説明

固体状廃棄物処理剤及び固体状廃棄物の処理方法

【課題】 有害な金属を含む、焼却灰、煤塵、鉱滓、汚泥、土壌等の固体状廃棄物を処理するために、これらに金属捕集剤を添加し、金属を金属捕集剤で固定化して無害化する方法は公知であるが、従来の方法では金属捕集剤の固体状廃棄物中への浸透性が不十分であるため、固体状廃棄物中の金属を確実に捕集し得ないとともに、固体状廃棄物中への浸透性の高い金属捕集剤は、金属の固定化能が低いという問題があった。また従来法では、固体状廃棄物中のカルシウムは固定化できず、固定化されていないカルシウムが溶出すると、固定化されている金属まで溶離してしまう虞れがあった。更に従来法で処理した固体状廃棄物は、移送機器や処理機器等に固着し易く、固着した固体状廃棄物の除去のために煩雑な作業が必要となる等の問題があった。
【解決手段】 本発明の固体状廃棄物処理剤は、酸性化合物と、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、両性界面活性剤の酸性塩より選ばれた少なくとも1種の界面活性剤と、金属捕集剤とからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰、煤塵、鉱滓、汚泥、土壌等の固体状廃棄物中に存在する金属を固定化して、これらの固体状廃棄物中からの溶出を防止するとともに、その後の固体状廃棄物処理工程における取扱いを容易にすることのできる、固体状廃棄物処理剤及び固体状廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却場等で生じる焼却灰や煤塵、鉱山から排出される鉱滓、廃水処理の際に用いられる活性汚泥、汚染された土壌等の固体状廃棄物中には種々の金属元素が含有されており、水銀、カドミウム、鉛、亜鉛、銅、クロム等の人体に有害な重金属元素が多量に含有されている場合も多い。これら固体状廃棄物から金属が溶出すると、地下水、河川、海水等が汚染される虞れがある。
【0003】
このため従来は、固体状廃棄物をセメントで固めた後、埋め立てて処理する方法が採られていたが、海水や雨水と接触した際にセメント壁を通して海水中や土中に金属が溶出する虞れがあり、この方法は必ずしも安全な処理方法とは言えなかった。このような問題を解決するため、本出願人は、金属捕集剤によって固体状廃棄物中の金属を固定化する方法を種々提案している(特許文献1〜3)
【0004】
【特許文献1】特開昭64−90083号公報
【特許文献2】特開平1−99679号公報
【特許文献3】特開平4−267982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記方法では、金属捕集剤の固体状廃棄物への浸透力が低いことに起因して、固体状廃棄物中の金属との反応性が必ずしも充分ではなく、この結果、固体状廃棄物中に含まれる金属を確実に固定化することができないという問題があった。このため金属捕集剤の固体状廃棄物への浸透性を向上するための種々の検討もされているが、金属捕集剤の固体状廃棄物への浸透性を向上させると、金属の固定化能力が低下するという問題があった。
【0006】
また従来法で処理した固体状廃棄物は付着性、固着性が高く、このため処理後の固体状廃棄物を、後処理工程へ搬送して処理する際に、固体状廃棄物が搬送機器(例えばダンプの荷台等)や処理機器(例えばショベルカーのショベル等)に強固に固着し、搬送機器や処理機器に強固に固着した固体状廃棄物を除去するために煩雑な作業が必要となるという問題があった。更に、従来の方法では固体状廃棄物中に含有されているカルシウムを固定化することは困難であり、固定化されていないカルシウムは固体状廃棄物中から水中に溶出し易い。このため従来法で処理した固体状廃棄物は、更にセメント等で固めて最終処分した場合でも、雨等に晒された際に、固定化されていない固体状廃棄物中のカルシウムやセメント壁内のカルシウムが溶出し易く、カルシウムが溶出するとセメント壁が崩壊し易くなるとともに、固体状廃棄物中で金属捕集剤によって固定化されていた他の金属も遊離し易くなるため、固体状廃棄物中で固定化されていた金属が再溶出して二次汚染を生じる虞れがあった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、固体状廃棄物への浸透性が高いとともに、固体状廃棄物中のカルシウムを固定化でき、しかも処理後の固体状廃棄物が移送機器や処理機器に強固に固着する等の問題を生じることなく固体状廃棄物を処理することができる固体状廃棄物処理剤及び固体状廃棄物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち本発明は、
(1)酸性化合物と、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、両性界面活性剤の酸性塩より選ばれた少なくとも1種の界面活性剤と、金属捕集剤とからなることを特徴とする固体状廃棄物処理剤、
(2)酸性化合物1〜20重量部、界面活性剤0.1〜10重量部、金属捕集剤0.1〜20重量部の割合で含有する上記(1)の固体状廃棄物処理剤、
