説明

固体表面上に特有の性質を付与する且つ無機固体粒子及びコポリマーを含む複合コアセルベートの水性分散液

本発明は、コア−シェル構造を有するコアセルベートの水性分散液の作製方法であって、該コア(a)はアニオン性又はカチオン性である無機粒子でありそして該シェル(b)はコポリマーであり、しかも該コポリマーは少なくとも2つの部分A及びBを含み、部分Aは粒子(a)がアニオン性であるならばカチオン性でありそして粒子(a)がカチオン性であるならばアニオン性であり、そして部分Bは該分散液のpH状態において中性である方法に向けられる。一層特には、本発明は、処理用組成物であって、あらゆる種類の表面上に汚れ付着防止、水の薄層状化、汚染防止、付着防止、付着、堆積防止及び/又はUV防止の性質を付与するコアセルベートの該水性分散液を含む組成物に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体表面上に特有の性質を付与する且つ無機固体粒子及びコポリマーを含む複合コアセルベートの水性分散液に関する。
【0002】
発明の背景
低エネルギー表面特に疎水性表面を親水性化してより良好な濡れ/付着を達成することは、多くの工業分野(自動車、ペイント、コーティング、インキ印刷及びフルイディクスのような)において遭遇される重要な技術的問題である。アンチファウリング(「汚れ付着防止」)、アンチソイリング(「汚染防止」)、ウォーターシーティング(「水の薄層状化」)、UV防止のような関連性質もまた、より特には家庭・住居の手入れにおいて、大いに必要である。この問題は、一般的に、固体表面上へ機能層を物理吸着させる又は化学吸着させることにより取り扱われる。その場合には、最終表面性質は、物理的特徴(サイズ、展開表面積、空間的構成及び物理的相互作用のような)及び化学的特徴(コア/シェルの特質、表面の物理化学的性質、官能性及び基、吸着実体(粒子及び高分子のような)の電荷のような)に強く依存するであろう。
【0003】
工業上入手できる多くの様々な機能ポリマーは、原則として、広範囲の基材の機能化を可能にする。しかしながら、表面上への機能高分子の直接吸着は、通常、非常に選択的である。すなわち、親水性負荷電表面が中性又はカチオン性(又は両方の兼備)ポリマーによってのみ機能化され得、疎水性表面の機能化は荷電化学種でもって達成するのは困難でありそして少なくともいくらかの疎水性成分を必要とする。
【0004】
たとえば、高分子電解質又は中性−荷電コポリマーは高エネルギーセラミック又は金属表面上に強く吸着して、期待機能性をもたらすであろう。しかしながら、それは、ポリスチレン(PS)のような低エネルギーポリマー材料に関して、効率的にはうまくいかないであろう。
【0005】
吸着層を取り扱う場合の第2の重要な問題は、洗浄、すすぎ及び老化に対するそれらの弱い抵抗である。親水性ポリマーについては、反応性又は高エネルギー表面(酸化物層、セラミック、金属、・・・)との相互作用は全く強く(静電的相互作用、水素結合相互作用、・・・)、そして吸着層は表面上に効率的につなぎ止められる。これは疎水性及び不活性ポリマー表面の場合には当てはまらず、吸着を促進するためにファンデルワールス力しか働いていない。この場合において、水に可溶な高分子は、更なるすすぎでもって容易に除去される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、基材の物理化学的性質に頼らないより一般的なやり方を提供することである。
【0007】
別の目的は、あらゆる種類の表面(表面の物理的又は化学的特質がどうであれ)上に種々の所望機能性一層特には汚れ付着防止、水の薄層状化、汚染防止、堆積防止及びUV防止の性質を付与し得る複合コアセルベートの水性分散液又は溶液を開発することである。
【0008】
別の目的は、あらゆる種類の表面上に吸着することができるように可能な限り中性の複合コアセルベートの分散液又は溶液を提供することである。
【0009】
別の目的は、上記に挙げられた性質を有する複合コアセルベートのかかる水性分散液又は溶液の作製方法を提供することである。
【0010】
別の目的は、かかる表面の処理用組成物であって、該水性分散液又は溶液を含む組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的及び他の目的は、コア−シェル構造を有するコアセルベートの水性分散液又は溶液の作製方法であって、該コア(a)はアニオン性又はカチオン性である無機粒子でありそして該シェル(b)はコポリマーであり、しかも該コポリマーは少なくとも2つの部分A及びBを含み、部分Aは粒子(a)がアニオン性であるならばカチオン性でありそして粒子(a)がカチオン性であるならばアニオン性であり、そして部分Bは該分散液又は溶液のpH状態において中性であり、該方法は次の工程すなわち
a)重量による濃度Caが約2%に等しいか又は小さく且つ0.001%より大きい該安定化無機粒子の水性コロイド分散液を作製し、しかもそのpHをpHaの値に調整し、
b)重量による濃度Cbが約2%に等しいか又は小さく且つ0.001%より大きくしかも
Ca×0.95≦Cb≦Ca×1.05
である該コポリマーの溶液を作製し、しかもそのpHを
pHa−2≦pHb≦pHa+2
であるpHbの値に調整し、但しこの溶液中に存在する荷電可能な基の化学量論比Zが0.80と1.2の間随意に0.95と1.05の間にそして一層好ましくは約1であることを更に条件とし、そして
Z=[S]×s/[P]×p
〔ここで、[S]及び[P]は該粒子のモル濃度及び該コポリマーのモル濃度であり、そしてs及びpは粒子当たりの電荷数及びコポリマー当たりの電荷数である〕
であり、そして
c)該分散液又は溶液を得るためにa)とb)を混合する
工程を含む方法に向けられた本発明により達成される。
【0012】
好ましくは、無機粒子及びコポリマーの重量濃度は0.1と1の間にあり、そして
Ca×0.99≦Cb≦Ca×1.01
pHa−1≦pHb≦pHa+1
であり、そしてZは1又は約1であり、そしてa)とb)の混合はワンショットで行われる。無機粒子は、約1nmより大きいか又は等しく且つ約100nmより小さいか又は等しい一層典型的には1と100nmの間そして随意に2と20nmの間の粒子サイズを備えたセリウム、アルミニウム、ジルコニウム、リン、ガリウム、ゲルマニウム、バリウム、ストロンチウム、イットリウム、アンチモン、セシウム、ジルコニウム又は酸化アルミニウムであり得る。一つの具体的態様において、特性粒子サイズは、動的光散乱により決定される場合の平均粒子直径(「D50」)である。
