説明

固定部材

【課題】相互に分離と固定が可能な被固定部材を固定する、機構が簡単であり、被固定部材の側面に取付が不要でコンパクトな、固定部材を提供する。
【解決手段】固定部材5は、略円筒状の第1固定部材50と、第2固定部材60と、固定ピン70を有し、それぞれは同一直線状に配置される。第1固定部材50は、取付部55と、中空部51を有し、中空部は、複数のスリット53が形成されるとともに、突条部がそれぞれ円筒状の中心方向に撓み可能に形成される。第2固定部材60は、中空部61と、中空部に隣接して係合面62が形成される。第1固定部材と第2固定部材が固定されると、第1固定部材の突条部52が第2固定部材の中空部に挿入され、突条部52が係合面62に係止されるとともに、固定ピン70が第1固定部材の先端部分まで挿入されて、突条部が第2固定部材の係合面に密着固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に分離と固定が可能な複数の被固定部材を固定する固定部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相互に分離と固定が可能な複数の被固定部材において、例えば、ダイキャスト金型、射出成型金型、自動車のクラッチ、トルクコンバーター、電磁クラッチ等において、相互に分離と固定が可能な被固定部材を分離と固定する動作と共に、被固定部材を強固に固定したり、容易に分離したりするには、被固定部材に複雑で、大きな装置を取付けることが必要であった。
【0003】
例えば、ダイキャスト金型、射出成型金型においては、可動型と固定型を開閉して製品を成形しているが、金型を閉めるときは可動型と固定型を強固に固定し、金型を開くときは、開く動作と共に、スムースかつ容易に可動型と固定型が開くことが必要である。
従来、この場合に、可動型と固定型を型の側面で固定部材を使用して固定するものがある(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0004】
例えば、図15及び16に示すように、可動型130と固定型110は、ロック部材120で、中間プレート111に取付けられた固定部材122にロックされる。金型を開くときは、まず、中間プレート111と固定型110の間が開き、可動型130の解除レバー121がロック部材120を押し上げて、ロックを外す。その後、可動型130と中間プレート111が開き、製品を取り出すものである。
【0005】
しかしながら、この場合には、金型の側面にロック機構を設ける必要があり、型開き時に金型の側面空間がロック機構により塞がれるために、成形された製品の取出しのためのロボットを設置することが難しかったり、制約を受けたりすることとなる。また、成形品が大きくなったり、重要が増加したりする場合には、製品取出しロボットが特に必要となり、この問題の解決が望まれていた。
【0006】
また、図17に示すように、固定型210に突起部材220を設け、可動型230に突起部材220を収納可能な凹部231を形成して、型閉じ時に金型の分割面211を超えて突起部材220を凹部231に挿入する。その後、横から挿入ピン221を油圧シリンダ222で突起部材220の孔223に挿入して、固定型210と可動型230を固定するものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
しかしながら、この場合には、金型の開閉機構とは別に、挿入ピン221に油圧シリンダ222等を取付ける必要があり、油圧シリンダ222の制御機構も必要となる。そのため、金型の機構が複雑になるとともに、コストも増大するし、挿入ピン221の移動の時間も開閉時間とは別に必要となり、成形時間も長くなり、生産性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−202882号公報
【特許文献2】特開2010−12772号公報
【特許文献3】実開平7−43960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、相互に分離と固定が可能な複数の被固定部材を固定する、機構が簡単であり、被固定部材の側面に取付が不要でコンパクトな、固定部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、相互に分離と固定が可能な複数の被固定部材を固定する固定部材において、
固定部材は、一方の被固定部材の内部に取付けられる第1固定部材と、他方の被固定部材の内部に取付けられる第2固定部材と、少なくとも一方の被固定部材の移動により第1固定部材の少なくとも先端部分に挿入と離脱可能な円柱又は円筒状の固定ピンを有し、第1固定部材、第2固定部材及び固定ピンは同一直線状に配置され、
第1固定部材は、一方の被固定部材に取付けられる第1固定部材取付部と、第1固定部材取付部と一体的に形成された略円筒状の第1固定部材中空部を有し、第1固定部材中空部は、第1固定部材中空部の先端から長手方向に複数の第1固定部材スリットが形成されるとともに、先端の外周側にリング状の第1固定部材突条部が第1固定部材スリットにより分割して形成され、第1固定部材突条部がそれぞれ第1固定部材中空部の中心方向に撓み可能に形成され、
第2固定部材は、他方の被固定部材に取付けられる第2固定部材取付部と、第2固定部材取付部と一体的に形成され、第1固定部材の先端の第1固定部材突条部が挿入可能な第2固定部材中空部と、第2固定部材中空部に隣接して第1固定部材突条部が係合する斜面である第2固定部材係合面が形成され、
両方の被固定部材が合体するときに、少なくとも一方の被固定部材の移動により、第1固定部材突条部が第2固定部材中空部に挿入され、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に当接するとともに、固定ピンが第1固定部材中空部の先端部分まで挿入されて、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に密着して両方の被固定部材が固定されることを特徴とする固定部材である。
【0011】
請求項1の本発明では、第1固定部材、第2固定部材及び固定ピンは、被固定部材の内部に同一直線状に配置されているため、少なくとも1つの被固定部材の移動により、第1固定部材と第2固定部材の固定と分離をすることができるとともに、固定部材の内部に配置されているため、被固定部材の作動の邪魔にならない。
第1固定部材の第1固定部材中空部は、長手方向に複数のスリットが形成され、第1固定部材突条部がそれぞれ第1固定部材中空部の中心軸方向に撓み可能に形成されるため、第2固定部材中空部に挿入されるときに第1固定部材突条部が容易に撓んでスムースに挿入されることができる。
