説明

固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法および固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシート

【課題】本発明は、固体酸化物形燃料電池の固体電解質膜として用いられるスカンジア安定化ジルコニアシートを、ウネリの発生を抑制しつつ製造するための方法を提供することを目的とする。また、本発明では、当該方法で用いるスカンジア安定化ジルコニアスラリーとスカンジア安定化ジルコニアグリーンシート、当該方法により製造されたものであり、ウネリが抑制された固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシート、および当該固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートを固体電解質膜として有する固体酸化物形燃料電池を提供することも目的とする。
【解決手段】本発明に係る固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法は、安定化ジルコニア粒子を含むスラリーをシート状に成形した後に乾燥し、最大応力が5.0MPa以上、20.0MPa以下で且つ最大応力負荷時の伸び率が5.0%以上、20.0%未満であるグリーンシートを作製する工程;および、得られたグリーンシートを焼成し、厚さが100μm超、300μm以下のジルコニアシートとする工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートを製造するための方法、当該方法で用いるスカンジア安定化ジルコニアスラリーとスカンジア安定化ジルコニアグリーンシート、当該方法で製造された固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシート、および当該固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートを固体電解質膜として有する固体酸化物形燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池はクリーンなエネルギー源として注目されており、その用途は家庭用発電から業務用発電、さらには自動車用発電などを主体にして、改良研究や実用化研究が急速に進められている。かかる燃料電池の中でも固体酸化物形燃料電池は、発電効率が高く長期安定性にも優れるものとして家庭用や業務用の電力源として期待されている。
【0003】
この固体酸化物形燃料電池においては、固体電解質膜としてセラミックシートが用いられている。セラミックスは、耐熱性などの機械的性質に加え、電気的特性や磁気的特性に優れることによる。中でもジルコニアを主体とするセラミックシートは、優れた酸素イオン伝導性や、耐熱性、耐食性、靭性などを有することから、固体酸化物形燃料電池の固体電解質膜としては主にジルコニアシートが採用されている。
【0004】
ジルコニアシートの原料となるジルコニアには、結晶形を制御するために種々の添加物が添加される。かかる添加物としては、Sc、Y、Yb、Ca、Mg、Er、Dy、Gd、Eu、Al、Hf、Ceなどの酸化物がよく用いられる。一般には、これら添加物が添加されたジルコニアを安定化ジルコニアという。
【0005】
これら安定化ジルコニアの中でもスカンジア安定化ジルコニアは、特に酸素イオン伝導性に優れるので、スカンジア安定化ジルコニアからなるシートは固体酸化物形燃料電池の固体電解質膜として利用される。しかしスカンジア含有量の多い安定化ジルコニアからなるシートは、酸素イオン伝導性に優れるものの機械的強度が劣るので、厚くせざるを得ない。また、焼結時に形態不良の発生率が高いという問題がある。特に発生頻度の高い形態不良としては、端部に発生する波状のウネリがある。
【0006】
ウネリを有するスカンジア安定化ジルコニアシートには、電極を正確にスクリーン印刷できない。また、ウネリが原因となり、集電体との接触面積が低下する。その上、ウネリを有するスカンジア安定化ジルコニアシートを固体電解質膜とする固体酸化物形燃料電池では、セルの積層による荷重や発電時の体積変化による応力がウネリ部分に集中し、そこが起点となって固体電解質膜が破損して電池寿命が短くなるという問題がある。よって、ウネリを有するスカンジア安定化ジルコニアシートは固体電解質膜として用いることはできない。近年、燃料電池の実用化が進み、固体電解質膜とするスカンジア安定化ジルコニアシートの生産量も増えてきているため、ウネリを抑制するための技術はコストを低減する上でも極めて重要となってきている。
【0007】
ところが、スカンジア安定化ジルコニアシートのウネリを低減するための技術に関しては、これまで十分に検討されていなかったのが実情である。それ故、スカンジア安定化ジルコニアシートのウネリに関する先行技術文献は見出せない。同様に、イットリア安定化ジルコニアシートに関しても、ウネリの改善に関する先行技術文献は見出せていない。しかしながら、イットリア安定化ジルコニアシートについては、その前駆体であるグリーンシートの引張物性に関する知見はいくつか存在する。
【0008】
例えば特許文献1には、セラミックシートの機械的強度を高めると共に形状の歪みを低減するために、グリーンシートの引張破壊伸びを20〜500%に、引張降伏強さを20〜200kgf/cm2(約1.96〜19.6MPa)に調整する製法が記載されてい
る。かかる形状の歪みは主にグリーンシートの切断時に生じるものであるので、切断時に上記条件を満たすのが好ましいとされている。よって、切断時における歪みを抑制するために、引張破壊伸び(最大応力負荷時の伸び率)は20〜500%と非常に大きな値に設定されている。
【0009】
また、特許文献2にも、切断工程におけるグリーンシートの破断強度を300〜1000MPa、切断時の最大伸び率を5〜35%に設定する技術が記載されている。当該技術では、切断時の歪みや切断端面のバリを抑制するために、グリーンシートの破断強度が非常に高い範囲に設定されている。
【0010】
その他、固体酸化物形燃料電池の固体電解質膜は志向されておらず、イオン流制御ヘッドや高精度電界シャッターの部品として用いられ、部分安定化ジルコニアなどからなるものであり、且つ非常に薄いセラミックシートを製造するためものではあるが、グリーンシートの引張強度を10kgf/cm2以上、200kgf/cm2以下(約0.98MPa以上、19.6MPa以下)、伸び率を0.5mm3/kgf以上、25.0mm3/kgf以下とする技術が特許文献3に開示されている。しかし、当該技術の目的はクラックの発生や微細貫通孔の位置精度の低下の抑制に特化しているため、引張強度と伸び率の規定範囲は非常に広いが、貫通孔を良好に形成すべく、伸び率は低いものの引張強度は高いか、引張強度は低いものの伸び率は高いか、或いは両方とも適度に低いグリーンシートしか作製されておらず、引張強度と伸び率の両方が高いグリーンシートの作製例は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−207723号公報