【0013】
ある特定の具体的態様において、無機粒子は、希土類金属随意にセリウムであり、しかも該粒子は
3個若しくはそれ以上の官能基を備えた酸性錯化剤随意にクエン酸、又は
エチレン不飽和の線状若しくは分枝状脂肪族、環状又は芳香族モノカルボン酸若しくはポリカルボン酸又は無水物に相当する少なくとも1種のモノマーを重合させることにより得られたあるいは少なくとも1種のエチレン不飽和の線状若しくは分枝状脂肪族、環状又は芳香族モノカルボン酸若しくはポリカルボン酸又は無水物の重合から得られた水溶性又は水分散性ポリマー
で更に安定化される。
【0014】
コポリマーb)の部分Aはポリイオン性であり得、そして部分Bはコアセルベートの分散液のpH状態において中性である。コポリマーb)の部分Aはポリカチオン性であり得、そして部分Bはコアセルベートの分散液のpH状態において中性である。
【0015】
反対に荷電された界面活性剤、高分子電解質又は荷電ナノ粒子とカップリングされた高分子電解質/中性コポリマーは、或るZc超において一般的に0.1超においてコアセルベートを形成する(ここで、Zは上記に定義されたとおりの荷電可能な基の化学量論比である)。この定義に基づくと、Z=1は、等電溶液(正荷電可能なイオンと負荷電可能なイオンの同数密度により特徴づけられる溶液である)を表す。
【0016】
いくつかの場合において、粒子当たりの電荷数が未知であるとき又はシェルのコポリマーが複雑なものであるとき、Zを見積もることは容易でないかもしれない。かかる場合において、無機粒子溶液とブロックコポリマー溶液の間の混合比X(電荷比Zとの相関関係を有すると考えられる)が用いられる。Xは、好ましくは、
【数1】

と定義される。
【0017】
任意の適当な混合比X及び初期濃度C0が用いられ得る。この式に従って、混合試験体は、好ましくは、総濃度C=0.1%から10%においてX=0.01から100の範囲に作製される。所望濃度C0における混合溶液を作製するために、それらの2種の初期溶液は同じ濃度C0に作製されるべきである。
【0018】
次いで、錯体が中性であると仮定される場合、曲線レイリー比Rθ対Z又はXにおけるピークを局在させるために、一定の重量濃度C0におけるしかし異なるZ(又はX)を備えた溶液が静的及び動的光散乱により分析される。
【0019】
静的及び動的光散乱は、種々の重量濃度における粒子の分散液及びコポリマーの溶液について、90°におけるレイリー比Rθの及び集積拡散係数(collective diffusion coefficient)Dの測定のために、ブルックヘヴン(Brookhaven)分光計(BI−9000AT自動相関器)で遂行される。コロイド錯体の流体力学的半径は、ストークス−アインシュタインの関係式すなわち
【数2】

に従って算出される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明のこれらの及び他の特徴及び利点は、添付図面と関連して提供される次の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。
【0021】
【図1】図1は、パダムクァト(Padamquat)−PAMコポリマーと反対荷電CeO2−PAAナノ粒子の混合溶液の散乱性質の図解である。すなわち、実施例1において例示されたような1wt%における電荷比(Z)及び容量分率(X)の関数としてのレイリー比(Rθ)及び流体力学的半径(Rh)の展開。
【0022】
Z(及びX)の関数としてのレイリー比Rθ及び流体力学的半径Rhの曲線は同じグラフ上にプロットされ、そしてX=0.86の値についてaについて得られたレイリー比RθにおけるピークはZ=1の予測値によく対応する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の説明及び好ましい具体的態様
無機粒子
無機粒子(a)は、アニオン性又はカチオン性であり得る。好ましくは、粒子はカチオン性である。無機は、好ましくは金属そして一層好ましくはその酸化物である。それに関して、金属酸化物粒子を形成させるために、金属酸化物を形成することの可能な実質的にいかなる「金属」も用いられ得る。適当な金属元素は、とりわけ、ニオブ、インジウム、チタン、亜鉛、鉄、ジルコニウム、アルミニウム、スズ、セリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン及びビスマスを包含する。酸化物状態の金属の代わりに、ケイ素及びその様々な酸化物(ケイ酸塩のような)である半金属化合物もまた適当である。
【0024】
金属酸化物は、セリウム、アルミニウム、ジルコニウム、リン、ガリウム、ゲルマニウム、バリウム、ストロンチウム、イットリウム、アンチモン及びセシウムのような、ただ1種の金属で作られ得又は金属の組合わせであり得る。好ましい金属酸化物粒子は、酸化第二鉄(Fe23)、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び酸化セリウムを含む。金属酸化物粒子は、「ゲル−ゾル」技法、水添加による金属アルコキシドの直接加水分解、比較的低コスト金属塩の強制加水分解又は金属アルコキシドと金属ハロゲン化物塩との非加水分解反応のような任意の公知方法を用いて作製され得る。
【0025】
用語「無機粒子の水性分散液」は、本発明の粉末を再分散させるために用いられる液体媒質とは異なり得る又は同一であり得る水性媒質中の懸濁状態の微細固体無機粒子で一層特にはコロイドサイズを有する金属酸化物粒子で形成されたあらゆる系を意味する。本明細書において用いられる用語粒子は、離散粒子又は粒子の凝集体を包含する。コロイドサイズは、1nmと5000nmの間の粒子サイズを指す。上記に定義された分散液において、金属酸化物はコロイド形態に又は同時にイオン及びコロイドの形態にあり得る、ということが留意されるべきである。
【0026】
