−2.70eVにおけるバリウムの仕事関数よりも−0.10eV高い。しかしながら、この小さな電子注入バリアーでさえ、Ba/t−Bu−PBD−SO3Na界面における界面二極層の形成によって低下するであろう[X.Gong,P.Iyer,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heegr,Adv.Func.Mater.,2003,13,325、A.Rajagopal,C.I.Wu,A.Kahn,J.Appl.Phys.,1998,83,2649、S.T.Lee,X.Y.Hou,M.G.Mason,C.W.Tang,Appl.Phys.Lett.,1998,72,1593]。こうして、アノードから発光性ポリマー層への、ホール注入/輸送層としてのPVK−SO3Liの使用と、及びカソードから発光性ポリマー層への、電子注入/輸送層としてのt−Bu−PBD−SO3Naの使用の結果、改良された輸送及び高性能の白色光−発光PLEDがもたらされる(これを示す結果については図9〜14参照)。
【0055】
加えて、HTL及びETLは、各々、半導性発光性ポリマー層及びHTL及び/またはETLの間の界面における、各々、電子及びホールの輸送をブロックし、それにより、発光層内の放射性再結合の確率を高める。その結果、より高い発光効率、出力効率及び輝度の値が達成される(図11及び12参照)。
【0056】
固体照明
固体照明用途において全効率を計算する場合、ガラス/ITO基材の表面及びエッジを通って発せられる光を含む必要がある[H.A.E.Keitz,”Light Calculations and Measurements,”2nd Edition,Macmillan and Co Ltd,1971、A.D.Ryer,”Light Measurement Handbook” International Light Inc.,1998]。ガラス(n=1.5)、ITO(n=1.8〜2.0)及びポリマー(n=1.6〜1.8)の屈折率についての典型的な値を仮定し、ポリマー層で発せられた光の方向及び基材表面法線の間の臨界角θは空気−ポリマー界面では〜36(であり、ガラス−ポリマー界面においては〜62(である[B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,624、M.H.Lu,J.C.Sturm,J.Appl.Phys.,2002,91,595、J.Kido,Y.Lizurni,Appl.Phys.Lett.,1998,73,2721、N.C.Greenham,R.H.Friend.,and D.D.C.Bradley,Adv.Mater.,1994,6,491]。臨界角よりも大きな角度において表面に入射する光はガラス/ITO内で全て内部で反射され、次いで、デバイス内に導波される。ガイドされた光のいくらかは散乱によって逃げるが、残りはデバイス内で部分的に吸収されるか、あるいはガラス/ITO基材のエッジでカップリングされる。理論的には、順方向に発せられる光の分率は全体の1/(2n2)であり、ここで、nはエミッタ層の屈折率である[N.C.Greenham,R.H.Friend,and D.D.C.Bradley,Adv.Mater.,1994,6,491]。より詳細な光学モデリングは、順方向に発せられる分率として(3/4n2)を予測した[J.S.Kim,P.H.Ho,N.C.Greenham,and R.H.Friend,J.Appl.Phys.,2000,88,1073]。積分球を用いる一連の実験を通じて、Cao et al.は、測定された低下因子が、(2n2)が凡そ6(発光された層についてはn=1.7と仮定)との理論値よりもほぼ2〜2.5のファクターだけ低く、すなわち、4n2/3が凡そ3.85により近いことを示した[Y.Cao,I.D.Parker,G.Yu,C.Zhang,and A.J.Heeger,Nature,1999,397,414]。Forrest及び同僚は同様の結果を得ている、小さなデバイスでの近似において、彼らは、全LEが順方向の見る方向で観察されたものよりも1.7〜2.4のファクターだけ大きいことを見出した[B.W.D’Andrade,S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,1585、B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,624]。
実施例
【実施例1】
【0057】
PVK−SO3Liの合成。文献に記載された手法によってPVKをスルホン化した[S.Wang,Z.Zeng,S.Yang,L.−T.Weng,P.C.L.Wong,K.Ho,Macromolecules,2000,33,3232]。PVKのスルホン化度は約28%であった。スルホン化PVKを最小量の熱エタノールに溶解させ、得られた溶液を室温まで降下させた。この溶液にエタノール中の過剰のEtOLi溶液を加え、白色沈殿を形成した。沈殿を濾過によって収集し、冷却したエタノールで洗浄し、真空下で乾燥して、リチウム塩PVK−SO3Liを得た。
【0058】
実施例2
t−Bu−PBD−SO3Naの合成。文献に記載された手法によってt−Bu−PBD−SO3Hを合成した[T.J.Boyd,R.R.Schrock,Macromolecules,1999,32,6608]。水(THF(v/v 6:1)中のt−Bu−PBD−SO3Hの濃い溶液を塩ブラインに加えて、白色沈殿を得た。沈殿をエタノールで抽出し、エタノールを除去して、所望のナトリウム塩t−Bu−PBD−SO3Naを得た。
【0059】
実施例3
各々、50mgのPFO−ETM、20mgのPFO−F(1%)及び5mgのIr(HFP)3を1mlのトルエンに溶解させることによって、3つのストック溶液、PFO−ETM、PFO−F(1%)及びIr(HFP)3を、調製した。得られた0.5wt.−%Ir(HFP)3溶液を0.05wt.−%Ir(HFP)3に希釈した。混合物を65℃にて一晩攪拌し、次いで、室温まで冷却した。
【0060】
本実施例は、本発明の実施において用いられる発光性材料は共通の非極性有機溶媒に可溶性であることを示す。
【0061】
実施例4
I型溶液の調製。トルエン中の0.05wt.−%Ir(HFP)3の2.4μlの溶液、及びトルエン中の5wt.−%PFO−ETMの400μlの溶液を197.6μlの純粋なトルエンに加えた。
【0062】
II型溶液の調製。トルエン中の0.05wt.−%Ir(HFP)3の19.2μlの溶液、及びトルエン中のwt.−%PFO−ETMの400μlの溶液を180.8μlの純粋なトルエンに加えた。
【0063】
本実施例は、発光性材料は、共役ポリマーを有機金属エミッタとブレンドすることにより、所望の濃度で非極性有機溶媒中で作成することができることを示す。
【0064】
実施例5
エタノール中の0.5wt.−%PBK−SO3Liの溶液を調製した。
【0065】
エタノール中の0.5wt.−%T−Bu−PBD−SO3Naの溶液を調製した。
【0066】
本実施例は、PVK−SO3Li及びt−Bu−PBD−SO3Naの溶液が極性溶媒中にて所望の濃度で作成できることを示す。
【0067】
実施例6
実施例5に従って調製されたPVK−SO3Li溶液を窒素雰囲気中にて5000rpmにてPED0T:PSSの予め形成されたホール注入層上にスピン−キャストし、その後、真空オーブン中で約85℃にて24時間ベークして、ホール注入層117の頂部上のホール輸送層116を得た。ポリ(BTPD−Si−PFCB)のような代替ホール輸送層116を用いることもできる。
【0068】
実施例7
実施例4に従って調製されたI型及びII型溶液を、窒素雰囲気中で約2000rpmにて、実施例6に従って調製されたPVK−SO3Li層116上にスピン−キャストし、その後、窒素雰囲気中で65℃にて20分間ベークして、ホール輸送層116上の種々の発光層115を得た。
【0069】
実施例8
実施例5に従って調製されたt−Bu−PBD−SO3Na溶液を窒素雰囲気中で5000rpmにて発光層115上にスピン−キャストし、その後、真空オーブン中で約95℃にて24時間ベークして、発光層115上の代表的な電子輸送層114を得た。
【0070】
実施例9
(電子注入のための)Ba電極113を、約100オングストロームの厚みで、t−Bu−PBD−SO3Na層114上に形成し、次いで、10-6Torrでの気相蒸着によって、保護Al上塗層112を約2000オングストロームの厚みで蒸着した[X.Gong,J.C.Ostrowski,M.R.Robinson,D.Moses,G.C.Bazan,and A.J.Heeger,Adv.Mat.2002,14,581、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,M.S.Liu,A.K−Y.Jen,Adv.Mat.2003,15,45]。
【0071】
Caまたは他の低仕事関数金属(及びそれらの合金)を電子注入層113で用いることができる。
【0072】
上塗層112は、いずれかの不活性な金属、例えば、銀または金を用いて作成することができる。
【0073】
実施例6〜9は一緒に、多層PLEDが、有機層を溶媒加工することによって製造することができることを示す。
【0074】
実施例10
図5は、純粋なPFO−ETM、PFO−F(1%)、及びPFO−ETMへドープされたIr(HFP)3(Ir(HFP)3:/PFO−ETM=1wt.%の濃度)から作成されたデバイスから得られるエレクトロ発光スペクトルを示す。デバイスの製造/操作の間に発生したフルオレノン欠陥から、「青色発光」PFO−ETMからの強い緑色発光が生じた[x.Gong,P.Iyer,D.Moses,G,C.Bazan,A.J.Heeger,Adv.Func.Mater.,2003,13,325]。PFO−F(1%)からの広い緑色発光は、コポリマーにおけるPFO−ETMの主成分からフルオレノンの従成分への励起エネルギー移動に由来する[X.Gong,D.Moses and A.J.Heeger,Synthe.Met.2004,141,17]。600nmでの最大及び620における肩を持つ赤色発光はIr(HFP)3トリプレット発光である[X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,N.S.Liu,A.K−Y.Jen,Adv.Mat.2003,15,45、J.C.Ostrowski,M.R.Robinson,A.J.Heeger and G.C.Bazan,Chem.Commun.,2002,7,784]。
【0075】
実施例11
図6は、異なる印加電圧においてI型デバイスから得られたエレクトロ発光スペクトルを示す。白色光は2つの成分、PFO−ETM及びIr(HFP)3から生じた。TFO−ETMから青色及び緑色の双方[X.Gong,P.Iyer,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,Adv.Func.Mater.,2003,13,325]が生じ、Ir(HFP)3から赤色が生じた。
【0076】
実施例12
図7は、異なる印加電圧におけるII型デバイスから得られたエレクトロ発光スペクトルを示す。この白色光PLEDにおいては、PFO−F(1%)をPFO−ETM:Ir(HFP)3ブレンドに加えて、色の分布を微妙に調節した。こうして、白色光が3つの成分、PFO−ETM、PFO−F(1%)及びIr(HFP)3からII型デバイスによって生じた。PFO−ETMから青色及び緑色[X.Gong,P.Iyer,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,Adv.Func.Mater.,2003,13、325]が生じ、Ir(HFP)3から赤色が生じ、PFO−F(1%)から緑色[X.Gong,D.Moses,and A.J.Heeger,Synthe.Met.2004,141,171]が生じ、Ir(HFP)3から赤色が生じた。
【0077】
実施例13
CIE座標、CT及びCRIは、実施例12で得られたエレクトロルミネセンススペクトルから定量的に評価した[G.Wyszelki and W.S.Stiles,Color Science,2nd ed.(Wiley,New York)1982、D.B.Judd and G.Wyszecki,Color in Business,Scicenc and Industry,3rd ed.(John Wiley & Sons)1975]。
【0078】
実施例14
図8は1931CIE色度ダイアグラムを示し、座標はエレクトロホスホレセントPLEDからの発光に対応する。データ点は、異なる印加電圧においてバイアスされたI型デバイス(塗り潰していない四角)及びII型デバイス(塗り潰していない丸)双方について示す。I型デバイスでは、CIE座標はJ=0.10mA/cm2における(0.328,0.334)からJ=33mA/cm2における(0.296,0.290)までシフトする。II型デバイスでは、CIE座標はJ=0.2mA/cm2における(0.380,0.400)からJ=115mA/cm2における(0.346,0.368)へシフトする。全てが、純粋な白色光についてのCIE座標(0.333,0.333)に非常に近い。印加電圧の関数としてのCIE座標の安定性は、白色PLED/OLEDについて従前に報告されたものよりも非常に良好である[J.Kido,H,Shionoya,K,Nagai,Appl.Phys.Lett.,1995,67,2281、Y.Hamada,T.Sano,H.Fujii,Y.Nishino,Jpn.J.Appl.Phys.,1996,35,L1339、M.Strukelj,R.H.Jordan,A.Dodabalapur,A.、J.Am.Chem.Soc.,1996,118,1213、B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,624、Kido,H.Hongawa,K.Okuyama and K.Nagai,Appl.Phys.Lett.1994,64,815Y.Z.Wang,R.G.Sun,F.Meghdadi,G.Leising,A.J.Epstein,Appl.Phys.Lett.,1999,74,3613]。
【0079】
実施例15
