説明

固体電解質形燃料電池及びその製造方法

【課題】固体電解質形燃料電池の構造を簡易化することができ、反りや割れを防止することができる固体電解質形燃料電池及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】固体電解質形燃料電池スタック1は、固体電解質形燃料電池セル3とインターコネクタ5とが交互に積層され、一体焼結によって一体化されたものである。固体電解質形燃料電池セル3には空気極9と燃料極11が形成され、インターコネクタ5のセラミック基体13の表側及び裏側に、燃料ガス流路15及び空気流路17が設けられている。また、セラミック基体13を貫いてビア19が形成され、ビア19により上下の固体電解質形燃料電池セル3の燃料極11と空気極9とが電気的に接続されている。固体電解質体7とインターコネクタ5のセラミック基体13とは、同一の組成のジルコニア固溶体から形成され、燃料極11と空気極9とビア19とは、同一組成の導電体から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質形燃料電池セル及びコネクタを備えた固体電解質形燃料電池及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料電池として、固体電解質(固体酸化物)を用いた固体酸化物形燃料電池(以下SOFCとも記す)が知られている。
このSOFCでは、発電単位として、例えば固体電解質体の一方の側に燃料ガスに接する燃料極を設けるとともに、他方の側に空気と接する空気極を設けた固体酸化物形燃料電池セルが(SOFCセル)使用されており、このSOFCセルを複数積層した固体酸化物形燃料電池スタック(SOFCスタック)が開発されている。
【0003】
また、SOFCスタックでは、セル間の導通を確保したり、セル間のガス流路を分離するために、導電性を有する例えば板状のインターコネクタが使用されている。
上述したSOFCのセル形状としては、円筒形、平板形、モノリス形などが知られており、このうち、モノリス形SOFCは、セラミックグリーンシートの状態で、固体電解質体とインターコネクタとを積層して焼成する、いわゆる一体焼結型SOFCである(特許文献1、2参照)。
【0004】
この引用文献1には、図9に模式的に示す様に、空気極201及び燃料極203を有する固体電解質体205からなる固体電解質形燃料電池セル207の両側に、多孔質のディストリビュータ(集電体)209、211を配置し、この集電体209、211の外側に接するように、インターコネクタ213を配置したSOFCが開示されている。
【特許文献1】特許第3151872号公報
【特許文献2】特開平6−68885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したモノリス形SOFCは、セル間の接続信頼性が高く、且つ、ガスシール性が高くなるため、優れたものであると考えられているが、固体電解質体とインターコネクタとを同時焼成で作成する際に、反りや割れが生じ易いという問題がある。これは、(1)焼成収縮や焼成温度が材料毎に異なることや、(2)材料毎に熱膨張率が異なることなどが原因と考えられる。
【0006】
特に、引用文献1の様な構造のSOFCでは、使用する部材が多く、その構造が複雑になるので、焼結挙動も複雑になって、結果として反りや割れが生じる可能性が高いという問題があり、実際には、発電性能の高いモノリス形SOFCが得られていないのが現状である。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、一体焼結型の固体電解質形燃料電池の構造を簡易化することができ、結果として、反りや割れを防止することができる固体電解質形燃料電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1の発明は、燃料ガスに接する燃料極と酸化剤ガスに接する空気極とセラミックス部材である固体電解質体とを備えた固体電解質形燃料電池セルと、前記固体電解質形燃料電池セルとの導通を確保するセラミックス製のコネクタと、を備えた固体電解質形燃料電池において、前記コネクタは、自身のセラミックス部分を貫いて前記燃料極又は空気極に電気的に接続されたビアを備え、前記固体電解質体及び前記コネクタのセラミックスは、同じ主成分を有するセラミックスであるとともに、互いのセラミックス組織が連続して一体となったものであることを特徴とする。
【0009】
