説明

固定部材

【課題】固定部材が取付相手側に対して不完全な状態で取り付けられることを防止する固定部材を提供する。
【解決手段】取付相手側61の外壁側62から内壁側63に貫通する貫通孔64に挿通して取付相手側61に固定される固定部材1であって、貫通孔64に挿入して内壁側63へ引っ張る力を加える引張部11と、引張部11を内壁側63へ引っ張ることにより貫通孔64の内側に弾性変形して外壁側62から内壁側63へ移動する弾性変形部21と、弾性変形部21が内壁側63へ移動して弾性復元すると取付相手側61の外壁側62と当接する当接部31と、引張部11又は弾性変形部21に形成された破断部41とを有し、破断部41は、当接部31が外壁側62と当接した状態で弾性変形部21が貫通孔64の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で引張部11を内壁側63へ引っ張ることにより破断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付相手側の貫通孔に挿通して取付相手側に固定される固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、取付相手側に固定される固定部材として、例えば、特開2003−125525号公報(特許文献1)に記載されたワイヤーハーネス用クリップが提案されている。
【0003】
このワイヤーハーネス用クリップは、ワイヤーハーネスを保持する保持部に一体に連接された取付軸部を車両のエンジン側に形成された取付穴に挿入することにより、ワイヤーハーネスをエンジン側に取り付けている。
【0004】
上記の取付軸部は、取付穴に嵌合する係合周溝部と、係合周溝部の縁部に隣接して取付穴と相似形で取付穴よりも大きく形成されたテーパ状案内部と、このテーパ状案内部の先端から伸びる摘み軸とを有している。
【0005】
そして、摘み軸を取付穴に差し込んで引っ張ると、取り付け穴より大きいテーパ状案内部が撓みながら取付穴の内側を移動し、取付穴をくぐりぬけると元の形状に戻り、係合周溝部が取付穴と係合することによりワイヤーハーネスをエンジン側に保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−125525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来のワイヤーハーネス用クリップでは、テーパ状案内部が取付穴をくぐりぬけると元の形状に戻り、係合周溝部を取付穴と係合させているため、摘み軸を摘んでいる手にはテーパ状案内部が元の形状に戻る際の振動が伝わる。
【0008】
このため、係合周溝部と取付穴との係合状態を目視で確認せず、テーパ状案内部が元の形状に戻る際の振動によるクリック感で係合したこを確認することがあり、クリック感があったと誤って認識し、係合周溝部と取付穴との係合が未完了となる場合がある。
【0009】
そこで、本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、固定部材が取付相手側に対して不完全な状態で取り付けられることを防止する固定部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載した本発明の固定部材は、取付相手側の外壁側から内壁側に貫通する貫通孔に挿通して前記取付相手側に固定される固定部材であって、前記貫通孔に挿入して前記内壁側へ引っ張る力を加える引張部と、前記引張部を前記内壁側へ引っ張ることにより前記貫通孔の内側に弾性変形して前記外壁側から前記内壁側へ移動する弾性変形部と、前記弾性変形部が前記内壁側へ移動して弾性復元すると前記取付相手側の外壁側と当接する当接部と、前記引張部又は前記弾性変形部に形成された破断部とを有し、前記破断部は、前記当接部が前記外壁側と当接した状態で前記弾性変形部が前記貫通孔の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で前記引張部を内壁側へ引っ張ることにより、前記貫通孔の周囲の前記内壁側に対する前記弾性変形部の係合状態を維持したまま破断することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載した本発明の固定部材は、請求項1に記載の固定部材であって、前記破断部の径は、前記引張部の径よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載した本発明の固定部材は、請求項1又は請求項2に記載の固定部材であって、前記破断部は、前記引張部と前記弾性変形部との間に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載した本発明の固定部材によれば、破断部は、当接部が外壁側と当接した状態で弾性変形部が貫通孔の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で引張部を内壁側へ引っ張ることにより破断する。このため、弾性変形した弾性変形部が弾性復元して固定部材が取付相手側に完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたことは、破断部が破断したことにより確認することができる。
【0014】
また、破断部が破断したことにより、固定部材が取付相手側に完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたことを確認することができる。このため、弾性変形部が弾性復元していないにも係らず、引張部を引っ張ることを止めることに伴い、固定部材が取付相手側に対して不完全な状態(半嵌合状態)で取り付けられることがない。