第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に当接するとともに、固定ピンが第1固定部材中空部の先端部分まで挿入されて、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に密着するため、固定ピンで第1固定部材突条部の撓みを防止して、両方の被固定部材が強固に固定される。また、固定ピンを抜きだすことにより、第1固定部材と第2固定部材の分離を容易にすることができる。なお、第1固定部材と第2固定部材の分離をさらに容易にするために、第1固定部材係止斜面と第2固定部材係合面に摩擦抵抗を減少させる表面処理、例えばメッキ等を施すことができる。
【0012】
請求項2の本発明は、第1固定部材は、円筒状の後部側に一方の被固定部材に取付けられる略円筒状の第1固定部材取付部を有し、第1固定部材中空部は、第1固定部材と連通する円筒状に形成され、前方側は先端から後部側に向けて長手方向に複数の第1固定部材スリットが形成されるとともに、先端の外周側にリング状の第1固定部材突条部が第1固定部材スリットにより分割して形成され、第1固定部材突条部がそれぞれ円筒状の中心方向に撓み可能に形成され、
第2固定部材は、後部側に他方の被固定部材に取付けられる第2固定部材取付部を有し、第1固定部材と対向する前方側は第1固定部材突条部が挿入可能な第2固定部材中空部を有し、第2固定部材中空部の先端に第1固定部材突条部が係合する斜面である第2固定部材係合面が形成され、
両方の被固定部材が合体するときに、被固定部材の移動により、第1固定部材突条部が第2固定部材中空部に挿入されるとともに、固定ピンが第1固定部材の後方側から内部を摺動し、第1固定部材中空部の先端まで挿入されて、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に密着して両方の被固定部材が固定された固定部材である。
【0013】
請求項2の本発明では、両方の被固定部材が合体するときに、被固定部材の移動により、第1固定部材中空部の先端の第1固定部材突条部が第2固定部材中空部に挿入されるとともに、固定ピンが第1固定部材の第1固定部材取付部と第1固定部材中空部の連通した内部を後方側から摺動し、先端まで挿入されて、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に密着して両方の被固定部材が固定される。このため、両方の被固定部材が合体したときに、確実に第1固定部材と第2固定部材が固定され、両方の被固定部材が強固に固定される。第1固定部材内を固定ピンが摺動するため、固定ピンの摺動がスムースであり、固定部材をコンパクトにすることができる。
【0014】
請求項3の本発明は、相互に分離と固定が可能な被固定部材は、金型であり、一方の被固定部材は、固定型であり、他方の固定型は可動型であり、
第1固定部材は、固定型に取付けられ、第2固定部材は、可動型に取付けられ、
可動型と固定型が合体するときに、可動型の移動により、固定部材の第1固定部材突条部が第2固定部材中空部に挿入され、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に当接するとともに、固定ピンが第1固定部材中空部の先端部分まで挿入されて、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に密着して可動型と固定型が固定され、キャビティが形成された固定部材である。
【0015】
請求項3の本発明では、第1固定部材は、固定型に取付けられ、第2固定部材は、可動型に取付けられ、可動型と固定型が合体するときに、可動型の移動により、固定部材の第1固定部材突条部が第2固定部材中空部に挿入され、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に当接するとともに、固定ピンが第1固定部材中空部の先端部分まで挿入されて、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に密着して可動型と固定型が固定され、キャビティが形成された。このため、金型が閉じられたときに、強固に閉じられて、キャビティ内に成形材料を注入しても金型が開くことがなく、成形品のバリ等が生じることがない。
金型が開かれたときに、可動型の移動につれて固定ピンが第1固定部材中空部の先端部分から抜けて、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面から外れることができ、金型の開閉がスムースにできる。
金型内に固定部材が取付けられているため、金型の全体がコンパクトになり成形品の取出し等も容易であり、ロボット等により取り出し作業ができる。
【0016】
請求項4の本発明は、可動型と固定型が合体するときに、可動型の移動により、第1固定部材突条部が第2固定部材中空部に挿入されるとともに、固定ピンが第1固定部材の内部を摺動し、先端まで挿入されて、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に密着して、第1固定部材と第2固定部材が固定され、
可動型と固定型が固定され、可動型と固定型の接合面にキャビティーが形成された固定部材である。
【0017】
請求項4の本発明では、可動型と固定型が合体するときに、可動型の移動により、第1固定部材突条部が第2固定部材中空部に挿入されるとともに、固定ピンが第1固定部材の内部を摺動し、先端まで挿入されて、第1固定部材突条部が第2固定部材中空部の係合面に密着して、可動型と固定型が固定され、キャビティが形成された。このため、可動型の閉るときは第2固定部材中空部に挿入された第1固定部材突条部が固定ピンにより確実に固定され、キャビティが形成されて成形材料を注入することができ、可動型が開くときは容易に第2固定部材が外れて、成形品を取り出すことができる。
【0018】
請求項5の本発明は、第1固定部材は、円筒状の後部側に一方の被固定部材に取付けられる第1固定部材取付部と、第1固定部材取付部と一体的に形成された円筒状の第1固定部材中空部を有し、第1固定部材中空部の前方側は先端から後部側に向けて長手方向に複数の第1固定部材スリットが形成されるとともに、先端の外周側にリング状の第1固定部材突条部が第1固定部材スリットにより分割して形成され、第1固定部材突条部がそれぞれ円筒状の中心方向に撓み可能に形成され、
