説明

固形インク組成物、プリントマスク、及びパターン形成方法

【課題】好適なアルカリ性溶媒で迅速且つ効率的に除去することが可能な、プリントマスクに使用される固形インク組成物、該組成物から形成されるプリントマスク、及び該組成物を使用するパターン形成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのアルカリ加水分解性基を含む少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのエチレンオキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを含む組成物に由来するプリントマスクであって、アルカリ性溶液を用いて約30秒以内に除去可能である、プリントマスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、プリント回路基板用のマスクの印刷に使用される固形インク組成物、プリントマスク、及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板(PCB)またはプリント配線板(PWB)(以後、PCBと総称する。)は、コンピュータ、通信デバイス、家庭用電化製品、自動製造検査機器中で電子部品を相互に接続および仲介し且つ電子部と他の要素とを接続および仲介するプラットフォームである。PCBは、裸銅めっき基板(bare copper plated board)として知られる、絶縁材料に薄い銅層を積層またはめっきした基板から、化学エッチング工程で銅の領域を選択的に除去して導電性の経路を形成することで作製され得る。
【0003】
この選択的除去は、プリントマスクまたは光パターン形成されたエッチレジスト(フォトレジスト)を銅層上にパターン状に塗布することで達成される。光パターン形成の場合、その後、プリントマスクを現像液に対して耐性化させる光源でPCBを露光する。次いで、露光されなかったフォトレジストを現像液を用いて除去することで、露光された、パターン状に裸銅が残される。プリントマスクの場合、酸性腐食液に耐性になるようにプリントマスク材料を設計する。どちらの場合も、その後、PCBを腐食液で処理して、銅めっきされた基板のうちでパターン形成されたマスク材料で被覆されていない領域をエッチングにより除去し、パターンだけを残す。次いで、パターン形成されたマスク材料自体を塩基性水性溶媒で除去することで、PCB上に形成された導電性経路を残すことができる。
【0004】
PCB上の導電性層は、絶縁性層の上にめっき用のシード層を有する絶縁性層上に銅をめっきすることで作製してもよい。このプロセスは、PCB中のホールを介してめっきすることで層を相互に接続できるという更なる利点を有するため、しばしば外層処理として用いられる。このめっき法の場合、マスク層はエッチングの場合と同様フォトレジストまたは印刷技術により描画されるが、腐食液で銅を処理する代わりに、めっき液で基板を処理する。めっき液は、マスク材料で被覆されていない基板表面に銅またはその他の金属を塗布する。次いで、マスク材料およびシード層を剥離すると、パターン形成した金属トレースが残る。
【0005】
どちらのプロセスでも、プリントマスクの一部を塩基性水性溶媒で除去するが、これらの溶媒はプリントマスクを迅速に剥離除去しないかまたはアンダーカット等によるその後の除去が必要ないほど微細にはプリントマスクを除去しないため、そのような除去はしばしば不十分であるか、余分な処理時間を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,908,063号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0164121号公報
【特許文献3】米国特許第5,496,879号公報
【特許文献4】米国特許第6,547,380号公報
【特許文献5】米国特許第4,144119号公報
【特許文献6】米国特許第4,437931号公報
【特許文献7】米国特許第3,668,131号公報
【特許文献8】米国特許第4,849,124号公報
【特許文献9】米国特許第4,130,454号公報
【特許文献10】米国特許第4,859,281号公報
【特許文献11】米国特許第3,773,577号公報
【特許文献12】米国特許第6,872,320号公報
【特許文献13】米国特許出願公開第2008/0241712号公報
【特許文献14】米国特許出願公開第2009/0123873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願は、好適なアルカリ性溶媒で迅速且つ効率的に除去することが可能な、プリントマスクに使用される固形インク組成物の提供を課題とする。そのようなマスクは、プリントマスクを用いる全てのPCBおよびPCB製造プロセスに好適であり、より高価なマスクプロセスの使用に伴う製造コストを低減するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある実施態様は、少なくとも1つのアルカリ加水分解性基を含む少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのエチレンオキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを含む組成物に由来するプリントマスクであって、アルカリ性溶液を用いて約30秒以内に除去可能である前記プリントマスクである。