【0015】
従って、固定部材が取付相手側に対して不完全な状態で取り付けられることを防止する固定部材を提供することができる。
【0016】
請求項2に記載した本発明の固定部材によれば、破断部の径が、引張部と弾性変形部の径よりも小さく形成されているため、簡単な構成で弾性変形部が貫通孔の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で引張部を内壁側へ引っ張ることにより破断部を破断することができる。
【0017】
請求項3に記載した本発明の固定部材によれば、破断部が、引張部と弾性変形部との間に設けられているため、当接部の近傍が破断することにより、固定部材が取付相手側の貫通孔から外れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る固定部材の前提となる固定部材を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る固定部材の前提となる固定部材を取付相手側に取り付けた場合を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る固定部材を示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る固定部材の弾性部材の弾性変形を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る固定部材を取付相手側に取り付けた場合を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る固定部材と取付相手側を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る固定部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る固定部材について図面を参照して説明する。はじめに、本発明の実施形態に係る固定部材の前提となる固定部材について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る固定部材の前提となる固定部材を示す断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る固定部材の前提となる固定部材を取付相手側に取り付けた場合を示す断面図である。
【0020】
本発明の実施形態に係る固定部材の前提となる固定部材は、取付相手側の外壁側から内壁側に貫通する貫通孔に挿通して取付相手側に固定される固定部材である。
【0021】
図1及び図2に示すように、固定部材1は、固定部材1に取付相手側61の内壁側63(図1の矢印X参照)へ引っ張る力を加える引張部11と、取付相手側61の貫通孔64の内側に弾性変形する弾性変形部21とから構成されている。
【0022】
また、固定部材1は、取付相手側61の外壁62と当接する当接部31と、固定部材1が取付相手側61に取り付けられると貫通孔64の内側に挿通する挿通部51とから構成されている。
【0023】
引張部11は、取付相手側61の貫通孔64に挿入する先端部12と、固定部材1を取付相手側61の内壁側63(図1の矢印X参照)へ引っ張るための力点となる引張操作部13とを有している。
【0024】
弾性変形部21は、引張操作部13と連結した軸部22と、軸部22の外周から突出して、取付相手側61の貫通孔64を貫通する際に貫通孔64の内側に弾性変形する突出部23とを有している。
【0025】
この突出部23は、側面視すると略三角形状を有しており、図2に示すように、弾性変形部21が取付相手側61の内壁側63へ移動した際に、弾性変形した突出部23が弾性復元し、固定部材1が外壁側62へ戻るのを防止する。
【0026】
当接部31は、図1及び図2に示すように、弾性変形部21が取付相手側61の外壁側62から内壁側63(図1の矢印X参照)へ移動すると、外壁側62と当接する当接面32を有している。
【0027】
上述したように構成された固定部材1は、図1及び図2に示すように、はじめに、先端部12を取付相手側61の外壁側62から挿入し、引張操作部13を内壁側63(図1の矢印X参照)引っ張ることにより、引張部11を貫通孔64に挿入する。
【0028】
引張部11を貫通孔64に挿入すると、さらに、引張操作部13を内壁側63(図1の矢印X参照)引っ張ることにより、軸部22を貫通孔64に挿入する。
【0029】
軸部22を貫通孔64に挿入した後、さらに、引張操作部13を内壁側63(図2の矢印X参照)に引っ張ると、図2に示すように、突出部23が貫通孔64の内側(図1の矢印Y、矢印Z参照)に弾性変形して外壁側62から内壁側63へ移動する。
【0030】
突出部23が貫通孔64の内側に弾性変形した状態で、引張操作部13を内壁側63(図1の矢印X参照)に引っ張ると、図2に示すように、弾性変形部21が内壁側63へ移動して貫通孔64を貫通し、弾性変形した突出部23が弾性復元する。
【0031】
図2に示すように、突出部23が弾性復元すると、当接面32が外壁側62と当接する。当接面32が外壁側62に当接すると、固定部材1は取付相手側61に取り付けられて固定される。
【0032】
ところで、上述した固定部材1は、弾性変形した弾性変形部21が内壁側63へ移動して貫通孔64を貫通し弾性復元する際に、引張操作部13を引っ張る手に振動(クリック感)が伝わる。
【0033】
