説明

固体酸化物燃料電池のための多層障壁構造体の製造方法

本発明は、金属相互接続を用意するステップ;前記金属相互接続に第1金属酸化物層を付加するステップ;前記第1金属酸化物層の上に第2金属酸化物層を付加するステップ;前記第2金属酸化物層の上に第3金属酸化物層を付加するステップ;前記金属酸化物層をその上に有する前記金属相互接続を含む固体酸化物セルスタックを形成するステップ;及びSOC−スタックの初期化の間に前記第1金属酸化物層中における金属酸化物を前記金属相互接続の金属と反応させるステップを含む、固体酸化物セルスタックにおける多層障壁構造体の製造方法を提供し、固体酸化物スタックは、アノード接触層及び支持構造体、アノード層、電解質層、カソード層、カソード接触層、金属相互接続、並びに多層障壁構造体を含み、該多層障壁構造体は前記方法によって、また、初期化ステップを経て得ることができ、該初期化ステップは、雰囲気組成及び電流負荷について制御された条件下で実施し、層組成に依存し、クロム種が空気電極に移動しない高密度な障壁層としての所望の反応生成物の形成を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物燃料電池(SOFC)スタック又は固体酸化物電解セル(SOEC)スタックなどの固体酸化物セルスタックにおける多層障壁構造体の製造方法、及び該方法によって得ることができる、該スタックの隣接するセルを分離する相互接続要素の酸素側での使用に特に適した多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物セル(SOC)として、一般には、種々の用途のために設計されたセル、例えば、固体酸化物燃料電池(SOFC)又は固体酸化物電解セル(SOEC)が挙げられる。これらのタイプのセルは当該技術分野で公知である。典型的には、固体酸化物燃料電池は2つの電極層に挟まれた電解質層を含む。動作の間、通常約500℃〜約1100℃の温度において、一方の電極は酸素又は空気と接触しており、他方の電極は燃料ガスと接触している。
【0003】
典型的な動作条件下では、1つの固体酸化物燃料電池で生じるのは1ボルト未満である。したがって、SOFCから高い電圧及び電力を得るには、多くのセルを一緒に積み重ねる必要がある。SOFC平面スタックの製造方法は単一セルの製造を含み、得られたセルを続いて更なる層、例えば相互接続、集電体、接触層及びシールなどと一緒に積み重ねて、所望の用途に適した燃料電池スタックを形成する。
【0004】
現在工業レベルでの燃料電池の大量生産を制限している問題の1つとして、最終セルの費用が高いことがある。したがって、中温範囲(約500℃〜900℃)で動作する燃料電池及び電解セルに、個々のセルを分離する比較的安価な金属相互接続要素を使用することが提案されてきた。
【0005】
前記金属相互接続層に適した材料は、高い動作温度下でアノード及びカソードガスに対して耐酸化性である必要があり、また、さらにセルのセラミック成分の熱膨張係数(TEC)に一致するTECを示す必要がある。これらの必要性を考慮して、特に、製造過程の間の支持材として、後に相互接続層を形成するクロミア形成合金が研究されてきた。前記合金は高いクロム量、即ち、約15〜22wt%を含み、酸化条件下で、表面に移動して更なる酸化に対して成分を保護するクロミア障壁層又はクロミアスケールを表面に形成する。同時に、前記クロミアスケールは、デバイス全体の性能を妨げないように十分に高い電気伝導性を示す。
【0006】
しかしながら、セルの動作中、クロムイオンがクロム含有金属相互接続材から隣接する空気電極層内に拡散し、触媒性能に不利な影響を与え、時間と共にセル性能を制限することがある。この現象は、一般に、「クロム被毒」として知られている。クロム被毒は、金属相互接続中のクロムが、ガス状のクロム含有酸化物及びオキシ水酸化物を介して、架橋金属酸化物成分への表面拡散によって、金属から電極の空気側に近い又は電極の空気側にある電気化学的に活性な部位に移送され、そこでこれらはすぐに、電気化学的活性をかなりの程度まで低下させることに起因している。
【0007】
低電気抵抗を達成し、相互接続材として使用されるクロミアスケール形成合金からのクロム被毒を低減するために、クロミアの層の上にマンガンクロムスピネルを付加することが提案されてきた。例えば、米国特許出願公開第2003/0059335号には、12〜28wt%のクロム並びに少量のLa、Mn、Ti、Si、及びAlを含む酸化クロム形成鉄ベース合金が提案されている。前記材料は、その表面にMnCrスピネル相を700℃〜950℃の温度で形成することができる。そのように形成されたマンガンクロムスピネルは、クロミア自体よりもクロム含有種について僅かに低い気化圧力を有することが期待された。
【0008】
しかしながら、不都合なことに、実際にはCr拡散がクロミア層中よりもMnCrスピネル中でより速く進行することが見出された。したがって、2成分Cr−(Mn,Cr)スケールの形成は、純粋なクロミアスケールと比較して、クロム被毒からの保護の顕著な増加を全くもたらさない。
【0009】
