説明

固体電解質形燃料電池用発電セルにおける燃料極を構成する燃料極材料

【課題】固体電解質としてランタンガレート系電解質を用いた固体電解質形燃料電池用発電セルにおける燃料極を構成する燃料極材料を提供する。
【解決手段】一般式:Ce1−m(式中、BはSm、Gd、Y、Caの1種または2種以上、mは0<m≦0.4)で表されるBドープしたセリアにルテニウム金属を担持させてなる固体電解質形燃料電池用発電セルにおける燃料極を構成する燃料極材料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固体電解質としてランタンガレート系固体電解質を用いた固体電解質形燃料電池用発電セルにおける燃料極を構成する燃料極材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、固体電解質形燃料電池は、水素ガス、天然ガス、メタノール、石炭ガスなどを燃料とすることができるので、発電における石油代替エネルギー化を促進することができ、さらに廃熱を利用することができるので省資源および環境問題の観点からも注目されている。この固体電解質形燃料電池の構造は、一般に、酸化物からなる固体電解質の片面に空気極を積層し、固体電解質のもう一方の片面に燃料極を積層してなる構造を有している発電セルと、この発電セルの空気極の外側に空気極集電体を積層させ、一方、発電セルの燃料極の外側に燃料極集電体を積層させ、前記空気極および燃料極の外側にそれぞれセパレータを積層させた構造を有している。この固体電解質形燃料電池は、一般に800〜1000℃で作動するが、近年、作動温度が600〜800℃の低温タイプのものが提案されている。
【0003】
前記低温タイプの固体電解質形燃料電池に組込まれる固体電解質材料として、ランタンガレート系酸化物イオン伝導体を用いることが知られており、このランタンガレート系酸化物イオン伝導体は、一般式:La1−XSrGa1−Y−ZMg(式中、A=Co、Fe、Ni、Cuの1種または2種以上、X=0.05〜0.3、Y=0〜0.29、Z=0.01〜0.3、Y+Z=0.025〜0.3)で表される酸化物イオン伝導体であることが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、前記燃料極としては、B(ただし、BはSm、Gd、La、Y、Caの1種または2種以上)をドープしたセリアが知られており、このBをドープしたセリアは、一般式:Ce1−m(式中、BはSm、Gd、La、Y、Caの1種または2種以上、mは0<m≦0.4)で表され、NiO粉末と混合して使用される(特許文献2参照)。
【0005】
前記燃料ガスとして一般に水素が使用され、水素からなる燃料ガスは燃料極集電体を通って前記Bをドープしたセリアで構成される燃料極に供給され、この燃料極における燃料ガスの反応は主として三相界面(燃料極と固体電解質と燃料ガスが共存する部分)で行われると言われている。
【特許文献1】特開平11−335164号公報
【特許文献2】特開平11−297333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、固体電解質型燃料電池の燃料ガスとして水素ガスが使用されており、この水素ガスは炭化水素ガスを改質して作製した水素ガスが広く使用されている。しかし、かかる炭化水素ガスを改質して作製した水素ガスには十分な改質がなされずに微量の炭化水素ガスが混入していることがあり、かかる微量の炭化水素ガスが混入している水素燃料ガスを用いて発電を行うと、発電効率が低下する。したがって、微量の炭化水素ガスが混入している水素燃料ガスを用いても発電効率を低下させることのない固体電解質形燃料電池が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者等は、微量の炭化水素ガスが混入している水素燃料ガスを用いても発電効率を低下させることのない固体電解質形燃料電池を開発すべく研究を行った。
【0008】