このように、手にクリック感が感じられるため、固定部材1が取付相手側61に対して完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたこを目視で確認せず、弾性変形部21が弾性復元した際の振動によるクリック感で確認することがある。
【0034】
そのため、クリック感があったと誤って認識し、突出部23が弾性復元していないにも係らず、引張操作部13を引っ張ることを止めてしまい、固定部材1が取付相手側61に対して不完全な状態(半嵌合状態)で取り付けられるおそれがある。
【0035】
そこで、本発明の実施形態に係る固定部材は、当接部が外壁側と当接した状態で弾性変形部が貫通孔の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で引張部を内壁側へ引っ張ると破断する破断部を設けることにより、固定部材1が取付相手側に対して不完全な状態(半嵌合状態)で取り付けられることを防止する。
【0036】
次に、図3を参照して、本発明の実施形態に係る固定部材の構成について詳細に説明する。図3は、本発明の実施形態に係る固定部材を示す側面図である。
【0037】
本発明の実施形態に係る固定部材は、バッテリとオルタネータからの電力を車両に搭載された電子機器等に供給するヒューズ回路構成体が装着された取付相手側の外壁側から内壁側に貫通する貫通孔に挿通して、取付相手側に固定される電子機器等の端子を覆うキャップに一体形成されて、取付相手側にキャップを固定する固定部材である。
【0038】
図3に示すように、固定部材1は、固定部材1に取付相手側61の内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ引っ張る力を加える引張部11と、取付相手側61の貫通孔64(後述する図4参照)の内側に弾性変形する弾性変形部21とから構成されている。
【0039】
また、固定部材1は、取付相手側61の外壁62(後述する図4参照)と当接する当接部31と、引張部11と当接部31との間を破断する破断部41と、固定部材1が取付相手側61に取り付けられると貫通孔64(後述する図4参照)の内側に挿通する挿通部51とから構成されている。
【0040】
引張部11は、取付相手側61の貫通孔64(後述する図4参照)に挿入する先端部12と、固定部材1を取付相手側61の内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ引っ張るための力点となる引張操作部13とを有している。
【0041】
弾性変形部21は、破断部41と連結した軸部22と、軸部22の外周から突出して、取付相手側61の貫通孔64(後述する図4参照)を貫通する際に貫通孔64の内側(図3の矢印Y、矢印Z参照)に弾性変形する突出部23とを有している。
【0042】
この突出部23は、側面視すると略三角形状を有しており、弾性変形部21が取付相手側61の内壁側63へ移動した際に、弾性変形した突出部23が弾性復元し、固定部材1が外壁側62へ戻るのを防止する(後述する図5参照)。
【0043】
当接部31は、弾性変形部21が取付相手側61の外壁側62から内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ移動すると、外壁側62と当接する当接面32を有している。
【0044】
この当接面32は、取付相手側61の貫通孔64(後述する図4参照)の径よりも大きく形成されている。このため、引張部11の引張操作部13により固定部材1に取付相手側61の内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ引っ張る力が加えられた場合でも、当接面32は貫通孔64を貫通することなく外壁側62と当接する。
【0045】
破断部41は、引張部11と弾性変形部21との間に設けられ、当接部31が取付相手側61の外壁側62(後述する図4参照)と当接した状態で、弾性変形部21が貫通孔64(後述する図4参照)の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で引張操作部13を内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ引っ張ることにより破断する。
【0046】
また、引張操作部13を内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ引っ張ることにより破断する際に、貫通孔64の周囲の内壁側63に対する弾性変形部21の係合状態(後述する図5に示す状態)を維持したまま破断する。
【0047】
上記のように、破断部41が、引張部11と弾性変形部21との間に設けられているため、当接部31の近傍が破断することにより、固定部材1が取付相手側61の貫通孔64(後述する図4参照)から外れることを防止することができる。
【0048】
また、弾性変形部21が貫通孔64(後述する図4参照)を貫通する際に、貫通孔64の内側に発生する摩擦力により弾性変形部21近傍が破断することがないため、確実に弾性変形部21を貫通孔に貫通することができる。
【0049】
挿通部51は、当接部31と弾性変形部21との間に設けられ、弾性変形部21が取付相手側61の外壁側62から内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ移動すると、取付相手側61の貫通孔64(後述する図4参照)の内側に位置する。
【0050】
引張部11と、弾性変形部21と、破断部41と、挿通部51は、断面が円形形状を有している。そして、引張部11の径aと挿通部51の径bは略同一の大きさ(例えば、約3mm)に形成されている。
【0051】