本発明の一つの側面によれば、本分散液の粒子は、本発明の方法のpH状態において安定であるならば、安定化されることなく用いられ得る。これらの裸粒子は、たとえば米国特許第5,344,588号明細書に記載されている。コポリマーに添加される前の時間のほとんどにおいて、粒子が凝集して沈殿するのを防ぐ及びpHの広い範囲(この範囲は、好ましくは、中性に近いpH値(約pH7)を含む)において粒子を安定な状態に保つために、粒子は更に安定化される。
【0027】
本発明によれば、国際公開第03/01595号パンフレットに教示されているような3個若しくはそれ以上の官能基を備えた酸性錯化剤一層特にはクエン酸で、又はポリアクリルポリマーで無機粒子を更に安定化させることが推奨される。
【0028】
無機粒子の好ましいコロイド分散液は、金属が希土類金属好ましくはセリウムであり、しかもエチレン不飽和の線状若しくは分枝状脂肪族、環状又は芳香族モノカルボン酸若しくはポリカルボン酸又は無水物に相当する少なくとも1種のモノマーを重合させることにより得られたあるいは少なくとも1種のエチレン不飽和の線状若しくは分枝状脂肪族、環状又は芳香族モノカルボン酸若しくはポリカルボン酸又は無水物の重合から得られた水溶性又は水分散性ポリアクリルポリマーで粒子が安定化されている分散液である。
【0029】
かかる安定化コロイド分散液は、PCT/FR2006/00001(その明細書は参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0030】
希土類粒子(a)
本明細書において用いられる場合、用語「希土類」は、イットリウム及び57と71の間(57及び71を含めて)の原子番号を有する周期表の元素から成る群の元素を意味するよう理解される。一層特には、希土類のなかでイットリウム、ランタン、ネオジム、プラセオジム、ガドリニウム及びセリウムが挙げられ得る。
【0031】
希土類粒子の凝集体は、希土類粒子から形成される。本質的に、輪郭のはっきりしたより大きい希土類粒子又は凝集体を得るために、より小さいサイズの希土類ベース粒子が用いられる。従って、希土類ナノ粒子を形成させるために、超微細な希土類ベース粒子が用いられ得る。好ましくは、本発明による希土類凝集体を作るために、約10nm又はそれ以下の流体力学的直径を有するより小さいサイズの希土類ベース粒子が用いられる。希土類ベース粒子は、任意の適当な希土類組成物で形成され得る。適当な希土類塩を合成するために、希土類酸化物たとえば酸化イットリウム、酸化セリウム及び酸化ジルコニウムが用いられ得る。特に例示的希土類は、イットリウム、ランタン、ガドリニウム、ルテチウム、セリウム、ジルコニウム及びテルビウムを包含する。
【0032】
ブロックコポリマー(b)
ブロックコポリマー(b)は、好ましくは、少なくとも2つの異なるブロックすなわちブロックA及びブロックBを含み、しかも部分Aはポリイオン性でありそして部分Bはコアセルベートの本水性分散液のpH状態において中性である。コポリマー(b)は、任意の適当なポリマーであり得る。たとえば、コポリマー(b)は、ブロックコポリマー又は櫛形コポリマーであり得る。好ましくは、本発明によるブロックコポリマーは、少なくとも2つのブロック(本明細書において部分A及び部分Bと記載され、しかして部分Aは一つのブロックに相当しそして部分Bは別のブロックに相当する)を含む。部分Aはまた、随意に、組成勾配を含み得る。好ましくは、本発明による櫛形コポリマー又はグラフトコポリマーは、主鎖及び側鎖(本明細書において部分A及び部分Bと記載され、しかして部分Aは主鎖に相当しそして部分Bは側鎖に相当し、又はその逆である)を含む。
【0033】
部分Aは、通常、それが含む繰返し単位により定められる。部分は、ポリマーの名を挙げることにより又はそれが誘導されるところのモノマーの名を挙げることにより定められ得る。本明細書において、モノマーに由来する単位は、重合させることにより該モノマーから直接的に得られ得る単位と理解される。部分Aは、数種のモノマーに由来する数種の繰返し単位を含むコポリマーであり得る。従って、部分Aと部分Bは異なるモノマーに由来する異なるポリマーであるが、しかしそれらはいくらかの共通の繰返し単位を含み得る(コポリマー)。部分Aと部分Bは、好ましくは、50%より多い共通の繰返し単位(同じモノマーから誘導された)を含まない。
【0034】
好ましくは、部分Aは、処方物のpH状態においてポリイオン性(ポリアニオン性又はポリカチオン性)である。それは、部分AがpHに関係なくイオン性(アニオン性又はカチオン性)繰返し単位を含むこと又は部分Aが処方物のpHに依存して中性若しくはイオン性(アニオン性又はカチオン性)であり得る繰返し単位(これらの単位は潜在的にイオン性である)を含むことを意味する。組成物のpHに依存して中性又はイオン性(アニオン性又はカチオン性)であり得る単位は、それが中性形態にあろうと又はイオン性形態(アニオン性又はカチオン性)にあろうと、イオン性単位(アニオン性又はカチオン性)と又はイオン性モノマー(アニオン性又はカチオン性)に由来する単位と以後称される。
【0035】
適当なコポリマーは、米国特許出願公開第2005/0176863号明細書、2006年1月6日に出願された米国特許出願シリアルナンバー11/445,115明細書、及び米国特許第6,933,340号明細書(これらの両出願明細書及び特許明細書もまた、参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0036】
本発明のある特定の具体的態様において、部分Aはポリカチオン性であり、そしてカチオン性モノマーから誘導された単位を含む。いくつかの好ましいカチオン性モノマーは、式−NR3+(ここで、Rは同一又は異なりそして水素原子、1から10個の炭素原子を含むアルキル基又はベンジル基(随意にヒドロキシル基を担持する)を表す)のアンモニウム基を含み、そしてアニオン(対イオン)を含み得る。アニオンの例は、クロライド及びブロマイドのようなハライド、サルフェート、ヒドロサルフェート、アルキルサルフェート(たとえば1から6個の炭素原子を含む)、ホスフェート、シトレート、ホルメート及びアセテートである。
【0037】
適当なカチオン性モノマーの例は、
− アミノアルキル(メト)アクリレート、アミノアルキル(メト)アクリルアミド、
− 少なくとも1個の第2級、第3級若しくは第4級アミン官能基、又は窒素原子を含有する複素環式基を含むモノマー(特に(メト)アクリレート及び(メト)アクリルアミド誘導体を含めて)、ビニルアミンあるいはエチレンイミン、
