説明

固定装置

【課題】5個のマイクロフォンの位置関係を正確に維持でき、かつ、5個のマイクロフォンと1つのカメラとを一緒に固定可能で、音源位置推定の精度を向上できる固定装置を提供する。
【解決手段】4つのマイクロフォンを固定する第1のマイクロフォン固定部と、1つのマイクロフォンを固定する第2のマイクロフォン固定部と、カメラ取付部と、カメラ取付部及び第1;第2のマイクロフォン固定部を支持する支持フレームと、マイクロフォン固定部品とを備え、第1;第2のマイクロフォン固定部は、マイクロフォンの軸部を貫通させて軸部を固定する固定孔を備え、マイクロフォンは、固定孔からの引き抜けが防止されるようにマイクロフォン固定部品によりマイクロフォン固定部に固定されたことを特徴とする固定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のマイクロフォンで採取した音のデータとカメラで撮影した映像のデータとを用いて音源を推定する音源推定方法に使用するマイクロフォン及びカメラを所定の関係位置に正確に維持可能な固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、音の到来方向を推定する方法としては、多数のマイクロフォンを等間隔に配置したマイクロフォンアレーを構築し、基準となるマイクロフォンに対する各マイクロフォンの位相差から音波の到来方向である音源の方向を推定する、いわゆる音響学的手法が考案されている(例えば、非特許文献1参照)。
一方、計測点に配置された複数のマイクロフォンの出力信号の位相差からではなく、複数のマイクロフォンから互いに交わる直線状に配置された複数のマイクロフォン対を構成し、対となる2つのマイクロフォン間の位相差に相当する到達時間差と、他の対となる2つのマイクロフォン間の到達時間差との比から音源の方向を推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
具体的には、図15に示すように、4個のマイクロフォンM1〜M4を、互いに直交する2直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対(M1,M3)及びマイクロフォン対(M2,M4)を構成するように配置し、上記マイクロフォン対(M1,M3)を構成するマイクロフォンM1,M3に入力する音圧信号の位相差と、上記マイクロフォン対(M2,M4)を構成するマイクロフォンM2,M4に入力する音圧信号の到達時間差との比から、計測点と音源の位置との水平角θを推定するとともに、第5のマイクロフォンM5を上記マイクロフォンM1〜M4の作る平面上にない位置に配置して、更に4組のマイクロフォン対(M5, M1),(M5, M2),(M5, M3),(M5, M4)を構成し、上記各マイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の到達時間差から、計測点と音源の位置との成す仰角φを推定する。
これにより、上記マイクロフォンアレーを用いて音源の方向を推定する場合に比較して、少ないマイクロフォン数で音源の方向を正確に推定することができる。
また、このとき、CCDカメラ等の映像採取手段を設けて上記推定された音源の方向の映像を撮影した後、この映像のデータと音源の方向のデータとを合成して、映像中に上記推定した音源方向と音圧レベルとを図形を表示するようにすれば、音源を視覚的に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−181913号公報
【特許文献2】特開2006−324895号公報
【特許文献3】特開2008−224259号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】大賀寿郎,山崎芳男,金田豊,音響システムとディジタル処理,コロナ社,1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、5個のマイクロフォンを図15に示すような位置関係に正確に維持できなかったので、音源位置推定の精度が落ちるという問題点があった。
