説明

固定式分配器を使用する繊維配置のための方法およびシステム

【課題】繊維配置動作を行うに際し、繊維量の制限が少なく、また、繊維や樹脂の屑による材料の詰まりも無く、複合繊維製品を作製するのに、稼働停止時間が少なく、生産効率の良いシステムを提供する。
【解決手段】ロボットアーム162を有するモーションシステムと、ロボットアーム162に搭載された繊維配置レイアップ心棒110と、配送ヘッド124を有する繊維配置配送システム120とを含む。ロボットアーム162は、複合繊維部品を作製するために、配送ヘッド124に対して配送ヘッド124の近くで心棒110を運動させるように動作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、一般に、繊維配置システムに関し、より詳細には、固定式分配器を使用する繊維配置のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な繊維配置システムでは、モーションシステム(ロボットまたは他の数値制御機器など)が、複雑な繊維分配システムまたは繊維分配ヘッドを、固定式心棒または回転軸に搭載された心棒のいずれかの上方に進めるために使用される。しかし、繊維分配システムを動かし、かつ繊維材料を可動ヘッドに供給することは、複雑かつ困難である。例えば、繊維分配システムはヘッドの一部であり、それゆえヘッドは、必然的に寸法が大きくなる。繊維を分配するために複雑な形状の心棒の上方でヘッドを動かすとき、分配ヘッドがかさ高いため、ヘッドと、レイアップされる部品との間で不慮の衝突が発生する可能性がある。繊維材料を最適に配置するためには、ヘッドを、材料が分配されている面に垂直にさせることが望ましいと考えられる場合、そのような可能性は大きくなる。クリール組立体を使用して、ヘッドの上ではなく機械の上に搭載された材料を有する繊維配置機械に対しては、1軸または2軸の機械の上に搭載されたクリールから、6軸以上に搭載された配送ヘッドまで材料を案内するために、複数の方向転換器(redirect)、櫛状の器具および滑車組立体が使用されるため、繊維経路は複雑となる可能性があり、材料の中に欠陥を含みやすくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前の段落で言及されたように、伝統的な繊維配置システムは、繊維分配器を心棒の上方で動かす。そのようなシステムに対する1つの不利点は、モーションシステムが、繊維材料の供給源を、繊維配置動作を完了するために必要なすべての電気的、機械的および空気的システムと共に運ぶ必要があるか、またはクリールシステムを、動くシステムの一部として、システムの複雑さのすべてを有するヘッド付近の機械上のどこかに搭載する必要があることである。それゆえ、ヘッドに搭載される材料に対して、伝統的な繊維配置システムによって無理なく運ばれうる繊維の量は制限され、そのことが稼働停止時間につながる。機械に搭載されたクリールに対して、付加的なヘッドの関節を介してヘッドに材料を案内するために必要な、複数の材料方向転換システムが、材料の中に欠陥を誘発する可能性のある接触点を生成するか、または繊維または樹脂からの屑を集積して材料の詰まりを引き起こし、結果として稼働停止時間をもたらす。加えて、生産計画が、心棒からより大きな組立体まで材料のパッチを移すことを必要とするならば、第2のモーションシステムが使用される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、繊維配置システムが提供される。繊維配置システムは、ロボットアームを有するモーションシステムと、ロボットアームに搭載された繊維配置レイアップ心棒と、配送ヘッドを有する繊維配置配送システムとを含む。ロボットアームは、複合繊維部品を作製するために、配送ヘッドに対して配送ヘッドの近くで心棒を運動させるように動作することができる。
【0005】
別の態様では、複合繊維部品を作製する方法が提供される。方法は、選択された部品を作製するための心棒をロボットアームに配置することと、繊維配置配送システムが複合繊維を選択された心棒上に分配するにつれて、固定式繊維配置配送システムの配送ヘッドに対して心棒を動かすように、ロボットアームを動作させることとを含む。
【0006】
さらに別の実施形態では、繊維配置システムは、ロボットアームに搭載された繊維配置レイアップ心棒と、固定式繊維配置配送システムとを含み、ロボットアームは、固定式繊維配置配送システムに対して心棒を運動させるように動作することができる。
【0007】