クロム含有蒸気がセルの相互接続として使用される用いられる鉄クロム合金上に発生するのを防止する種々の被膜が特許及び科学雑誌文献の両方において議論されてきた。例えば、Tietz,F.ら(2004)DE10306649A1、Tietz及びZahid(2004)DE10306647A1、Hilliard D.B.(2003)米国特許出願公開第2003194592号、Orlovskaya Nら(2004).J.Am.Cer,Soc 87、pp.1981−7、Chen,X.ら(2004)Solid State Ionics 176、pp.425−33。一般的な被膜概念は、SOFCスタックへの挿入の前に、金属相互接続の上にその最終的な微細構造を有するスピネル層又はペロブスカイト層を形成することを包含し、前記被膜は金属相互接続から空気電極区画内へのクロム移動に対する障壁層として機能する。これらの被膜を十分に緊密にするために、被膜と基材との間の接着が初期だけでなく長期的にも完全である必要があり、即ち、熱サイクルの後、処理並びに層及び鋼の熱膨張係数が一致することに対して厳しい制限が加えられる。
【0010】
これらの問題を考慮すると、反応性被膜は、高温で成長する障壁層に変換され、また典型的には金属基材及び覆っている酸化物被膜の間の微細構造においてより段階的な変化を示すことから、より良い解決法を提供する。そのような反応性被膜は、例えば、スピネル及びペロブスカイト被膜のスクリーニングに関する報告:Fujiata,K.ら(2004)、J.Power Sources 131、pp.261−9;及びLarring及びNorby(2000)、J.of the Electrochem.Soc.147、pp.3251−6において議論されてきた。開示された被膜は、単一相又は単一物質被膜であり、付加されて金属表面に導電性腐食保護被膜を形成する。前記被膜は可能な限り少ないクロムを含有し、金属表面からのクロムの移送をできるだけ長い間低減し、雰囲気から金属内への酸素の移送を低減する。
【0011】
クロムゲッタとして機能する保護被膜が、例えば、Jiang S.Pら(2002)、J.Eur Cer.Soc.22、pp.361−73;並びにMatsuzaki及びYasuda(2001)J of the Electrochem.Soc.148、pp.A126−31に開示されている。どのようにクロム含有相が各種空気電極材及び種々の電解質材料に沈殿するかが議論されている。特に、カソード分極を伴わないLSM及びLSCFを含めた空気電極材に沈殿するクロムに対して関心が高まっている。
【0012】
クロムがLSMカソードのペロブスカイト構造からのMnなどの元素と容易に結合して、LSM空気電極が電気化学的分極に供されるとき電解質と空気電極材との間の境界面に取り込まれ得る十分な結晶性スピネル相を作製することがさらに開示されている。LSCF空気電極は電極の電気化学電位にそれほど依存しないが、それにもかかわらずクロム含有相は一般に電極の細孔容積に沈殿する。
【0013】
要約すると、従来技術で提案された障壁層は、今までのところ、初めからセルの動作の間のクロム含有蒸気の形成を抑制するように機能するだけでなく、SOFCスタックで使用される前に、金属相互接続の付加的な、しばしば費用がかかる処理を必要とし、したがってスタックの大量生産を妨げる。さらに、付加された表面被膜は、広範囲の温度、即ち、約500〜900℃のセルの動作温度で金属相互接続材と化学的にも熱力学的にも適合可能でなければならず、他の適切な材料の使用を厳しく制限する。最終的には初期のクロム拡散又は蒸発をある程度低減することができるが、大部分の層はセルの寿命にわたってクロム拡散を防止することはできず、したがって、電極層のクロム被毒を経時的に防止することはできない。
【0014】
したがって、固体酸化物セルにおける相互接続表面からのクロムの蒸発を排除する費用効果的な方法であって、クロム蒸気種の収容を可能にして、相互接続と空気電極層との間の電気接触抵抗を最小にする方法が依然として必要とされている。
【0015】
上記を考慮して、本発明は、有利には、セルスタックの組み立ての前に相互接続表面及び/又は固体酸化物セルの空気側に粒子懸濁液を噴霧するなどの安価な方法によって付加される反応性被膜を提供し、この被膜は、高密度な、好ましくはクロム不含反応層が十分な層厚で形成されると、金属表面からのクロム蒸発を最小にする。同時に、覆っている被膜は、金属表面から拡散するクロム含有種を、これらが空気電極層の活性箇所に到達する前の最初の段階でトラップする。
【0016】
本発明の多機能性被膜は、クロム被毒の問題を技術的に不十分なレベルまで低減すると同時に、従来技術でこれまで提案された同様の範囲で被膜を付加する非常に高価な付加方法を回避し、また、SOCの寿命を延ばす費用効果的な多層障壁構造体を提供する。
【発明の概要】
【0017】
上記のような従来技術の不利点を考慮して、本発明は、
金属相互接続を用意するステップ;
前記金属相互接続に第1金属酸化物層を付加するステップ;
前記第1金属酸化物層の上に第2金属酸化物層を付加するステップ;
前記第2金属酸化物層の上に第3金属酸化物層を付加するステップ;
前記金属酸化物層をその上に有する前記金属相互接続を含む固体酸化物セルスタックを形成するステップ;及び
SOCスタックの初期化の間に前記第1金属酸化物層における金属酸化物を前記金属相互接続の金属と反応させるステップ
を含む、固体酸化物セルスタックにおける多層障壁構造体の製造方法を提供する。
【0018】
本発明は、さらに、前記方法によって得ることができる多層障壁構造体を提供する。
【0019】
本発明は、また、アノード接触層及び支持構造体、アノード層、電解質層、カソード層、カソード接触層、金属相互接続、並びに前記多層障壁構造体を含む固体酸化物セルスタックも提供する。
