説明

固相細胞溶解および捕捉プラットフォーム

本発明は、宿主細胞からの細胞成分の抽出、または抽出および単離に関する容器、方法、およびキットを提供する。より具体的には、本発明の容器は、口;側壁構造および底を含む内部表面;容量;溶解試薬;および場合により支持捕捉リガンドを含む。前述の容器を用いて宿主細胞から細胞成分を抽出、または抽出および単離するための方法およびキットもまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、ポリペプチドや核酸のような細胞成分の宿主細胞からの単離に関する。
【0002】
[背景技術]
組換えDNA技術における近年の進歩により、宿主細胞において大量のペプチドを産生することが可能となった。しかしながら、それら宿主細胞からの目的のペプチド、タンパク質、核酸、または他の細胞成分の抽出および単離は、現在のところ多段階の工程であり、はじめに溶解を行い、その後1またはそれ以上の工程において他の細胞成分から目的物を分離する。
【0003】
細胞の溶解には様々な技術が使用されており、各々長所と短所がある。例えば、超音波処理、フレンチプレス細胞、ホモジナイゼーション、粉砕、凍結融解溶解、および細胞を物理的または機械的に溶解する他の各種方法が使用されている。例えば、Bollag & Edelstein, Protein Extraction, in Protein Methods, 27-43 (1993);Schutte & Kula, Biotech. and App. Biochem. , 12: 559-620 (1990);およびHughes, et al., Methods in Microbiology, 5B: 1-54 (1969)を参照。しかしながら、機械的溶解には、容易に入手できない特別な装置が必要であり、さらに、超音波処理も熱を発生し、ある種のタンパク質に損傷を与える場合がある。酵素および界面活性剤もまた、酵素的または化学的に細胞を溶解するのに使用されている。例えば、Hughes, et al., Methods in Microbiology, 5B: 1-54;Andrews & Asenjo, Trends in Biotech., 5: 273-77 (1987);Wiseman, Process Biochem., 63-65 (1969);およびWolska-Mitaszko, et al., Analytical Biochem. , 116: 241-47(1981)を参照。
【0004】
しかしながら、酵素または界面活性剤溶液を添加すると、溶解すべき細胞を含有する溶液が希釈され、その上、得られた膜断片、目的外タンパク質、および他の細胞片から所望の産物をさらに分離しなければならない。
【0005】
同様に、各種の親和性捕捉法が、ペプチド、タンパク質、および核酸の精製に用いられている。米国特許第4569794号、第5310663号、および第5594115号は、ヒスチジン残基を含む金属キレートペプチドの使用、およびタンパク質精製におけるそれらの使用について記載する。米国特許第4703004号、第4851341号、第5011912号、および第6461154号は、抗原性FLAG(登録商標)ペプチドおよび該ペプチドを含むタンパク質の精製について記載する。米国特許第5654176号は、タンパク質精製のためのグルタチオン-S-トランスフェラーゼの使用について記載する。米国特許第5998155号は、アビジン/ビオチン捕捉システムの使用について記載する。これら各例では、目的物上のアフィニティータグまたは配列と対応するリガンドとの間の相互作用の結果、目的物が捕捉される。非結合成分および他の細胞片は洗浄により除去することができ、タグまたは配列特異的リガンドに結合した目的物のみが残る。その後、特異的な溶離液を用いて結合した目的物を解離させ、精製された目的物を得る。
【0006】
不都合なことに、はじめの宿主細胞の溶解およびその次の目的物の精製が複数の工程を含むことにより、目的物の単離に必要な費用と時間が、ハイスループットへ応用する場合に特に増加する。
【0007】
[発明の概要]
それゆえ、本発明の様々な局面に共通するのは、細胞を溶解し、そしてペプチド、タンパク質、核酸、または他の細胞成分を捕捉するための、比較的速く効率のよい方法を提供することである。好都合なことに、本発明の方法および容器は、不溶性物質を取り除くため細胞溶液を遠心分離したり、界面活性剤溶解液または酵素阻害剤中でさらにピペッティングしたり(これによってもとの細胞含有溶液が希釈される)、あるいは続けて精製工程を行う必要をなくす。