【特許文献2】特開2001−205607号公報
【特許文献3】特開平10−138226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、従来、固体酸化物形燃料電池の固体電解質膜として用いられるものであって、安定化ジルコニアからなるシートのウネリの低減を主目的に検討された技術は十分ではなかった。
【0013】
そこで本発明は、本発明は、固体酸化物形燃料電池の固体電解質膜として用いられるスカンジア安定化ジルコニアシートを、ウネリの発生を抑制しつつ製造するための方法を提供することを目的とする。また、本発明では、当該方法で用いるスカンジア安定化ジルコニアスラリーとスカンジア安定化ジルコニアグリーンシート、当該方法により製造されたものであり、ウネリが抑制された固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシート、および当該固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートを固体電解質膜として有する固体酸化物形燃料電池を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、焼成後におけるスカンジア安定化ジルコニアシートのウネリの発生は、そのグリーンシートの引張試験時における最大応力および最大応力負荷時の伸び率と高い相関性を有し、当該最大応力と最大応力負荷時の伸び率を適切に制御することにより顕著に抑制できることを見出して、本発明を完成した。
【0015】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法は、スカンジア安定化ジルコニア粒子を含むスラリーをシート状に成形した後に乾燥し、最大応力が5.0MPa以上、20.0MPa以下で且つ最大応力負荷時の伸び率が5.0%以上、20.0%未満であるグリーンシートを作製する工程;および、得られたグリーンシートを焼成し、厚さが100μm超、300μm以下のジルコニアシートとする工程を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る製造方法で使用するスカンジア安定化ジルコニアグリーンシートの原料スラリーに配合する可塑剤としては、数平均分子量が500以上、8000以下のオリゴマー可塑剤を用いることが好ましい。かかるオリゴマー可塑剤を用いれば、グリーンシートのテカリを抑制することができる。
【0017】
本発明に係る製造方法で使用するスカンジア安定化ジルコニアグリーンシートの原料スラリーに配合するバインダーとしては、酸価が0.1以上、60以下、アミン価が0以上、60以下、水酸基価が0以上、60以下であるアクリレート系共重合体からなるものが好ましい。かかるバインダーを用いれば、スラリーを良好に調製することができ、また、グリーンシートの樹脂フィルムからの剥離性を高められる。
【0018】
本発明に係る製造方法においては、さらに、最大応力負荷時の伸び率をx%、最大応力をyMPaとしたときに、7≦x<20、y≦−0.25x+14、且つy≧−0.25x+10の関係を満たすスカンジア安定化ジルコニアグリーンシートを作製することが好ましい。かかる規定を満たすグリーンシートを焼成した場合には、ウネリの発生率を30%以下に低減することができ、スカンジア安定化ジルコニアシートの効率的な製造が可能になる。
【0019】
スカンジア安定化ジルコニア粒子におけるスカンジアの含有率は、5モル%以上とすることが好ましい。当該含有率が5モル%以上であれば、酸素イオン伝導性が著しく向上する。
【0020】
上記スカンジア安定化ジルコニアグリーンシートを作製するに当たっては、乾燥温度を80℃以上、120℃以下とするか、原料スラリーに占めるバインダーの割合をスカンジア安定化ジルコニア粒子100質量部に対して10質量部以上、20質量部以下とするか、またはスラリー中のスカンジア安定化ジルコニア粒子の平均二次粒子径を0.2μm以上、0.5μm以下とすることが好ましい。これら条件のいずれか1以上を満たすことにより、特に引張試験時における上記最大応力等が上記規定を満たすグリーンシートを作製し易くなり、結果としてウネリが抑制された固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートをより一層効率的に製造することが可能になる。
【0021】
本発明方法においては、グリーンシートを焼成する前に2週間以上保存することが好ましい。その理由は必ずしも明らかではないが、2週間以上保存した場合には、焼成後におけるウネリが明らかに低減する。
【0022】
本発明に係るスカンジア安定化ジルコニアスラリーは、上記本発明方法で用いられるものであって、スカンジア安定化ジルコニア粒子と、数平均分子量が500以上、8000以下のオリゴマー可塑剤を含むことを特徴とする。
【0023】
上記スラリーとしては、さらに、酸価が0.1以上、60以下、アミン価が0以上、60以下、水酸基価が0以上、60以下であるアクリレート系共重合体からなるバインダーを含むものが好ましい。かかるスラリーはより調製し易く、また、当該スラリーから得られるグリーンシートは樹脂フィルムから剥離し易い。
【0024】
本発明に係るスカンジア安定化ジルコニアグリーンシートは、上記本発明スラリーを成形および乾燥することにより得られるものであって、最大応力が5.0MPa以上、20.0MPa以下で且つ最大応力負荷時の伸び率が5.0%以上、20.0%未満であることを特徴とする。
【0025】
本発明の固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートは、上記本発明方法で製造されたものであり、端部におけるウネリの高低差が20μm以下であることを特徴とする。
【0026】
本発明の固体酸化物形燃料電池は、上記本発明に係る固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートを固体電解質膜として有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、スカンジア安定化ジルコニアからなり、且つウネリが顕著に低減されたシートを効率的に製造することができる。かかる本発明スカンジア安定化ジルコニアシートは、ウネリが低減されていることから電極を良好にスクリーン印刷することができる。その上、セルを積層した際に生じる荷重や発電時の体積変化により生じる応力が集中する箇所が低減されていることから、本発明に係るスカンジア安定化ジルコニアシートを固体電解質膜とする固体酸化物形燃料電池は長寿命である。よって本発明は、スカンジア安定化ジルコニアからなるシートを低コストで大量生産することを可能にするものであり、固体酸化物形燃料電池の実用化を一層促進でき得るものとして、産業上非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明方法を実施の順番に従って説明する。
【0029】
(1) スラリーの調製工程