【0020】
本発明は、さらに、障壁層を導電性且つ高密度な反応生成物に変換するために、前記固体酸化物セルスタックの初期化の間、加熱シーケンス及び気相組成、好ましくは酸素分圧を制御する方法を提供する。
【0021】
本発明は、最後に、前記スタックの初期化シーケンスの間に空気電極とクロムとの間の親和性を低減する方法であって、空気電極と相互接続との間に一定電位又は交流電位を印加するステップを含む方法を提供する。
【0022】
好ましい実施形態は下位請求項に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の多層構造体の好ましい実施形態を示す図である。
【図2a】本発明による障壁構造体の断面を層厚に応じて示す顕微鏡写真である。
【図2b】本発明による障壁構造体の断面を層厚に応じて示す顕微鏡写真である。
【図3】本発明による障壁構造体の断面を示す顕微鏡写真である。
【図4】相互接続の空気電極面に保護被膜を有する又は有さない同じ要素からのスタック元素の分解率の電気的性能における相違を示すグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0024】
本発明は、
金属相互接続を用意するステップ;
前記金属相互接続に第1金属酸化物層を付加するステップ;
前記第1金属酸化物層の上に第2金属酸化物層を付加するステップ;
前記第2金属酸化物層の上に第3金属酸化物層を付加するステップ;
前記金属酸化物層をその上に有する前記金属相互接続を含む固体酸化物セルスタックを形成するステップ;及び
SOCスタックの初期化の間に前記第1金属酸化物層における金属酸化物を前記金属相互接続の金属と反応させるステップ
を含む、固体酸化物セルスタックにおける多層障壁構造体の製造方法を提供する。
【0025】
本発明の方法によれば、多層障壁構造体をSOCスタック中の金属相互接続と空気電極層との間に付加する。スタックを開始すると、熱的に成長する障壁の形成を促進し、次いで相互接続表面からのクロムの蒸発を最小にし、且つクロム蒸気種を収容すると同時に、2つの要素:相互接続と空気電極の間の電気接触抵抗を最小にする。
【0026】
好ましくは、金属相互接続はフェライトステンレス鋼層である。フェライト鋼は比較的安価で、スタックの費用効果的な大量生産を可能にする。本発明によれば、金属相互接続はクロム層又はクロム合金などのクロムを含み、好ましくはFeCrMx合金を含んでよく、Mxは、Ni、Ti、Ce、Mn、Mo、W、Co、La、Y、Al、Nb、又はこれらの混合物から成る群から選択される。合金中のMxの濃度は好ましくはオーステナイト形成を回避する量である。好ましくは、Mxの濃度は、合金の全重量を基準にして0〜15wt%の範囲内、より好ましくは、約0.1〜10wt%である。最も好ましいのはMnの濃度は0.25wt%〜0.55wt%である。
【0027】
フェライト鋼(例としてクロフェル(Crofer)22APU(Krupp−Thyssen製)などの市販品)は、例えば0YC44(Sandvikから入手可能)及び日立(Hitachi)ZMG232(日立から入手可能)の場合に、クロミア及びCr−Mn−スピネルの明確な二重スケール又は混合クロミア−スピネルスケールのいずれかを、あまり確かでない相分離を伴って発生させる。
【0028】
好ましくは、金属相互接続に付加された第1金属酸化物層は、少なくとも2種の異なる金属カチオンを有する金属酸化物の混合物、又は少なくとも2種の異なる金属カチオンを有する金属酸化物及び遷移金属酸化物の混合物を含む。より好ましくは、酸化ランタン及び遷移金属酸化物、より好ましくは酸化コバルト、酸化マンガン、又は酸化銅を含む金属酸化物混合物、並びにこれらの混合物である。金属酸化物の1つとして最も好ましいのは酸化コバルトである。
【0029】
少なくとも2種の異なる金属カチオンを有する前記金属酸化物は、好ましくは、ペロブスカイト構造を有する。適切なペロブスカイト材料として、ドープランタンマンガナイト、ドープランタンコバルタイト、ドープランタンフェライト、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
第1金属酸化物層は当業者に公知の任意の適切な方法によって付加されてよい。層のスプレー塗装又はテープキャスト膜による積層が好ましい。
【0031】
最終の多層障壁構造体中の第1金属酸化物層は少なくとも部分的に酸素と反応し、外側に拡散する金属元素が初期化工程の間に相互接続を形成することにより、第2層と、高温で酸化条件に付したときに金属表面上に成長する形成された保護クロムスケールとの間のシームレスな移動を形成する。図1に示すように、第1金属酸化物層2は、可能な限り低いクロミア含量を有する高密度な混合酸化物層、例えばMnCo層を形成し、金属相互接続1からのMnは付加された酸化コバルトと反応する。このようにしてこの層は、金属からスケールを通してのクロムの移送を効果的に最小限にする有効な障壁層を形成する。
【0032】
図1は、多層構造体の好ましい実施形態を概略的に示し、該構造体は、金属相互接続1、金属酸化物の第1層2、一方がペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物の第2層3、ペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物の第3層4、さらには空気電極6への空気アドミッタンスのための、電解質に沈着したスペーサ5、及び任意選択で固体酸化物セル支持体7を包含する。