【0009】
本開示のある実施態様は、少なくとも1つのアルカリ加水分解性基を含む少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのエチレンオキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを含む組成物に由来するプリントマスクであって、アルカリ性溶液を用いて約30秒以内に除去可能であり、且つ、紫外線吸収剤を含有しない、前記プリントマスクである。
【0010】
また、本開示のある実施態様は、支持体上にパターンを形成する方法であって、支持体に金属層を塗布する工程;前記金属層に組成物を選択的に塗布して複合構造体を形成する工程であって、前記組成物が、少なくとも1つのアルカリ加水分解性基を含む少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのエチレンオキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを含む、工程;前記複合構造体をエッチング液に接触させて、前記金属層のうち前記組成物で被覆されていない部分を除去する工程;ならびに前記複合構造体をエッチング液に接触させた後にアルカリ性溶液を塗布して、約30秒以内に前記組成物を除去し、前記支持体上に画像を形成する工程、を含む、前記方法である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、好適なアルカリ性溶媒で迅速且つ効率的に除去することが可能なプリントマスクに使用される固形インク組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1のプリントマスク組成物の示差走査熱量測定データを示す。
【図2】図2は、実施例2のプリントマスク組成物の示差走査熱量測定データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明は、少なくとも1つのアルカリ加水分解性基を含む少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのエチレンオキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを含む組成物に由来するプリントマスクであって、アルカリ性溶液を用いて約30秒以内に除去可能であるプリントマスクに関する。
【0014】
少なくとも1つのアルカリ加水分解性基を含む化合物は、炭素数約10〜約50、例えば炭素数約14〜約22または約16〜約20の、置換または未置換の脂肪族カルボン酸であってよい。好適な脂肪族カルボン酸の例としては、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸(ベヘン酸)、ヘキサコサン酸、テトラコサン酸(リグノセリン酸)等の飽和脂肪族カルボン酸;パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール-酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、セトレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸が挙げられる。更なる例としては、UNICID 350、UNICID 425、UNICID 550、UNICID 700等のUNICIDカルボン酸ポリマー(ベーカー・ペトロライト・コーポレーション(Baker−Petrolite Corporation)製)等の直鎖カルボン酸が挙げられる。熱せられたプリントヘッド中で前記組成物の安定性を維持するためには、飽和脂肪族カルボン酸が望ましい。
【0015】
前記組成物は、上記アルカリ加水分解性基を含む少なくとも1つの化合物と一緒にまたは単独で、2個のアルカリ加水分解性基を含む少なくとも1つの化合物を含んでもよい。そのような化合物の好適な例としては、下記式で表される二価酸が挙げられる。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、aは約5〜約24、例えば約10〜約24、または約14〜約20、または約16〜約20の整数であり、bはaの値の2倍の整数である。)
【0018】
前記二価酸の例としては、ピメリン酸、スベリン酸、およびCORFREE M1(デュポン社から入手可能)等の高分子量酸混合物が挙げられる。三価酸等の多官能酸を用いてもよい。二価酸の有益な態様では、アルカリ性塩基が1分子当たり2個以上の荷電基を生じ得、この荷電基により溶解/溶解度が良好となるため、1分子当たり2個以上の酸基によりプリントマスクの溶解がより迅速となる。