− ジアリルジアルキルアンモニウム塩、
− それらの混合物、それらの塩、及びそれらに由来するマクロモノマー
を包含するが、しかしそれらに限定されない。
カチオン性モノマーの特定の例は、次のものを包含する。すなわち、
− ジメチルアミノエチル(メト)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メト)アクリレート、ジ第3級ブチルアミノエチル(メト)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メト)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メト)アクリルアミド、
− エチレンイミン、ビニルアミン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、
− トリメチルアンモニウムエチル(メト)アクリレートクロライド、トリメチルアンモニウムエチル(メト)アクリレートメチルサルフェート、ジメチルアンモニウムエチル(メト)アクリレートベンジルクロライド、4−ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウムエチルアクリレートクロライド、トリメチルアンモニウムエチル(メト)アクリルアミド(2−(アクリルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム、TMAEAMS又はパダムクァト(Padamquat)とも呼ばれる)クロライド、トリメチルアンモニウムエチル(メト)アクリレート(2−(アクリルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム、TMAEAMS又はパダムクァト(Padamquat)とも呼ばれる)メチルサルフェート、トリメチルアンモニウムプロピル(メト)アクリルアミドクロライド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、
− ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、
− 次の式を有するモノマー、すなわち
【0038】
【化1】

〔ここで、
− R1は、水素原子又はメチル若しくはエチル基であり、
− R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なりそして線状又は分枝状C1〜C6好ましくはC1〜C4アルキル、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキル基であり、
− mは、1から10たとえば1の整数であり、
− nは、1から6好ましくは2から4の整数であり、
− Zは、−C(O)O−若しくは−C(O)NH−基又は酸素原子を表し、
− Aは(CH2p基を表し、そしてpは1から6好ましくは2から4の整数であり、
− Bは、随意に1個又はそれ以上のヘテロ原子又はヘテロ基特にO又はNHにより中断された及び随意に1個又はそれ以上のヒドロキシル又はアミノ基好ましくはヒドロキシル基により置換された線状又は分枝状C2〜C12有利にはC3〜C6ポリメチレン鎖を表し、
− Xは、同一又は異なりそして対イオンを表す〕
− それらの混合物及びそれらに由来するマクロモノマー。
【0039】
本発明の別の具体的態様において、部分Aはポリアニオン性であり、そしてアニオン性モノマーに由来する単位を含む。
【0040】
適当なアニオン性部分の例は、
− ホスフェート又はホスホネート基を含むアルファ−エチレン不飽和モノマー、
− アルファ−エチレン不飽和モノカルボン酸、
− アルファ−エチレン不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、
− アルファ−エチレン不飽和ジカルボン酸のモノアルキルアミド、
− スルホン酸基を含むアルファ−エチレン不飽和化合物、及びスルホン酸基を含むアルファ−エチレン不飽和化合物の塩
から成る群から選択されたアニオン性モノマーから誘導された単位を含む部分である。
【0041】
好ましいアニオン性部分は、
− アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の塩、メタクリル酸の塩、
− ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩、
− ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸の塩、
− アルファ−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、アルファ−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の塩、
− 2−スルホエチルメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレートの塩、
− アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の塩、及び
− スチレンスルホネート(SS)、SSの塩
から成る群から選択された少なくとも1種のアニオン性モノマーから誘導された部分を包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0042】
部分Bは、好ましくは、処方物のpH状態において中性である。従って、部分Bを構成する単位は、好ましくは、pHがどうであれ中性である。
【0043】
中性部分の例は、
− エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのようなアルキルオキシド、
− アクリルアミド、メタクリルアミド、
− アルファ−エチレン不飽和好ましくはモノ−アルファ−エチレン不飽和モノカルボン酸のアミド、
− アルファ−エチレン不飽和好ましくはモノ−アルファ−エチレン不飽和モノカルボン酸のエステル、たとえばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチル−ヘキシルアクリレートのようなアルキルエステル又は2−ヒドロキシエチルアクリレートのようなヒドロキシアルキルエステル、