【0008】
それゆえ、簡潔にいうと、本発明は、宿主細胞から細胞成分を抽出するための容器に関する。容器は、口、内部表面、および内部表面の少なくとも一部の上に溶解試薬のコーティングを含み、ここでコーティング中の溶解試薬の量は、宿主細胞を含む液状懸濁液が本容器に導入された場合にその宿主細胞を溶解することができる溶解溶液を形成するのに十分な量である。ある態様において、コートされた内部表面の面積の容器容量に対する比率は、約4mm2/μl未満である。
【0009】
別の局面において、本発明は、宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するための容器に関する。容器は、口、内部表面、容量、溶解試薬、および支持捕捉リガンドを含む。口は、液体を容器に導入するための入口および容器から液体を除去するための出口として機能し、捕捉リガンドは、無傷の宿主細胞またはそれらに由来する固体細胞成分を含む液状懸濁液が口を介して容器に導入された場合にその無傷の宿主細胞または固体細胞成分に接触できる容器内の位置に支持される。
【0010】
別の局面において、本発明は、少なくとも1つのウェルが溶解試薬を含む、宿主細胞から細胞成分を抽出するためのマルチウェルプレートに関する。溶解試薬は、(i) ウェルの内部表面の少なくとも一部の上にコートされるか、または(ii) 材料塊の形態でウェル内に含まれる。
【0011】
別の局面において、本発明は、宿主細胞から細胞成分を抽出するための方法に関する。本方法は、(a) 宿主細胞を含む液状懸濁液を容器に導入すること(該容器は、口、内部表面、容量、および内部表面の少なくとも一部の上に溶解試薬のコーティングを有し、コートされた内部表面の面積の容器容量に対する比率は約4mm2/μl未満である)、および(b) 該容器内で宿主細胞を溶解して、細胞成分を放出させ、かつ細胞片を形成させること、を含む。
【0012】
別の局面において、本発明は、宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するための方法に関する。本方法は、(a) 宿主細胞を含む液状懸濁液を容器に導入すること(該容器は、口、内部表面、容量、溶解試薬、および支持捕捉リガンドを有し、口は液体を容器に導入するための入口および容器から液体を除去するための出口として機能する)、(b) 該容器内で宿主細胞を溶解して、細胞成分を放出させ、かつ固体細胞片を形成させること、および(c) 該固体細胞片の存在下に細胞成分を捕捉リガンドで捕捉すること、を含む。
【0013】
別の局面において、本発明は、宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するための方法に関する。本方法は、(a) 宿主細胞を含む液状懸濁液を容器に導入すること(該容器は、口、内部表面、容量、溶解試薬、および支持捕捉リガンドを有し、口は液体を容器に導入するための入口として機能する)(b) 該容器内で宿主細胞を溶解して、細胞成分を放出させ、かつ固体細胞片を形成させること、(c) 固体細胞片の存在下に該細胞成分を捕捉リガンドで捕捉すること、および(d) 該細胞成分を捕捉リガンドから解離させること、および(e) 解離された細胞成分を回収すること、を含む。
【0014】
別の局面において、本発明は、宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するためのキットに関する。キットは、本発明の容器および宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するための説明書を含む。別の態様において、キットはさらに、宿主細胞から細胞成分を抽出および/または単離するための試薬、および/または捕捉された細胞成分を分析または検出するための試薬を含む。
【0015】
別の局面において、本発明は、宿主細胞から細胞成分を抽出するための容器の製造方法であって、容器の内部表面に溶解試薬を含む液体を接触させること、および該液体を乾燥させて容器の内部表面上に溶解試薬の吸着層を形成させることを含む方法、に関する。
【0016】
本発明の他の目的および特徴は、一部は明らかであろうし、一部は以下で示されるであろう。
【0017】
[好ましい態様の説明]
1.容器