【0019】
前記組成物は更に、下記式で表される少なくとも1つの一価アルコールを含んでもよい。
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、xは約8〜約30、例えば約12〜約22、または約14〜約20の整数である。)好適な一価アルコールまたは「脂肪族アルコール」の例としては、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、トリコサノール等が挙げられる。
【0022】
少なくとも1つのアルカリ加水分解性基を含む化合物は、前記組成物の少なくとも約2重量%、例えば前記組成物の約2〜約99重量%、または前記組成物の約2〜約90重量%、または前記組成物の約3〜約80重量%、または前記組成物の約5〜約60重量%、または前記組成物の約10〜約50重量%、または前記組成物の約10〜約30重量%等の量で前記組成物中に存在し得る。
【0023】
少なくとも1つのエチレンオキシド基を含む化合物は、エトキシ化アルコールまたはエトキシ化アルコールのエステルであってよい。エトキシ化アルコール(直鎖)は、脂肪族アルコールの縮合物であり、アルキル部分およびエチレンオキシド(EO)部分を含む。好適なエトキシ化アルコールは、例えば、その開示全体を参照により本明細書に援用する米国特許第4,908,063号にも開示されている。エトキシ化アルコールは、下記式で表される。
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、xは約1〜約50、例えば約5〜約40、または約10〜約30、または約15〜約25の整数であり、yは約1〜約70、例えば約1〜約50、または約10〜約40、または約1〜約25の整数である。)この材料は、融点が約60〜約150℃、例えば約70〜約120℃または約80〜約110℃であってよく、数平均分子量(Mn)が約100〜約5,000、例えば約500〜約3,000または約500〜約2,500であってよい。市販の例としては、UNITHOX 420(Mn=560)、UNITHOX 450(Mn=900)、UNITHOX 480(Mn=2,250)、UNITHOX 520(Mn=700)、UNITHOX 550(Mn=1,100)、UNITHOX 720(Mn=875)、UNITHOX 750(Mn=1,400)等が挙げられる。
【0026】
前記組成物がエトキシ化アルコールおよび脂肪族カルボン酸を含む場合、エトキシ化アルコールの添加により前記組成物の結晶性が乱れ、可剥性を促進する更なる極性基が付加される。例えば、エトキシ化アルコールを上記脂肪族カルボン酸と約100〜約150℃、または約110〜約150℃、または約120〜約130℃の温度で混合するとすぐに、エトキシ化アルコールのアルコール末端部分が脂肪族カルボン酸のカルボキシル末端部分と反応してエステルを形成する。この反応により前記組成物の結晶性が乱れ、極性アルカリ性溶液による前記組成物の剥離または除去を支援する極性基が付加される。
【0027】
アルコール1分子当たり約4〜20モルのEOが縮合した直鎖または分岐鎖形態の高分子量アルコール(例えば炭素数が少なくとも8のアルコール)のエトキシ化アルコール縮合物の好適例としては、例えばアルコール1分子当たり約16モルのEOが縮合したラウリルまたはミリスチルアルコール、アルコール1分子当たり約6〜15モルのEOが縮合したトリデカノール、アルコール1分子当たり約10モルのEOが縮合したミリスチルアルコール、アルコール1分子当たり約6〜11モルのEOを含む獣脂(tallow)アルコールエトキシラート、およびアルコール1分子当たり約6〜約9モルのEOを含むココナッツ脂肪族アルコールエトキシラートが挙げられる。
【0028】
好適なエトキシ化アルコールのその他の例としては、炭素数約9〜15の高級脂肪族第一級アルコールであるNEODOLエトキシラート(テキサス州のシェル・カンパニーから入手可能)、例えば、4〜10モルのEOと縮合したC〜C11アルカノール(NEODOL 91−8またはNEODOL 91−5)、6.5モルのEOと縮合したC12〜C13アルカノール(NEODOL 23−6.5)、12モルのEOと縮合したC12〜C15アルカノール(NEODOL 25−12)、13モルのEOと縮合したC14〜C15アルカノール(NEODOL 45−13)、7モルのEOと縮合したC12アルカノール(NEODOL 1−7)、平均2.5モルのEOと縮合したC〜C11アルカノール(NEODOL 91−2.5)、6モルのEOと縮合したC〜C11アルカノール(NEODOL 91−6)、8モルのEOと縮合したC〜C11アルカノール(NEODOL 91−8)、6.5モルのEOと縮合したC12〜C13アルカノール(NEODOL 23−6.5)、7モルのEOと縮合したC12〜C13アルカノール(NEODOL 23−7)、7モルのEOと縮合したC12〜C15アルカノール(NEODOL 25−7)、9モルのEOと縮合したC12〜C15アルカノール(NEODOL 25−9)、12モルのEOと縮合したC12〜C15アルカノール(NEODOL 25−12)、および13モルのEOと縮合したC14〜C15アルカノール(NEODOL 45−13)が挙げられる。