論じられてきた特徴、機能および利点は、種々の実施形態において個々に達成されてよく、またはさらに他の実施形態の中に組み合わされてよく、実施形態のさらなる詳細は、以下の説明および図面を参照して理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】知られている繊維配置装置を示す図である。
【図2】ロボットに搭載されたレイアップ心棒および固定式繊維配置分配システムを含む繊維配置システムを示す図である。
【図3】複合材料のパッチを部品上に配置する図2のシステムを示す図である。
【図4】心棒が、複合材料のパッチを配置した後、繊維配置分配システムに戻ることを示す、図2のシステムを示す図である。
【図5】図2〜図4の繊維配置システムでの使用に適切なシステム200のブロック線図である。
【図6】図5のシステムにおいて使用される制御器のための1つの可能なシステムアーキテクチャの図である。
【図7】図2〜図4のシステムを使用して部品を作製し配置するためのプロセスを示す流れ図である。
【図8】航空機の生産およびサービスの手順の流れ図である。
【図9】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、位置決め装置12およびエンドエフェクタ14を含む、知られている繊維配置装置10の図である。位置決め装置12は、エンドエフェクタ14の運動を、位置決めするか、そうでなければ制御するように構成される。特に、位置決め装置12は、多軸の運動を制御するように構成された、ロボットアーマチャ、ガントリ型、またはポストミル型の位置決め装置である。
【0010】
繊維配置装置10は、型枠20の上にコース材料18を貼付することによって、品目16を作製するように構成される。通常、品目16は、互いに隣接して敷設された一連の材料コース18を含む、多数のプライまたは層から作製される。種々の形態では、エンドエフェクタ14は、コース材料18を型枠20に貼付するために、転圧ローラ(図1に示さず)および/またはスイープを含む。型枠20は、プライ配置のために、適度に安定な、みがかれた表面をもたらすように構成される。図示のように、型枠20は、軸回りに回転するように制御される。このように回転するように制御されるとき、型枠20は、通常、心棒と呼ばれる。型枠20、すなわち心棒は、作製される部品に応じて形状が非常に複雑になる可能性があり、深くくぼんだ表面を含む可能性があることを理解されたい。他の実施形態では、型枠20は、固定されてよく、または種々の軸内で動くように制御されてよい。例えば、型枠20は、すべりテーブルまたはX−Yテーブルに固定されてよい。型枠20の運動および位置決め装置12の運動は、エンドエフェクタ14を位置決めするように作用する。
【0011】
さらに、型枠20および位置決め装置12の運動は、両装置が、本質的に単一のユニットとして動作する程度まで、全体として協調的である。寸法、形状、輪郭、他など、型枠20の特徴は、品目16の設計パラメータに基づく。品目16は、複数のコース24で構築されている図1に示される。型枠20、または基板26の上に配置されるコース24の各層は、プライとして説明され、品目16は、通常、複数のプライで作製される。基板26は、型枠20の表面および/または前に貼付されたコース24を含む。上述のように、型枠の寸法、形状および輪郭が複雑になるならば、部品を作製するときに、型枠とエンドエフェクタとの間に好ましからざる物理的な接触を生じることなく、エンドエフェクタ14を適切な位置に配置することは困難である可能性がある。
【0012】
知られている繊維配置装置についての上の説明に関して、以下の段落で説明される実施形態は、繊維の配置のための製造方法およびシステムに向けられる。図2を参照すると、繊維配置システム100は、ロボット112に搭載されたレイアップ心棒110を含む。レイアップ心棒110は、ロボット112を使用して作製される少量または中量のチャージを、例えば複合材料のパッチ150の作製を結果としてもたらすパターンで、固定式繊維配置システム120の上方で心棒110に渡すことを可能にする、固定式繊維配置分配システム120と連係する。説明された実施形態に関して、いくつかの既存の繊維配置機械は、フィラメントワインディングと類似の、バレル状の構造を造るために、回転軸の中に搭載された心棒または工具を有する。繊維配置システム100は、レイアップ心棒を2自由度以上で操作する一方、繊維配置分配システム120は固定のままである。
【0013】