I型デバイスは平均日中光(6500(K)のCT[R.W.G.Hunt,Measuring Color,2nd Ed.Ellis Horwood,1991]に非常に近いCT〜6400°K(図8参照)、及びCRI=92を有する。II型デバイスは太陽高度20(における日光のCT(4700(K)[R.W.G.Hunt,Measuring Color,2nd Ed.Ellis Horwood,1991]に非常に近いCT〜4500(K(図4参照)、及びCRI=86を有する(全ての値はJに対して感受性でない)。I型及びII型デバイスで用いる具体的な濃度は例のみで選択した。CIE座標はブレンドの組成を変化させることによって連続的に変化させることができる。図8において、点線は異なる色温度を示し、点線で示した卵型はヒトの目が色を白色として感知する近似的領域を示す。
【0080】
実施例16
図9は、I型デバイスについての、輝度(L)対電圧(V)、及び電流密度(J)対電圧(V)の特徴を示す。全てのデバイスは、フィルム厚みがより大きいため、PVK−SO3Liを含まないデバイスよりも〜1V高いほぼ6Vでスイッチを入れる。I型デバイスは25VにおいてLmaxとして凡そ2.4 104cd/m2を有する。
【0081】
実施例17
図10は、II型デバイスについて、輝度(L)対電圧(V)、及び電流密度(J)対電圧(V)の特徴を示す。全てのデバイスは、フィルム厚みがより大きいため、PVK−SO3Liを含まないデバイスよりも〜1V高いほぼ6Vでスイッチを入れる。II型デバイスは25VにおいてLmaxとして凡そ2.4×104cd/m2を有する。
【0082】
実施例18
図11は、HIL/HTLとしてのPEDOT:PSS、ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Na、及びHTLとしてのPVK−SO3Li、及びETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを各々持つI型デバイスについての順方向で見る外部発光効率(LEext)対電流密度J(mA/cm2)、及び順方向で見る外部出力効率(PEext,1m/W)対J(mA/cm2)を示す。
【0083】
ディスプレイ用途のため、ランバーチャン強度プロフィールを仮定した。図11に示した順方向で見る効率LEext及びPEextは以下の結果を伴って測定された[K.Mullen,Editor,Electroluminecense−from Synthesis to Devices,Wiley−VCH,2005(in press)]。I型デバイスはJ=23mA/cm2(V=11V)においてLEext=10.4cd/A、L=2391cd/m2及びPEext=3 lm/Wを有する。J=200mA/cm2においてさえ、I型デバイスがL=19500cd/m2、LEext=9.5cd/A及びPEext=2 lm/Wを有することに注意されたい。200mA/cm2におけるLEext及びPEextは白色OLED及びPLEDについて従前に報告されたいずれのものよりも有意に高い[J.Kido,H,Shionoya,K,Nagai,Appl.Phys.Lett.,1995,67,2281、C.Zhang,A.J.Heeger,J.Appl.Phys.,1998,84,1579、Z.Shen,P.E.Burrows,V.Bulvic,S.R.Forrest,M.E.Thompson,Science,1997,276,2009、Y.Hamada,T.Sano,H.Fujii,Y.Nishino,Jpn.J.Appl.Phys.,1996,35,L1339、Y.Z.Wang,R.G.Sun,F.Meghdadi,G.Leising,A.J.Epstein,Appl.Phys.Lett.,1999,74,3613、M.Strukelj,R.H.Jordan,A.Dodadalapur,A.、J.Am.Chem.Soc.,1996,118,1213、B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,6241]。
【0084】
図11に示したように、t−Bu−PBD−SO3Naを持つ白色PLEDからのLEextはt−Bu−PBD−SO3Na無しのそれよりも高い。同様に、HTLとしてのPVK−SO3NaとETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naとの双方を持つ白色PLEDからのLEextは、ETLとしてt−Bu−PBD−SO3Naのみを持つものよりも高い。従って、これらの結果は、ホール及び電子注入用のエネルギーバリアーを低下させるHTL及びETLを含む白色PLEDが、所与のJにおいて、最高のLEext及びPEext及び、それに対応して、最高のLを有することを示す。
【0085】
実施例19
図12は、各々、HIL/HTLとしてのPEDOT:PSS、ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Na、及びHTLとしてのPVK−SO3Li、及びETLとしてのT−Bu−PBD−SO3Naを有するII型デバイスの、順方向で見る外部発光効率(LEext)対電流密度J(mA/cm2)、及び順方向で見る外部出力効率(PEext,lm/W)対J(mA/cm2)を示す。
【0086】
実施例18の測定アプローチを反復した。J=12mA/cm2(V=15V)においてLEext=7.2cd/A、L=882cd/m2及びPEext=1.5 lm/W。J=200mA/cm2においてさえ、II型デバイスがL=9600cd/m2、LEext=4.8cd/A及びPEext=0.65 lm/Wを有することに注意されたい。ここでも、200mA/cm2におけるLEext及びPEextは、白色OLED及びPLEDについて従前に報告されたいずれよりも有意に高い。
【0087】
さらに、図12に示すように、ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つ白色II型PLEDからのELextはT−Bu−PBD−SO3Na無しよりも高い。同様に、HTLとしてのPVK−SO3Na、及びETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Na双方を持つ白色PLEDからのLEextは、ETLとしてt−Bu−PBD−SO3Naのみを持つものよりも高い。
【0088】
実施例20
固体照明用途のため、ランバーシャン強度プロフィールを仮定した。全外部発光効率(LE合計)及び出力効率(PE合計)は図13及び14に示した結果で測定された。[N/.C.Greenham,R.H.Friend,and D.D.C.Bradley,Adv.Mater.,1994,6,491−494、J.S.Kim,P.H.Ho,N.C.Greenham,and R.H.Friend,J.Appl.Phys.,2000,88,1073、Y.Cao,I.D.Parker,G.Yu,C.Zhang,and A.J.Heeger,Nature,1999,397,414、Commission International de l’Eclairage。Measurement of leds,CIE publication 127、B.W.D’Andrade,S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,1585、B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,624、K.Mullen,Edited,Electroluminecense−from Synthesis to Devices,Wiley−VCH,2005(in press)、M.H.Lu,J.C.Sturm,J.Appl.Phys.,2002,91,5951]。
【0089】
図13は、HILとしてのPEDOT:PSS、HTLとしてのPVK−SO3Li、及びEIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つI型デバイスについての全外部発光効率(LE合計)及び全外部出力効率(PE合計,1m/W)対電流密度J(mA/cm2)を示す。
【0090】
図14は、HILとしてのPEDOT:PSS、及びHTLとしてのPVK−SO3Li、及びEIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つII型デバイスについての全外部発光効率(LE合計)及び全外部出力効率(PE合計,MW)対電流密度J(mA/cm2)を示す。これらの図に反映されているように、I型デバイスはJ=23mA/cm2においてLE合計=21cd/A及びPE合計=6 lm/Wを有し、II型デバイスはJ=12mA/cm2においてLE合計=16cd/A及びPE合計=3 lm/Wを有する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(FFO)、5−ビフェニル−1,3,4−オキサジアゾール(PFO−ETM)(電子−輸送−部位)で末端がキャップされたポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、1%フルオレンを含むポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−フルオレノン)(PLO−F(1%))、トリス(2,5−ビス−2’−(9’,9’−ジヘキシルフルオレン)ピリジン)イリジウム(III)、Ir(HFP)3、ポリ(ビニルカルバゾール)スルホン酸リチウム(PVK−SO3Li)、及び4−(5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−ビフェニル−4’−イルスルホン酸ナトリウム(t−Bu−PBD−SO3Na)を含めた、本発明のデバイスの製造で使用する代表的な材料の分子構造を示す。
【図2】いくつかの代表的なデバイスの構成を模式的断面で示す。
【図3】PFO−ETM、PVK−SO3Li、t−Bu−PBD−SO3Naの最高占有分子軌道(HOMO)及び最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギー順位、及びPEDOT:PSS及びBaの仕事関数を示す。
【図4】PFO−ETM、PFO−F(1%)及びIr(HEP)3のHOMO及びLUMOエネルギー順位を示す。
【図5】発光層として、純粋なPFO−ETM、PFO−F(1%)、及びPFO−ETMにドープされたIr(HFP)3(Ir(HEP)3:PFO−ETM=1wt.−%)を用いて作成されたデバイスのエレクトロ発光スペクトルを示す。
【図6】異なる印加電圧におけるI型エレクトロホスホレセントPLEDから得られたエレクトロ発光スペクトルを示す。
【図7】異なる印加電圧におけるII型エレクトロホスホレセントPLEDから得られたエレクトロ発光スペクトルを示す。
【図8】CIE(193 1)色度ダイアグラムを示し、座標は、異なる印加電圧においてバイアスされた、I型デバイス(□□□)及びII型デバイス(○○○)からの発光に対応する。また、純粋な白色光の等エネルギー点(E)(0.333,0.333)(■)、及び4000°K(▲)、5000°K(▼)及び6500°K(●)の色温度に対応する座標も示される。点線は異なる色温度を示し、点線で描いた卵型は、ヒトの目が白色として色を感知する近似的領域を示す。
【図9】I型デバイスについての、輝度対印加電圧、及び電流密度対印加電圧を示す。
【図10】II型デバイスについて、輝度対印加電圧、及び電流密度対印加電圧を示す。
【図11】各々、HIL/HTLとしてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、スチレンスルホン酸PEDOT:PSS、及びETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つデバイスについて、及びHTLとしてのPVK−SO3Li、及びETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つデバイスについての、順方向に見た外部発光効率(LEext)対電流密度J(mA/cm2)、及びI型デバイスについての、順方向に見た外部出力効率(PEext,lm/W)対J(mA/cm2)を示す。
【図12】HIL/HTLとしてのPEDOT:PSSと、EIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naとを持つデバイス、及びHIL/HTLとしてのPVK−SO3Liと、EIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naとを持つデバイス各々についての、順方向に見た外部発光効率(LEext)対電流密度J(mA/cm2);及びII型デバイスについての順方向に見た外部出力効率(PEext,lm/W)対J(mA/cm2)を示す。
【図13】HILとしてのPEDOT:PSS、HTLとしてのPVK−SO3、及びEIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つI型デバイスについての全外部発光効率(LE合計)、及び全外部出力効率(PE合計,lm/W)対電流密度J(mA/cm2)を示す。
【図14】HILとしてのPEDOT:PSS、HTLとしてのPVK−SO3Li、及びEIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つII型デバイスについての全外部発光効率(LE合計)、及び全外部出力効率(PE合計,lm/W)対電流密度J(mA/cm2)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ポリマーをベースとする発光ダイオードの分野に属する。さらに詳しくは、本発明は、ある態様において、固体照明における使用において有用な白色光を発する多層ポリマー発光ダイオード(PLED)に関する。本発明はこれらのダイオードを製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ポリマーを発光層として使用するポリマー発光ダイオード(PLED)が提示されている。発光層に存在する材料を変化させることにより、広範囲の色を発光させることができる。発光ポリマーのみを複数ブレンドしたもの、または発光ポリマーと有機金属エミッタとをブレンドしたものを用いて、白色光を含めた発光光のさらなるカラーシェード(color shades)を達成することができる。