また、弾性変形部21の軸部22の径cは、引張部11の径aと挿通部51の径bは略同一の大きさ(例えば、約3mm)に形成されている。
【0052】
さらに、弾性変形部21の突出部23は、取付相手側61の貫通孔64(後述する図4参照)の内側へ弾性変形することにより変位する(例えば、約1mm内側へ変位する)。そして、突出部23が変位すると、突出部23の径dは軸部22の径cと略同一の大きさとなる。
【0053】
また、破断部41の径eは、引張部11の径a、挿通部51の径b、弾性変形部21の軸部22の径cよりも小さく形成されている(例えば、約1.5mm)。
【0054】
ここで、破断部41が形成されていない固定部材1(図1及び図2参照)の場合、固定部材1が取付相手側61に対して完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたか否かは、弾性変形部21の変形状態を目視しなければならず、固定部材1の取付状態の確認作業が煩雑となる。
【0055】
しかしながら、固定部材1に破断部41を設けることにより、引張部11と弾性変形部21との間が離脱したことで固定部材1が取付相手側61に完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたことを確認することができ、固定部材1の取付状態の確認作業が容易となる。
【0056】
また、上述したように、破断部41の径eが、引張部11の径a、挿通部51の径b、弾性変形部21の軸部22の径cよりも小さく形成されている。このため、簡単な構成で弾性変形部21が貫通孔64(後述する図4参照)の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で引張部11を内壁側63(後述する図4参照)へ引っ張ることにより破断部41を破断することができる。
【0057】
そして、引張部11の引張操作部13を取付相手側61の内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ引っ張ることにより弾性変形部21の突出部23が弾性変形する力は、引張操作部13を取付相手側61の内壁側63へ引っ張ることにより破断部41が破断する力よりも小さい。
【0058】
つまり、弾性変形部21が取付相手側61の内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ移動する前に破断部41が破断することがない。
【0059】
また、引張部11の引張操作部13を取付相手側61の内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ引っ張ることにより引張部11と挿通部51とが受ける引張力は、弾性変形部21の突出部23が取付相手側61の貫通孔64(後述する図4参照)の内側へ弾性変形する力、破断部41が破断する力よりも大きい。
【0060】
つまり、弾性変形部21が取付相手側61の内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ移動する前、破断部41が破断する前に、引張部11と挿通部51が破損することがない。
【0061】
上述したように、当接部31が外壁側62(後述する図4参照)と当接した状態で弾性変形部21が貫通孔64(後述する図4参照)の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で引張部11を内壁側63(後述する図4参照)へ引っ張ることにより、破断部41が引張部11と当接部31との間を破断する。
【0062】
このため、弾性変形した弾性変形部21が弾性復元して固定部材1が取付相手側61(後述する図4参照)に完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたことは、破断部41が破断することにより確認することができる。
【0063】
また、破断部41が破断することにより、固定部材1が取付相手側61(後述する図4参照)に完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたことを確認することができる。このため、弾性変形部21が弾性復元していないにも係らず、引張部11を引っ張ることを止めることに伴い、固定部材1が取付相手側61に対して不完全な状態(半嵌合状態)で取り付けられることがない。
【0064】
従って、固定部材1が取付相手側61に対して不完全な状態で取り付けられることを防止することができる。
【0065】
次に、図4から図6を参照して、本発明の実施形態に係る固定部材を取付相手側に取り付ける場合について詳細に説明する。図4は、本発明の実施形態に係る固定部材の弾性部材の弾性変形を示す断面図である。
【0066】
また、図5は、本発明の実施形態に係る固定部材を取付相手側に取り付けた場合を示す断面図である。図6は、本発明の実施形態に係る固定部材と取付相手側を示す斜視図である。
【0067】
上述したように構成された固定部材1は、図4から図6に示すように、取付相手側61に取り付けられる。
【0068】
図4から図6に示すように、取付相手側61には、外壁側62から内壁側63に貫通する貫通孔64が形成されており、この貫通孔64には、突出部23が軸部22の外周から突出した傾斜面に対応して傾斜部65が形成されている。
【0069】
また、図6に示すように、取付相手側61は、バッテリとオルタネータからの電力を車両に搭載された電子機器等に供給するヒューズ回路構成体66が装着されており、このヒューズ回路構成体66が電力を供給する電子機器等の端子が接続される端子接続部67を有している。