【0033】
第1金属酸化物層の厚さは、好ましくは約1〜約20μm、より好ましくは、約3〜約15μmである。
【0034】
最小の電気抵抗を有する微細構造を発生させるために、即ち、高密度な、クロミア含有率が低い第1層が第2層と良好に接触しているとき、第1層中の材料の量を最小にする必要がある。他方で、低いクロミア含量の層を発生させるために、表1に要約するように、十分な量の金属酸化物が利用可能である必要がある。第1層の層厚が7μm〜15μmに増えると、クロミア含量が2分の1まで低下する(即ち、0.7〜0.3)ことが分かった。このことは図2a及び2bにも示されており、得られた被膜の微細構造を第1被膜の層厚に応じて示し、900℃で1000時間後には、7μmのCo(図2a)及び15μmのCo(図2b)である。15μm厚のCo被膜は鋼と完全には反応しなかった。
【0035】
【表1】

【0036】
クロムに対する障壁機能と電気抵抗を低下させる所望の微細構造との間のトレードオフは、好ましくは、第1層の層厚を最小に保ちながら多層構造体の第2層にさらに金属酸化物を添加することを通して達成される。
【0037】
好ましくは、多層障壁構造体の第2金属酸化物層の金属酸化物は、第1金属酸化物層の金属酸化物と同じである。また、前記第2金属酸化物層が少なくとも2種の異なる金属カチオンを有する金属酸化物及び遷移金属酸化物の混合物を含むことが好ましい。第2酸化物層に適した金属酸化物として、アルカリ土類金属酸化物、好ましくは、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、及び遷移金属酸化物、好ましくは、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化銅、酸化ランタン、及びこれらの混合物から成る群から選択される酸化物が挙げられる。
【0038】
さらに、少なくとも2種の異なる金属カチオンを有する第2酸化物層の前記金属酸化物は、好ましくはペロブスカイト構造を有し、ドープランタンマンガナイト、ドープランタンコバルタイト、ドープランタンフェライト、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0039】
第2金属酸化物被膜は、当業者に公知の任意の適切な方法によって付加されてよい。層のスプレー塗装又はテープキャスト膜による積層が好ましい。
【0040】
第2金属酸化物層の厚さは、好ましくは、約10〜約30μm、より好ましくは、約15〜約25μmの範囲である。
【0041】
多層障壁構造体の第2層は障壁層の形成を助け、第1障壁層が完全に形成される前の、そして少量のクロム蒸気が連続してスケールから移動する場合には後の、第1期の初期化の間に、金属スケールから蒸発して移動するクロムリッチな蒸気種を捕捉することができるクロムゲッタ材料。上記のように、単一層ではクロム被毒を技術的に許容可能なレベルまで最小にすることができない。
【0042】
別の好ましい実施形態において、方法は、前記第2金属酸化物層の上に第3金属酸化物層を形成するステップをさらに含む。第3金属酸化物層を付加する場合、該第3層用の金属酸化物は、ドープランタンニッケラート、ドープランタンマンガナイト、ドープランタンコバルタイト、ドープランタンフェライト、ドープセリア、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0043】
第3金属酸化物被膜は、当業者に公知の任意の適切な方法によって付加されてよい。しかしながら、スプレー塗装又はテープキャスト膜による積層が好ましい。
【0044】
第3金属酸化物層の厚さは、好ましくは、約10〜約35μm、より好ましくは、約20〜約30μmの範囲である。
【0045】
第3層は、空気電極と直接接触して集電体層として機能することもできる。この場合、第3層について、伝導度をできるだけ均一に与える最大面内伝導度を得る。
【0046】
金属相互接続にそれぞれの金属酸化物層を付加した後、スタックの製造を完了する。より具体的には、接触層を固体酸化物セルの両側に付加し、セル及び相互接続を層間のシール要素と共に交互のシーケンスで組み立てる。
【0047】
図3は、最終の多層障壁構造体の一例を示す。加えて、いわゆるライン走査の結果を示し、化学元素の選択範囲からのEDS応答が入射電子線の予め規定された経路に沿って記録されており、顕微鏡写真において白い実線で示した。左側の薄い灰色の金属相は、4〜6μm厚のクロミア層によって覆われており、濃い灰色は、ほんの低濃度のクロミアを有する形成されたMn−Co−スピネル層(層厚6〜10μm)である(ライン走査のCrプロフィールを参照)。これらの層は、酸化コバルトの第1層(10μm厚)を付加し、該酸化コバルトを、相互接続を形成する鋼から外側に拡散するマンガンと反応させた後に、空気中950℃で形成された。形成された微細構造は高密度であり、鋼表面とMn−Co−スピネル層との間に形成された保護スケールにしっかり付着する。第2の、多孔性の24μm厚の第2被膜はLSMから構成されている。
【0048】