その結果、ランタンガレード系酸化物イオン伝導体を固体電解質とし、前記固体電解質の一方の面に多孔質の空気極を積層し、他方の面に多孔質の燃料極を積層した固体電解質形燃料電池用発電セルにおいて、前記燃料極を、一般式:Ce1−m(式中、BはSm、Gd、La、Y、Caの1種または2種以上、mは0<m≦0.4)で表されるBドープしたセリアにルテニウム金属を担持させてなる燃料極材料で構成した固体電解質形燃料電池用発電セルを有する固体電解質形燃料電池は、従来のBドープしたセリアとNiO粉末を混合した燃料極を積層させた発電セルを有する固体電解質形燃料電池に比べて発電効率が一層向上するという研究結果が得られたのである。
【0009】
この発明は、かかる研究結果に基づいて成されたものであって、
(1)一般式:Ce1−m(式中、BはSm、Gd、La、Y、Caの1種または2種以上、mは0<m≦0.4)で表されるBドープしたセリアにルテニウム金属を担持させてなる固体電解質形燃料電池用発電セルにおける燃料極を構成する燃料極材料、
(2)ランタンガレード系酸化物イオン伝導体を固体電解質とし、前記固体電解質の一方の面に空気極が形成され、他方の面に燃料極が成形された固体電解質形燃料電池用発電セルにおいて、前記燃料極は、一般式:Ce1−m(式中、BはSm、Gd、La、Y、Caの1種または2種以上、mは0<m≦0.4)で表されるBドープしたセリアにルテニウム金属を担持させてなる燃料極材料で構成されている固体電解質形燃料電池用発電セル、
(3)前記(2)記載の固体電解質形燃料電池用発電セルを組み込んだ固体電解質形燃料電池、に特徴を有するものである。
【0010】
この発明の固体電解質形燃料電池用発電セルにおける燃料極材料は、エチレングリコールに、ポリビニルピロリドン、塩化ルテニウムおよびBドープしたセリアをその順に添加し、撹拌したのちさらに温度を上げながら撹拌してルテニウム金属担持混合溶液を作製し、得られたルテニウム金属担持混合溶液を遠心分離により洗浄を繰り返し行い、Bドープしたセリアにルテニウム金属を担持させてなる燃料極材料の懸濁液を作製し、このBドープしたセリアにルテニウム金属を担持させてなる燃料極材料の懸濁液を乾燥し適宜粉砕して燃料極材料粉末とすることができる。さらに得られたBドープしたセリアにルテニウム金属を担持させてなる燃料極材料粉末のスラリーを作製し、このスラリーを固体電解質の片面に塗布し含浸させたのち乾燥させることにより燃料極を作製することができる。
【0011】
この発明のルテニウム金属を担持したBドープセリアからなる燃料極材料を用いた発電セルは、従来のNiO粉末と混合したBドープセリアからなる燃料極を用いた発電セルに比べて発電効率が向上する理由として、極微量の炭化水素ガスが残存する水素燃料ガスが燃料極集電体を通過して燃料極に到達しても極微量の炭化水素ガスがこの発明の燃料極のルテニウム金属担持Bドープセリアにおけるルテニウム金属に接触して改質されるので発電効率が低下することがないものと考えられる。
【0012】
この発明の固体電解質形燃料電池用発電セルで使用される固体電解質は、一般式:La1−XSrGa1−Y−ZMg(式中、A=Co、Fe、Ni、Cuの1種または2種以上、X=0.05〜0.3、Y=0〜0.29、Z=0.01〜0.3、Y+Z=0.025〜0.3)で表される酸化物イオン伝導体であり、これは既に知られている固体電解質である。
【発明の効果】
【0013】
この発明の燃料極材料を用いて製造した燃料極を設けてなる発電セルを組込んだ固体酸化物型燃料電池は、燃料ガスとして極微量の炭化水素ガスが残存する水素ガスを用いて発電しても発電効率を低下させることがないことから、燃料ガスの純度に関係なく高効率で発電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施例1
先ず、酸化ランタン、炭酸ストロンチウム、酸化ガリウム、酸化マグネシウム、酸化コバルトの粉体を用意し、(La0.8Sr0.2)(Ga0.8Mg0.15Co0.05)Oで示される組成となるよう秤量し、ボールミル混合の後、空気中、1200℃に3時間加熱保持し、得られた塊状焼結体をハンマーミルで粗粉砕の後、ボールミルで微粉砕して、平均粒径1.3μmのランタンガレート系固体電解質原料粉末を製造した。前記ランタンガレート系固体電解質原料粉末をトルエン-エタノール混合溶媒にポリビニルブチラルとフタル酸Nジオクチルを溶解した有機バインダー溶液と混合してスラリーとし、ドクターブレード法で薄板状に成形し、円形に切りだした後、空気中、1450℃に6時間加熱保持して焼結し、厚さ200μm、直径120mmの円板状のランタンガレート系固体電解質板を作製した。