(3)上記(1)または(2)の固体状廃棄物処理剤を、固体状廃棄物に添加し、水の存在下で混練して処理することを特徴とする固体状廃棄物の処理方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固体状廃棄物処理剤は、固体状廃棄物中への浸透性が良好なことにより、固体状廃棄物中に含まれる有害金属類を確実に固定化して溶出を防止できる。また従来の金属捕集剤で捕集が困難であったカルシウムも確実に固定化できるため、従来のように固体状廃棄物中の未固定のカルシウムの溶出によって、固定化されている他の金属が溶出し易くなる等の虞れがない。更に本発明の処理剤によって処理した固体状廃棄物は、移送機器や処理機器等に固着する虞れがないため、その後の処理工程への移送や処理作業が非常に容易となる等の効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の固体状廃棄物処理剤に含有される酸性化合物としては、鉱酸、有機酸、あるいは水に溶解したときに酸性を示す金属化合物(便宜上、この金属化合物を“酸性金属化合物”と呼ぶ。)等が挙げられる。
【0011】
鉱酸としては例えば、硝酸、塩酸、硫酸やリン酸、亜リン酸、次亜リン酸等のリン酸類が挙げられ、有機酸としては例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、フタル酸等が挙げられる。また酸性金属化合物としては例えば、硫酸アルミニウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の金属塩化物、金属硫酸化物、金属硝酸化物が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることができる。
【0012】
本発明の固体状廃棄物処理剤に用いる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、両性界面活性剤の酸性塩より選ばれた少なくとも1種が用いられる。
【0013】
アニオン性界面活性剤としては、例えば脂肪酸アルカリ金属塩、脂肪酸アンモニウム塩等のカルボン酸塩型界面活性剤、アルキルスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩型界面活性剤、アルキルリン酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩等のリン酸塩型界面活性剤、アルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩型界面活性剤等が挙げられるが、カルボン酸塩型界面活性剤、スルホン酸塩型界面活性剤が好ましく、特にカルボン酸塩型界面活性剤のうちの脂肪酸カリウム(脂肪酸カリウム石けん)と、スルホン酸塩型界面活性剤のうちのアルキルスホン酸ナトリウムが好ましい。これらアニオン性界面活性剤は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノカルボン酸塩等のアミノカルボン酸型界面活性剤、アルキルベタイン、アミノベタイン等のベタイン型界面活性剤、アルキルタウリン等のタウリン型界面活性剤等が挙げられ、これら両性界面活性剤は1種又は2種以上を混合して用いることができる。また両性界面活性剤の酸性塩としては、両性界面活性剤と、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸等の鉱酸や、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、フタル酸等の有機酸との塩が挙げられる。両性界面活性剤の酸性塩は、前記鉱酸と両性界面活性剤との反応で生じたものであっても良いが、酸性化合物と両性界面活性剤が反応しても、酸性化合物が残存している必要がある。両性界面活性剤の酸性塩は2種以上を混合して用いることができる。尚、本発明の固体状廃棄物処理剤は酸性化合物を使用することが必須であるため、酸性化合物と反応する両性界面活性剤を用いる場合には、両性界面活性剤と反応して消費される量以上の酸性化合物を配合することが必要である。
【0015】
本発明において界面活性剤として、上記アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、両性界面活性剤の塩のうちの、いずれか1種を配合すれば良いが、これらの2種以上を混合して用いても良い。
【0016】
本発明の固体状廃棄物処理剤に用いる金属捕集剤としては、従来から金属を含む廃水に添加し、廃水中の金属をフロックとして沈殿除去する方法や、鉱滓や汚泥等の金属を含む固体状廃棄物に添加し、固体状廃棄物中の金属を固定化して処理する方法等に用いられている一般の金属捕集剤が利用できる。この金属捕集剤は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等の原子を含み、金属に対する錯形成能を有する化合物である。このような化合物としては例えば、燐酸やその誘導体、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸等のジアルキルジチオカルバミン酸;ピペラジンジチオカルバミン酸、ピロリジンジチオカルバミン酸、モノエタノールアミンジチオカルバミン酸、ジエタノールアミンジチオカルバミン酸等やこれらの塩、1級アミノ基や2級アミノ基を少なくとも1個有するアミノ化合物の、窒素原子に結合した活性水素原子と置換して導入された官能基を有する化合物等が挙げられる。本発明において、上記した化合物以外でも、金属に対する錯形成能を有する化合物であれば使用可能である。これら錯形成化合物は、特に水溶性、水分散性を有するものが好ましい。
