説明

固形分90重量%以上のシーラー組成物とこれを用いた塗装方法及び塗装物品

【課題】 無機建材への含浸性、低揮発性有機溶剤(低VOC)で環境対応に優れ、強度、耐水性、上塗り付着性等に優れた無機建材用のシーラー組成物を提供すること。
【解決手段】式(1)及び/又は式(2)で示されるラジカル重合性不飽和単量体(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)を含有する固形分90%以上のシーラー組成物であり、また塗装物品。
光重合開始剤(C)を含有する1項に記載の固形分90重量%以上のシーラー組成物と、ポリオール(D)を含有する1項又は2項に記載の固形分90重量%以上のシーラー組成物に関し、さらにこのシーラー組成物を用いた塗装方法と塗装された物品も包含する。
式(1)
【化1】


式(2)
【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機建材への含浸性、揮発性有機化合物の低減(以下、低VOCと略することあり)、耐水性、及び上塗り付着性等に優れる固形分90重量%以上のシーラー組成物と、これを用いた塗装方法及び塗装物品塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機建材は、建築材料、土木材料、工業材料として使われており、詳しくは、珪酸カルシウム板、石綿セメント板、木片セメント板、パルプセメント板、軽量気泡コンクリート板等が挙げられる。このような無機建材の強度アップや上塗り塗料の付着性向上の為にシーラーが塗布されて無機建材が製造されている。
従来、無機建材に用いるシーラー組成物としては、塩化ビニル樹脂を用いた有機溶剤型のシーラー組成物、ポリイソシアネート化合物、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート(通常「MDI」と呼ばれる)等を用いた湿式硬化型のシーラー組成物、並びに水酸基含有樹脂にポリイソシアネート化合物を配合してなる2液型ウレタン樹脂系のシーラー組成物等が多く使用されてきた。しかし有機溶剤の空気中への揮散や、廃棄リサイクル時において塩素にかかわる公害問題が問題点となってきた。
その対策として、変性エポキシ樹脂を分散安定樹脂とし、アクリル変性エポキシ樹脂を水分散せしめてなるエポキシ樹脂系エマルション、及びアミン硬化剤を含む水性塗料組成物がある(特許文献1)。
他に、無機建材に、水分散性ポリイソシアネートを塗装して含浸させる無機建材用のシーラーの塗膜形成方法に関する提案がある(特許文献2)。
他に、コア・シェル型ビニル系樹脂エマルションを含有する水性シーラーであり、該コア・シェル型ビニル系樹脂がシェル部を構成するモノマー成分として、分子末端に炭素数10以上のアルキル基を有する長鎖アクリル系モノマーを必須成分として含有する発明がある(特許文献3)。
しかしこれらの水性シーラーに関する発明は、環境対応型であるものの、例えば、珪酸カルシウム板、石綿セメント板、パルプセメント板、軽量気泡コンクリート板などの無機建材には、シーラー組成物を無機建材の内部(表層から200μm以上)まで均一に含浸することが困難で、素材の強度や塗膜性能が不十分であった。
【特許文献1】特開2001−239517号公報
【特許文献2】特開2002−146340号公報
【特許文献3】特開2003−119456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
無機建材への含浸性に優れ、揮発性有機化合物の低減(低VOC)、耐水性、及び上塗り付着性等が優れたシーラー組成物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のラジカル重合性不飽和単量体を含むラジカル重合性不飽和単量体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)を含有する固形分90重量%以上のシーラー組成物によって課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、
「1. 下記式(1)のラジカル重合性不飽和単量体及び/又は式(2)のラジカル重合性不飽和単量体を含むラジカル重合性不飽和単量体(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)を含有する固形分90%以上のシーラー組成物。
式(1)
【0006】
【化3】

【0007】
(式中、Rは水素原子又はCH−、Rは−C−又は−C−、Rは水素原子、又はC〜Cのアルキル基を表し、nは1〜15の整数を表す)
式(2)
【0008】
【化4】