第2固定部材は、第1固定部材突条部が挿入可能な円筒状に形成された第2固定部材中空部を有し、第2固定部材中空部の後端に隣接して第1固定部材突条部が係合する斜面である第2固定部材係合面が形成され、第2固定部材中空部の円筒状の外周部に他方の被固定部材に取付けられる第2固定部材取付部を有し、
両方の被固定部材が合体するときに、被固定部材の移動により、第1固定部材突条部が第2固定部材中空部に挿入されるとともに、固定ピンが第1固定部材中空部の先端部分まで挿入されて、第1固定部材中空部の先端の第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に密着して両方の被固定部材が固定された固定部材である。
【0019】
請求項5の本発明では、第2固定部材中空部の後端に隣接して第1固定部材突条部が係合する斜面である第2固定部材係合面が形成されたため、第1固定部材突条部は第2固定部材中空部を突き抜けて挿入されるとともに、固定ピンにより第2固定部材中空部の後端に隣接して形成された第2固定部材係合面に密着することができる。第2固定部材取付部が円筒状の外周部に設けられているため、第2固定部材を円筒状に形成することができ、固定ピンを第2固定部材の両側のいずれからでも挿入することができる。また、第2固定部材中空部を被固定部材の内部に取付けて、被固定部材の外面側から固定することができる。
【0020】
請求項6の本発明は、相互に分離と固定が可能な被固定部材は、金型であり、一方の被固定部材は、可動押出板であり、他方の被固定部材は可動押出補助板であり、
可動型に、可動押出板と、可動押出板の後側に可動押出板と分離可能に可動押出補助板を設け、可動押出補助板の後側に可動押出補助板と分離して、可動ダイベース裏板を設け、
可動押出板と可動押出補助板が合体して移動するときに、可動押出板又は可動押出補助板の移動により、第1固定部材突条部が第2固定部材中空部に挿入されるとともに、固定ピンが第1固定部材中空部の先端部分まで挿入されて、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に密着して可動押出板と可動押出補助板が固定された固定部材である。
【0021】
請求項6の本発明では、固定部材は、可動押出板に取付けられる第1固定部材と可動押出補助板に取付けられる第2固定部材と、可動型の移動により第1固定部材の円筒状の少なくとも先端部分に挿入と離脱可能な円柱又は円筒状の固定ピンを有し、固定ピンは可動ダイベース裏板に取付けられ、第1固定部材、第2固定部材及び固定ピンは同一直線状に配置されている。このため、可動型の移動につれて、可動押出板と可動押出補助板とが相対的に分離可能であり、可動押出板に取付けられた可動押出ピンを移動させて成形品をキャビティから突き出すことができる。
【0022】
請求項7の本発明は、第2固定部材の係合面と、第1固定部材の突条部の第2固定部材の係合面と当接する第1固定部材係止斜面の傾斜角度は略同一である固定部材である。
【0023】
請求項7の本発明では、第2固定部材の係合面と、第1固定部材の突条部の第2固定部材の係合面と当接する第1固定部材係止斜面の傾斜角度は略同一であるため、突条部と係合面が密着することができ、強固に固定することができる。
【0024】
請求項8の本発明は、第1固定部材中空部の内面と固定ピンの外面には低摩擦処理が施された固定部材である。
【0025】
請求項8の本発明では、第1固定部材中空部の内面と固定ピンの外面には低摩擦処理が施されたため、固定ピンが第1固定部材中空部の内部を摺動するときに、固定ピンが第1固定部材中空部の内面に固着することがなく、摺動抵抗が低く、確実かつ容易に摺動することができるため、金型が開くときに、第1固定部材突条部が確実に第2固定部材から外れることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、第1固定部材、第2固定部材及び固定ピンは同一直線状に配置されているため、少なくとも1つの被固定部材の移動により、第1固定部材と第2固定部材の固定と分離をすることができる。
第1固定部材は分割された第1固定部材突条部がそれぞれ円筒状の中心方向に撓み可能に形成されるため、第2固定部材中空部に挿入されるときに第1固定部材突条部が容易に撓んでスムースに挿入されることができるとともに、第1固定部材と第2固定部材の分離も容易である。固定ピンが第1固定部材中空部の先端部分まで挿入されて、第1固定部材突条部が第2固定部材係合面に密着するため、両方の被固定部材が強固に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態である固定部材で、第1固定部材が第2固定部材の中部に挿入されるとともに、固定ピンが第1固定部材の先端まで挿入された状態の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態である固定部材で、第1固定部材突条部が第2固定部材の中空部に挿入されるとともに、固定ピンが第1固定部材中空部の先端から抜けた状態の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態である固定部材で、第1固定部材が第2固定部材から抜けた状態の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態である固定部材で、第1固定部材が第2固定部材から抜けて、さらに離れた状態の断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態である固定部材で、第1固定部材が第2固定部材の中空、部に挿入されるとともに固定ピンが第1固定部材中空部の先端まで挿入された状態の断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態である固定部材で、第1固定部材が第2固定部材の中空部に挿入されるとともに、固定ピンが第1固定部材中空部の先端から抜けた状態の断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態である固定部材で、第1固定部材中空部が第2固定部材係合面から抜けた状態の断面図である。
【0028】