【0017】
上記アミノ化合物の窒素原子に結合した官能基を有する化合物は、金属捕集剤として広く利用されており、官能基として例えば、ジチオ酸基或いはその塩、アルキレン燐酸基或いはその塩、アルキレンカルボン酸基或いはその塩、オキシム基、アミドオキシム基等を1種又は2種以上有する化合物である。これらの官能基の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられるが、通常、アルカリ金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が、アルカリ土類金属塩としてはマグネシウム塩、カルシウム塩が用いられる。1分子中に2以上の官能基を有する化合物の場合、異なる型の官能基(酸型、アルカリ金属塩型、アルカリ土類金属塩型、アンモニウム塩型等)が混在するものを使用しても良い。また、異なる官能基を有する(官能基自体が異なるか、官能基型が異なる場合)化合物を混合して用いることもできる。
【0018】
上記化合物において、官能基が導入される1級アミノ基や2級アミノ基を少なくとも1個有するアミノ化合物としては、アミン類やアミン類とエピハロヒドリンとが重縮合した重縮合アミン等が挙げられる。
【0019】
アミン類としては例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、アミノエチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、エチルブチルアミン、ジエチレンアミン、ジプロピレンアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレンジアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、トリブチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、テトラブチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、モノメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の脂肪族アミン類;フェニレンジアミン、o−,m−,p−キシリレンジアミン、3,5−ジアミノクロロベンゼン等の芳香族アミン類;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のシクロアルカン系アミン類;1−アミノエチルピペラジン、ピペラジン等のピペラジン類;ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリ−3−メチルプロピルイミン、ポリ−2−エチルプロピルイミン等の環状イミンの重合体;ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の不飽和アミンの重合体;ビニルアミン、アリルアミン等の不飽和アミンと、ジメチルアクリルアミド、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸等及びその塩類等の、共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとの共重合体が挙げられる。環状イミンの重合体、不飽和アミンの重合体及びその共重合体の場合、平均分子量300〜200万のものが好ましく、1000〜50万のものがより好ましい。
【0020】
アミン類としては更に、ヒドロキシアルキル基、アシル基、アルキル基等をN−置換基として有するものでも良い。N−ヒドロキシアルキル置換基は、例えば上記アミン類にエポキシアルカンを反応させることにより導入することができ、N−アシル置換基は、上記アミン類に脂肪酸類を反応させることにより導入することができ、またN−アルキル置換基は上記アミン類にハロゲン化アルキルを作用させることにより導入することができる。
【0021】
重縮合ポリアミンとしては、上記アミン類と、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、ブロモメチルオキシラン、クロロメチルオキシラン、ヨードメチルオキシラン等のエピハロヒドリンとの重縮合体が挙げられる。
【0022】
本発明において、上記金属捕集剤のうちリン酸誘導体、ジアルキルジチオカルバミン酸アルカリ金属塩、テトラエチレンペンタミンジチオカルバミン酸アルカリ金属塩、ポリエチレンイミンジチオカルバミン酸アルカリ金属塩、ピペラジンジチオカルバミン酸アルカリ金属塩が好ましい。
【0023】