− ポリエチレン及び/又はポリプロピレンオキシド(メト)アクリレート(すなわちポリエトキシル化及び/又はポリプロポキシル化(メト)アクリル酸)、
− ビニルアルコール、
− ビニルピロリドン、
− ビニルアセテート、ビニルバーサテート、
− ビニルニトリル、好ましくは3から12個の炭素原子を含むもの、
− アクリロニトリル、
− ビニルアミンアミド、
− スチレンのようなビニル芳香族化合物、並びに
− それらの混合物
から成る群から選択された少なくとも1種のモノマーから誘導された単位を含む部分である。
【0044】
処方物のpH状態においてイオン性である部分は、通常、水溶性と考えられる。かくして、部分Aは、通常、水溶性と考えられる。本発明のある好ましい具体的態様において、部分Bは、水溶性又は親水性である。ある部分の水溶性は、この部分がその他の部分なしに有する水溶性、すなわちその他の部分以外の同じ繰返し単位から成る且つ同じ分子量を有するポリマーの水溶性を指す。水溶性の部分、ポリマー又はコポリマーにより、この部分、ポリマー又はコポリマーが水中において重量により0.01%から10%の濃度にて20℃から30℃の温度において巨視的に相分離しないことが意味される。
【0045】
たとえば、2種のモノマーの逐次添加でもってのアニオン重合(たとえば、Schmolka,J. Am. Oil Chem. Soc.,1977,54,110又はその代わりにWilczek-Veraet等,Macromolecules,1996,29,4036に記載されているように)を用いることが可能である。用いられ得る別の方法は、ある部分のポリマーについての重合を別の部分のポリマーの端部の各々において開始させる(たとえば、Katayose及びKataoka,Proc. Intern. Symp. Control. Rel. Bioact. Materials,1996,23,899に記載されているように)ことに存する。
【0046】
本発明に関して、Quirk及びLee(Polymer International,27,359(1992))により定められているようなリビング又は制御重合を用いることが推奨される。実際には、この特別な方法は、狭い分散度を備え且つ諸部分の長さ及び組成が化学量論及び転化度により制御されるポリマーを作製することを可能にする。このタイプの重合に関して、任意のいわゆるリビング又は制御重合方法たとえば
− 国際公開第98/58974号パンフレット及び米国特許第6,153,705号明細書の教示に従ってのキサンテートにより制御されるフリーラジカル重合、
− 国際公開第98/01478号パンフレットの教示に従ってのジチオエステルにより制御されるフリーラジカル重合
のような方法により得られ得るコポリマーが一層特に推奨され、しかしてリビング又は制御フリーラジカル重合法により得られたブロックコポリマーはポリマー鎖の端部における少なくとも1個の移動剤基を含み得る。ある特定の具体的態様において、かかる基は除去又は失活される。
【0047】
リビング又は制御フリーラジカル重合法は、移動剤を用いること及びブロックコポリマーを得るために異なるモノマーの添加を実行することを伴う。
【0048】
かかる制御重合法を実行するための好ましい移動剤は、ジチオエステル、チオエーテル−チオン、ジチオカルバメート又はキサンテートである。好ましい重合は、キサンテートを用いてのリビングラジカル重合である。
【0049】
ブロックコポリマー(b)の平均分子量は、好ましくは、1000と500,000g/molの間で構成される。それは一層好ましくは100,000g/molより小さく、そして更に一層好ましくは15,000と50,000g/molの間にある。これらの範囲内で、各ブロックの重量比は変動し得る。しかしながら、各ブロックは500g/mol超そして好ましくは1000g/mol超の分子量を有することが好ましい。
【0050】
本発明によるポリマー溶液は、粉末形態の所望量のポリマーを脱イオン水好ましくはMΩの導電率を有する脱イオン水(Milliporeの精製イオン交換フィルター)に添加することにより作製され得る。ポリマーと水は、好ましくは、均質性を達成するために(好ましくは約1%又はそれ以下の間の範囲の濃度でもって)約24時間混合される。この溶液は、任意の適当な中和剤好ましくは水酸化アンモニウム溶液を用いて中和され得る。PAAにおけるアクリレート部分についての見掛けpKaは、約5.5であると知られている。PAA基を十分に荷電させるために、1Nから5Nの水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、ポリマー溶液をpH7に中和した。
【0051】
本発明による方法及び組成物は、ガラスパネルのような硬質表面を処理するために有用である。この処理は、様々な公知技法により行われ得る。Karcher(登録商標)タイプの機械を用いてガラスパネルに水の噴流を吹き付けることによりガラスパネルを清浄にする技法が特に挙げられ得る。
【0052】
導入される部分コポリマーの量は、一般的に、組成物(随意的希釈後)の使用中において濃度が0.001g/lと2g/lの間好ましくは0.005g/lから0.5g/lであるような量である。
【0053】
本発明はまた、硬質表面に汚れ付着防止、水の薄層状化、汚染防止、付着防止、付着、及び/又は堆積防止の性質を付与するために硬質表面を処理する方法であって、次の工程すなわち
a)本発明の方法により作られたコア−シェル構造を有する複合コアセルベートの水性分散液又は溶液である分散液又は溶液の薄膜で該表面上を被覆し、そして
b)水を蒸発させる
工程を含む方法に関する。
【0054】
一つの具体的態様において、放射線吸収性被膜を表面上に与える方法であって、次の工程すなわち
a)本発明の方法により作られたコア−シェル構造を有する複合コアセルベートの水性分散液又は溶液である分散液又は溶液の薄膜で該表面上を被覆し、そして
b)水を蒸発させる
工程を含む方法である。
【0055】
各場合において、表面処理物は耐久性であり、そして水の存在下で基材からの脱着に抵抗する。
【0056】