本発明では、スカンジア安定化ジルコニア粒子を原料粒子として用いる。本発明では、スカンジア安定化ジルコニアからなるシートのウネリを抑制し、固体酸化物電解質膜にした場合における応力集中を無くして耐久性を高め、且つ集電体との接触面積を向上せしめている。
【0030】
安定化ジルコニアとしては、MgO、CaO、SrO、BaOなどのアルカリ土類金属酸化物;Y2、La23、CeO2、Pr23、Nd23、Sm23、Eu23、Gd23、Tb23、Dy23、Ho23、Er23、Yb23などの希土類元素酸化物;Sc23、Bi23、In23等の酸化物を安定化剤として1種もしくは2種以上含有するジルコニアを例示することができる。さらにその他の添加剤として、SiO2、Ge23、B23、SnO2、Ta25、Nb25等が含まれていてもよい。中でも、より高レベルの酸素イオン伝導性と、強度や靭性を確保する上で好ましいのは安定化剤としてスカンジアまたはイットリアを含有する安定化ジルコニアであり、特に酸素イオン伝導性が一段と優れていることから、スカンジアを含む安定化ジルコニアが好ましい。
【0031】
ジルコニアを安定化ジルコニアとするための金属酸化物の量は、その種類により異なる。例えば、本発明で用いる安定化ジルコニアとしては、スカンジアを4モル%以上含むジルコニアを挙げることができ、スカンジアを5モル%以上含むジルコニアが好ましい。一方、スカンジアの量が多過ぎても性能は頭打ちとなるので、経済的な面から、スカンジアの量としては12モル%以下が好ましい。また、スカンジアの量が多くなると結晶系が菱面体晶になることがあるので、結晶系を立方晶系に安定化するため、第三成分としてセリアやアルミナ等を加えてもよい。なお、スカンジアに含まれるスカンジウムの含有量は、ICP分析、蛍光X線分析、EPMAなどを用いて測定することができるので、当該測定値より安定化ジルコニアに含まれるスカンジアのモル%を算出することができる。
【0032】
本発明方法では、先ず、スカンジア安定化ジルコニア粒子を含むスラリーを調製する。当該スラリーは、スカンジア安定化ジルコニア粒子の他、溶媒、バインダー、可塑剤、分散剤などを含む。
【0033】
スラリー調製に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類等を例示することができ、これらから適宜選択して使用する。これらの溶媒は単独で使用し得る他、2種以上を混合して使用することができる。これら溶媒の使用量は、グリーンシート成形時におけるスラリーの粘度を加味して適当に調節するのがよく、好ましくはスラリー粘度が1Pa・s以上、20Pa・s以下、より好ましくは1Pa・s以上、5Pa・s以下の範囲となる様に調整するのがよい。
【0034】
スラリーを製造する際に用いられるバインダーの種類は、焼成により分解したり燃焼することで除去されるものであれば格別の制限はなく、従来から知られた有機質のバインダーを適宜選択して使用することができる。有機質バインダーとしては、例えばエチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系及びメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース等のセルロース類等が例示される。
【0035】
これらの中でもグリーンシートの成形性や強度、焼成時の熱分解性などの点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の炭素数10以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の炭素数20以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート類;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアクリル酸、ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレート類;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノアルキルアクリレートまたはアミノアルキルメタクリレート類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、モノイソプロピルマレートの如きマレイン酸半エステル等のカルボキシル基含有モノマー等の中から少なくとも1種を重合または共重合させることによって得られるポリマーが好ましく使用される。
【0036】
これらの中でも特に好ましいのは、数平均分子量が5,000以上、200,000以下、より好ましくは10,000以上、50,000以下の(メタ)アクリレート系共重合体である。これらの有機質バインダーは、単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。特に好ましいのは、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレートを60質量%以上含むモノマーの重合体である。
【0037】
また、本発明で用いるバインダーとしては、酸価、アミン価、水酸基価が適切なものが好ましい。
【0038】
酸価とは、バインダー1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数で表される。かかる酸価としては、0.1以上、60以下が好ましく、0.2以上、40以下がより好ましく、0.3以上、20以下がさらに好ましく、0.5以上、15以下がさらに好ましい。酸価を上記範囲に制御することで、スラリー中の安定化ジルコニア粒子を十分に分散することができ、スラリーの流動性を良好に維持できる。なお、酸価は、通常、滴定法により測定することができる。
【0039】
アミン価とは、バインダー1gを中和するのに必要な塩酸の量と等量の水酸化カリウムのmg数で表される。かかるアミン価としては、0以上が好ましく、また、60以下が好ましく、50以下がより好ましく、40以下がさらに好ましい。アミン価を上記範囲に制御することで、グリーンシートの柔軟性をより一層良好なものとし、PETフィルムから剥離し易くすることが可能になる。なお、アミン価は、通常、滴定法により測定することができる。
【0040】
水酸基価とは、バインダー1gに含まれる水酸基をアセチル化するのに必要な水酸化カリウムのmg数で表される。かかる水酸基価としては、0以上が好ましく、また、60以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下がさらに好ましく、20以下がさらに好ましい。水酸基価上記範囲に制御することで、均一なスラリーが得られ易くなる。なお、水酸基価は、通常、滴定法により測定することができる。
【0041】
バインダーが溶媒に溶解している場合には、本発明におけるバインダーの酸価、アミン価、水酸基価は、固形分当たりに換算した数値とする。
【0042】