本発明の固体状廃棄物処理剤において、酸性化合物、界面活性剤、金属捕集剤は、酸性化合物1〜20重量部、界面活性剤0.1〜10重量部、金属捕集剤0.1〜20重量部の割合で含むことが好ましく、特に酸性化合物1〜5重量部、界面活性剤0.1〜2重量部、金属捕集剤0.1〜5重量部が好ましい。このような割合で酸性化合物、界面活性剤、金属捕集剤を使用すると固体状廃棄物の剥離性が特に向上され、搬送機器や処理機器に固体状廃棄物が固着し難くなる。本発明の固体状廃棄物処理剤は、必要に応じて、更に高分子凝集剤、高分子分散剤等を含有していても良い。
【0024】
本発明処理剤による処理対象の固体状廃棄物としては、例えば焼却灰や煤塵、鉱滓、汚泥、土壌等が挙げられる。本発明の処理剤により固体状廃棄物の処理を行うには、固体状廃棄物に本発明処理剤を添加混練する方法が採用されるが、固体状廃棄物中の金属を固定化する反応には水が必要であるため、焼却灰、煤塵、鉱滓等を処理する場合には、本発明処理剤を水に分散又は溶解させた状態で固体状廃棄物に添加して混練するか、本発明処理剤と水とを固体状廃棄物に添加して混練する。また活性汚泥や土壌等には一般に水分が含有されているため、本発明処理剤を添加して混練するだけでも効果があるが、必要に応じて水を併用することが好ましい。本発明処理剤で固体状廃棄物を処理するに当たり、本発明の処理剤の構成成分である酸性化合物、界面活性剤、金属捕集剤を予め混合して固体状廃棄物に添加しても、各成分を別々に添加しても良い。本発明方法で処理した固体状廃棄物は、例えばセメント等で固めて埋設する等によって、安全に最終処分することができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。尚、実施例、比較例において用いた金属捕集剤は以下の通りである。
【0026】
金属捕集剤A:ポリエチレンイミン(平均分子量3000)に水酸化ナトリウムの存在下で二硫化炭素を反応させて、ポリエチレンイミンの1ユニットあたりジチオ酸ナトリウムを0.6モル導入した化合物。
金属捕集剤B:ジエチルジチオカルバミン酸カリウム
金属捕集剤C:ピペラジン−N,N'−ビスジチオカルバミン酸ジカリウム
金属捕集剤D:ジエチレントリアミン−ビスジチオカルバミン酸ジナトリウム
金属捕集剤E:トリメルカプトトリアジントリナトリウム
【0027】
実施例1
水銀1.2mg/kg、鉛3800mg/kg、カドミウム240mg/kg、カルシウム190g/kgを含む、ゴミ焼却場から得た煤塵100g当たりに対し、リン酸1g、ラウリン酸カリウム0.5g、金属捕集剤A2gを水に分散させて添加し、40℃で10分間混練した。各処理剤で処理済の煤塵と未処理の煤塵各50gを、純水500ml中で常温にて6時間浸とうして金属の溶出試験を行った。純水中に溶出した金属の濃度を原子吸光分析法によって測定した結果を表1に示す。また、処理後の煤塵の固着性を以下の基準により評価して表1に示した。
【0028】
【表1】

【0029】
処理後の煤塵の固着性の評価基準
処理後の煤塵を鋼製の充填容器(容積100ミリリットル)に、タッピングしながら100gを充填し、24時間放置後、充填容器内表面への煤塵の付着の有無を確認し、以下の基準で評価した。
○・・・・充填容器内表面への煤塵の固着が殆ど認められない。
△・・・・充填容器内表面への煤塵の固着はあるが、容易に剥離できる。
×・・・・充填容器内表面への煤塵の固着が多く、容易には剥離できない。
【0030】
実施例2
実施例1と同様の煤塵に100g当たりに対し、塩化第二鉄3g、ラウリルスルホン酸ナトリウム0.5g、金属捕集剤BとCの1:2混合物1gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の煤塵からの金属溶出試験、処理後の煤塵の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表1にあわせて示す。
【0031】
実施例3
実施例1と同様の煤塵に100g当たりに対し、酢酸1g、ステアリルエーテルスルホン酸ナトリウム0.5g、金属捕集剤D1gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の煤塵からの金属溶出試験、処理後の煤塵の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表1にあわせて示す。
【0032】
実施例4
実施例1と同様の煤塵に100g当たりに対し、硫酸アルミニウムと硫酸第一鉄の2:1で混合物2g、ラウリン酸カリウム0.8g、金属捕集剤E2gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の煤塵からの金属溶出試験、処理後の煤塵の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表1にあわせて示す。
【0033】
実施例5
実施例1と同様の煤塵に100g当たりに対し、硫酸と硫酸アルミニウムの1:2混合物3g、ラウリルグルタミン酸ナトリウム0.3g、金属捕集剤B0.3gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の煤塵からの金属溶出試験、処理後の煤塵の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表1にあわせて示す。
【0034】
実施例6
