説明

固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体及びその組立方法、固定子水冷式発電機

【課題】設置後の固定子巻き替え作業を含む保守点検作業の容易化を図ったうえで、作業工期短縮化を図り得るようにすることにある。
【解決手段】固定子水冷式発電機用上及び下コイル13,14に銅材料以外の金属材料製の雌ねじ部131,141を設け、この上及び下コイル13,14を連結する第1及び第2の接続銅帯11,12に銅材料以外の金属材料製のねじ構造を有した第1及び第2の雄ねじ部112,122及び113,123を設け、相互間を螺合結合すると共に、第1及び第2の接続銅帯11,12を固定部材15で位置決め固定することにより上及び下コイル13,14を配管接続するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、固定子水冷式発電機の上及び下コイルを接続する上・下コイル接続導体及びその組立方法と、該上・下コイル接続導体を用いる固定子水冷式発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、固定子水冷式発電機は、固定子である銅製の上コイルと下コイルにそれぞれ冷却水通路が形成され、この冷却水通路内に冷却水が循環供給されて温度制御されている。この上及び下コイルは、例えば冷却水通路の形成された連結部材を介して相互の冷却水通路が連通された状態で、ろう付け加工により相互間が所望の機械的強度を有して電気的に配管接続される。
【0003】
この連結部材は、発電機駆動時、上及び下コイルを介して通電されるために、銅材料で形成されて所望の電気特性が要求され、その冷却水路には、冷却水源に接続された絶縁ホースが配管接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−355990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような固定子水冷式発電機は、固定子の巻き替え作業と称する保守作業が、設置場所において行われる。この巻き替え作業は、ろう付け箇所をバーナー等を用いて加熱して連結部材を上及び下コイルから取外し、上及び下コイルを巻き替えた後、再び、ろう付け処理により連結部材が配管接続される。
【0006】
しかしながら、上記ろう付け処理を施す配管接続構成では、巻き替え作業の度に、設置場所で、ろう付け箇所をバーナー等で800℃程度の高温に炙って、相互間のろう付けを外して、巻き替えを行い、その後、ろう付け処理を行わなければならないために、その作業が非常に面倒なものとなっている。また、ろう付け箇所を離脱させる際、高温に加熱しなければならないために、上及び下コイルの絶縁被覆材を損傷しないように、養生を行ったり作業環境を整える必要があり、その準備作業が面倒となっている。
【0007】
本発明の実施形態は上記課題を解決するためのものであり、設置後の固定子巻き替え作業を含む保守点検作業の容易化を図ったうえで、その作業工期短縮化を図り得るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態によれば、固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体は、固定子水冷式発電機用上及び下コイルと、第1の接続銅帯と、第2の接続銅帯と、固定手段と、外部接続管とで構成される。
【0009】
固定子水冷式発電機用上及び下コイルは、銅材料で形成され、雄ねじあるいは雌ねじのいずれか一方で形成される冷却水通路が穿設された接続部が銅材料以外の金属材料で設けられる。
【0010】
第1の接続銅帯は、前記上及び下コイルの前記接続部に螺合される雄ねじあるいは雌ねじのいずれか他方で形成され、且つ、前記上及び下コイルの一方の接続部に螺合される銅材料以外の金属材料製のコイル接続部及び外部接続部が設けられる。コイル接続部及び外部接続部は、上及び下コイルの一方の冷却水通路に連通される冷却水通路が穿設される。
【0011】
第2の接続銅帯は、前記上及び下コイルの前記接続部に螺合される雄ねじあるいは雌ねじのいずれか他方で形成され、前記上及び下コイルの他方の接続部に螺合される銅材料以外の金属材料製のコイル接続部及び外部接続部が設けられる。コイル接続部及び外部接続部は、上及び下コイルの他方の冷却水通路に連通される冷却水通路が穿設される。
【0012】
固定手段は、前記第1の接続銅帯のコイル接続部が前記上及び下コイルの接続部の一方に螺合され、前記第2の接続銅帯のコイル接続部が前記上及び下コイルの接続部の他方に螺合された状態で、前記第1の接続銅帯と前記第2の接続銅帯とを固定する。
【0013】