【0009】
(式中、Rは同一でも相異なってもよい水素原子又はCH−を表し、Rは−C−又は−C−、mは1〜15の整数を表す)
2. 光重合開始剤(C)を含有する、1項に記載された固形分90重量%以上のシーラー組成物。
3. ポリオール(D)を含有する、1項又は2項に記載された固形分90重量%以上のシーラー組成物。
4. ラジカル重合性不飽和単量体が、不飽和単量体(A)の固形分合計100重量部に対し、30重量部以下の他のラジカル重合性不飽和単量体を含む、1項に記載された固形分90%以上のシーラー組成物。
5. 無機建材に、1項ないし4項のいずれか1項に記載された固形分90重量%以上のシーラー組成物を塗布し、さらに上塗り塗料を塗り重ねることを特徴とする塗膜形成方法。
6. 5項に記載された塗膜形成方法によって塗膜を形成して得られた塗装物品。」
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の固形分90重量%以上のシーラー組成物は、低揮発性有機化合物が低減して環境対応に優れ、さらに無機建材の内部まで均一に含浸することから、素材強度、耐水性、上塗り付着性等に優れた塗装物品が得られる効果が奏される。例えば、脆弱なケイ酸カルシウム成形素材に、塗布後2分間以下の短時間で素材に200μm以上含浸し、強固な製品を得ることができる。
さらに該シーラー組成物に光重合開始剤を加え、無機建材に塗布し、次に該塗膜上に光硬化型の上塗り塗料を塗り重ねてなる複層塗膜は、従来のシーラー組成物に比べ、塗膜性能、生産性の向上に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のシーラー組成物は、固形分90重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは100重量%であり、特定のラジカル重合性不飽和単量体を含むラジカル重合性不飽和単量体(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)を含有することを特徴とする。
さらに光重合開始剤(C)を含有して光照射による塗膜硬化や、ポリオール(D)を添加することによってさらなる低粘度化を容易に図ることが可能である。以下、詳細に説明する。
【0012】
ラジカル重合性不飽和単量体(A):
ラジカル重合性不飽和単量体(A)として、下記式(1)のラジカル重合性不飽和単量体及び/又は式(2)のラジカル重合性不飽和単量体を必須成分として含むことを特徴とする。
式(1)
【0013】
【化5】

【0014】
(式中、Rは水素原子又はCH−、Rは−C−又は−C−、Rは水素原子、又はC〜Cのアルキル基を表し、nは1〜15の整数を表す)
式(2)
【0015】
【化6】