実施例1と同様の煤塵に100g当たりに対し、次亜リン酸2g、ラウリン酸カリウムとステアリルスルホン酸カリウムの1:1混合物1g、金属捕集剤C3gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の煤塵からの金属溶出試験、処理後の煤塵の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表1にあわせて示す。
【0035】
実施例7
実施例1と同様の煤塵に100g当たりに対し、塩酸とポリ塩化アルミニウムの1:4混合物1g、ステアリン酸カリウム1g、金属捕集剤AとBの1:1混合物2.5gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の煤塵からの金属溶出試験、処理後の煤塵の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表1にあわせて示す。
【0036】
比較例1
実施例1と同様の煤塵に100g当たりに対し、リン酸1g、金属捕集剤A2gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の煤塵からの金属溶出試験、処理後の煤塵の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表1にあわせて示す。
【0037】
比較例2
実施例1と同様の煤塵に100g当たりに対し、金属捕集剤A2gを水に溶解させて添加し、同様にして処理した。処理後の煤塵からの金属溶出試験、処理後の煤塵の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表1にあわせて示す。
【0038】
実施例8
水銀0.5mg/kg、鉛6300mg/kg、亜鉛2000mg/kg、カドミウム74mg/kg、ニッケル65mg/kg、銅570mg/kg、クロム10mg/kg、カルシウム30g/kgを含有する鉱滓100g当たりに対し、酢酸1g、ラウリルスルホン酸ナトリウム0.4g、金属捕集剤A2gを水に分散させて添加し、20℃で15分間混練した。各処理剤で処理済の鉱滓と未処理の鉱滓各50gを用い、実施例1と同様にして金属溶出試験を行った。溶出した金属の濃度を原子吸光分析法によって測定した結果を表2に示す。また、処理後の鉱滓の固着性を煤塵の場合と同様に評価して表2に示した。
【0039】
【表2】

【0040】
実施例9
実施例8と同様の鉱滓100gに、リン酸1g、ステアリルエーテルスルホン酸ナトリウム1g、金属捕集剤B1gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の鉱滓からの金属溶出試験、処理後の鉱滓の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表2にあわせて示す。
【0041】
実施例10
実施例8と同様の鉱滓100gに、硫酸アルミニウム1.5g、ラウリルグルタミン酸ナトリウム0.4g、金属捕集剤C1gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の鉱滓からの金属溶出試験、処理後の鉱滓の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表2にあわせて示す。
【0042】
実施例11
実施例8と同様の鉱滓100gに、塩化第二鉄1g、ステアリン酸カリウム0.4g、金属捕集剤D1gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の鉱滓からの金属溶出試験、処理後の鉱滓の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表2にあわせて示す。
【0043】
実施例12
実施例8と同様の鉱滓100gに、リン酸と次亜リン酸の2:1混合物1g、ラウリン酸カリウム0.1g、金属捕集剤E0.1gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の鉱滓からの金属溶出試験、処理後の鉱滓の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表2にあわせて示す。
【0044】
実施例13
実施例8と同様の鉱滓100gに、硫酸アルミニウムと硫酸第二鉄の1:1混合物2g、ラウリン酸カリウムとステアリルスルホン酸カリウムの2:1混合物1g、金属捕集剤BとCの混合物2gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の鉱滓からの金属溶出試験、処理後の鉱滓の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表2にあわせて示す。
【0045】
実施例14
実施例8と同様の鉱滓100gに、塩酸とポリ塩化アルミニウムの1:4混合物1g、ラウリン酸カリウム1g、金属捕集剤AとBの1:4混合物2.5gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の鉱滓からの金属溶出試験、処理後の鉱滓の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表2にあわせて示す。
【0046】