【0003】
白色光を発するLEDは、(カラーフィルターを備えた)アクティブマトリックスディスプレイにおいてバックライトとして用いられ、また固体照明に適用可能であるため、興味深くかつ潜在的に重要である[A.J.Heeger,Solid State Comm.,1998.107,673 & Rev.Modem Phys.,2001,73,681、B.W.D’Andrade,S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,1585、R.H.Friend,R.W.Gymer,E.B.Holmes,J.H.Burroughes,R.N.Marks,C.Taliani,D.D.C.Bradley,D.A.Dos Santos,J.L.Bredas,M.J.Ogdlund,及びW.R.Salaneck,Nature,1999,397,121]。そのような用途において主な問題点は、大きな面積のデバイスの製造、及び低コストの製造技術の使用であろう。溶液から活性な材料を加工することによる(例えば、インクジェット印刷または他の印刷技術の使用による)PLEDの製造は、活性層の沈積に真空技術の使用を必要とするOLED(小分子に基づく有機発光ダイオード)の製造[B.W.D’Andrade,S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,1585]よりも低価格であると期待される。OLED及びPLEDから白色光及び他の色の光を生じさせるために、いくつかのアプローチが用いられてきた[J.Kido,H,Shionoya,K,Nagai,Appl.Phys.Lett.,1995,67,2281−2283、C.Zhang,A.J.Heeger,J.Appl.Phys.,1998,84,1579、Z.Shen,P.E.Burrows,V.Bulvic.S.R.Forrest,M.E.Thompson,Science,1997,276,2009、Y.Hamada,T.Sano,H.Fujii,Y.Nishino,Jpn.J.Appl.Phys.,1996,35,L1339、Y.Z.Wang,R.G.Sun,F.Meghdadi,G.Leising,A.J.Epstein,Appl.Phys.Lett.,1999,74,3613、M.Strukelg,R.H.Jordan,A.Dodabalapur,A.、J.Am.Chem.Soc.,1996,118,1213、B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,624]。前掲の論文におけるアプローチにおいて、効率は中程度であって、寿命は青色エミッタの寿命により制限されていた[J.Kido,H,Shinoyama,K,Nagai,Appl.Phys.Lett.,1995,67,2281、Y.Hamada,T.Sano,H.Fujii,Y.Nishino,Jpn.J.Appl.Phys.,1996,35,L1339、Y.Z.Wang,R.G.Sun,F.Meghdadi,G.Leising,A.J.Epstein,Appl.Phys.Lett.,1999,74,3613、M.Strukelj,R.H.Jordan,A.Dodabalapur,A.、J.Am.Chem.Soc.,1996,118,1213、U.Scherf,E.J.W.List,Adv.Mater.2002,14,477、S.Setayesh,D.Marsitzky,K.Mullen,Macromolecules,2000,33,2016、X.Gong,P.Iyer,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,Adv.Func.Mater.,2003,13,325]。
【0004】
有機金属エミッタをドープした半導体ポリマーで製造されたPLEDは、「可塑性」エレクトロニクスのさらなる誘導性を供する。そのようなデバイスの代表的な例は、2003年10月3日に出願された米国出願第10/680,084号に記載されている。PLEDの発光層は、ポリマー及びブレンドを溶液からキャスト(cast)し、それにより、比較的単純かつ低コストの製造プロセスを可能とすることによって製造可能である[G.D.Muller,A.Falcou,N.Reckefuss,M.Roijhn,V.Wiederhirn,P.Rudati,H.Frohne,O.Nuyken,H.Becker,K.Meerholz,Nature,2003,421,829]。
【0005】
多層PLEDを生産するのに最も好適な製造技術としては、高仕事関数金属−金属酸化物接触(電極)及び保護金属上塗り層のような無機層を設置するためのスパッタリング及び種々の蒸着方法の使用が挙げられる。溶液からの順次のスピン−キャスティングや層の印刷などの溶媒沈積方法を用いて、有機ポリマー発光層ならびに他の層をデバイスに設置することができる。有機層が複数存在する場合、連続する層が相互作用する問題が存在し得る。より後に設けられる層の溶媒は先に設けられる層を溶解または変形(エッチング)させ得る。各層を平滑化かつ合着(coherent)化するのが望ましいことがしばしばであり、このように、該相互作用は破壊的であり得る。
【0006】
光は3つの量、CIE(Comission Internationale de l’Eclairage)座標、色温度(CT)及び色レンダリング指標(CRI)によって特徴付けることができる。「純粋な」白色光は(0.333,0.333)のCIE座標を有し、使用される色の発光のバランスを取ることによって得られる。照明用途においては、CTは、3000°K及び7500°Kの間の黒体源のCTと同様であることが必要である。平均日中光はCT=6500°Kを有し、他方、蛍光灯(温白色)はCT=3000°Kを有する[R.W.G.Hunt,Measuring Color,2nd Ed.Ellis Horwood,1991]。CRIは、光源を用いて見た場合に、どれほど「真の」色が見えるかの数値的尺度である。CRI値は0〜100の範囲であり、100は真の色の再現を表す。蛍光灯は60〜99の間のCRIレーティングを有する。ある種の用途では少なくとも70のCIU値で許容可能であるが、好ましい白色光源は約80またはそれより高いCRIを有するであろう。明るさ、高効率、適当なCT、高いCRI及び安定なCIE座標を持つ照明品質白色光を発するPLEDを提示することは、固体照明の将来に対して重要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
今回、本発明者らは、多層PLEDにおいて、効率を増強させ、製造を容易とする改良を見出した。
【0008】
我々は、PLEDの発光層に隣接する電子輸送層及び/又はホール輸送層を付加することによりPLEDの性能を改良することを見出した。我々は、さらに、もしこれらの付加層で使用する材料が、発光層を溶解し、かつ溶媒処理に用いる溶媒と極性が異なる溶媒に対し差異的な可溶性を有するならば、溶媒処理技術によってこれらの付加層をPLEDに取り込むことが可能であることを見出した。
【0009】
このように、本発明は、ある具体例においては、白色光を発し、かつ固体照明用途において有用な多層ポリマー発光ダイオード(PLED)を提供することができる。より具体的には、本発明は、比較的非極性である溶媒に可溶性を有する発光層である、有機金属エミッタとブレンドされた半導体ポリマー、及び、ホール注入/輸送層(HIL/HTL)及び/又は電子注入/輸送層(EIL/ETL)である、比較的極性である溶媒に可溶性を有する有機材料(ポリマーまたは小分子)を含む、多層白色PLEDを提供することができる。全ての層は、好ましくは、対応する溶液からキャストされる。本発明のこれらの好ましい材料の白色発光は、液晶ディスプレイ(LCD)におけるバックライト、及び固体照明に適用することができる。白色光は、単一の発光層におけるポリマーブレンドから発せられる。本発明で開発された戦略では、発光ポリマーブレンド、HIL/HTL、及びEIL/ETLを、対応する溶液からキャストすることによって、多層白色発光PLEDの製造を可能とする。本発明は、青色から赤色まで渡りかつ白色光を含めた全ての色において照明品質光を発する多層PLEDEを、比較的単純に製造することも可能とする。本発明で示される方法は、高明度、高効率、適当な色温度、高い色レンダリング指標、及び安定なCIE(Comission Internationale de l’Eclairage)座標を持つ照明品質の白色光を発する多層PLEDの、比較的単純な製造を可能とする。本発明で示される多層PLEDの製造方法は、種々の層を溶液からキャストすることによって製造される、大きな面積の多層ディスプレイ、及び他の大きな面積の多層オプトエレクトロニクス・デバイスで用いることができる。
【0010】
本発明のデバイスは、発光層、及び、該発光層に隣接するホール注入/輸送層(HIL/HTL)及び電子注入/輸送層(EIL/ETL)のうちの少なくとも1つを使用する。これら輸送層の利点は、ホール輸送層が時に「ホール注入/輸送層」または「HIL/HTL」と呼ばれる、単一層ホール注入アノードを使用したデバイスにおいて、また、それ自体の第二の層が「ホール注入層」である二層アノードを使用するデバイスにおいて、観察することができる。この第二の場合において、混乱を避けるために、該輸送層は、単に、「ホール輸送層」または「HTL」といい、当該分野で知られた「ホール注入層」または「HIL」はその通常の名称を保有する。本発明のデバイスは、それらの発光層として、有機金属エミッタとブレンドされた比較的非極性の溶媒に可溶性を有する半導体ポリマーを使用し、また、HIL/HTL及びEIL/ETL層の双方として、極性溶媒(例えば、水及び/または低級アルカノール)に可溶性を有するポリマー及び小分子を使用する。本発明のデバイスは、観察者によって平均化された場合に白色に見える異なる領域における赤色、緑色及び青色発光よりはむしろ、単一の発光領域における、(実施例においてI型及びII型デバイスとして表される)2つまたは3つの発光エミッタを使用することができる。同様に、3つを超えるエミッタを用いることもできる。発光エミッタは、(シングレット状態からの)蛍光、または(シングレット状態からの)蛍光及び(トリプレット状態からの)リン光の組合せを介して白色光を発することができる。白色光は、単一の発光性の薄いフィルム層を形成する単一の材料へブレンドされた2つまたは3つの発光エミッタから、及び、ホストポリマーにブレンドされた緑色及び赤色−発光成分のようなさらなるエミッタから、(共役ポリマーのような)ホストポリマーからの組合せ発光を通じて達成され得る。2つまたは3つ以上の発光中心を含む単一の発光層により、溶液処理による、発光性PLED、特に白色発光PLEDの製造が可能となる。
【0011】
HIL/HTL及び/またはEIL/ETL層は、電子及びホール電流を平衡化させ、かつデバイスの効率を増大させる手段を提供する。重要なことには、HTL及びETL双方である、極性溶媒に可溶性を有する材料の使用、及び、発光層である、極性が低い溶媒に可溶性を有する材料の使用により、種々の層を溶液から加工することによって、青色〜赤色、特に白色の、可視スペクトル内の異なる色を持つ光を発する多層PLEDの製造が可能となる。本発明の戦略は、高い色レンダリング指標、適当な色温度、及び所望のCIE座標によって特徴付けられる、白色発光PLEDを含めた、明るくかつ効率的な多層PLEDの、比較的単純な製造を可能とする。さらに、これらの多層エレクトロホストレセントPLEDからの色レンダリング指標、色温度及びCIE座標は、明るさに対して感受性を有さず、適応された電圧に対して感受性を有さず、かつ電流密度に対しても感受性を有していない。さらに、本発明で示される多層PLEDの製造方法は、印刷技術によって溶液から製造される、多層発光ダイオードを含む大きな面積のディスプレイ、及び他の大きな面積の多層オプトエレクトロニクス・デバイスの開発で用いることができる。
【0012】
本発明の1つの目的は、固体照明用途に、かつ液晶ディスプレイ(LCD)用のバックライトとして適した高い発光効率、高い外部量子効率及び明るさを呈する多層PLED、特に白色発光PLEDを生産する方法を提供することにある。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、極性溶媒に可溶性を有するポリマー及び小分子を、ホール注入/輸送層、及び/または電子注入/輸送層として用いることによって、高い性能の多層PLEDを生産することにある。
【0014】
本発明の第3の目的は、印刷技術によって溶液から製造される、発光ダイオードを含む多層デバイス、及び他の多層オプトエレクトロニクス・デバイスの開発で用いることができる技術を提供することにある。
【0015】
本発明のさらにもう1つの目的は、高い色レンダリング指標、適当な色温度及び所望のCIE座標をもつ白色光を呈する多層白色PLEDを製造することにある。
【0016】
本発明のさらなる目的は、PLEDにおいてホール注入/輸送層として、及び/または電子注入/輸送層として極性溶媒に可溶性を有するポリマー及び小分子を利用することにある。
【0017】
本発明の追加的な目的は、その全ては明るさ、適用された電圧及び電流密度に対して感受性でない、安定した色レンダリング指標、安定した色温度、及び安定したCIE座標を持つ多層白色発光PLEDを生産することにある。
【0018】
本発明のさらにもう1つの目的は、純粋な白色光のCIE座標(0.333,0.333)に近いCIEx,y−色度座標を有する白色発光を生じる多層白色光発光PLEDを生産することにある。
【0019】
本発明の追加の目的は、平均日中光に特徴的な6400°K値に近い色温度か、または太陽高度20°における日光に特徴的な4500°K値に近い色温度を有する白色発光を生じる多層白色光発光PLEDを製造することにある。
【0020】
本発明のさらなる目的は、色レンダリング指標が80を超える白色発光を生じる多層白色光発光PLEDを製造することにある。
【0021】
本発明のもう1つの目的は、色レンダリング指標が90を超える白色発光を生じる多層白色光−発光PLEDを製造することにある。
【0022】
好ましい具体例の記載
命名法及び略語
本発明のこの明細書において、種々の化学化合物に言及する。命名される化合物のいくつかを図1に示す。
【0023】
加えて、以下の略語を使用する。
