説明

固化処理装置及び固化処理工法

【課題】底質土面に不陸があってもそれに追従して汚染浮泥層のみを確実に固化処理することのできる固化処理装置及び固化処理工法を提供する。
【解決手段】ノズル14の上方に上ストッパー9が、ノズル14の下方直近に下ストッパー10が設けられており、上ストッパー9及び下ストッパー10間をロッド2に沿って移動可能に覆い部材8が設けられている。覆い部材8は、円形板状の頂壁部21と、頂壁部21の外縁21aから頂壁部21に対して垂直下方に延びる円筒状の鍔部22とを備えている。頂壁部21には、その中心部にロッド2が貫通する開口25が設けられており、開口25の周縁に円筒状の案内筒24が設けられている。ロッド2は、案内筒24内に隙間18を有しながら挿入される。案内筒24は、上ストッパー9内の空間17に隙間19を有しながら挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固化処理装置及び固化処理工法に係り、特に、河川、海域等において、河床部に堆積するダイオキシン類等の有害物質を含んだ汚染浮泥層を固化処理する固化処理装置及び固化処理工法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、海域等において、河床部に堆積した汚染浮泥層の表面(以下、底質土面と称する)に堆積するダイオキシン類等の有害物質の鉛直分布は、底質土面から30〜50cm程度までに限定されていることが、非特許文献1に記載されている。この底質土面に堆積するダイオキシン類への対策として、平成16年3月に、国土交通省港湾局が「港湾における底質ダイオキシン類対策指針」を取り纏め、ダイオキシン類の間接摂取を遮断するための対策として、浚渫・掘削除去、覆砂工法、原位置固化処理の3工法が提案されている。浚渫・掘削除去については、浚渫対象の汚染浮泥層が高含水比で浚渫・掘削が困難であるばかりでなく、たとえ掘削除去しても周辺から再度流入してくるため完全除去が困難であり、また、浚渫時の水中へ汚染浮泥層の拡散による水中汚濁が避けられないという問題がある。覆砂工法については、砂を汚染浮泥層表面に敷く際に砂のめりこみや、汚染浮泥層の拡散が生じるという問題がある。原位置固化処理については、従来のヘドロ等固化処理は対象区域を締め切り、水を汲み出して、所謂ドライ状態で固化処理を行うドライ施工と、締め切りをせずにそのまま固化処理を行う所謂水中施工がある。ドライ施工は締め切り、水処理の費用が大きく非経済的になる場合が多い。また、海域等では事実上不可能なこともある。水中施工は、従来セメント系固化材スラリーを用いた機械撹拌又は高圧噴射撹拌で、汚染浮泥層の拡散が避けられず、その固化処理の汚染浮泥層表面から50cm程度は、水分が過剰となり水流による固化処理表面の乱れ等により固化しにくく、本対策で固化処理の対象となっているまさにその対象層が固化しにくいという欠点を抱えている。これら3工法の中で、水中施工による固化処理工法については、河床ヘドロの悪臭防止目的での固化処理等において、浮泥の拡散を少なくするための拡散防止カバーを撹拌ロッドに取り付けヘドロ固化処理を行う工法が特許文献1に記載されている。
【0003】
【非特許文献1】独立行政法人土木研究所 社団法人底質浄化協会、「平成13年度ダイオキシン類に汚染された底質の処理技術に関する検討業務報告書」、平成14年2月、第1編、p.24
【特許文献1】特開2003−286716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の固化処理工法では、水中への浮泥の拡散が押さえられるとはいえ、河床部表面までの均質な固化はできず、本目的のダイオキシン類等の有害物質を含む薄層の汚染浮泥層を、十分に固化処理できないといった問題点があった。また、汚染浮泥層の底質土面に不陸がある場合には、汚染浮泥層の撹拌ロッドに対する貫入抵抗が小さいため、固化対象区域のある地点で底質土面から固化対象層厚を設定してロッド残尺で固化処理厚を施工管理しようとしても、他の場所では固化対象の汚染浮泥層の位置や層厚が変化して未固化層を残す可能性や固化対象層以外の部分を固化処理してしまうおそれがある。つまり、不陸のある有害汚染浮泥層の層厚は、撹拌ロッドの貫入抵抗から知ることができないので汚染浮泥層のみの確実な固化処理ができないといった問題点もあった。
