説明

固定触媒床上の混合投入物を冷却し、分配するためのデバイス

【課題】下降流触媒反応装置の冷却ゾーン内で使用するための、取り付けやすいきわめて単純で、コンパクトな設計の、また比較的小さなサイズのデバイスを提供する。
【解決手段】下降流触媒反応装置1の冷却ゾーン11内のデバイスであって、内壁20に、水平に且つ平行に取り付けられる下側平トレー18および該下側平トレー18の上に配置される上側平トレー17を備え、上側平トレー17は、穿孔されており、下側平トレー18および上側平トレー17の間の接続要素であって、液体とガスの混合物を収集し、分配する分配チューブ19を備え、この分配チューブ19は上側平トレー17の上の特定の高さから延在し、下側固定触媒床の上から特定の距離にある下側平トレー18の下で終端している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下降流反応装置の冷却ゾーン内で使用する固定触媒床上で混合投入物(charge)を冷却し、分配するためのデバイスに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、下降流触媒反応装置の冷却ゾーンに到達する反応混合物を冷却し、再分配することを目的として、下降流触媒反応装置の冷却ゾーン内でもっぱら動作するように設計された複合デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0003】
異なる液相及び気相にある薬品が予混合されて垂直反応装置に投入され、固定触媒床として知られる、反応装置内で垂直方向に取り付けられている透過性トレー上に担持される固体粒状触媒の1つ又は複数の層を連続的下降流内に入って通過して互いに反応する、石油精製、化学処理、及び有機化合物の生産のためのプロセスが、よく知られている。
【0004】
この技術を使用する石油精製プロセスの中には、水素処理、水素化、脱水素化、水素化分解と称されるプロセス、及び他の処理がある。全て、発熱反応を必要とする触媒プロセスであり、その薬品は通常液状又は部分的に気化された炭化水素及び気体状水素である。
【0005】
典型的な水素化分解プロセスでは、例えば、初留点(IBP)が320℃から390℃までの範囲内である高分子量の液化炭化水素の投入物が、気体状水素と予混合され、次いで、垂直触媒反応装置の頂部に注入されるが、この典型的な構成は、この説明に付随する図1に図式的に示されている。
【0006】
投入物は、下降流中で反応装置内を流れ、固定触媒床を連続的に通過し、自己反応して、プロセスに課される激しさの程度に応じてディーゼル範囲(100℃を中心とするIBP)又はガソリン範囲(30℃を中心とするIBP)の分子量のより軽質の炭化水素を生成する。
【0007】
混合された投入物が固定触媒床を通過するときにこれらの反応が効率よく生じるようにするために、
第1に、薬品の設計化学量論比が確実に維持されるように気相(水素)が液相(炭化水素)とよく混合された状態を保つこと、
第2に、投入物(charge)が、固定触媒床の表面上に一様に分配されることが最も重要である。
【0008】
投入物を一様に分配することで、投入物が固定床内の優先的な経路を辿り、投入物がそこに存在する触媒の部分から逸れて、他の部分に過剰に担持するときに現れ、コークの形成により失活が一段と加速する、固定床上の「ホットスポット」の出現が回避される。
【0009】
これらの発熱反応によって発生する過度の熱を制御する必要もある。このような制御は、反応装置の内部より低い温度の冷却流体、一般的にはプロセス・ガス、又は液体の注入により、上側固定触媒床と下側固定触媒床との間の反応装置の中間ゾーン内で実行される。この流体は、非常に高温の反応液と混じり合うと、その温度をより適切な温度に下げ、プロセスは満足のゆく形で進行するようになる(上記図1を参照されたい)。冷却を促進するこの流体は、液体、例えば、ガソリン範囲にある軽質ナフサであってもよいが、一般的には、反応装置を通過する反応混合物の特定の気体成分であり、正確には、気体状薬品の前の触媒の床内で失われた部分を置き換え、これにより、反応装置を通るパス全体を通して薬品の気体/液体比を一定に保つことを意図している。