CIE: Comission Internationale de l’Eclairage
CT: 色−レンダリング指標
EIL/ETL: 電子注入−輸送層
ETM: 電子−輸送層
HIL/HTL: ホール注入−輸送層
HIL: ホール注入層
HTL: ホール輸送層
HFP: 9,9−ジヘキシルフルオレンピリジン
HOMO: 最高占有分子軌道
ITO: 酸化インジウムスズ
Ir(HFP)3: トリス2,5−ビス−2’(9’、9’ジヘキシルフルオレン)ピリジンイリジウム(III)
LCD: 液晶ディスプレイ
LUMO: 最低非占有分子軌道
MEH−PPV: ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン
MBL−PPV: ポリ[5−メトキシ−2−(4−スルホブトキシ)−1,4−フェニレンビニレン
OLED: 有機−発光ダイオード
PLED: ポリマー発光ダイオード
PPV: ポリ(フェニレンビニレン)
PFO: ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)
PFO−ETM:電子−輸送−部位を末端にキャップしたポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、例えば、5−ビフェニル−1,3,4オキサジアゾールを末端にキャップしたポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)
PFO−F: ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)−フルオレノン
t−Bu PBD−SO3Na:4−(5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサシアゾール−2−イル)ビフェニル−4’−イルスルホン酸
PVK: ポリ(ビニルカルバゾール)
PVK−SO3Na: ポリ(ビニルカルバゾール)スルホン酸ナトリウム
PVK−SO3Li: ポリ(ビニルカルバゾール)スルホン酸リチウム
PEDOT:SSS: ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):スチレンスルホン酸
ポリ(BT[PD−Si−PFCB]: ポリ(ビス)テトラフェニルジアミノ)ビフェニル−ペルフルオロシクロブタン
THF: テトラヒドロフラン
DMSO: ジメチルスルホキシド
DMF: ジメチルホルムアミド
【0024】
定義
本発明のこの明細書において、及び請求項において、時に、「極性」または「非極性」である溶媒に言及し、また、「極性」または「非極性」溶媒について「差異的な可溶性を示す(being differentially soluble)」、または「差異的な可溶性を有する(having differential solubility)」材料に言及する。
【0025】
溶媒極性は、ここではChristian Reichart,Solvevnts and Solvent Effects in Organic Chemistry,VCH Publishers 2nd ed.,1988の教示に従って定義される。Reichartは、水の値である高い値1.000から、シクロヘキサンの値である低い値0.006の範囲の、相対的極性値を提供する。これらの相対的極性値を用い、「極性溶媒」は、0.400〜1.000の相対的極性を有する溶媒であると定義される。そのような溶媒の例には、水、グリセリン、エチレングリコール、メタノール、ジエチレングリコール、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルホルムアミド(DMF)及びその混合物が含まれる。水、低級アルカノール(炭素数1〜3)及びその混合物が好ましい極性溶媒である。
【0026】
「非極性溶媒」は、0.006〜約0.300の相対的極性を有する溶媒であると定義される。そのような溶媒は、例えば、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、四塩化炭素、キシレン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチル−エーテル(MTBE)、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、グライム、ジグライム及びクロロホルムを含む。炭素数6〜8炭化水素、特に、ベンゼン及びトルエンは好ましい非極性溶媒である。
【0027】
本発明の加工において、種々の材料は、「極性」溶媒または「非極性」溶媒に「差異的な可溶性を有する(differentially soluble)」といわれる。これは、最も一般的には、該材料が他の材料よりも溶媒の1つのファミリーにより高い可溶性を有することを意味する。好ましくは、「差異化された溶解度(differential solubility)」は、材料が他のファミリーにおけるように1つのファミリーにおいて、少なくとも150%、より好ましくは少なくとも200%、最も好ましくは少なくとも300%可溶性であることを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
デバイスの構成
図2中の「A」で示される先行技術のPLEDは、低仕事関数電子注入電極113及び高仕事関数ホール注入電極118と接触した半導性発光層115で作成されていた。「A」に示すように、PLEDは、機械的強度を供し、通常、支持体から遠ざかる側の電極を機械的かつ化学的に保護するための不動態層112を含有する基材119上に支持される。ホール注入電極118及び電子注入電極113に対する、支持体119及び不動態層112の位置は、最も普通には、図2に示した通りである。所望があれば、これらの位置を逆にし、電子注入電極を本発明の精神から逸脱することなく支持体上に置くことができる。同様に、本発明及びその利点を記載するにおいては時に、これらの「支持体」119に言及し、「保護外側層112」の層を、簡略化のために省略する。
【0029】
図2中の「B」で示される先行技術では、さらに、ホール注入電極118及び発光層115の間に位置する有機ホール注入層117で作成された二層アノードを含むPLEDが考えられた。この二層アノードホール注入の構成は知られている[D.Braun and A.Heeger,Appln,Phys.Lett,119,58,1982]。
【0030】
図2において10、11及び12は、本発明のデバイスについての3つの構成を示す。そこには、1つまたは2つの追加の「輸送」層114及び116が存在する。2つの「輸送」層が存在する場合、それらは発光層115の対向側にある(10参照)。1つの「輸送」層が存在する場合、それはEIL/ETL114として層115の電子注入側(11参照)、またはHTL116として層115のホール注入側(12参照)に存在し得る。本発明者らは、EIH/ETL及びHTLが共に存在する場合に最良の結果を得た。
【0031】
図2における先行技術Bの二層アノードホール注入電極が有機ホール注入層117を含むことに留意されたい。具体例13において、ホール注入層は単一のHIL/HTL有機層120としてホール輸送層と組み合わされている。
【0032】
これらの個々の層を次に記載する。
【0033】
発光層(115)
図2に示される発光層115は、1つ以上の発光性ポリマー(またはコポリマー)と1つ以上の有機金属エミッタとのブレンド(混合物)を含む。好ましい発光性ポリマーは一般には供役している。好ましい例は、トリス(2,5−ビス−2’−(9’、9’−ジヘキシルフルオレン)ピリジン)イリジウム(III)Ir(HFP)3)をブレンドした5−ビフェニル−1,3,4−オキサジアゾール(PFO−ETM)が末端にキャップされたPFOまたはポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)から作成されたデバイス、及び、PFO−ETMと、1%フルオレン(PFO−F(1%))及びIr(HFP)3を含むポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−フルオレン)とのブレンドから作成されたデバイスを含む。図1は、PFO−ETM、PFO−F(1%)及びIr(HFP)3の分子構造を示す。PFO−ETMの合成は科学文献に報告されている[X.Gong,W.L.Ma,J.C.Ostrowski,K.Bechgaad,G.C.Bazan,D.Moses,A.J.Heeger,S.Xiao,Adv.Func.Mater.,2004,14,393]。他の発光性ポリマー、特に、青色−発光性ポリマーもまた本発明の実施で用いることもできる。Ir(HFP)3の合成は科学文献に報告されている[J.C.Ostrowski,M.R.Robinson,A.J.Heeger,and G.C.Bazan,Chem.Commun.,2002,7,784]。PFO−F(1%)の合成も報告されている[X.Gong,D.Moses and A.J.Heeger,Synth.Met.2004,141,17]。Ir(HFP)3は、中心原子としてIr、Pr、Os、RuまたはAu等を有する錯体及び化合物である有用な有機金属エミッタの代表である。
【0034】
ホストとしてのPFO−ETM、及びゲストとしての有機金属エミッタに基づく高性能PLEDは従前に示されている。[X.Gong,W.L.Ma,J.C.Ostrowski,K.Bechgaad,G.C.Bazan,D.Moses,A.J.Heeger,S.Xiao,Adv.Func.Mater.,2004,14,393、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,V.J.Heeger,M.S.Liu,A.K−Y.Jen,Adv.Mat.2003,15,45、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,J.Poly.Sci.Poly.Phys.,2003,41,2691]。
【0035】
これらの発光層で用いるポリマー材料は、通常、炭化水素溶媒等に対する差異的な可溶性を示す。
【0036】
好適例として本明細書中に記載された材料は、白色光発光が望まれる状況で好ましい。PFO−ETMのようなポリマーそれ自体は青色発光材料である。有機金属エミッタ及び他のホストポリマーにより、白色全体発光(white overall emission)をもたらすエミッタを作成することができる。
【0037】
電子注入/輸送層(114)
典型的には20〜30nmの厚みである電子注入/輸送層(EIL/ETL)は、図2に示す発光層115の頂部表面に溶液からキャストされる。電子注入/輸送層は、比較的大きな電子親和性を持つ、すなわち、発光層における発光ポリマーのπ*−バンドの底のそれにエネルギーが近い最低非占有分子軌道(LUMO)を持つ、例えば、約eV内の半導性有機ポリマー材料から製造される。好ましくは、EIL/ETLは、低仕事関数電子注入電極の仕事関数よりも発光層のLUMOに近いLUMOを有する材料から製造される。その例はt−Bu−PBD SO3Naを含む[T.J.Boyd,R.R.Schrock,Macromolecules,1999,32,6608]。この層は、水性及び/または低級アルカノール溶媒のような極性溶媒をベースとする溶液からキャストされる。
【0038】
ホール輸送層(116)
典型的には20〜30nmの厚みであるホール輸送層(HTL)は、ホール注入層117の頂部表面へ溶液からキャストされる。もしホール注入電極が、層117を有しない単一の層アノード118であるならば、該層116は、次段落に説明するように、HIL/HTLとして電極118に直接的に沈積されるであろう。ホール注入/輸送層は、比較的小さなイオン化ポテンシャルを持つ。すなわち、発光層における発光ポリマーのn−バンドの頂部のそれにエネルギーが近い最高占有分子軌道(HOMO)を持つ、例えば、約1eV以内の半導性有機ポリマー材料から製造される。好ましくは、HTLはホール注入電極の仕事関数のそれよりも発光層のHOMOにより近いHOMOを有する材料から製造される。その例はPVK−S03Liを含む[S.Wang,Z.Zeng,S.Yang/L.,T.Weng,P.C.L.Wong,K.Ho,Macromolecules,2000,33,3232]。この層は、水性及び/または低級アルカノール溶液のような極性溶媒をベースとする溶液からキャストされる。
【0039】
本発明のデバイスは二層アノードを含むことができる。二層アノードの1つの層は、一般には、「ホール注入層」または「HIL」という。そのような層が存在する場合、層116は「ホール輸送層」または「HTL」という。もし別のホール注入層が存在しなければ、層116は双方の機能を発揮することができ、「ホール注入輸送層」または「HIL/HTL」ということもできる。
【0040】
任意のホール注入層(117)
ホール注入層117が二層アノードを供するべく存在する場合、該層は典型的には20〜30nmの厚みであり、溶液から電極118上にキャストされる。層117で用いる材料の例は、極性(水性)溶液からキャストされるPED0T:PSSのような半導性有機ポリマー、またはポリ(BTPD−Si−PFCB)を含む[S.Liu,X.Z.Jiang,H.Ma,M.S.Liu,A.K.−Y.Jen,Macro.,2000,33,3514、X.Gong,D.Moses,E.J.Heeger,S.Liu and A.−Y.Jen,Appl.Phys.Lett.,2003,83,183]。PEDOT:PSSが好ましい。他方、ポリ(BTPD−Si−PFCB)をホール注入層として用いることによって、発光性ポリマーの望ましくないエッチング、ITO電極の望ましくないエッチング、及びミクロ−ショートの形成のような、PEDOT:PSSの使用によってもたらされる、PLEDに存在する多くの加工問題を回避することができる[G.Greczynski,Th.Kugler and W.R.Salaneck,Thin Solid Films,1999,354,129、M.P.de Jong,L.J.van Ijzendoorn,M.J.A.de Voigt,Appl.Phys.Lett.2000,77,2255]。
【0041】