【0015】
さらに、0.5mol/Lの硝酸セリウム水溶液8部と0.5mol/Lの硝酸サマリウム水溶液2部の混合水溶液に1molの水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら滴下し、酸化セリウムと酸化サマリウムを共沈させ、ろ過したのち純水での攪拌・洗浄ろ過を6回繰り返して水洗し、酸化セリウムと酸化サマリウムの共沈粉を作製し、これを空気中、温度:1000℃に3時間加熱保持して(Ce0.8Sm0.2)Oの組成を有する平均粒径:0.8μmのサマリウムをドープしたセリア(以下、SDCという)SDC粉末を作製した。
【0016】
次に、得られたSDC粉末をエチレングリコールに、ポリビニルピロリドン、塩化ルテニウム、SDC粉末の順に添加し、撹拌したのちさらに温度を上げながら撹拌してルテニウム金属担持混合溶液を作製し、得られたルテニウム金属担持混合溶液を遠心分離により洗浄を繰り返し行い、ルテニウム金属を担持したSDC(以下、Ru担持SDCという)からなる本発明燃料極材料1のスラリーを作製した。
【0017】
この本発明燃料極材料1のスラリーを先に作製したランタンガレート系固体電解質板の一方の面にスクリーン印刷法により厚さ:30μmになるように塗布し乾燥したのち、空気中、1100℃に5時間加熱保持して、燃料極を成形・焼きつけた。
【0018】
さらに、酸化サマリウム、炭酸ストロンチウム、酸化コバルトのそれぞれ試薬級の粉体を用意し、(Sm0.5Sr0.5)CoOで示される組成となるよう秤量し、ボールミル混合の後、空気中、1000℃に3時間加熱保持し、得られた粉体をボールミルで微粉砕して、平均粒径1.1μmのサマリウムストロンチウムコバルタイト系空気極原料粉末を製造した。このサマリウムストロンチウムコバルタイト系空気極原料粉をトルエン-エタノール混合溶媒にポリビニルブチラルとフタル酸Nジオクチルを溶解した有機バインダー溶液と混合してスラリーを作製し、このスラリーをランタンガレート系固体電解質の燃料極と反対側の他方の面にスクリーン印刷法により厚さ:30μmになるように成形し乾燥したのち、空気中、1100℃に5時間加熱保持して、空気極を成形・焼きつけた。
【0019】
このようにして得られた固体電解質、燃料極および空気極からなる本発明固体電解質形燃料電池用発電セル(以下、本発明発電セルと言う)1を製造し、得られた本発明発電セル1の燃料極の上に厚さ1mmの多孔質ニッケルからなる燃料極集電体を積層し、一方、本発明発電セルの空気極の上に厚さ1.2mmの多孔質銀からなる空気極集電体を積層し、さらに前記燃料極集電体および空気極集電体の上にセパレータを積層することにより本発明固体電解質形燃料電池1を作製した。
従来例1
実施例1で作製したSDC粉末とNiO粉末を混合してスラリーを作製し、このスラリーを実施例1で作製したランタンガレート系固体電解質板の一方の面にスクリーン印刷法により厚さ:30μmになるように塗布し乾燥したのち、空気中、1100℃に5時間加熱保持してNiO粉末を混合したSDC(以下、Ni−SDCという)からなる燃料極を成形・焼きつける以外は実施例1と同様にして従来固体電解質形燃料電池1を作製した。
【0020】
このようにして得られた本発明固体電解質形燃料電池1および従来固体電解質形燃料電池1を用いて、次の条件で発電試験を実施した。
温度:750℃、
燃料ガス:水素(5%炭化水素含有)、
燃料ガス流量:0.34L/min(=3cc/nin/cm2)、
酸化剤ガス:空気、
酸化剤ガス流量:1.7L/min(=15cc/nin/cm2)、
の発電条件で発電させ、セル電圧、出力、出力密度および発電効率を測定し、その結果を表1に示した。
【0021】
【表1】

