説明

固液分離装置

【課題】複数の固定板及び隣り合う固定板の間に配置された可動板を有する固液分離部と、該固液分離部を貫通して延びるスクリューとを具備し、回転するスクリューによって可動板が押し動かされるように、該可動板が形成されていると共に、固液分離部に入り込んだ汚泥を、回転するスクリューによって固液分離部の出口に向けて移動させながら、その汚泥から分離された濾液を、可動板と固定板の間の微小ギャップを通して固液分離部外へ排出させる固液分離装置において、汚泥に対する脱水効率を高く保ちつつ、可動板の摩耗を抑制する。
【解決手段】固液分離部3内に位置するスクリューの所定の位置Sよりも、固液分離部3の出口3Aの側のスクリュー部分21Aの軸部41の直径dが、出口3Bの側に向けて漸次大きくなっていると共に、そのスクリュー部分21Aのリード角が10°乃至30°に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の固定板及び隣り合う固定板の間に配置された可動板を有する固液分離部と、該固液分離部を貫通して延びる少なくとも1本のスクリューとを具備し、回転するスクリューによって前記可動板が押し動かされるように、該可動板が形成されていると共に、固液分離部に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって固液分離部の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、固液分離部の濾液排出ギャップを通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から固液分離部外に排出させる固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を含む処理対象物、例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物或いは養豚場から排出される廃水などの有機系汚泥、切削屑を含む切削油、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥、或いは野菜屑や果実の皮、食品残渣、おからなどの処理対象物から液体を分離するために、上記形式の固液分離装置を用いることは従来より周知である(例えば、特許文献1乃至3参照)。この形式の固液分離装置によれば、回転するスクリューによって、可動板を固定板に対して積極的に運動させることができるので、可動板を駆動する専用の駆動装置を設けずとも、可動板と固定板の間の濾液排出ギャップに入り込んだ固形物を効率よく排出させ、濾液排出ギャップの目詰まりを防止することができる。
【0003】
ところで、この種の固液分離装置においては、その固液分離部の出口側の領域を移動する処理対象物の含液率は既に低下しているので、この領域に存する処理対象物の脱液効率を高め、含液率の低くなった処理対象物を固液分離部の出口から排出させる必要がある。このため、従来は、固液分離部の出口側の領域に位置するスクリュー部分のリード角を、8°乃至9°程度の小さな値に設定し、このスクリュー部分のリードの値を小さくすることによって、固液分離部の出口側領域の容積を狭くし、固液分離部の出口側領域に存する処理対象物に対して大きな圧力を加え、その処理対象物に対する脱液効率を高めていた。
【0004】
固液分離装置を上述のように構成することによって、確かに、処理対象物に対する脱液効率、すなわち処理対象物から液体を絞り出す効率を高めることができるのであるが、本発明者による最近の検討の結果、スクリューのリード角を小さくすると、回転するスクリューにより押し動かされる可動板の摩耗が著しくなり、可動板の寿命が短くなってしまうことが明らかとなった。
【0005】
【特許文献1】特許第2826991号公報
【特許文献2】特許第3565841号公報
【特許文献3】特許第3638597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記認識に基づきなされたものであって、その目的とするところは、処理対象物に対する脱液効率を低下させることなく、可動板の摩耗を従来よりも抑制することのできる固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、冒頭に記載した形式の固液分離装置において、前記固液分離部に位置するスクリューの所定の位置よりも、固液分離部の出口側のスクリュー部分の少なくとも一部の軸部の直径が、該出口の側に向けて漸次大きくなっていると共に、そのスクリュー部分の少なくとも一部のリード角が10°乃至30°に設定されていることを特徴とする固液分離装置を提案する(請求項1)。