【図8】本発明の第1の実施の形態である固定部材を可動型と固定型に使用し、第2の実施の形態である固定部材を可動型の可動押出板と可動押出補助板に使用に、金型を閉じた状態の断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態である固定部材を可動型と固定型に使用し、可動型を少し開き、固定ピンが第2固定部材から抜けた状態で、第2の実施の形態である固定部材を使用した可動型の可動押出板と可動押出補助板が閉じた状態の断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態である固定部材を可動型と固定型に使用し、可動型をさらに開き、第1固定部材が第2固定部材から抜けた状態で、第2の実施の形態である固定部材を使用した可動型の可動押出板と可動押出補助板が閉じた状態の断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態である固定部材を可動型と固定型に使用し、可動型をさらに開き、第1固定部材が第2固定部材から抜けた状態で、第2の実施の形態である固定部材を使用した可動型の可動押出板と可動押出補助板が閉じた状態で、固定ピンが第1固定部材突条部から抜けた状態の断面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態である固定部材を可動型と固定型に使用し、可動型をさらに開き、第1固定部材が第2固定部材から抜けた状態で、第2の実施の形態である固定部材の固定ピンが第1固定部材突条部から抜けて、可動型の可動押出板と可動押出補助板が離れた状態の断面図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態である固定部材を可動型と固定型に使用し、可動型をさらに開き、第1固定部材が第2固定部材から抜けた状態で、第2の実施の形態である固定部材の第1固定部材突条部が第2固定部係合面から抜けて可動型の可動押出板と可動押出補助板が離れて、可動押出ピンが製品を突き出した状態の断面図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態である固定部材を可動型と固定型に使用し、可動型をさらに開き、第1固定部材が第2固定部材から抜けた状態で、第2の実施の形態である固定部材が固定されて、可動型の可動押出板と可動押出補助板が閉じた状態の断面図である。
【図15】従来の固定部材であって、金型の側面に固定部材を取付けた状態を示す斜視図である。
【図16】従来の固定部材であって、固定部材の断面図である。
【図17】従来の他の固定部材であって、金型の内部に固定部材を取付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態を、図1〜図14に基づき説明する。本発明は広く複数の部材が相互に分離と固定が可能な被固定部材において使用することが可能である。例えば、ダイキャスト金型、射出成型金型、自動車のクラッチ、トルクコンバーター、電磁クラッチ等において使用することが可能であるが、本実施の形態を、ダイキャスト成形金型について使用したものを例にとり説明する。
【0030】
図1〜図7は本発明の実施の形態に使用する第1と第2の実施の形態の固定部材5である。図8〜図14は本発明の実施の形態に使用する第1と第2の実施の形態の固定部材5を使用したダイキャスト用の成形金型1である。
まず、図1〜図4に基づき、本発明の実施の形態に使用する第1の実施の形態の固定部材5について説明し、第2の実施の形態の固定部材5及び成形金型1とその作動については後述する。
【0031】
第1の実施の形態の固定部材5は、図1〜図4に示すように、一方の被固定部材である固定型10に取付けられる略円筒状の第1固定部材50と、他方の被固定部材である可動型30に取付けられる第2固定部材60と、可動型30の移動により第1固定部材50の内部を摺動し、挿入と離脱可能な円筒状の固定ピン70を有している。
第1固定部材50、第2固定部材60及び固定ピン70はその中心軸が同一直線状に位置するように配置されている。このため、後述するように、可動型30の動きにより、互いに固定と分離が可能である。
【0032】
第1固定部材50は、固定型10に取付けられる第1固定部材取付部55と、第1固定部材取付部55の前方側(図1における右側)に中空状の第1固定部材中空部51が形成されている。
第1固定部材取付部55は外周にネジが形成され、後述する固定型10の固定押出板前板14に取付けられる固定リターンピン17にネジ止めされている。第1固定部材取付部55と固定リターンピン17は、第1固定部材中空部51と同様に、内部を固定ピン70が摺動可能に中空状に形成されている。
【0033】
第1固定部材中空部51の先端から後方(図1における左側)に向かって長手方向に複数の第1固定部材スリット53が形成されている。第1固定部材スリット53により第1固定部材中空部51は複数個に分割されて、中空の内部方向に撓むことができる。
第1固定部材中空部51の先端の外周側にリング状の第1固定部材突条部52が円周状に形成されて、第1固定部材スリット53により分割されている。第1固定部材突条部52の後方側は、斜面状に形成された第1固定部材係止斜面54を有する。第1固定部材突条部52の先端側も同様に斜面状に形成されている。第1固定部材係止斜面54を含む第1固定部材突条部52の表面は摩擦抵抗を減少させるため、メッキ等の表面処理がされている。
【0034】
第1固定部材中空部51の内面にも摩擦抵抗を減少させるためにメッキ等の表面処理がされている。特に、第1固定部材中空部51の先端部は後述する固定ピン70の固定ピン先端部71が第1固定部材突条部52の内面から離れて摺動できるように表面処理がされている。第1固定部材突条部52が撓むと、固定ピン先端部71と第1固定部材中空部51の先端部の内面と密着して、固着しやすいため、表面処理が必要である。
【0035】
図3に示すように、第2固定部材60は、円柱状に形成され、第1固定部材50の先端の第1固定部材突条部52が挿入可能な第2固定部材中空部61と、第2固定部材中空部61の後方(図3における右側)に可動型30に取付けられる第2固定部材取付部64が形成されている。第2固定部材取付部64は外周にネジが形成され、後述する可動型30の可動主型31に取付けられる可動リターンピン37にネジ止めされている。
【0036】
第2固定部材中空部61の後方側(図3における右側)に隣接して、第1固定部材突条部52が係合する第2固定部溝部63が形成され、第2固定部溝部63の先端側(図3における左側)に第1固定部材突条部52の第1固定部材係止斜面54が係合する第2固定部係合面62が形成されている。第2固定部係合面62の傾斜角度と、第1固定部材係止斜面54の傾斜角度は同じである。このため、第1固定部材50が第2固定部材60に挿入されたときに、第2固定部係合面62と第1固定部材係止斜面54は密着することができる。第2固定部係合面62にも表面は摩擦抵抗を減少させるため、メッキ等の表面処理がされている。