バインダーの使用量は適宜調整すればよいが、スカンジア安定化ジルコニア粒子100質量部に対して2質量部以上、40質量部以下程度が好ましい。当該割合が2質量部以上であれば、スカンジア安定化ジルコニア粒子を結合してグリーンシートを作製できる。一方、バインダーは焼成により除去されるものであることから、当該割合は40質量部以下にとどめることが好ましい。当該割合としてより好ましくは5質量部以上、30質量部以下、特に好ましくは10質量部以上、20質量部以下である。特に当該割合を20質量部以下とすることにより、グリーンシートの硬度を比較的高いものとして、焼成時におけるウネリの発生を抑制することができる。
【0043】
本発明で用いる可塑剤は、セラミックグリーンシートに柔軟性を付与するために添加する。
【0044】
可塑剤としては、例えば、低分子可塑剤、コオリゴマー可塑剤および高分子可塑剤がある。低分子可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチルやフタル酸ジオクチルなどフタル酸エステル類を挙げることができる。
【0045】
コオリゴマー可塑剤および高分子可塑剤としてはポリエステル類が挙げられ、特に下記一般式(1)で表される化合物が好適である。
R−(A−G)n−A−R ・・・ (1)
[式中、Aは二塩基酸残基を示し、Rは一価アルコール残基を示し、Gはグリコール残基を示し、nは重合度を示す]
【0046】
ここで、二塩基酸としては、フタル酸、アジピン酸、セバチン酸などが挙げられる。一価アルコールとしては、メタノール、プロパノール、ブタノール、ネオペンチルアルコール、トリデシルアルコール、イソノニルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールなどが挙げられる。グリコールとしては、1,4−ブタンジオール、1,3−プロピレングリコール、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類;ジエチレングリコールなどのグリコールエーテル類;ポリエチレングリコール誘導体などが挙げられる。重合度は、可塑剤の数平均分子量が500以上、8000以下となるように調整するのが好ましい。
【0047】
本発明方法で用いる可塑剤としては、特にその数平均分子量が500以上、8000以下のオリゴマー可塑剤が好適である。一般的に、グリーンシートは長尺のまま巻き取られ、切断および焼成の前に保存される。その際、比較的低分子の可塑剤はシート表面に浮き出てくることがあり、特にシートの表面の一部にテカリが発生する原因となる。そこで本発明方法では、数平均分子量が500以上のオリゴマー可塑剤を用いる。一方、数平均分子量が大き過ぎると、溶媒へ速やかに溶解できなかったり、スラリーの粘度が高くなり過ぎる場合があるので、数平均分子量は8000以下が好ましい。
【0048】
可塑剤の配合量は、使用するバインダーのガラス転移温度にもよるが、スカンジア安定化ジルコニア粒子100質量部に対して0.5質量部以上、10質量部以下とすることが好ましい。当該割合が0.5質量部未満であると、十分な効果が発揮されない場合があるからであり、一方、10質量部を超えると、かえって可塑性が強くなり過ぎ、また、焼成時の熱分解に悪影響を及ぼし得るからである。さらに好ましくは2質量部以上、8質量部以下であり、特に好ましくは2質量部以上、6質量部以下である。
【0049】
スラリーの調製に当たっては、ジルコニア原料粉末の解膠や分散を促進し、スラリーの流動性を増加せしめ、スラリー中でのジルコニア原料粉末の沈降を抑制するため、分散剤を添加してもよい。分散剤としては、例えば、Uniqema社製のKD−4,9、共栄化学工業社製のフローレンG700やG900、ビックケミー社製のBYK−220Sなどのアニオン系分散剤;Uniqema社製のKD−1やDOPA−22、ビックケミー社製のDisperbyk108、112、116などのカチオン系分散剤;ダイセル社製のナラクセルFM−1D、Uniqema社製のB246SF、共栄化学工業社製のNC−500などのノニオン系分散剤を挙げることができる。さらには界面活性剤や消泡剤などを必要に応じて添加することができる。なお、スラリー中の水分量は、できるだけ少ない方が望ましい。
【0050】
本発明に係るスラリーにおけるスカンジア安定化ジルコニア粒子の平均二次粒子径(D50)としては、0.08μm以上、0.8μm以下が好ましい。平均二次粒子径が0.8μm以下と比較的細かいスカンジア安定化ジルコニア粒子を用いることで、バインダー使用量を低減することができ、硬度の高いグリーンシートが得られ、結果としてウネリの少ないジルコニアシートが得られる。一方、細か過ぎると分散剤などの必要量が多くなることから、好適には0.08μm以上とする。当該平均二次粒子径としては、0.2μm以上、0.5μm以下程度がより好ましい。
【0051】
その他、スラリー中の固形物の平均二次粒子径(D50)は0.08μm以上、0.8μm以下とすることが好ましく、より好ましくは0.2μm以上、0.5μm以下の範囲とし、90体積%径(D90)は2μm以下、より好ましくは0.8μm以上、1.5μm以下とする。この様な粒度構成のスラリーを使用すると、シート状に形成した後の乾燥工程で固形物粒子間に微細で且つ均一なサイズの細孔が形成され易く、適度の加圧とも相まって粗大な気孔が残らなくなり、微細な気孔は焼結により消滅して高密度の焼結体となる。その上、結晶粒径の変動係数も可及的に小さく抑えられ、ひいては、高レベルの破壊靭性値と小さな変動係数の焼結体シートが得られる。
【0052】
スラリー中の固形成分の粒子径は、混合前に制御し、そのままボールミルなどで混合してもよい。また、ボールミルなどによる混合前に、少なくとも分散剤と溶媒とスカンジア安定化ジルコニア粒子をディスパーなどで予備分散した上でボールミルなどにより解砕しつつ混合し、所望の粒子径としてもよい。
【0053】
原料粉末やスラリー中の固形成分の粒度構成は、下記の方法で測定した値をいう。測定装置としては、堀場製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置「LA−920」などの粒度分布測定装置を用いる。原料粉末の粒度構成は、先ず、蒸留水中に0.2質量%のメタリン酸ナトリウムを添加した水溶液を分散媒とし、当該分散媒100mL中に原料粉末0.01〜1質量%を加え、3分間超音波処理して分散させて測定する。また、スラリー中の固形成分の粒度構成は、スラリー中の溶媒と同組成の溶媒を分散媒として使用し、当該分散媒100mL中に各スラリーを0.01〜1質量%となる様に加え、同様に3分間超音波処理して分散させた後の測定値である。平均二次粒子径(D50)とは、粒径分布曲線における固形分全体積中の50%に相当するときの粒径であり、90体積%径(D90)とは、粒径分布曲線における固形分全体積中の細粒子側から90%に相当するときの粒径である。
【0054】
(2) グリーンシートの成形工程
次に、得られたスラリーをシート状に成形する。成形方法は特に制限されず、ドクターブレード法やカレンダーロール法などの常法を用いる。具体的には、原料スラリーを塗工ダムへ輸送し、ドクターブレードにより均一な厚さとなるように高分子フィルム上にキャスティングし、乾燥することによりグリーンシートとする。
【0055】