【0070】
図6に示すように、固定部材1は、電子機器等の端子を覆うキャップ71に一体形成されている。そして、キャップ71に覆われた電子機器等の端子を端子接続部67に接続するとともに、固定部材1を取付相手側61の貫通孔64に挿通して取付相手側61に取り付けてキャップ71を固定する。
【0071】
固定部材1を取付相手側61に取り付けるには、図2から図4に示すように、はじめに、先端部12を取付相手側61の外壁側62から挿入し、引張操作部13を内壁側63(図4の矢印X参照)引っ張ることにより、引張部11を貫通孔64に挿入する。
【0072】
引張部11を貫通孔64に挿入すると、さらに、引張操作部13を内壁側63(図4の矢印X参照)引っ張ることにより、軸部22を貫通孔64に挿入する。
【0073】
軸部22を貫通孔64に挿入した後、さらに、引張操作部13を内壁側63(図4の矢印X参照)に引っ張ると、図4に示すように、突出部23が貫通孔64の内側(図3の矢印Y、矢印Z参照)に弾性変形して外壁側62から内壁側63へ移動する。
【0074】
図4に示すように、外壁側62の貫通孔64には、突出部23が軸部22の外周から突出した傾斜面に対応して形成された傾斜部65により、引張操作部13を内壁側63(図4の矢印X参照)に引っ張ることで突出部23が貫通孔64の内側に弾性変形する。
【0075】
突出部23が貫通孔64の内側に弾性変形した状態で、引張操作部13を内壁側63(図4の矢印X参照)に引っ張ると、図5に示すように、弾性変形部21が内壁側63へ移動して貫通孔64を貫通し、弾性変形した突出部23が弾性復元する。
【0076】
図5に示すように、突出部23が弾性復元すると、当接面32が外壁側62(図4参照)と当接する。当接面32が外壁側62に当接すると、固定部材1は取付相手側61に取り付けられて固定される。
【0077】
そして、当接面32が外壁側62と当接している状態で、弾性変形部21が貫通孔64の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で引張操作部13を内壁側63(図4の矢印X参照)に引っ張ると、破断部41が破断する。
【0078】
また、引張操作部13を内壁側63(図3の矢印X参照、後述する図4参照)へ引っ張ることにより破断する際に、貫通孔64の周囲の内壁側63に対する弾性変形部21の係合状態(図5に示す状態)を維持したまま破断する。
【0079】
上述したように、弾性変形部21の突出部23が弾性変形する力は、破断部41が破断する力よりも小さいため、弾性変形部21が内壁側63へ移動した後に破断部41が破断して、引張部11と弾性変形部21との間が離脱する。
【0080】
このように、弾性変形部21が内壁側63へ移動した後に破断部41が破断するため、破断部41の破断により、固定部材1が取付相手側61(後述する図4参照)に完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたことを確認することができる。
【0081】
また、破断部41が破断することにより、固定部材1が取付相手側61(後述する図4参照)に完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたことを確認することができる。
【0082】
このため、弾性変形部21が弾性復元していないにも係らず、引張部11を引っ張ることを止めることに伴い、固定部材1が取付相手側61に対して不完全な状態(半嵌合状態)で取り付けられることがない。
【0083】
従って、固定部材1が取付相手側61に対して不完全な状態で取り付けられることを防止することができる。
【0084】
このようにして、本発明の実施形態に係る固定部材1は、取付相手側61の外壁側62から内壁側63に貫通する貫通孔64に挿通して取付相手側61に固定される固定部材1であって、貫通孔64に挿入して内壁側63へ引っ張る力を加える引張部11と、引張部11を内壁側63へ引っ張ることにより貫通孔64の内側に弾性変形して外壁側62から内壁側63へ移動する弾性変形部21と、弾性変形部21が内壁側63へ移動して弾性復元すると取付相手側61の外壁側62と当接する当接部31と、引張部11又は弾性変形部21に形成された破断部41とを有し、破断部41は、当接部31が外壁側62と当接した状態で弾性変形部21が貫通孔64の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で引張部11を内壁側63へ引っ張ることにより、貫通孔64の周囲の内壁側63に対する弾性変形部21の係合状態を維持したまま破断する。
【0085】
また、本発明の実施形態に係る固定部材1は、破断部41の径eは、引張部11の径aよりも小さい。
【0086】
さらに、本発明の実施形態に係る固定部材1は、破断部41は、引張部11と弾性変形部21との間に設けられている。
【0087】
そして、本発明の実施形態に係る固定部材1によれば、破断部41は、当接部31が外壁側62と当接した状態で弾性変形部21が貫通孔64の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で引張部11を内壁側63へ引っ張ることにより破断する。
【0088】
このため、弾性変形した弾性変形部21が弾性復元して固定部材1が取付相手側61に完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたことは、破断部41が破断することにより確認することができる。
【0089】