【0005】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、底質土面に不陸があってもそれに追従して汚染浮泥層のみを確実に固化処理することのできる固化処理装置及び固化処理工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る固化処理装置は、ロッドを貫入し、所定の深度になったら硬化材をロッドの先端側にあるノズルから高圧で噴射しつつ、ロッドを回転させながら引き上げて、河床部に堆積する汚染浮泥層を固化処理する、噴射攪拌工法に使用する固化処理装置において、ロッドが貫通すると共にロッドに対して不陸に追従可能な頂壁部及び頂壁部の外縁から下方に向かって延びる鍔部を有し、ロッドに沿って移動可能な覆い部材と、ロッド下部のノズルの上部に、上下2箇所に設けられ、ロッドの軸方向に対する覆い部材の上下の移動間隔を、計画固化処理厚に設定可能な可動式のストッパーとを備え、固化処理が計画されている汚染浮泥層が、不陸のある河床部に堆積している場合には、覆い部材は、頂壁部が汚染浮泥層の底質土面の不陸に追従できるように、着底することを特徴とする。
また、この発明に係る別の固化処理装置は、ロッドを貫入し、所定の深度になったら硬化材をロッドの先端側にある吐出管から吐出しつつ、ロッドの先端側に設けられた攪拌翼を回転させながら引き上げて、河床部に堆積する汚染浮泥層を攪拌しながら固化処理する、機械攪拌工法に使用する固化処理装置において、ロッドが貫通すると共にロッドに対して不陸に追従可能な頂壁部及び頂壁部の外縁から下方に向かって延びる鍔部を有し、攪拌翼を覆いながらロッドに沿って移動可能な覆い部材と、ロッド下部の吐出管の上部に、上下2箇所に設けられ、ロッドの軸方向に対する覆い部材の上下の移動間隔を、計画固化処理厚に設定可能な可動式のストッパーとを備え、固化処理が計画されている汚染浮泥層が不陸のある河床部に堆積している場合には、覆い部材は、頂壁部が汚染浮泥層の底質土面の不陸に追従できるように、着底することを特徴とする。
【0007】
この発明に係る固化処理工法は、河床部に堆積する汚染浮泥層の少なくとも一部を、汚染浮泥層の底質土面から所定深度に渡って囲う覆い部材と、先端側から硬化材を噴射または吐出するロッドとを備える固化処理装置を用いて、汚染浮泥層を固化処理する固化処理工法であって、ロッドの軸方向に対する覆い部材の上下の移動間隔を、計画固化処理厚に設定し、覆い部材を底質土面に面するように覆い部材を装着したロッドを下降させ、ロッドを汚染浮泥層内に貫入させて、覆い部材に、底質土面から所定深度に渡って汚染浮泥層の少なくとも一部を囲わせる工程と、ロッドを引き上げながら、覆い部材の内部に硬化材を噴射または吐出することにより、汚染浮泥の改良体を造成する工程と、覆い部材及びロッドを、汚染浮泥層から引き上げる工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、河床部に堆積する汚染浮泥層を固化処理する噴射攪拌工法または機械攪拌工法に使用する固化処理装置において、不陸のある河床部に堆積する汚染浮泥層を固化処理する際に、覆い部材は、頂壁部が汚染浮泥層の底質土面に面するようにロッドに対して不陸に追従しながら底質土面に着底するので、底質土面に不陸があっても、それに追従して汚染浮泥層のみを確実に固化処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