【0010】
専門家の技術文献では、上述の混合、冷却、及び分配の問題を解決するために分配デバイスを使用することを教示している。反応装置の冷却ゾーン内への取り付けられる場合、それは常に冷却流体用の注入システム(急冷パネル)の下、及び下側固定床上の触媒の層の上に取り付けられ、これらのデバイスは、反応装置の横断面全体を占有し、また当初は、投入物の流れが触媒床上の単一点に集中するのを防ぎ、プレートの表面上で径方向に投入物を分配し、投入物を異なるいくつかの穴に通して触媒床の表面に載るようにする単純な穿孔プレートであった。投入物が触媒床に到達する点の数を増やすことで、触媒床上への投入物の分配が改善されたが、薬品の十分な混合を促進することや、温度を効果的に下げることにはあまり役立たず、冷却流体の非常に大きな流れを使用することが必要になった。
【0011】
今日では、これらのデバイスの大半は、基本的に、古い多孔板と同じ位置に同じ方法で取り付けられた分配トレーを備えるが、いくつかの穴を持つだけの代わりに、多様な構成をとる。これらのうち、最も広く使用されているのは、煙突に似た、さまざまな小さなダム(dam)、したがってさまざまな形状を有する、ただし一般的にはチューブ状の、ダムによって排水されるトレーであり、ガスを通すことはできるが、液体を直接的には通さないようになされた横方向開口部を含むカバーを備え、液体は平らなリザーバー(reservoir)を形成してトレー上に部分的に保持され、滝のようにチューブ状ダムを越えて連続的に溢れ出て、常にガスと効果的に接触し、2つの相の間の十分な混合を促進し、投入物を触媒床の表面上により適切に分配する。
【0012】
固定触媒床上のさまざまな種類の混合投入物混合及び分配デバイスは、例えば、米国特許第2,632,692号、米国特許第2,898,292号、米国特許第3,235,344号、米国特許第3,172,832号、及び米国特許第5,462,719号などの特許文献において説明されている。これらのデバイスは、汎用であるとみなせるが、それは、反応が開始するゾーン(反応装置の頂部、固定触媒床の第1の層の前)とその冷却ゾーンの両方で使用されるからである。
【0013】
現在のところ、専門家の技術文献では、いくつかの新しいタイプの対になった(conjugate)デバイスについてすでに説明しており、これは、その構成において複数のコンポーネントを組み込み、垂直方向下降流反応装置の冷却ゾーン内で使用するように特に設計されたものである。これらの共役デバイスは、気相とトレー上に保持される液相との間の接触時間を延ばすことによって、異なる相にある薬品同士の混合を改善し、固定触媒床上への混合投入物の分配を大幅に改善するので、プロセスの全体的効率を高めることになるが、冷却ゾーン内の温度を下げることに関してはそれほど効果的であることが証明されておらず、したがって、この技術の改善は、特に冷却ゾーンでは、いぜんとして必要である。
【0014】
垂直下降流反応装置の冷却ゾーンにおいて動作するように特に設計された対になった(conjugate)デバイスの中で、米国特許第5,152,967号及び米国特許出願公開第2005/0163682号及びカナダ特許第2121710号において説明されている対になったデバイスについて言及することにする。上で引用されている特許に示されている対になったデバイスは、典型的には、他のコンポーネントと結合された分配トレーを備え、一般的には、トレーは小さな液体のシートをそれ自体の上に保持することによって機能する一方、デバイスの他のコンポーネントは、冷却ガスを強制的に分配トレー上に保持された前記液体のシート内に通す機械的誘導手段を有する。通常は圧力下で反応装置内に注入される冷却ガスがこのように液体のシート(sheet)を通ることは、液体層中に乱流を引き起こすことが意図されており、液体層を強く攪拌させることによって、液体薬品と気体薬品との混合を改善し、同時に液体投入物の温度を十分に下げる。冷却ゾーンの下に置かれている固定触媒床上に混合された投入物を適切に分配するために、上述のデバイスでは、分配トレー上に、又は分配トレーの上部に取り付けられた、或いは他の対になったコンポーネント上に取り付けられたさまざまな機械式フロー・デフレクター(flow deflector)を使用する。