【0016】
(式中、Rは同一でも相異なってもよい水素原子又はCH−を表し、Rは−C−又は−C−、mは1〜15の整数を表す)
なお式(1)の具体例としては、ME−3、GX−8674A、式(2)の具体例としては、PE−200、PE−300、PE−400、PE−600、(以上第一工業製薬社製、商品名)が挙げられる。
例えば、ケイ酸カルシウム成形の素材に200μm以上含浸するのに、従来の有機溶剤系のシーラー組成物や水性シーラー組成物では10分間を越える時間を要していた。しかし本発明のシーラー組成物を用いると、同様の素材に10分間以下、好ましくは5分間以下、さらに好ましくは2分以下で含浸することが可能である。
無機建材に対するシーラー組成物の含浸の長さは、シーラー組成物を塗布後、例えば、45℃で2分間セッティングし、製品をダイアモンドカッター等を用いて切断し、断面におけるシーラー組成物が含浸した長さをマイクロスコープ等の測定機器を用いて測定する。
また上記の式(1)で表される化合物は、次に述べるポリイソシアネート化合物(B)と混合した場合、常温で硬化乾燥(ゲル化)までに7日間以上のポットライフを有することから塗装作業性に優れるものである。
【0017】
ラジカル重合性不飽和単量体(A)は、式(1)のラジカル重合性不飽和単量体及び/又は式(2)のラジカル重合性不飽和単量体に加えて、その他のラジカル重合性不飽和単量体を併用することもできる。その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、式(1)のラジカル重合性不飽和単量体及び/又は式(2)のラジカル重合性不飽和単量体以外に、例えば、1分子中にラジカル重合性不飽和基を1個以上有するモノマーが挙げられる。
該モノマーとしては、ラジカル重合性不飽和基を1個有する1官能重合性モノマー、ラジカル重合性不飽和基を2個有する2官能重合性モノマー及びラジカル重合性不飽和基を3個以上有する3官能以上の重合性モノマーから選ばれる一種又は二種以上のモノマーを使用することができる。
【0018】
これらのモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。1官能重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドブチルエーテル、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0019】
2官能重合性モノマーとして、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。また、2官能重合性モノマーとして、「カヤラッドHX−220」、「カヤラッドHX−620」、「カヤラッドR−128H」、「カヤラッドR−604」、「MANDA」等の商品名で日本化薬(株)や、「ラロマーLR8765」商品名でBASF(株)から市販されているモノマーも使用できる。
【0020】
3官能以上の重合性モノマーとして、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0021】
他に、イソシアネートにヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた反応物等であるウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸を付加反応させたエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物であるポリエステル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート又はそのアルキレンオキシド変成体等;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレ−ト、これらの単量体と、β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウリロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトンなどのラクトン類化合物との反応物(商品名としては、プラクセルFM1(ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性メタクリル酸ヒドロキシエステル類)、プラクセルFM2(同左)、プラクセルFM3(同左)、プラクセルFA1(同左)、プラクセルFA2(同左)、プラクセルFA3(同左))なども使用できる。
その他のラジカル重合性不飽和単量体の割合は、ラジカル重合性不飽和単量体(A)の固形分合計100重量部を基準にして、30重量部以下、好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下がよい。
【0022】
ポリイソシアネート化合物(B):
ポリイソシアネート化合物(B)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類等の有機ジイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物;イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、イソシアヌレート変性イソホロンジイソシアネート等の有機ジイソシアネートのイソシアヌレート変性物;各有機ジイソシアネート同志の環化重合体;各有機ジイソシアネートのビウレット体等を挙げることができる。
ポリイソシアネート化合物(B)の含有量は、ラジカル重合性不飽和単量体(A)100重量部に対して10〜60重量部、好ましくは20〜50重量部の範囲内が好ましい。
【0023】
光重合開始剤(C):
光重合開始剤(C)は、ラジカル重合性不飽和基をラジカル重合させて、塗料組成物の硬化を開始させる化合物である。光重合開始剤(C)の具体例としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ヒドロキシベンゾフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロ)−S−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジンなどが挙げられる。
光重合開始剤(C)は、単独で又は2種類以上を組合せで使用できる。該開始剤の含有量は、ラジカル重合性不飽和単量体(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部程度、好ましくは0.2〜5重量部程度の範囲内がよい。
また、上記光重合開始剤による光重合反応を促進させるため、光増感促進剤を光重合開始剤と併用してもよい。併用し得る光増感促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の3級アミン系化合物;トリフェニルホスフィン等のアルキルフォスフィン系化合物;β−チオジグリコール等のチオエーテル系化合物などが挙げられる。
光増感促進剤は、単独で又は2種類以上を組合せて使用でき、その使用量は、ラジカル重合性不飽和単量体(A)100重量部に対して、0.1〜5重量部程度の範囲内が好ましい。
【0024】
さらに本発明の固形分90重量%以上のシーラー組成物は、仕上り性向上や作業性の面から低粘度化を目的として、ポリオール(D)を含有することができる。
ポリオール(D)としては、2個または3個以上の水酸基を有する低分子ポリオールを使用することができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−、1,3−または2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール、メタキシレングリコール、パラキシレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチルテレフタレートなどの芳香族ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの脂肪族トリオール、挙げることができる。
他に、例えば、ポリカルボン酸、その無水物またはエステルと、ポリオールとを直接エステル化反応させるか、またはエステル交換反応させたポリエステルポリオール、ラクトンを開環重合することにより製造することができるポリエステルポリオールや、ヒドロキシ基および(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を(メタ)アクリロイル基を含有する化合物、スチレンおよび/またはその誘導体等と共重合させたアクリルポリオールも使用することができる。
上記のポリオールは、1種類のみを使用しても、複数種を組み合わせて使用してもよく、例えば、複数種のジオールを併用しても、ジオールとトリオールを併用してもよい。
ポリオール(D)の使用量は、ラジカル重合性不飽和単量体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部の範囲内が好ましい。
本発明の固形分90%以上のシーラー組成物には、必要に応じて、着色顔料や体質顔料などの顔料類、分散剤、有機溶剤、pH調整剤、消泡剤、増粘剤、粘性調整剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、凍結防止剤、表面調整剤、可塑剤、防腐剤、酸化防止剤などを適宜配合することができる。
【0025】
塗膜形成方法:
本発明のシーラー組成物の被塗物として用いる無機建材は、特に制限されずに使用でき、例えば、セメント系、珪酸カルシウム系、石膏等の無機質材料を主成分とする多孔質基材(例えば、珪酸カルシウム板、石綿セメント板、木片セメント板、パルプセメント板、軽量気泡コンクリート板等の建築材料、構造材料、土木材料、あるいは工業材料として使用されているもの)を用いることができる。このものの形状としては、例えば、瓦状、板状、加工板状、角状、パイプ状等いずれの形状においても適用することができる。
上記した無機建材は、例えば、無機質系水硬性物質を押し出し成形法、プレス成形法、一体成形法、乾式成形法、鋳込成形法、抄造法等の通常の方法によって板状に成形し、次いで必要に応じて加熱養生(例えば、40〜100℃で4時間〜20時間加熱)やオートクレーブ養生(特に制限なしに窯業系基材で採用されている条件で行うことができる。通常は約160〜170℃、約8〜9Kgf/cm、約4〜8時間、水蒸気存在下で行われる。)等の手段により養生させて得られる。
【0026】
無機建材への塗装方法は、特に限定なく従来公知の塗装手段、例えば、ローラー、刷毛、浸漬、ロールコーター、エアースプレー、エアレススプレー、カーテンフローコーター、ダイコーターなどを広く採用することができる。その塗装膜厚は、乾燥膜厚で5〜100μm、好ましくは20〜80μmの範囲内の塗装が適当である。
塗膜形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、無機建材に、本発明の固形分90%以上のシーラー組成物を塗装し、室温又は60℃以下で、1〜2分間セッティングし、次に意匠性や塗膜性能の向上を目的として上塗り塗料を塗り重ねることができる。
上塗り塗料としては、光硬化可能な塗料を塗布し、上塗り塗膜面に光を照射することよって乾燥することもできる。またシーラー組成物に光重合開始剤(C)を含有する場合は、シーラー組成物と上塗り塗料の両塗膜を光照射することよって乾燥できる。
光照射は、通常、波長200〜450nm程度の範囲の紫外線により行うことが適当である。光源としては、光重合開始剤の種類に応じて、感度の高い波長を有するものを適宜選択して使用することができる。上記紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光などを挙げることができる。塗膜への紫外線照射条件は、通常、線量が100〜5,000mJ/cm程度、好ましくは300〜3,000mJ/cm程度、照射時間としては、通常、3秒〜3分間程度でよい。
また、上塗り塗料は水性、有機溶剤系、無溶剤系のいずれの塗料形態であってもよく、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、塩化ビニル樹脂系、繊維素樹脂系、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂フッ素樹脂系及びこれらの2種以上の変性樹脂やブレンド樹脂等を使用することができる。
【実施例】
【0027】
次に、実施例を掲げて本発明を詳細に説明する。尚、実施例及び比較例中の「部」、「%」は「重量部」、「重量%」である。
【0028】
製造例1
攪拌機、分縮器、全縮器、及びトルクメーターの付いた4つ口5リットルフラスコに、ヘキサヒドロ無水フタル酸720部、アジピン酸680部、トリメチロールプロパン273部、ネオペンチルグリコール735部及びメチルジエタノールアミン119部を仕込み、150℃にて1時間攪拌した後、230℃に昇温して縮合水を系外へ留去しながら重縮合反応を行い、キシレンで希釈した後、水酸基価82mgKOH/g、固形分70重量%のポリエステルポリオールを得た。
【0029】
実施例1
容器にGX−8674A(注3)100部、デュラネートTPA−100(注
9)71.3部を加えて攪拌し、固形分100%のシーラー組成物No.1を得た。
【0030】
実施例2〜8
表1の配合内容とする以外は、実施例1と同様にして、シーラー組成物No.2〜No.8を得た。
【0031】
【表1】