本発明は、5個のマイクロフォンの位置関係を正確に維持でき、かつ、5個のマイクロフォンと1つのカメラとを一緒に固定可能で、音源位置推定の精度を向上できる固定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る固定装置は、複数のマイクロフォンで採取した音のデータとカメラで撮影した映像のデータとを用いて音源を推定する音源推定方法に使用するマイクロフォン及びカメラを所定の関係位置に固定するための固定装置であって、4つのマイクロフォンを固定する第1のマイクロフォン固定部と、1つのマイクロフォンを固定する第2のマイクロフォン固定部と、カメラ取付部と、カメラ取付部及び第1,第2のマイクロフォン固定部を支持する支持フレームと、マイクロフォン固定部品とを備え、第1のマイクロフォン固定部には、一方の一対の2個のマイクロフォンの音採取部の中心が第1の直線上に所定の間隔で位置されるように一方の一対の2個のマイクロフォンが固定されるとともに、他方の一対の2個のマイクロフォンの音採取部の中心が第1の直線と直交する第2の直線上に所定の間隔で位置されるように他方の一対の2個のマイクロフォンが固定され、第2のマイクロフォン固定部には、1個のマイクロフォンの音採取部の中心が上記4個のマイクロフォンの音採取部の中心を繋ぐ四角平面上とは離れた位置に位置されるように1個のマイクロフォンが固定され、カメラは、カメラ取付部に取付けられて、各マイクロフォンの出力信号の位相差から推定される音源位置の映像を採取可能な位置に固定され、第1,第2のマイクロフォン固定部は、マイクロフォンの軸部を貫通させて軸部を固定する固定孔を備え、マイクロフォンは、固定孔からの引き抜けが防止されるようにマイクロフォン固定部品によりマイクロフォン固定部に固定されたので、5個のマイクロフォンの位置関係を正確に維持でき、かつ、5個のマイクロフォンと1つのカメラとを一緒に固定できるので、音源位置推定の精度を向上できる。
第1,第2のマイクロフォン固定部が、固定孔と、固定孔の内周面と固定部の外周面とに貫通する切り欠きとを備えたので、マイクロフォンの軸部やマイクロフォンの電線ケーブルを切り欠きを介して固定孔内に挿入可能なので、マイクロフォンの固定作業がより簡単となり、マイクロフォンの固定作業の際の煩雑さを解消できる。
マイクロフォン絶縁部品を備え、マイクロフォンは、マイクロフォンの軸部がマイクロフォン固定部の固定孔を貫通した状態でマイクロフォン絶縁部品により軸部とマイクロフォン固定部とが絶縁されたので、マイクロフォンの入力信号に電気的なノイズが混入することを防止できる。
マイクロフォン絶縁部品が上側絶縁部品と下側絶縁部品とを備え、マイクロフォンの軸部が上側絶縁部品の孔を貫通した状態でマイクロフォンの軸部の外周面と上側絶縁部品の孔の内周面とが接着されており、上側絶縁部品が、固定孔の内側に位置されて固定孔の内周面とマイクロフォンの軸部とを絶縁する小径部と、固定孔の周囲の固定部上面に接触して固定部上面とマイクロフォンの軸部とを絶縁するとともにマイクロフォンの固定孔からの脱落を防止する鍔面とを備え、下側絶縁部品が、固定孔の周囲の固定部下面に接触して固定部下面とマイクロフォンの軸部とを絶縁するので、マイクロフォンの入力信号に電気的なノイズが混入することを防止できるとともに、マイクロフォンの軸部に接着された上側絶縁部品が固定孔の周囲の固定部上面と係合することにより、マイクロフォンの下方への抜け落ちが防止される。
第1のマイクロフォン固定部と第2のマイクロフォン固定部とが、絶縁材料により形成されたので、マイクロフォン絶縁部品を用いることなく、マイクロフォンの入力信号に電気的なノイズが混入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)は固定装置本体の平面図、(b)は音及び映像採取部の正面図、(c)は音及び映像採取部の右側面図(形態1)。
【図2】(a)はマイクロフォン絶縁部品を構成する上側絶縁部品の平面図、(b)は上側絶縁部品の断面図(形態1)。
【図3】(a)はマイクロフォン絶縁部品を構成する下側絶縁部品の平面図、(b)は下側絶縁部品の断面図(形態1)。
【図4】(a)はマイクロフォン固定部品の平面図、(b)はマイクロフォン固定部品の断面図(形態1)。
【図5】(a)は固定装置本体の分解斜視図、(b)はベースと支持フレームとが組付けられた状態を示す組立要領図(形態1)。
【図6】(a)はマイクロフォン対固定部と支持フレームとが組付けられた状態を示す組立要領図、(b)は第5マイクロフォン固定部と支持フレームとが組付けられた状態を示す組立要領図(形態1)。