【0015】
このように複数のコンポーネントがあると、前記デバイスの機械的設計が非常に複雑なものになり、その結果、工業用に設置する作業は骨の折れる、困難な仕事になる。これに加えて、これらのデバイスは、非常に大きく、また重く、したがって、反応装置内に著しいスペースを占有し、これらを収納するために、反応装置はかさばり、非常に高価なものとならざるをえない。
【0016】
このタイプの複合デバイスの使用に関する他の欠点は、ガス及び液体の流れを特定の方向に導くためにトレー内に組み込まれた小さなスロット(slot)と機械的障害物が存在することに関係する。これらの方向付けする溝及びバッフルは、いとも簡単に腐食し、詰まりを生じる傾向を有するため、デバイスの正常な動作を早期に妨げ、かなり頻繁にメンテナンスのために工業機器を停止させる必要があり、それは主に、取り扱いが難しい懸濁固体粒子及び大きな分子量を有する生成物が存在するときに、これらの環境では非常に高い温度が使用されるせいである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、取り付けやすいきわめて単純で、コンパクトな設計の、また比較的小さなサイズの下降流触媒反応装置の冷却ゾーン内で使用するための革新的デバイスを提供することによってこれらの全ての問題を解消することであり、これは、冷却流体を反応装置投入物と十分に混合し、投入物を触媒床上に均一に分配し、主として反応装置の温度を効果的に下げ、これにより、このタイプの反応装置の効率及び変換率の改善を促進する効果を有するものであり、これについて以下で説明する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、下降流反応装置の冷却ゾーン内で使用するために固定触媒床上の混合投入物を冷却し、分配するためのデバイスに関係し、これは下側平トレーの上に配置され、該下側平トレーに接続されている上側平トレーを備え、これら2つのコンポーネントは、反応装置、特に炭化水素の水素処理用の反応装置の内壁に水平に且つ平行して取り付けられる。
【0019】
上側平トレーは、穿孔されており、デバイスの2つのコンポーネントの間の接続要素であって、液体とガスの混合物を収集し、分配するチューブを備え、このチューブは上側平トレーの上の特定の高さから延在し、下側固定触媒床の上から特定の距離にある下側平トレーの下で終端するコンポーネントである。
【0020】
冷却流体の供給口に対するデバイスの配置について、本発明の第1の実施形態は、
a)液相冷却流体を供給するための供給口は、デバイスの上側平トレーの上に配置することができること、及び
b)気相の状態にある冷却流体を供給するための供給口は、デバイスの対になったコンポーネントの間に配置することができる、つまり、上側平トレーと下側平トレーとの間に形成されるチャンバー内に入るように配置することができること、
という2つのオプションを有する。
【0021】
前記配置構成内のこれら2つの供給口の存在は、反応装置が液体及び気体の冷却流体によって同時に運転できるように設計されている場合に用いられる。反応装置が、気体の流体の注入のみで運転するように設計されている場合、「b」として上に示されている構成を使用することで十分である。この実施形態では、液体の冷却流体のみの注入で反応装置を運転することを許していない。
【0022】
本発明では、上側平トレーをもう1つの下側平トレーの上に配置することができる代替実施形態も可能であり、その実施形態ではこれらのトレーが、気相若しくは液相又は気相と液相の混合相であってよい冷却流体の供給口の常に下において、反応装置の内壁に水平に且つ平行に取り付けられる。
【0023】