極性溶媒に差異的な可溶性を有する材料で作成された移動層と共に、非極性溶媒に差異的な可溶性を有するポリマーで作成された発光層を用いる利点は、任意のホール注入層が極性溶媒に差異的な可溶性を有する材料で作成される場合にも達成されることに注意すべきである。これは、単一のホール注入/輸送層120が使用される図2の具体例13において、所望の加工利点を達成するには極性溶媒に差異的な可溶性を有することが有利であることを意味する。この層120における材料は、所望であれば、層117及び層116において材料と実質的に重複することができる。
【0042】
高仕事関数電極(118)
高仕事関数ホール注入電極は、典型的には、20オーム/平方以下の低効率、及び89%以上の透過率を550nmにおいて持つ酸化インジウム−スズ(ITO)のような透明な導電性金属−金属酸化物または硫化物材料である。金または銀の薄い透明層のような他の材料も入手可能である。ここで「高仕事関数」は、一般には、約4.5eV以上の仕事関数であると考えられる。この電極は、通常、熱気相蒸着、電子ビーム蒸発、RFまたはマグネトロンスパッタリング、化学蒸着等によって固体支持体112上に蒸着される。これらと同様のプロセスで、低仕事関数電極113を同様に蒸着することができる。高仕事関数電極の主な要件は、適当な仕事関数、低い低効率及び高い透明性の組み合わせである。
【0043】
低仕事関数電極(113)
低仕事関数電極113は電子注入接触部として働く。これは、典型的には、電極118からアクティブ発光性ポリマー層115の反対側におかれた低仕事関数金属または合金から作成される。ここで低仕事関数材料は、約4.3eV以下の仕事関数を持つ材料を含み、例えばBa、Ca、Mg、In及びTbを含む事が、当該分野で知られている。それらには、しばしば、Ag、Au、Al等のような安定な金属の層が伴う。該層は、Ba、Ca、Tbのような反応性材料の頂部上の保護層として働く。他の低仕事関数(低イオン化ポテンシャル)導電性材料を、電子注入接触部として、慣用的な金属の代わりに用いてもよい。電子注入電極フィルムの厚みは臨界的ではなく、所望の表面抵抗(表明抵抗またはシート抵抗は、厚みで割った抵抗率で定義される)を達成するように調整することができ、典型的には、有意には、100Å未満から約2000Å以上の範囲で変化させることができる。これらの材料は、一般には、電極118の記載において記述された技術により薄いフィルムの状態で設置される。
【0044】
支持体(119)
種々の活性な層113〜118及び不動態層112は、通常、固体基材119によって支持される。これは、プラスチック、ガラス、シリコン、セラミック等のような剛体、または同様に柔軟なプラスチックのような柔軟性のある材料であり得る。この支持体は(図2に示す支持体の場合のように)透明であってよく、その場合、光は該支持体及び透明電極118を通って発されることが可能である。または、支持体は非透明であり得るが、その場合、それを通って光が発する透明電極118は、支持体から離れた発光層の表面にある。
【0045】
不動態層(112)
カソード上の不動態(保護)層は、通常、低仕事関数金属カソードの頂部表面上に、典型的には真空中で熱蒸着された、安定な金属から作成される。不動態層のための有用な金属は当該分野で公知であり、例えば、Ag及びAl等を含む。不動態層の厚みは臨界的ではなく、所望の表面抵抗(表面抵抗またはシート抵抗は、厚みで割った抵抗率で定義される)を達成するように調整することができ、数百オングストロームから1000オングストロームを超える範囲で変化させることができる。
【0046】
製造方法
本発明のPLEDは、発光ポリマーブレンド層115、ホール注入層117、及び1つまたは2つの輸送層114及び116を設置するための、溶液キャスティング、スクリーン印刷、接触印刷、前駆体ポリマー加工、溶融加工等のような当該分野で公知の技術を用いて製造することができる。スパッタリング、蒸発等を用いて、層113及び118において電極材料を、また層112において不動態材料を設置することができる。
【0047】
好ましい具体例において、本発明は、溶液加工によって効果的なエレクトロホスホレセントPLEDを得る方法を提供する。該PLEDは前記の層順を以って形成される。最も典型的な具体例において、有機層のうち第一のものである、二層電極のホール注入層117は、基材119上に存在する透明金属/金属酸化物電極118自体の上に蒸着される。層117は溶液の状態で電極の上にキャスト、または印刷される。その溶媒は蒸発によって除去され、層順における次の層、ホール輸送層116が、また溶液の状態で、既に沈積された層117の上にキャストされ、再度、その溶媒が蒸発によって除去される。次に、発光層115が溶液からキャストされる。この溶液は、発光層を形成する発光ポリマー及び有機金属エミッタを含有する。溶媒が除去され、次の層である電子輸送層114が、溶液の状態で沈積され、これは真空蒸着電子注入電極113により乾燥されオーバーコートされる。続いて、不動態層112がオーバーコートされる。この具体例においては、発光層に結合する層が、水のようなより極性の溶媒、またはメタノール、エタノール、プロパノールまたはイソプロパノールのような炭素数1〜3のアルカノール、または水とこれらのアルカノールとのブレンドである、比較的極性の有機液体に対し差異的な可溶性を有するか、層115を形成する有機金属エミッタとブレンドされた発光ポリマーの溶液が、比較的非極性である有機溶媒、特に、比較的極性である炭化水素等のような、適切な比較的極性の溶媒中で形成されることが有利である。これは、これらの順次の層が、相互を破壊し、エッチングし、溶解するのを防止する。
【0048】
発光層及び2つ以上の輸送層を溶液、特に、極性が低い溶媒中の発光層用溶液、及びより極性が高い溶媒中の輸送層用溶液から製造することによって、発せられる光を濃度の変化によって調節することができる。このように、溶液から製造することにより、安定なCIE座標を持つ高性能の発色光、高いCRI値及び安定な色温度を、エレクトロホスホレセントPLEDで達成することができる。
【0049】
本発明は、高い明度、純粋な白色光のCIE座標(0.333,0.333)に近い安定なCIE座標、高いCRI値及び安定な色温度を有する白色エレクトロホスホレセントPLEDを提供する。より重要なことには、本明細書中に記載された白色エレクトロホスホレセントPLEDは、明るさ、適用された電圧、及び適用された電流密度に対して感受性でない、CIE座標、CIU値及び色温度を有する。
【0050】
高い明度、純粋な白色光の(0.333,0.333)に近い安定なCIE座標、高いCRI値、及び安定な色温度は、固体照明用途において有用である光源に関する臨界的なパラメーターである[D.B.Judd and G.Wyszelki,Color in Business,Science and Industry,3th ed.(John Wiley & Sons)1975,pp.91−388、G.Wyszelk and W.S.Stiles,Color Science,2nd ed.(Wiley,New York)1982、pp.117−2321]。このように、溶液から全ての活性層を製造することによって、高い明度、(0.333,0.333)に近い安定なCIE座標、高いCRI値及び安定な色温度を、多層白色発光PLEDから得ることができる。こうして本発明は、高性能多層白色PLEDを得る方法、固体照明用途において有用な方法を開示する。
【0051】
白色光を生じさせるメカニズム
本発明のI型PLEDから白色光を達成するためのメカニズムは、Ir(HFP)3:PFO−ETMブレンドから形成される代表的な発光層に関して記載することができる。この場合、該メカニズムはIr(HFP)3上へのホールのトラッピング、引き続いての、Ir(HFP)3+カチオン上への電子のトラッピングを含む[X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,and A.J.Heeger,Appl.Phys.Lett.,2002,81,3711]。この代表的な白色発光PLEDにおいて、(ITO/PEDOT:PSSまたはポリ(BTPD−Si−PFCB)からの)吸入されたホール、及び(Ca/AgまたはBa/Alからの)電子の一部はPFO−ETM主鎖上で再結合して、青色及び/または緑色光を生じる[X.Gong,P.Iyer,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,Adv.Func.Mater.,2003,13,325]。注入されたホール及び電子の他の部分はIr(HFP)3によってトラップされ、Ir(HFP)3のトリプレットから赤色光が引き続いて発光される[X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,M.S.Liu,A.K−Y.Jen,Adv.Mat.2003,15,45、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,J.Poly.Sci.Poly.Phys.2003,41,2691、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,and A.J.Heeger,Appl.Phyls.Lett.,2002,81,3711]。
【0052】
Ir(HFP)3:PFO−F(1%):PFO−ETMのブレンドから作成されたもののようなII型PLEDにおいて、注入されたホール及び電子は2つのプロセス、フルオレノンユニット上での、及びIr(HFP)3上での電子及びホールトラッピングと平行しての青色及び/または緑色発酵を生じさせる主査(PFO−ETM)上での直接的再結合、続いての、PFO−F(1%)からの緑色光[X.Gong,D.Moses and A.J.Heeger,Synthe.Met.,2004,141,171]及びIr(HFP)3のトリプレット励起状態からの赤色光[X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,M.S.Liu,A.K−Y.Jen,Adv.Mat.2003,15,45、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,J.Poly.Sci.Poly.Phys.2003,41,2691、X.Gong,J,C,Ostrowski,M.R.Robinson,D.Moses,G。C.Bazan,and A.J.Heeger,Adv.Mat.,2002,14,581、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan.and A.J.Heeger,Appl.Phys.Lett.,2002,81,3711]を伴う放射的再結合によって再結合する。
【0053】
白色PLEDにおける平衡化された電荷注入及び輸送へのアプローチ
ホール輸送層及び電子輸送層の付加によって達成される性能改良は、図3及び4を参照することによって説明することができる。図3は、5−ビフェニル−1,3,4−オキサジアゾール(PFO−ETM)、ポリ(ビニルカルバゾール)スルホン酸リチウム(PVK−SO3Li)及び4−(5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−ビフェニル−4’−イルスルホン酸ナトリウム(t−Bu−PBD−SO3Na)を末端にキャップしたポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)のπ−バンドの頂部(最高占有分子軌道、HOMO)及びπ*−バンドの底(最低非占有分子軌道、LUMO)のエネルギー順位、及びバリウム(Ba)及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PED0T:PSS)の仕事関数を示す。図4は、PFO−ETM、トリス(2,5−ビス−2’−(9’,9’−ジヘキシルフルオレン)ピリジン)イリジウム(III)、Ir(HFP)3、及びフルオレンの対応するエネルギー順位を示す。
【0054】
−5.75eVにおけるPVK−SO3LiのHOMOエネルギー順位は、−5.80eVにおけるPFO−ETMのHOMOエネルギー順位によく整列し、これは、PVK−SO3LiからPFO−ETMへのホール注入についてのほとんどオーム性の接触を意味する。−2.60eVにおけるt−Bu−PBD−SO3NaのLUMOは、−2.70eVにおけるバリウムの仕事関数よりも−0.10eV高い。しかしながら、この小さな電子注入バリアーでさえ、Ba/t−Bu−PBD−SO3Na界面における界面二極層の形成によって低下するであろう[X.Gong,P.Iyer,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heegr,Adv.Func.Mater.,2003,13,325、A.Rajagopal,C.I.Wu,A.Kahn,J.Appl.Phys.,1998,83,2649、S.T.Lee,X.Y.Hou,M.G.Mason,C.W.Tang,Appl.Phys.Lett.,1998,72,1593]。こうして、アノードから発光性ポリマー層への、ホール注入/輸送層としてのPVK−SO3Liの使用と、及びカソードから発光性ポリマー層への、電子注入/輸送層としてのt−Bu−PBD−SO3Naの使用の結果、改良された輸送及び高性能の白色光−発光PLEDがもたらされる(これを示す結果については図9〜14参照)。
【0055】
加えて、HTL及びETLは、各々、半導性発光性ポリマー層及びHTL及び/またはETLの間の界面における、各々、電子及びホールの輸送をブロックし、それにより、発光層内の放射性再結合の確率を高める。その結果、より高い発光効率、出力効率及び輝度の値が達成される(図11及び12参照)。
【0056】
固体照明