【0029】
使用に適したエトキシ化アルコールその他の例としては、約4モルのEOを有するエトキシ化C〜C10アルコールがTRYCOL ST−8049の商標名でコグニス・コーポレーション(Cognis Corporation)からも入手可能であり、また、4.5モルのEOを有するエトキシ化C〜C10アルコールであるALFONIC 810−4.5がサソール社(Sasol Corp.)から入手可能である。エトキシ化アルコールの更なる例としては、5〜30モルのエチレンオキシドと縮合した、直鎖または分岐鎖形態の炭素数8〜18の第二級脂肪族アルコールの縮合物が挙げられる。市販の非イオン性界面活性剤の例としては、ユニオンカーバイド社(Union Carbide)から販売されている、9モルのEOと縮合したC11〜C15の第二級アルカノール(TERGITOL 15−S−9)または12モルのEOと縮合したC11〜C15の第二級アルカノール(TERGITOL 15−S−12)が挙げられる。
【0030】
本出願以前には、紫外照射を防止または「遮断(block out)」するために、米国特許出願公開第2005/0164121号に記載されているもののような紫外線吸収剤をプリントマスク組成物に含有させていた。しかし、本明細書に開示する組成物は、ある実施形態では、如何なる紫外線吸収剤も含有しないか、且つ/または実質的に含有しない。このプリントマスク組成物は紫外線吸収剤を添加しなくても紫外光を散乱または反射することが可能であるため、紫外線吸収剤が必要ない。
【0031】
ある実施形態では、前記組成物は、可塑剤、粘着付与剤、他の適切な添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を更に含んでもよい。
【0032】
可塑剤は、UNIPLEX 250(ユニプレックス社(Uniplex)から市販)、モンサント社からSANTICIZERの商標で市販されているフタル酸エステル系可塑剤、例えばフタル酸ジオクチル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸アルキルベンジル(SANTICIZER 278)、リン酸トリフェニル(モンサント社から市販)、リン酸トリブトキシエチルであるKP−140(FMCコーポレーションから市販)、フタル酸ジシクロヘキシルであるMORFLEX 150(モルフレックス・ケミカル・カンパニー・インコーポレイテッド(Morflex Chemical Company Inc.)から市販)、トリメリット酸トリオクチル(イーストマン・コダック社から市販)等からなる群から選択され得る。可塑剤は、前記組成物の約0.01〜約98重量パーセント、または前記組成物の約0.1〜約50重量パーセント、または前記組成物の約5〜約10重量パーセントの量で存在し得る。
【0033】
前記組成物は、水素化アビエチン(ロジン)酸のグリセロールエステルであるFORAL 85(ヘラクレス社(Hercules)から市販)、ヒドロアビエチン(ロジン)酸のペンタエリスリトールエステルであるFORAL 105(ヘラクレス社から市販)、フタル酸のヒドロアビエチン(ロジン)アルコールエステルであるCELLOLYN 21(ヘラクレス社から市販);水素化アビエチン(ロジン)酸のトリグリセリドであるARAKAWA KE−311およびKE−100樹脂(荒川化学工業株式会社から市販);NEVTAC 2300、NEVTAC 100、およびNEVTACO 80(ネビル・ケミカル・カンパニー(Neville Chemical Company)から市販)等の合成ポリテルペン樹脂、修飾合成ポリテルペン樹脂であるWINGTACK 86(グッドイヤー社(Goodyear)から市販)等からなる群から選択される粘着付与剤を更に含んでもよい。粘着付与剤は、例えば前記組成物の約0.01〜約50重量パーセント、前記組成物の約0.1〜約20重量パーセント、または前記組成物の約5〜約10重量パーセント等の任意の有効量で前記組成物中に存在し得る。
【0034】
ある実施形態では、前記組成物はさらに、従来公知の添加剤を、その公知の機能の利点を得ることを期して含有してもよい。このような添加剤の例としては、ポリアミド樹脂、殺生物剤、酸化防止剤、接着剤等が挙げられる。
【0035】
ある実施形態では、前記組成物は、組成物に粘着性をもたせるか、粘度を増加させるか、組成物中の他の成分の少なくとも1つの溶解性を高めるための、好適なポリアミド樹脂を更に含んでもよい。好適なポリアミド樹脂の例としては、アリゾナ・ケミカル社(Arizona Chemical)からUNIREZの商標で販売されている重量平均分子量が15,000g/モル未満のポリエステルアミド樹脂、例えばUNIREZ 2970、UNIREZ 2974、UNIREZ 2980等が挙げられる。これらの樹脂は軟化点が約90〜約140℃であり、130℃における粘度が約20〜約150cPである。