本発明は、一体焼結型の固体電解質形燃料電池(いわゆるモノリス形SOFC)に関するものであり、本発明では、セラミックス製の固体電解質体と、電極に接続されたビアを備えたセラミックス製のコネクタ(例えばインターコネクタ)とは、それぞれのセラミックスは同じ主成分を有し、しかも、互いのセラミックス組織が連続して一体となったものである。
【0010】
従って、本発明では、固体電解質体とコネクタ(セラミックス部分)との熱膨張差は小さいので、焼成時の反りや割れを防止できる。また、従来より構成部材が少なくて済むので、焼結挙動を揃えることができ、その点からも、焼結時の反りや割れの発生を防止できる。
【0011】
更に、本発明では、セラミックス組織が連続して一体となっているので、燃料ガスや酸化剤ガスのリークが少なく、ガスの分離供給が容易になる。
しかも、本発明では、ボルト等によって、SOFCを一体に形成する必要がなく、しかも、シール性が高いので、例えばセルとコネクタとの間等に、シールド部材を配置しなくても済むという利点がある。
【0012】
尚、ここで、セラミックス組織が一体とは、固体電解質体とコネクタのセラミックスとの界面微構造に関して、互いのセラミックス粒子同士が直接隣接した状態のことをいう。つまり、界面に互いを結合させるための特別な中間層(例えば金属ロー材やガラス質)が存在しない状態をいう。ただし、中間層の有無は、界面微構造で判断するものであって、例えば固溶体同士の拡散によって中間組織が生成する場合や、界面以外の組織全体に他組成が存在する場合は、その限りではない。
【0013】
また、前記コネクタとして、例えばセルに交互に積層されて、セルに酸化剤ガス及び燃料ガスを分離供給する機能と、セルにて発電した電気をセル間で接続する機能を有するインターコネクタや、セルやインターコネクタを積層したスタックの外側に配置されて、セルにて発電した電気を外部に取り出したりする機能を有する外側コネクタが挙げられる。このコネクタのセラミックス部分にてガスの流路を構成でき、ビアに充填した導体(ビア導体)にて電気的導電性を付与することができる。尚、例えばインターコネクタとしては、燃料極又は空気極と連通する開口部を有し、開口部の周囲に、燃料極又は空気極に接続されたビアを備えた構成を採用できる。
【0014】
(2)請求項2の発明では、前記前記固体電解質体及び前記コネクタのセラミックスは、ジルコニア固溶体を主成分とするセラミックスであることを特徴とする。
本発明は、固体電解質体及びコネクタのセラミックスの好ましい例を示したものである。
【0015】
ここで、固体電解質体とコネクタのセラミックスに使用するジルコニア固溶体が同一組成(つまり、同一固溶種且つ同一固溶量)の場合、互いのセラミック組織は完全に同一となり、界面は消失することになる。また、ジルコニア固溶体の固溶種や固溶量を違えた場合、固溶種や組織の大きさで界面は判定できるものの、互いのセラミックス粒子同士が直接隣接した組織となる。
【0016】
また、ジルコニア固溶体としては、固溶種や固溶量を変化させてもよく、例えば固体電解質体には、(コネクタより)固溶量の大きなジルコニアとすることで発電特性を向上させ、コネクタには、(固体電解質体より)固溶量の小さいジルコニアとすることで強度の高いスタックにできる。こうすることで、熱膨張率を一致させながら、部材に応じた機能を付与することができる。
【0017】
尚、前記ジルコニア固溶体とは、ジルコニアに各種元素を固溶させて酸素イオン導電性を有するものであり、公知のもの、例えばY固溶体、Sc固溶体、Ca固溶体などが使用できる。
【0018】
(3)請求項3の発明では、前記燃料極と前記空気極と前記ビアに充填されたビア導体とは、金属材料又は金属材料とセラミックスとの複合体を主成分とすることを特徴とする。
【0019】
本発明は、両電極とビア導体の好ましい例を示したものである。
本発明では、燃料極と空気極とビア導体とは、金属材料又は金属材料とセラミックスとの複合体を主成分としており、その金属材料は、高温で塑性変形し易いため、熱膨張差で発生した応力を変形によって緩和でき、焼成時の割れや反りの発生を抑制できる。
【0020】
更に、ビア導体は、ビアを構成する導体であり、ビアホールに充填されて焼結されたものである。このビア導体としては、各種金属、金属とセラミックスとのサーメットを使用できる。
【0021】
前記金属材料としては、Pt、Pd、Ag、Au、Cu、Ni、W、Mo、Fe、Co、及びこれらの合金などを用いることができる。このうち、Pt、Pd、Ag、Au、及びこれらの合金が望ましい。特にPtが望ましいが、このPtは、融点が高く、セラミックスと同時の焼成が容易だからである。