この実施の形態1に係る固化処理装置を図1に示す。この固化処理装置は、噴射攪拌工法に用いられる固化処理装置である。図1に示されるように、固化処理機1は、一般的なボーリングマシン等の小型施工機械である。固化処理機1は、水面13上の台船6に搭載されており、台船6の移動に伴って水面13上を移動可能となっている。また、固化処理機1は、駆動装置5により回転動及び上下動自在に駆動するスピンドル3を備えている。スピンドル3の下端部にはチャック4が取り付けられており、このチャック4にロッド2が鉛直方向に装着されている。このロッド2の上端は、スイベル7を介して図示しない硬化材製造プラントに接続されている。ロッド2の下端は、ダイオキシン類等の有害物質が堆積する底質土面12を有する汚染浮泥層11及び汚染浮泥層11が堆積する河床部16に対して容易に貫入できるように、尖った形状になっている。また、ロッド2の下端付近には、硬化材製造プラントからロッド2へ供給された硬化材が、高圧で噴射されるノズル14が設けられている。ノズル14の上方に上ストッパー9が、ノズル14の下方直近に下ストッパー10がそれぞれ設けられており、上ストッパー9及び下ストッパー10間をロッド2に沿って移動可能に覆い部材8が設けられている。ここで、上ストッパー9及び下ストッパー10はストッパーを構成する。
【0010】
図2及び3に示されるように、覆い部材8は、円形板状の頂壁部21と、頂壁部21の外縁21aから頂壁部21に対して垂直下方に延びる円筒状の鍔部22とを備えている。頂壁部21には、その中心部にロッド2が貫通する開口25が設けられており、開口25の周縁から頂壁部21に対して垂直上方に延びる円筒状の案内筒24が設けられている。ロッド2は、案内筒24内に隙間18を有しながら挿入するように設けられている。また、鍔部22の長さは、上ストッパー9及び下ストッパー10間の距離よりも5〜10cm程度長くなっている。
頂壁部21及び鍔部22は、2つの半円状分割体8a,8bに分割されており、それぞれはヒンジ26によって、それぞれに対して回動可能に連結されている。また、半円状分割体8a,8bのそれぞれには、取手23が設けられている。
【0011】
この実施の形態1の噴射撹拌工法において、ロッド2は単管ロッドを用い、硬化材にはセメント系固化材スラリーを水固化材比1.0として用いている。この硬化材は、混合撹拌直後は強度発現がなく、一軸圧縮強さが5〜30kN/m程度に達するまでに、1〜2日程度を要する。この程度の強度であれば、覆い部材8の鍔部22が自重により貫入できる。河川等で汚染浮泥層表面が洗われる程度の流速がある場合には、二液性のゲルタイムの短い硬化材を使用することもある。
【0012】
ノズル14の下方直近に設けられた下ストッパー10は、ロッド2に対して垂直に交差するように設けられた円柱状部材である。ノズル14の上方に設けられた上ストッパー9は、L字状で断面が矩形の方形部材9aがロッド2に放射状に4つ設けられ、それぞれの方形部材9aの先端9bが頂壁部21に対向するように構成されたものである。これら4つの方形部材9aによって囲まれた空間17内には、覆い部材8がロッド2に沿って上方に移動するときに、案内筒24が4つの方形部材9aのそれぞれとの間に隙間19を有しながら挿入される。
【0013】
ロッド2は、案内筒24の内周面との間に隙間18を有しながら案内筒24内に挿入されることより、案内筒24内でロッド2は不陸に追従することができる。また、案内筒24は、4つの方形部材のそれぞれとの間に隙間19を有しながら空間17内に挿入されることより、空間17内で案内筒24は不陸に追従することができる。このような構成により、頂壁部21はロッド2に対して不陸に追従可能となっている。すなわち、覆い部材8はロッド2に対して不陸に追従可能となっている。
【0014】
次に、この実施の形態1に係る固化処理装置を用いて、河床部に堆積する汚染浮泥層を固化処理する方法を、図4に基づいて説明する。