一般的には、本発明の容器は、液体を保持するのに適し、底、口、および側壁構造を含む。ある態様において、側壁構造は、様々な幾何学的形状のいずれを有していてもよく、例えば、本態様において、側壁構造は、円筒形、多角形、円錐状、または凹状(例えば半球形)であってよい。同様に、ある態様において、底は、様々な幾何学的形状のいずれかを有し、例えば、本態様において、底は、平面または曲面状であってよく、あるいは単一の点をも包含する(例えば、逆円錐型の最下点)。口は、容器に液体を導入可能な開口部として機能する。ある態様において、口および底は側壁構造の両端にあり、その場合口は側壁構造上部の開口部として規定される。それゆえ、その様々な態様において、容器はシリンダー、フラスコ、ジャー、ビーカー、バイアル、ボトル、カラムであってよく、単なる表面のくぼみであってもよい。さらに、容器は、単独の自立型レセプタクル(receptacle)として存在してもよく、あるいは物理的に一体化された複数のレセプタクルの1つであってもよい。それゆえ、ある態様において、容器は、一体構造のマルチウェルプレート、例えば48ウェル、96ウェル、384ウェル、1536ウェル等のマルチウェルプレート、の個々のウェルである。また、容器は、開閉不能の底を有していてもよく、あるいは底は、所望により容器内の液体が除去できるバルブまたはキャップ付き開口部を含んでも良い。
【0018】
ペプチド、タンパク質、核酸、または他の細胞成分の抽出、または抽出および親和性捕捉のために用いる容器は、様々な寸法であってよく、液体容量が大きい必要はない。通常、容器の容量は、50 L未満であろう。ある態様において、容器の容量は、1 L以下、1.0μl以上であろう。別の態様において、容器の容量は、約10μl〜約100 mlであろう。
【0019】
側壁構造および底を含む容器の内部表面は、容器の液体限度容量を規定する。ある態様において、内部表面により規定される表面積の、内部表面により規定される容量に対する比率は、約4 mm2/μl未満である。別の態様において、容器の内部表面により規定される表面積対容量の比率は、約3 mm2/μl以下である。別の態様において、容器の内部表面により規定される表面積対容量の比率は、約2 mm2/μl以下である。別の態様において、容器の内部表面により規定される表面積対容量の比率は、約1 mm2/μl以下である。
【0020】
意図する用途および操作者の意向により、容器は所望により密閉されてもよい。それゆえ、ある態様において、容器は、口に適合し容器内容を周囲環境から分離する、ふたまたはキャップを含む。別の態様において、容器上部は、周囲に対して開放されている。このように、例えば容器がマルチウェルプレート型の場合、(i) 各ウェルが個々に別のふた(例えばプラスチックカバーラッピング)によって密閉されてもよく、(ii) ウェルの一画分または複数のウェルが共通のふたにより密閉され、ウェルの残りの画分が周囲に対して開放されたままでもよく、(iii) 全てのウェルが共通のふたにより密閉されていてもよく、または(iv) 全てのウェルが周囲に対して開放されていてもよい。さらに、ふたは、容器に液体を導入するための単一の取り込み口を含んでもよく、あるいは、液体を容器へ導入するため、または導入および除去するための複数の取り込み口を含んでもよい。別の態様において、容器の底が容器内の液体を所望により除去できる開口部を含む場合、所望により容器の口と底の両者にふたがされていてもよい。
【0021】
通常、容器は、各種の天然または合成材料から形成されうる。例えば、容器は、プラスチック、シリカ、ガラス、金属、セラミック、マグネタイト、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリアクリルアミド、セルロース、ニトロセルロース、ラテックス等であってよい。
【0022】
2.捕捉リガンドおよび目的物精製
宿主細胞を溶解した後、その細胞成分は、容器内で支持体材料上に固定化された捕捉リガンドを使用することにより、他の細胞片から単離し分離することができる。捕捉リガンドは、容器の内部表面によって直接または間接的に支持されてもよく、あるいは容器内に設置、接着その他の方法により保持されるビーズその他の支持体によって支持されてもよい。ある態様において、捕捉リガンドは、容器の底上に配置される。別の態様において、捕捉リガンドは、側壁構造上に配置される。別の態様において、捕捉リガンドは、容器の底および側壁構造の両方の上に配置される。別の態様において、支持捕捉リガンドは、容器内に存在しうる無傷の宿主細胞またはそれらに由来する固体細胞成分に捕捉リガンドが暴露されるように容器内の位置に配置される。