外部接続管は、前記第1及び第2の接続銅帯の外部接続部に螺合される前記雄ねじあるいは雌ねじのいずれか一方で形成された接続部が回転自在に設けられる。接続部では、冷却水を前記上及び下コイルに循環供給する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施の形態に係る固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体の分離状態を示した図である。
【図2】他の実施の形態に係る固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体の要部を取出して示した図である。
【図3】他の実施の形態に係る固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体の要部を取出して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、一実施の形態に係る固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体を示すもので、第1及び第2の接続銅帯11,12は、分離形成される。この分離形成された第1及び第2の接続銅帯11,12は、それぞれを固定子水冷式発電機の上及び下コイル13,14に対してねじ結合することにより、相互間の接合を実現する。
【0017】
即ち、第1及び第2の接続銅帯11,12には、中間部に固定手段を構成する固定部111,121がそれぞれ突設され、この固定部111,121間に固定部材15が架設されてボルト部材16を用いてボルト結合することで選択的に一体結合される。この第1及び第2の接続銅帯11,12には、その一方の接続端に銅材料以外の所望の機械的強度を有する金属材料により、コイル接続部、例えば第1の雄ねじ部112及び122がそれぞれ設けられ、他方の接続端には、同様に銅材料以外の金属材料により、外部接続部、例えば第2の雄ねじ部113及び123が設けられる。そして、これら第1及び第2の雄ねじ部112,122及び113,123には、それぞれ貫通孔114,115及び124,125がそれぞれ形成される。
【0018】
また、第1及び第2の接続銅帯11,12には、その第1及び第2の雄ねじ部112及び113、122及び123間に冷却水通路116及び126が穿設される。そして、この冷却水通路116及び126は、それぞれ上記第1及び第2の雄ねじ部11及び12の貫通孔114,115及び124,125に連通されている。
【0019】
一方、上記上及び下コイル13,14には、その接続端に同様に銅材料以外の金属材料により、接続部、例えば雌ねじ部131,141がそれぞれ設けられ、この雌ねじ部131,141には、それぞれ冷却通路116,126に連通される貫通孔132,142が穿設される。
【0020】
ここで、上記銅材料以外の金属材料としては、例えば銅材料に比して機械的強度の優れたステンレス材、黄銅材等が好ましい。
【0021】
上記構成において、上及び下コイル13,14には、その雌ねじ部131,141に対して第1及び第2の接続銅帯11,12の第1の雄ねじ部112,122が螺合されて締結される。そして、この第1及び第2の接続銅帯11,12は、その固定部111,121間に固定部材15が架設されてボルト部材16を用いてボルト結合されて位置決め固定される。
【0022】
この状態で、第1及び第2の接続銅帯11,12の各第2の雄ねじ部113,123には、図示しない冷却水源に接続された絶縁接続管17,18が配管接続される。この絶縁接続管17,18には、その先端部に貫通孔191,201の穿設された雌ねじ部19、20が回転自在に設けられ、この雌ねじ部19,20が第1及び第2の接続銅帯11,12の第2の雄ねじ部113,123に螺合されて締結される。
【0023】
これにより、第1及び第2の接続銅帯11,12は、冷却水通路116,126が上及び下コイル13,14の貫通孔132,142と絶縁接続管17,18の貫通孔191,201とに連通されて純水等の冷却水の給排出が可能となる。
【0024】
ここで、上記第1及び第2の接続銅帯11,12を冷却水源に配管接続する方法として、その第2の雄ねじ部113,123に対して別体の絶縁接続管17、18をそれぞれ配管接続した二本構造とした構成について述べたが、この絶縁接続管構造に限ることなく、例えば一本の絶縁接続管17(18)の先端部を二股に分岐させて、その二股の先端部に、同様に回転操作可能な雌ねじ部19,20を設けた絶縁接続管構造を用いて第1及び第2の接続銅帯11,12を冷却水源に配管接続するように構成することも可能である。
【0025】
