説明

固体状廃液又は懸濁液中の物質を含有する廃液中でラジウムを安定化する方法

ラジウム含有廃液中に存在するラジウムを安定化する方法に関する。この方法は、廃液と金属塩化物を混合し、次いで、得られた混合物を硫酸イオンと反応させ、安定化されたラジウムを含有する廃液を得る。塩化物は、塩化バリウム、塩化ストロンチウム又は塩化鉛であり得る。硫酸イオンは、硫酸、硫酸無水物、可溶性スルファート又は可溶性硫酸塩を加えることにより供給され得る。この方法はとりわけ、ジルコニウムの化学若しくは冶金学、又はウラン含有鉱物の処理に由来する、固体状ラジウム含有廃液又は懸濁物質を含有する廃液の処理に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体状ラジウム含有廃液(solid radium-containing effluent)又は懸濁物質を含有するラジウム含有廃液中に存在するラジウムを、安定化する方法に関する。本発明は、特に、ウラン含有鉱物の加工過程に由来する廃液の処理、及びジルコニウム化学又は冶金学に由来する廃液の処理に適用できる。本発明はまた、このような廃液中のラジウムを安定化する方法に関する。
本発明の範囲内にある、固体状のラジウム含有廃液又は懸濁物質を含有するラジウム含有廃液は、ラジウムの様々な内容物を有し得る多種の廃液であると理解される。これらは液体廃液、半固体状廃液若しくはラジウム含有スラッジ、又あるいは固体状廃液若しくはラジウム含有廃棄物(例えば、粒子、顆粒、ケークなどの形態)であり得る。
【0002】
固体状廃液を構成する固形物質の、又は液体廃液、半固体状廃液若しくはラジウム含有スラッジ中の懸濁物質の内容物及び組成は様々であるが、ラジウム以外の金属塩及び金属酸化物を含む。これらはpHに依存して溶解され得る。
本発明によれば、液体廃液は、懸濁物質5〜70g/l、特に5〜50g/l、を含有する廃液であると理解され、半固体状廃液又はラジウム含有スラッジは、懸濁物質70〜300g/l、特に150〜300g/l、を含有する廃液であると理解され、固体状廃液又はラジウム含有廃棄物は、非常に少ないか若しくは0である液体、水又は溶媒の含有量によって特徴付けられる。
【背景技術】
【0003】
放射性元素のうち、ラジウムは、最も厳しい排出基準を有する放射性元素のうちの一つである。鉱物の抽出又は鉱物物質の加工過程に由来する多くの廃液は、ラジウムを含有し得る。それは、ウラン含有鉱物についても言える。それはまた、ジルコニウム炭素塩素化(carbochlorination)装置の分解(dissolution)及び様々な洗浄から、並びにジルコニウム及びハフニウム分離工程、例えば、溶融塩蒸留技術による、及び液液抽出(MIBK、HCNS)による、ジルコニウム四塩化物及びハフニウム四塩化物の分離から得られる液体及び半固体状廃液についても言える。この廃液には、一般に非常に少量のラジウムが存在する。
ラジウムは、水溶性である、及び非常に容易に浸出可能である、という難点を有している。これは、捨てられた固体状又は半固体状廃液(スラッジ)中にラジウムを貯蔵させておくことを困難とする。
例えば米国4423007号、ドイツ1005240号、フランス2562312号各明細書から、ラジウムを汚染除去する方法、又はラジウム及びバリウムの硫酸複塩(double sulfate)、Ba(Ra)SO4の形態で前記ラジウムを沈殿させることにより、液体廃液からラジウムを除去する方法が知られている。これらの方法は水、又は懸濁物質の除去、例えば濾過による除去後に得られる液体廃液に実施される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、固体状ラジウム含有廃液中、又は懸濁物質を含有するラジウム含有廃液中に存在するラジウムを安定化することのできる方法、を提案することである。
本発明の別の目的は、そのような廃液中、特に液体又は半固体状廃液中に、非常に少量存在するラジウムを安定化することのできる方法、を提案することである。非常に少量の概念は、ラジウム含有廃液のl又はkg当たり1000Bq以下、特に600以下Bq/ラジウム含有廃液のl又はkgのラジウム含量という意味であると理解される。
本発明の今一つ別の目的は、廃液中、特に半固体状廃液中又はラジウム含有廃棄物中に、多量に存在するラジウムを安定化することのできる方法、を提案することである。多量の概念は、1000Bq/ラジウム含有廃液のkg又はlより多く、1000Bq/g又はml、特に600Bq/g又はml、に達し得るラジウム含量という意味であると理解される。