繊維配置分配システム120は、繊維を心棒110上に配置するために、配送ヘッド124の末端部の近くに転圧ローラ122を含む。本明細書で使用される場合、配送ヘッドは、材料を分配し、転圧し、または切断することができるシステムの組立体を指す。配送ヘッド124の一部は、転圧ローラ122である。心棒110が、複数の寸法、形状および輪郭を有するように作製されてよいこと、ならびに、固定式分配システム120の1つの利点が、配置される繊維を運ぶ必要がある従来技術のシステムと比べて、より大きな繊維のスプールが使用されうることにあることに、留意されたい。繊維配置システム100の別の利点は、そのようなより大きい繊維144のスプール142の大きさに作られた1つまたは複数のより大きなクリール140が、配送ヘッド124とクリール140との間に固定された繊維経路を組み入れ、クリール140から配送ヘッド124までの繊維144の搬送を簡素化しながら、固定した場所に設置されてよいことである。そのような実施形態では、心棒110のために配送ヘッド124に対してより大きな間隙をもたらし、それにより、部品の作製がより大きな輪郭を組み入れることを可能にするために、クリール140およびスプール142が、実際の配送ヘッド124から離れて搭載されてよい。図2に示される実施形態では、複数のクリール140およびスプール142が、図示のように分配システム120内に設置される。
【0014】
より具体的には、複雑な繊維配置装置(分配システム120)が固定され、ロボット112が、複合材料が心棒110の上で転圧され、心棒110に付着するように、心棒110を転圧ローラ120周りに動かす。図示のように、ロボットは軌道160の上を動くことができ、関節アーム162を有する。さらに、ひとたび材料が、ロボットに搭載された心棒110の上に堆積されると、ロボット112は、心棒110を、バレルレイアップ130など、より大きな組立体まで容易に動かし、図3および図4に示されるように、複合繊維材料のパッチ150を移すことができる。別の実施形態では、ロボットアームが搭載された無人搬送車(AGV)が設けられ、AGVは、複合繊維の部品を心棒110からバレルレイアップ130などの組立体の上に移すために、ロボットアームを動かすように動作することができる。別の実施形態では、複合繊維の部品が全体として、他のレイアップに移されることなく、心棒110の上に配置される。使用される特定の実施形態は、少なくとも部分的には、作製される部品の寸法および複雑さによって決まる。
【0015】
説明される実施形態によって、ロボットアームに搭載された分配装置を使用して、固定式心棒または1軸回転の心棒の上に繊維を敷設する従来の解決策は断念される。代わりに、図3にさらに示されるように、心棒110は、繊維を分配システムから心棒110に貼付する間、および材料のパッチ150を、バレルレイアップ130上に配置されるように、より大きなレイアップに移す間に、ロボット112によって運ばれる。図4に示されるように、複数のクリール140およびスプールは、また、個別の繊維144が、配送ヘッド124への経路を定めるために分配システムの中に送り込まれる状態で、分配システム120から離れて設置されてよい。そのような実施形態の動作は、多数の繊維部品を作製するために、付加的なスプール142が同時に使用されることを可能にする。加えて、そのような配列は、さらに大きな繊維142のスプールが使用されることを可能にする。
【0016】
現在存在するシステムにおいてなされるようなモーションシステムによって運ばれる代わりに、システム100は、床170に搭載された材料配送システム(分配システム120)を含む。さらに、システム100では、心棒110は、現在存在するシステムの場合のように床170に搭載される代わりに、モーションシステム(ロボット112)に搭載される。一実施形態では、転圧ローラ122が、異なる繊維の角度に適応し、心棒110の動きの少なくとも一部を最小化するために、単一の回転軸を組み入れる。一例では、高アスペクト比の心棒が、その動きの範囲を通して心棒110をスピンさせる必要なく、一般的に使用される0°/45°/―45°/90°のプライの向きに対して転圧ローラ122が回転することから、恩恵を受ける。
【0017】
システム100は、伝統的な繊維配置における材料の配送および貼付が、複雑な電子的、空圧的および機械的システムを必要とすることにおいて、既存の解決策と区別される。そのように複雑なシステムがロボットアームに搭載されるならば、電気的および空気的なケーブルおよびホースを移動式配送ヘッドに運ぶことが必要となることによって、複雑さが悪化する。配送ヘッドの上ではなく、配送ヘッドの近くに搭載されるクリールに対して、材料をヘッドに搬送することは、依然として複雑なままである。加えて、移動式配送ヘッドの重量および寸法が、モーションシステムが材料を貼付することができる速度を制限する。