また、破断部41が破断することにより、固定部材1が取付相手側61に完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたことを確認することができる。このため、弾性変形部21が弾性復元していないにも係らず、引張部11を引っ張ることを止めることに伴い、固定部材1が取付相手側61に対して不完全な状態(半嵌合状態)で取り付けられることがない。
【0090】
さらに、固定部材1に破断部41を設けることにより、引張部11と弾性変形部21との間が離脱したことで固定部材1が取付相手側61に完全な状態(正規嵌合状態)で取り付けられたことを確認することができ、固定部材1の取付状態の確認作業が容易となる。
【0091】
従って、固定部材1が取付相手側61に対して不完全な状態(半嵌合状態)で取り付けられることを防止することができる。
【0092】
また、本発明の実施形態に係る固定部材1によれば、破断部の径eが、引張部11の径aよりも小さく形成されているため、簡単な構成で弾性変形部21が貫通孔64の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で引張部11を内壁側63へ引っ張ることにより破断部41を破断することができる。
【0093】
さらに、本発明の実施形態に係る固定部材1によれば、破断部41が、引張部11と弾性変形部21との間に設けられているため、当接部31の近傍が破断することにより、固定部材1が取付相手側61の貫通孔64から外れることを防止することができる。
【0094】
また、弾性変形部21が貫通孔64(後述する図4参照)を貫通する際に、貫通孔64の内側に発生する摩擦力により弾性変形部21近傍が破断することがないため、確実に弾性変形部21を貫通孔に貫通することができる。
【0095】
以上、本発明の固定部材を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0096】
上述した本発明の実施形態では、固定部材1は、破断部41の径eは、引張部11の径a、挿通部51の径b、弾性変形部21の軸部22の径cよりも小さく形成されている場合について説明したが、これに限定されない。
【0097】
例えば、図7に示すように、破断部41´の径eは、引張部11の径a、挿通部51の径b、弾性変形部21の軸部22の径cと略同一の大きさに形成されていてもよい(例えば、約1.5mm)。
【0098】
この場合、弾性変形部21の突出部23が弾性変形する力を破断部41が破断する力よりも小さく、引張部11と挿通部51とが受ける引張力は、突出部23が弾性変形する力、破断部41が破断する力よりも大きくなるように、破断部41´を多孔質等の材料で形成することができる。
【0099】
そして、弾性変形部21が取付相手側61の内壁側63へ移動した後、当接部31が取付相手側61の外壁側62と当接した状態で、破断部41´を破断するように構成することで、上述した本発明の実施形態に係る固定部材1と同様の作用効果を得ることができる。
【0100】
また、本発明の実施形態に係る固定部材1の破断部41は、引張部11と弾性変形部21との間に設けられている場合について説明したがこれに限定されない。例えば、破断部41は、当接部31と挿通部51を除く部分であれば、引張部11又は弾性変形部21に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、固定部材が取付相手側に対して不完全な状態で取り付けられることを防止する固定部材を提供する上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 固定部材
11 引張部
12 先端部
13 引張操作部
21 弾性変形部
22 軸部
23 突出部
31 当接部
32 当接面
41 破断部
51 挿通部
61 取付相手側
62 外壁側
63 内壁側
64 貫通孔
65 傾斜部
66 ヒューズ回路構成体
67 端子接続部
71 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付相手側の外壁側から内壁側に貫通する貫通孔に挿通して前記取付相手側に固定される固定部材であって、
前記貫通孔に挿入して前記内壁側へ引っ張る力を加える引張部と、
前記引張部を前記内壁側へ引っ張ることにより前記貫通孔の内側に弾性変形して前記外壁側から前記内壁側へ移動する弾性変形部と、
前記弾性変形部が前記内壁側へ移動して弾性復元すると前記取付相手側の外壁側と当接する当接部と、
前記引張部又は前記弾性変形部に形成された破断部とを有し、
前記破断部は、前記当接部が前記外壁側と当接した状態で前記弾性変形部が前記貫通孔の内側に弾性変形しているときよりも大きな力で前記引張部を内壁側へ引っ張ることにより、前記貫通孔の周囲の前記内壁側に対する前記弾性変形部の係合状態を維持したまま破断することを特徴とする固定部材。
【請求項2】
請求項1に記載の固定部材であって、
前記破断部の径は、前記引張部の径よりも小さいことを特徴とする固定部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の固定部材であって、
前記破断部は、前記引張部と前記弾性変形部との間に設けられていることを特徴とする固定部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−251570(P2012−251570A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122192(P2011−122192)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】