比較例3
実施例8と同様の鉱滓100gに、酢酸1g、金属捕集剤A2gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の鉱滓からの金属溶出試験、処理後の鉱滓の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表2にあわせて示す。
【0047】
比較例4
実施例8と同様の鉱滓100gに、金属捕集剤A2gを水に溶解させて添加し、同様にして処理した。処理後の鉱滓からの金属溶出試験、処理後の鉱滓の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表2にあわせて示す。
【0048】
実施例15
水銀15mg/kg、鉛1540mg/kg、カドミウム47mg/kg、カルシウム30g/kgを含有する汚泥(含水率75%)に水酸化カルシウムを15重量%添加した汚泥100g当たりに対し、クエン酸2.5g、ステアリルエーテルスルホン酸カリウム0.1g、金属捕集剤C0.25gを水に分散させて添加し、常温で5分間混練した。各処理剤で処理済の汚泥と未処理の汚泥各50gを用い、実施例1と同様にして金属溶出試験を行った。溶出した金属の濃度を原子吸光分析法によって測定した結果を表3に示す。また、処理後の汚泥の固着性を実施例1と同様に評価して表3に示した。
【0049】
【表3】

【0050】
実施例16
実施例15と同様の汚泥100g当たりに対し、塩酸1.5g、ステアリン酸カリウム0.15g、金属捕集剤D0.25gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の汚泥からの金属溶出試験、処理後の汚泥の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表3にあわせて示す。
【0051】
実施例17
実施例15と同様の汚泥100g当たりに対し、硫酸第一鉄0.2g、ラウリン酸カリウム0.1g、金属捕集剤E0.2gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の汚泥からの金属溶出試験、処理後の汚泥の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表3にあわせて示す。
【0052】
実施例18
実施例15と同様の汚泥100g当たりに対し、硝酸5g、ラウリルグルタミン酸ナトリウム0.1g、金属捕集剤F0.1gを水に分散又は溶解させて添加し、同様にして処理した。処理後の汚泥からの金属溶出試験、処理後の汚泥の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表3にあわせて示す。
【0053】
実施例19
実施例15と同様の汚泥100g当たりに対し、硝酸とポリ塩化アルミニウムの1:5混合物3g、ラウリルグルタミン酸ナトリウムとステアリン酸カリウムの1:1混合物0.1g、金属捕集剤AとFの1:4混合物0.1gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の汚泥からの金属溶出試験、処理後の汚泥の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表3にあわせて示す。
【0054】
実施例20
実施例15と同様の汚泥100g当たりに対し、酢酸と塩化第二鉄の1:5混合物3g、ラウリルエーテルスルホン酸ナトリウム0.1g、金属捕集剤BとCの2:1混合物0.3gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の汚泥からの金属溶出試験、処理後の汚泥の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表3にあわせて示す。
【0055】
実施例21
実施例15と同様の汚泥100g当たりに対し、硫酸アルミニウム5g、ラウリン酸ナトリウム0.1g、金属捕集剤CとEの1:3混合物0.25gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の汚泥からの金属溶出試験、処理後の汚泥の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表3にあわせて示す。
【0056】
比較例5
実施例15と同様の汚泥100g当たりに対し、クエン酸2.5g、金属捕集剤C0.25gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の汚泥からの金属溶出試験、処理後の汚泥の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表3にあわせて示す。
【0057】
比較例6
実施例15と同様の汚泥100g当たりに対し、金属捕集剤C0.25gを水に溶解させて添加し、同様にして処理した。処理後の汚泥からの金属溶出試験、処理後の汚泥の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表3にあわせて示す。
【0058】
実施例22