【図7】(a)は固定装置のマイクロフォン対固定部の固定孔とマイクロフォンとマイクロフォン絶縁部品とマイクロフォン固定部品との関係を示す組立要領分解斜視図、(b)はマイクロフォン対固定部の固定孔の1つにマイクロフォンが固定された状態を示す組立要領斜視図(形態1)。
【図8】(a)は固定装置、カメラ、台装置を分解して示す分解斜視図、(b)は音及び映像採取ユニットを示す斜視図(形態1)。
【図9】(a)は固定装置本体の平面図、(b)は音及び映像採取部の正面図、(c)は音及び映像採取部の右側面図(形態2)。
【図10】(a)はマイクロフォン絶縁部品を構成する上側絶縁部品の平面図、(b)は上側絶縁部品の断面図(形態2)。
【図11】(a)はマイクロフォン絶縁部品を構成する下側絶縁部品の平面図、(b)は下側絶縁部品の断面図(形態2)。
【図12】固定装置本体の平面図(形態3)。
【図13】固定装置本体の平面図(形態4)。
【図14】音及び映像採取ユニット、音源位置推定装置の車内での取付位置を示す図(形態1乃至形態4)。
【図15】マイクロフォンの位置関係を示す図(従来)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1(b),(c)に示すように、本形態の固定装置1は、複数のマイクロフォンで採取した音のデータとカメラで撮影した映像のデータとを用いて音源を推定する音源推定方法に使用する5個のマイクロフォン2と1個のカメラ3とを所定の関係位置に固定するための装置である。
5個のマイクロフォン2及び1個のカメラ3が固定装置1に固定状態に取付けられることで、5個のマイクロフォン2と1個のカメラ3とが所定の関係位置に固定された音及び映像採取部99が構成される。
図8(b)に示すように、音及び映像採取ユニット100は、音及び映像採取部99と、台装置4とを備える。台装置4は、音及び映像採取部99を上下動可能に載置するとともに、音及び映像採取部99を固定装置1に固定されたマイクロフォン2の中心軸a2と平行な回転中心軸a1を中心として回転可能に載置する。
即ち、音及び映像採取ユニット100は、固定装置1に5個のマイクロフォン2及び1個のカメラ3を固定状態に取付けた音及び映像採取部99が、台装置4上に載せられて回転可能及び上下動可能になった構成である。
【0009】
図7(a)に示すように、固定装置1は、ベース6と、支持フレーム7と、第1のマイクロフォン固定部としてのマイクロフォン対固定部8、第2のマイクロフォン固定部としての第5マイクロフォン固定部9と、マイクロフォン絶縁部品10と、マイクロフォン固定部品11とを備える。ベース6と支持フレーム7とマイクロフォン対固定部8と第5マイクロフォン固定部9とにより固定装置本体5が形成される。
【0010】
ベース6と支持フレーム7とマイクロフォン固定部品11とマイクロフォン2の軸部38とが例えばステンレスのような金属により形成され、マイクロフォン絶縁部品10が絶縁材料により形成される。
【0011】
図5(a)に示すように、ベース6は、例えば、直角二等辺三角形の平板に形成される。ベースの三角形の頂点部に支持フレーム7の三本の支柱14(14a,14b)の下端が溶接や接着などの接続手段により接続される。ベース6の三角形の頂点部と支持フレーム7の三本の支柱14の下端とが凹凸係合するよう構成され、ベース6の三角形の頂点部と支持フレーム7の三本の支柱14の下端とが凹凸係合した状態で溶接や接着などの接続手段により接続される。
【0012】
支持フレーム7は、前側フレーム7aと後側フレーム7bとを備える。前側フレーム7aは、カメラ固定フレーム17と、左右梁18と、固定部支持フレーム19とを備える。カメラ固定フレーム17は、ベース6の直角二等辺三角形の直角の頂点以外の二頂点と接続されてベース6の平板面22に対して垂直方向に延長する前側左右の下部支柱14aと、下部支柱14aの上下中央位置より後側に延長するように設けられたカメラ取付部20とを備える。カメラ取付部20は、ベース6の直角二等辺三角形の二等辺以外の辺と直交する面を備えた平板により形成され、カメラをねじ固定するためのねじを通す貫通孔21を備える。固定部支持フレーム19は、前側左右の下部支柱14aの各上端より互いに近づく方向に斜め上方に延長した後にベース6の平板面22に対して垂直方向に延長する。