次に、本発明が関係する下降流反応装置の冷却ゾーン内で使用するための固定触媒床上の混合投入物を冷却し、分配するためのデバイスは、以下の詳細な説明の不可欠な部分をなす後述の図面を参照しつつこの説明によって十分に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】トリクルベッド反応器として文献により知られている、固定触媒床を備える、技術水準における典型的な下降流反応装置の概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の概略図である。
【図3】断面A−Aに沿った図2に例示されている本発明の実施形態の断面図である。
【図4】本発明によるデバイスの第2の可能な実施形態の概略図である。
【図5】断面A−Aに沿った図4に例示されている本発明の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明をよく理解し評価できるようにすることを目的として、本発明が関係する下降流反応装置の冷却ゾーン内で使用するために固定触媒床上で混合投入物を冷却し、分配するためのデバイスの詳細な説明を、各コンポーネントの識別に応じて図を参照しつつ行う。
【0026】
図1は、典型的な下降流固定触媒床反応装置(1)の概略図であり、この装置では中央投入物注入装置(2)及び混合投入物分配デバイス(3)を通じて反応装置(1)の上部に供給する前に、液体(例えば、高分子量の炭化水素)とガス(例えば、水素)とを含む混合投入物が予混合される。前記中央投入物注入装置(2)は、混合物を、捕集チューブ(5)が取り付けられている円盤形状の平トレー(4)の周りに噴霧する。固体の化学的に不活性の球状ペレットの2つの層(7、8)の間に置かれる粒状固形物の上側固定触媒床(6)は、投入物分配用の平トレー(4)の下に配置され、同じく不活性粒子セラミック材料で充填される、多孔質バスケット(9)を第1の層(7)内に挿入することも一般的なことである。
【0027】
これらの層(7、8)の目的は、触媒床上に投入物を一様に分配するのを補助することであり、その際にバスケット(9)は、投入物とともに入り込んだ可能性があり、触媒床を詰まらせるおそれのある異物をとどめておく任務を有する。
【0028】
触媒床の温度を測定し、投入物が通過するときにそこに生じる発熱反応を制御することを可能にする熱電対(図示せず)が、触媒床内に配置されているウェル(well)(10)内に配置される。
【0029】
固形ペレットのこの第2の層(8)の下に、反応を「弱める」ためのチャンバー、つまり、2つの上側及び下側の固定触媒床の間に置かれた「急冷(quench)」チャンバー又は冷却ゾーン(11)がある。上側固定触媒床(6)で生じる反応は高い発熱性を有するので、下側固定床(12)内の触媒を上で発生する過剰な熱から保護することが必要である。典型的には、このような冷却は、このような作業を適切に行うために、上側固定触媒床(6)から流れる投入物の真下にある、反応装置の横方向表面領域全体を通して、水平方向と半径方向の両方においてガスの最適な分配を促進しなければならない、「急冷パネル」(13)を通じてより低い温度のガス又は液体を反応装置内に注入することを通じてもたらされる。
【0030】
ガス及び液体の混合物は、「急冷パネル」(13)の直後に配置されている第1の分配デバイスと類似の第2の分配デバイス(14)に投入物を通過させ、その投入物をその第2の分配デバイス(14)に貫流させて第1の上側固定触媒床(6)の場合と同じ程度の一様さで次の固定床(12)の表面に到達するように引き止められる。最終生成物は、反応装置の底部にある生成物捕集装置(15)内に捕集され、消費された触媒も、触媒捕集装置(16)によって捕集される。
【0031】
図2は、下側平トレー(18)の上に配置され、それに接続されている上側平トレー(17)を備える本発明によるデバイスの第1の実施形態を示している。上側平トレー(17)は、穿孔されており、液体とガスの混合物用の捕集及び分配チューブ(19)を備え、これらはデバイスの平トレー(17及び18)の間の接続部材であり、これらの接続部材は上側平トレー(17)上の所定の高さから延在し、下側固定触媒床(図示せず)の上の特定の距離にある下側平トレー(18)の下で終端する。デバイスの平トレー(17及び18)は、反応装置冷却ゾーン(11)内に配置され、反応装置(1)の内壁(20)に水平に且つ平行に取り付けられる。
