説明

固液分離装置

【課題】濾液排出ギャップの目詰まりを防止できると共に、装置の維持管理に要するコストを低減することのできる固液分離装置を提供する。
【解決手段】回転駆動されるスクリュー20のまわりに微小な濾液排出ギャップをあけて配列された多数の濾過部材24を有する濾過体3と、その濾過部材24を回転駆動する駆動装置とを具備し、濾過部材24はスクリュー20に接触しない状態で配置されていて、濾過体3に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリュー20によって濾過体3の出口34に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を濾液排出ギャップを通して、濾過体3外に排出させ、含液率の低下した処理対象物を出口34から濾過体外に排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を含む処理対象物から液体を分離する固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を含む処理対象物、例えば、廃豆腐、食品加工排水、下水処理物或いは養豚場から排出される廃水などの有機系汚泥、切削屑を含む切削油、メッキ廃液、インク廃液、顔料廃液、塗料廃液などの無機系汚泥、或いは野菜屑や果実の皮、食品残渣、おからなどの処理対象物から液体を分離するために固液分離装置を用いることは従来より周知である。従来の固液分離装置は、複数の固定板及び可動板を有する濾過体と、その濾過体を貫通して延びるスクリューを具備し、回転するスクリューによって可動板を押し動かすと共に、濾過体に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって濾過体の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を、濾過体の濾液排出ギャップを通してその濾過体外へ排出させ、含液率の低下した処理対象物を濾過体の出口からその濾過体の外部に排出させるように構成されている(例えば、特許文献1乃至4参照)。
【0003】
上記形式の固液分離装置によれば、回転するスクリューによって可動板を押し動かして、該可動板を固定板に対して積極的に運動させることができるので、可動板を駆動する専用の駆動装置を設けずとも、可動板と固定板の間の濾液排出ギャップに入り込んだ固形物を効率よく排出させ、濾液排出ギャップの目詰まりを防止することができる。
【0004】
ところが、この形式の固液分離装置においては、回転するスクリューによって可動板を押動させるように構成されているので、可動板がスクリューとの摩擦によって比較的早期に摩耗し、その摩耗した可動板を新たなものと交換しなければならず、装置の維持管理費が嵩む欠点を免れなかった。
【0005】
【特許文献1】特許第2826991号公報
【特許文献2】特許第3565841号公報
【特許文献3】特許第3638597号公報
【特許文献4】特許第3904590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、濾液排出ギャップの目詰まりを防止できると共に、装置の維持管理に要するコストを低減することのできる固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転駆動されるスクリューと、該スクリューのまわりに微小な濾液排出ギャップをあけて配列された複数の濾過部材を有する濾過体と、少なくとも1つの濾過部材を回転駆動する駆動装置とを具備し、前記複数の濾過部材は前記スクリューに接触しない状態で配置されていて、前記濾過体に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって濾過体の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を前記濾液排出ギャップを通して、濾過体外に排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から濾過体外に排出させるように構成されている。
【0008】
また、上記固液分離装置において、前記駆動装置は、互いに隣り合う2つの濾過部材のうちの少なくとも一方の濾過部材を回転駆動するように構成されていると有利である。
【0009】
さらに、上記固液分離装置において、前記濾過体を処理対象物移動方向に沿って複数の濾過領域に分けると共に、互いに隣り合う2つの濾過領域のうちの処理対象物移動方向上流側の濾過領域の濾液排出ギャップを、下流側の濾過領域の濾液排出ギャップよりも広く設定すると有利である。