【0005】
本発明の更に別の目的は、全く又は非常にわずかにしか浸出しない安定化されたラジウムを得ることができ、ほんのわずかにしか又は全く浸出性の影響を受けない固体状又は半固体状副生成物中に、安定化された形態でラジウムを貯蔵することができる方法、を提案することである。
本発明の更に今一つ別の目的は、環境維持開発の関係内で有益な方法であり、産業的過程から得られる固体状廃液又は懸濁物質含有廃液の継続的処理に適合される方法、を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
それらの目的は本発明によって達成される。本発明は、固体状ラジウム含有廃液中、又は懸濁物質を含有するラジウム含有廃液中に存在するラジウムを安定化する方法であって、廃液及び金属塩化物を混合し、次いで、得られた混合物を硫酸イオンと反応させて、安定化されたラジウムを含有する廃液を得る方法に関する。
本発明の特徴によれば、液体ラジウム含有廃液は懸濁物質を5〜70g/l、特に5〜50g/lで、含有する。
別の特徴によれば、半固体状廃液又はラジウム含有スラッジは懸濁物質を70〜300g/l、特に150〜300g/lで、含有する。
本発明の今一つ別の特徴によれば、ラジウム含有廃液は固体である。
本発明の更に別の特徴によれば、本方法は、金属塩化物と混合する前に、固体粒子を除去する工程を含まない。
【0007】
本発明の更に今一つ別の特徴によれば、塩化物は塩化バリウム、塩化ストロンチウム又は塩化鉛である。塩化物はまた、上述された塩化物二つ又は三つすべての混合物であり得る。好ましい発明の態様によれば、塩化物は塩化バリウムである、又は塩化バリウムを含む。
本発明の更にまた別の特徴によれば、本発明の方法によって、硫酸複塩(即ち、ラジウム及び金属塩化物から得られる金属の硫酸塩と呼ぶもの)が形成する。一態様によれば、塩化バリウム及び硫酸イオンの使用によって硫酸複塩Ba(Ra)SO4が形成し、これは不溶性である。
それ故に、安定化は、沈殿によってラジウムが水及び水性廃液中で不溶性になる、という意味であると理解される。安定化はまた、前記不溶性硫酸複塩が「固定される」又は廃液中の懸濁物質中に捕捉される、という意味であると理解される。
【0008】
本方法は、ラジウムに対して金属塩化物及び硫酸イオンを過剰に用いると有利に行われる。これは、ラジウム原子当たり1より多い金属分子及び1より多い硫酸イオンが確実に存在するようにする、ということ意味している。
本発明の特徴によれば、金属塩化物(即ち金属イオン)と硫酸イオンのモル比は1に近い。
硫酸イオンは、(i)イオンの形態で、(ii)混合物中で1以上の硫酸イオンを発生させる能力のある硫酸イオン発生源を手段として、又は(iii)所定の割合で、それら二つの種類を混合して、供給され得る。
好ましい形態によれば、硫酸イオンは硫酸又は硫酸無水物を加えることによって供給される。
変法によれば、硫酸イオンは可溶性スルファート又は可溶性硫酸塩、例えばNa2SO4、を加えることによって供給され得る。
本発明の特徴によれば、硫酸イオンは20〜50質量%濃度を有する硫酸水溶液によって供給される。
変法によれば、硫酸水溶液は90質量%濃度以上を有する。
廃液及び金属塩化物、更に硫酸イオンの均一混合物は、存在するラジウムの最大量が捕捉されることを可能にする。当業者は、それぞれの状況、廃液の性質(液体、半固体、固体)、ラジウム濃度、処理される廃液の体積又は質量、処理タンクの容量、排出基準などに応じて、確実にそのような均一混合物とすることを可能にする撹拌手段を決定するために必要な技術を有している。
【0009】
安定化されたラジウムを含有する廃液を、廃液の液体部分と安定化されたラジウムを含有する固体部分とを分離するために処理し得る。凝集、濾過、又は凝集及び濾過を使用することが可能である。任意に、凝集工程に照らして、凝集剤又は凝集補助剤の機能のために、廃液のpHを調整する。
本発明の特徴によれば、従って、金属及びラジウムの硫酸複塩が形成した後、安定化されたラジウムを含有する廃液を中和する。特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は類似製品を用いて中和を行い得る。一態様によれば、廃液を10〜50%濃度を有する水酸化ナトリウム溶液を用いて中和する。中和の目的は、pHを7〜10、好ましくは8〜9という有利な値にするためである。