【0022】
前記金属材料とセラミックスの複合体の場合、セラミックスとしては公知のもの、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、セリア、カルシア、マグネシア、スピネル等が使用できる。
【0023】
このうち、特にジルコニア固溶体が望ましい。つまり、固体電解質体及びコネクタのセラミックスとしてジルコニア固溶体を用いる場合には、同種なので、いわゆる共生地の添付効果により、同時焼成がより容易に行えるようになる。
【0024】
(4)請求項4の発明では、前記燃料極と前記空気極とは、同種の材料を主成分とすることを特徴とする。
本発明の電極に使用する金属材料又は金属材料とセラミックスとの複合体としては、特に同一組成とすることで、焼成収縮を制御しなければならない構成部材数を低減できるので、容易にモノリス形SOFCを作製できる。
【0025】
尚、電極に使用する金属材料又は金属材料とセラミックスとの複合体としては、同一組成のものが好ましいが、主成分が同じ異種のものも採用可能である。例えば空気極には、耐酸化性の高い貴金属を用い、燃料極には卑金属を添加することで原料コストを低減できる。また、金属材料とセラミックスとの比率を変化させてもよく、例えば空気極にはセラミックス比を大きくして電気化学的な電極性能を向上させることができる。
【0026】
(5)請求項5の発明では、前記燃料極と前記空気極と前記ビアに充填されたビア導体とは、同種の材料を主成分とすることを特徴とする。
本発明の電極とビア導体に使用する金属材料又は金属材料とセラミックスとの複合体としては、特に同一組成とすることで、焼成収縮を制御しなければならない構成部材数を低減できるので、容易にモノリス形SOFCを作製できる。
【0027】
尚、本発明の電極とビア導体に使用する金属材料又は金属材料とセラミックスとの複合体としては、同一組成のものが好ましいが、主成分が同じ異種のものも採用可能である。例えば空気極及びビア導体には、耐酸化性の高い貴金属を用い、燃料極には卑金属を添加することで原料コストを低減できる。また、金属材料とセラミックスとの比率を変化させてもよく、例えば空気極にはセラミックス比を大きくして電気化学的な電極性能を向上させ、ビア導体にはセラミックス比を小さくして導電性を高くすることができる。
【0028】
(6)請求項6の発明では、前記燃料極及び前記空気極の少なくとも一方の電極(好ましくは両方の電極)と、それぞれの電極と電気的に接続された前記ビアに充填されたビア導体とは、互いの金属組織が連続して一体に形成されていることを特徴とする。
【0029】
本発明では、各電極とそれに接続されるビア導体とは、互いの金属組織が連続して一体となっているので、セル同士の電気的な接続の信頼性が向上する。
尚、互いの金属組織が連続して一体とは、セルの電極とコネクタのビア導体との界面微構造に関して、互いの金属粒子同士が直接隣接した状態のことをいう。つまり、界面に互いを結合させるための特別な中間層(例えば金属ロー材)が存在しない状態をいう。ただし、中間層の有無は、界面微構造で判断するものであって、金属同士の拡散によって中間組織が生成する場合や、界面以外の組織全体に他組成が存在する場合は、その限りではない。
【0030】
(7)請求項7の発明(固体電解質形燃料電池の製造方法)では、ジルコニア固溶体を主成分とするグリーンシートの表裏に電極用ペーストを印刷した未焼成の固体電解質形燃料電池セルと、ジルコニア固溶体を主成分とするグリーンシートに設けた貫通孔にビア導体用ペーストを穴埋めした未焼成のコネクタとを、積層した後に焼成することを特徴とする。
【0031】
この製造方法によって、燃料電池に反りや割れ等を発生させることなく、前記請求項1〜6のいずれかに記載の固体電解質形燃料電池など、容易に製造することができる。
・尚、前記固体電解質体は、電池の作動時に燃料極に導入される燃料ガス又は空気極に導入される酸化剤ガスのうちの一方の一部をイオンとして移動させることができるイオン伝導性を有する。このイオンとしては、例えば酸素イオン及び水素イオン等が挙げられる。ジルコニア固溶体は酸素イオン伝導である。また、燃料極は、還元剤となる燃料ガスと接触し、セルにおける負電極として機能する。空気極は、酸化剤となる酸化剤ガスと接触し、セルにおける正電極として機能する。
【0032】