【0010】
また、上記固液分離装置において、前記濾液排出ギャップを、処理対象物移動方向上流側から下流側に向けて漸次狭く設定すると有利である。
【0011】
さらに、上記固液分離装置において、前記濾過体を処理対象物移動方向に沿って複数の濾過領域に分けると共に、互いに隣り合う2つの濾過領域のうちの処理対象物移動方向上流側の濾過領域の濾液排出ギャップを、下流側の濾過領域の濾液排出ギャップよりも狭く設定すると有利である。
【0012】
また、上記固液分離装置において、前記濾液排出ギャップを、処理対象物移動方向上流側から下流側に向けて漸次広く設定すると有利である。
【0013】
さらに、上記固液分離装置において、回転駆動される濾過部材のうちの少なくとも1つの濾過部材の周面に凹凸が形成されていると有利である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、隣り合う濾過部材の間の濾液排出ギャップを通して濾液を濾過体外に排出させることができると共に、濾過部材がスクリューに接触していないので、濾過部材の摩耗を抑えることができる。これにより固液分離装置の維持管理に要するコストを低減できる。しかも回転駆動される濾過部材と、その隣の濾過部材の間の濾液排出ギャップに固形物が詰まる不具合を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0016】
図1は固液分離装置の一例を示す縦断面図である。この固液分離装置によって、液体を含む各種の処理対象物を固液分離することが可能であるが、ここでは、多量の水分を含んだ汚泥を脱水処理する場合について説明する。
【0017】
ここに示した固液分離装置は、入口部材1と、出口部材2と、これらの間に配置された濾過体3とを有している。入口部材1は、図2にも示すように上部が開口した箱状に形成され、その上部開口によって、汚泥が投入される投入口4が構成されている。符号7は入口部材1の底壁を示す。また濾過体3を向いた側の入口部材1の側壁5には開口6が形成されている。入口部材1の側壁5は下方に延び、その下端部が図示していないボルトとナットによって支持フレームのステー35に着脱可能に固定されている。
【0018】
出口部材2は、図3にも示すように、下部が開口した箱状に形成され、濾過体3を向いた側の側壁9と、これとは反対側の側壁10と、これらの側壁9,10の間に配置された2つの中間壁11,12を有し、これらの壁9、10,11,12の上部には上壁13が着脱可能に連結され、側壁9と中間壁11にはパイプ14の各端部が固着されている。側壁9と中間壁11には、パイプ14の各端部の開口に整合して位置する開口15,16がそれぞれ形成されている。また、側壁9の下端部は、支持フレームのステー17に、図示していないボルトとナットとによって着脱可能に固定支持されている。両中間壁11,12の間の空間の下部開口は、脱水処理された汚泥が排出される排出口18を構成している。
【0019】
また、出口部材2の側壁10には、モータ19が固定支持され、しかも入口部材1と、濾過体3と、出口部材2には、スクリュー20が挿通されている。このスクリュー20は、軸部21と、これに一体に形成されたらせん状の羽根部22とを有していて、かかるスクリュー20は、入口部材1の側壁5に形成された開口6と、濾過体3の内部を貫通し、出口部材2の側壁9に形成された開口15、及びパイプ14の内部を通り、さらに中間壁11,12及び側壁10にそれぞれ形成された開口を貫通して延びている。また、このスクリュー20の一方の端部は入口部材1の側壁8に固定された軸受け23に回転自在に支持され、その他方の端部はモータ19の出力軸に固定連結されている。モータ19が作動することによって、スクリュー20はその中心軸線のまわりに回転駆動される。
【0020】
一方、濾過体3は、図2のIV−IV線拡大断面図である図4にも示すように、スクリュー20のまわりに配列された複数の、図4の例では28本の濾過部材24を有している。本例の各濾過部材24は、丸棒状の部材より成り、これらの濾過部材24は、互いにほぼ平行に延びていると共に、スクリュー21に対してもほぼ平行に延びている。かかる濾過部材24は、例えば金属又は硬質樹脂などの高剛性材料により構成されている。また、濾過部材24を、板状部材や、多角形断面の棒状部材などによって構成することもできる。なお、図4においては、スクリュー20の羽根部22を簡略化して示してある(図5及び図6においても同じ)。
【0021】