複合コアセルベートの無機粒子成分は、該複合コアセルベートから作られたそしてかかる無機粒子成分を含有する被膜に放射線吸収性を与える。該被膜の放射線吸収性は、該被膜が作られるところの複合コアセルベートの無機粒子成分の選択により調節され得る。たとえば、酸化セリウム、TiO2及びFe23は各々紫外範囲における放射線を吸収し、そして酸化セリウム、TiO2及び/又はFe23粒子を含有する複合コアセルベートから得られた被膜は紫外線吸収性を与える。放射線吸収性被膜は、たとえば、合成ポリマー基材のような下にある基材を紫外線のような放射線から保護するために有用である。
【0057】
本発明による方法及び組成物は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)のシャワー室及び浴槽の壁を又はPVCの外部窓枠若しくは戸枠を処理するために有用である。
【0058】
本発明による方法及び組成物はまた、窯業製品(タイル、浴槽、流し、等)を処理する及び清浄にするために有用である。
【0059】
この場合において、本組成物は、有利には、該組成物の総重量に関して重量により0.02%から5%のコアセルベート錯体、並びに少なくとも1種の界面活性剤を含む。
【0060】
好ましい界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、特に、親水性特質である上記に記載されたようなアルキレンオキシド基と脂肪族又はアルキル芳香族特質であり得る疎水性有機化合物との縮合により生成された化合物である。
【0061】
親水性/疎水性バランス(HLB)の所望度合いを有する水溶性化合物を得るために、親水性鎖の長さ又は任意の疎水性基と縮合されたポリオキシアルキレン基の長さは容易に調整され得る。
【0062】
本発明の組成物中の非イオン性界面活性剤の量は、一般的に重量により0%から30%そして好ましくは重量により0%から20%である。
【0063】
アニオン性界面活性剤は、随意に、重量により0%から5%そして有利には1%から3%の量にて存在し得る。
【0064】
硬質表面を清浄にするために、本発明の組成物に両性、カチオン性又はツビッターイオン性洗浄剤を添加することも可能であるが、しかし必須ではない。
【0065】
このタイプの組成物において用いられる諸界面活性剤化合物の総量は、該組成物の総重量に関して重量により一般的に1.5%と10%の間そして好ましくは1%と5%の間にある。この目的のために特に適当である一つの組成物は、重量により0.05%から5%の本発明によるコアセルベート錯体を含む。
【0066】
便器を清浄にするための本発明による組成物はまた、0.1%から3%の濃度にて導入されるガム特にキサンタンガムのような増粘剤、並びに次の小量成分の一つ又はそれ以上すなわち製品中における微生物の成長を防ぐために意図された保存剤、染料、芳香剤及び/又は研磨剤を含み得る。
【0067】
本発明のよりよい理解のために、いくつかの例示的しかし非制限的例が以下に提供される。
【0068】
実施例1
PCT/FR2006/00001の例1に従って、2Kポリ(アクリル)酸鎖で安定化されたセリアナノ粒子(CeO2−PAA)を作製する。おおよそ40個のPAA鎖(2K)が、セリア表面(静的光散乱からMw=420kg/mol)に結合される。PAAの負電荷の半数が裸CeO2の正電荷と共に錯化に関与すると考えると、溶液のpHが7超であるPAAの完全イオン化の場合、556の電荷が各ナノ粒子に関して見積もられる。
【0069】
錯化剤は、11K−30K(総計41K)の数平均分子量を有するカチオン性−中性二ブロックパダムクァト(Padamquat)−b−PAM(ポリ(トリメチルアンモニウムエチルアクリレートメチルサルフェート)−b−ポリアクリルアミド)(TMAEAMS−b−PAMとしても知られている)である。パダムクァト(Padamquat)−b−PAMは、米国特許第6,933,340号明細書の例2の教示に従って作製されたコポリマーである。11Kパダムクァト(Padamquat)ブロックは、41のカチオン電荷を担持する。
【0070】
両成分の分子量及び(モル)電荷数が分かっていると、その場合には、電荷比Z=1を得るために両成分のモル濃度を計算することが可能である。従って、次いで、ナノ粒子及びコポリマーの両方の個々の水溶液を0.1と1wt%の間に作る。
【0071】
水酸化アンモニウムを添加することにより、両溶液のpHをpH=7に中和する。次いで、前の原液に等しい最終溶液濃度をもたらすように、Zを可能な限り一定に保つためにワンショットでこれらの2種の溶液を一緒に混合し、そして夜通し撹拌する。1wt%の最終溶液濃度については、9.22gの1wt%ナノセリア−PAA溶液を10.74gの1wt%パダムクァト(Padamquat)−PAM溶液と混合する。
【0072】
セリアの分散液及びコポリマーの溶液をX、Y及びZの適切な値に調整するために、セリアとコポリマーの同一の重量濃度を有する種々の分散液及び溶液を作製することによる別の方法を用いる。その場合には、光散乱性質について種々の濃度における電荷比(Z=R/S)の関数としてのレイリー比(Rθ)及び流体力学的半径(Rh)の展開を行い、しかして図1は分散液及び溶液の両方について1wt%の濃度において得られたチャートを示す。
【0073】
pH=7に中和しそしてこれらの分散液と溶液をワンショットで混合した後、コア−シェル構造を備えた複合コアセルベートの溶液が得られる。コアは荷電高分子電解質ブロックで包まれたセリアのナノ粒子を含有し、そして外部シェルは二ブロックコポリマーの中性部分から作られている。これらの構造はコア中に25から35個のナノ粒子を含有し、そして直径について70から100nmの範囲の典型的サイズを有する。
【0074】
実施例2
国際公開第01/38255号パンフレットの例7に従って、クエン酸で安定化されたセリアナノ粒子(CeO2−クエン酸)を作製する。錯化剤は、11K−30K(総計41K)の数平均分子量を有するカチオン性−中性二ブロックパダムクァト(Padamquat)−b−PAM(ポリ(トリメチルアンモニウムエチルアクリレートメチルサルフェート)−b−ポリアクリルアミド)(TMAEAMS−b−PAMとしても知られている)である。パダムクァト(Padamquat)−b−PAMは、米国特許第6,933,340号明細書の例2の教示に従って作製されたコポリマーである。11Kパダムクァト(Padamquat)ブロックは、41のカチオン電荷を担持する。セリア粒子(分子量約380kg/mol)の周りの接近可能なアニオン電荷の数は200である。上記の実施例1に記載されたのと同じ光散乱方法を用いて、コアセルベート処方物を0.1wt%の濃度についてZ=1に作る。