得られたスタックの初期化ステップは、高温、好ましくは、少なくとも約500℃、より好ましくは約700℃〜約1100℃の温度で実施する。さらに、初期化ステップは、雰囲気及び電流負荷について制御された条件下で、温度及び被膜材料の両方に応じて現実の範囲内で実施する。例えば、初期化温度が約950℃であり且つ第1被膜層が好ましくは主として酸化コバルトからできている場合、雰囲気からの空気を、燃料電池内の方向と逆に向いている0.02〜0.1A/cm燃料電池面積の電流負荷と組み合わせて直接用いてよい。初期化温度が約850℃であり且つ第1被膜層が好ましくは主として酸化コバルトからできている場合、酸素分圧は約0.06バール未満に維持され、前記電流負荷と組み合わせる。
【0049】
初期化の間、金属相互接続と付加された第1金属酸化物層との反応が起こる。好ましくは、前記第1金属酸化物層の金属酸化物と金属相互接続の金属との反応の反応生成物は導電性且つ高密度であり、より好ましくはスピネル構造を有している。
【0050】
セルスタックの動作の間、金属の酸素との反応により金属表面にクロミアリッチな層が直接形成されるだろう。しかしながら、本発明の多層障壁構造体において、第1金属酸化物の金属酸化物と相互接続の金属成分との反応生成物は、クロミア不含又はクロミア含有率が低い層、好ましくは、クロミア不含スピネル層をその上に形成する。第1金属酸化物の金属酸化物と相互接続との反応により形成された層は、このように、層を通しての金属からのクロムの移送を効果的に抑制する障壁層を形成する。
【0051】
第2金属酸化物層は、第1金属酸化物の金属酸化物と相互接続との反応により形成される層の形成が完了する前に、セルの初期化の間に蒸発して移動するクロム含有種のための障壁材として機能する。このように、セルの初期化の間にも電極をクロム被毒に対して効果的に保護する。さらに、クロム含有種がセルの寿命の任意の時点においてセルの動作中に第1層を通って拡散する場合、第2金属酸化物層は、付加的なクロムゲッタとして機能し、このようにして電極層をクロム被毒から効果的に保護する。
【0052】
好ましい実施形態において、第3金属酸化物層を第2金属酸化物層の上に付加する。第3金属酸化物層は、障壁層の電気面内接触及び電極層への接触を最大にすると共に、前記第2金属酸化物層から活性空気電極へのクロムの表面拡散を最小にする。結果として、面内伝導度を向上させ、クロム被毒を抑制することができ、セルの寿命を改善することができる。
【0053】
本発明はさらに、上記方法によって得ることができる多層障壁構造体を提供する。多層障壁構造体は、固体酸化物燃料電池(SOFC)又は固体酸化物電解セル(SOEC)スタックにおける多層障壁構造体の製造の際に好適に使用される。
【0054】
有利なことに、本発明の障壁層により、電極層のクロム被毒を効果的に抑制し、セルの寿命を延ばすことができる。同時に、本発明の障壁層は全セル効率を阻害しない低い界面抵抗を達成する。
【0055】
本発明の方法は前記障壁層を得る簡単な方法であり、したがって、例えばプラズマスプレーなどの複雑で高価な製造ステップを使用する従来技術で提案された方法よりも費用効果が高い。
【0056】
さらに、障壁層はスタックの初期化の間に効果的に形成されるため、セルスタック内への組み込みの前に相互接続を別途前処理することは必要なく、これによりセルの製造を簡素化する。
【0057】
最終的に、安価な材料を使用することができるため、セルの全費用に障壁層のための要素を多く加えない代わりに、クロム被毒に対する障壁層を有するセルの大量生産を可能にする。
【0058】
本発明を詳細な実施例を参照にして以下に説明するが、これらの実施例は本発明を限定しない。
【実施例】
【0059】
−金属相互接続の調製
表面被膜で処理する前に、フェライトクロム鋼でできている相互接続材を切断して形作る。鋼生産に特有の相互接続金属上の表面酸化物は、1000グリットのSiC紙を用いて試料を均一に磨き、続いて圧縮空気で表面のダストを払い、初めにアセトン、次いでエタノール中で超音波浴を用いて濯ぐことによって被覆の前に除去した。
【0060】
−金属酸化物被膜の付加
被膜は、溶媒、分散剤、及び結合剤を包含する有機ビヒクル中に分散した約6〜14vol%の粒状粉末からのスラリー混合物を噴霧することによって室温で付加し、次いで、約50〜60℃にて気流中で乾燥させた。
【0061】
ペロブスカイト粉末として、ランタンストロンチウムマンガナイト(La0.85Sr0.15MnO)(以降LSMと称する)、ランタンストロンチウムコバルタイト(La0.84Sr0.16CoO)(以降LSCと称する)及び(La0.3Sr0.7CoO)(以降LSC’と称する)、ストロンチウムコバルタイト(SrCoO2.5)(以降SCと称する)、ランタン鉄ニッケラート(LaNi0.59Fe0.413−d)(以降LNFと称する)、並びにランタンストロンチウム鉄コバルタイト(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)(以降SLFCと称する)を硝酸塩溶液からグリシン硝酸塩ルートによって製造し(L.A.Chick、L.R.Pederson、G.D.Maupin、J.L.Bates、L.E.Thomas and G.J.Exarhos、Materials Letters、10、(1990)、p.6〜12)、焼成及びボールミル粉砕により粉砕して所望の粒度分布(0.8μm<d50<5μm)にした。
【0062】
単酸化物粉末(Co、Mn、CuO)を分析グレードの材料として商業的供給源から得、ボールミル粉砕により粉砕して所望の粒度分布(0.6μm<d50<2.5μm)にした。粒度分布は、ベックマン・コールター(Beckman coulter)I/S粒度分析装置によって測定した。