上述した複数の濾過部材24の一方の端部は、図1、図2及び図4に示すように第1の軸受板25に形成された各軸受孔50に嵌合して、その第1の軸受板25に支持されている。第1の軸受板25は、図1及び図2に示すように、入口部材1の側壁5にボルトとナットによって着脱可能に固定されている。その際、第1の軸受板25に形成された中心孔26と、側壁5に形成された開口6とが整合し、前述のように、開口6と中心孔26とに、スクリュー20が貫通して延びている。また、この中心孔26と開口6を介して、入口部材1の内部空間と、複数の濾過部材24の内側空間とが連通している。
【0022】
複数の濾過部材24の他方の端部も、図1及び図3に示すように、第2の軸受板27に形成された各軸受孔51に嵌合して、該第2の軸受板27に支持されている。この第2の軸受板27は出口部材2の側壁9にボルトとナットとによって着脱可能に固定されている。その際、この第2の軸受板27に形成された中心孔28と、側壁9及び中間壁11に形成された開口15,16と、パイプ14の内部空間とが整合して、前述のように、中心孔28、開口15,16及びパイプ14の内部空間をスクリュー20が貫通している。しかも、その中心孔28、開口15,16及びパイプ14の内部空間を介して、複数の濾過部材24の内側空間と2つの中間壁11,12の間の空間とが連通している。
【0023】
また、図1に示すように、本例の濾過体3の各濾過部材24は、その長手方向中間部においても、ボルトとナットによって支持板29に着脱可能に固定された第3及び第4の2つの軸受板30,31を貫通して、その各軸受板30,31に支持されている。支持板29は、その下端部が、支持フレームのステー32に図示していないボルトとナットとによって着脱可能に固定されている。
【0024】
上述のように、本例の濾過体3は、スクリュー20のまわりに、その周方向に沿って配列された複数の濾過部材24と、その濾過部材24を支持する複数の軸受板25,27,30,31を有しているが、濾過部材24をかかる軸受板25,27,30,31以外の支持手段によって支持することもできる。
【0025】
図4から判るように、互いに隣り合う濾過部材24の間には、例えば0.15mm乃至0.5mm程の微小な濾液排出ギャップGがあけられていて、スクリュー20のまわりに多数の濾液排出ギャップGが形成されている。しかもこれらの濾過部材24は、スクリュー20の外周部に近接してはいるが、該スクリュー20に接触することはない。このように、本例の濾過体3は、スクリュー20のまわりに微小な濾液排出ギャップGをあけて配列された複数の濾過部材24を有し、その複数の濾過部材24は、スクリュー20に接触しない状態で配置されている。
【0026】
次に、本例の固液分離装置の基本的な動作例を説明する。
【0027】
多量の水分を含んだ汚泥が、図示していないフロック化装置に供給され、そのフロック化装置において、汚泥に凝集剤が混入されて撹拌され、これによって汚泥がフロック化される。フロック化された汚泥(図には示さず)は、図1に矢印Aで示すように、投入口4から入口部材1内に流入する。かかる汚泥の含水率は、例えば99重量%程度である。このとき、スクリュー20はモータ19によって回転駆動されているので、入口部材1に流入した汚泥は、矢印Bで示すように、入口部材1の側壁5に形成された開口6と、第1の軸受板25に形成された中心孔26を通って、複数の濾過部材24の内側の空間に流入する。フロック化された汚泥が濾過体3の入口33から、その濾過体3の内部に入り込むのである。
【0028】
上述のようにして濾過体3の内部に入り込んだ汚泥は、モータ19により回転駆動されたスクリュー20によって、図1に矢印Cで示したように、濾過体3の軸線方向他端側の出口34へ向けて搬送される。このとき、汚泥から分離された水分、すなわち濾液が、隣り合う濾過部材24の間の濾液排出ギャップGを通して、濾過体3外に排出される。排出された濾液は、ステー17,32,35に固定された濾液受け部材36に受け止められ、次いで濾液排出管37を通って流下する。この濾液には未だ多少の固形分が含まれているので、当該濾液は他の汚泥と共に再度固液分離装置に供給されて脱水処理される。
【0029】
上述のように濾過体3内の汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少した汚泥が、図1に矢印Dで示すように、濾過体3の軸線方向他端側の出口34から排出される。出口34から排出された汚泥は、開口15,16及びパイプ14の内部空間を通り、矢印Eで示すように、両中間壁11,12の間の空間に排出される。このとき、パイプ14に対向して、背圧板39が設けられ、出口34から排出される汚泥が背圧板39に当り、該出口34から排出される汚泥の量が規制される。これにより、濾過体内の圧力が高められ、汚泥に対する脱水効率が高められる。図示した例では、背圧板39はスクリュー20の軸部21に、ボルト52によって位置調整可能に固定されている。濾過体3から排出された汚泥は、出口部材2の下部の排出口18を通して下方に落下する。このようにして脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80乃至85重量%程度である。