左右に延長する左右梁18は、前側左右の下部支柱14aの上端部位置同士を繋ぐ。この左右梁18が、支持フレーム7の強度を上げる補強部として機能する。後側フレーム7bは、固定部支持フレーム19aと、前後に延長する前後梁23とを備える。固定部支持フレーム19aは、下端がベースの直角二等辺三角形の直角の頂点と接続されて前側斜め上方向に延長する後側支柱14bにより形成される。前後梁23は、後側支柱14bの中央部より突出して後側支柱14bと左右梁18とを連結する。前後梁23の前端部と左右梁18の中央部とが凹凸係合するよう構成され、前後梁23の前端部と左右梁18の中央部とが凹凸係合した状態で溶接や接着などの接続手段により接続される。
【0013】
図5(a)に示すように、マイクロフォン対固定部8は、平板状の正四角形枠の4つの角部にそれぞれ固定孔31を備えたものである。4つの固定孔31の中心がそれぞれ正四角形の頂点と一致するように形成される。図5(b),図6(a)に示すように、4つの固定孔31を繋ぐ四角の枠部30の内側面32と左右及び後の3本の固定部支持フレーム19,19aの上部とが凹凸係合するよう構成され、四角の枠部30の内側面32と3本の固定部支持フレーム19,19aの上部とが凹凸係合した状態で溶接や接着などの接続手段により接続される。
【0014】
図6(a)に示すように、第5マイクロフォン固定部9は、固定孔31を有した平板リング形状により形成される。第5マイクロフォン固定部9のリングの外周部において3本の固定部支持フレーム19,19aの上端と溶接や接着などで接続される部分には、3本の固定部支持フレーム19,19aの上端と凹凸係合する凹部35が形成される。第5マイクロフォン固定部9の凹部35と3本の固定部支持フレーム19,19aの上端とが凹凸係合した状態で溶接や接着などの接続手段により接続される。
【0015】
以上により、図6(b),図1(a)に示すような固定装置本体5が形成される。
【0016】
そして、図7(a)に示すように、固定装置1を構成するマイクロフォン絶縁部品10とマイクロフォン固定部品11とを使用して、マイクロフォン2が固定孔31に固定される。マイクロフォン絶縁部品10は、上側絶縁部品10aと下側絶縁部品10bとにより構成される。
【0017】
図2に示すように、上側絶縁部品10aは、マイクロフォン2の軸部38が貫通して嵌まり込む大きさの貫通孔39を備えた平板リング形状により形成される。上側絶縁部品10aは、外周径が小さい小径部41と、小径部41の外周径よりも大きい外周径の大径部42とを備えた構成である。小径部41の外周の上端と大径部42の外周の下端とを繋ぐリング面が脱落防止用の鍔面43を形成する。図7(a)に示すように、マイクロフォン2の軸部38が上側絶縁部品10aの貫通孔39を貫通するよう嵌め込まれた状態で、上側絶縁部品10aの貫通孔39の内周面とマイクロフォン2の軸部38の外周面とが接着剤により接着される。この場合、大径部42がマイクロフォン2の音採取部45に近い側に位置されるようにする。これにより、固定孔31の上方よりマイクロフォン2の軸部38の下端側からマイクロフォン2を固定孔31に挿入していくと、小径部41は、固定孔31の内側に位置されて固定孔31の内周面とマイクロフォン2の軸部38とを絶縁する。また、大径部42の下面に相当する鍔面43と固定孔31の周囲の固定部上面46とが接触するため(図1(b),(c)、図7(b)参照)、固定部上面46とマイクロフォン2の軸部38とを絶縁するとともに鍔面43と固定部上面46との係止によりマイクロフォン2の下方への抜け落ちが防止される。
【0018】
図3に示すように、下側絶縁部品10bは、マイクロフォン2の軸部38が貫通して嵌まり込む大きさの貫通孔48を備えた平板リング形状により形成される。下側絶縁部品10bのリングの外周径は、固定孔31の径よりも大きく形成される。下側絶縁部品10bは、マイクロフォン2の軸部38に接着されていない。
【0019】
図4に示すように、マイクロフォン固定部品11は、例えば、スナップリングと呼ばれる周知の抜け止め輪により形成される。
【0020】