【0008】
また、上記請求項1に記載の固液分離装置において、処理対象物が固液分離部に入り込む入口よりも、処理対象物移動方向下流側の位置を前記スクリューの所定の位置とすると有利である(請求項2)。
【0009】
さらに、上記請求項1又は2に記載の固液分離装置において、前記スクリュー部分の軸部の直径が、そのスクリュー部分の全長に亘って、固液分離部の出口側に向けて漸次大きくなっていると有利である(請求項3)。
【0010】
また、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置において、前記スクリュー部分の全長に亘って、そのリード角が10°乃至30°に設定されていると有利である(請求項4)。
【0011】
さらに、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の固液分離装置において、前記リード角が13°乃至14°であると有利である(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処理対象物に対する脱液効率を低下させることなく、可動板の摩耗を従来よりも抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って説明し、併せて前述の従来の欠点を図面に即してより具体的に明らかにする。
【0014】
図1は固液分離装置の一例を示す部分断面正面図である。この固液分離装置によって、液体を含む各種の処理対象物を固液分離することが可能であるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。
【0015】
ここに示した固液分離装置は、入口部材1と、出口部材2と、これらの間に配置された固液分離部3とを有し、入口部材1は、上部が開口した矩形の箱状に形成され、その上部開口によって、汚泥が流入する流入口4が構成されている。符号7は入口部材1の底壁を示す。また固液分離部3を向いた側の入口部材1の側壁5には開口6が形成され、さらに入口部材1の側壁5に対向したもう一つの側壁8には、横断面が矩形状に形成されたモータ支持部材9の一方の側壁10がボルトとナットによって固定され、モータ支持部材9の他方の側壁11に、減速機付きのモータ12が固定されている。
【0016】
入口部材1の両側壁5,8は下方に延び、その下端部が図示していないボルトとナットによって支持フレームのステー13,14にそれぞれ着脱可能に固定され、モータ支持部材9の両側壁10,11も下方に延び、その下端部が図示していないボルトとナットによって支持フレームのステー14に着脱可能に固定されている。
【0017】
出口部材2は、その上部と下部が開口し、水平断面が矩形状に形成されていて、固液分離部3を向いた側の出口部材2の側壁19と、これに対向する出口部材2の側壁20には、開口22,23がそれぞれ形成されている。側壁19,20は、下方に延び、その下端部が支持フレームのステー52,53に図示していないボルトとナットによって着脱可能に固定されている。また、側壁20に形成された開口23には、軸受部材18が配置され、その軸受部材18は、ボルト24とナット25によって側壁20に着脱可能に固定されている。出口部材2の下部開口は、脱水処理された汚泥が排出される排出口26を構成している。
【0018】
一方、本例の固液分離部3は、小リング状の複数のスペーサ38によって軸線方向に互いに間隔をあけて配置されたリングより成る複数の固定板28と、軸線方向に隣り合う固定板28の間に配置されたリングより成る可動板29とを有している。図2は隣り合う2つの固定板28と、これらの固定板28の間に配置された可動板29と、スペーサ38の外観を示す分解斜視図であり、図3は固液分離部3の部分縦断面図である。複数の固定板28は、図1乃至図3に示すように同心状に配列され、軸線方向に隣り合う固定板28の間に4つのスペーサ38がそれぞれ配置されている。図1に示すように、固液分離部3は出口部材2の側が高くなるように傾斜して配置されている。
【0019】