中和は、廃液中に存在するいくらかの又は全ての他の金属を有利に沈殿又は再沈殿させて、可溶性スルファートの形態でラジウム含有廃液中に存在するかもしれないある酸化物、例えば、酸化ウラン、の溶解(dissolution)を回避させ得る。
【0010】
本発明の特徴によれば、凝集剤を加えることによって、任意に中和された廃液の凝集を行い得る。当業者は、あらゆる種類の凝集剤、特に水処理中で使用される凝集剤を利用可能である。その中で、ポリアクリルアミド凝集剤について特記する。このような凝集剤として使用されるものには、例えば、SNF製FLOPAM(登録商標) AN 934 MPM又はBPM、NALCO製PROSEDIM AS25がある。
次いで、前工程から得られた凝集を処理し、一方では、安定化されたラジウムを含有する固体又は半固体状残留物を回収することができ、他方では、ラジウムの欠いている又は減っている、廃液の液相を回収することができる。デカンテーション、濾過、又はデカンテーション及び濾過の工程は、本方法のこの段階を実行する手段である。例としては、凝集を(i)デカントする、(ii)濾過する、又は(iii)デカントし、その結果生じる残留物を濾過する、のうちのいずれかをする。適当な産業用フィルター、例えば、フィルタープレス又は回転濾過器で濾過を行い得る。
【0011】
本発明の変形によれば、事前に廃液を分解処理、特に超音波処理をかける。この処理は、廃液中に懸濁する固形粒子又は溶液を構成する固形物を分解することが企図される。この固形粒子又は固形物はラジウムを捕捉し得るものであり、例えば、固体状ラジウム含有廃液又は懸濁物質を含有するラジウム含有廃液が、炭素塩素化に由来して廃棄されるときの、ジルコニウム粒子である。この処理は塩化物との混合前に、又は硫酸イオン若しくは硫酸イオン発生源との混合前に行われ得る。
【0012】
本発明による方法は、ラジウムを含み得る、液体、半固体状廃液(例えばスラッジ)又は固体状廃液(例えば粒子、ケーク)の処理に使用され得る。実施条件、例えば、金属/ラジウム比、硫酸イオン/ラジウム比、タンクの容量、滞留時間、撹拌能力、超音波又は別の分解方法によるラジウム含有粒子の前処理は、微量、又は非常に少量存在するラジウム、例えば、0.1Bq/廃液のl又はkgから、処理を必要とする廃液中に含まれる最高量までのどんなラジウム含量であっても、懸濁物質を含有するラジウム含有廃棄物の効果的な処理を可能にする。それ故、本方法は有利に、容易に実効排出基準に適合され得る。本方法は、特に原子力産業に由来する廃液の処理、より特にはジルコニウム冶金学の間、ジルコニウムスポンジの調製段階中及びジルコニウム/ハフニウム分離操作中に生成する廃液の処理に使用され得る。定義によれば、語句「ジルコニウム冶金学」は、ジルコニウム鉱物、並びに主にジルコニウム及びハフニウムを含有する回収可能金属で行われる全ての従来的操作を含む。
従って、廃液は以下のものに由来し得る。
ジルコニウム鉱物の炭素塩素化に用いられる装置の分解又は洗浄、
炭素塩素化工程に由来するスラッジ、
ジルコニウム又はハフニウムの抽出及び分離工程で用いられる装置の分解又は洗浄、
ジルコニウム又はハフニウムの抽出及び分離工程に由来するスラッジ、又は
1以上のそれらの廃液の混合物。
【0013】
下記は、固体状ラジウム含有廃液又は懸濁物質を含有するラジウム含有廃液の典型的な平均組成の例として挙げられる。
炭素塩素化廃棄物。
C 30 〜60%
Zr 10 〜30%
Si 1 〜20%
Hf 0 〜 1%
Al 0 〜 1%
Ca 0 〜 0.5%
Fe 1 〜 3%
Cr 0 〜 0.1%
K 0 〜 0.2%
Ni 0 〜 0.1%
U 0.5〜 3%
Y 0 〜 3%
Th 0 〜 0.5%
全てのそれらの元素は不溶性であり、その際懸濁するに至る。
【0014】
炭素塩素化設備及びZr/Hf分離工程に由来する廃液、並びにこのような設備に由来するガス処理水。
二つの設備の洗浄廃液に添加される前に、溶解が前もって中和され得るとすれば、これらの廃液はまた、分離工程の鉱質性溶媒(mineral solvent)の溶解元素を含有し得る。非常に可変性の混合物は以下のものを含む。
C 1 〜15% 不溶
Si 1 〜10% 不溶(SiO2)
Al 5 〜40% pHに依存して一部可溶
Zr 1 〜 8% pHに依存して一部可溶
Fe 0.5〜 2% pHに依存して一部可溶
Hf 0.5〜 3% pHに依存して一部可溶
Ca 1 〜 4% pHに依存して一部可溶