【0063】
−スタック形成
被覆された金属相互接続を、平面セル設計を基準にして、燃料電池と交互に積み重ねて、SOFCスタック中の各層の間にガラスベースのシール要素を供給した。
【0064】
初期化の間、500〜650℃で結合剤を燃やし尽すシーケンスが終了するまで空気をアノード及びカソード区画の両方に5〜6ml/min cm表面積の流量で供給し、その後、組み合わされたアノード還元及びカソード被膜反応シーケンス(例えば950℃で2.5時間)に例示されるように、2つの区画間で雰囲気組成が異なり、ここで、動作中の燃料電池の方向と逆に向いている0.02〜0.1A/cm燃料電池面積の電流負荷をスタックに通しながら、乾燥水素をアノード区画に供給し、空気をカソード区画に供給した。
【0065】
−セルの評価
初期化後、スタックを最大で約650℃〜約850℃の間の動作温度に加熱し、ここで、分解を200時間〜1500時間の間、特定の電流負荷及び温度の一定条件下で測定した。
【0066】
活性時、空気電極のクロム被毒は、初期化から数千時間以内に最大出力密度の大幅な減少を引き起こし、このことは被覆されていない金属相互接続を参照として用いたときに観察された。分解は、インピーダンス分光法及び規格化電圧又は面積比抵抗の経時変化によって評価した。被覆されていない金属部分、及び、鋼に金属酸化物粉末をプラズマスプレーすることによって調製された高密度な気密の酸化物被膜によって被覆された金属部分の両方の比較を行って、前者ではスタック分解は、例えば750℃で、1000時間あたり10〜30%の範囲に達し、後者ではスタック分解は同様に1000時間あたり0.2〜0.5%の範囲に記録され、これは、同様の単一セルであるがクロム不含環境での試験を通して確立された検出限界にも近い。本発明によって多層被覆された金属部分に関して、同様に1000時間あたり0.2〜3%の範囲のスタック分解が測定された。図4を参照のこと。
図4:750℃で1000時間のスタック試験による実施例1の相互接続被膜の実験検証
【0067】
実施例1
クロフェル22APUをきれいにし、酸化コバルト層(厚さ7μm)(d50=2.5μm)でスラリー被覆し、乾燥し、さらに、90wt%LSM及び10wt%酸化コバルトの層(厚さ20μm)でスラリー被覆した。固体酸化物燃料電池(SOFC)のカソードに面し且つSOFCスタックに組み込まれた被覆部分について、金属部分を流動空気(5.4ml/min/cm表面積)中3℃/minで650℃に加熱し、該温度で2時間保持していずれの残りの有機結合剤も燃やし尽した後、同条件で950℃に加熱し、これを3時間保持してカソード区画の金属表面にスピネル障壁層を形成した。次いで、SOFCスタックを動作温度(750℃)に冷却し、電気負荷に接続し、ここで、0.25A/cmセル面積の電流負荷で評価した分解率は、1000時間あたり0.2%であった。
【0068】
実施例2
サンドビック(Sandvik)0YC44をきれいにし、酸化コバルト及び酸化銅(2:1 wt/wt)の層(厚さ7μm)でスラリー被覆し、乾燥し、さらに、60wt%LSM、30wt%LSFC、及び10wt%酸化コバルトの層(厚さ20μm)でスラリー被覆した。固体酸化物燃料電池のカソードに面し且つSOFCスタックに組み込まれた被覆部分について、金属部分を空気流中3℃/minで550℃に加熱し、該温度で2時間保持していずれの残りの有機結合剤も燃やし尽した後、空気及び窒素(1:50 vol:vol)の流動混合物中3℃/minで950℃に加熱し、これを4.5時間保持してカソード区画の金属表面にスピネル障壁層を形成した。次いで、カソード区画に空気を供給しながら、SOFCスタックを動作温度(750℃)に冷却し、電気負荷に接続した。
【0069】
実施例3
ZMG232をきれいにし、酸化銅及び酸化マンガン(4:1 mol/mol)の層(厚さ5μm)でスラリー被覆し、乾燥し、さらに、50wt%LSM、30wt%LSC、及び20wt%酸化コバルトの層(厚さ25μm)でスラリー被覆した。固体酸化物燃料電池のカソードに面し且つSOFCスタックに組み込まれた被覆部分について、金属部分を流動空気中3℃/minで550℃に加熱し、該温度で2時間保持していずれの残りの有機結合剤も燃やし尽した後、空気及び窒素(1:9 vol:vol)の流動混合物中5℃/minで950℃に加熱し、これを4時間保持してカソード区画の金属表面にスピネル障壁層を形成した。次いで、SOFCスタックを動作温度(850℃)に冷却し、電気負荷に接続した。
【0070】
実施例4
クロフェル22APUをきれいにし、酸化コバルト層(厚さ7μm)(d50=0.6μm)でスラリー被覆し、乾燥し、さらに、90wt%LSM及び10wt%酸化コバルトの層(厚さ20μm)でスラリー被覆した。固体酸化物燃料電池のカソードに面し且つSOFCスタックに組み込まれた被覆部分について、金属部分を流動空気中3℃/minで550℃に加熱し、該温度で2時間保持して残りの有機結合剤を燃やし尽した後、空気及び窒素(1:30 vol:vol)の流動混合物中3℃/minで750℃に加熱し、これを15時間保持してカソード区画の金属表面にスピネル障壁層を形成した。後者のシーケンスの間、電流(0.05A/cm)を、SOFCスタックを通してアノード端からカソード端に通した。次いで、カソード区画に空気を供給しながら、SOFCスタックを動作温度(650℃)に冷却し、電気負荷に接続した。