従って、図7(a),(b)に示すように、軸部38に上側絶縁部品10aが接着されたマイクロフォン2の軸部38の下端側からマイクロフォン2を固定孔31に挿入して、小径部41が固定孔31を貫通して鍔面43と固定孔31の周囲の固定部上面46と接触させた状態で、下側絶縁部品10bをマイクロフォン2の軸部38の下端側から軸部38に通して下側絶縁部品10bのリング上面49と固定孔31の周囲の固定部下面51とを接触させ、その状態で、下側絶縁部品10bのリング下面52とマイクロフォン固定部品11の上面56とを接触させながらマイクロフォン固定部品11の係合孔54を軸部38に係合させる。
【0021】
以上によれば、マイクロフォン絶縁部品10によって各マイクロフォン2の軸部38と固定部8,9とが絶縁されるので、マイクロフォン2の入力信号に電気的なノイズが混入することを防止できる。また、マイクロフォン2の軸部38に接着された上側絶縁部品10aが固定孔31の周囲の固定部上面46と係合することにより、マイクロフォン2の下方への抜け落ちが防止される。また、マイクロフォン固定部品11がマイクロフォン2の軸部38に固定状態に取付けられたことにより、マイクロフォン固定部品11が下側絶縁部品10bのリング下面52に係止するので、マイクロフォン2の上方向への抜けが防止される。また、下側絶縁部品10bとマイクロフォン2の軸部38とが接着されていないので、マイクロフォン2の故障時には、マイクロフォン固定部品11、及び、下側絶縁部品10bを外すことにより、マイクロフォン2を容易に交換できるようになる。
【0022】
図8(a)に示すように、マイクロフォン対固定部8の4つの固定孔31にそれぞれマイクロフォン2を固定するとともに、第5マイクロフォン固定部9の固定孔31にもマイクロフォン2を固定する。
【0023】
以上により、マイクロフォン対固定部8には、一方の一対の2個のマイクロフォン2,2の音採取部45の中心が第1の直線X(図15参照)上に所定の間隔で位置されるように一方の一対の2個のマイクロフォン2,2が固定されるとともに、他方の一対の2個のマイクロフォン2,2の音採取部45の中心が第1の直線Xと直交する第2の直線Y(図15参照)上に所定の間隔で位置されるように他方の一対の2個のマイクロフォン2,2が固定され、第5マイクロフォン固定部9には、1個のマイクロフォンの音採取部の中心が上記4個のマイクロフォン2の音採取部45の中心を繋ぐ四角平面上とは離れた位置に位置されるように1個のマイクロフォン2が固定されることによって、正四角錐の頂点位置のそれぞれに5つのマイクロフォン2の音採取部45の中心が位置される。
【0024】
そして、カメラ3をベース6上に設置し、カメラ取付部20に形成された貫通孔21にねじ55を貫通させ、ねじ55をカメラ3の側面に設けられたねじ孔57に締結することにより、カメラ3がカメラ取付部20にねじ55で固定状態に取付けられる。
【0025】
以上により、音及び映像採取部99が形成される。本形態の音及び映像採取部99は、図1(b),(c),図8(b)に示すように、左右方向aの寸法が40mm(支持フレームの左右幅寸法は37mm)、前後方向bの寸法が60mm(支持フレームの左右幅寸法は20mm)、高さ方向cの寸法が85mmである。また、音及び映像採取部99によれば、音響中心(各マイクロフォンから等距離にある点)と映像中心(カメラのレンズの中心位置)との差を、左右方向aにおいては0mm、前後方向bにおいては22mm、高さ方向cにおいては42mmにできた。従って、推定した音源位置と撮像画像との誤差を少なくできる。
【0026】
台装置4は、三脚60と、上下伸縮機構61と、回転台62とを備える。上下伸縮機構61は、伸縮棒63と、伸縮棒63の伸縮量を決める調節機構64とを備える。調節機構64は、伸縮棒63のガイド筒65に設けられた貫通ねじ孔66と、貫通ねじ孔66に螺合して進退する調節ねじ67とにより形成され、調節ねじ67を締結することで調節ねじ67の先端が伸縮棒63の外周に押し付けられて伸縮棒63の上下動を規制し、これにより、伸縮棒63の上端に回転可能に設けられた回転台62の高さ位置が決まる。回転台62は円板状に形成され、円の外周面68にはローレット69が形成される。回転台62の上面の中心から連結棒63aが設けられ、この連結棒63aがベース6に設けられた回転中心孔90に嵌合されて連結棒63aとベース6とが互いに固定されることで、音及び映像採取部99と台装置4とが連結され、これにより、音及び映像採取ユニット100が完成する。ローレット69に手を当てて回転台62を回転させることにより、回転台62の円の中心を回転中心として回転台62と一緒に音及び映像採取部99も回転する。