図示した固液分離装置においては、図2及び図3に示すように、各固定板28に、その半径方向に突出し、かつその周方向に配列された4つの耳部39が形成され、その各耳部39に取付孔32がそれぞれ形成されている。各耳部39に形成された各取付孔32と、軸線方向に隣り合う固定板28の間に配置された各スペーサ38の中心孔には、ステーボルト34がそれぞれ貫通して延び、さらにその各ステーボルト34は、図1に示すように、入口部材1の側壁5と、出口部材2の側壁19を貫通し、その各端部に形成された雄ねじにナット36,36Aがそれぞれ螺着されて締め付けられている。なお、図1においては、図を判りやすくするため、一部のステーボルトとスペーサなどの図示を省略してある。
【0020】
上述のようにして、複数の固定板28は、複数のステーボルト34と、ナット36,36Aとによって一体的に固定連結され、入口部材1と出口部材2に対して固定されている。各ステーボルト34は、複数の固定板28を貫通して延びていて、その複数の固定板28を連結する用をなす。スペーサによって互いに間隙をあけて配置された各固定板をわずかに遊動できるように組み付けることもできる。
【0021】
図3に示すように、各固定板28の間にそれぞれ配置された各可動板29の厚さTは、各固定板間の間隙幅Gより小さく設定され、各固定板28の端面と、これに対向する可動板29の端面の間には、例えば0.1mm乃至1mm程の微小なギャップgが形成される。かかる微小ギャップgは、後述するように汚泥から分離された水分、すなわち濾液を通過させる濾液排出部を構成するものである。可動板29の厚さTは、例えば、1.0mm乃至2mm程に設定され、間隙幅Gは、例えば2mm乃至3mm程に設定される。また固定板28の厚さtは、例えば1.5mm乃至3mm程に設定される。ギャップg、厚さT,t及び間隙幅Gの大きさは、処理対象物の種類などを考慮して適宜設定されるものである。
【0022】
図4は、固定板28と、可動板29と、隣り合う固定板28の間に配置されたスペーサ38と、ステーボルト34の配置状態を示す説明図であり、この図では可動板29を破線で示してある。ここで、固定板28の周方向に隣り合う2つのスペーサ38の間の間隔をLとしたとき、この間隔Lの方が可動板29の外径Dよりも小さくなっている(L<D)。このため、可動板29が隣り合う固定板28の間から抜け出ることが阻止される。
【0023】
また、図2にも示すように、複数のスペーサ38の固定板中心側の部分に接する円CCを考えたとき、各可動板29の外径Dは、円CCの直径Dよりも小さく、しかも各可動板29の外径Dが各固定板28の内径Dよりも大きく設定されている(D>D,D>D)。これにより、各可動板29は、各固定板28の中心孔から抜け出ることなく、該可動板29の半径方向に可動で、かつ隣り合う固定板28の間に回転可能に保持される。
【0024】
また、本例の固液分離装置においては、図4に示すように、固定板28の外径Dが前述の円CCの直径Dよりも小さく設定されている(D>D)。図4においては、隣り合う固定板28と可動板29を、その軸線方向に見たときに、これらの板28,29が互いに重なり合う部分にハッチングを付してある。本例の固定板28は、複数の耳部39を有しているが、かかる固定板28の外径Dは、これらの耳部39以外の円環状の部分の外径である。
【0025】
上述のように、本例の固液分離装置においては、スペーサ38により、軸線方向に間隔をあけて配置され、かつステーボルト34によって互いに固定された複数の固定板28と、隣り合う固定板28の間に配置された可動板29とによって固液分離部3が構成されている。図6に示すように、スペーサ38を、当該スペーサ38に隣接する2つの固定板のうちの一方の固定板28に一体に形成し、その固定板28とこれに固定されたスペーサ38を1つの部品として構成することもできる。例えば、固定板28とスペーサ38が共に金属より成るときは、これらを溶接によって一体化し、或いは鋳造によって、これらを一体に成形することができる。或いは、素材を切削加工して、一体となった固定板28とスペーサ38を製造することもできる。また固定板28とスペーサ38を共に樹脂により構成するときは、これらを成形型によって一体の成形品として製造することもできる。
【0026】
また、図1乃至図3に示すように、複数の固定板28と複数の可動板29を有する固液分離部3の内部には、その固液分離部3の軸線方向に延びるスクリュー21が配置され、このスクリュー21は、軸部41と、この軸部41に一体に形成されたらせん状の羽根部42を有している。かかるスクリュー21は、図1に示すように、入口部材1の側壁5と、出口部材2の側壁19,20に形成された開口6,22,23を貫通して延びていて、このスクリュー21の軸部41の一方の端部が、軸受部材18に軸受15を介して回転自在に支持されている。なお、図4にはスクリュー21の図示は省略してある。