K 1 〜30% 完全に溶解
放射性元素は少量である(U<0.1%)。
【0015】
本発明の利点は、本方法が産業的過程に由来する廃液及び廃棄物、例えば、ジルコニウム化学又は冶金学の間に生成する廃液、とりわけ、説明してきたばかりの特定の廃液を連続的に処理するために使用され得る、ということである。本方法は、一産業活動又は複数の産業活動に由来する廃液を、処理を始めるための望ましい量が得られるまで、保管し得る複数のピット又はタンクが利用可能であるという点で有益である。従って、複数のタンク又はピットは並行に配置され、ピット又はタンクのうちの一つで廃液の処理が始まると、生成され続ける廃液は処理を待つ別のピット又はタンクに導かれ得る。使用される当該装置により、連続的な処理を、流速を変えながら行うことが可能となる。
従って、本発明の好ましい態様によれば、固体状ラジウム含有廃液又は懸濁物質を含有するラジウム含有廃液を、並行に設置された安定化ピット又はタンクに連続的に送り、その中で絶えず廃液を撹拌する。ピット又はタンクが一杯になると、廃液を次に続くピット又はタンクに送る一方、一杯になったばかりのピット又はタンクでラジウム安定化処理を行うなどする。一旦一つのピット又はタンクで安定化を行うと、安定化された内容物をそこから除去して、ピット又はタンクが再び廃液を安定化するために受け入れる準備が整う。
【実施例】
【0016】
本発明は、実施例に限定されないことを前提として、本発明の態様の説明を用いてより詳細に説明されるだろう。
実施例1−ラジウム含有スラッジの処理
装置は、およそ30m3の容量を有し、収容する多量の廃液の均一混合物を確実に作り得る撹拌手段を備える、並行に並んだ、三つの安定化ピットを含む。ジルコニウム処理過程の様々な工程に由来するスラッジを、必要とする量が得られるまで第一ピットに導き、次いで、次のピットなどに導く。一方、第一ピット又は先行するピットで安定化処理を始める。
本実施例中、廃液はジルコニウム/ハフニウム分離工程、及びジルコンの炭素塩素化に由来する洗浄液であり、分離工程に由来するハフニウム残留物である。ここで、ピットの処理を詳細に説明する。ピットでは、一旦均一に撹拌されると、スラッジは以下のものを含んでいた。
Ra226 : 4Bq/kg
Ra223 : 12.1Bq/kg
Ra228 : 4.6Bq/kg
【0017】
廃液のm3当たり150g/lの量に、塩化バリウム40mlを安定化ピットに加えた。撹拌を行い、混合物を確実に均一とした。次いで、前記得られた混合物のm3当たり34%硫酸を15〜20ml加えた。全体を撹拌して、混合物を確実に均一とした。次いで、得られた安定化廃液を、安定化ピットにそれぞれ連続して取り付けられた三つの中和ピットのグループに属する中和ピットに送った。
水酸化ナトリウムで中和した後、凝集剤を加え、その後、フィルタープレスで濾過する前にデカンテーションを行った。フィルターにより保持されたスラッジと、濾液とを解析して、以下の結果を得た。
濾液: Ra226 : 0.57Bq/l
Ra223 : 測定不能
Ra228 : <0.12Bq/l
スラッジ: Ra226 : 84Bq/kg
Ra223 : 63.1Bq/kg
Ra228 : 35Bq/kg
【0018】
実施例2−浸出試験
実施例1で得られたスラッジを回収して、以下に記載される方法に従って浸出試験を行った。
試験の説明:残留物(スラッジ)100gを水、酸又は塩基1lと混合した。混合物を一定期間(3×16時間又は1×24時間)撹拌して、その後濾過する。浸出を解析する(標準試験 NFX 31 210、浸出試験、酸性又は塩基性媒体中での放出試験)。結果は以下のとおりである。
水中での16時間浸出試験。
Ra226 : <0.1Bq/l
Ra223 : 2.3Bq/l
Ra228 : <0.15Bq/l
水中での32時間浸出試験。
Ra226 : <0.4Bq/l
Ra223 : 0.48Bq/l
Ra228 : <0.12Bq/l
水中での48時間浸出試験。
Ra226 : <0.5Bq/l
Ra223 : 測定不能
Ra228 : 測定不能
24時間浸出試験、pH9、水酸化ナトリウムを用いて。
Ra226 : 0.7Bq/l
Ra223 : 0.89Bq/l
Ra228 : <0.15Bq/l
24時間浸出試験、pH5、塩酸。
Ra226 : 4.9Bq/l
Ra223 : 8Bq/l
Ra228 : 0.4±0.2Bq/l
24時間浸出試験、pH5、硫酸を用いて。