【0018】
また、移動式配送ヘッドの寸法は、作製される部品の高い輪郭の領域におけるアクセスを制限する可能性がある。本明細書で説明される実施形態に対して、心棒110は、制御システムおよびケーブルもしくはホースを持たずにロボットアームに搭載された、簡単な固体の工具である。複雑な材料配送構成要素は、分配システムの一部として、床に搭載される。上述の制約を解決することに加えて、床に搭載された配送システムは、より大きな原材料のキャッシュを収容することができ、そのことが、より少ない動作の停止時間を可能にする。
【0019】
最後に、システム100は、パッチ150など、材料のパッチをレイアップし、次いで、パッチ150を心棒110からバレルレイアップ130など、より大きな組立体に移すことが望ましいときに、解決策をもたらす。心棒110を運ぶロボット112は、パッチ150を配送システム(分配器120)から組立体の領域(レイアップバレル130)まで、ステップを付加することなく簡単に動かすことができる。
【0020】
図5は、繊維配置システム100での使用に適するシステム200のブロック図である。図示のように、システム200は、制御器202を含む。制御器202は、コンピュータ可読コードを実行するように動作することができる。この関連で、システム200は、一式のコンピュータ可読の命令またはコード204を含む。コード204によって、制御器202は、ファイル206にアクセスするように構成される。このファイル206は、以下の、作製されるべき複合品目(例えば、パッチ150)のコンピュータ可読モデル;心棒110の表面のコンピュータ可読表現;バレルレイアップ130の表面のコンピュータ可読表現;バレルレイアップ130の縁部のコンピュータ可読表現;作製されるべき複合品目の厚さ;作製されるべき複合品目、心棒110およびバレルレイアップ130のうちの少なくとも1つに基づくソースコード;ソースコードに基づく、ロボット112に対する一式の運動命令;作製されるべき複合品目をレイアップする間に収集されたデータ;タイムスタンプ情報;位置情報;識別番号;他、のうちの1つまたは複数を含む。
【0021】
さらに、制御器202は、ネットワーク208を通じて通信するように構成される。ネットワーク208は、付加的なデータ記憶および/または処理能力をもたらすために、任意選択で含まれる。この観点から、ネットワークはデータベース210およびサーバ212を含む。データベース210は、コード204および/またはファイル206のコピーを記憶するように構成される。サーバ212は、コード204および/またはファイル206の任意の適切な処理を発生させ、記憶し、実施するように構成される。このようにして、例えば、サーバ212など、コンピュータ支援設計(CAD)機械で発生された、複合品目(パッチ150)などの複合品目が、繊維配置システム100に転送されてよい。加えて、サーバ212は、ネットワーク208を介して、コード204および/またはファイル206に対するアップデートを転送するように動作することができる。加えて、システム200は、メモリ214を任意選択で含む。メモリ214は、存在する場合は、コード204および/またはファイル206のコピーを記憶するように構成される。
【0022】
位置決め装置制御器216は、繊維配置システム100に関連する種々のアクチュエータおよび/またはサーボモータの必要性に応じて、システム200の中に任意選択で含まれる。繊維配置システム100の特定の構成に応じて、複数のアクチュエータおよび/またはサーボモータが、繊維配置システム100のロボット112、したがって心棒110の回転、位置、速度、方向、他を調節する。より具体的には、ロボット112のこれらのアクチュエータおよび/またはサーボモータは、少なくとも、心棒110の種々の軸を調節し、かつ/または分配システム120、例えばクランプ、テンショナ、スプール、切断組立体およびその中のカッタ、の動作を制御するように構成される。位置決め装置制御器216が存在する場合、そのパラメータは、種々のアクチュエータ、サーボ、および/または制御器202の仕様に基づく。位置決め装置制御器216は、存在する場合、これらのアクチュエータおよび/またはサーボモータのいくつかのまたはすべてを制御するように構成される。加えて、これらのアクチュエータおよび/またはサーボモータは、制御器202によって直接調節されるように、任意選択で動作することができ、したがって、システム200は、位置決め装置制御器216を省略することができる。