本発明は、厚さが100μm超、300μm以下のジルコニアシートを得ることを目的とする。従って、乾燥後におけるグリーンシートの厚さは、焼成工程後のシート厚を考慮して、100μm以上、500μm以下程度にすることが好ましく、110μm以上、400μm以下程度にすることがより好ましい。
【0056】
グリーンシートの形状や大きさは、所望するジルコニアシートの形状や大きさに合わせて決定すればよいが、通常、幅5cm以上、200cm以下程度の幅の長尺とされる。
【0057】
グリーンシートの乾燥条件は、使用した溶媒の種類などに応じて適宜調整すればよいが、通常は40℃以上、より好ましくは80℃以上で、120℃以下程度とする。乾燥は、一定温度で行ってもよいし、50℃、80℃、120℃の様に順次連続的に昇温して加熱乾燥してもよい。
【0058】
本発明においては、ジルコニアシートの乾燥温度は特に80℃以上とすることが好ましい。比較的高い温度で乾燥することにより硬度の高いグリーンシートを得ることができ、最終的に焼成後もウネリの少ないジルコニアシートを製造することが可能になる。一方、乾燥温度が過剰に高過ぎるとグリーンシートが硬くなり過ぎたり、高分子フィルムが変形してジルコニアシートの外観異常の原因となることもあるので、好適には120℃以下とする。
【0059】
得られたグリーンシートは、さらに切断して所望の形状や大きさとしてもいいが、通常は長尺のまま巻き取られ、いったん保存される。本発明方法においては、グリーンシートを焼成する前に、常温以上、50℃以下の温度で2週間以上、3ヶ月以内保存することが好ましい。その理由は明らかではないが、グリーンシートを2週間以上保存してから焼成した場合には、焼成後のウネリは明らかに抑制される。かかる保存期間の条件は特に無いが、生産性の問題から3ヶ月以内とすることが好ましい。また、保存温度が高過ぎると、例えばコオリゴマー可塑剤や高分子可塑剤を用いてもブリーディングを起こし、テカリの原因となるので、保存温度としては50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。また、常温で保存してもよい。ここで、テカリとは、グリーンシートの表面の一部が他の部分よりも光沢が顕著となり、かかるグリーンシートを焼成してジルコニアシートとしたとき、表面に模様が浮き出て外観が悪化する現象をいう。なお、かかるグリーンシートの保存は、長尺のまま行っても所望形状に切断した後に行ってもよいが、保存スペースの問題から長尺のまま保存することが好ましい。
【0060】
好ましくは、グリーンシートは長尺のまま保存された後、所望の形状に切断する。具体的には、例えば、グリーンシートの抜き型に埋設されたトムソン刃ボディ部のショア強度を40以上、70以下とし、および/またはエッジショア部のショア強度が70以上、80以下であるトムソン刃を使用したり、或いは、グリーンシート切断用金型を使用する。シートの形状は特に制限されず、円形、楕円形、R(アール)を持った角形など何れでもよく、これらのシート内に円形、楕円形、Rを持った角形などの穴を有するものであってもよい。
【0061】
なお、上記グリーンシート切断用金型の一例としては、上側中央部金型、下側中央部金型、上側ロの字型金型、下側ロの字型金型の4個の金型の組み合わせからなるものを挙げることができる。当該例においては、上側中央部金型と下側中央部金型とでグリーンシートを固定する。次いで、上側ロの字形金型を下ろし、これがグリーンシートを切断すると同時に下側ロの字形金型が連動して下降する。次に、上側および下側のロの字形金型と上側中央部金型は上昇し、ロの字形金型により周縁部が切断されたグリーンシートは人手またはロボットアームなどにより次の工程に送られ、切断された周縁部は連続的に巻き取られることにより除去される。切断用金型の切断面に使用される材質は特に制限されないが、耐久性を考えるとダイス鋼やハイス鋼、さらに好ましくは超硬合金などが使用される。また、切断用金型には1以上の空気噴出孔を設け、所望の形状に切断処理後に当該空気噴出孔から空気を送入することにより所望形状のグリーンシートから金型を簡便に剥離することができる。切断用金型に設ける空気噴出孔の直径としては、0.1mm以上、1mm以下程度、空気噴出孔の数は、1個以上、80個以下、空気噴出孔から送入する空気の圧力としては、0.1kgf/cm2以上、1kgf/cm2以下とすることで、切断用金型とグリーンシートとを良好に剥離できる。金型の形状は所望のグリーンシート切断形状に従って、円形、楕円形、R(アール)を持った角形など何れでもよく、これらシート内に円形、楕円形、R(アール)を持った角形などの穴を形成する切断用金型であってもよい。
【0062】
本発明は、引張試験時における最大応力が5.0MPa以上、20.0MPa以下で且つ最大応力負荷時の伸び率が5.0%以上、20.0%未満であるグリーンシートを得ることを特徴とする。本発明者らが見出した実験的事実によれば、当該最大応力と最大応力負荷時の伸び率がかかる範囲内であるグリーンシートを焼成してスカンジア安定化ジルコニアシートとする場合、ウネリが明らかに低減される。その理由は必ずしも明らかではないが、グリーンシートの、当該最大応力と最大応力負荷時の伸び率がこの範囲にあれば、脱脂によるグリーンシートの収縮が均一となり、さらにグリーンシートの切断時やハンドリング時における残留応力が低減されるため、ウネリが抑制されると考えられる。
【0063】
ウネリの低減の点では、グリーンシートはさらに硬い方、即ち、上記範囲よりも最大応力がさらに大きく最大応力負荷時の伸び率がさらに小さい方が有利ではあるが、それではシートが脆くなりバーズが多発し得る。また、グリーンシートがさらに柔らかい、即ち、上記範囲よりも最大応力がさらに小さく最大応力負荷時の伸び率がさらに大きいと、ウネリが多発する結果となる。それに対して、切断時における残留応力がウネリの原因であることを前提として、降伏点の応力と伸び率を適度なものとすれば、切断時の応力がウネリとして表れ難くなり、また、脱脂工程にて有機物が分解する際のグリーンシートの収縮が均一になり、ウネリが発生し難くなるのではないかと考えられる。
【0064】
最大応力と最大応力負荷時の伸び率を測定するには、先ず、引張試験機などを用いてグリーンシート試料に引張応力を与え、当該応力と歪みを測定することによりSSカーブ(応力(Stress)と歪み(Strain)との関係をグラフにしたもの)を測定する。次いで、得られたSSカーブより、グリーンシート試料が破断するまでに負荷される最大の応力を最大応力、最大応力が負荷される点におけるグリーンシート試料の伸び率を最大応力負荷時の伸び率として求める。
【0065】
本発明においては、最大応力負荷時の伸び率をx%、最大応力をyMPaとしたときに、7≦x<20、y≦−0.25x+14、且つy≧−0.25x+10の関係を満たすグリーンシートを作製することが特に好ましい。かかる要件を満たすグリーンシートは、特にウネリの発生率を顕著に抑制することができ、且つ打ち抜きや焼成にかかる作業において、非常に扱い易い柔軟性と強度を有している。
【0066】
グリーンシートの最大応力と最大応力負荷時の伸び率は、グリーンシートの乾燥温度、バインダー含有量、スカンジア安定化ジルコニア粒子の平均二次粒子径、保存時間、可塑剤含有量、溶剤含有量などにより制御できる。
【0067】