・そして、前記固体電解質形燃料電池を用いて発電を行う場合、燃料極側には燃料ガスを導入し、空気極側には酸化剤ガスを導入する。
燃料ガスとしては、水素、還元剤となる炭化水素、水素と炭化水素との混合ガス、及びこれらのガスを所定温度の水中を通過させ加湿した燃料ガス、これらのガスに水蒸気を混合させた燃料ガス等が挙げられる。炭化水素は特に限定されず、例えば、天然ガス、ナフサ、石炭ガス化ガス等が挙げられる。この燃料ガスとしては水素が好ましい。これらの燃料ガスは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。また、50体積%以下の窒素及びアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。
【0033】
酸化剤ガスとしては、酸素と他の気体との混合ガス等が挙げられる。更に、この混合ガスには80体積%以下の窒素及びアルゴン等の不活性ガスが含有されていてもよい。これらの酸化剤ガスのうちでは安全であって、且つ安価であるため、空気(約80体積%の窒素が含まれている。)が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明の最良の形態の例について説明する。
[実施形態]
a)本実施形態であるモノリス形固体電解質形燃料電池(詳しくはモノリス形固体電解質形燃料電池スタック:モノリス形SOFCスタック)の構成について、図1に基づいて説明する。
【0035】
尚、図1は固体電解質形燃料電池スタックの一部を破断して模式的に示したものであり、ここでは、説明の簡易化のために、燃料ガスの流路と空気の流路とを平行に示してある。
【0036】
同図に示す様に、本実施形態の固体電解質形燃料電池スタック1は、燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば空気(詳しくは空気中の酸素))との供給を受けて発電を行う装置である。
【0037】
この固体電解質形燃料電池スタック1は、発電単位である板状の固体電解質形燃料電池セル3と、セル3間の導通を確保するとともにガス流路を遮断する板状のインターコネクタ5とが交互に積層され、一体焼結によって形成されたものである。
【0038】
このうち、固体電解質形燃料電池セル3は、板状の固体電解質体7の一方の側(同図上側:表側)に、空気極(カソード)9が形成され、他方の側(同図下側:裏側)に、燃料極(アノード)11が形成されている。
【0039】
また、インターコネクタ5は、板状のセラミック基体13の表側に、燃料極11を覆うように凹状の燃料ガス流路15が設けられ、裏側に、空気極9を覆うように凹状の空気流路17が設けられている。このインターコネクタ5には、セラミック基体13を(燃料ガス流路15と空気流路17の両脇にて)板厚方向に貫くように、ビア導体が充填されたビア19が形成されており、このビア19により、上方の固体電解質形燃料電池セル3の燃料極11と下方の固体電解質形燃料電池セル3の空気極9とが電気的に接続されている。
【0040】
特に、本実施形態では、固体電解質体7とインターコネクタ5のセラミック基体13とは、同一の組成のジルコニア固溶体から形成されており、また、燃料極11と空気極9とビア19とは、同一組成の導電体(例えばPtを主成分としイットリアを添加して安定化したジルコニア:YSZ)から構成されている。
【0041】
また、本実施形態では、固体電解質形燃料電池スタック1は、一体焼結されたものであるので、固体電解質体7とインターコネクタ5のセラミックス基体13は、互いのセラミックス組織が連続して一体となっている。更に、燃料極11と空気極9とビア19の導電体は、互いの金属組織が連続して一体となっている。
【0042】
b)この様に、本実施形態では、固体電解質体7とインターコネクタ5(及び外側コネクタ)のセラミック基体13との材料が同一で、その熱膨張差が無いので、一体に焼成する際の反りや割れの発生を防止できる。また、従来より構成部材が少なくて済むので、焼結挙動を揃えることができ、その点からも、焼結時の反りや割れの発生を防止できる。
【0043】
更に、本実施形態では、セラミックス組織が連続して一体となっているので、燃料ガスや酸化剤ガスのリークが少なく、ガスの分離供給が容易になる。
しかも、シール性が高いので、例えばセルとインターコネクタとの間等に、シールド部材を配置しなくても済むという利点がある。
【実施例1】
【0044】
次に、固体電解質形燃料電池の実施例について、図2及び図3に基づいて説明する。
