説明

固液分離装置および基板処理装置

【課題】 簡易な構成でありながら、基板の粒子が混入された処理液から粒子を確実に分離回収することが可能な固液分離装置、および、この固液分離装置を備えた基板処理装置を提供する。
【解決手段】 粒子が混入された処理液を貯留する貯留槽12と、消泡槽13と、消泡槽13内の気体を排気する排気ダンパ32と、貯留槽12と消泡槽13とを接続する接続管路14と、界面活性剤を貯留する界面活性剤貯留槽15と、混合ノズル31および循環管路47から構成される処理液の循環路中に気体を混入させる気体供給路46と、消泡槽13内部の空間を減圧する真空ポンプ29と、消泡槽13内部空間を加熱するためのヒータ33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の粒子が混入された処理液から粒子を分離回収する固液分離装置、および、この固液分離装置を備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して研磨または研削を行う基板加工装置においては、基板の粒子が混入された処理液が排出される。例えば、半導体ウエハに対してCMP(Chemical Mechanical Polishing)と呼称される化学機械研磨を実行する基板加工装置においては、シリコン(Si)やシリカ(SiO2 )の粒子を含有する処理液が排出される。このような処理液は、そのまま排液として排出するのではなく、処理液中から粒子を取り除き、処理液を粒子と分離した状態で再利用することが好ましい。
【0003】
このため、従来、このような固液分離を実行するためには、粒子成分を沈殿させる沈殿処理や、粒子成分を濾過するフィルター処理が行われている。しかしながら、沈殿処理においては、処理液中に分散した粒子が沈殿するまでに長い時間を要する。また、フィルター処理においては、フィルターに粒子による目詰まりが生じ、頻繁にフィルター交換が必要となるという問題がある。
【0004】
特許文献1には、被処理水とマイクロバブル含有水とを混合して加圧浮上装置に導入し、加圧浮上槽において水面に浮上した懸濁物質を、回転式のかき寄せ板を有するかき寄せ機によって排出する水処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−34683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載の水処理装置においては、被処理水の上面から懸濁物質だけを除去するのが極めて困難となり、懸濁物質と被処理水とを確実に分離、回収することが不可能となる。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成でありながら、基板の粒子が混入された処理液から粒子を確実に分離回収することが可能な固液分離装置、および、この固液分離装置を備えた基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板の粒子が混入された処理液から粒子を分離回収する固液分離装置であって、粒子が混入された処理液を貯留する貯留槽と、消泡槽と、前記消泡槽内の気体を排気する排気手段と、前記貯留槽と前記消泡槽とを接続する接続管路と、前記貯留槽に貯留された処理液から粒子を含む泡を発泡させる発泡機構と、前記発泡機構の作用により発生し、前記接続管路を介して前記消泡槽内に進入した泡を消す消泡手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記貯留槽内に界面活性剤を供給する界面活性剤供給機構を備える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記発泡機構は、前記貯留槽内の処理液を循環させる循環路と、前記循環路中に気体を混入させるための気体供給路とを備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記消泡手段は、前記消泡槽内を加熱する加熱機構である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記消泡手段は、前記消泡槽内を減圧する減圧機構である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、基板に対して研磨または研削を行う基板加工装置と、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の固液分離装置とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、簡易な構成でありながら、基板の粒子が混入された処理液から粒子を確実に分離回収することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、界面活性剤の作用により、貯留槽内において処理液から粒子を含む泡をより効果的に発泡させることが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、循環路と気体供給路とを備えた発泡機構により、貯留槽内において処理液から粒子を含む泡をより効果的に発泡させることが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、加熱機構により泡を速やかに消すことが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、減圧機構により泡を速やかに消すことが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、基板に対して研磨または研削を行う基板加工装置から排出される基板の粒子が混入された処理液に対して、固液分離装置によりインラインで粒子を分離回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る固液分離装置を基板加工装置11とともに示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る固液分離装置を基板加工装置11とともに示す概要図である。
【0022】
この発明に係る固液分離装置は、基板加工装置11から排出される基板の粒子が混入された処理液から粒子を分離回収するためのものである。なお、基板加工装置11としては、例えば、半導体ウエハに対して、研削を実行したり、CMP呼称される化学機械研磨を実行するものである。この基板加工装置11と固液分離装置とにより、この発明に係る基板処理装置が構成される。