より詳しくは、乾燥温度を高くすると最大応力は大きくなり、最大応力負荷時の伸び率は小さくなる。但し、乾燥温度を高くし過ぎると有機物の分解や塗工時における樹脂フィルムの変形が起こり得る。バインダー含有量を低減すると最大応力は大きくなり、最大応力負荷時の伸び率は小さくなる。ジルコニア粒子の平均二次粒子径を小さくすると最大応力は大きくなり、最大応力負荷時の伸び率は小さくなる。また、必要なバインダー量を低減できるが、当該粒子径が小さ過ぎるとスラリー粘度が高くなり過ぎ、スラリーの取扱性が悪くなる。かかる問題を解消するために溶剤量を増やすと乾燥時間を長くせざるを得ない。また、グリーンシートの保存時間が長いほど、最大応力は大きくなる。
【0068】
可塑剤含有量を少なくすると、最大応力は大きくなり、最大応力負荷時の伸び率は小さくなる。また、溶剤含有量を少なくすると、最大応力は大きくなり、最大応力負荷時の伸び率は小さくなる。
【0069】
以上のとおり、グリーンシートの最大応力と最大応力負荷時の伸び率は、グリーンシートの乾燥温度などにより調整することができるが、上記調節因子は互いに関連性を有することがあり、また、グリーンシートやジルコニアシートの品質などにも影響を与える。よって本発明においては、予備実験や小規模での製造と、グリーンシートの最大応力および最大応力負荷時の伸び率の測定を繰り返し、上記のとおり乾燥時間などの条件を調整して、所望の最大応力と最大応力負荷時の伸び率を示すグリーンシートを得られる条件を決定すればよい。
【0070】
(3) 焼成工程
次に、得られたグリーンシートを焼成し、厚さが100μm超、300μm以下のジルコニアシートとする。
【0071】
焼成条件は適宜調整すればよいが、例えば、1200℃以上、1500℃以下で焼成する。1200℃以上で焼成すれば十分な焼成効果が得られ、高靭性のジルコニアシートが得られる。しかし、焼成温度が高過ぎるとシートの結晶粒径が過大となって靭性が低下するおそれがあるため、上限を1500℃とする。
【0072】
焼成温度に至るまでの加熱速度は適宜調整すればよいが、通常、0.05℃/分以上、4℃/分以下程度とすることができる。
【0073】
好ましくは、1200℃以上、1500℃以下の焼成温度域で保持すると共に、当該焼結温度より20℃以上、100℃以下低い温度で保持する。保持する時間としては、それぞれ10分間以上、5時間以下程度が好適である。当該条件の下では、焼成炉内の温度分布が小さくなり、シートの焼結性が均質となる。その結果、焼結密度も均質になり、シート内部の位置による破壊靭性値の相違やその変動係数も抑制されることになる。
【0074】
さらに本発明では、シートの破壊靭性値の変動係数を抑制するために、焼成炉内の温度分布を±15%以下に調節することが好ましく、±10%以下に抑制することがより好ましい。
【0075】
本発明方法で得られたジルコニアシートはウネリが抑制されており、例えば、ウネリが存在していたとしてもその発生率を30%以下に低減できる。よって、セルを積層した際に生じる荷重や発電時の体積変化により生じる応力が集中する箇所が低減されていることから、本発明に係るスカンジア安定化ジルコニアシートを固体電解質膜とする固体酸化物形燃料電池は長寿命である。
【0076】
なお、本発明においてウネリとは、スカンジア安定化ジルコニアシートの端部(矩形の場合は辺に相当する部分)の高さ方向の凹凸が凹方向に2箇所以上または凸方向に2箇所以上連続してある場合であり、最大高低差が20μm超であることをいうものとする。高低差は、レーザー変位計で計測することができる。
【0077】
本発明に係るスカンジア安定化ジルコニアシートを固体電解質膜として固体酸化物形燃料電池を製造するには、常法を用いればよい。以下、簡単に説明する。
【0078】
(4) 中間層の形成
上記で得られたスカンジア安定化ジルコニアシートには、中間層を形成してもよい。中間層は、特に固体電解質膜と空気極との反応を抑制するために形成するものである。かかる空気極の成分としては、例えば、Y、Sm、Gd、Nd、Pr、Sc、Ga、Alからなる群より選択される1種または2種以上の金属にドープされたセリア、より具体的にはCe1-zz2-w(式中、MはY、Sm、Gd、Nd、Pr、Sc、Ga、Alからなる
群より選択される1種または2種以上の金属を示し;0.05≦z≦0.4であり;0≦w<0.5である)で表される化学式で示されるものを挙げることができる。
【0079】
中間層は、常法により形成すればよい。例えば、上記中間層成分に、バインダー、溶剤、可塑剤、さらには必要に応じて分散剤、消泡剤、界面活性剤、接合補助剤、消泡剤、レベリング性向上剤、レオロジー調整剤などを加えて混合することにより、ペーストを調製する。得られたペーストは、印刷に適するように粘度調整してもよい。粘度調整後、例えばバーコーター、スピンコーター、ディッピング装置などにより、上記固体電解質上にコーティングし、或いはスクリーン印刷法などで薄膜状に製膜した後、40〜150℃の温度、例えば50℃、80℃、120℃の様な一定の温度、あるいは順次連続的に昇温して加熱乾燥する。次いで、例えば900〜1300℃、好ましくは950〜1250℃、さらに好ましくは1000〜1200℃の温度で中間層を焼き付ければよい。
【0080】
(5) 燃料極の形成
本発明に係るスカンジア安定化ジルコニアシートの中間層を形成した面或いは形成すべき面とは逆の面上に燃料極を形成する。なお、中間層と燃料極の形成の順序は特に制限されず、また、固体電解質膜の各面にそれぞれ中間層ペーストと燃料極ペーストを塗布乾燥した後に焼結することによって、中間層と燃料極を同時に形成してもよい。
【0081】
燃料極の材料としては、例えば、NiOに、イットリウム、サマリウム、ガドリニウムから選ばれる元素の酸化物の少なくとも1種によりドープされたセリア、および/または、イットリウム、スカンジウム、イッテルビウムから選ばれる元素の酸化物の少なくとも1種で安定化されたジルコニアを添加したものを挙げることができる。より具体的な燃料極材料は、例えば、NiO:50〜70質量%と、10モル%スカンジア1モル%セリア安定化ジルコニア:30〜50質量%の混合粉末などである。
【0082】
燃料極ペーストは、上記材料をバインダー等と共に溶媒に添加してよく練合すればよい。また、燃料極ペーストには、必要に応じて可塑剤、分散剤、造孔剤などを添加してもよい。
【0083】
燃料極ペーストの塗布方法や乾燥条件、焼成条件などは、中間層の形成工程と同様に実施できる。
【0084】
(6) 空気極の形成
固体電解質膜の各面にそれぞれ中間層と燃料極を形成した後には、当該中間層上に空気極ペーストを塗布乾燥した上で焼成することによってセルとする。
【0085】
空気極の材料としては、電子導電性に優れ、酸化雰囲気下でも安定なペロブスカイト形酸化物からなるものが一般的に用いられる。具体的には、La0.8Sr0.2MnO3、La0.6Sr0.4CoO3、La0.6Sr0.4FeO3、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83等、ランタンの一部をストロンチウムで置換したランタンマンガナイト、ランタンフェライトやランタンコバルタイト等が空気極材料として好ましい。また、空気極に酸素イオン伝導性を付与するために、希土類などをドープしたセリアを適宜混合することもできる。