表1に示される結果から、本発明固体電解質形燃料電池1と従来固体電解質形燃料電池1とは、燃料極の構成が相違するのみで、その他の構成は同じであるが、Ru担持SDCを燃料極とした発電セルを有する本発明固体電解質形燃料電池1は、通常のNi−SDCを燃料極とした発電セルを有する従来固体電解質形燃料電池1と比べて、セル電圧、出力、出力密度、および発電効率がいずれも優れた値を示すことがわかる。
実施例2
さらに、0.5mol/Lの硝酸セリウム水溶液8部と0.5mol/Lの硝酸ガドリウム水溶液2部の混合水溶液に1molの水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら滴下し、酸化セリウムと酸化ガドリウムを共沈させ、ろ過したのち純水での攪拌・洗浄ろ過を6回繰り返して水洗し、酸化セリウムと酸化ガドリウムの共沈粉を作製し、これを空気中、温度:1000℃に3時間加熱保持して(Ce0.8Gd0.2)Oの組成を有する平均粒径:0.8μmのガドリウムをドープしたセリア(以下、GDCという)GDC粉末を作製した。
【0022】
次に、得られたGDC粉末をエチレングリコールに、ポリビニルピロリドン、塩化ルテニウム、GDC粉末の順に添加し、撹拌したのちさらに温度を上げながら撹拌してルテニウム金属担持混合溶液を作製し、得られたルテニウム金属担持混合溶液を遠心分離により洗浄を繰り返し行い、ルテニウム金属を担持したGDC(以下、Ru担持GDCという)からなる本発明燃料極材料2のスラリーを作製した。
【0023】
この本発明燃料極材料2のスラリーを実施例1で作製したランタンガレート系固体電解質板の一方の面にスクリーン印刷法により厚さ:30μmになるように塗布し乾燥したのち、空気中、1100℃に5時間加熱保持して、燃料極を成形・焼きつける以外は実施例1と同様にして本発明発電セル2を作製し、この本発明発電セル2を用いて本発明固体電解質形燃料電池2を作製した。
従来例2
実施例2で作製したGDC粉末とNiO粉末を混合してスラリーを作製し、このスラリーを実施例1で作製したランタンガレート系固体電解質板の一方の面にスクリーン印刷法により厚さ:30μmになるように塗布し乾燥したのち、空気中、1100℃に5時間加熱保持してNiO粉末を混合したGDC(以下、Ni−GDCという)からなる燃料極を成形・焼き付ける以外は実施例1と同様にして従来発電セル2を作製し、この従来発電セル2を用いて従来固体電解質形燃料電池2を作製した。
【0024】
このようにして得られた本発明固体電解質形燃料電池2および従来固体電解質形燃料電池2を用いて、実施例1と同じ条件で発電試験を実施し、セル電圧、出力、出力密度および発電効率を測定し、その結果を表2に示した。
【0025】
【表2】

表2に示される結果から、本発明固体電解質形燃料電池2と従来固体電解質形燃料電池2とは、燃料極の構成が相違するのみで、その他の構成は同じであるが、Ru担持GDCを燃料極とした発電セルを有する本発明固体電解質形燃料電池2は、通常のNi−GDCを燃料極とした発電セルを有する従来固体電解質形燃料電池2と比べて、セル電圧、出力、出力密度、および発電効率がいずれも優れた値を示すことがわかる。
実施例3
さらに、0.5mol/Lの硝酸セリウム水溶液8部と0.5mol/Lの硝酸ランタン水溶液2部の混合水溶液に1molの水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら滴下し、酸化セリウムと酸化ランタンを共沈させ、ろ過したのち純水での攪拌・洗浄ろ過を6回繰り返して水洗し、酸化セリウムと酸化ランタンの共沈粉を作製し、これを空気中、温度:1000℃に3時間加熱保持して(Ce0.8La0.2)Oの組成を有する平均粒径:0.8μmのランタンをドープしたセリア(以下、LDCという)LDC粉末を作製した。
【0026】
次に、得られたLDC粉末をエチレングリコールに、ポリビニルピロリドン、塩化ルテニウム、LDC粉末の順に添加し、撹拌したのちさらに温度を上げながら撹拌してルテニウム金属担持混合溶液を作製し、得られたルテニウム金属担持混合溶液を遠心分離により洗浄を繰り返し行い、ルテニウム金属を担持したLDC(以下、Ru担持LDCという)からなる本発明燃料極材料3のスラリーを作製した。
【0027】