【0071】
実施例5
サンドビーケン(Sandviken)0YC44をきれいにし、酸化コバルト層(厚さ10μm)(d50=2.5μm)でスラリー被覆し、乾燥し、さらに、85wt%LSM及び15wt%酸化コバルトの層(厚さ30μm)でスラリー被覆した。固体酸化物燃料電池のカソードに面し且つSOFCスタックに組み込まれた被覆部分について、金属部分を流動空気中3℃/minで550℃に加熱し、該温度で2時間保持して残りの有機結合剤を燃やし尽した後、同条件で1050℃に加熱し、これを2.5時間保持してカソード区画の金属表面にスピネル障壁層を形成した。次いで、SOFCスタックを動作温度(850℃)に冷却し、電気負荷に接続した。
【0072】
実施例6
金属部分(ZMG232)をきれいにし、酸化銅及び酸化マンガン(4:1 mol/mol)の層(厚さ10μm)でスラリー被覆し、乾燥し、さらに、55wt%LSC、25wt%LSC’、及び20wt%SCの層(厚さ25μm)でスラリー被覆した。固体酸化物燃料電池のカソードに面し且つSOFCスタックに組み込まれた被覆部分について、金属部分を流動空気中3℃/minで550℃に加熱し、該温度で2時間保持して残りの有機結合剤を燃やし尽した後、空気及び窒素(1:100 vol:vol)の流動混合物中、同じ速度で850℃に加熱し、これを5時間保持してカソード区画の金属表面にスピネル障壁層を形成した。後者のシーケンスの間、交流電流(1kHz、0.05A/cm)を、SOFCスタックを通してアノード極とカソード極との間に通した。次いで、SOFCスタックを動作温度(750℃)に冷却し、電気負荷に接続した。
【0073】
実施例7
クロフェル22APUをきれいにし、酸化コバルト層(厚さ5μm)(d50=0.6μm)でスラリー被覆し、乾燥し、さらに、75wt%LSM、10wt%酸化バリウム、10wt%炭酸カルシウム、及び5wt%酸化マグネシウムの層(厚さ25μm)でスラリー被覆した。固体酸化物燃料電池のカソードに面し且つSOFCスタックに組み込まれた被覆部分について、金属部分を流動空気(5.4ml/min/cm表面積)中3℃/minで550℃に加熱し、該温度で2時間保持して残りの有機結合剤を燃やし尽した後、同条件で900℃に加熱し、これを3.5時間保持してカソード区画の金属表面にスピネル障壁層を形成した。次いで、SOFCスタックを動作温度(750℃)に冷却し、電気負荷に接続した。
【0074】
実施例8
サンドビック1C44Mo20をきれいにし、酸化コバルト及び酸化銅(2:1 wt/wt)の層(厚さ10μm)でスラリー被覆し、乾燥し、さらに、90wt%LSM及び10wt%酸化コバルトの層(厚さ35μm)でスラリー被覆した。固体酸化物燃料電池のカソードに面し且つSOFCスタックに組み込まれた被覆部分について、金属部分を流動空気中3℃/minで550℃に加熱し、該温度で2時間保持していずれの残りの有機結合剤をも燃やし尽した後、流動空気中3℃/minで950℃に加熱し、これを4.5時間保持してカソード区画の金属表面にスピネル障壁層を形成させた。次いで、カソード区画に空気を供給しながら、SOFCスタックを動作温度(750℃)に冷却し、電気負荷に接続した。
【0075】
実施例9
ZMG232をきれいにし、酸化銅、酸化マンガン及びLSM(16:4:1 mol/mol)の層(厚さ10μm)でスラリー被覆し、乾燥し、さらに、酸化銅、酸化マンガン、及びLSM(4:1:8 mol/mol)の層(厚さ25μm)でスラリー被覆した。固体酸化物燃料電池のカソードに面し且つSOFCスタックに組み込まれた被覆部分について、金属部分を流動空気中3℃/minで550℃に加熱し、該温度で2時間保持していずれの残りの有機結合剤も燃やし尽した後、空気及び窒素(1:9 vol:vol)の流動混合物中5℃/minで950℃に加熱し、これを4時間保持してカソード区画の金属表面にスピネル障壁層を形成した。次いで、SOFCスタックを動作温度(850℃)に冷却し、電気負荷に接続した。
【0076】
実施例10
クロフェル22APUをきれいにし、酸化コバルト層(厚さ7μm)(d50=2.5μm)でスラリー被覆し、乾燥し、さらに、LSM及びLSC(1:1 w:w)の混合層(厚さ20μm)でスラリー被覆した。乾燥後、厚さ25μmのLNFの第3の層をスラリーキャストにより付加し、被覆された要素をさらに乾燥した。固体酸化物燃料電池(SOFC)のカソードに面し且つSOFCスタックに組み込まれた被覆部分について、金属部分を流動空気(5.4ml/min/cm表面積)中3℃/minで550℃に加熱し、該温度で2時間保持していずれの残りの有機結合剤をも燃やし尽した後、同条件で950℃に加熱し、これを3時間保持してカソード区画の金属表面にスピネル障壁層を形成した。次いで、SOFCスタックを動作温度(750℃)に冷却し、電気負荷に接続し、ここで、分解率を0.25A/cmセル面積の電流負荷で評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属相互接続を用意するステップ;
前記金属相互接続に第1金属酸化物層を付加するステップ;
前記第1金属酸化物層の上に第2金属酸化物層を付加するステップ;
前記第2金属酸化物層の上に第3金属酸化物層を付加するステップ;
前記金属酸化物層をその上に有する前記金属相互接続を含む固体酸化物セルスタックを形成するステップ;及び