まず、ロッド2に設けられた上ストッパー9及び下ストッパー10間の距離を、固化処理する汚染浮泥層11の厚さ、すなわち計画固化処理厚に調整する。また、ロープ27の一端を一方の取手23に接続し、ロープ27の他端を固化処理機1に接続する。図4(a)に示されるように、ロッド2を下方に移動させ、覆い部材8を静かに水中に沈める。このとき覆い部材8は、下ストッパー10に支えられた状態になっている。覆い部材8の鍔部22の先端が底質土面12に達すると、自重で鍔部22が汚染浮泥層11内を沈降する。図4(b)に示されるように、頂壁部21が底質土面12に着底すると、鍔部22の汚染浮泥層11内における沈降は停止する。これにより、覆い部材8は、底質土面12から鍔部22の長さに相当する所定深度に渡り、汚染浮泥層の一部を囲うようになる。その後、上ストッパー9が頂壁部21に当たるまで、ロッド2を汚染浮泥層11内に貫入させる。次に、図4(c)に示されるように、ノズル14から硬化材30を噴射しながらロッド2の回転・引き上げを行う。この際、ノズル14から噴射する硬化材30は、鍔部22によって汚染浮泥層11内における拡散が防止される。図4(d)に示されるように、下ストッパー10が頂壁部21に当たるのを確認したら、硬化材30の噴射を停止する。噴射された硬化材30が固化することにより、覆い部材8の内部に、改良体31が造成される。続いて図4(e)に示されるように、ロープ27を引き上げることにより、半円状分割体8aを上方に回動させる。これにより、改良体31と頂壁部21との間に水が浸入するので、覆い部材8を引き上げやすくなる。その後、図4(f)に示されるように、ロッド2を上昇させて汚染浮泥層11から覆い部材8を取り除くと、汚染浮泥層11内に円柱状の改良体31が残される。図4(g)に示されるように、台船6(図1参照)を移動させることにより、ロッド2を隣接する固化処理区域に移動する。この際、新たな固化処理区域は、改良体31と重複する重複部分32を有するように位置決めされる。以上の動作を繰り返すことによって、汚染浮泥層11が固化処理される。
【0015】
これまでは、汚染浮泥層11が平坦な場合を例にとって、汚染浮泥層11を固化処理する方法を説明してきたが、実際には汚染浮泥層11は平坦であるとは限らない。むしろ、不陸が多く、不陸のある汚染浮泥層11を固化処理する場合も多い。そこで、次に、この実施の形態1に係る固化処理装置を用いて、不陸のある汚染浮泥層11を固化処理する方法を図5に基づいて説明する。
【0016】
図5に示されるように、汚染浮泥層11が不陸をなしている場合、底質土面12も不陸をなしているため、ロッド2を下方に移動させて覆い部材8を静かに水中に沈めていくと、覆い部材8の鍔部22の端部22aは、底質土面12に対して均等に接しないで、不陸面上方側の鍔部の端部が先に底質土面12に接する。すると、鍔部22は、汚染浮泥層11における沈降よりも水中における沈降のほうが速いので、覆い部材8は、ロッド2対して不陸に追従するようになる。これにより、図5に示されるように、頂壁部21が底質土面12に面するようにして、鍔部22が汚染浮泥層11内を沈降する。最終的に、不陸をなす底質土面12に頂壁部21が着底すると、鍔部22の汚染浮泥層11内における沈降が停止する。
この後の固化処理方法は、図4(c)〜(g)と同様で、ノズル14から硬化材30を噴射しながらロッド2の回転・引き上げを行い、覆い部材8の内部に改良体を造成する。その後、ロッド2を上昇させて覆い部材8を汚染浮泥層11から取り除き、隣接する固化処理区域に同様の方法で改良体を造成することにより、不陸をなす汚染浮泥層11が固化処理される。
【0017】
このように、覆い部材8がロッド2に沿って移動可能であると共にロッド2に対して不陸に追従可能であるので、不陸をなす河床部16に堆積する汚染浮泥層11を固化処理する場合でも、頂壁部21を底質土面12に面するようにさせて、鍔部22が汚染浮泥層11内を沈降するので、汚染浮泥層11内に改良体31を造成することができる。すなわち、底質土面12に不陸があってもそれに追従して汚染浮泥層11のみを確実に固化処理することができる。また、固化処理にあたり、ノズル14から噴射される硬化材は、鍔部22によって汚染浮泥層11内に拡散するのを防止されるので、浮泥の拡散が最小限に抑えられて、水質環境保全に大きな効果がある。