【0075】
実施例3
コア用のカチオン性基本ブリックとして、pH<1.5未満で安定な裸ナノセリアナノ粒子ゾルを用いる。米国特許第5,344,588号明細書の例1の教示に従って、該ゾルを作製する。このゾルは、340kg/molの分子量及び粒子当たり約559のカチオン電荷を有する。
【0076】
錯化剤は、米国特許第6,933,340号明細書の例3の教示に従って作製されたそしてSS7K−AM30K(総計37K)の数平均分子量を有するアニオン性−中性二ブロックPSSNa−b−PAM(ナトリウムポリ(スチレンスルホネート)−b−ポリアクリルアミド)である。スチレンスルホネートモノマーの分子量は206g/molであるので、その場合には7K鎖は34個のモノマー単位そしてそれ故34のアニオン電荷を含有する。
【0077】
上記の実施例1に記載されたのと同じ操作法を用いて、コアセルベート処方物を0.1wt%の濃度についてZ=-1に作る。唯一の相違は、ナノセリアゾルが安定であるところのpH=1.5にて初期混合を行うことである。実際には、硝酸を脱イオン水に添加することにより、二ブロック水溶液をpH=1.5に作る。次いで、溶液を一緒に混合し、そして夜通し撹拌する。次いで、水酸化アンモニウムを添加することにより、pHを中和する。
【0078】
実施例4
A. 耐久性
0.1重量%の(a)上記の実施例1に従って作られたコア−シェル構造を備えた複合コアセルベート及び(b)該複合コアセルベートのセリアナノ粒子の代わりにナトリウムドデシルサルフェートを用いたこと以外は該複合コアセルベートを作るために用いられた態様と類似の態様で作られた有機コアセルベートの溶液の各々を、親水性硬質表面(シリカ)上に及び疎水性硬質表面(ポリスチレン層が薄く回転塗布された基材)上に施用した。溶液の水を蒸発させ、そして淀み点を備えた液体セルを有する屈折計でそれぞれのコアセルベートの吸着を測定した。それらの結果は、コアセルベートが両方の種類の表面上に吸着した(両方の場合において>1.0mg/m2)ことを示す。処理された基材を各々脱イオン水(約6のpHを有する)ですすいだ。結果は、下記の表Iに要約されている。
【0079】
【表1】

【0080】
複合コアセルベートの層は、すすぎ後に両方の種類の表面上に残存していた。それらの結果は、有機コアセルベートから作られた類似の被膜と比較して、複合コアセルベートから作られた被膜がすすぎ時の脱着に対して向上抵抗性そしてかくして向上耐久性を示したことを指摘する。
【0081】
B. 汚れ付着防止効果
本発明による複合コアセルベートで処理された表面は汚れ付着防止性を示し、それにより処理された表面上への更なる物質の吸着は阻止される。
【0082】
複合コアセルベートから形成された層の汚れ付着防止性を検査するために、各々Aldrichから得られた2種のモデル球状タンパク質すなわちウシ血清アルブミン(「BSA」)(15キロダルトン,4〜5のIEP(タンパク質等電点))及びリゾチーム(25キロダルトン,10〜11のIEP)を用いた。対照実験は、両方のタンパク質(0.01g/lつまり10ppmの溶液濃度)がシリカ表面及びポリスチレン表面上に強く吸着する(典型的には、基材表面の平方メートル当たり約1.5mgより多いか又は等しいタンパク質の量にて)こと並びに吸着されたタンパク質が典型的には水でのすすぎ時に全く脱着されないことを示す。
【0083】
上記の実施例1に従って作られた複合コアセルベート溶液の吸着(シリカ表面又はポリスチレン表面上へ0.1重量%溶液)後、この複合コアセルベートで処理された表面へのBSA又はリゾチームのどちらかの更なる非特異的吸着はほとんど完全に防止された(各場合において、吸着は約0.1mgより少ないタンパク質/m2基材表面であった)。
【0084】
C. 汚染防止効果
上記の実施例1において得られたコアセルベート溶液(0.1wt%)を、非イオン性APG界面活性剤(アルキルポリグルコシド界面活性剤)の2wt%溶液、グリコール酸及び/又は水の添加を通じて、200ppmと1wt%の間の範囲の濃度に希釈する。最終APG濃度は常に1wt%であり、そしてpHを2.3又は9に注意深く保つ。
【0085】
一次試験はセッケンスカムすすぎ試験であり、しかして黒色セラミックタイルをエタノールで清浄にしそして半数に分ける。一方の半数をpH2.3におけるAPGの1wt%溶液(2%グリコール酸を含有する)で、そして他方の半数をコアセルベート/APG混合物で処理する。処理の適用は、タイル表面上へ5滴を滴下しそして次いでKimberly-Clark Corporationから商業的に入手できるKIMWIPE(登録商標)セルロース系ティッシュで拡げることから成る。次いで、タイルを1分間水平状態で乾燥させてから、4.5l/minの流速における水道水で5秒間すすぐ。更に15分間垂直状態で乾燥した後、タイルを次いで重量により4.6%のIVORY soap(登録商標)(Procter & Gamble Co.から商業的に入手できる)、1.8%のMgCl2、30.5%の水及び63.3%のエタノールから成るモデルセッケンスカムの5滴で処理する。30分間水平状態で乾燥した後、薄い白色膜がタイルの両方の半数の表面上に形成されつつある。次いで、タイルを1.5分間の7.5l/minの流速における最終水道水すすぎに付す。
【0086】
最終すすぎ後、APG溶液のみで処理された組は影響されないままであるのに対して、コアセルベート/APG溶液で処理された組は一般的に最小残留セッケンスカムであるように30秒内で清浄にすすがれる。加えて、汚れのすすぎ除去は、一般的に、薄層状の汚れ全体を浮き上げて除去することから成る。
【0087】
D. 水の薄層状化の効果
ポリスチレンで作られた特有の疎水性表面上における水滴の拡がり(濡れ)により、この検査を遂行する。
【0088】
ポリスチレン表面は低エネルギー表面を有し、そして水により濡らされ得ないでその代わりに水滴との有限接触角を有する。ポリスチレン表面(水との接触角約90°)を上記の実施例1において作製された複合コアセルベートの溶液(1wt%)中に浸す。溶液の蒸発後、PS基材を純水ですすぎ、そして夜通し乾燥させる。