【0027】
音及び映像採取ユニット100は、図14に示すように、車110の室内111に設置され、5個のマイクロフォン2により採取される音、及び、カメラ3で撮像された映像が音源位置推定装置101に出力される。音源位置推定装置101は、入力した音及び映像に基いて出力手段としての画像表示手段102に音源方向推定画像を表示する。従って、車110の室内111で発生した異音の発生源を推定することができる。
【0028】
形態1の固定装置1によれば、5個のマイクロフォン2の位置関係を正確に維持でき、かつ、5個のマイクロフォン2と1つのカメラ3とを一緒に固定できるので、音源位置推定の精度を向上できる。また、音響中心と映像中心との差を小さくしたので、推定した音源位置と撮像画像との誤差が少なくなる。つまり、5個のマイクロフォンとカメラとを所定の位置関係で一体に固定したので、音源位置推定の精度を向上しつつ、小型で携帯性にも優れた固定装置とすることができる。
【0029】
形態2
図9に示すように、マイクロフォン対固定部8及び第5マイクロフォン固定部9が、固定孔31と、固定孔31の内周面73と固定部8,9の外周面74とに貫通する切り込み75とを備え、図10,図11に示すように、上側絶縁部品10a及び下側絶縁部品10bにも、上記固定部8,9の切り込み75と対応させた切り込み76,77を設けた。切り込み75,76,77の幅gは、マイクロフォン2と音源位置推定装置101とを繋ぐ図外の電線ケーブルが通る寸法に形成される。その他の構造は、形態1と同じである。
形態2によれば、マイクロフォン2と音源位置推定装置101とを繋ぐ図外の電線ケーブルをマイクロフォン2に接続したままの状態で当該電線ケーブルを切り込み75,76,77に通して固定孔31内に入れてから、マイクロフォン2を固定孔31に挿入でき、マイクロフォン2の固定作業の際にマイクロフォン2から電線ケーブルをいちいち取り外す必要がなくなるので、マイクロフォン2の固定作業の際の煩雑さを解消できる。
【0030】
形態3
図12に示すように、マイクロフォン対固定部8及び第5マイクロフォン固定部9の固定孔31がマイクロフォン2の軸部38を横から挿入可能とする切り込みとしての開口81を備えた構成とした。開口81の幅寸法Wはマイクロフォン2の軸部38が固定孔31内に挿入可能な寸法に形成される。その他の構造は、形態1と同じである。
形態3によれば、マイクロフォン2の軸部38が開口81を介して固定孔31内に挿入可能なので、マイクロフォン2の固定作業がより簡単となり、マイクロフォン2の固定作業の際の煩雑さを解消できる。
【0031】
形態4
図13に示すように、マイクロフォン対固定部8及び第5マイクロフォン固定部9を例えばアクリル樹脂のような絶縁材料85により形成した。また、形態3と同様に、マイクロフォン対固定部8及び第5マイクロフォン固定部9の固定孔31がマイクロフォン2の軸部38を横から挿入可能とする開口86を備えた構成とした。開口86の幅寸法W1はマイクロフォン2の軸部38が固定孔31内に挿入可能な寸法に形成されるが、本形態4では、マイクロフォン対固定部8及び第5マイクロフォン固定部9を樹脂で形成したので、金属よりも撓みやすい。従って、開口86の幅寸法は、形態3の開口81の幅寸法Wよりも小さくてもよい。開口86の幅寸法W1を小さくできるので、マイクロフォン2が固定孔31に固定された後、マイクロフォン2が開口86側に傾きにくくなり、固定孔31から外れ難くなる。
形態4によれば、形態1のマイクロフォン絶縁部品10が不要となり、マイクロフォン対固定部8及び第5マイクロフォン固定部9そのものでマイクロフォン2へのノイズ混入を防止できるようになるので、コスト、作業性の面で有利となる。また、形態3と同様に、マイクロフォン2の軸部38が開口86を介して固定孔31内に挿入可能なので、マイクロフォン2の固定作業がより簡単となり、マイクロフォン2の固定作業の際の煩雑さを解消できる。その他の構成は形態1と同じである。
【0032】