本実施例は、固体電解質形燃料電池セル(発電セル)の固体電解質体とインターコネクタとの材料を同じジルコニア固溶体としたモノリス形SOFC(但し簡易サンプル)である。
【0045】
本実施例では、以下の手順でモノリス形SOFCの簡易サンプルを作成し、その発電試験を行った。尚、この簡易サンプルでは、空気や燃料ガスの流路はインターコネクタにより分離されていないが、実際にセルを積層する場合には、インターコネクタによって流路が分離される。
【0046】
(1)グリーンシートの作成
主成分であるジルコニア固溶体粉末(8YSZ)とブチラール樹脂と可塑剤と有機溶剤とを混合して、スラリーを調整し、そのスラリーをドクターブレード法でキャスティングし、200μm厚のジルコニアグリーンシートを作製した。
【0047】
(2)電極及びビアペーストの作製
Pt粉末とジルコニア固溶体粉末(8YSZ)とエチルセルロースと有機溶剤とを混合して、Pt電極ペーストを作製した。また、Pt粉末とエチルセルロースと有機溶剤とを混合して、Ptビアペーストを作製した。
【0048】
(3)未焼成発電セルの作製
図2に示す様に、ジルコニアグリーンシート21の表裏に、燃料極及び空気極となる電極パターン23を形成するために、Pt電極ペーストを12cm角形状に印刷して、未焼成発電セル25を作製した。
【0049】
(4)未焼成インターコネクタの作製
ジルコニアグリーンシート27、29に、ガス流路となる10cm角のガス貫通孔31、33を形成し、その周囲にビアとなるφ0.25mmの貫通孔(ビアホール)35を複数形成した。その後、ビアホール35は(ビア導体となる)Ptビアペーストで穴埋め印刷して未焼成ビア37を作製した。
【0050】
更に、ガス貫通孔31、33の周囲のシート表面をPt電極ペーストで印刷して枠状パターン39を形成し、その枠状パターン39によって、ビア導体同士を電気的に接続するようにして、未焼成インターコネクタ41、43を作製した。
【0051】
(5)積層及び焼成
前記未焼成発電セル25の表裏に、前記未焼成インターコネクタ41、43を積層圧着して一体とした。このとき、未焼成発電セル25の電極パターン23と未焼成インターコネクタ41、43のガス貫通孔31、33及び未焼成ビア37とが、投影方向(同図上下方向)に重なるように、且つ、ガス貫通孔31、33の周囲に印刷したPtペーストが、サンプル表面に露出するようにして積層した。
【0052】
この積層体を250℃にて脱脂し、その後1400℃にて焼成して、図3に示すモノリス形SOFC51の簡易サンプルを作製した。得られたサンプルに割れなどは確認できなかった。
【0053】
この様にして製造されたモノリス形SOFC51は、図3に破断して示す様に、空気極53及び燃料極55を有する固体電解質体57からなるSOFCセル58の両側に、インターコネクタ59、61を備えたものである。また、インターコネクタ59、61には、その中央に、空気極53に接する空気流路63と燃料極55に接する燃料ガス流路65とを備えるとともに、空気流路63及び燃料極55の周囲をそれぞれ囲むようにビア67、67を備えている。
【0054】
このうち、上側のビア67は、空気極53と上側のインターコネクタ59上面の端子71とを接続するものであり、下側のビア69は、燃料極55と下側のインターコネクタ61下面の端子73とを接続するものである。
【0055】
(6)発電評価
得られたモノリス形SOFC51の簡易サンプルを、その表面(空気流路63側)には酸化剤ガスである空気、裏面(燃料ガス流路65)には、燃料ガスである露点30℃のH2ガスに曝すことができるように、発電評価装置(図示せず)にセットした。
【0056】
また、上下のインターコネクタ59、61の表裏の端子71、73から電気を取り出せるように端子接続した。
この結果、800℃において、0.7Vにて0.1W/cm2の発電ができたことが確認された。
【0057】
尚、モノリス形SOFC51の簡易サンプルの固体電解質体57とインターコネクタ59、61のセラミックス部分との接合断面(A部分)を、走査型電子顕微鏡(倍率2000倍)で観察したところ、図4に示す様に、互いのセラミックス組織が連続して一体となっていた。
【0058】
また、同様に、空気極53とビア67との接合断面(B部分)を、走査型電子顕微鏡(倍率2000倍)で観察したところ、図5に示す様に、互いの金属組織が連続して一体に形成されていた。
【0059】
[比較例]
本比較例は、発電セルの固体電解質体とインターコネクタとの材料を異なる材料としたものである。尚、それ以外の構成は、前記実施例1と同様である。