この本発明燃料極材料3のスラリーを実施例1で作製したランタンガレート系固体電解質板の一方の面にスクリーン印刷法により厚さ:30μmになるように塗布し乾燥したのち、空気中、1100℃に5時間加熱保持して、燃料極を成形・焼き付ける以外は実施例1と同様にして本発明発電セル3を作製し、この本発明発電セル3を用いて本発明固体電解質形燃料電池3を作製した。
従来例3
実施例3で作製したLDC粉末とNiO粉末を混合してスラリーを作製し、このスラリーを実施例1で作製したランタンガレート系固体電解質板の一方の面にスクリーン印刷法により厚さ:30μmになるように塗布し乾燥したのち、空気中、1100℃に5時間加熱保持してNiO粉末を混合したLDC(以下、Ni−LDCという)からなる燃料極を成形・焼きつける以外は実施例1と同様にして従来発電セル3を作製し、この本発明発電セル3を用いて従来固体電解質形燃料電池3を作製した。
【0028】
このようにして得られた本発明固体電解質形燃料電池3および従来固体電解質形燃料電池3を用いて、実施例1と同じ条件で発電試験を実施し、セル電圧、出力、出力密度および発電効率を測定し、その結果を表3に示した。
【0029】
【表3】

表3に示される結果から、本発明固体電解質形燃料電池3と従来固体電解質形燃料電池3とは、燃料極の構成が相違するのみで、その他の構成は同じであるが、Ru担持LDCを燃料極とした発電セルを有する本発明固体電解質形燃料電池3は、通常のNi−LDCを燃料極とした発電セルを有する従来固体電解質形燃料電池3と比べて、セル電圧、出力、出力密度、および発電効率がいずれも優れた値を示すことがわかる。
実施例4
さらに、0.5mol/Lの硝酸セリウム水溶液8部と0.5mol/Lの硝酸イットリウム水溶液2部の混合水溶液に1molの水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら滴下し、酸化セリウムと酸化イットリウムを共沈させ、ろ過したのち純水での攪拌・洗浄ろ過を6回繰り返して水洗し、酸化セリウムと酸化イットリウムの共沈粉を作製し、これを空気中、温度:1000℃に3時間加熱保持して(Ce0.80.2)Oの組成を有する平均粒径:0.8μmのイットリウムをドープしたセリア(以下、YDCという)YDC粉末を作製した。
【0030】
次に、得られたYDC粉末をエチレングリコールに、ポリビニルピロリドン、塩化ルテニウム、YDC粉末の順に添加し、撹拌したのちさらに温度を上げながら撹拌してルテニウム金属担持混合溶液を作製し、得られたルテニウム金属担持混合溶液を遠心分離により洗浄を繰り返し行い、ルテニウム金属を担持したYDC(以下、Ru担持YDCという)からなる本発明燃料極材料4のスラリーを作製した。
【0031】
この本発明燃料極材料4のスラリーを実施例1で作製したランタンガレート系固体電解質板の一方の面にスクリーン印刷法により厚さ:30μmになるように塗布し乾燥したのち、空気中、1100℃に5時間加熱保持して、燃料極を成形・焼きつける以外は実施例1と同様にして本発明発電セル4を作製し、この本発明発電セル4を用いて本発明固体電解質形燃料電池4を作製した。
従来例4
実施例4で作製したYDC粉末とNiO粉末を混合してスラリーを作製し、このスラリーを実施例1で作製したランタンガレート系固体電解質板の一方の面にスクリーン印刷法により厚さ:30μmになるように塗布し乾燥したのち、空気中、1100℃に5時間加熱保持してNiO粉末を混合したYDC(以下、Ni−YDCという)からなる燃料極を成形・焼きつける以外は実施例1と同様にして従来発電セル4を作製し、この従来発電セル4を用いて従来固体電解質形燃料電池4を作製した。
【0032】
このようにして得られた本発明固体電解質形燃料電池4および従来固体電解質形燃料電池4を用いて、実施例1と同じ条件で発電試験を実施し、セル電圧、出力、出力密度および発電効率を測定し、その結果を表4に示した。
【0033】
【表4】

表4に示される結果から、本発明固体電解質形燃料電池4と従来固体電解質形燃料電池4とは、燃料極の構成が相違するのみで、その他の構成は同じであるが、Ru担持YDCを燃料極とした発電セルを有する本発明固体電解質形燃料電池4は、通常のNi−YDCを燃料極とした発電セルを有する従来固体電解質形燃料電池4と比べて、セル電圧、出力、出力密度、および発電効率がいずれも優れた値を示すことがわかる。