【0027】
一方、図1に示したモータ12の出力軸45は、モータ支持部材9の側壁11,10と、入口部材1の側壁8を貫通して延び、側壁10に軸受を介して回転自在に支持されている。かかる出力軸45の先端部は、図5に示すように、内部が中空に形成され、その中空部49の中央部に係合片50が固定配置されている。また、スクリュー21の軸部41の他方の端部には、係合溝51が形成され、軸部41の端部が図1に示すように出力軸45の中空部49に挿入され、軸部41に形成された係合溝51が出力軸45に設けられた係合片50に係合している。モータ12が作動して出力軸45が回転すると、その回転が、互いに係合した係合片50と係合溝51を介してスクリュー21に伝えられ、該スクリュー21がその中心軸線のまわりに回転する。
【0028】
上述のように、本例の固液分離装置は、その固液分離部3を貫通して延びる1本のスクリュー21を有しているが、後述するように、複数のスクリューを有する固液分離装置にも本発明を適用することができる。固液分離装置は、固液分離部を貫通して延びる少なくとも1本のスクリューを有しているのである。
【0029】
次に、本例の固液分離装置の基本的な動作例を説明する。
【0030】
固液分離部3の下方に位置する図示していないサービスタンク内の汚泥が、同じく図示していないフロック化装置に供給され、そのフロック化装置において、多量の水分を含む汚泥に凝集剤が混合撹拌され、これによって汚泥がフロック化される。フロック化された汚泥(図には示さず)は、図1に矢印Aで示すように、固液分離装置の入口部材1内に流入する。かかる汚泥の含水率は、例えば99重量%程度である。このとき、スクリュー21はモータ12によって回転駆動されているので、入口部材1に流入した汚泥は、矢印Bで示すように、入口部材1の側壁5に形成された開口6を通って、固定板28と可動板29の内部空間、すなわち固液分離部3の内部空間に、その軸線方向一端側の入口3Aから流入する。
【0031】
上述のようにして固液分離部3の内部に流入した汚泥は、モータ12により回転駆動されたスクリュー21によって、固液分離部3の軸線方向他端側の出口3Bへ向けて搬送される。このとき、汚泥から分離された水分、すなわち濾液が、各固定板28と可動板29との間の微小ギャップg(図3)より成る濾液排出ギャップを通して固液分離部外に排出される。排出された濾液は、ステー13,52に固定された濾液受け部材40に受け止められ、次いで濾液排出管46を通って流下する。この濾液には未だ多少の固形分が含まれているので、当該濾液は他の汚泥と共に再度水処理され、次いで固液分離装置に供給されて脱水処理される。
【0032】
ここで、図3に示す如く、スクリュー21の外径Dは、その回転が阻害されないように、固定板28の内径Dよりもわずかに小なる大きさに設定されている(D>D)が、このスクリュー21の外径Dは可動板29の内径Dよりも大きく設定されている。可動板29の内径Dがスクリュー21の外径Dよりも小さく設定されているのである(D>D)。このため、スクリュー21の回転によって、各可動板29は、スクリュー21から外力を受けて半径方向に押し動かされ、固定板28に対して積極的に運動する。このようにして、可動板29を駆動する専用の駆動手段を設けることなく、微小ギャップgに入り込んだ固形物を積極的に排出させることができ、そのギャップgに対するクリーニング効率を高めることができる。このように、回転するスクリュー21によって可動板29が押し動かされるように、各可動板29が形成されているのである。
【0033】
上述のように固液分離部3内の汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少した汚泥が、図1に矢印Dで示すように、固液分離部3の軸線方向他端側の出口3Bから排出される。この出口3Bに対向して背圧板47が設けられ、出口3Bから排出される汚泥が背圧板47に当り、出口3Bから排出される汚泥の量が規制される。これにより、固液分離部内の圧力が高められ、汚泥に対する脱水効率が高められる。図示した例では、背圧板47はスクリュー21の軸部41に、図示していないボルトによって位置調整可能に固定されている。固液分離部3から排出された汚泥は、下部の排出口26を通して下方に落下する。このようにして脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80乃至85重量%程度である。