【0036】
殺生物剤は、前記組成物の約0.1〜約1.0重量パーセントの量で存在し得る。好適な殺生物剤としては、例えば、ソルビン酸、DOWICIL 200(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製)として市販されている1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタンクロリド、CYTOX 3711(アメリカン・サイアナミド・カンパニー(American Cyanamid Company)製)として市販されているビニレン−ビスチオシアネート、DITHONE D14(ローム・アンド・ハースカンパニー(Rohm & Haas Company)製)として市販されているエチレンビス−ジチオカルバミン酸2ナトリウム、BIOCIDE N1386(ストーファー・ケミカル・カンパニー(Stauffer Chemical Company)製)として市販されているビス(トリクロロメチル)スルホン、ジンクオマジン(Zinc Omadine;オリン・コーポレーション(Olin Corporation)製)として市販されているジンクピリジンチオン、ONYXIDE 500(オニックス・ケミカル・カンパニー(Onyx Chemical Company製)として市販されている2−ブロモ−t−ニトロプロパン−1,3−ジオール、BOSQUAT MB50(ロウザ・インコーポレイテッド(Louza、Inc.)製)等が挙げられる。
【0037】
前記組成物は、容器中で組成物成分が加熱溶融物として存在している間、前記組成物が酸化から保護されるように、酸化防止剤を含んでもよい。好適な酸化防止剤の例としては、(1) N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(IRGANOX 1098、チバ・ガイギー・コーポレーションから入手可能)、(2)2,2−ビス(4−(2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ))エトキシフェニル)プロパン(TOPANOL−205、ICIアメリカ・コーポレーションから入手可能)、(3)トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌラート(CYANOX 1790、41,322−4、LTDP、Aldrich D12,840−6)、(4)2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオロホスホニト(ETHANOX−398、エチル・コーポレーション(Ethyl Corporation)から入手可能)、(5)テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホニト(ALDRICH 46,852−5;硬度値90)、(6)テトラステアリン酸ペンタエリトリトール(TCI America #PO739)、(7)次亜リン酸トリブチルアンモニウム(Aldrich 42,009−3)、(8)2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール(Aldrich 25,106−2)、(9)2,4−ジ−tert−ブチル−6−(4−メトキシベンジル)フェノール(Aldrich 23,008−1)、(10)4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール(Aldrich 34,951−8)、(11)4−ブロモ−3,5−ジジメチルフェノール(Aldrich B6,420−2)、(12)4−ブロモ−2−ニトロフェノール(Aldrich 30,987−7)、(13)4−(ジエチルアミノメチル)−2,5−ジメチルフェノール(Aldrich 14,668−4)、(14)3−ジメチルアミノフェノール(Aldrich D14,400−2)、(15)2−アミノ−4−tert−アミルフェノール(Aldrich 41,258−9)、(16)2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール(Aldrich 22,752−8)、(17)2,2’−メチレンジフェノール(Aldrich B4,680−8)、(18)5−(ジエチルアミノ)−2−ニトロソフェノール(Aldrich 26,951−4)、(19)2,6−ジクロロ−4−フルオロフェノール(Aldrich 28,435−1)、(20)2,6−ジブロモフルオロフェノール(Aldrich 26,003−7)、(21)α−トリフルオロ−o−クレゾール(Aldrich 21,979−7)、(22)2−ブロモ−4−フルオロフェノール(Aldrich 