【0060】
本比較例では、以下の手順でモノリス形SOFCの簡易サンプルを作成し、その発電試験を行った。
(1)グリーンシートの作成
前記実施例1と同様にして、200μm厚のジルコニアグリーンシートを作製し、固体電解質体用のグリーンシートとした。
【0061】
また、インターコネクタ用のグリーンシートとして、ランタンクロマイト粉末(LaCrO3)とブチラール樹脂と可塑剤と有機溶剤とを混合して、スラリーを調整した。そのスラリーをドクターブレード法でキャスティングし、200μm厚のランタンクロマイトグリーンシートを作製した。
【0062】
(2)電極ペーストの作製
ペロブスカイト酸化物粉末(LSM)とエチルセルロールと有機溶剤とを混合し、空気極ペーストとした。また、NiO粉末とジルコニア固溶体粉末(8YSZ)とエチルセルロースと有機溶剤とを混合して、燃料極ペーストを作製した。
【0063】
(3)未焼成発電セルの作製
ジルコニアグリーンシートの表面に空気極ペーストを、裏面に燃料極ペーストを、12cm角形状に印刷して、未焼成発電セルを作製した。
【0064】
(4)未焼成インターコネクタの作製
ランタンクロマイトグリーンシートに、ガス流路となる10cm角のガス貫通孔を形成して、未焼成インターコネクタを作製した。
【0065】
(5)積層及び焼成
前記実施例1と同様に、前記未焼成発電セルの表裏に、前記未焼成インターコネクタを積層圧着して一体とし、焼成して、比較例のモノリス形SOFCの簡易サンプルを作製した。
【0066】
(6)評価
得られたモノリス形SOFCの簡易サンプルは、大きな反りが発生し、且つ、インターコネクタの部分は緻密化できずに割れており、発電評価できるサンプルは得られかった。
【実施例2】
【0067】
本実施例は、SOFCセルが多層に積層されたモノリス形SOFCスタック(多層モノリス形SOFC)である。
この多層モノリス形SOFCは、下記の手順で製造することができる。
【0068】
(1)グリーンシートの作成
前記実施例1と同様に、200μm厚のジルコニアグリーンシートを作製した。
(2)電極及びビアペーストの作製
前記実施例1と同様に、Pt電極ペースト及びPtビアペーストを作製した。
【0069】
(3)未焼成発電セルの作製
図6(a)に示す様に、前記実施例1と同様に、ジルコニアグリーンシート81の表裏に、Pt電極ペーストを印刷して電極パターン83を形成し、未焼成発電セル84を作製した。尚、破線が切断部分である。
【0070】
(4)未焼成インターコネクタの作製
図6(b)〜(d)に示す様に、ジルコニアグリーンシートに、ガス流路となる10cm角のガス貫通孔91、93と、その周囲にビアとなるφ0.25mmの貫通孔(ビアホール)95、99を成したジルコニアグリーンシート85、89を2枚作製するとともに、ビアホール97だけ形成したジルコニアグリーンシート87を1枚作製した。
【0071】
その後、全てのグリーンシート85〜89のビアホール95〜99はPtビアペーストで穴埋め印刷して未焼成ビア101〜105を作製した。
次に、未焼成ビア103だけからなるグリーンシート87の表裏に、未焼成ビア101〜105の位置を一致させるようにして、前記ガス貫通孔91、93と未焼成ビア101、105を形成したグリーンシート85、89を積層圧着して、未焼成インターコネクタ107(図6(e)参照)を作製した。
【0072】
(5)積層及び焼成
前記未焼成発電セル84と前記未焼成インターコネクタ107とを交互に配置し、積層圧着して一体とした。このとき、未焼成発電セル84の電極パターン83と未焼成インターコネクタ107のガス貫通孔91、93及び未焼成ビア101〜105とが重なるようにした。
【0073】
その後、積層体を図の破線に沿って必要な大きさに切断して、未焼成の多層モノリス形SOFCとし、この積層体を205℃にて脱脂し、その後1400℃にて焼成して、図7及び図8に示す多層モノリス形SOFC111を作製した。
【0074】
この様にして製造された多層モノリス形SOFC111は、空気極113及び燃料極115を有する固体電解質体117からなるSOFCセル119と、インターコネクタ121とを交互に積層したものである。
【0075】
このインターコネクタ121は、中央のプレート状の部材123の両側に一対の長方形の部材125〜131を備えたものであり、これらの部材123〜131によって、空気極113に接する空気流路133と燃料極115に接する燃料ガス流路135が形成されている。また、空気流路133及び燃料極135の周囲をそれぞれ囲むようにビア137が形成されている。