次に、例えば上及び下コイル13,14の巻き替え作業を行う場合には、固定部材15のボルト部材16を緩めて離脱し、第1及び第2の接続銅帯11,12を分離させ、この状態で、その各第2の雄ねじ部113,123から絶縁接続管17,18の雌ねじ部19,20を離脱させる。その後、第1及び第2の接続銅帯11,12の第1の雄ねじ部112,122を上及び下コイル13,14の雌ねじ部131,141との螺合を緩めて離脱させ、巻き替え作業が行われ、作業完了後、略逆の手順で螺合結合されて組付けられる。
【0026】
ここで、上及び下コイル13,14は、第1及び第2の接続銅帯11,12を介して堅牢に螺合結合され、所望の電気特性が得られる。ここで、例えば上及び下コイル13,14の雌ねじ部131,141と第1及び第2の接続銅帯11,12の第1の雄ねじ部112,122との螺合結合状態における接触面において、銅材料同士の接触面積が、銅材料以外の金属材料同士の接触面積に比して、広く設定することが電気特性上、好ましい。
【0027】
そして、この接触面には、その少なくとも一方に銀メッキや、錫メッキ等の金属メッキを施すようにしても良い。これにより、接触面における接触電気抵抗の軽減を図ることが可能となり、さらに電気特性の向上を図ることが可能となる。
【0028】
このように、上記上・下コイル接続導体は、上及び下コイル13,14に銅材料以外の金属材料製の雌ねじ部131,141を設けると共に、銅材料以外の金属材料製の第1及び第2の雄ねじ部112,122を設けた第1及び第2の接続銅帯11,12を用いて螺合して相互間を結合し、上及び下コイル13,14間の接続配管を行うように構成した。これにより、ろう付け加工のような火気を使用することなく、上及下コイル13,14の巻き替え作業を含む保守点検作業を行うことが可能となり、作業性の向上が図れると共に、保守点検作業の工期の短縮化に寄与することが可能となる。
【0029】
また、上記実施の形態に限ることなく、その他、例えば図2及び図3に示すように構成してもよく、同様に有効な効果が期待される。
【0030】
図2に示す実施の形態では、第1及び第2の接続銅帯11,12の第1及び第2の雄ねじ部112,122及び113,123をそれぞれ銅材料以外の金属材料で別体に形成すると共に、上及び下コイル13,14の雌ねじ部131,141を同様に銅材料以外の金属材料で別体に形成する。この別体に形成した雌ねじ部131,141は、上及び下コイル13,14にそれぞれろう付け、焼き嵌め、冷やし嵌め等の機械加工により合体されて一体的に組付けられる。そして、第1及び第2の雄ねじ部112,122及び113,123は、第1及び第2の接続銅帯11,12の固定部111,121にそれぞれろう付け、焼き嵌め、冷やし嵌め等の機械加工により合体されて一体的に組付けられる。
【0031】
図3に示す実施の形態では、上及び下コイル13,14の雌ねじ部131,141に対して第1及び第2の接続銅帯11,12の第1及び第2の雄ねじ部112,122を螺合結合するのに、シール部材21を介在するように構成したものです。そして、この第1及び第2の接続銅帯11,12の雄ねじ部113,123には、絶縁接続管17,18の雌ねじ部19,20が同様にシール部材21を介在させて螺合結合される。
【0032】
この実施の形態では、冷却水の漏れを確実に防止することが可能となるため、さらに有効な効果が期待される。このシール部材21としては、冷却水が通常、純水が用いられることで、ゴム材以外の金属材料や炭素繊維を用いたOリング構造が好ましい。
【0033】
さらに、上記実施の形態では、上及び下コイル13,14に雌ねじ部131,141を設け、第1及び第2の接続銅帯11,12に第1の雄ねじ部112,113を設けたねじ構造に構成した場合で説明したが、これに限ることなく、その他、例えば上及び下コイル13,14に雄ねじ部を形成し、第1及び第2の接続銅帯に雌ねじ部を形成するねじ構造においても構成可能である。また、第1及び第2の接続銅帯11,12の第2の雄ねじ部113,123を雌ねじ構造として構成することも可能である。
【0034】
よって、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0035】
例えば実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0036】
11,12…第1及び第2の接続銅帯、111,121…固定部、112,122…第1の雄ねじ部、113,123…第2の雄ねじ部、114,115,124,125…貫通孔、116,126…冷却水通路、13,14…上及び下コイル、131,141…雌ねじ部、132,142…貫通孔、15…固定部材、16…ボルト部材、17,18…絶縁接続管、19,20…雌ねじ部、181,201…貫通孔、21…シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続端に雄ねじあるいは雌ねじのいずれか一方が形成され、且つ冷却水通路が穿設された銅材料以外の金属材料製の接続部が設けられた銅材料製の固定子水冷式発電機用上及び下コイルと、