30,246−5)、(23)4−フルオロフェノール(Aldrich F1,320−7)、(24)4−クロロフェニル−2−クロロ−1、1,2−トリ−フルオロエチルスルホン(Aldrich 13,823−1)、(25)3,4−ジフルオロフェニル酢酸(Aldrich 29,043−2)、(26)3−フルオロフェニル酢酸(Aldrich 24,804−5)、(27)3,5−ジフルオロフェニル酢酸(Aldrich 29,044−0)、(28)2−フルオロフェニル酢酸(Aldrich 20,894−9)、(29)2,5−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸(Aldrich 32,527−9)、(30)エチル−2−(4−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェノキシ)プロピオナート(Aldrich 25,074−0)、(31)テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホニト(Aldrich 46,852−5)、(32)4−tert−アミルフェノール(Aldrich 15,384−2)、(33)3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチルアルコール(Aldrich 43,071−4)、NAUGARD 76、NAUGARD 445、NAUGARD 512、NAUGARD 524(ユニロイヤル・ケミカル・カンパニー(Uniroyal Chemical Company)製)等、およびこれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤が存在する場合は、例えば前記組成物の約0.25〜約10重量パーセント、または前記組成物の約1〜約5重量パーセント等の、任意の所望の量または有効量で、前記組成物中に存在し得る。
【0038】
VERSAMID 757、759、または744(ヘンケル社(Henkel)から市販)等の接着剤が、前記組成物の約0.01〜約98重量パーセント、または前記組成物の約0.1〜約50重量パーセント、または前記組成物の約5〜約10重量パーセントの量で前記組成物中に存在し得る。
【0039】
接着剤が存在する場合は、接着剤のそれぞれまたは組合せは、前記組成物の約1〜約10重量パーセント、または前記組成物の約3〜約5重量パーセント等の、任意の所望の量または有効量で、前記組成物中に存在し得る。
【0040】
本明細書に記載の前記組成物は、相変化インクと同様な様式で機能し得る。相変化インク(「固形インク」および「ホットメルトインク」と呼ぶこともある。)は種々の液体堆積技術に用いられてきた。相変化インクはしばしば、インクが周囲温度では固相で存在し且つインクジェット印刷デバイスの高い作動温度では液相で存在することを可能にする「相変化剤」を含有する。付着作動温度で液体インクの液滴が印刷デバイスから吐出され、インクが、直接または中間加熱転写ベルトまたはドラムを介して、記録支持体の表面へと噴射されるかまたは記録支持体の表面に接触すると、インクは急速に固化し、所定のパターンの固化したインク滴を形成する。相変化インクは、例えば米国特許第5,496,879号に開示されているようなグラビア印刷等のその他の印刷技術でも用いられてきた。
【0041】
本明細書の組成物は、輸送、長期保管等の間、室温で固相のままであるので、望ましくはインクジェットプリンターを用いて塗布される。前記組成物では、溶媒ベースのインクジェットインクにおける組成物の蒸発によるノズルの詰まりに関連する問題も大幅に取り除かれるので、インクジェット印刷の信頼性が向上する。更に、組成物液滴がPCB材料に直接塗布される場合、液滴は支持体に接触するとすぐに固化するので、表面でインクが移動せず、ドットおよびエッジの質が向上する。
【0042】
一般的に、前記組成物は、例えば約20〜約27℃等の周囲温度または室温では固相であるが、インクジェット印刷デバイスの高い作動温度では液相で存在する。噴射作動温度では、インクは溶融しており、液体インクの液滴が印刷デバイスから吐出される。
【0043】
ある実施形態では、前記組成物は、例えば顕微鏡ホットステージ上での観察および測定により決定される融点が、例えば約40〜約85℃、または約40〜約60℃、または約45〜約55℃、または約45〜約50℃であってよい。この融点は、前記組成物をスライドガラス上で加熱し、顕微鏡で観察されるか、示差走査熱量測定により特徴解析される。更に、前記組成物は、噴射粘度が約5〜約25cPであってよい。
【0044】
ある実施形態では、無電解浴、電解槽、および浸漬槽等の任意の好適な方法で、支持体に金属表面をマスクパターン状に塗布してよい。めっきにより堆積され得る金属としては、貴金属、非貴金属、ならびにそれらの合金が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な貴金属の例としては、金、銀、白金、パラジウム、およびそれらの合金が挙げられる。好適な非貴金属の例としては、銅、ニッケル、コバルト、鉛、鉄、ビスマス、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、ルビジウム、インジウム、およびこれらの合金が挙げられる。