【0023】
好都合なことに、本発明の試薬、成分、および方法は、様々な捕捉リガンドの使用を許容する。好ましい態様において、捕捉リガンドは、細胞片を含む液状懸濁液において細胞成分を単離する能力を有する。
【0024】
タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、または他の細胞成分を精製するための各種技術は当業界にて周知であり、本明細書に記載する容器および方法と一緒に使用することができる。例えば、Becker, et al., Biotech. Advs., 1: 247-61(1983) を参照のこと。ある態様において、溶解試薬の存在が結合を妨げない限り、いずれの捕捉方法でも使用することができる。例えば、タンパク質精製の一般的方法には、目的タンパク質と、アフィニティーマトリックスに高度に特異的に結合する能力のあるアフィニティータグとを含む融合タンパク質の産生が関与する。このように、ある局面において、本発明の容器は、目的タンパク質またはペプチドのアフィニティータグと高度に特異的に結合する能力のある支持捕捉リガンドを含み、その結果目的タンパク質またはペプチドが他のタンパク質および細胞片から単離される。一部の例では、目的タンパク質またはペプチドが、対応する捕捉リガンドに結合する能力のある配列を天然に含む。この例においては、目的タンパク質またはペプチドに結合する能力のある捕捉リガンドが存在する限り、タンパク質が組換え型である必要はない。タンパク質またはペプチドを捕捉するために使用可能な周知の親和性捕捉システムの具体例には、(i) 金属キレートクロマトグラフィー(例えば、ヒスチジンタグとのニッケルまたはコバルト相互作用)、(ii) 免疫原性捕捉システム、例えば抗原抗体相互作用を用いるもの(例えばFLAG(登録商標)ペプチド、c-mycタグ、HAタグ等)、(iii) グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST) 捕捉システム、および(iv) ビオチン-アビジン/ストレプトアビジン捕捉システム、が含まれる。他の技術には、イオン交換クロマトグラフィー(陰イオン交換および陽イオン交換の両方を含む)、疎水性クロマトグラフィー、およびチオ親和性(thiophilic)クロマトグラフィーが含まれる。これら各種の捕捉方法の組み合わせ、例えば混合モードクロマトグラフィー、もまた使用可能である。これら技術は、一般的にタンパク質精製に使用される技術のほんの一部である。疎水性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、および各種のハイブリダイゼーション技術、例えば目的DNAまたはRNAに対して特異性のあるヌクレオチド配列を利用するものは、DNAおよびRNAを精製するためにも一般的に使用される。別の一般的RNA捕捉方法は、ポリ(dT)である。これらの、および他の捕捉システムは当業界にて周知であるので、本明細書では簡潔にのみ説明する。
【0025】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(「IMAC」)は、タンパク質を精製するのに、タンパク質内の特定残基の金属イオンに対する親和性を利用する。IMACにおいて、金属イオンは、固体支持体上に固定化され、金属キレートペプチドを含むタンパク質を捕捉するために使用される。金属キレートペプチドはタンパク質に天然に存在してもよく、あるいはタンパク質が金属キレートペプチドを含むアフィニティータグを有する組換えタンパク質であってもよい。最も一般的に使用される金属イオンの例には、ニッケル (Ni2+)、亜鉛 (Zn2+)、銅 (Cu2+)、鉄 (Fe3+)、コバルト (Co2+)、カルシウム (Ca2+)、アルミニウム (Al3+)、マグネシウム (Mg2+)、マンガン (Mn2+)、およびガリウム (Ga3+)が含まれる。したがって、ある態様において、容器および/または支持体は、表面またはその一部に金属イオンが固定化されており、ここで金属イオンは、ニッケル (Ni2+)、亜鉛 (Zn2+)、銅 (Cu2+)、鉄 (Fe3+)、コバルト (Co2+)、カルシウム (Ca2+)、アルミニウム (Al3+)、マグネシウム (Mg2+)、マンガン (Mn2+)、およびガリウム (Ga3+)からなる群より選択される。好ましくは、金属イオンは、ニッケル、銅、コバルト、または亜鉛である。最も好ましくは、金属イオンは、ニッケルである。