【0037】
固定ピン70は、棒状に形成され、固定ピン70の後側(図3における左側)は、固定型10の固定ストッパーブロック18に取付けられる固定ピン取付部72が形成され、固定ピン70の前側(図3における右側)は、第1固定部材50の先端を貫通することができるように形成された固定ピン先端部71が形成されている。固定ピン先端部71は、先端が丸みを帯びて形成されている。
【0038】
固定ピン70の外面、特に固定ピン先端部71は、摩擦抵抗を減少させるために、メッキ等の表面処理がされている。このため、可動型30が開いて固定ピン70が第1固定部材50の内部を摺動するときに、第1固定部材中空部51の内面と固定ピン70の外面には低摩擦処理が施されたため、固定ピン70が第1固定部材中空部51の内面に固着することがなく、摺動抵抗が低く、確実かつ容易に摺動することができる。
【0039】
次に、第2の実施の形態の固定部材5について、図5〜図7に基づいて説明する。
第2の実施の形態の固定部材5は、一方の被固定部材である可動押出板後板35に取付けられる略円筒状の第1固定部材50と、他方の被固定部材である可動押出補助板43に取付けられる第2固定部材60と、可動型30の移動により第1固定部材50の内部を摺動し、挿入と離脱可能な円筒状の固定ピン70を有している。
第1固定部材50、第2固定部材60及び固定ピン70はその中心軸が同一直線状に位置するように配置されている。このため、後述するように、可動型30の動きにより、互いに固定と分離が可能である。
【0040】
第1固定部材50は、可動押出板後板35に取付けられる第1固定部材取付部55と、第1固定部材取付部55の前方側(図5における右側)に中空状の第1固定部材中空部51が形成されている。
第1固定部材取付部55は外周に段部が形成され、後述する可動押出板後板35に挿入されている。
【0041】
第1固定部材中空部51の先端から後方(図5における左側)に向かって長手方向に複数の第1固定部材スリット53が形成されている。第1固定部材スリット53により第1固定部材中空部51は複数個に分割されて、中空の内部方向に撓むことができる。
第1の実施の形態と同様に、第1固定部材中空部51の先端の外周側にリング状の第1固定部材突条部52が円周状に形成されて、第1固定部材スリット53により分割されている。第1固定部材突条部52の後方側は、斜面状に形成された第1固定部材係止斜面54を有する。第1固定部材突条部52の先端側も同様に斜面状に形成されている。
また、第1の実施の形態と同様に、第1固定部材中空部51の内面も摩擦抵抗を減少させるために、メッキ等の表面処理がされている。
【0042】
図5に示すように、第2固定部材60は、円筒状に形成され、第1固定部材50の第1固定部材中空部51の先端の第1固定部材突条部52が挿入可能な第2固定部材中空部61と、第2固定部材中空部61の後方(図5における右側)に可動押出補助板43に取付けられる第2固定部材取付部64が形成されている。第2固定部材取付部64は、第2固定部材中空部61の外周から突出して形成され、可動押出補助板43に第2固定部材取付部64をネジ止めするために第2固定部材取付部ネジ孔65が形成されている。第2固定部材取付部ネジ孔65に第2固定部材取付部ネジ66が挿入され、可動押出補助板43にネジ止めされる。
【0043】
第2固定部材中空部61の後方側(図3における右側)の開口に隣接して、第1固定部材突条部52が係合する第2固定部係合面62が形成されている。第2固定部係合面62の傾斜角度と、第1固定部材係止斜面54の傾斜角度は同じである。このため、第1固定部材50が第2固定部材60に挿入されたときに、第2固定部係合面62と第1固定部材係止斜面54は密着することができる。第1の実施の形態と同様に、第2固定部係合面62と第1固定部材係止斜面54は、摩擦抵抗を減少させるために、メッキ等の表面処理がされている。
【0044】
固定ピン70は、棒状に形成され、固定ピン70の後側(図7における右側)は、可動型30の可動ダイベース裏板39に取付けられる固定ピン取付部72が形成され、固定ピン70の前側(図7における左側)は、第1固定部材中空部51の先端を貫通することができるように形成された固定ピン先端部71が形成されている。固定ピン先端部71は、先端が丸みを帯びて形成されている。
第1の実施の形態と同様に、固定ピン70の外面、特に固定ピン先端部71は、摩擦抵抗を減少させるために、メッキ等の表面処理がされている。
【0045】
次に、本発明の実施の第1と第2の形態を成形金型1に取付けた状態について、図8〜図14に基づいて説明する。なお、図8〜図14は、上下の中心線で切断された上半分のみを表示しており、上下は対称形である。
図8〜図14に示すように、成形金型1は、固定型10と可動型30から構成される。
固定型10は、可動型30と接する側から、固定主型11と、固定ダイベース13を有し、固定主型11には、キャビティ20を有する固定入子12が嵌め込まれている。
【0046】
固定主型11の後面(図8における左側)の固定ダイベース13の内部には固定押出板前板14と固定押出板前板14の背面に密着して固定押出板後板15が取付けられて、固定押出板前板14と固定押出板後板15が前後方向(図8における左右方向)に摺動可能に設けられている。固定押出板前板14と固定押出板後板15は、固定されて一体として作動する。
固定ダイベース13の後端には、固定ストッパーブロック18が取付けられて、固定押出板前板14と固定押出板後板15が後退する限界を設けている。
【0047】
固定押出板後板15には、第1の実施の形態の第1固定部材50を保持する固定リターンピン17が取付けられている。固定主型11の固定入子12が嵌め込まれている部分よりも外側の部分に第1固定部材50が前後方向(図8における左右方向)に摺動可能に挿入されている。第1の実施の形態の固定部材5は、固定入子12の周囲に4か所程度設けることができる。その場合は、固定型10と可動型30を確実に固定することができる。また、固定入子12を囲むように複数個設けてもよい。
固定押出板前板14には固定押出ピン16が前後方向(図8における左右方向)に摺動可能にキャビティ20に達するように取付けられている。
【0048】
可動型30は、固定主型11と対向して可動主型31が設けられ、可動主型31の後側(図8における右側)には、可動ダイベース33を有し、可動主型31には、キャビティ20を有する可動入子32が嵌め込まれている。可動ダイベース33の中心部分は中空状に形成されている。固定入子12と可動入子32は対向して取付けられて、型閉じ時にキャビティ20を形成する。
【0049】