【0086】
空気極ペーストは、中間層ペーストと同様に、上記材料をバインダー等と共に溶媒へ添加し、必要に応じてさらに分散剤等を添加して調製することができる。さらに、空気極ペーストの塗布方法や乾燥条件、焼成条件などは、中間層の形成工程と同様に実施できる。
【0087】
上記のとおり製造したセルを常法により積層し、固体酸化物形燃料電池とすることができる。この際、本発明方法で得られたスカンジア安定化ジルコニアシートはウネリの発生率が抑制されているので、セルを積層した際に生じる荷重や発電時の体積変化により生じる応力が集中する箇所が低減されていることから、本発明に係るジルコニアシートを固体電解質膜とする固体酸化物形燃料電池は長寿命である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0089】
実施例1〜16および比較例1
表1〜3の組成にてスラリーを作製した。なお、P以外の可塑剤は、二塩基酸とジオールを重合し、末端を一価アルコールでエステル化したポリエステルである。また、表2中の値はモル%である。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
得られたスラリーをドクターブレード法にてPETフィルム上に塗工し、96℃で乾燥し、厚さ270μm、幅160mmの長尺グリーンシートを得た。なお、実施例10のみ、76℃と96℃の二段階で乾燥を行った。さらに実施例11〜13では、乾燥してから焼成する前に、それぞれ25℃で1日間、2週間および10週間保存した。
【0094】
ダンベル社製のSD型レバー式試料裁断器であるスーパーダンベルカッターSDK−200を用い、各長尺グリーンシートから下記大きさの試験片を得、下記条件でSSカーブを測定した。
測定機器: インストロンジャパン社製,万能材料試験機4301型
測定時温度: 23℃
測定時湿度: 60%
試験片: 試料長さ:100mm、平行部分(最細部幅):10mm、つかみ部分幅:25mm
つかみ具間隔: 70mm
引張速度: 10mm/分
【0095】
なお、グリーンシートは測定前に1時間以上試験室に置き、温度や湿度を馴染ませた。得られたSSカーブより、グリーンシート試料が破断するまでに負荷される最大の応力を最大応力、最大応力が負荷される点におけるグリーンシート試料の伸び率を最大応力負荷時の伸び率として求めた。
【0096】
さらに、各長尺グリーンシートから、切断用金型を用いて135mm×135mmの大きさのグリーンシートを100枚切り出し、1400℃で3時間焼成し、スカンジア安定化ジルコニアシートを得た。各ジルコニアシートの縁を手で触れ、目視で観察し、また、変位計で高低差を測定することにより、高低差20μm以上のウネリが発生しているジルコニアシートの数を求め、ウネリ発生率を算出した。各グリーンシートの最大応力、最大応力負荷時の伸び率およびウネリ発生率を表4に示す。
【0097】
【表4】

【0098】
実施例1〜7のとおり、可塑剤の種類や量などを変更することにより、最大応力と最大応力負荷時の伸び率を本発明の規定範囲内に調整することができた。
【0099】
実施例8と実施例9の比較により、平均二次粒子径の小さな原料ジルコニア粒子を用いるとバインダーの必要量を低減でき、また、最大応力が大きく且つ最大応力負荷時の伸び率の小さなグリーンシートが得られることが分かった。
【0100】
実施例8と実施例10の比較により、グリーンシートの乾燥温度を調整することにより最大応力が大きく且つ最大応力負荷時の伸び率の小さなグリーンシートが得られることが分かった。
【0101】
実施例11〜13のとおり、グリーンシートを乾燥してから焼成するまでに保存した場合、保存期間が長くなるほど最大応力が大きく且つ最大応力負荷時の伸び率が小さくなることがわかった。
【0102】
実施例14〜15のとおり、バインダー量を少なくすると最大応力が大きく且つ最大応力負荷時の伸び率が小さくなることが分かった。
【0103】
実施例1〜15と実施例16を比較すると、低分子可塑剤を用いた実施例16ではグリーンシートとジルコニアシートの表面の一部にテカリが発生したのに対して、コオリゴマー可塑剤を用いた実施例1〜15ではテカリは一切発生しなかった。
【0104】
また、グリーンシートの最大応力負荷時の伸び率が本発明範囲よりも大きな比較例1では、焼成によるジルコニアシートのウネリ発生率が30%を超えてしまった。それに対して、最大応力と最大応力負荷時の伸び率が本発明範囲内である実施例1〜16では、ウネリ発生率を顕著に低減することができた。このように本発明方法は、固体酸化物形燃料電池の固体電解質膜として有用なスカンジア安定化ジルコニアシートの量産化に資するものとして、非常に有用であることが実証された。
【0105】
実施例17〜19および比較例2〜4
上記実施例1において、ジルコニア安定化剤の種類や割合を表5のとおり変更し、バインダーの量などを必要に応じて調整した以外は同様にして安定化ジルコニアシートを作製し、その導電率と強度を以下のとおり測定した。
【0106】
導電率の測定
各安定化ジルコニアシートの導電率を直流4端子法により測定した。即ち、高速カッターにより各ジルコニアシートを幅約5mm×長さ約4cmに切断し、長さ方向の中央から両側1.5cmの位置に白金ペーストを塗布して100℃で乾燥した後、同中央から両側0.5cmの位置と1.5cmの位置の計4ヶ所に、幅方向に白金線をわたして載せ、さらに4本の白金線上全体に約150gの重しを載せた。白金線の両端2本を電流端子として、約3Vに調整した直流安定化電源から電流を流した。中ほどの2本の白金線は電位差測定端子とした。
【0107】
上記シートを電気炉に入れ、電流を流しながら1000℃まで昇温した後、降温途中の950℃と750℃で30分間保持し、安定したところで約10分間の導電率を測定し、得られた数値から平均値を算出した。
【0108】
強度の測定
各安定化ジルコニアシートの強度を3点曲げ法により測定した。即ち、高速カッターにより各ジルコニアシートを幅約5mm×長さ約4cmに切断した。得られた試料をスパン20mmの3点曲げ冶具に載せ、インストロンジャパン社製の万能材料試験機4301型によりクロスヘッド速度0.5mm/minで荷重を負荷し、破断した時点までの最大応力を記録した。得られた数値から、JIS R1601に従って強度を求めた。各結果を表5に示す。
【0109】
【表5】

【0110】
上記結果のとおり、スカンジア安定化ジルコニアシートは、強度が比較的劣るものの、スカンジアを4モル%含む場合はそれほどではないが、スカンジアを6モル%以上含む場合には導電率が非常に優れることが分かった。よって、かかる実験における導電率は酸素イオン伝導性と相関性があるので、スカンジアを5モル%以上含むスカンジア安定化ジルコニアシートは、強度の面から比較的厚膜としなければならないものの、固体酸化物形燃料電池の電解質膜として有用であることが分かった。
【0111】
実施例1〜16、実施例20〜21、比較例1および比較例5〜7