【0023】
さらに、システム200は、繊維配置システム100の種々の適切な動作の条件または属性を感知するように構成された複数のセンサを、任意選択で含む。適切な属性の例は、繊維および/または心棒の温度、供給速度および方向、材料の配置、裏地の一体性、トウの供給、および/またはその他のうちのいくつかのまたはすべてを含む。
【0024】
図6は、制御器202に対する可能なシステムアーキテクチャである。図示のように、制御器202は、プロセッサ300を含む。プロセッサ300は、電源302、メモリ304、クロック306、アナログ−ディジタル変換器(A/D)308、および入力/出力(I/O)ポート310に、動作可能に接続される。I/Oポート310は、任意の適切に装着された電子装置から信号を受け、これらの信号をA/D 308および/またはプロセッサ300に転送するように構成される。信号がアナログ形式であれば、信号はA/D 308を介して進んでよい。この観点から、A/D 308は、アナログ形式の信号を受け、これらの信号を対応するディジタル形式の信号に変換するように構成される。反対に、A/D 308は、プロセッサ300からディジタル形式の信号を受け、これらの信号をアナログ形式に変換し、アナログ信号をI/Oポート310に転送するように構成される。このようにして、アナログ信号を受けるように構成された電子装置が、プロセッサ300と互いに通信することができる。
【0025】
プロセッサ300は、信号を、A/D 308および/またはI/Oポート310から受け、A/D 308および/またはI/Oポート310に送信するように構成される。さらに、プロセッサ300は、クロック306から時間信号を受けるように構成される。加えて、プロセッサ300は、電子データを、メモリ304に記憶し、メモリ304から検索するように構成される。さらに、プロセッサ300は、位置決め装置制御器216を調節するように動作することができる信号を確定し、それにより、繊維配置システム100の種々のアクチュエータおよび/またはサーボモータに特定の力を出させ、かつ/または特定の角度に回転させるように制御するように構成される。
【0026】
一実施形態では、プロセッサ300は、コード204を実行するように構成される。この一式の命令および繊維配置システム100の種々の構成要素からの信号に基づいて、プロセッサ300は、ロボット112(およびロボット112に装着された心棒110)に対する一式の運動命令を確定し、繊維の繰り出し(disbursement)、などのために、分配システム120に命令を供給するように構成される。
【0027】
図7は、本明細書で説明された繊維配置システム100を使用して、部品を作製し、配置するためのプロセスを示す流れ図400である。402で特定の部品を製造するためのプログラムが選択される。404で選択された部品に適した心棒がロボットアームに添付される。次いで、406で選択されたプログラムが実行され、繊維配置配送システムが繊維を心棒上に分配するにつれて、ロボットアームが、繊維配置システムの転圧ローラおよび配送ヘッドに対して心棒を動かす。部品の作製が完了すると、408で心棒が、部品が工具上に配置されるべき位置に動かされ、410で部品が心棒から工具上に取り外される。
【0028】
説明された実施形態は、一般に、ロボットまたは他の数値制御のモーションシステムと、モーションシステムに搭載された繊維配置レイアップ心棒と、固定的に搭載された繊維配置配送システムと、ロボット(およびそれゆえ心棒)を案内し、同時に繊維配置配送システムを制御するための制御ソフトウェアとを含む繊維配置システムに関する。一般に、そのような実施形態は、寸法または構成において制限されないが、説明されたシステムは、小型から中型の部品に複合物のチャージの繊維配置を実施することに対してとりわけ有用である。そのような部品の寸法は、心棒を操作するために使用される装置の載荷能力)によってのみ制限される。加えて、このシステムは、複合材料の中間パッチ(ダブラー)、を繊維配置領域から胴体バレル(fuselage barrel)などのより大きなレイアップに移すために使用されてよい。
【0029】
本開示の実施形態は、図8に示されるような航空機の製造およびサービスの方法500、ならびに図9に示されるような航空機600を背景として説明されてよい。試作の間、航空機の製造およびサービスの方法500は、航空機600に対して、502で仕様および設計、ならびに504で材料の調達を含んでよい。
【0030】