【0018】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る固化処理装置を、図6及び7に基づいて説明する。尚、以下の実施の形態において、図1〜5の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
この実施の形態2に係る固化処理装置は、機械攪拌工法に使用する固化処理装置である。図6に示されるように、ロッド2の下端付近には、攪拌翼40が設けられている。攪拌翼40には、硬化材を吐出する吐出管42が設けられている。攪拌翼40の上方直近に、下ストッパー10が設けられている。覆い部材8は、攪拌翼40の回転軌跡を完全にカバーできる大きさになっている。その他の構成については、実施の形態1と同じである。
【0019】
次に、この実施の形態2に係る固化処理装置を用いて、河床部に堆積する汚染浮泥層を固化処理する方法を、図7に基づいて説明する。
まず、ロッド2に設けられた上ストッパー9及び下ストッパー10間の距離を固化処理する汚染浮泥層11の厚さに合わせる。図7(a)に示されるように、ロッド2を下方に移動させ、覆い部材8を静かに水中に沈める。このとき覆い部材8は、下ストッパー10に支えられた状態になっている。覆い部材8の鍔部22の先端が底質土面12に達すると、自重で鍔部22が汚染浮泥層11内を下降する。図7(b)に示されるように、頂壁部21が底質土面12に着底すると、鍔部22の汚染浮泥層11内における沈降は停止する。その後、上ストッパー9が頂壁部21に当たるまで、ロッド2を汚染浮泥層11内にさせる。次に、図7(c)に示されるように、ロッド2の回転・引き上げを行うことにより、攪拌翼40を回転させながら上昇させる。この際、吐出管42から硬化材を吐出する。これにより、覆い部材8の内部では、攪拌翼40によって硬化材が攪拌され、円柱状の改良体50が造成されていく。図7(d)に示されるように、下ストッパー10が頂壁部21に当たるのを確認したら、硬化材の吐出を停止する。その後は、実施の形態1と同様の方法で、隣接する固化処理区域に改良体を造成することにより、汚染浮泥層11が固化処理される。
【0020】
また、実施の形態2に係る固化処理装置も、実施の形態1と同様に、覆い部材8がロッド2に沿って移動可能であると共にロッド2に対して不陸に追従可能である。したがって、実施の形態1と同様に、覆い部材8をロッド2に対して不陸に追従させた状態で、鍔部22が汚染浮泥層11内を下降することにより、頂壁部21が不陸に追従する底質土面12に着底する。次に、図7(b)〜(d)に示された方法で、覆い部材8の内部を攪拌翼40で攪拌しながら、吐出管42より硬化材を吐出して、改良体50を造成する。その後は、図4(c)〜(g)に示された方法で、ロッド2を上昇させて覆い部材8を汚染浮泥層11から取り除き、隣接する固化処理区域に同様の方法で改良体を造成することにより、不陸をなす汚染浮泥層11が固化処理される。
【0021】
これにより、実施の形態1と同様に、底質土面12に不陸があってもそれに追従して汚染浮泥層11のみを確実に固化処理することができ、さらに固化処理を行う際の水質環境保全に大きな効果がある。
【0022】
実施の形態1及び2では、頂壁部21は円形状であるが、この形状に限定するものではない。汚染浮泥層11を実質的に覆うことができるのであれば、四角形状や多角形状であってもよい。
【0023】
実施の形態1及び2では、硬化材としてセメント系固化材を用いたが、これに限定するものではない。セメントスラリーや二液性硬化材を、硬化材として使用してもよい。使用するロッドは、単管ロッドでも二重管ロッドでも硬化材の特性に合わせて選択して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施の形態1に係る固化処理装置の全体図である。
【図2】実施の形態1に係る固化処理装置の一部分の拡大側面図である。
【図3】実施の形態1に係る固化処理装置の覆い部材の平面図である。
【図4】実施の形態1に係る固化処理装置を用いて、汚染浮泥層を固化処理する方法を説明するための図である。