【0032】
気体の冷却流体は、第1の供給口(21)を通じて、上側平トレー(17)と下側平トレー(18)との間の空間によって形成されるチャンバー内に送り込まれ、次いで、上側トレー(17)内の穴を通過して、トレーの上にある液体のシートと直接接触することによって混合物を形成する。
【0033】
反応装置(1)が、2種類の冷却流体によって同時に運転するように設計され、これらの冷却流体のうちの一方が気相にあり、他方が液相にある場合、両方の供給口(21及び22)が使用される。上側トレー(17)と下側トレー(18)との間に配置されている第1の供給口(21)は、気体の冷却流体のために使用され、上側トレー(17)の上に取り付けられている第2の供給口(22)は、液相の冷却流体のために使用され、この場合、上側トレー(17)の上への液体の分配を補助するためにスプレーを装着する必要がある。
【0034】
上側平トレー(17)は、その上に特定の液体のシート(23)を保持するように設計されており、また気体の冷却流体の上昇する蒸気が通過する一組の穴(24)も有する。この液体のシートの主要機能は、蒸気と反応装置(1)内を循環している液体との接触をより効果的なものとすることであり、これにより、捕集及び分配チューブ内を通過するガスと液体の混合物の化学量論比を保持するだけでなく、反応装置内を通って下降する反応混合物を冷却する効率も高めることができる。本発明によるデバイスは、この冷却条件を十分に満たし、その中を流れる反応混合物の径方向温度差を1から2℃までの範囲内に下げることができるが、以前のデバイスでは、このような温度差の低下は10から20℃程度までしか可能ではなかった。
【0035】
ガスと液体の混合物用の捕集及び分配チューブ(19)の内径と上側トレー内の穴(24)の直径と上側平トレー(17)の面積の間の寸法上の関係は、トレー上のこれら前記の付属品の形状、数量、及び配置構成とともに、本発明の一部をなすことはなく、少なくともそのようなガス及び液体の混合物用の捕集及び分配チューブを含む設計となっている一群の分配トレーに基づいて選択されうる。
【0036】
上側トレー(17)と下側トレー(図8)との間の空間によって形成されるチャンバーは、気体の冷却流体と上側トレー(17)の上にある液体のシート内の液体投入物との混合を、さらには2つの冷却流体を使用して運転が行われる場合には液相の冷却流体との混合も促進する機能を有する。上側トレー(17)内の穴(24)の配置構成、直径、及び数量は、上側平トレー(17)の設計と一致する設計比に適合していなければならず、また下側トレー(18)から液体を排出するための穴(25)は、下側トレー(18)上に液体が不必要に蓄積するのを回避するために上側平トレー(17)内に存在する穴(24)の総面積の1/8から1/20程度の穿孔された総面積を有していなければならない。
【0037】
本発明によるデバイスが最適化された性能を持つようにするために、上側平トレー(17)がその上に5から10cm程度の深さの液体のシートを有しているべきであることが判明している。この液体シールを設けるために、デバイスの設計では、デバイスの上側冷却ゾーン(11a)と下側冷却ゾーン(11b)との間の差圧が3から7kPaまでの範囲内にあることを考慮しなければならない。又は、より具体的には、上側平トレー(17)と下側トレー(18)とによって囲まれるデバイス内のゾーンとデバイスの上側ゾーン(11a)との間の、上側平トレー(17)上の液体のシート(23)のレベルにおける差圧は、2から4kPaまでの範囲内に保持されなければならず、これに加えて、デバイスの内部ゾーンとデバイスの下側冷却ゾーン(11b)の中では、捕集及び分配チューブ(19)で測定される差圧は、1から3kPaまでの範囲内に保持されなければならない。
【0038】