固体照明用途において全効率を計算する場合、ガラス/ITO基材の表面及びエッジを通って発せられる光を含む必要がある[H.A.E.Keitz,”Light Calculations and Measurements,”2nd Edition,Macmillan and Co Ltd,1971、A.D.Ryer,”Light Measurement Handbook” International Light Inc.,1998]。ガラス(n=1.5)、ITO(n=1.8〜2.0)及びポリマー(n=1.6〜1.8)の屈折率についての典型的な値を仮定し、ポリマー層で発せられた光の方向及び基材表面法線の間の臨界角θは空気−ポリマー界面では〜36(であり、ガラス−ポリマー界面においては〜62(である[B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,624、M.H.Lu,J.C.Sturm,J.Appl.Phys.,2002,91,595、J.Kido,Y.Lizurni,Appl.Phys.Lett.,1998,73,2721、N.C.Greenham,R.H.Friend.,and D.D.C.Bradley,Adv.Mater.,1994,6,491]。臨界角よりも大きな角度において表面に入射する光はガラス/ITO内で全て内部で反射され、次いで、デバイス内に導波される。ガイドされた光のいくらかは散乱によって逃げるが、残りはデバイス内で部分的に吸収されるか、あるいはガラス/ITO基材のエッジでカップリングされる。理論的には、順方向に発せられる光の分率は全体の1/(2n2)であり、ここで、nはエミッタ層の屈折率である[N.C.Greenham,R.H.Friend,and D.D.C.Bradley,Adv.Mater.,1994,6,491]。より詳細な光学モデリングは、順方向に発せられる分率として(3/4n2)を予測した[J.S.Kim,P.H.Ho,N.C.Greenham,and R.H.Friend,J.Appl.Phys.,2000,88,1073]。積分球を用いる一連の実験を通じて、Cao et al.は、測定された低下因子が、(2n2)が凡そ6(発光された層についてはn=1.7と仮定)との理論値よりもほぼ2〜2.5のファクターだけ低く、すなわち、4n2/3が凡そ3.85により近いことを示した[Y.Cao,I.D.Parker,G.Yu,C.Zhang,and A.J.Heeger,Nature,1999,397,414]。Forrest及び同僚は同様の結果を得ている、小さなデバイスでの近似において、彼らは、全LEが順方向の見る方向で観察されたものよりも1.7〜2.4のファクターだけ大きいことを見出した[B.W.D’Andrade,S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,1585、B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,624]。
実施例
【実施例1】
【0057】
PVK−SO3Liの合成。文献に記載された手法によってPVKをスルホン化した[S.Wang,Z.Zeng,S.Yang,L.−T.Weng,P.C.L.Wong,K.Ho,Macromolecules,2000,33,3232]。PVKのスルホン化度は約28%であった。スルホン化PVKを最小量の熱エタノールに溶解させ、得られた溶液を室温まで降下させた。この溶液にエタノール中の過剰のEtOLi溶液を加え、白色沈殿を形成した。沈殿を濾過によって収集し、冷却したエタノールで洗浄し、真空下で乾燥して、リチウム塩PVK−SO3Liを得た。
【0058】
実施例2
t−Bu−PBD−SO3Naの合成。文献に記載された手法によってt−Bu−PBD−SO3Hを合成した[T.J.Boyd,R.R.Schrock,Macromolecules,1999,32,6608]。水(THF(v/v 6:1)中のt−Bu−PBD−SO3Hの濃い溶液を塩ブラインに加えて、白色沈殿を得た。沈殿をエタノールで抽出し、エタノールを除去して、所望のナトリウム塩t−Bu−PBD−SO3Naを得た。
【0059】
実施例3
各々、50mgのPFO−ETM、20mgのPFO−F(1%)及び5mgのIr(HFP)3を1mlのトルエンに溶解させることによって、3つのストック溶液、PFO−ETM、PFO−F(1%)及びIr(HFP)3を、調製した。得られた0.5wt.−%Ir(HFP)3溶液を0.05wt.−%Ir(HFP)3に希釈した。混合物を65℃にて一晩攪拌し、次いで、室温まで冷却した。
【0060】
本実施例は、本発明の実施において用いられる発光性材料は共通の非極性有機溶媒に可溶性であることを示す。
【0061】
実施例4
I型溶液の調製。トルエン中の0.05wt.−%Ir(HFP)3の2.4μlの溶液、及びトルエン中の5wt.−%PFO−ETMの400μlの溶液を197.6μlの純粋なトルエンに加えた。
【0062】
II型溶液の調製。トルエン中の0.05wt.−%Ir(HFP)3の19.2μlの溶液、及びトルエン中のwt.−%PFO−ETMの400μlの溶液を180.8μlの純粋なトルエンに加えた。
【0063】
本実施例は、発光性材料は、共役ポリマーを有機金属エミッタとブレンドすることにより、所望の濃度で非極性有機溶媒中で作成することができることを示す。
【0064】
実施例5
エタノール中の0.5wt.−%PBK−SO3Liの溶液を調製した。
【0065】
エタノール中の0.5wt.−%T−Bu−PBD−SO3Naの溶液を調製した。
【0066】
本実施例は、PVK−SO3Li及びt−Bu−PBD−SO3Naの溶液が極性溶媒中にて所望の濃度で作成できることを示す。
【0067】
実施例6
実施例5に従って調製されたPVK−SO3Li溶液を窒素雰囲気中にて5000rpmにてPED0T:PSSの予め形成されたホール注入層上にスピン−キャストし、その後、真空オーブン中で約85℃にて24時間ベークして、ホール注入層117の頂部上のホール輸送層116を得た。ポリ(BTPD−Si−PFCB)のような代替ホール輸送層116を用いることもできる。
【0068】
実施例7
実施例4に従って調製されたI型及びII型溶液を、窒素雰囲気中で約2000rpmにて、実施例6に従って調製されたPVK−SO3Li層116上にスピン−キャストし、その後、窒素雰囲気中で65℃にて20分間ベークして、ホール輸送層116上の種々の発光層115を得た。
【0069】
実施例8
実施例5に従って調製されたt−Bu−PBD−SO3Na溶液を窒素雰囲気中で5000rpmにて発光層115上にスピン−キャストし、その後、真空オーブン中で約95℃にて24時間ベークして、発光層115上の代表的な電子輸送層114を得た。
【0070】
実施例9
(電子注入のための)Ba電極113を、約100オングストロームの厚みで、t−Bu−PBD−SO3Na層114上に形成し、次いで、10-6Torrでの気相蒸着によって、保護Al上塗層112を約2000オングストロームの厚みで蒸着した[X.Gong,J.C.Ostrowski,M.R.Robinson,D.Moses,G.C.Bazan,and A.J.Heeger,Adv.Mat.2002,14,581、X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,M.S.Liu,A.K−Y.Jen,Adv.Mat.2003,15,45]。
【0071】
Caまたは他の低仕事関数金属(及びそれらの合金)を電子注入層113で用いることができる。
【0072】
上塗層112は、いずれかの不活性な金属、例えば、銀または金を用いて作成することができる。
【0073】
実施例6〜9は一緒に、多層PLEDが、有機層を溶媒加工することによって製造することができることを示す。
【0074】
実施例10
図5は、純粋なPFO−ETM、PFO−F(1%)、及びPFO−ETMへドープされたIr(HFP)3(Ir(HFP)3:/PFO−ETM=1wt.%の濃度)から作成されたデバイスから得られるエレクトロ発光スペクトルを示す。デバイスの製造/操作の間に発生したフルオレノン欠陥から、「青色発光」PFO−ETMからの強い緑色発光が生じた[x.Gong,P.Iyer,D.Moses,G,C.Bazan,A.J.Heeger,Adv.Func.Mater.,2003,13,325]。PFO−F(1%)からの広い緑色発光は、コポリマーにおけるPFO−ETMの主成分からフルオレノンの従成分への励起エネルギー移動に由来する[X.Gong,D.Moses and A.J.Heeger,Synthe.Met.2004,141,17]。600nmでの最大及び620における肩を持つ赤色発光はIr(HFP)3トリプレット発光である[X.Gong,J.C.Ostrowski,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,N.S.Liu,A.K−Y.Jen,Adv.Mat.2003,15,45、J.C.Ostrowski,M.R.Robinson,A.J.Heeger and G.C.Bazan,Chem.Commun.,2002,7,784]。
【0075】
実施例11
図6は、異なる印加電圧においてI型デバイスから得られたエレクトロ発光スペクトルを示す。白色光は2つの成分、PFO−ETM及びIr(HFP)3から生じた。TFO−ETMから青色及び緑色の双方[X.Gong,P.Iyer,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,Adv.Func.Mater.,2003,13,325]が生じ、Ir(HFP)3から赤色が生じた。
【0076】
実施例12
図7は、異なる印加電圧におけるII型デバイスから得られたエレクトロ発光スペクトルを示す。この白色光PLEDにおいては、PFO−F(1%)をPFO−ETM:Ir(HFP)3ブレンドに加えて、色の分布を微妙に調節した。こうして、白色光が3つの成分、PFO−ETM、PFO−F(1%)及びIr(HFP)3からII型デバイスによって生じた。PFO−ETMから青色及び緑色[X.Gong,P.Iyer,D.Moses,G.C.Bazan,A.J.Heeger,Adv.Func.Mater.,2003,13、325]が生じ、Ir(HFP)3から赤色が生じ、PFO−F(1%)から緑色[X.Gong,D.Moses,and A.J.Heeger,Synthe.Met.2004,141,171]が生じ、Ir(HFP)3から赤色が生じた。
【0077】
実施例13
CIE座標、CT及びCRIは、実施例12で得られたエレクトロルミネセンススペクトルから定量的に評価した[G.Wyszelki and W.S.Stiles,Color Science,2nd ed.(Wiley,New York)1982、D.B.Judd and G.Wyszecki,Color in Business,Scicenc and Industry,3rd ed.(John Wiley & Sons)1975]。
【0078】
実施例14
図8は1931CIE色度ダイアグラムを示し、座標はエレクトロホスホレセントPLEDからの発光に対応する。データ点は、異なる印加電圧においてバイアスされたI型デバイス(塗り潰していない四角)及びII型デバイス(塗り潰していない丸)双方について示す。I型デバイスでは、CIE座標はJ=0.10mA/cm2における(0.328,0.334)からJ=33mA/cm2における(0.296,0.290)までシフトする。II型デバイスでは、CIE座標はJ=0.2mA/cm2における(0.380,0.400)からJ=115mA/cm2における(0.346,0.368)へシフトする。全てが、純粋な白色光についてのCIE座標(0.333,0.333)に非常に近い。印加電圧の関数としてのCIE座標の安定性は、白色PLED/OLEDについて従前に報告されたものよりも非常に良好である[J.Kido,H,Shionoya,K,Nagai,Appl.Phys.Lett.,1995,67,2281、Y.Hamada,T.Sano,H.Fujii,Y.Nishino,Jpn.J.Appl.Phys.,1996,35,L1339、M.Strukelj,R.H.Jordan,A.Dodabalapur,A.、J.Am.Chem.Soc.,1996,118,1213、B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,624、Kido,H.Hongawa,K.Okuyama and K.Nagai,Appl.Phys.Lett.1994,64,815Y.Z.Wang,R.G.Sun,F.Meghdadi,G.Leising,A.J.Epstein,Appl.Phys.Lett.,1999,74,3613]。
【0079】
実施例15
I型デバイスは平均日中光(6500(K)のCT[R.W.G.Hunt,Measuring Color,2nd Ed.Ellis Horwood,1991]に非常に近いCT〜6400°K(図8参照)、及びCRI=92を有する。II型デバイスは太陽高度20(における日光のCT(4700(K)[R.W.G.Hunt,Measuring Color,2nd Ed.Ellis Horwood,1991]に非常に近いCT〜4500(K(図4参照)、及びCRI=86を有する(全ての値はJに対して感受性でない)。I型及びII型デバイスで用いる具体的な濃度は例のみで選択した。CIE座標はブレンドの組成を変化させることによって連続的に変化させることができる。図8において、点線は異なる色温度を示し、点線で示した卵型はヒトの目が色を白色として感知する近似的領域を示す。
【0080】
実施例16
図9は、I型デバイスについての、輝度(L)対電圧(V)、及び電流密度(J)対電圧(V)の特徴を示す。全てのデバイスは、フィルム厚みがより大きいため、PVK−SO3Liを含まないデバイスよりも〜1V高いほぼ6Vでスイッチを入れる。I型デバイスは25VにおいてLmaxとして凡そ2.4 104cd/m2を有する。
【0081】
実施例17
図10は、II型デバイスについて、輝度(L)対電圧(V)、及び電流密度(J)対電圧(V)の特徴を示す。全てのデバイスは、フィルム厚みがより大きいため、PVK−SO3Liを含まないデバイスよりも〜1V高いほぼ6Vでスイッチを入れる。II型デバイスは25VにおいてLmaxとして凡そ2.4×104cd/m2を有する。
【0082】
実施例18
図11は、HIL/HTLとしてのPEDOT:PSS、ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Na、及びHTLとしてのPVK−SO3Li、及びETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを各々持つI型デバイスについての順方向で見る外部発光効率(LEext)対電流密度J(mA/cm2)、及び順方向で見る外部出力効率(PEext,1m/W)対J(mA/cm2)を示す。
【0083】