クロム785mg/kg、銅266mg/kg、カドミウム17mg/kg、鉛475mg/kg、カルシウム30g/kgを含有する土壌に水酸化カルシウムを5重量%添加した土壌100g当たりに対し、塩化第一鉄1g、ラウリン酸カリウム0.5g、金属捕集剤C1gを水に分散させて添加し、常温で25分間混練した。各処理剤で処理済の土壌と未処理の土壌各50gを用い、実施例1と同様にして金属溶出試験を行った。溶出した金属の濃度を原子吸光分析法によって測定した結果を表4に示す。また、処理後の土壌の固着性を実施例1と同様に評価して表4に示した。
【0059】
【表4】

【0060】
実施例23
実施例22と同様の土壌100gに対し、亜リン酸3g、ラウリルエーテルスルホン酸カリウム0.3g、金属捕集剤E0.3gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の土壌からの金属溶出試験、処理後の土壌の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表4にあわせて示す。
【0061】
実施例24
実施例22と同様の土壌100gに対し、硫酸第一鉄0.5g、ステアリン酸カリウムとラウリン酸ナトリウムの1:1混合物1g、金属捕集剤2.5gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の土壌からの金属溶出試験、処理後の土壌の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表4にあわせて示す。
【0062】
実施例25
実施例22と同様の土壌100gに対し、蟻酸0.5g、ラウリルグルタミン酸カリウムとラウリン酸カリウムの2:1混合物0.5g、金属捕集剤DとEの1:1混合物1gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の土壌からの金属溶出試験、処理後の土壌の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表4にあわせて示す。
【0063】
実施例26
実施例22と同様の土壌100gに対し、ポリ硫酸第二鉄2g、ラウリルエーテルスルホン酸ナトリウム1g、金属捕集剤A3gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の土壌からの金属溶出試験、処理後の土壌の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表4にあわせて示す。
【0064】
実施例27
実施例22と同様の土壌100gに対し、硝酸アルミニウム1g、ラウリル酸ナトリウム1g、金属捕集剤D2gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の土壌からの金属溶出試験、処理後の土壌の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表4にあわせて示す。
【0065】
実施例28
実施例22と同様の土壌100gに対し、ポリ硫酸第二鉄と硫酸アルミニウムの3:1混合物2g、ステアリン酸カリウム1.5g、金属捕集剤C1gを水に分散させて添加し、同様にして処理した。処理後の土壌からの金属溶出試験、処理後の土壌の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表4にあわせて示す。
【0066】
比較例7
実施例22と同様の土壌100gに対し、塩化第一鉄1g、金属捕集剤C1gを水に分散又は溶解させて添加し、同様にして処理した。処理後の土壌からの金属溶出試験、処理後の土壌の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表3にあわせて示す。
【0067】
比較例8
実施例22と同様の土壌100gに対し、金属捕集剤C1gを水に分散又は溶解させて添加し、同様にして処理した。処理後の土壌からの金属溶出試験、処理後の土壌の固着性試験を実施例1と同様に行った。結果を表3にあわせて示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性化合物と、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、両性界面活性剤の酸性塩より選ばれた少なくとも1種の界面活性剤と、金属捕集剤とからなることを特徴とする固体状廃棄物処理剤。
【請求項2】
酸性化合物1〜20重量部、界面活性剤0.1〜10重量部、金属捕集剤0.1〜20重量部の割合で含有する請求項1記載の固体状廃棄物処理剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の固体状廃棄物処理剤を、固体状廃棄物に添加し、水の存在下で混練して処理することを特徴とする固体状廃棄物の処理方法。

【公開番号】特開2006−218373(P2006−218373A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32903(P2005−32903)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000114318)ミヨシ油脂株式会社 (120)
【Fターム(参考)】