【0030】
上述のように、固液分離装置は、濾過体3の入口33からその濾過体3に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリュー20によって濾過体3の出口34に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を隣り合う濾過部材24の間の濾液排出ギャップGを通して、濾過体外に排出させ、含液率の低下した処理対象物を濾過体3の出口34から濾過体外に排出させるように構成されている。
【0031】
上述した固液分離装置によれば、隣り合う濾過部材24の間の濾液排出ギャップGを通して濾液を濾過体外に排出させることができ、しかも濾過部材24がスクリュー20に接触していないので、濾過部材24の摩耗を抑えることができる。このため、濾過部材24の摩耗を押え、その寿命を伸ばすことができ、固液分離装置の維持管理に要するコストを低減することができる。
【0032】
濾過体3の内部を汚泥が搬送されるとき、その内部の圧力が高められるので、その圧力によって、隣り合う濾過部材24の間の濾液排出ギャップGに詰まった固形物をその濾液排出ギャップGから押し出して、濾液排出ギャップGの目詰まりを防止することが可能である。ところが、上述した構成だけであると、その濾液排出ギャップGに固形物が詰まるおそれもある。
【0033】
そこで、本例の固液分離装置には、前述の濾過部材24をその中心軸線のまわりに回転させる駆動装置が設けられている。以下、この駆動装置に関する構成を明らかにする。
【0034】
図1及び図3に示すように、出口部材2の内部に位置するスクリュー20の軸部21の部分には、駆動ギア41が固定されている。一方、出口部材2の側壁9,10には、支持軸42が、図示していない軸受を介して回転自在に支持されており、この支持軸42は、2つの中間壁11,12を貫通して延びている。かかる支持軸42には、第1及び第2の中間ギア43,44が固定され、第1の中間ギア43は上述の駆動ギア41に噛み合っている。
【0035】
図3のV−V線拡大断面図である図5に示すと共に、先に詳しく説明したように、スクリュー20のまわりには、これを取り囲むように多数の濾過部材24が設けられている。その際、図5においては、これらの濾過部材24のうちの1つ置きの濾過部材に符号24Aを付し、その各濾過部材24Aの間に位置する濾過部材には符号24Bを付してあるが、図3及び図5から判るように、濾過部材24Aは、第2の軸受板27と出口部材2の側壁9を貫通して、側壁9と中間壁11との間の空間にまで突出し、その突出した濾過部材24Aの端部には、図5に示したように、互いに順次噛み合っている従動ギア45がそれぞれ固定されている。図5に示すように、これらの従動ギア45のうちの1つの従動ギア45Aが前述の第2の中間ギア44に噛み合っている。
【0036】
また、従動ギア45が固定された各濾過部材24Aは、第1乃至第4の軸受板25,27,30,31に回転自在に支持されている。これに対し、濾過部材24Bは、出口部材2の側壁9を貫通することはない。しかもこれらの濾過部材24Bは、第1乃至第4の軸受板25,27,30,31に回転可能に支持されていてもよいし、回転不能に支持されていてもよい。なお、図5においては、各ギアを簡略化して単なる円で示してある(図6及び図7においても同じ)。
【0037】
前述のように、図1に示したモータ19が作動を開始すると、スクリュー20が回転を始め、これに伴ってそのスクリュー20に固定された駆動ギア41が回転する。これにより、順次、第1の中間ギア43、支持軸42及び第2の中間ギア44がそれぞれ回転し、これに伴って互いに連続的に噛み合った多数の従動ギア45がそれぞれ回転し、これによってその各従動ギア45の固定された各濾過部材24Aが、その中心軸線のまわりに回転する。
【0038】
上述のように、互いに隣り合う2つの濾過部材24A,24Bのうちの一方の濾過部材24Aが回転駆動されるので、隣り合う濾過部材24A,24Bの間の濾液排出ギャップGに入り込んだ固形物は、その回転する濾過部材24Aによって効率よく濾過体3の外部に掻き出される。このようにして、濾液排出ギャップGに固形物が詰まってしまう不具合をより確実に阻止することができるのである。