本発明がわかりやすく視覚化されうるように、図3は、断面A−Aに沿った図2に示されている第1の実施形態の断面図となっている。
【0039】
本発明は、上側平トレー(17)が第2の下側平トレー(26)の上に配置されてよい代替実施形態をも考慮しており、その実施形態ではこれらのトレーが、以下の構成で、常に冷却流体用の供給口(22)の下で、反応装置(1)の内壁(20)に水平に且つ平行に取り付けられている。
a)上側平トレー(17)は、前記上側平トレー(17)を通過する、ガスと液体の混合物用のさまざまな捕集及び分配チューブ(19)を有し、チューブ(19)は前記上側平トレー(17)に溶接され、前記上側平トレー(17)から上に特定の距離の長さで延在し、下側平トレーの上の特定の高さのところで終端する。
b)第2の下側平トレー(26)も、ガス及び液体の混合物用のさまざまな捕集及び分配チューブ(30)を有し、これらのチューブは、前記下側平トレー(26)に溶接され、前記下側平トレー(26)を通過し、上側平トレー(17)から下に特定の距離の長さで延在し、下側平トレー(26)の下の、下側固定触媒床から指定された距離のところで終端する。
c)2つのトレー上のガス及び液体の混合物用の捕集及び分配チューブ(19及び30)は、千鳥(staggered)配置構成で取り付けられる。
【0040】
図4は、本発明によるデバイスのこの可能な第2の実施形態を示しており、該デバイスも、上側平トレー(17)を備えるが、該トレーは、ここでは、上側平トレー(17)に類似の設計の第2の下側平トレー(26)からある距離だけ上のところに配置されている。デバイスのこの実施形態でも、平トレー(17及び26)は、両方のトレーがそれらの上に液体のシート(27及び28)を十分な深さで保持し、反応装置(1)内の反応混合物の効果的な冷却を促進するだけでなく、その反応混合物と反応装置(1)の冷却ゾーン(11)内に入る冷却用の液体又はガスとの適切な接触をも促進することができるように設計されている。
【0041】
デバイスのこの第2の実施形態では、液体若しくは気体の流体用の供給口(29)は、常に本発明によるデバイス内の一組の平トレー(17及び26)の上に配置される。
【0042】
上側平トレー(17)は、さまざまなガス及び気体の混合物用の捕集及び分配チューブ(19)が溶接されており、それらのチューブの下側端部は下側平トレー(26)の上にたまっている液体のシート(28)中に浸漬され、さらに、下側平トレー(26)も、ガス及び気体の混合物用の捕集及び分配チューブ(30)が溶接されており、それらのチューブの上側縁は、上側平トレー(17)から特定の距離だけ下のところにあり、その下側端部は、図には示されていない下側固定触媒床の表面から特定の距離だけ上にある。
【0043】
前記捕集及び分配チューブ(19及び30)は、下側平トレー(26)上のチューブ(30)が、上側平トレー(17)上のチューブ(19)と一列にならないように千鳥配置で配列されるが、それは、一列に並ぶと、デバイス内を通過する反応混合物及び冷却流体が十分な移動を示しえないからである。捕集及び分配チューブ(19)の終端では、上側平トレー(17)から溢れる液体を直接下側平トレー(26)の表面上に放出し、下側平トレー(26)上の他のチューブ上には放出しないようにしなければならない。この第2の実施形態では、液体が移動すると、薬品のガス及び液体が互いに2度接触することが必要になり、これによりデバイスが意図されている温度低下をなおいっそう効果的にする。
【0044】
同様に、上側平トレー(17)上の捕集及び分配チューブ(19)の底部端部が、下側平トレー(26)上に保持される液体のシート(28)の表面から下、20mmから40mmまでの範囲内の距離のところまで確実に浸漬されるようにする必要がある。
【0045】