【0045】
支持体は、例えばシリコン、ガラスプレート、プラスチックの膜またはシートからなってよい。構造的に可撓性を有するデバイスには、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドシート等のプラスチック支持体等を用いてよい。支持体の厚さは、特に可撓性を有するプラスチック支持体では10マイクロメートル〜約10ミリメートル、または約50マイクロメートル〜約2ミリメートルであってよく、ガラスまたはシリコン等の剛性を有する支持体では約0.4ミリメートル〜約10ミリメートルであってよい。
【0046】
任意の好適なインクジェット装置またはデバイスを使用して、金属層にプリントマスク組成物をパターン状に選択的に塗布してよい。金属層とプリントマスクの組合せを本明細書では複合構造体と呼ぶ。更に、プリントマスクのパターンは導電性経路のパターンと実質的に同じになる。インクジェットデバイスは当該技術分野で公知であるため、そのようなデバイスの詳細な説明は本明細書では不要であろう。参照により全体を本明細書に組み入れられる米国特許第6,547,380号に記載されているように、インクジェット印刷システムには一般的に2種類、すなわち連続流のものとドロップ・オン・デマンドのものがある。
【0047】
プリントマスクを塗布した後、金属層のうちプリントマスクで被覆されていない部分が除去されて、パターンのみが残るように、支持体全体をエッチング液で処理する。好適なエッチング液のpH範囲は2〜6.5、または例えば3〜6、または例えば3.5〜5.5である。エッチング液は、水に溶解させた溶質を含む。エッチング液中の溶質の例としては、塩化銅、塩化第二鉄、クロム塩、過酸化水素・硫酸、および過酸化水素・硝酸が含まれる。エッチング化合物のその他の例としては、米国特許第4,144,119号、同第4,437,931号、同第3,666,131号、同第4,849,124号、同第4,130,454号、同第4,859,281号、および同第第3,773,577号に記載されているものが含まれる。溶質はエッチング液の0.1〜90重量パーセントの量でエッチング液中に存在してよい。
【0048】
次いで、金属層のうちプリントマスクで被覆されていない部分をエッチング液で実質的にまたは完全に除去した後、プリントマスクはアルカリ性溶液(塩基水溶液)で約30秒未満で除去または「剥離」され得る。したがって、プリントマスクは約30秒以内に除去可能である。
【0049】
好適なアルカリ性溶液は、pHが7.5〜14、または例えば8〜13、または例えば9〜12である。アルカリ性溶液は、水に溶解した金属水酸化物溶質または金属炭酸塩溶質を含有する。好適な溶質の例としては、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ならびに炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。溶質は、アルカリ性溶液の約0.05〜約5重量パーセント、またはアルカリ性溶液の約0.1〜約4重量パーセント、またはアルカリ性溶液の約1〜約2重量パーセントの量でアルカリ性溶液中に存在し得る。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明する。本開示の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0051】
実施例1:組成物Aの調製
130℃で2時間、3枚羽根のインペラを445rpmで用いて、1立方フィート毎時(SCFH)で窒素を通気させながら、63.75重量部のヘキサデカン酸(パルミチン酸)、63.75重量部のオクタデカン酸(ステアリン酸)、63.75重量部のドコサン酸(ベヘン酸)、および50.00重量部のUNITHOX450(エトキシ化アルコール)を含む混合物を形成することで組成物を調製した。窒素の通気はUNITHOX450と酸の縮合物から水を除去する役割がある。混合後、混合物を90℃に冷却し、最初にワットマン社のグレード42の定量濾紙で濾過し、アドバンテックス社のPTFEの1マイクロメートルフィルターで再度濾過した。
【0052】
実施例2:プリントマスクAを形成するための組成物Aの印刷
ガラス支持体上にプリントする前に、組成物Aの粘度、融解温度、および固化温度をそれぞれ測定し、組成物Aがインクジェット印刷に適していることを確認した。ブルックフィールド社製レオメーターを用いて種々の温度における組成物Aの粘度を測定した。粘度の測定結果を以下の表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