SOCスタックの初期化の間に前記第1金属酸化物層における金属酸化物を前記金属相互接続の金属と反応させるステップ
を含む、固体酸化物セルスタックにおける多層障壁構造体の製造方法。
【請求項2】
初期化ステップを少なくとも約500℃、好ましくは700℃〜1100℃の高温で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
初期化ステップは、雰囲気組成及び電流負荷について制御された条件下で実施し、層組成に依存し、クロム種が空気電極に移動しない高密度の障壁層としての所望の反応生成物の形成を促進する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1金属酸化物層の金属酸化物と前記金属相互接続の金属との反応の反応生成物は、導電性であり且つ密度が高く、好ましくはスピネル構造である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1金属酸化物層の金属酸化物と前記第2金属酸化物層の金属酸化物が同じである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1金属酸化物層が、金属酸化物の混合物、又は少なくとも2種の異なる金属カチオンを有する金属酸化物及び遷移金属酸化物の混合物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記金属酸化物が、酸化ランタン及び遷移金属酸化物、好ましくは酸化コバルト、酸化マンガン、酸化銅、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2種の異なる金属カチオンを有する前記金属酸化物がペロブスカイト構造を有し、ドープランタンマンガナイト、ドープランタンコバルタイト、ドープランタンフェライト及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第2金属酸化物層が、少なくとも2種の異なる金属カチオンを有する金属酸化物及び金属酸化物の混合物を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記金属酸化物が、アルカリ土類金属酸化物、好ましくは酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、及び遷移金属酸化物、好ましくは酸化コバルト、酸化マンガン、酸化銅、酸化ランタン、並びにこれらの混合物から成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2種の異なる金属カチオンを有する前記金属酸化物がペロブスカイト構造を有し、ドープランタンマンガナイト、ドープランタンコバルタイト、ドープランタンフェライト、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1金属酸化物層の厚さが約1〜約20μmである、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第2金属酸化物層の厚さが約10〜約30μmである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第2金属酸化物層の上に第3金属酸化物層を形成するステップをさらに含み、前記第3層の金属酸化物が、ドープランタンニッケラート、酸化ニッケル、ランタンマンガナイト、ドープランタンコバルタイト、ドープランタンフェライト、ドープセリア、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の方法によって得ることができる多層障壁構造体。
【請求項16】
アノード接触層及び支持構造体、アノード層、電解質層、カソード層、カソード接触層、金属相互接続、並びに請求項15に記載の多層障壁構造体を含む、固体酸化物セルスタック。
【請求項17】
多層障壁構造体が電極層と金属相互接続との間に設けられている、請求項16に記載の固体酸化物セルスタック。
【請求項18】
固体酸化物燃料電池又は固体酸化物電解セルにおける障壁層構造体としての請求項15に記載の多層障壁構造体の使用。
【請求項19】
障壁層前駆体に酸化コバルトを使用し、スタックの初期化を950℃より高い温度で実施する、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
障壁層を導電性且つ高密度な反応生成物、好ましくはスピネル構造体に変換するために、請求項16又は17に記載の固体酸化物セルスタックの初期化の間、加熱シーケンス及び気相組成、好ましくは酸素分圧を制御する方法。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−516024(P2010−516024A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545087(P2009−545087)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009805
【国際公開番号】WO2008/083788
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(507018838)テクニカル ユニヴァーシティー オブ デンマーク (11)
【出願人】(505360328)
【Fターム(参考)】