【0034】
上述のように、固液分離装置は、その固液分離部内に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって、固液分離部の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、固液分離部の濾液排出ギャップを通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を固液分離部の出口から固液分離部外に排出させるように構成されている。
【0035】
ところで、上述した固液分離装置においては、先にも説明したように、固液分離部3内の出口3Bの側の領域を搬送される汚泥の含水率は、既に低下しているので、この領域に存する汚泥の脱水効率を特に高め、出口3Bから排出される汚泥の含水率を充分に低下させる必要がある。このため、従来の固液分離装置においては、図10に示すように、固液分離部3の出口3Bの側に位置するスクリュー部分21Aのリード角を、8°乃至9°程の小さな値に設定し、これによって、このスクリュー部分21Aの存する固液分離部3内の領域の容積を狭くして、ここを搬送される汚泥に対して大きな圧力を加え、その汚泥に対する脱水効率を高めていた。ところが、このようにスクリューのリード角が小さくなると、スクリュー21によって押し動かされる可動板29の内周面の摩耗が著しくなり、その寿命が低下する欠点を免れない。その理由は以下のように考えられる。
【0036】
図11は、1枚の固定板28とその固定板28よりも汚泥移動方向上流側に位置する1枚の可動板29を示す説明図である。汚泥は、回転するスクリューによって、矢印E方向に搬送される。ここで、図11には示していないスクリュー21が回転すると、可動板29は、そのスクリュー21から可動板29の半径方向に外力を受けると共に、汚泥の移動方向Eにも外力を受け、これにより可動板29は、図11に示すように固定板28に対してFで示す力で押圧される。その際、スクリュー21のリード角が小さいと、回転するスクリュー21から可動板29が受ける汚泥移動方向の力が大きくなり、可動板29は、その隣りの固定板28に対して大きな力Fで押圧される。このように、可動板29が固定板28に対して大きな力Fで押圧された状態で、可動板29が、スクリュー21によって該可動板29の半径方向に押し動かされるので、このとき可動板29に作用する摩擦力が大きくなる。このため、回転するスクリュー21によって可動板29を、その半径方向に押し動かすのに必要とされる力が大きくなり、スクリュー21の羽根部42のエッジ部が、可動板29の内周面に大きな力で摺擦する。このようにして、従来の固液分離装置においては、可動板29の内周面の摩耗が促進され、可動板29の寿命が短くなっていたのである。また、スクリュー21によって可動板29の内周面が削り取られて、細長い髪状の削り屑が生じることもあった。
【0037】
上述した従来の欠点を除去するため、本例の固液分離装置においては、図1及び図7に示すように、固液分離部3に位置するスクリュー21の所定の位置Sよりも、固液分離部3の出口3Bの側のスクリュー部分21Aの軸部41の直径dが、出口3Bの側に向けて漸次大きくなっていると共に、そのスクリュー部分21Aのリード角が10°乃至30°に設定されている。図8は、スクリュー21のリード角を説明する図であり、同図におけるDはスクリューの外径を示し、πDはスクリュー21の外周部の周長を示し、LEはリードを示し、さらにαはリード角を示している。図示した例では、スクリュー部分21Aのリード角は、そのスクリュー部分21Aの全長に亘って一定となっているが、そのリード角を10°乃至30°の範囲内で変化させてもよい。
【0038】
上述のようにスクリュー部分21Aのリード角αが従来よりも大きく設定されているので、図11に示したように、回転するスクリュー21によって可動板29が固定板28に押圧される力Fが従来よりも小さくなる。このため、可動板29をスクリュー21によって従来よりも小さな力で半径方向に押し動かすことができ、これによって可動板29の内周面の摩耗量を抑え、しかもその内周面が削り取られて、細長い髪状の削り屑が生じることを防止することができる。
【0039】