【0089】
次いで、水との接触角測定を遂行する。前進接触角値は、90°(裸ポリスチレン)からほぼ40°に減少する。後退接触角は、20°未満である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア−シェル構造を有するコアセルベートの水性分散液又は溶液の作製方法であって、該コア(a)はアニオン性又はカチオン性である無機粒子であり、そして該シェル(b)はコポリマーであり、しかも該コポリマーは少なくとも2つの部分A及びBを含み、部分Aは粒子(a)がアニオン性であるならばカチオン性であり、そして粒子(a)がカチオン性であるならばアニオン性であり、そして部分Bは該分散液又は溶液のpH状態において中性であり、該方法は次の工程すなわち
a)重量による濃度Caが約2%に等しいか又は小さく、且つ0.001%より大きい該安定化無機粒子の水性コロイド分散液を作製し、しかもそのpHをpHaの値に調整し、
b)重量による濃度Cbが約2%に等しいか又は小さく且つ0.001%より大きく、しかも
Ca×0.95≦Cb≦Ca×1.05
である該コポリマーの溶液を作製し、しかもそのpHを
pHa−2≦pHb≦pHa+2
であるpHbの値に調整し、但しこの溶液中に存在する荷電可能な基の化学量論比Zが0.80と1.2の間随意に0.95と1.05の間にそして一層好ましくは約1であることを更に条件とし、そして
Z=[S]×s/[P]×p
〔ここで、[S]及び[P]は該粒子のモル濃度及び該コポリマーのモル濃度であり、そしてs及びpは粒子当たりの電荷数及びコポリマー当たりの電荷数である〕
であり、そして
c)該分散液又は溶液を得るためにa)とb)を混合する
工程を含む方法。
【請求項2】
無機粒子及びコポリマーの重量濃度が0.1と1の間にあり、
Ca×0.99≦Cb≦Ca×1.01
pHa−1≦pHb≦pHa+1
であり、Zが1又は約1であり、そしてa)とb)の混合をワンショットで行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無機粒子が、1と100nmの間の粒子サイズを備えたセリウム、アルミニウム、ジルコニウム、リン、ガリウム、鉄、ゲルマニウム、バリウム、ストロンチウム、イットリウム、アンチモン、セシウム、ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素又はケイ酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
無機粒子が、2と20nmの間の粒子サイズを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
無機粒子のコロイド分散液が、金属が希土類金属、随意にセリウムである分散液であり、しかも該粒子は
3個若しくはそれ以上の官能基を備えた酸性錯化剤、随意にクエン酸、又は
エチレン不飽和の線状若しくは分枝状脂肪族、環状又は芳香族モノカルボン酸若しくはポリカルボン酸又は無水物に相当する少なくとも1種のモノマーを重合させることにより得られた、あるいは少なくとも1種のエチレン不飽和の線状若しくは分枝状脂肪族、環状又は芳香族モノカルボン酸若しくはポリカルボン酸又は無水物の重合から得られた水溶性又は水分散性ポリマー
で更に安定化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
コポリマーが少なくとも2つの部分A及びBを含み、しかも部分Aはポリイオン性であり、そして部分Bはコアセルベートの分散液のpH状態において中性である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
部分Aがポリカチオン性であり、そして部分Bがコアセルベートの分散液のpH状態において中性である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
コポリマーが、パダムクァト(Padamquat)−b−PAM(ポリ(トリメチルアンモニウムエチルアクリレートメチルサルフェート)−b−ポリアクリルアミド)の二ブロック、又は二ブロックPSSNa−b−PAM(ナトリウムポリ(スチレンスルホネート)−b−ポリアクリルアミド)のコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
硬質表面に汚れ付着防止、水の薄層状化、汚染防止、付着防止、付着、及び/又は堆積防止の性質を付与するために硬質表面を処理する方法であって、次の工程すなわち
a)請求項1に記載の方法により作られたコア−シェル構造を有する複合コアセルベートの水性分散液又は溶液である分散液又は溶液の薄膜で該表面上を被覆し、そして
b)水を蒸発させる
工程を含む方法。
【請求項10】
表面が疎水性である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
放射線吸収性被膜を表面上に与える方法であって、次の工程すなわち
a)請求項1に記載の方法により作られたコア−シェル構造を有する複合コアセルベートの水性分散液又は溶液である分散液又は溶液の薄膜で該表面上を被覆し、そして
b)水を蒸発させる
工程を含む方法。
【請求項12】
複合コアセルベートの無機粒子が、紫外範囲における放射線を吸収する、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2009−542894(P2009−542894A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519498(P2009−519498)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/015757
【国際公開番号】WO2008/008354
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(598109291)ローディア インコーポレイティド (41)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】