生産の間、航空機600に対して、506で構成要素および部分組立品の製造、ならびに508でシステム統合が行われる。その後、航空機600は、512で就航させるために、510で認証を受けて納品を完了する。顧客による就航中に、航空機600は、514で定期的な保守管理サービス(同様に、変更、再構成、改修、などを含んでよい)が予定されている。
【0031】
航空機の製造およびサービスの方法500の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者機関、および/またはオペレータ(例えば、顧客)によって実施または遂行されてよい。この説明のために、システムインテグレータは、限定なしに、任意の数の航空機製造会社および大きなシステムの下請け業者を含んでよく;第三者機関は、例えば、限定なしに、任意の数の販売会社、下請け業者および納入業者を含んでよく;オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関、などであってよい。
【0032】
図9に示されるように、航空機の製造およびサービスの方法500によって生産される航空機600は、複数のシステム604およびインテリア606を有する機体602を含んでよい。システム604の例は、推進システム608、電気システム610、油圧システム612、および環境システム614のうちの1つまたは複数を含む。任意の数の他のシステムが、この例に含まれてよい。航空宇宙産業の例が示されるが、本開示の原理は、自動車産業など、他の産業に適用されてよい。
【0033】
本明細書に盛り込まれた装置および方法は、航空機の製造およびサービスの方法500のうちの任意の1つまたは複数の段階の間に使用されてよい。例えば、限定なく、506での構成要素および部分組立品の製造に対応する構成要素および部分組立品は、航空機600が就航中に生産される構成要素または部分組立品に類似する方式で、作製または製造されてよい。
【0034】
また、1つまたは複数の装置の実施形態、方法の実施形態、またはそれらの組合せは、例えば、限定なく、大幅に、航空機600の組み立てを促進するか、またはコストを削減することによって、506での構成要素および部分組立品の製造、および508でのシステム統合の間に使用されてよい。同様に、1つまたは複数の装置の実施形態、方法の実施形態、またはそれらの組合せは、航空機600が就航中に使用されてよく、例えば、限定なく、514での保守管理サービスが、508でのシステム統合の間に使用されてよく、および/または514での保守管理サービスが、部品が互いに接続および/または嵌合されてよいかどうかを確定するために使用されてよい。
【0035】
異なる有利な実施形態の説明は、例示および説明を目的として提示されており、完全であること、または実施形態を開示された形態に限定することは意図されていない。多くの改変形態および変更形態が、当業者には明らかとなろう。さらに、異なる有利な実施形態は、他の有利な実施形態に比べて、異なる利点を提供することができる。選択された1つまたは複数の実施形態は、実施形態の原理、実際の用途を最も良く説明し、考慮された特定の使用に適合された種々の改変形態を伴う種々の実施形態に対する本開示を、他の当業者が理解することを可能にするために、選択され、説明される。
【0036】
この書面による説明は、当業者が、任意の装置またはシステムを作り使用すること、および任意の組み入れられた方法を実施することを含む、そのような実施形態を実施することを可能にするために、最良のモードを含む種々の実施形態を開示するために、例を使用する。特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想起する他の例を含んでよい。そのような他の例は、特許請求の範囲の文字通りの言葉と異なることのない構造的要素を有するならば、または特許請求の範囲の文字通りの言葉とごくわずかに異なる、等価な構造的要素を有するならば、特許請求の範囲の中にあることが、意図されている。
【0037】
本発明は、以下にも関している。
1. ロボットアームを備えるモーションシステムと、
前記ロボットアームに搭載された繊維配置レイアップ心棒と、
配送ヘッドを備える繊維配置配送システムと
を備えており、前記ロボットアームが、複合繊維部品を作製するために、前記配送ヘッドに対して前記配送ヘッドの近くで前記心棒を運動させるように動作することができ、前記繊維配置配送システムが、
表面に搭載された固定式システムと、
前記固定式システムに動作可能に装着された配送ヘッドであって、前記配送ヘッドの末端部に転圧ローラを備え、前記転圧ローラが単一の回転軸を有する、配送ヘッドと