【0076】
尚、図8に示す様に、多層モノリス形SOFC111の積層方向の両側には、各セル119にて発電した電力を外部に取り出すための外側コネクタ139が配置されており、その外側コネクタ139の外側表面には、ビア137と接続された電流取出端子141が形成されている。
【0077】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態の固体電解質形燃料電池スタックの一部を破断して模式的に示す説明図である。
【図2】実施例1の固体電解質形燃料電池セルの製造手順を示す説明図である。
【図3】実施例1の固体電解質形燃料電池セルを破断して示す説明図である。
【図4】固体電解質体とインターコネクタのセラミックス部分との接合断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】電極とビアとの接合断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例2の固体電解質形燃料電池スタックの製造手順を示す説明図である。
【図7】実施例2の固体電解質形燃料電池スタックの一部を分解して示す斜視図である。
【図8】実施例2の固体電解質形燃料電池スタックの一部を破断して示す説明図である。
【図9】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0079】
1、111…固体電解質形燃料電池スタック
3、58、119…固体電解質形燃料電池セル
5、59、61、121、121…インターコネクタ
7、57、117…固体電解質体
9、53、113…空気極
11、55、115…燃料極
15、65、135…燃料ガス流路
17、63、133…空気流路
19、67、69…ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスに接する燃料極と酸化剤ガスに接する空気極とセラミックス部材である固体電解質体とを備えた固体電解質形燃料電池セルと、
前記固体電解質形燃料電池セルとの導通を確保するセラミックス製のコネクタと、
を備えた固体電解質形燃料電池において、
前記コネクタは、自身のセラミックス部分を貫いて前記燃料極又は空気極に電気的に接続されたビアを備え、
前記固体電解質体及び前記コネクタのセラミックスは、同じ主成分を有するセラミックスであるとともに、互いのセラミックス組織が連続して一体となったものであることを特徴とする固体電解質形燃料電池。
【請求項2】
前記前記固体電解質体及び前記コネクタのセラミックスは、ジルコニア固溶体を主成分とするセラミックスであることを特徴とする前記請求項1に記載の固体電解質形燃料電池。
【請求項3】
前記燃料極と前記空気極と前記ビアに充填されたビア導体とは、金属材料又は金属材料とセラミックスとの複合体を主成分とすることを特徴とする前記請求項1又は2に記載の固体電解質形燃料電池。
【請求項4】
前記燃料極と前記空気極とは、同種の材料を主成分とすることを特徴とする前記請求項3に記載の固体電解質形燃料電池。
【請求項5】
前記燃料極と前記空気極と前記ビアに充填されたビア導体とは、同種の材料を主成分とすることを特徴とする前記請求項3又は4に記載の固体電解質形燃料電池。
【請求項6】
前記燃料極及び前記空気極の少なくとも一方の電極と、前記ビアに充填されたビア導体とは、互いの金属組織が連続して一体に形成されていることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載の固体電解質形燃料電池。
【請求項7】
ジルコニア固溶体を主成分とするグリーンシートの表裏に電極用ペーストを印刷した未焼成の固体電解質形燃料電池セルと、ジルコニア固溶体を主成分とするグリーンシートに設けた貫通孔にビア導体用ペーストを穴埋めした未焼成のコネクタとを、積層した後に焼成することを特徴とする固体電解質形燃料電池の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−53044(P2008−53044A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227975(P2006−227975)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】