但し、上述のように、スクリュー部分21Aのリード角αを大きくすると、スクリュー部分21Aが位置する固液分離部3内の領域の容積が従来よりも大きくなり、汚泥に対する脱水効率が低下するおそれがある。そこで、本例の固液分離装置においては、前述のように、スクリュー部分21Aの軸部41の直径dが出口3Bの側へ向けて漸次大きくなっている。このため、スクリュー部分21Aが位置する固液分離部3内の領域の容積を小さくすることができ、これによって汚泥に対する脱水効率を、従来と同等ないしはそれ以上に高めることができる。しかも、固液分離部3内の汚泥の含水率が出口3Bに近づくに従って低下するのに合わせて、スクリュー部分21Aの軸部41の直径dが出口3Bに近づくに従って大きくなっているので、固液分離部3内の汚泥に対する脱水効率は、出口3Bに近づくに従って高められ、効率よく汚泥から水分を分離することができる。
【0040】
上述のように、本例の固液分離装置においては、スクリュー部分21Aのリード角αを従来よりも大きくして、可動板29の内周面の摩耗を抑え、かつその内周面が削り取られるのを防止すると共に、スクリュー部分21Aの軸部41の直径dを固液分離部3の出口3Bの側へ向けて漸次大きくすることにより、リード角αを大きくしたことによる脱水効率の低下を補っているのである。これにより、可動板29の寿命を延ばし、かつ高い脱水効率を維持することができる。
【0041】
リード角αが10°よりも小さくなると、前述のように可動板29の内周面の摩耗が著しくなり、かつその内周面が削り取られるようになり、逆にリード角αが30°よりも大きくなると、汚泥に対する脱水効率が大きく低下してしまう。リード角αを10°乃至30°に設定すると共に、スクリュー21の軸部41の直径dを上述のように大きくすることによって、可動板29の長寿命化と、汚泥に対する高い脱水効率の維持を確保できるのである。その際、リード角αを10°乃至15°、特に13°乃至14°に設定することが望ましい。また、固液分離部3の出口側の領域に存する汚泥に加えられる圧力が大きくなりすぎると、微小ギャップgを通して排出される固形分の量が増大してしまう不具合が発生するので、この点をも考慮に入れて、スクリュー部分21Aのリード角αと、その直径dの大きさを設定すべきは当然である。
【0042】
図1に示した例では、処理対象物が固液分離部3に入り込む入口3Aよりも、処理対象物の移動方向下流側の位置をスクリューの所定の位置Sとし、この所定の位置Sよりも、固液分離部3の出口3Bの側のスクリュー部分21Aの軸部41の直径dを、出口3Bの側に向けて漸次大きく設定したが、スクリューの所定の位置Sは、固液分離部3の入口3Aに対応するスクリュー位置であってもよい。この場合には、入口3Aに対応するスクリュー位置よりも、出口3Bの側のスクリュー部分の軸部41の直径が、出口3Bの側に向けて漸次大きく形成される。
【0043】
また、図1及び図7に示した例では、スクリュー部分21Aの軸部41の直径dが、そのスクリュー部分21Aの全長に亘って、固液分離部3の出口3Bの側に向けて漸次大きくなっているが、スクリュー部分21Aにおける一部の軸部の直径dが出口3Bに向けて漸次大きく形成されていてもよい。例えば、図9に示すように、スクリュー部分21Aのうちの出口3Bの近傍の部分21Bの軸部の直径を一定の大きさに設定することもできる。
【0044】
さらに、図1及び図7に示した例では、スクリュー部分21Aの全長に亘って、そのリード角αが10°乃至30°に設定されているが、スクリュー部分21Aの一部だけのリード角αを10°乃至30°に設定しても本発明の所期の目的を達成できる。固液分離部に位置するスクリューの所定の位置よりも、固液分離部の出口の側のスクリュー部分の少なくとも一部の軸部の直径を、該出口の側に向けて漸次大きく設定すると共に、そのスクリュー部分の少なくとも一部のリード角を、10°乃至30°に設定するのである。
【0045】
また、図1、図7及び図9に示したスクリュー部分21Aよりも、固液分離部の入口3Aの側のスクリュー21の部分21Cの軸部41の直径と、そのリード角は、適宜な大きさに設定することができるが、図示した例では、このスクリュー21の部分21Cの軸部41の直径は、スクリュー21の所定の位置Sの軸部41の直径に等しく設定されている。しかもスクリュー21の部分21Cのリード角は、スクリュー部分21Aのリード角αよりも大きく設定されていると共に、当該部分21Bのリード角が固液分離部3の出口3Bの側に向けて漸次小さくなっている。
【0046】