実施例5
さらに、0.5mol/Lの硝酸セリウム水溶液8部と0.5mol/Lの硝酸カルシウム水溶液2部の混合水溶液に1molの水酸化ナトリウム水溶液を攪拌しながら滴下し、酸化セリウムと酸化カルシウムを共沈させ、ろ過したのち純水での攪拌・洗浄ろ過を6回繰り返して水洗し、酸化セリウムと酸化カルシウムの共沈粉を作製し、これを空気中、温度:1000℃に3時間加熱保持して(Ce0.8Ca0.2)Oの組成を有する平均粒径:0.8μmのカルシウムをドープしたセリア(以下、CDCという)CDC粉末を作製した。
【0034】
次に、得られたCDC粉末をエチレングリコールに、ポリビニルピロリドン、塩化ルテニウム、CDC粉末の順に添加し、撹拌したのちさらに温度を上げながら撹拌してルテニウム金属担持混合溶液を作製し、得られたルテニウム金属担持混合溶液を遠心分離により洗浄を繰り返し行い、ルテニウム金属を担持したCDC(以下、Ru担持CDCという)からなる本発明燃料極材料5のスラリーを作製した。
【0035】
この本発明燃料極材料5のスラリーを実施例1で作製したランタンガレート系固体電解質板の一方の面にスクリーン印刷法により厚さ:30μmになるように塗布し乾燥したのち、空気中、1100℃に5時間加熱保持して、燃料極を成形・焼きつける以外は実施例1と同様にして本発明発電セル5を作製し、この本発明発電セル5を用いて本発明固体電解質形燃料電池5を作製した。
従来例5
実施例5で作製したCDC粉末とNiO粉末を混合してスラリーを作製し、このスラリーを実施例1で作製したランタンガレート系固体電解質板の一方の面にスクリーン印刷法により厚さ:30μmになるように塗布し乾燥したのち、空気中、1100℃に5時間加熱保持してNiO粉末を混合したCDC(以下、Ni−CDCという)からなる燃料極を成形・焼きつける以外は実施例1と同様にして従来発電セル5を作製し、この従来発電セル5を用いて従来固体電解質形燃料電池5を作製した。
【0036】
このようにして得られた本発明固体電解質形燃料電池5および従来固体電解質形燃料電池5を用いて、実施例1と同じ条件で発電試験を実施し、セル電圧、出力、出力密度および発電効率を測定し、その結果を表5に示した。
【0037】
【表5】

表5に示される結果から、本発明固体電解質形燃料電池5と従来固体電解質形燃料電池5とは、燃料極の構成が相違するのみで、その他の構成は同じであるが、Ru担持CDCを燃料極とした発電セルを有する本発明固体電解質形燃料電池5は、通常のNi−CDCを燃料極とした発電セルを有する従来固体電解質形燃料電池5と比べて、セル電圧、出力、出力密度、および発電効率がいずれも優れた値を示すことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:Ce1−m(式中、BはSm、Gd、La、Y、Caの1種または2種以上、mは0<m≦0.4)で表されるBドープしたセリアにルテニウム金属を担持させてなることを特徴とする固体電解質形燃料電池用発電セルにおける燃料極を構成する燃料極材料。
【請求項2】
ランタンガレード系酸化物イオン伝導体を固体電解質とし、前記固体電解質の一方の面に空気極が形成され、他方の面に燃料極が成形された固体電解質形燃料電池用発電セルにおいて、
前記燃料極は、一般式:Ce1−m(式中、BはSm、Gd、La、Y、Caの1種または2種以上、mは0<m≦0.4)で表されるBドープしたセリアにルテニウム金属を担持させてなる燃料極材料で構成されていることを特徴とする固体電解質形燃料電池用発電セル。
【請求項3】
請求項2記載の固体電解質形燃料電池用発電セルを組み込んだ固体電解質形燃料電池。

【公開番号】特開2007−213890(P2007−213890A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30733(P2006−30733)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】