尚、形態3,4においては、マイクロフォン2が固定孔31に固定された後、マイクロフォン2が開口81,86側に傾く可能性があるので、この傾きを防止するために、マイクロフォン2に図外の傾き防止材を取付けておくことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の固定装置1を用いた音及び映像採取ユニット100は、車110の室内111で用いるだけでなく、どのような場所でも用いることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 固定装置、2 マイクロフォン、3 カメラ、7 支持フレーム、
8 マイクロフォン対固定部(第1のマイクロフォン固定部)、
9 第5マイクロフォン固定部(第2のマイクロフォン固定部)、
10 マイクロフォン絶縁部品、10a 上側絶縁部品、10b 下側絶縁部品、
11 マイクロフォン固定部品、31 固定孔、38 軸部、41 小径部、
43 鍔面、45 音採取部、75 切り込み、81,86 開口(切り込み)、
85 絶縁材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマイクロフォンで採取した音のデータとカメラで撮影した映像のデータとを用いて音源を推定する音源推定方法に使用するマイクロフォン及びカメラを所定の関係位置に固定するための固定装置であって、
4つのマイクロフォンを固定する第1のマイクロフォン固定部と、1つのマイクロフォンを固定する第2のマイクロフォン固定部と、カメラ取付部と、カメラ取付部及び第1,第2のマイクロフォン固定部を支持する支持フレームと、マイクロフォン固定部品とを備え、
第1のマイクロフォン固定部には、一方の一対の2個のマイクロフォンの音採取部の中心が第1の直線上に所定の間隔で位置されるように一方の一対の2個のマイクロフォンが固定されるとともに、他方の一対の2個のマイクロフォンの音採取部の中心が第1の直線と直交する第2の直線上に所定の間隔で位置されるように他方の一対の2個のマイクロフォンが固定され、
第2のマイクロフォン固定部には、1個のマイクロフォンの音採取部の中心が上記4個のマイクロフォンの音採取部の中心を繋ぐ四角平面上とは離れた位置に位置されるように1個のマイクロフォンが固定され、
カメラは、カメラ取付部に取付けられて、各マイクロフォンの出力信号の位相差から推定される音源位置の映像を採取可能な位置に固定され、
第1,第2のマイクロフォン固定部は、マイクロフォンの軸部を貫通させて軸部を固定する固定孔を備え、
マイクロフォンは、固定孔からの引き抜けが防止されるようにマイクロフォン固定部品によりマイクロフォン固定部に固定されたことを特徴とする固定装置。
【請求項2】
第1,第2のマイクロフォン固定部が、固定孔と、固定孔の内周面と固定部の外周面とに貫通する切り欠きとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
マイクロフォン絶縁部品を備え、マイクロフォンは、マイクロフォンの軸部がマイクロフォン固定部の固定孔を貫通した状態でマイクロフォン絶縁部品により軸部とマイクロフォン固定部とが絶縁されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固定装置。
【請求項4】
マイクロフォン絶縁部品が上側絶縁部品と下側絶縁部品とを備え、マイクロフォンの軸部が上側絶縁部品の孔を貫通した状態でマイクロフォンの軸部の外周面と上側絶縁部品の孔の内周面とが接着されており、上側絶縁部品が、固定孔の内側に位置されて固定孔の内周面とマイクロフォンの軸部とを絶縁する小径部と、固定孔の周囲の固定部上面に接触して固定部上面とマイクロフォンの軸部とを絶縁するとともにマイクロフォンの固定孔からの脱落を防止する鍔面とを備え、下側絶縁部品が、固定孔の周囲の固定部下面に接触して固定部下面とマイクロフォンの軸部とを絶縁することを特徴とする請求項3に記載の固定装置。
【請求項5】
第1のマイクロフォン固定部と第2のマイクロフォン固定部とが、絶縁材料により形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−206415(P2010−206415A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48517(P2009−48517)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】