可動主型31の後面(図8における右側)の可動ダイベース33の内部には、可動押出板前板34と可動押出板前板34の背面に可動押出板後板35が密着して取付けられて、可動押出板前板34と可動押出板後板35が前後方向(図8における左右方向)に摺動可能に設けられている。可動押出板前板34と可動押出板後板35は、固定されて一体として作動する。
可動押出板後板35の背面に可動押出補助板43が可動押出板後板35とは分離可能に設けられている。可動ダイベース33の最も後方側には、可動ダイベース裏板39が取付けられて、可動ダイベース裏板39には、可動押出板ストッパー47が取付けられて、可動押出補助板43の後退の限界を定めている。
【0050】
可動主型31の可動入子32が嵌め込まれている部分よりも外れた部分で、固定主型11に嵌めこまれた第1の実施の形態の第1固定部材50と同一直線状に、第1の実施の形態の第2固定部材60が前後方向(図8における左右方向)に摺動可能に挿入されている。
第2固定部材60を取付ける可動リターンピン37は可動押出板前板34に取付けられている。可動リターンピン37の外周で可動主型31の背面には可動押出板前進ストッパー40が設けられている。
【0051】
可動押出板前板34には複数の可動押出ピン36が前後方向(図8における左右方向)に摺動可能にキャビティ20に達するように取付けられている。
また、可動コレットロックピン41が可動押出補助板43に取付けられ、可動押出板前板34と可動押出板後板35に貫通している。可動コレットロックピン41は、可動主型31の背面に当接可能に設けられている。
可動押出板後板35には可動押出接続ロット44が可動押出補助板43と可動ダイベース裏板39を貫通してとりつけられて、可動押出板前板34と可動押出板後板35を前後方向(図8における左右方向)に移動可能にしている。可動押出接続ロット44は、マシン押出ロット45に接続されている。マシン押出ロット45の進退により、可動押出接続ロット44に接続された可動押出板後板35は前後方向に移動する。
【0052】
第2の実施形態の固定部材5は、第1固定部材50、第2固定部材60及び固定ピン70を有し、第1固定部材50の第1固定部材取付部55が可動押出板後板35に取付けられている。第2の実施形態の第2固定部材60は、第2固定部材中空部61が可動押出補助板43に形成された貫通孔に挿入される。第2固定部材取付部64が可動押出補助板43の裏面に当接する。第2固定部材取付部64に形成された第2固定部材取付部ネジ孔65に第2固定部材取付部ネジ66が挿入されて、第2固定部材取付部64が可動押出補助板43にネジ止めされる。
第1固定部材中空部51は、可動押出補助板43に取付けられた第2固定部材60の第2固定部材中空部61内を摺動自在に移動することができる。
【0053】
第2の実施形態の固定ピン70は、可動ダイベース裏板39に固定ピン取付部72が取付けられて、固定ピン先端部71は、第1固定部材中空部51の先端部分に挿入可能に取付けられる。第1の実施の形態の固定部材5と同様に、第2の実施の形態の第1固定部材50、第2固定部材60と固定ピン70は同一直線状に取付けられる。
【0054】
つぎに、第1の実施形態の固定部材5と第2の実施形態の固定部材5を成形金型1に取付けて、成形金型1の開閉につれて、それぞれの固定部材5の作動を図8〜図14に基づき説明する。
図8は成形金型1が閉じられた状態で、キャビティ20に成形材料が注入されて、成形品2が形成された状態である。このとき、第1の実施形態の固定部材5は、第1固定部材50の第1固定部材中空部51の先端部分が第2固定部材60の第2固定部材中空部61に挿入され、固定ピン70の固定ピン先端部71が第1固定部材中空部51を貫通して第2固定部材中空部61まで挿入されている。第1の実施形態の固定部材5は、図1に示す状態である。
このため、固定ピン先端部71が第1固定部材突条部52の撓みを防止して、第1固定部材係止斜面54が第2固定部係合面62に密着して、第1固定部材50と第2固定部材60が固定される。従って、固定型10と可動型30が確実に固定されている。
【0055】
このとき、第2の実施形態の固定部材5は、第1固定部材50の先端部分が第2固定部材60の第2固定部材中空部61に挿入され、固定ピン70の固定ピン先端部71が後方(図8における右側)から第1固定部材中空部51の先端を貫通して挿入されている。第2の実施形態の固定部材5は、図5に示す状態である。
このため、固定ピン先端部71が第1固定部材突条部52の撓みを防止して、第1固定部材係止斜面54が第2固定部係合面62に密着して、第1固定部材50と第2固定部材60が固定されて、可動押出板前板34、可動押出板後板35及び可動押出補助板43が固定される。
【0056】
次に、可動型30が若干開くと図9に示す状態になる。
即ち、可動型30が図9における右側に移動すると、可動型30と連結した固定押出板後板15と固定押出板前板14が右側に移動し固定主型11の裏面に当接して移動は止まる。このため固定押出板後板15に取付けられた固定リターンピン17と第1の実施の形態の第1固定部材50は右側に移動する。このとき、第1の実施の形態の固定ピン70は固定ストッパーブロック18に取付けられているため移動しない。従って、固定ピン先端部71は、第1固定部材突条部52が形成された第1固定部材中空部51の先端から外れて後退する。そのため、第1固定部材突条部52は撓むことができる。第1の実施の形態の固定ピン70は、図2に示す状態である。
【0057】
このとき、第1固定部材中空部51の内面と固定ピン70の外面、特に先端部の外面はメッキ等の低摩擦の表面処理がなされているため、固定ピン先端部71が第1固定部材中空部51の先端からスムースに外れて、固定ピン70は第1固定部材中空部51の内面をスムースに摺動することができる。
なお、このとき、第2の実施の形態の固定部材5は、固定されたままである。
【0058】
さらに、可動型30が開く(図10における右方向への移動)と図10に示す状態となる。
可動型30がさらに開くと、第1固定部材突条部52が第2固定部係合面62を摺動して、中心方向に撓んで、第1の実施の形態の第1固定部材50と第2固定部材60は完全に分離される。第1固定部材突条部52に第1固定部材係止斜面54と第2固定部係合面62は同じ傾斜面を有するので、両者はスムースに摺動することができる。第1固定部材突条部52と第2固定部係合面62にはメッキ等の表面処理をして摩擦抵抗を軽減することができる。
なお、このときもまだ、第2の実施の形態の固定部材5は、固定されたままである。この状態が図5に示す状態である。
【0059】