以上、スクリュー21が1本だけ設けられた固液分離装置に本発明を適用した例を説明したが、本発明は、特許第3565841号公報や特許第3638597号公報に記載されているように、複数の固定板と、隣り合う固定板の間に配置された可動板とを有する固液分離部を貫通して伸びる複数のスクリューを備えた固液分離装置にも、支障なく適用できるものである。また、複数の羽根部を有するスクリューを用いた固液分離装置や、隣り合う固定板の間に複数の可動板が配置された固液分離装置などにも、本発明を適用できることは当然である。さらに、特許第3638597号公報に記載された固液分離装置のように、上部が開放した凹部を有する可動板と固定板を用いた場合には、かかる可動板と固定板の上方から、固液分離部に処理対象物を供給することもできる。この場合には、固液分離部の入口が、固定板と可動板の上方に位置することになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】固液分離装置の部分断面正面図である。
【図2】隣り合う固定板と、その両固定板の間に配置された可動板などを示す固液分離装置の分解斜視図である。
【図3】固液分離部の縦断面図である。
【図4】固定板と、可動板と、スペーサと、ステーボルトの配置状態を示す説明図である。
【図5】出力軸とスクリューの軸部の連結に関する構成を示す斜視図である。
【図6】スペーサを固定板に一体に固定した例を示す正面図である。
【図7】固液分離部から取り外した状態のスクリューを示す正面図である。
【図8】スクリューのリード角を説明する図である。
【図9】図1に示したスクリューとは一部構造の異なったスクリューを有する固液分離装置の部分断面正面図である。
【図10】従来のスクリューを備えた固液分離装置の部分断面正面図である。
【図11】回転するスクリューによって、可動板が固定板に対して押圧されることを説明する図である。
【符号の説明】
【0048】
3 固液分離部
3B 出口
21 スクリュー
21A スクリュー部分
28 固定板
29 可動板
41 軸部
d 直径
所定の位置
α リード角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定板及び隣り合う固定板の間に配置された可動板を有する固液分離部と、該固液分離部を貫通して延びる少なくとも1本のスクリューとを具備し、回転するスクリューによって前記可動板が押し動かされるように、該可動板が形成されていると共に、固液分離部に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって固液分離部の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、固液分離部の濾液排出ギャップを通して固液分離部外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から固液分離部外に排出させる固液分離装置において、
前記固液分離部に位置するスクリューの所定の位置よりも、固液分離部の出口側のスクリュー部分の少なくとも一部の軸部の直径が、該出口の側に向けて漸次大きくなっていると共に、そのスクリュー部分の少なくとも一部のリード角が10°乃至30°に設定されていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
処理対象物が固液分離部に入り込む入口よりも、処理対象物移動方向下流側の位置を前記スクリューの所定の位置とした請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記スクリュー部分の軸部の直径が、そのスクリュー部分の全長に亘って、固液分離部の出口側に向けて漸次大きくなっている請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記スクリュー部分の全長に亘って、そのリード角が10°乃至30°に設定されている請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記リード角が13°乃至14°である請求項1乃至4のいずれかに記載の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−307526(P2007−307526A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141826(P2006−141826)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【特許番号】特許第3904590号(P3904590)
【特許公報発行日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】