【0023】
この固液分離装置は、基板加工装置11から排出される基板の粒子が混入された処理液を貯留する貯留槽12と、消泡槽13と、これらの貯留槽12と消泡槽13とを接続する接続管路14と、洗剤等の界面活性剤を貯留する界面活性剤貯留槽15とを備える。基板加工装置11と貯留槽12とは、電磁開閉弁21を有する管路42により接続されている。界面活性剤貯留槽15と貯留槽12とは、電磁開閉弁22を有する管路41により接続されている。また、接続管路14には、電磁開閉弁23が配設されている。
【0024】
貯留槽12には、混合ノズル31が、そこに貯留された処理液に浸漬する状態で配設されている。この混合ノズル31には、循環ポンプ28を備え、貯留槽内12の処理液を循環させる循環管路47と、混合ノズル31および循環管路47から構成される処理液の循環路中に気体を混入させるための、電磁開閉弁26を備えた気体供給路46とが接続されている。また、貯留槽12は、電磁開閉弁27を備えた管路48を介して図示しない排液部と接続されている。
【0025】
消泡槽13には、その上部から消泡槽13内の気体を排気する排気ダンパ32が配設されている。また、この消泡槽13は、消泡槽13内部の空間を減圧する真空ポンプ29と、管路43を介して接続されている。また、この消泡槽13内には、この消泡槽13内部空間を加熱するためのヒータ33が配設されている。さらに、この消泡槽の下端部には、図示しない排出口が形成されており、この排出口は、電磁開閉弁24を介して貯留槽12に至る管路44と、電磁開閉弁25を介して図示しない排液部に至る管路45とに接続されている。
【0026】
以上のような構成を有する固液分離装置においては、基板の粒子が混入された処理液が基板加工装置11から管路42を介して貯留槽12に送液され、貯留槽12内に貯留される。また、貯留槽12に貯留された処理液に対し、界面活性剤貯留槽15から管路41を介して洗剤等の界面活性剤が供給される。
【0027】
このような状態において、循環ポンプ28が駆動されて循環管路47および混合ノズル31からなる循環路中を貯留槽12に貯留された処理液が循環するとともに、電磁開閉弁26が開放されて循環する処理液中に外気が混入される。これにより、界面活性剤を含んだ処理液中に気泡が発生する。この気泡は、例えば、その大きさが極めて小さいマイクロバブルとなる。但し、この気泡の大きさは、処理液中に存在する数ミクロン〜数十ミクロン程度の基板の粒子よりも大きなものとなる。このため、処理液中の粒子は、この気泡の表面に捕獲されることになる。
【0028】
一方、これと同時に、消泡槽13においては、排気ダンパ32の作用により槽内がわずかに減圧されるとともに、ヒータ33の作用により槽内が加熱されている。このため、貯留槽12内で発生した基板の粒子を含む気泡は、消泡槽13の減圧作用により、貯留槽12から接続管路14を介して消泡槽13内に進入する。そして、この気泡は、ヒータ33による加熱作用により膨張して、破泡する。
【0029】
なお、ヒータ33による加熱作用にもかかわらず、消泡槽13内に気泡が充満した場合には、接続管路14における電磁開閉弁23を閉止した状態で、真空ポンプ29の作用により、消泡槽13内の気圧を極めて低くする。これにより、気泡の内部の気体を膨張させることができ、消泡槽13内の気泡を速やかに破泡することが可能となる。
【0030】
消泡槽13内の気泡が破泡すれば、消泡槽13の底部には、少量の処理液が基板の粒子とともに蓄積される。この基板の粒子は、オペレータにより消泡槽13から排出され、あるいは、管路45を介して消泡槽13から排出される。
【0031】
このように、この発明に係る固液分離装置によれば、貯留槽12で発生した基板の粒子を含む気泡を消泡槽13に導入し、この気泡をヒータ33を利用した加熱機構および真空ポンプ29により消泡槽13内を減圧する減圧機構によって消泡する構成であることから、基板加工装置11から排出される基板の粒子が混入された処理液から、粒子を確実に分離回収することが可能となる。
【0032】
なお、上述した実施形態においては、泡槽内13に貯留された泡を消す消泡手段として、ヒータ33を利用した加熱機構と、真空ポンプ29により消泡槽13内を減圧する減圧機構との両方を使用しているが、これらのうち一方のみを使用してもよい。また、消泡手段として、これら以外のものを使用してもよい。
【符号の説明】
【0033】
11 基板加工装置
12 貯留槽
13 消泡槽
14 接続管路
15 界面活性剤貯留槽
28 循環ポンプ
29 真空ポンプ
31 混合ノズル
32 排気ダンパ
33 ヒータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の粒子が混入された処理液から粒子を分離回収する固液分離装置であって、
粒子が混入された処理液を貯留する貯留槽と、
消泡槽と、
前記消泡槽内の気体を排気する排気手段と、
前記貯留槽と前記消泡槽とを接続する接続管路と、
前記貯留槽に貯留された処理液から粒子を含む泡を発泡させる発泡機構と、
前記発泡機構の作用により発生し、前記接続管路を介して前記消泡槽内に進入した泡を消す消泡手段と、
を備えたことを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の固液分離装置において、
前記貯留槽内に界面活性剤を供給する界面活性剤供給機構を備える固液分離装置。
【請求項3】
請求項2に記載の固液分離装置において、
前記発泡機構は、
前記貯留槽内の処理液を循環させる循環路と、
前記循環路中に気体を混入させるための気体供給路と、
を備える固液分離装置。
【請求項4】
請求項3に記載の固液分離装置において、
前記消泡手段は、前記消泡槽内を加熱する加熱機構である固液分離装置。
【請求項5】
請求項3に記載の固液分離装置において、
前記消泡手段は、前記消泡槽内を減圧する減圧機構である固液分離装置。
【請求項6】
基板に対して研磨または研削を行う基板加工装置と、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の固液分離装置と、
を備えた基板処理装置。


【図1】
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【公開番号】特開2011−194345(P2011−194345A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65383(P2010−65383)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】