【0026】
金属キレートペプチドを含む各種タンパク質が、この方法で精製可能である。ある態様において、金属キレートペプチドは、Smith et al.の米国特許第4569794号 (1986) (引用により本明細書に含まれる)により詳細に記載されるように、式:His-X(Xは、Gly、His、Tyr、Trp、Val、Leu、Ser、Lys、Phe、Met、Ala、Glu、lle、Thr、Asp、Asn、Gln、Arg、Cys、およびProからなる群より選択される)を有しうる。金属キレートペプチドはまた、Sharma et al.の米国特許第5594115号 (1997) (引用により本明細書に含まれる)により詳細に記載されるように、式:(His-X)n (Xは、Asp、Pro、Glu、Ala、Gly、Val、Ser、Leu、Ile、またはThrからなる群より選択され、nは、3〜6である)を有していてもよい。別の態様において、金属キレートペプチドは、Dobeli et al.の米国特許第5310663号 (1994) (引用により本明細書に含まれる)により詳細に記載されるように、式:(His)y のポリ (His) タグ(yは、少なくとも2〜6である)を含む。金属キレートペプチドの他の例は、当業者に知られている。
【0027】
ある態様において、捕捉リガンドは、国際公開第01/81365号に記載のような金属キレートである。より具体的には、本態様において、捕捉リガンドは、以下の金属キレート構成 (1)に由来する金属キレートである:
【化1】

(式中、Qは、担体であり、
S1は、スペーサーであり、
Lは、-A-T-CH(X)-または-C(=O)-であり
Aは、エーテル、チオエーテル、セレノエーテル、またはアミド結合であり、
Tは、結合、または置換もしくは非置換アルキルもしくはアルケニルであり、
Xは、-(CH2)kCH3、-(CH2)kCOOH、-(CH2)kSO3H、-(CH2)kPO3H2、-(CH2)kN(J)2、または-(CH2)kP(J)2 であり、好ましくは-(CH2)kCOOH または -(CH2)kSO3H であり、
kは、0〜2の整数であり、
Jは、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり、
Yは、-COOH、-H、-SO3H、-PO3H2、-N(J)2、または-P(J)2であり、好ましくは-COOHであり、
Zは、-COOH、-H、-SO3H、-PO3H2、-N(J)2、または-P(J)2であり、好ましくは-COOHであり、
iは、0〜4の整数であり、好ましくは1または2である)。
【0028】
通常、担体Qは、カップリングのため誘導体化されうる固体または可溶性の材料または化合物を含むことができる。固体(または不溶性)担体は、アガロース、セルロース、メタクリル酸コポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、紙、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデン、ポリスルホン、ニトロセルロース、ポリエステル、ポリエチレン、シリカ、ガラス、ラテックス、プラスチック、金、酸化鉄、およびポリアクリルアミドからなる群より選択することができるが、構成の残りの部分を担体Qとカップリングできるように誘導体化されうる不溶性または固体化合物であればいずれであってもよい。可溶性担体には、タンパク質、核酸(DNA、RNA、およびオリゴヌクレオチドを含む)、脂質、リポソーム、合成可溶性ポリマー、タンパク質、ポリアミノ酸、アルブミン、抗体、酵素、ストレプトアビジン、ペプチド、ホルモン、発色色素、蛍光色素、フルオロクローム、または他の検出分子、薬物、有機低分子化合物、多糖類、および構成の残りの部分を担体Qとカップリングできるように誘導体化されうる他の可溶性化合物、が含まれる。ある態様において、担体Qは、本発明の容器である。別の態様において、担体Qは、本発明の容器内部に供される物体である。
【0029】