(1) バインダーの調製
表6に示す割合でモノマーを共重合し、バインダーVとWを調製した。なお、表6中の値はモル%である。
【0112】
【表6】

【0113】
(2) 酸価、アミン価、水酸基価の測定
上記実施例1〜16および比較例1で用いたバインダーX〜Zに加え、上記バインダーV〜Wの酸価、アミン価および水酸基価を、指示薬滴定法により測定した。結果を表7に示す。
【0114】
【表7】

【0115】
(3) グリーンシートの作製と諸物性の測定
(3−1) 実施例20
バインダーYを用いた以外は実施例1と同様にしてグリーンシートを作製した。
【0116】
(3−2) 実施例21
バインダーYを用いた以外は実施例4と同様にしてグリーンシートを作製した。
【0117】
(3−3) 比較例5
バインダーVを用い、バインダー量を18.5質量部とした以外は実施例6と同様にしてグリーンシートを作製した。ところが、乾燥後、PETフィルムから剥離する際に破れてしまい、ジルコニアシートとすることができなかった。但し、破れなかった箇所から試験片を切り出し、グリーンシートの最大応力と最大応力負荷時伸び率を測定した。
【0118】
(3−4) 比較例6
上記比較例5において、グリーンシートをPETフィルムから剥離し易くするために可塑剤の量を9.0質量部にした以外は同様にして、グリーンシートを作製して最大応力と最大応力負荷時伸び率を測定し、さらに焼成して得られたジルコニアシートにおけるウネリの発生率を求めた。
【0119】
(3−5) 比較例7
バインダーWを用いた以外は実施例6と同様にして、スラリーを調製した。ところが、スラリーがゲル状に固まってしまい、均一なスラリーとならなかった。
【0120】
以上の結果を、既に示した実施例1〜16および比較例1の結果と共に、表8に示す。
【0121】
【表8】

【0122】
以上の結果のとおり、アミン価が過剰に高いバインダーを用いると、グリーンシートの柔軟性が低くなり、PETフィルムから剥離し難くなる。その際、当然に引張試験時の最大応力と最大応力負荷時伸び率は低くなってしまう。そこで、柔軟性を高めるために可塑剤の量を多くすると、柔軟性が過剰に高くなって最大応力負荷時伸び率が大きくなり過ぎる。また、バインダーの酸価と水酸基価が大き過ぎる場合には、かえってスラリーの流動性が悪くなり、均一なスラリーが得られなくなる。
【0123】
一方、酸価、アミン価、水酸基価が適度なバインダーを用いると、スラリーを良好に調製できるようになり、また、本発明に係るグリーンシートが容易に得られることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形燃料電池用ジルコニアシートを製造するための方法であって、
スカンジア安定化ジルコニア粒子を含むスラリーをシート状に成形した後に乾燥し、最大応力が5.0MPa以上、20.0MPa以下で且つ最大応力負荷時の伸び率が5.0%以上、20.0%未満であるグリーンシートを作製する工程;および
得られたグリーンシートを焼成し、厚さが100μm超、300μm以下のジルコニアシートとする工程;
を含むことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法。
【請求項2】
数平均分子量が500以上、8000以下のオリゴマー可塑剤をスラリーに配合する請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法。
【請求項3】
酸価が0.1以上、60以下、アミン価が0以上、60以下、水酸基価が0以上、60以下であるアクリレート系共重合体からなるバインダーをスラリーに配合する請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法。
【請求項4】
最大応力負荷時の伸び率をx%、最大応力をyMPaとしたときに、7≦x<20、y≦−0.25x+14、且つy≧−0.25x+10の関係を満たすグリーンシートを作製する請求項1〜3のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法。
【請求項5】
スカンジア安定化ジルコニア粒子におけるスカンジアの含有率を5モル%以上とする請求項1〜4のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法。
【請求項6】
乾燥温度を80℃以上、120℃以下とする請求項1〜5のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法。
【請求項7】
スラリーに占めるバインダーの割合を、スカンジア安定化ジルコニア粒子100質量部に対して10質量部以上、20質量部以下とする請求項1〜6のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法。
【請求項8】
スラリー中のスカンジア安定化ジルコニア粒子の平均二次粒子径を0.2μm以上、0.5μm以下とする請求項1〜7のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法。
【請求項9】
グリーンシートを焼成する前に2週間以上保存する請求項1〜8のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法で用いられるスラリーであって、スカンジア安定化ジルコニア粒子と、数平均分子量が500以上、8000以下のオリゴマー可塑剤を含むことを特徴とするスカンジア安定化ジルコニアスラリー。
【請求項11】
さらに、酸価が0.1以上、60以下、アミン価が0以上、60以下、水酸基価が0以上、60以下であるアクリレート系共重合体からなるバインダーを含む請求項10に記載のスカンジア安定化ジルコニアスラリー。
【請求項12】
請求項10または11に記載のスカンジア安定化ジルコニアスラリーを成形および乾燥することにより得られるスカンジア安定化ジルコニアグリーンシートであって、最大応力が5.0MPa以上、20.0MPa以下で且つ最大応力負荷時の伸び率が5.0%以上、20.0%未満であることを特徴とするスカンジア安定化ジルコニアグリーンシート。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法で製造された固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートであって、端部におけるウネリの高低差が20μm以下であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシート。
【請求項14】
請求項13に記載の固体酸化物形燃料電池用スカンジア安定化ジルコニアシートを固体電解質膜として有することを特徴とする固体酸化物形燃料電池。

【公開番号】特開2011−82149(P2011−82149A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198250(P2010−198250)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】