【0032】
(注3)GX−8674A:下記の式(3)で表される化合物、第一工業製薬社製、商品名、分子量約262
式(3)
【0033】
【化7】

【0034】
(注4)ME−3:下記の式(4)で表される化合物、第一工業製薬社製、商品名、分子量約218
式(4)
【0035】
【化8】

【0036】
(注5)PE−200:下記の式(5)で表される化合物、第一工業製薬社製、商品名、分子量約154
式(5)
【0037】
【化9】

【0038】
(注6)PE−400:下記の式(6)で表される化合物、第一工業製薬社製、商品名、分子量約506
式(6)
【0039】
【化10】

【0040】
(注7)ラロマーLR8765:BASF社製、商品名、脂肪族エポキシ樹脂系アクリレート
(注8)カヤラッドR128H:日本化薬社製、商品名、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート
(注9)デュラネートTPA−100:旭ケミカルズ社製、商品名、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
(注10)ミリオネートCA−1A:保土谷建材工業社製、商品名、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート
(注11)DAROCUR 1173C:チバ スペシャリティ ケミカルズ社製、商品名、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、光重合開始剤
(注12)PHOTO INITIAT BDK:BASF社製、商品名、ベンジルジメチルケタール、光重合開始剤
(注13)タケラックUA-702:三井武田ケミカル社製、商品名、ウレタンポリオール、固形分100重量%
【0041】
比較例1 シーラー組成物No.9
(注14)EPシーラー:関西ペイント社製、商品名、アクリル樹脂系のエマルション型のシーラー組成物、固形分19重量%)を比較例1とする。
【0042】
比較例2 シーラー組成物No.10
(注15)レタンIOシーラー:関西ペイント社製、商品名、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート(MDI)系の有機溶剤型のシーラー組成物固形分、固形分20重量%)を比較例2とする。
【0043】
比較例3 シーラー組成物No.11
式(7)で表される化合物 100部、デュラネートTPA−100(注9)71.3部を加えて攪拌し、固形分100%のシーラー組成物No.1を得た。
式(7)
【0044】
【化11】