更に、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて組成物Aの融解温度および固化温度を測定した。図1に示すように、組成物Aの融解温度は54.71℃、固化温度は46.13℃であった。表1および図1の結果は、組成物Aがインクジェット印刷に適していたことを示している。
【0055】
インクジェットデバイスを用いてガラス支持体上の1インチ四方の領域に組成物Aを噴射し、厚さ約25μmのプリントマスクAを形成した。
【0056】
実施例3:プリントマスクAの可剥性
水に溶解させた1.2重量パーセントの炭酸カリウムを含むアルカリ性塩基溶液(50℃)を、回転噴霧機を用いて塗布して、プリントマスクAを剥離した。次いで、脱イオン水を滴下して支持体を10秒間リンスした(drip−rinse)。
【0057】
実施例4:組成物Bの調製
9グラムのDARCO G−60および19グラムの珪藻土を添加し、モット社の40ミクロンフィルターディスクとワットマン社のNo.3の濾紙を使用して、UNICID350を濾過した。次いで、濾過したUNICID350(425.6重量部)を、435.0重量部のドコサン酸(ベヘン酸)、90重量部のUNIREZ2970(ポリアミド樹脂)、および240.0重量部のKE−100(粘着付与剤)とを、130℃で2時間、3枚羽根のインペラを445rpmで用いて混合し、組成物を調製した。混合後、混合物を105℃まで冷却し、モット社の40ミクロンフィルターディスク上でワットマン社のNo.3の膜を用いて濾過した。
【0058】
実施例5:プリントマスクBを形成するための組成物Bの印刷
ガラス支持体上にプリントする前に、組成物Bの粘度、融解温度、および固化温度をそれぞれ測定し、組成物Bがインクジェット印刷に適していることを確認した。ブルックフィールド社製レオメーターを用いて種々の温度における組成物Bの粘度を測定した。粘度の測定結果を以下の表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
更に、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて組成物Bの融解温度および固化温度を測定した。図2に示すように、組成物Bの融解温度は68.17℃、固化温度は58.79℃であった。表2および図2の結果は、組成物Bがインクジェット印刷に適していたことを示している。
【0061】
インクジェットデバイスを用いてガラス支持体上の1インチ四方の領域に組成物Bを噴射し、厚さ約5μmのプリントマスクBを形成した。
【0062】
実施例6:プリントマスクBの可剥性
水に溶解させた1.2重量パーセントの炭酸カリウムを含むアルカリ性塩基溶液(50℃)を、回転噴霧機を用いて塗布して、プリントマスクBを剥離した。次いで、脱イオン水を滴下して支持体を10秒間リンスした(drip−rinse)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアルカリ加水分解性基を含む少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのエチレンオキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを含む組成物に由来するプリントマスクであって、
アルカリ性溶液を用いて30秒以内に除去可能である前記プリントマスク。
【請求項2】
少なくとも1つのアルカリ加水分解性基を含む少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのエチレンオキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを含む組成物に由来するプリントマスクであって
アルカリ性溶液を用いて30秒以内に除去可能であり、且つ
紫外線吸収剤を含有しない、前記プリントマスク。
【請求項3】
支持体上にパターンを形成する方法であって、
支持体に金属層を塗布する工程;
前記金属層に組成物を選択的に塗布して複合構造体を形成する工程であって、前記組成物が、少なくとも1つのアルカリ加水分解性基を含む少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つのエチレンオキシド基を含む少なくとも1つの化合物とを含む、工程;
前記複合構造体をエッチング液に接触させて、前記金属層のうち前記組成物で被覆されていない部分を除去する工程;ならびに
前記複合構造体をエッチング液に接触させた後にアルカリ性溶液を塗布して、30秒以内に前記組成物を除去し、前記支持体上に画像を形成する工程
を含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−40755(P2011−40755A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181255(P2010−181255)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】