前の実施形態と同様にして、本発明によるデバイスが適切に機能するようにするために、両方の平トレー(17及び26)が液体のシートをその上で5から10cmまでの深さに保持するように、またこの液体シールが形成されるようにするために、デバイスの設計では、上述の冷却ゾーンの間の差圧を考慮しなければならない。つまり、デバイスの設計では、デバイスの上側冷却ゾーン(11a)と下側冷却ゾーン(11b)との間の差圧が3から7kPaまでの範囲内であるよう考慮しなければならない。或いは、より具体的には、上側平トレー(17)及び下側平トレー(26)によって囲まれるデバイスの内部ゾーンとデバイスの上側冷却ゾーン(11a)との間で、上側平トレー(17)上の液体のシート(23)のレベルにおける差圧は、2から4kPaまでの範囲内に保持されなければならず、それと同時に、捕集及び分配チューブ(19)で測定されたデバイスの内部ゾーン全体(17及び26)とデバイスの下側冷却ゾーン(11b)との間の差圧も、1から3kPaまでの範囲内に保たれなければならない。
【0046】
本発明によるデバイスの機能を高めるために、冷却流体は、液体状態にあるときは、液体スプレー(図示せず)により注入されなければならず、これらは当業者にすでによく知られている応用例である。
【0047】
本発明がわかりやすく視覚化されうるように、図5は、図4に示されている本発明の第2の実施形態の断面A−Aに沿った断面図を示している。
【0048】
本発明による2種類のデバイスにおける平トレー(17及び18、又は17及び26)を隔てる距離を決定することに関して、さらには下側固定触媒床上の捕集及び分配チューブ(19及び30)の端部に関して、これらは反応装置設計データに基づいて実行される計算のみを基にして確定することができ、このような計算は十分に当業者の技術の範囲内のものであり、このような理由から、これは、この説明の一部とならないので説明されていない。
【符号の説明】
【0049】
1 下降流固定触媒床反応装置
2 中央投入物注入装置
3 混合投入物分配デバイス
4 平トレー
5 捕集チューブ
6 上側固定触媒床
7、8 球状ペレットの層
9 多孔質バスケット
10 ウェル
11 「急冷」チャンバー又は冷却ゾーン
11a 上側冷却ゾーン
11b 下側冷却ゾーン
12 下側固定床
13 急冷パネル
14 第2の分配デバイス
15 生成物捕集装置
17 上側平トレー
18 下側平トレー
19 液体とガスの混合物用の捕集及び分配チューブ
20 内壁
21 第1の供給口
22 第2の供給口
23 液体のシート
24 穴
25 穴
26 第2の下側平トレー
27、28 液体のシート
29 冷却流体
30 捕集及び分配チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定触媒床上で混合投入物(charge)を冷却し、分配するためのデバイスであって、
下側平トレー(18)の上に配置され、該下側平トレー(18)に接続されている上側平トレー(17)を備え、該上側平トレー(17)は穿孔され、液体及びガスの混合物用の捕集及び分配チューブ(19)を取り付けられており、これらのチューブは該デバイスの該平トレー(17及び18)の間の接続部材であり、これらの要素は該上側平トレー(17)の上の特定の高さから延在し、該下側平トレー(18)の下の、下側固定触媒床の上の特定の距離のところで終端することを特徴とする上記デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の固定触媒床上で混合投入物を冷却し、分配するためのデバイスであって、該デバイスは、冷却流体(21)用の第1の送達口が前記上側平トレー(17)と前記下側平トレー(18)との間の該デバイスのチャンバー内にあり、反応装置(1)が液体と気体の冷却流体で同時に運転できるように設計されている場合には、冷却流体用の第2の供給口(22)が該平トレー(17及び18)の上に配置されるように該反応装置(1)の冷却ゾーン(11)内に取り付けることができることを特徴とする上記デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の固定触媒床上で混合投入物を冷却し、分配するためのデバイスであって、反応装置(1)がもっぱら気体の冷却流体だけで運転するように設計されている場合には、該デバイスは、冷却流体の供給用のただ1つの供給口(21)が、該デバイスのコンポーネント、すなわち上側平トレー(17)と下側平トレー(18)の間の、該デバイスのチャンバー内に配置されるように該反応装置(1)の冷却ゾーン(11)内に取り付けることができることを特徴とする上記デバイス。