ディスプレイ用途のため、ランバーチャン強度プロフィールを仮定した。図11に示した順方向で見る効率LEext及びPEextは以下の結果を伴って測定された[K.Mullen,Editor,Electroluminecense−from Synthesis to Devices,Wiley−VCH,2005(in press)]。I型デバイスはJ=23mA/cm2(V=11V)においてLEext=10.4cd/A、L=2391cd/m2及びPEext=3 lm/Wを有する。J=200mA/cm2においてさえ、I型デバイスがL=19500cd/m2、LEext=9.5cd/A及びPEext=2 lm/Wを有することに注意されたい。200mA/cm2におけるLEext及びPEextは白色OLED及びPLEDについて従前に報告されたいずれのものよりも有意に高い[J.Kido,H,Shionoya,K,Nagai,Appl.Phys.Lett.,1995,67,2281、C.Zhang,A.J.Heeger,J.Appl.Phys.,1998,84,1579、Z.Shen,P.E.Burrows,V.Bulvic,S.R.Forrest,M.E.Thompson,Science,1997,276,2009、Y.Hamada,T.Sano,H.Fujii,Y.Nishino,Jpn.J.Appl.Phys.,1996,35,L1339、Y.Z.Wang,R.G.Sun,F.Meghdadi,G.Leising,A.J.Epstein,Appl.Phys.Lett.,1999,74,3613、M.Strukelj,R.H.Jordan,A.Dodadalapur,A.、J.Am.Chem.Soc.,1996,118,1213、B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,6241]。
【0084】
図11に示したように、t−Bu−PBD−SO3Naを持つ白色PLEDからのLEextはt−Bu−PBD−SO3Na無しのそれよりも高い。同様に、HTLとしてのPVK−SO3NaとETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naとの双方を持つ白色PLEDからのLEextは、ETLとしてt−Bu−PBD−SO3Naのみを持つものよりも高い。従って、これらの結果は、ホール及び電子注入用のエネルギーバリアーを低下させるHTL及びETLを含む白色PLEDが、所与のJにおいて、最高のLEext及びPEext及び、それに対応して、最高のLを有することを示す。
【0085】
実施例19
図12は、各々、HIL/HTLとしてのPEDOT:PSS、ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Na、及びHTLとしてのPVK−SO3Li、及びETLとしてのT−Bu−PBD−SO3Naを有するII型デバイスの、順方向で見る外部発光効率(LEext)対電流密度J(mA/cm2)、及び順方向で見る外部出力効率(PEext,lm/W)対J(mA/cm2)を示す。
【0086】
実施例18の測定アプローチを反復した。J=12mA/cm2(V=15V)においてLEext=7.2cd/A、L=882cd/m2及びPEext=1.5 lm/W。J=200mA/cm2においてさえ、II型デバイスがL=9600cd/m2、LEext=4.8cd/A及びPEext=0.65 lm/Wを有することに注意されたい。ここでも、200mA/cm2におけるLEext及びPEextは、白色OLED及びPLEDについて従前に報告されたいずれよりも有意に高い。
【0087】
さらに、図12に示すように、ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つ白色II型PLEDからのELextはT−Bu−PBD−SO3Na無しよりも高い。同様に、HTLとしてのPVK−SO3Na、及びETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Na双方を持つ白色PLEDからのLEextは、ETLとしてt−Bu−PBD−SO3Naのみを持つものよりも高い。
【0088】
実施例20
固体照明用途のため、ランバーシャン強度プロフィールを仮定した。全外部発光効率(LE合計)及び出力効率(PE合計)は図13及び14に示した結果で測定された。[N/.C.Greenham,R.H.Friend,and D.D.C.Bradley,Adv.Mater.,1994,6,491−494、J.S.Kim,P.H.Ho,N.C.Greenham,and R.H.Friend,J.Appl.Phys.,2000,88,1073、Y.Cao,I.D.Parker,G.Yu,C.Zhang,and A.J.Heeger,Nature,1999,397,414、Commission International de l’Eclairage。Measurement of leds,CIE publication 127、B.W.D’Andrade,S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,1585、B.W.D’Andrade,R.J.Holmes,and S.R.Forrest,Adv.Mater.,2004,16,624、K.Mullen,Edited,Electroluminecense−from Synthesis to Devices,Wiley−VCH,2005(in press)、M.H.Lu,J.C.Sturm,J.Appl.Phys.,2002,91,5951]。
【0089】
図13は、HILとしてのPEDOT:PSS、HTLとしてのPVK−SO3Li、及びEIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つI型デバイスについての全外部発光効率(LE合計)及び全外部出力効率(PE合計,1m/W)対電流密度J(mA/cm2)を示す。
【0090】
図14は、HILとしてのPEDOT:PSS、及びHTLとしてのPVK−SO3Li、及びEIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つII型デバイスについての全外部発光効率(LE合計)及び全外部出力効率(PE合計,MW)対電流密度J(mA/cm2)を示す。これらの図に反映されているように、I型デバイスはJ=23mA/cm2においてLE合計=21cd/A及びPE合計=6 lm/Wを有し、II型デバイスはJ=12mA/cm2においてLE合計=16cd/A及びPE合計=3 lm/Wを有する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(FFO)、5−ビフェニル−1,3,4−オキサジアゾール(PFO−ETM)(電子−輸送−部位)で末端がキャップされたポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、1%フルオレンを含むポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−フルオレノン)(PLO−F(1%))、トリス(2,5−ビス−2’−(9’,9’−ジヘキシルフルオレン)ピリジン)イリジウム(III)、Ir(HFP)3、ポリ(ビニルカルバゾール)スルホン酸リチウム(PVK−SO3Li)、及び4−(5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−ビフェニル−4’−イルスルホン酸ナトリウム(t−Bu−PBD−SO3Na)を含めた、本発明のデバイスの製造で使用する代表的な材料の分子構造を示す。
【図2】いくつかの代表的なデバイスの構成を模式的断面で示す。
【図3】PFO−ETM、PVK−SO3Li、t−Bu−PBD−SO3Naの最高占有分子軌道(HOMO)及び最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギー順位、及びPEDOT:PSS及びBaの仕事関数を示す。
【図4】PFO−ETM、PFO−F(1%)及びIr(HEP)3のHOMO及びLUMOエネルギー順位を示す。
【図5】発光層として、純粋なPFO−ETM、PFO−F(1%)、及びPFO−ETMにドープされたIr(HFP)3(Ir(HEP)3:PFO−ETM=1wt.−%)を用いて作成されたデバイスのエレクトロ発光スペクトルを示す。
【図6】異なる印加電圧におけるI型エレクトロホスホレセントPLEDから得られたエレクトロ発光スペクトルを示す。
【図7】異なる印加電圧におけるII型エレクトロホスホレセントPLEDから得られたエレクトロ発光スペクトルを示す。
【図8】CIE(193 1)色度ダイアグラムを示し、座標は、異なる印加電圧においてバイアスされた、I型デバイス(□□□)及びII型デバイス(○○○)からの発光に対応する。また、純粋な白色光の等エネルギー点(E)(0.333,0.333)(■)、及び4000°K(▲)、5000°K(▼)及び6500°K(●)の色温度に対応する座標も示される。点線は異なる色温度を示し、点線で描いた卵型は、ヒトの目が白色として色を感知する近似的領域を示す。
【図9】I型デバイスについての、輝度対印加電圧、及び電流密度対印加電圧を示す。
【図10】II型デバイスについて、輝度対印加電圧、及び電流密度対印加電圧を示す。
【図11】各々、HIL/HTLとしてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、スチレンスルホン酸PEDOT:PSS、及びETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つデバイスについて、及びHTLとしてのPVK−SO3Li、及びETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つデバイスについての、順方向に見た外部発光効率(LEext)対電流密度J(mA/cm2)、及びI型デバイスについての、順方向に見た外部出力効率(PEext,lm/W)対J(mA/cm2)を示す。
【図12】HIL/HTLとしてのPEDOT:PSSと、EIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naとを持つデバイス、及びHIL/HTLとしてのPVK−SO3Liと、EIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naとを持つデバイス各々についての、順方向に見た外部発光効率(LEext)対電流密度J(mA/cm2);及びII型デバイスについての順方向に見た外部出力効率(PEext,lm/W)対J(mA/cm2)を示す。
【図13】HILとしてのPEDOT:PSS、HTLとしてのPVK−SO3、及びEIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つI型デバイスについての全外部発光効率(LE合計)、及び全外部出力効率(PE合計,lm/W)対電流密度J(mA/cm2)を示す。
【図14】HILとしてのPEDOT:PSS、HTLとしてのPVK−SO3Li、及びEIL/ETLとしてのt−Bu−PBD−SO3Naを持つII型デバイスについての全外部発光効率(LE合計)、及び全外部出力効率(PE合計,lm/W)対電流密度J(mA/cm2)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層の対向側にある電子注入電極及びホール注入電極を含み、該発光層が少なくとも1つの蛍光発光可能な発光第一半導体ポリマーを含む有機ポリマーを含み、該発光第一半導体ポリマーがそれと混合された少なくとも1つのリン光発光可能なリン光エミッタに対するホストとして働く、発光デバイスにおいて、
該電子注入電極及び該発光層の間に設けられ、かつ該発光ポリマーのπ*バンドの底に対してエネルギーが近い最低非占有分子軌道を有する第二の半導体ポリマーを含む有機電子輸送層、及び
該ホール注入電極及び該発光層の間に設けられ、かつ該発光ポリマーの頂部πバンドに対してエネルギーが近い最高占有分子軌道を有する第三の半導体ポリマーを含む有機ホール輸送層
のうちの少なくとも1つを含む改良。
【請求項2】
電子輸送層を含む請求項1記載の発光デバイス。
【請求項3】
ホール輸送層を含む請求項1記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記第二の半導体ポリマーが、前記発光ポリマーのπ*バンドの底と、前記電子注入電極の仕事関数との間のエネルギーレベルを有する最低非占有分子軌道を有する請求項2記載の発光デバイス。
【請求項5】
第三の半導体ポリマーが、前記発光ポリマーの頂部πバンドと、前記ホール注入電極の仕事関数との間のエネルギーレベルを有する最高占有分子軌道を有する、請求項3記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記ホール注入電極が、高仕事関数電極、及び、該高仕事関数電極と前記発光層との間の有機ホール注入層を含む、二層電極それ自体である、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記発光層が共役ポリマーを含む請求項1記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記発光層が単一のリン光エミッタを含み、かつ前記第一の半導体ポリマーが前記リン光エミッタに対してホストとして働く、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記発光層が2つ以上のリン光エミッタを含み、かつ前記第一の半導体ポリマーが該2つ以上のリン光エミッタに対して共通のホストとして働く、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項10】
下記の積層順で各層を含む多層有機ポリマーをベースとする発光デバイス:
低仕事関数電極;
有機ポリマーをベースとする電子注入/輸送層;
半導体有機ポリマー及び少なくとも1つのリン光エミッタを含む発光層;
有機ポリマーをベースとするホール輸送層;及び
高仕事関数電極。
【請求項11】
前記高仕事関数電極が、高仕事関数層、及び、該高仕事関数層と前記ホール輸送層との間にあり有機ポリマーをベースとするホール注入層を含む、二層電極それ自体である、請求項10記載の発光デバイス。
【請求項12】