Ra226 : <0.1Bq/l
Ra223 : 1.4Bq/l
Ra228 : <0.06Bq/l
安定化前、24時間浸出試験。
Ra226 : 15Bq/l
Ra223 : 5.36Bq/l
Ra228 : 3.4Bq/l
【0019】
実施例3−ラジウム含有スラッジの処理
以下のものを含有する、廃液又はラジウム含有廃棄物の混合物で、実施例1を繰り返した。
Ra226 : 107,000Bq/l
Ra223 : 5,205Bq/kg
Ra228 : 14,500Bq/kg
安定化後、以下の値を得た。
濾液:
Ra226 : <0.2Bq/l
Ra223 : 測定不能
Ra228 : <0.2Bq/l
スラッジ:
Ra226 : 65,700Bq/kg
Ra223 : 2,917Bq/kg
Ra228 : 11,500Bq/kg
【0020】
実施例4−浸出試験
実施例3で得られた濾過スラッジで、浸出試験を繰り返した。
水中での16時間浸出試験。
Ra226 : 0.6±0.3Bq/l
Ra223 : 2.27Bq/l
Ra228 : 0.37Bq/l
水中での32時間浸出試験。
Ra226 : 0.2±0.1Bq/l
Ra223 : 1.64Bq/l
Ra228 : <0.5Bq/l
水中での48時間浸出試験。
Ra226 : 0.3±0.1Bq/l
Ra223 : 0.17Bq/l
Ra228 : 0.09Bq/l
24時間浸出試験、pH9、水酸化ナトリウムを用いて。
Ra226 : <0.1Bq/l
Ra223 : 測定不能
Ra228 : <0.3Bq/l
24時間浸出試験、pH5、塩酸を用いて。
Ra226 : 0.1±0.05Bq/l
Ra223 : 測定不能
Ra228 : <0.08Bq/l
24時間浸出試験、pH5、硫酸を用いて。
Ra226 : 0.2±0.1Bq/l
Ra223 : 測定不能
Ra228 : <0.3Bq/l
【0021】
それ故、本発明による方法により、最初の処理廃液に比べて少ない量の固体状又は半固体状廃液中にラジウムを沈殿させ、かつ補足することができる。更に、浸出試験は、ラジウムをその中に安定形態で濃縮して、固体状又は半固体状廃液を、任意に全て又は一部の廃液の液相を除去した後、環境的に受容可能な状態下で保管できる、ということを示す。
これらの発明の実施例は、本発明を制限的に考慮する結果となってはいけない。本方法を、試薬の選択、均一化手段、インキュベーション時間に関して適応させ得、他の固体状ラジウム含有廃液又は懸濁物質を含有するラジウム含有廃液に適用し得る、ということは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状ラジウム含有廃液、又は懸濁液中の物質を含有するラジウム含有廃液中に存在するラジウムを安定化する方法であって、前記廃液を金属塩化物と混合し、次いで、前記得られた混合物を硫酸イオンと反応させて、安定化されたラジウムを含有する廃液を得ることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記ラジウム含有廃液が、液体であり、懸濁物質を5〜70g/l、特に5〜50g/lで、含有している方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記廃液が半固体状であるか又はラジウム含有スラッジを構成し、懸濁物質を70〜300g/l、特に150〜300g/lで、含有している方法。
【請求項4】
前記ラジウム含有廃液が、固体状である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、前記金属塩化物、即ち、金属イオンと言うべきもの、と前記硫酸イオンのモル比が1に近い方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、金属塩化物と混合する前に、固体粒子を除去する工程を含まない方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法であって、前記塩化物及び前記硫酸イオンが、前記ラジウムに対して過剰である方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法であって、前記塩化物が、塩化バリウム、塩化ストロンチウム又は塩化鉛である方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法であって、前記硫酸イオンが、硫酸、硫酸無水物、可溶性スルファート又は可溶性硫酸塩を加えることにより供給される方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記硫酸イオンが、20〜50質量%濃度を有する硫酸水溶液により供給される方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記硫酸イオンが、90質量%濃度以上を有する硫酸水溶液により供給される方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法であって、安定化されたラジウムを含有する前記廃液を中和する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いて中和を行う方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、10〜50%濃度を有する水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和を行う方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法であって、pHを7〜10、好ましくは8〜9の値に調整する方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法であって、前記中和とともに、前記廃液中に存在するいくらかの又は他の金属を沈殿させる方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法であって、凝集剤を加えることにより、中和された前記廃液を凝集させる方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、デカンテーション又は濾過により、前工程に由来する前記凝集を処理して、一方では、安定化されたラジウムを含有する固体残留物を回収し、他方では、ラジウムの欠いている又は減っている、前記廃液の液相を回収する方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、濾過をフィルタープレス又は回転濾過器で行う方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法であって、前記塩化物又は硫酸イオンを加える前に、前記廃液を超音波処理にかける方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法であって、ジルコニウム冶金学又は化学の間に生成した、固体状ラジウム含有廃液又は懸濁物質を含有するラジウム含有廃液の処理に適用される方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記ラジウム含有廃液が、以下のものに由来する方法。
ジルコニウム鉱物の炭素塩素化に用いられる装置の分解又は洗浄、
炭素塩素化工程に由来するスラッジ、
ジルコニウム又はハフニウムの抽出及び分離の工程で用いられる装置の分解又は洗浄、
ジルコニウム又はハフニウムの抽出及び分離の工程に由来するスラッジ、又は
1以上のそれらの廃液の混合物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体状廃液又は懸濁物質含有廃液を、並行に取り付けられた安定化ピット又はタンクに連続的に送り、それらを絶えず撹拌し、ピット又はタンクが一杯になると、前記廃液を次のピット又はタンクに送る一方、ラジウム安定化処理を一杯になったばかりのピットで行うなどし、一旦ピット又はタンクで安定化を行うと、安定化された内容物をそこから除去して、ピット又はタンクが再び廃液を安定化するために受け入れる準備が整うようにした方法。

【公表番号】特表2010−500542(P2010−500542A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523320(P2009−523320)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001365
【国際公開番号】WO2008/017764
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(509041027)コンパニー ウーロペアンヌ デュ ジルコニアン セズ (1)
【Fターム(参考)】