この上及び下コイルの前記接続部に螺合される前記雄ねじあるいは雌ねじのいずれか他方で形成され、且つ、前記上及び下コイルの一方の接続部に螺合される銅材料以外の金属材料製のコイル接続部及び外部接続部が設けられるとともに、前記上及び下コイルの一方の冷却水通路に連通される冷却水通路が穿設された第1の接続銅帯と、
前記上及び下コイルの前記接続部に螺合される雄ねじあるいは雌ねじのいずれか他方で形成され、前記上及び下コイルの他方の接続部に螺合される銅材料以外の金属材料製のコイル接続部及び外部接続部が設けられるとともに、前記上及び下コイルの他方の冷却水通路に連通される冷却水通路が穿設された第2の接続銅帯と、
前記第1の接続銅帯のコイル接続部が前記上及び下コイルの接続部の一方に螺合され、前記第2の接続銅帯のコイル接続部が前記上及び下コイルの接続部の他方に螺合された状態で、前記第1の接続銅帯と前記第2の接続銅帯とを固定する固定手段と、
前記第1及び第2の接続銅帯の外部接続部に螺合される前記雄ねじあるいは雌ねじのいずれか一方で形成された接続部が回転自在に設けられるとともに、冷却水を前記上及び下コイルに循環供給する外部接続管と、
を具備することを特徴とする固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体。
【請求項2】
前記上及び下コイルの接続部、前記第1の接続銅帯のコイル接続部及び外部接続部、前記第2の接続銅帯のコイル接続部及び外部接続部は、それぞれ別体に形成され、前記上及び下コイル、前記第1の接続銅帯、第2の接続銅帯に対して機械加工により、合体されることを特徴とする請求項1記載の固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体。
【請求項3】
前記機械加工は、ろう付け加工であることを特徴とする請求項2記載の固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体。
【請求項4】
前記上及び下コイルと前記第1及び第2の接続銅帯との接触面積は、銅材料部位同士の接触面積を、銅材料以外の金属材料同士の接触面積に比して広く設定したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体。
【請求項5】
前記上及び下コイルと前記第1及び第2の接続銅帯の接触面の少なくとも一方には、金属メッキが施されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体。
【請求項6】
前記上及び下コイルの接続部、前記第1の接続銅帯のコイル接続部及び外部接続部、前記第2の接続銅帯のコイル接続部及び外部接続部は、ゴム材以外の材料で形成されるシール部材を介して螺合されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体。
【請求項7】
前記シール部材は、Oリングであることを特徴とする請求項6記載の固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体。
【請求項8】
前記外部接続管を介して循環供給する冷却水は、純水であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか記載の固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか記載の固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体を備えることを特徴とする固定子水冷式発電機。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか記載の固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体を組付ける組立方法であって、
前記上及び下コイルの接続部に前記第1及び第2の接続銅体のコイル接続部を螺合して組付けて、該第1及び第2の接続銅体間を前記固定手段で固定し、前記第1及び第2の接続銅体の外部接続部に対して前記外部接続管の接続部を螺合して組付けることを特徴とする固定子水冷式発電機の上・下コイル接続導体の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−85366(P2013−85366A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223243(P2011−223243)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】