【0039】
本例の固液分離装置においては、モータ19と、スクリュー20の軸部21と、多数のギア41,43,44,45と、支持軸42とによって、1つ置きの濾過部材24Aを回転駆動する駆動装置が構成されている。その際、モータ19は、濾過部材24Aとスクリュー20を回転駆動する駆動源を兼ねているので、固液分離装置全体の構造の簡素化とコストの低減を達成できる。
【0040】
本例の固液分離装置は、前述のように、隣り合う2つの濾過部材24A,24Bのうちの一方の濾過部材24Aを回転駆動するように構成されているが、駆動装置によって、全ての濾過部材24を、その中心軸線のまわりに回転駆動するように構成することもできる。この場合には、互いに隣り合う2つの濾過部材24A,24Bの両方の濾過部材が回転駆動され、これによって濾液排出ギャップGに入り込んだ固形物の掻き取り効果を特に高めることができる。
【0041】
上述したところから了解されるように、駆動装置は、互いに隣り合う2つの濾過部材24A,24Bのうちの少なくとも一方の濾過部材を回転駆動するように構成されていることが好ましいのである。
【0042】
図6は、他の例を示す図5と同様な断面図である。この図6に示した固液分離装置においては、符号24C,24D,24Eで示した濾過部材が順次互いに隣り合っているが、これらの濾過部材24C,24D,24Eには、従動ギアが固定されておらず、これらの濾過部材24C,24D,24Eが回転駆動されることはない。図6に示した固液分離装置の他の構成は、図1乃至図5に示した構成と変わりはない。
【0043】
図6に示した固液分離装置においては、互いに隣り合う濾過部材24C,24D,24Eの間の濾液排出ギャップGの間に入り込んだ固形分の除去効率は低下するが、他の濾液排出ギャップに入り込んだ固形分は効率よく除去して、その濾液排出ギャップをクリーニングすることができる。
【0044】
また、図6に示した回転駆動されない3本の濾過部材24C,24D,24Eの代わりに、図7に示すように1つの板状又はその他の形態の濾過部材24Fを配置することもできる。この濾過部材24Fも回転駆動されることはない。
【0045】
上述したところから理解されるように、スクリュー20のまわりに配設された複数の濾過部材24のうちの少なくとも1つの濾過部材を、駆動装置によって、その中心軸線のまわりに回転駆動するように構成することによって、本発明の所期の目的を達成することができるのである。
【0046】
ところで、濾液排出ギャップGの最適な大きさは、固液分離すべき処理対象物の性状などによって決まるが、本例の固液分離装置のように、凝集剤によってフロック化した汚泥などの処理対象物を固液分離するときは、処理対象物移動方向上流側の濾過体3の部分の濾液排出ギャップGの大きさを、下流側の部分の濾液排出ギャップGの大きさよりも大きく設定すると、処理対象物から効率よく液体分を分離することができる。
【0047】
より具体的に示すと、図1に示したように、濾過体3を処理対象物移動方向に沿って複数の濾過領域AR1,AR2に分けると共に、図8の(a)に模式的に示したように、互いに隣り合う2つの濾過領域AR1,AR2のうちの処理対象物移動方向上流側の濾過領域AR1の濾液排出ギャップG1を、下流側の濾過領域AR2の濾液排出ギャップG2よりも広く設定するのである。例えば、濾液排出ギャップG1を0.5mmに設定し、濾液排出ギャップG2を0.15mmに設定する。図8の(a)に示した例では、上流側の濾過領域AR1に位置する濾過部材24の部分の直径D1を、下流側の濾過領域AR2に位置する濾過部材24の部分の直径D2よりも小さく設定することによって、両領域AR1,AR2における濾液排出ギャップG1,G2の大きさが、G1>G2となるようにしている。図1に示した固液分離装置においては、濾過体3を2つの濾過領域AR1,AR2に分けたが、これを3以上に分けたときも、上述したところと同じく構成する。
【0048】
上述した構成によれば、凝集剤によってフロック化された処理対象物が濾過体3の処理対象物移動方向上流側の濾過領域AR1を通過するとき、その処理対象物中の濾液が、比較的大きく設定された濾液排出ギャップG1を通して効率よく迅速に排出される。このとき、処理対象物フロックのサイズは、かなり大きなものとなっているので、そのフロックが比較的大きな濾液排出ギャップG1を通して大量に排出されることはない。一方、処理対象物移動方向上流側の濾過領域AR1を通過した液体含有量の減少した処理対象物が、処理対象物移動方向下流側の濾過領域AR2を通過するときは、濾液排出ギャップG2が比較的狭く設定されているので、その処理対象物の固形分が濾液排出ギャップG2を通して大量に排出されることはない。液体含有量の減少した処理対象物の固形分が濾液排出ギャップG2から大量に排出されることを阻止しながら、その処理対象物から液体分を効率よく絞り出すことができるのである。