【0045】
試験板の作成
1.ポルトランドセメント60部、珪砂50部、パルプ繊維5部、セピオライト3部、カーボンブラック1部、水120部からなる組成物を抄造法で板状にし、次いでプレス成形して無機建材板を得た。
2.上記の無機建材板に、シーラー組成物No.1〜No.11を乾燥重量5.6g/cmとなるように塗布した。45℃で2分間セッティングした。
3.その上にゾンネW−1155(関西ペイント社製、商品名、光硬化型の上塗り塗料)を35μm塗布し、波長365nm付近の紫外線の光源を用いて、線量266mJ/cmの紫外線を照射し、塗装物品を得た。
得られた試験板を下記の試験内容にて試験に供した。実施例の結果を表2に、比較例の結果を表3に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
(注16)揮発性有機溶剤量:シーラー組成物中の揮発性有機溶剤量の含有量が
○は、20g/L未満、
△は、20g/L以上でかつ100g/L未満
×は、100g/Lを越える
(注17)シーラーの含浸性:塗装物品をダイアモンドカッターを用いて切断し、シーラー組成物が含浸した長さをマイクロスコープVH7000(キーエンス社製、商品名)を用いて測定した。
(注18)ゴバン目付着性:試験板にカッターナイフで4mm間隔に5×5マスの碁盤目状に切れ目をいれ、24mm幅セロテープ(ニチバン社製、商品名)を貼り付けて剥離した。
○:剥離したマス目のないもの、
△:剥離したマス目が2マス以下
×:3マス以上の剥離がある
(注19)JAS寒熱繰り返しA試験:JAS特殊合板規格に準拠。試験片の中央に直径3mmφの穴を開け、「80±3℃で2時間放置し、マイナス20±3℃で2時間放置する」工程を2サイクル行い、以下の基準で評価した。
◎:変化なく良好
○:若干劣るが実用上問題なく良好
△:異常あり
×:著しく異常が認められる
(注20)耐温水性:各試験板を60℃±3の温水に240時間浸漬した後、塗膜のワレ、剥がれ、フクレなどの塗膜異常の有無を観察した。
◎:変化なく良好
○:若干劣るが実用上問題なく良好
△:異常あり
×:著しく異常が認められる
(注21)耐湿性:各試験板を50℃±3、湿度95±2%の恒温恒湿器中に240時間放置した後、塗膜のワレ、剥がれ、フクレなどの塗膜異常の有無を観察した。
◎:変化なく良好
○:若干劣るが実用上問題なく良好
△:異常あり
×:著しく異常が認められる
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のシーラー組成物は低揮発性有機化合物(低VOC)で環境対応に優れ、強度、耐水性、上塗り付着性等に優れた無機建材が得られる。無機建材は多く使用されているので、これに使用する本発明のシーラー組成物も多く使用されると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)のラジカル重合性不飽和単量体及び/又は式(2)のラジカル重合性不飽和単量体を含むラジカル重合性不飽和単量体(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)を含有する固形分90%以上のシーラー組成物。
式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子又はCH−、Rは−C−又は−C−、Rは水素原子、又はC〜Cのアルキル基を表し、nは1〜15の整数を表す)
式(2)
【化2】

(式中、Rは同一でも相異なってもよい水素原子又はCH−を表し、Rは−C−又は−C−、mは1〜15の整数を表す)
【請求項2】
光重合開始剤(C)を含有する、請求項1に記載された固形分90重量%以上のシーラー組成物。
【請求項3】
ポリオール(D)を含有する、請求項1又は2に記載された固形分90重量%以上のシーラー組成物。
【請求項4】
ラジカル重合性不飽和単量体が、不飽和単量体(A)の固形分合計100重量部に対し、30重量部以下の他のラジカル重合性不飽和単量体を含む、請求項1に記載された固形分90%以上のシーラー組成物。
【請求項5】
無機建材に、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された固形分90重量%以上のシーラー組成物を塗布し、さらに上塗り塗料を塗り重ねることを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載された塗膜形成方法によって塗膜を形成して得られた塗装物品。

【公開番号】特開2006−22172(P2006−22172A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200134(P2004−200134)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】