【図5】実施の形態1に係る固化処理装置を用い、不陸をなす汚染浮泥層を固化処理している状態の図である。
【図6】実施の形態2に係る固化処理装置の一部分の拡大側面図である。
【図7】実施の形態2に係る固化処理装置を用いて、汚染浮泥層を固化処理する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0025】
1 固化処理機、2 ロッド、8 覆い部材、9 上ストッパー(ストッパー)、10 下ストッパー(ストッパー)、11 汚染浮泥層、12 底質土面、14 ノズル、16 河床部、21 頂壁部、21a (頂壁部21の)外縁、22 鍔部、25 開口、30 硬化材、40 攪拌翼、42 吐出管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドを貫入し、所定の深度になったら硬化材を前記ロッドの先端側にあるノズルから高圧で噴射しつつ、前記ロッドを回転させながら引き上げて、河床部に堆積する汚染浮泥層を固化処理する、噴射攪拌工法に使用する固化処理装置において、
前記ロッドが貫通すると共に前記ロッドに対して不陸に追従可能な頂壁部及び前記頂壁部の外縁から下方に向かって延びる鍔部を有し、前記ロッドに沿って移動可能な覆い部材と、
前記ロッド下部の前記ノズルの上部に、上下2箇所に設けられ、前記ロッドの軸方向に対する前記覆い部材の上下の移動間隔を、計画固化処理厚に設定可能な可動式のストッパーと
を備え、
固化処理が計画されている汚染浮泥層が、不陸のある河床部に堆積している場合には、前記覆い部材は、前記頂壁部が前記汚染浮泥層の底質土面の不陸に追従できるように、着底することを特徴とする固化処理装置。
【請求項2】
ロッドを貫入し、所定の深度になったら硬化材を前記ロッドの先端側にある吐出管から吐出しつつ、前記ロッドの先端側に設けられた攪拌翼を回転させながら引き上げて、河床部に堆積する汚染浮泥層を攪拌しながら固化処理する、機械攪拌工法に使用する固化処理装置において、
前記ロッドが貫通すると共に前記ロッドに対して不陸に追従可能な頂壁部及び前記頂壁部の外縁から下方に向かって延びる鍔部を有し、前記攪拌翼を覆いながら前記ロッドに沿って移動可能な覆い部材と、
前記ロッド下部の前記吐出管の上部に、上下2箇所に設けられ、前記ロッドの軸方向に対する前記覆い部材の上下の移動間隔を、計画固化処理厚に設定可能な可動式のストッパーと
を備え、
固化処理が計画されている汚染浮泥層が不陸のある河床部に堆積している場合には、前記覆い部材は、前記頂壁部が前記汚染浮泥層の底質土面の不陸に追従できるように、着底することを特徴とする固化処理装置。
【請求項3】
河床部に堆積する汚染浮泥層の少なくとも一部を、前記汚染浮泥層の底質土面から所定深度に渡って囲う覆い部材と、先端側から硬化材を噴射または吐出するロッドとを備える固化処理装置を用いて、前記汚染浮泥層を固化処理する固化処理工法であって、
前記ロッドの軸方向に対する前記覆い部材の上下の移動間隔を、計画固化処理厚に設定し、前記覆い部材を前記底質土面に面するように前記覆い部材を装着した前記ロッドを下降させ、前記ロッドを前記汚染浮泥層内に貫入させて、前記覆い部材に、前記底質土面から所定深度に渡って前記汚染浮泥層の少なくとも一部を囲わせる工程と、
前記ロッドを引き上げながら、前記覆い部材の内部に硬化材を噴射または吐出することにより、汚染浮泥の改良体を造成する工程と、
前記覆い部材及び前記ロッドを、前記汚染浮泥層から引き上げる工程と
を備えることを特徴とする固化処理工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−225971(P2006−225971A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40574(P2005−40574)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000185972)小野田ケミコ株式会社 (58)
【Fターム(参考)】