【0049】
図8の(a)に示したように濾液排出ギャップGが段階的に変化しているのではなく、濾液排出ギャップGが、処理対象物移動方向上流側から下流側に向けて漸次狭く設定されているときも上述したところと同様な作用効果を奏することができる。
【0050】
上記構成によれば、凝集剤によって予めフロック化された処理対象物を、効率よく固液分離することができる。ところが、凝集剤の添加されていない処理対象物や、凝集剤によってフロック化されていても、そのフロックのサイズが小さな処理対象物を、上述した構成の固液分離装置によって固液分離処理すると、濾過体3の処理対象物移動方向上流側濾過領域AR1を通る処理対象物の液体分だけでなく、固形分までもが、比較的大きな濾液排出ギャップG1を通して排出されてしまい、これによって処理対象物の固液分離効率が低下する。例えば、水分中に細かな植物繊維を含むパルプ原料や、同様に水分中に細かな繊維を含むパルプ排水を、凝集剤を添加せずに、上述した固液分離装置により処理すると、濾過体の処理対象物方向上流側の濾過領域AR1において、その処理対象物の繊維が、大量に濾液排出ギャップG1を通して濾過体3外に排出されてしまい、固液分離効率が低下してしまうのである。微小サイズのフロックを含有する原料や汚泥を固液分離するとき、或いは無機酸化物や無機水酸化物などの無機原料を、凝集剤を添加することなく固液分離するときなども同様である。
【0051】
そこで、上述の如き処理対象物を固液分離するときは、図1に示したように、濾過体3を処理対象物移動方向に沿って複数の濾過領域AR1,AR2に分けると共に、図8の(b)に示したように、互いに隣り合う2つの濾過領域AR1,AR2のうちの処理対象物移動方向上流側の濾過領域AR1の濾液排出ギャップG1を、下流側の濾過領域AR2の濾液排出ギャップG2よりも狭く設定するとよい。例えば、濾液排出ギャップG1を0.15mmに設定し、濾液排出ギャップG2を0.5mmに設定するのである。図8の(b)に示した具体例においても、上流側の濾過領域AR1に位置する濾過部材24の部分の直径D1を、下流側の濾過領域AR2に位置する濾過部材24の部分の直径D2よりも大きく設定することによって、両領域AR1,AR2における濾液排出ギャップG1,G2の大きさが、G1<G2となるようにしている。この場合も、濾過領域AR1,AR2を3以上に分けたときも、上述したところと同じく構成する。
【0052】
上述した構成によれば、例えば、水分中に細かな繊維を多量に含む処理対象物が濾過体3の上流側の濾過領域AR1を通るとき、その処理対象物中の固形分である繊維が、濾液排出ギャップG1を通して大量に排出されることはない。上流側の濾過領域AR1における濾液排出ギャップG1の幅は狭くなっているからである。これに対し、処理対象物中の水分はその狭い濾液排出ギャップG1を通して濾過体3の外部に流出する。
【0053】
濾過体3内の処理対象物が下流側の濾過領域AR2を通るとき、この領域AR2の濾液排出ギャップG2は、上流側の濾過領域AR1における濾液排出ギャップG1よりも広くなっているが、このとき処理対象物の水分は既に減少していて、その処理対象物自体が互いに絡みついているので、濾液排出ギャップG2が広くとも、その処理対象物が濾液排出ギャップG2を通して大量に排出されることはない。一方、濾液排出ギャップG2が広いので、処理対象物中の水分は、その濾液排出ギャップG2を通して効率よく外部に流出する。
【0054】
上述のようにして、処理対象物に対する固液分離効率を高めることができる。これは、フロック化されていない他の処理対象物や、微小サイズのフロックを含む処理対象物などを固液分離する際も同様である。
【0055】
図8の(b)に示したように濾液排出ギャップGが段階的に変化しているのではなく、濾液排出ギャップGが、処理対象物移動方向上流側から下流側に向けて漸次広く設定されているときも上述したところと同様な作用効果を奏することができる。
【0056】