さらに基材及び保護層を含み、該基材及び該保護層のうち一方が前記低仕事関数電極に隣接して位置し、他方が前記高仕事関数電極に隣接して位置し、かつそのうち少なくとも1つが前記発光層で生じる光の少なくとも一部に対して透明である、請求項10記載の発光デバイス。
【請求項13】
前記発光層が、複数の非極性溶媒の各々に対する差異的な可溶性を有する半導体ポリマーを含み、前記輸送層がそれぞれ、複数の極性溶媒の各々に対する差異的な可溶性を有するポリマーを含む、請求項10記載の発光デバイス。
【請求項14】
前記発光層が共役ポリマーを含む請求項10記載の発光デバイス。
【請求項15】
前記発光層がさらに単一のリン光エミッタを含み、かつ前記半導体ポリマーが前記リン光エミッタに対してホストとして働く請求項10記載の発光デバイス。
【請求項16】
前記発光層が、加えて、2つ以上のリン光エミッタを含み、かつ前記半導体ポリマーが2以上のリン光エミッタに対して共通のホストとして働く、請求項10記載の発光デバイス。
【請求項17】
前記発光層が、
a.少なくとも1つの有機ポリマー蛍光エミッタ、及び
b.単一の発光領域である、緊密混合物中の少なくとも1つのリン光エミッタ、
を含み、
前記少なくとも1つの有機ポリマー蛍光エミッタからの発光が前記少なくとも1つのリン光エミッタからの発光よりもフォトンエネルギーが高く、かつ前記少なくとも1つの有機ポリマー蛍光エミッタ及び前記少なくとも1つのリン光エミッタの発光の組み合せが、白色発光を与えるのに十分な可視スペクトルにわたる、請求項10記載の発光デバイス。
【請求項18】
J=200mA/cm2において、少なくとも約10000cd/m2のL、少なくとも約10cd/AのLEext、及び少なくとも約2 lm/WのPEextを有する有機ポリマーをベースとする白色発光デバイス。
【請求項19】
単一のリン光エミッタを含む発光層を含む請求項18記載の白色発光デバイス。
【請求項20】
II型デバイスであり、2つ以上のリン光エミッタを含む発光層を含む、請求項18記載の白色発光デバイス。
【請求項21】
80を超える色レンダリング指標を有する光を発する請求項18記載の白色発光デバイス。
【請求項22】
約6400°Kの色温度を有する請求項19記載の白色発光デバイス。
【請求項23】
約4700°Kの色温度を有する請求項20記載の白色発光デバイス。
【請求項24】
順次の溶液処理によって多層デバイスとして製造され、かつ固体光用途に適している、請求項21記載の白色発光デバイス。
【請求項25】
J=23mA/cm2において、少なくとも約20000cd/m2の輝度、少なくとも約20cd/AのLE合計、及び少なくとも約6 lm/WのPE合計を有し、かつ固体光用途に適している、請求項21記載の白色発光デバイス。
【請求項26】
発光層の対向側にある電子注入層及びホール注入層を含み、該発光層が少なくとも1つの蛍光発光可能な発光第一半導体ポリマーを含む有機ポリマーを含み、該発光第一半導体ポリマーがそれと混合された少なくとも1つのリン光発光可能なリン光エミッタに対するホストとして働く、発光デバイスにおいて、
該電子注入層及び該発光層の間に設けられ、かつ該発光ポリマーのπ*バンドの底に対してエネルギーが近い最低非占有分子軌道を有する第二の半導体ポリマーを含む有機電子輸送層、及び
該ホール注入層及び該発光層の間に設けられ、かつ該発光ポリマーの頂部πバンドに対してエネルギーが近い最高占有分子軌道を有する第三の半導体ポリマーを含む有機ホール輸送層
のうちの少なくとも1つを含む改良であり、
該第一半導体ポリマーが第一の溶媒に差異的な可溶性を有し、該第二及び第三の半導体ポリマーの少なくとも1つが第二の溶媒に差異的な可溶性を有し、該第一及び第二の溶媒は極性が互いに異なることを特徴とする、該改良。
【請求項27】
前記第一の溶媒が前記第二の溶媒よりも極性が低い請求項26記載の発光デバイス。
【請求項28】
前記第一の溶媒が液体状炭化水素を含み、かつ前記第二の溶媒が低級アルカノールを含む、請求項27記載の発光デバイス。
【請求項29】
前記第一の溶媒に溶解した溶液である前記発光層を設置すること、前記第一の溶媒を蒸発させ、前記第二の溶媒に溶解した溶液である前記電子輸送層及び前記ホール輸送層のうちの少なくとも1つを設置すること、及び、前記第二の溶媒を蒸発させることを含む、請求項26記載の発光デバイスを製造する方法。
【請求項30】
第一の層の前記溶媒の蒸発が、第二の層を設置する前に完了する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
電子輸送層及びホール輸送層を共に設置することを含み、ここで、該ホール輸送層がまず設置され、続いて前記発光層が設置され、その後に続いて該電子輸送層が設置されることを特徴とする、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記発光層溶液の溶媒がより非極性的な溶媒であり、前記電子輸送層溶液の溶媒が前記ホール輸送層溶液の溶媒と同一または異なり、前記輸送層溶液の溶媒が前記発光層の溶媒よりも極性的な溶媒である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記発光層の溶媒が非極性炭化水素を含み、かつ前記輸送層の溶媒が低級アルカノールを含む、請求項32記載の方法。
【請求項1】
発光層の対向側にある電子注入電極及びホール注入電極を含み、該発光層が少なくとも1つの蛍光発光可能な発光第一半導体ポリマーを含む有機ポリマーを含み、該発光第一半導体ポリマーがそれと混合された少なくとも1つのリン光発光可能なリン光エミッタに対するホストとして働く、発光デバイスにおいて、
該電子注入電極及び該発光層の間に設けられ、かつ該発光ポリマーのπ*バンドの底に対してエネルギーが近い最低非占有分子軌道を有する第二の半導体ポリマーを含む有機電子輸送層、及び
該ホール注入電極及び該発光層の間に設けられ、かつ該発光ポリマーの頂部πバンドに対してエネルギーが近い最高占有分子軌道を有する第三の半導体ポリマーを含む有機ホール輸送層
のうちの少なくとも1つを含む改良。
【請求項2】
電子輸送層を含む請求項1記載の発光デバイス。
【請求項3】
ホール輸送層を含む請求項1記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記第二の半導体ポリマーが、前記発光ポリマーのπ*バンドの底と、前記電子注入電極の仕事関数との間のエネルギーレベルを有する最低非占有分子軌道を有する請求項2記載の発光デバイス。
【請求項5】
第三の半導体ポリマーが、前記発光ポリマーの頂部πバンドと、前記ホール注入電極の仕事関数との間のエネルギーレベルを有する最高占有分子軌道を有する、請求項3記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記ホール注入電極が、高仕事関数電極、及び、該高仕事関数電極と前記発光層との間の有機ホール注入層を含む、二層電極それ自体である、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記発光層が共役ポリマーを含む請求項1記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記発光層が単一のリン光エミッタを含み、かつ前記第一の半導体ポリマーが前記リン光エミッタに対してホストとして働く、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記発光層が2つ以上のリン光エミッタを含み、かつ前記第一の半導体ポリマーが該2つ以上のリン光エミッタに対して共通のホストとして働く、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項10】
下記の積層順で各層を含む多層有機ポリマーをベースとする発光デバイス:
低仕事関数電極;
有機ポリマーをベースとする電子注入/輸送層;
半導体有機ポリマー及び少なくとも1つのリン光エミッタを含む発光層;
有機ポリマーをベースとするホール輸送層;及び
高仕事関数電極。
【請求項11】
前記高仕事関数電極が、高仕事関数層、及び、該高仕事関数層と前記ホール輸送層との間にあり有機ポリマーをベースとするホール注入層を含む、二層電極それ自体である、請求項10記載の発光デバイス。
【請求項12】
さらに基材及び保護層を含み、該基材及び該保護層のうち一方が前記低仕事関数電極に隣接して位置し、他方が前記高仕事関数電極に隣接して位置し、かつそのうち少なくとも1つが前記発光層で生じる光の少なくとも一部に対して透明である、請求項10記載の発光デバイス。
【請求項13】
前記発光層が、複数の非極性溶媒の各々に対する差異的な可溶性を有する半導体ポリマーを含み、前記輸送層がそれぞれ、複数の極性溶媒の各々に対する差異的な可溶性を有するポリマーを含む、請求項10記載の発光デバイス。
【請求項14】
前記発光層が共役ポリマーを含む請求項10記載の発光デバイス。
【請求項15】
前記発光層がさらに単一のリン光エミッタを含み、かつ前記半導体ポリマーが前記リン光エミッタに対してホストとして働く請求項10記載の発光デバイス。
【請求項16】
前記発光層が、加えて、2つ以上のリン光エミッタを含み、かつ前記半導体ポリマーが2以上のリン光エミッタに対して共通のホストとして働く、請求項10記載の発光デバイス。
【請求項17】
前記発光層が、
a.少なくとも1つの有機ポリマー蛍光エミッタ、及び
b.単一の発光領域である、緊密混合物中の少なくとも1つのリン光エミッタ、
を含み、
前記少なくとも1つの有機ポリマー蛍光エミッタからの発光が前記少なくとも1つのリン光エミッタからの発光よりもフォトンエネルギーが高く、かつ前記少なくとも1つの有機ポリマー蛍光エミッタ及び前記少なくとも1つのリン光エミッタの発光の組み合せが、白色発光を与えるのに十分な可視スペクトルにわたる、請求項10記載の発光デバイス。
【請求項18】
J=200mA/cm2において、少なくとも約10000cd/m2のL、少なくとも約10cd/AのLEext、及び少なくとも約2 lm/WのPEextを有する有機ポリマーをベースとする白色発光デバイス。
【請求項19】
単一のリン光エミッタを含む発光層を含む請求項18記載の白色発光デバイス。
【請求項20】
II型デバイスであり、2つ以上のリン光エミッタを含む発光層を含む、請求項18記載の白色発光デバイス。
【請求項21】
80を超える色レンダリング指標を有する光を発する請求項18記載の白色発光デバイス。
【請求項22】
約6400°Kの色温度を有する請求項19記載の白色発光デバイス。
【請求項23】
約4700°Kの色温度を有する請求項20記載の白色発光デバイス。
【請求項24】
順次の溶液処理によって多層デバイスとして製造され、かつ固体光用途に適している、請求項21記載の白色発光デバイス。
【請求項25】
J=23mA/cm2において、少なくとも約20000cd/m2の輝度、少なくとも約20cd/AのLE合計、及び少なくとも約6 lm/WのPE合計を有し、かつ固体光用途に適している、請求項21記載の白色発光デバイス。
【請求項26】
発光層の対向側にある電子注入層及びホール注入層を含み、該発光層が少なくとも1つの蛍光発光可能な発光第一半導体ポリマーを含む有機ポリマーを含み、該発光第一半導体ポリマーがそれと混合された少なくとも1つのリン光発光可能なリン光エミッタに対するホストとして働く、発光デバイスにおいて、
該電子注入層及び該発光層の間に設けられ、かつ該発光ポリマーのπ*バンドの底に対してエネルギーが近い最低非占有分子軌道を有する第二の半導体ポリマーを含む有機電子輸送層、及び
該ホール注入層及び該発光層の間に設けられ、かつ該発光ポリマーの頂部πバンドに対してエネルギーが近い最高占有分子軌道を有する第三の半導体ポリマーを含む有機ホール輸送層
のうちの少なくとも1つを含む改良であり、
該第一半導体ポリマーが第一の溶媒に差異的な可溶性を有し、該第二及び第三の半導体ポリマーの少なくとも1つが第二の溶媒に差異的な可溶性を有し、該第一及び第二の溶媒は極性が互いに異なることを特徴とする、該改良。
【請求項27】
前記第一の溶媒が前記第二の溶媒よりも極性が低い請求項26記載の発光デバイス。
【請求項28】
前記第一の溶媒が液体状炭化水素を含み、かつ前記第二の溶媒が低級アルカノールを含む、請求項27記載の発光デバイス。
【請求項29】
前記第一の溶媒に溶解した溶液である前記発光層を設置すること、前記第一の溶媒を蒸発させ、前記第二の溶媒に溶解した溶液である前記電子輸送層及び前記ホール輸送層のうちの少なくとも1つを設置すること、及び、前記第二の溶媒を蒸発させることを含む、請求項26記載の発光デバイスを製造する方法。
【請求項30】
第一の層の前記溶媒の蒸発が、第二の層を設置する前に完了する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
電子輸送層及びホール輸送層を共に設置することを含み、ここで、該ホール輸送層がまず設置され、続いて前記発光層が設置され、その後に続いて該電子輸送層が設置されることを特徴とする、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記発光層溶液の溶媒がより非極性的な溶媒であり、前記電子輸送層溶液の溶媒が前記ホール輸送層溶液の溶媒と同一または異なり、前記輸送層溶液の溶媒が前記発光層の溶媒よりも極性的な溶媒である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記発光層の溶媒が非極性炭化水素を含み、かつ前記輸送層の溶媒が低級アルカノールを含む、請求項32記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−532322(P2008−532322A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558202(P2007−558202)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/007373
【国際公開番号】WO2006/094101
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/007373
【国際公開番号】WO2006/094101
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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