を備える、繊維配置システム。
2. ロボットアームを備えるモーションシステムと、
前記ロボットアームに搭載された繊維配置レイアップ心棒と、
配送ヘッドを備える繊維配置配送システムと
を備えており、前記ロボットアームが、複合繊維部品を作製するために、前記配送ヘッドに対し前記配送ヘッドの近くで前記心棒を運動させるように動作することができ、前記ロボットアームを案内して前記繊維配置配送システムの動作を制御するようにプログラムされた処理装置をさらに備える、繊維配置システム。
3. 前記処理装置が、作製されるべき複合繊維部品のコンピュータ可読モデルと、前記心棒の表面のコンピュータ可読表現と、複合繊維部品が配置されるべき表面のコンピュータ可読表現と、作製されるべき複合繊維部品の厚さとのうちの少なくとも1つに対してプログラムされる、項目2に記載の繊維システム配置。
4. 前記処理装置が、前記モーションシステムに対する一式の運動命令と、前記繊維配置配送システムから繊維材料を分配するための一式の命令とのうちの少なくとも1つに対してプログラムされる、項目2に記載の繊維システム配置。
5. ロボットアームを備えるモーションシステムと、
前記ロボットアームに搭載された繊維配置レイアップ心棒と、
配送ヘッドを備える繊維配置配送システムと
を備えており、前記ロボットアームが、複合繊維部品を作製するために、前記配送ヘッドに対し前記配送ヘッドの近くで前記心棒を運動させるように動作することができ、前記ロボットアームが、2自由度以上で前記心棒を運動させるように動作することができる、繊維配置システム。
6. 複合繊維部品を作製する方法であって、
選択された部品を作製するための心棒をロボットアームに配置することと、
繊維配置配送システムが複合繊維を選択された心棒上に分配するにつれて、固定式繊維配置配送システムの配送ヘッドに対して心棒を動かすように、ロボットアームを動作させることと
を含み、心棒を動かすようにロボットアームを動作させることが、ロボットアームを動作させて、固定式繊維配置配送システムに、配送ヘッドを介して複合繊維を分配させるように選択されたプログラムを実行することを含む方法。
7. 複合繊維部品を作製する方法であって、
選択された部品を作製するための心棒をロボットアームに配置することと、
繊維配置配送システムが複合繊維を選択された心棒上に分配するにつれて、固定式繊維配置配送システムの配送ヘッドに対して心棒を動かすように、ロボットアームを動作させることと
を含み、作製されるべき複合繊維部品に関連するプログラムを選択することをさらに含む方法。
8. 複合繊維部品を作製する方法であって、
選択された部品を作製するための心棒をロボットアームに配置することと、
繊維配置配送システムが複合繊維を選択された心棒上に分配するにつれて、固定式繊維配置配送システムの配送ヘッドに対して心棒を動かすように、ロボットアームを動作させることと
を含み、
作製された複合繊維部品が工具上に配置されるべき位置に心棒を動かすことと、
部品を心棒から取り外すことと
をさらに含む方法。
9. 複合繊維部品を作製する方法であって、
選択された部品を作製するための心棒をロボットアームに配置することと、
繊維配置配送システムが複合繊維を選択された心棒上に分配するにつれて、固定式繊維配置配送システムの配送ヘッドに対して心棒を動かすように、ロボットアームを動作させることと
を含み、作製された複合繊維部品を心棒から組立体に移すために、ロボットアームを軌道に沿って動かすことをさらに含む方法。
10. 複合繊維部品を作製する方法であって、
選択された部品を作製するための心棒をロボットアームに配置することと、
繊維配置配送システムが複合繊維を選択された心棒上に分配するにつれて、固定式繊維配置配送システムの配送ヘッドに対して心棒を動かすように、ロボットアームを動作させることと
を含み、繊維を配送ヘッドに配送するために、繊維配置配送システム内の材料配送構成要素を動作させるためのプログラムを実行することをさらに含む方法。
11. 複合繊維部品を作製する方法であって、
選択された部品を作製するための心棒をロボットアームに配置することと、
繊維配置配送システムが複合繊維を選択された心棒上に分配するにつれて、固定式繊維配置配送システムの配送ヘッドに対して心棒を動かすように、ロボットアームを動作させることと
を含み、固定式繊維配置配送システムの配送ヘッドに対して心棒を動かすようにロボットアームを動作させることが、ロボットアームを案内して繊維配置配送システムの動作を制御するように、処理装置内でプログラムを実行することを含む方法。