【請求項4】
上記下側平トレー(18)から液体を排出するための穴(25)は、上記上側平トレー(17)内に存在する穴(24)の全面積の1/8から1/20程度の全穿孔面積を有することを特徴とする、請求項1に記載の固定触媒床上で混合投入物を冷却し、分配するためのデバイス。
【請求項5】
a)前記デバイスの上側冷却ゾーン(11a)と下側冷却ゾーン(11b)との間の差圧が3から7kPaまでの範囲内であり、
b)前記上側平トレー(17)及び前記下側平トレー(18)によって囲まれている該デバイスの内部ゾーンと、該デバイスの該上側冷却ゾーン(11a)との間の差圧が該上側平トレー(17)上の液体のシート(23)のレベルで2から4kPaまでの範囲内にあるべきであり、かつ、
c)前記捕集及び分配チューブ(19)で測定される、該デバイスの内部ゾーンと該デバイスの該下側冷却ゾーン(11b)との間の差圧が1から3kPaまでの範囲内に保持されるべきである、
という条件の下で運転することを特徴とする請求項1に記載の固定触媒床上で混合投入物を冷却し、分配するためのデバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の固定触媒床上で混合投入物を冷却し、分配するためのデバイスであって、
代替として、前記上側平トレー(17)は、第2の下側平トレー(26)の上に、これらのトレーが反応装置(1)の内壁(20)に水平に且つ平行に取り付けられ、冷却流体(29)用の供給口の下に常に配置されるように、配置されることができ、構成が
a)該上側平トレー(17)は、該上側平トレー(17)を通過する液体とガスの混合物用のさまざまな捕集及び分配チューブ(19)を有し、該チューブ(19)は該上側平トレー(17)に溶接され、該上側平トレー(17)から上に特定の距離の長さで延在し、該第2の下側平トレー(26)の上の特定の高さのところで終端し、
b)該第2の下側平トレー(26)も、液体及びガスの混合物用のさまざまな捕集及び分配チューブ(30)を有し、これらのチューブは、該第2の下側平トレー(26)に溶接され、該第2の下側平トレー(26)を通過し、該上側平トレー(17)から下に特定の距離の長さで延在し、該下側平トレー(26)の下の、下側固定触媒床から所定の距離のところで終端し、
c)該2つの平トレー内の該液体とガスの混合物用の捕集及び分配チューブは、千鳥配置構成で取り付けられる
ようになっていることを特徴とする上記デバイス。
【請求項7】
a)前記デバイスの上側冷却ゾーン(11a)と下側冷却ゾーン(11b)との間の差圧が3から7kPaまでの範囲内であり、
b)前記上側平トレー(17)及び前記第2の下側平トレー(26)によって囲まれている該デバイスの内部ゾーンと、該デバイスの該上側冷却ゾーン(11a)との間の差圧が該上側平トレー(17)上の液体シート(27)のレベルで測定されたときに2から4kPaまでの範囲内に保持されるべきであり、かつ、
c)前記捕集及び分配チューブ(19)で測定されたときの該デバイスの内部ゾーンと該デバイスの該下側冷却ゾーン(11b)との間の差圧が1から3kPaまでの範囲内に保持されるべきである、
という条件の下で運転することを特徴とする請求項6に記載の固定触媒床上で混合投入物を冷却し、分配するためのデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−98339(P2011−98339A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−218114(P2010−218114)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(591005349)ペトロレオ ブラジレイロ ソシエダ アノニマ − ペトロブラス (25)
【Fターム(参考)】