また、図8の(a),(b)に示したように、上流側の濾過領域AR1に位置する濾過部材24の部分の直径D1と、下流側の濾過領域AR2に位置する濾過部材24の部分の直径D2を互いに異ならせる場合、径の異なる濾過部材24の各部分24X,24Yを別々の部材により構成し、その両部材24X,24Yを着脱可能に連結して、1本の濾過部材24として用いるように構成することもできる。このようにすれば、各種直径の濾過部材24の部分24X,24Yを用意しておき、固液分離すべき処理対象物の性状に合った濾過部材部分24X,24Yを選択してこれらを連結することができるので、処理対象物の性状に合った大きさの濾液排出ギャップG1,G2を容易に得ることができる。また、濾過部材部分24X,24Yの交換も容易に行うことができる。
【0057】
ところで、前述のように回転駆動される濾過部材24のうちの少なくとも1つの濾過部材の周面に凹凸が形成されていると、濾液排出ギャップGに入り込んだ固形物に大きな掻き取り力を加えることができるので、その固形物の除去効率を高めることができる。例えば、図9に示すように、濾過部材24の周面に、その長手方向に延びる多数の突部46を形成する。或いは濾過部材24の周面にらせん状の多数の溝を形成することもできる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態例を説明したが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】固液分離装置の概略縦断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】図2のIV−IV線拡大断面図である。
【図5】図3のV−V線拡大断面図である。
【図6】図5とは異なる例を示す、図5と同様な断面図である。
【図7】図5とは異なる他の例を示す、図5と同様な断面図である。
【図8】隣り合う濾過部材の間の濾液排出ギャップを説明する図である。
【図9】外周面に凹凸を形成した濾過部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
3 濾過体
20 スクリュー
24,24A,24B,24C,24D,24E,24F 濾過部材
34 出口
AR1,AR2 濾過領域
G,G1,G2 濾液排出ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるスクリューと、該スクリューのまわりに微小な濾液排出ギャップをあけて配列された複数の濾過部材を有する濾過体と、少なくとも1つの濾過部材を回転駆動する駆動装置とを具備し、前記複数の濾過部材は前記スクリューに接触しない状態で配置されていて、前記濾過体に入り込んだ処理対象物を、回転するスクリューによって濾過体の出口に向けて移動させながら、その処理対象物から分離された濾液を前記濾液排出ギャップを通して、濾過体外に排出させ、含液率の低下した処理対象物を前記出口から濾過体外に排出させる固液分離装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、互いに隣り合う2つの濾過部材のうちの少なくとも一方の濾過部材を回転駆動するように構成されている請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記濾過体を処理対象物移動方向に沿って複数の濾過領域に分けると共に、互いに隣り合う2つの濾過領域のうちの処理対象物移動方向上流側の濾過領域の濾液排出ギャップを、下流側の濾過領域の濾液排出ギャップよりも広く設定した請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記濾液排出ギャップを、処理対象物移動方向上流側から下流側に向けて漸次狭く設定した請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記濾過体を処理対象物移動方向に沿って複数の濾過領域に分けると共に、互いに隣り合う2つの濾過領域のうちの処理対象物移動方向上流側の濾過領域の濾液排出ギャップを、下流側の濾過領域の濾液排出ギャップよりも狭く設定した請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項6】
前記濾液排出ギャップを、処理対象物移動方向上流側から下流側に向けて漸次広く設定した請求項1又は2に記載の固液分離装置。
【請求項7】
回転駆動される濾過部材のうちの少なくとも1つの濾過部材の周面に凹凸が形成されている請求項1乃至6のいずれかに記載の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−202191(P2009−202191A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45791(P2008−45791)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】