図10の状態よりもさらに、可動型30が開く(図11の右方向への移動)と図11に示す状態となる。
可動型30がさらに開くと、可動押出接続ロット44により可動押出板前板34と可動押出板後板35とは止められて、可動押出板ストッパー47から可動押出補助板43が離れる。このとき、可動押出板後板35と可動押出補助板43は、第2の実施の形態の固定部材5により固定されているため、可動押出板前板34、可動押出板後板35と可動押出補助板43は一体として動く。これにより、可動主型31に対して左方向に近接したことになる。
【0060】
そのため、第1の実施の形態である第2固定部材60は可動リターンピン37により押されて、可動主型31の表面から突出する。また、可動押出板前板34と可動押出板後板35にそれぞれ取付けられた可動押出ピン36、36により押されて、成形品2はキャビティ20から押出される。このとき、可動押出板後板35に取付けられた可動コレットロックピン41が可動主型31の背面に当接して、可動押出板前板34、可動押出板後板35と可動押出補助板43が可動主型31への接近を止める。
さらに、可動ダイベース裏板39に取付けられた第2の実施の形態である固定ピン70の固定ピン先端部71が、第2の実施の形態の第1固定部材50の第1固定部材突条部52が設けられた第1固定部材中空部51の先端から外れる。第2の実施の形態の固定部材5の状態が図6に示す状態である。このとき、第1の実施の形態と同様に、第1固定部材中空部51の内面と固定ピン70の外面、特に先端部の外面はメッキ等の低摩擦の表面処理がなされているため、固定ピン先端部71が第1固定部材中空部51の先端からスムースに外れて、固定ピン70は第1固定部材中空部51の内面をスムースに摺動することができる。
【0061】
図11の状態よりもさらに、可動型30が開くと図12に示す状態となる。
可動型30がさらに開くと、マシン押出ロット45が前進(図12の左方向に移動)して可動押出接続ロット44を動かし、可動押出板前板34と可動押出板後板35とは止められて、可動押出板後板35から可動押出補助板43が離れる。このとき、第2の実施の形態の固定ピン70は完全に第1固定部材50の第1固定部材中空部51から外れているため、第1固定部材突条部52は撓んで、第1固定部材係止斜面54と第2固定部係合面62が摺動して外れて、第1固定部材50は第2固定部材60から外れることができる。そうして、可動押出板前板34と可動押出板後板35は可動押出板前進ストッパー40に当接して、可動主型31への接近が止まる。
そして、成形品2は可動押出ピン36、36により押されてキャビティ20から外れることができる。
第2の実施の形態の固定部材5の状態が図7に示す状態である。
【0062】
そして、可動型30が完全に開くと、図13に示すように、成形品2は、ロボット等により成形金型1から完全に取り出すことができる。このとき、固定部材5は、成形金型1の内部に取付けられており、成形金型1の周囲には固定部材5等が存在しないため、成形品2の取出しが容易である。特に、ダイキャスト成形品等の重量や体積の大きな成形品2には好ましい。
【0063】
成形品2を取出した後は、次の成形のために型締めの動作に入る。
図14に示すように、可動型30が前進(図14における左方向)するとともに、マシン押出ロット45が後退(図14の右方向)して、可動押出板ストッパー47が可動押出補助板43に当接して、可動押出補助板43と可動押出板後板35が当接する。そうすると、第2の実施の形態の固定部材5は、第1固定部材50の第1固定部材中空部51が、第2固定部材中空部61の内部に挿入され、第1固定部材突条部52と第2固定部係合面62が係合して、固定ピン70の固定ピン先端部71が第1固定部材中空部51の先端に挿入される。この様にして、第2の実施の形態の固定部材5は、第1固定部材50と第2固定部材60が固定される。
【0064】
さらに、可動型30が前進すると、第1の実施の形態の固定部材5は、第1固定部材50の第1固定部材中空部51が、第2固定部材中空部61の内部に挿入され、第1固定部材突条部52と第2固定部係合面62が係合される。
さらに、可動型30が前進すると、固定押出板後板15と固定押出板前板14が後退し、第1固定部材50は、固定主型11の表面まで後退する。そして、固定ピン70の固定ピン先端部71が第1固定部材中空部51の先端から突出するように挿入される。この様にして、第1の実施の形態の固定部材5は、第1固定部材50と第2固定部材60が固定される。そして、キャビティ20に溶融金属や樹脂が注入されて、成形品2が形成される。この動作を繰り返すことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 成形金型
2 成形品
5 固定部材
10 固定型
11 固定主型
30 可動型
31 可動主型
50 第1固定部材
51 第1固定部材中空部
52 第1固定部材突条部
53 第1固定部材スリット
54 第1固定部材係止斜面
60 第2固定部材
61 第2固定部材中空部
62 第2固定部係合面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に分離と固定が可能な複数の被固定部材を固定する固定部材において、
該固定部材は、一方の被固定部材の内部に取付けられる第1固定部材と、他方の被固定部材の内部に取付けられる第2固定部材と、少なくとも上記一方の被固定部材の移動により上記第1固定部材の少なくとも先端部分に挿入と離脱可能な円柱又は円筒状の固定ピンを有し、上記第1固定部材、上記第2固定部材及び上記固定ピンは同一直線状に配置され、
上記第1固定部材は、一方の被固定部材に取付けられる第1固定部材取付部と、該第1固定部材取付部と一体的に形成された略円筒状の第1固定部材中空部を有し、該第1固定部材中空部は、上記第1固定部材中空部の先端から長手方向に複数の第1固定部材スリットが形成されるとともに、先端の外周側にリング状の第1固定部材突条部が上記第1固定部材スリットにより分割して形成され、該第1固定部材突条部がそれぞれ上記第1固定部材中空部の中心軸方向に撓み可能に形成され、
上記第2固定部材は、他方の被固定部材に取付けられる第2固定部材取付部と、該第2固定部材取付部と一体的に形成され、上記第1固定部材の先端の第1固定部材突条部が挿入可能な第2固定部材中空部と、該第2固定部材中空部に隣接して上記第1固定部材突条部が係合する斜面である第2固定部材係合面が形成され、