12. ロボットアームを案内して繊維配置配送システムの動作を制御するように、処理装置内でプログラムを実行することが、
作製されるべき複合繊維部品のコンピュータ可読モデルを供給するプログラムを実行することと、
選択された心棒の表面のコンピュータ可読表現を供給するプログラムを実行することと、
複合繊維部品が配置されるべき表面のコンピュータ可読表現を供給するプログラムを実行することと
のうちの少なくとも1つを含む、項目11に記載の方法。
13. ロボットアームを案内して繊維配置配送システムの動作を制御するように、処理装置内でプログラムを実行することが、ロボットアームに関連するモーションシステムに対する一式の運動命令と、繊維配置配送システムから繊維材料を分配するための一式の命令とを実行することを含む、項目11に記載の方法。
14. ロボットアームに搭載された繊維配置レイアップ心棒と、
固定式繊維配置配送システムと
を含み、前記ロボットアームが、前記固定式繊維配置配送システムに対して前記心棒を運動させるように動作することができる繊維配置システム。
15. 軌道を搭載されたモーションシステムと、前記ロボットアームが搭載された無人搬送車とのうちの少なくとも1つを備える、項目14に記載の繊維配置システム。
【符号の説明】
【0038】
10、100 繊維配置装置
12 位置決め装置
14 エンドエフェクタ
16 品目
18 コース材料
20 型枠
24 コース
26 基板
110 レイアップ心棒
112 ロボット
120 固定式繊維配置システム
122 転圧ローラ
124 配送ヘッド
130 バレルレイアップ
140 クリール
142 スプール
144 繊維
150 パッチ
160 軌道
162 関節アーム
170 床
200 システム
202 制御器
204 コンピュータ可読の命令またはコード
206 ファイル
208 ネットワーク
210 データベース
212 サーバ
214 メモリ
216 位置決め装置制御器
300 プロセッサ
302 電源
304 メモリ
306 クロック
308 アナログ−ディジタル変換器
310 入力/出力ポート
600 航空機
602 機体
604 システム
606 インテリア
608 推進システム
610 電気システム
612 油圧システム
614 環境システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームを備えるモーションシステムと、
前記ロボットアームに搭載された繊維配置レイアップ心棒と、
配送ヘッドを備える繊維配置配送システムと
を備え、前記ロボットアームが、複合繊維部品を作製するために、前記配送ヘッドに対し前記配送ヘッドの近くで前記心棒を運動させるように動作することができる、繊維配置システム。
【請求項2】
前記配送ヘッドが固定式である、請求項1に記載の繊維配置システム。
【請求項3】
前記繊維配置レイアップ心棒が複数の心棒を備えており、前記心棒が、前記ロボットアームから取り外し可能であり、複数の部品を作製するために、複数の寸法、形状および輪郭を有するように作製されている、請求項1に記載の繊維配置システム。
【請求項4】
前記モーションシステムが軌道を有し、前記ロボットアームが、前記複合繊維部品を前記心棒から組立体上に移すために、前記軌道に沿って動くことができる、請求項1に記載の繊維配置システム。
【請求項5】
前記モーションシステムが、前記複合繊維部品を前記心棒から組立体上に移すために、前記ロボットアームを動かすように動作することができる無人搬送車を備える、請求項1に記載の繊維配置システム。
【請求項6】
前記ロボットアームが関節アームを備える、請求項1に記載の繊維配置システム。
【請求項7】
前記繊維配置配送システムが、繊維を前記配送ヘッドまで配送するように動作することができる材料配送構成要素を備える、請求項1に記載の繊維配置システム。
【請求項8】
複合繊維部品の作製方法であって、
選択された部品を作製するための心棒をロボットアーム上に配置することと、
繊維配置配送システムが前記複合繊維を前記選択された心棒上に分配するにつれて、固定式繊維配置配送システムの配送ヘッドに対して前記心棒を動かすように前記ロボットアームを動作させることと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−126134(P2012−126134A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−264490(P2011−264490)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】