両方の複数の上記被固定部材が合体するときに、少なくとも一方の上記被固定部材の移動により、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材中空部に挿入され、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材係合面に当接するとともに、上記固定ピンが上記第1固定部材中空部の先端部分まで挿入されて、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材係合面に密着して両方の被固定部材が固定されることを特徴とする固定部材。
【請求項2】
上記第1固定部材は、後部側に一方の被固定部材に取付けられる略円筒状の第1固定部材取付部を有し、上記第1固定部材中空部は、上記第1固定部材と連通する円筒状に形成され、前方側は先端から後部側に向けて長手方向に複数の第1固定部材スリットが形成されるとともに、先端の外周側にリング状の第1固定部材突条部が上記第1固定部材スリットにより分割して形成され、該第1固定部材突条部がそれぞれ円筒状の中心方向に撓み可能に形成され、
上記第2固定部材は、後部側に他方の被固定部材に取付けられる第2固定部材取付部を有し、上記第1固定部材と対向する前方側は上記第1固定部材突条部が挿入可能な第2固定部材中空部を有し、該第2固定部材中空部の先端に上記第1固定部材突条部が係合する斜面である第2固定部材係合面が形成され、
両方の上記被固定部材が合体するときに、上記被固定部材の移動により、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材中空部に挿入されるとともに、上記固定ピンが上記第1固定部材の後方側から内部を摺動し、第1固定部材中空部の先端まで挿入されて、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材係合面に密着して両方の被固定部材が固定された請求項1に記載の固定部材。
【請求項3】
上記相互に分離と固定が可能な被固定部材は、金型であり、一方の被固定部材は、固定型であり、他方の固定型は可動型であり、
上記第1固定部材は、上記固定型に取付けられ、上記第2固定部材は、上記可動型に取付けられ、
上記可動型と固定型が合体するときに、上記可動型の移動により、上記固定部材の上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材中空部に挿入され、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材係合面に当接するとともに、上記固定ピンが上記第1固定部材中空部の先端部分まで挿入されて、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材係合面に密着して上記可動型と固定型が固定され、キャビティーが形成された請求項1又は2に記載の固定部材。
【請求項4】
上記可動型と固定型が合体するときに、上記可動型の移動により、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材中空部に挿入されるとともに、上記固定ピンが上記第1固定部材の内部を摺動し、先端まで挿入されて、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材係合面に密着して、上記第1固定部材と第2固定部材が固定され、
上記可動型と固定型が固定され、上記可動型と固定型の接合面にキャビティーが形成された請求項3に記載の固定部材。
【請求項5】
上記第1固定部材は、円筒状の後部側に一方の被固定部材に取付けられる第1固定部材取付部と、該第1固定部材取付部と一体的に形成された円筒状の第1固定部材中空部を有し、該第1固定部材中空部の前方側は先端から後部側に向けて長手方向に複数の第1固定部材スリットが形成されるとともに、先端の外周側にリング状の第1固定部材突条部が上記第1固定部材スリットにより分割して形成され、該第1固定部材突条部がそれぞれ円筒状の中心方向に撓み可能に形成され、
上記第2固定部材は、上記第1固定部材突条部が挿入可能な円筒状に形成された第2固定部材中空部を有し、該第2固定部材中空部の後端に隣接して上記第1固定部材突条部が係合する斜面である第2固定部材係合面が形成され、上記第2固定部材中空部の円筒状の外周部に他方の被固定部材に取付けられる第2固定部材取付部を有し、
両方の上記被固定部材が合体するときに、上記被固定部材の移動により、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材中空部に挿入されるとともに、上記固定ピンが上記第1固定部材中空部の先端部分まで挿入されて、上記第1固定部材中空部の先端の第1固定部材突条部が上記第2固定部材係合面に密着して両方の被固定部材が固定された請求項1に記載の固定部材。
【請求項6】
上記相互に分離と固定が可能な被固定部材は、金型であり、一方の被固定部材は、可動押出板であり、他方の被固定部材は可動押出補助板であり、
上記可動型に、可動押出板と、該可動押出板の後側に可動押出板と分離可能に可動押出補助板を設け、該可動押出補助板の後側に可動押出補助板と分離して、可動ダイベース裏板を設け、
上記可動押出板と可動押出補助板が合体して移動するときに、上記可動押出板又は可動押出補助板の移動により、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材中空部に挿入されるとともに、上記固定ピンが上記第1固定部材中空部の先端部分まで挿入されて、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材係合面に密着して上記可動押出板と可動押出補助板が固定された請求項5に記載の固定部材。
【請求項7】
上記第2固定部材係合面と、上記第1固定部材突条部が上記第2固定部材係合面と当接する第1固定部材係止斜面の傾斜角度は略同一である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の固定部材。
【請求項8】
上記第1固定部材中空部の内面と上記固定ピンの外面には低摩擦処理が施された請求項1乃至7のいずれか1項に記載の固定部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−187627(P2012−187627A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65585(P2011−65585)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(506074897)有限会社エモ・テック・モールド (2)
【Fターム(参考)】