担体に隣接するスペーサーS1には、飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換、線状もしくは環状、または直鎖もしくは分岐でありうる原子鎖が含まれる。典型的には、スペーサーS1を規定する原子鎖は、約25原子以下で構成されるであろう(別の言い方をすれば、スペーサーの骨格は約25原子以下で構成されるであろう)。より好ましくは、スペーサーS1を規定する原子鎖は、約15原子以下、なお一層好ましくは12原子により構成されるであろう。スペーサーS1を規定する原子鎖は、典型的には、炭素、酸素、窒素、硫黄、セレン、ケイ素、およびリンからなる群より選択され、好ましくは炭素、酸素、窒素、硫黄、およびセレンからなる群より選択される。さらに、鎖原子は、水素以外の原子、例えばヒドロキシ、ケト(=O)、またはアシル、例えばアセチル、で置換されていても、非置換であってもよい。このように、この鎖は所望により、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル領域の間に、1またはそれ以上のエーテル、チオエーテル、セレノエーテル、アミド、またはアミン結合を含んでもよい。スペーサーS1の例には、メチレン、アルキレンオキシ (-(CH2)aO-)、アルキレンチオエーテル (-(CH2)aS-)、アルキレンセレノエーテル (-(CH2)aSe-)、アルキレンアミド (-(CH2)aNR1C(=O)-)、アルキレンカルボニル (-(CH2)aC(=O)-)、およびそれらの組み合わせ(aは通常1〜約20であり、R1は水素またはヒドロカルビル、好ましくはアルキル、である)が含まれる。ある態様において、スペーサーS1は、親水性の中性構造であり、アミン結合もしくは置換基、またはポリペプチドの精製中に電荷を帯びる可能性のある他の結合もしくは置換基を含まない。
【0030】
前述のように、リンカーLは、-A-T-CH(X)-または-C(=O)-でありうる。Lが-A-T-CH(X)-の場合、キレート構成は以下の式と一致する:
【化2】

(式中、Q、S1、A、T、X、Y、およびZは前記の通りである)。この態様において、エーテル (-O-)、チオエーテル (-S-)、セレノエーテル (-Se-)、またはアミド((-NR1C(=O)-)もしくは(-C(=O)NR1-)であり、R1は水素またはヒドロカルビルである)結合は、置換または非置換のアルキルまたはアルケニル領域によって、当該分子のキレート部分と分離される。Tは、結合以外の場合、好ましくは置換もしくは非置換のC1〜C6アルキル、または置換もしくは非置換のC2〜C6アルケニルである。より好ましくは、Aは-S-であり、Tは-(CH2)n-であり、nは0〜6、典型的には0〜4、より典型的には0、1、または2の整数である。Lが-C(=O)-の場合、キレート構成は以下の式と一致する:
【化3】

(式中、Q、S1、i、Y、およびZは前述の通りである)。
【0031】
好ましい態様において、配列-S1-L-は、組み合わせて、炭素、酸素、硫黄、セレン、窒素、ケイ素、およびリンからなる群、より好ましくは炭素、酸素、硫黄、および窒素のみからなる群、さらに好ましくは炭素、酸素、および硫黄のみからなる群より選択される約35原子以下の鎖である。予期される非特異的結合を減少させるため、窒素が存在する場合には、それは好ましくはアミド部分型である。さらに、鎖の炭素原子が水素以外のもので置換されている場合、それらは好ましくはヒドロキシまたはケトで置換されている。好ましい態様において、Lは、アミノ酸、例えばシスチン、ホモシスチン、システイン、ホモシステイン、アスパラギン酸、システイン酸、またはそれらのエステル、例えばそれらのメチルもしくはエチルエステル、に由来する部分(断片または残基と呼ばれることもある)を含む。
【0032】
キレート構成の例には、以下のものが含まれる:
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

(式中、Qは担体であり、Acはアセチルである)。
【0033】
別の態様において、捕捉リガンドは、米国特許第5047513号に記載のタイプの金属キレートである。本態様において、より具体的には、捕捉リガンドは、
式:NH2-(CH2)X-CH(COOH)-N(CH2COOH)2 (xは、2、3、または4である)
のニトリロ三酢酸誘導体に由来する金属キレートである。本態様において、ニトリロ三酢酸誘導体は、前述の担体Qのいずれかに固定化されている。
【0034】
捕捉リガンドがWO01/81365または米国特許第5047513号に記載のような金属キレートであるこれら態様において、金属キレートは、好ましくは、ニッケル(Ni2+)、亜鉛(Zn2+)、銅(Cu2+)、鉄(Fe3+)、コバルト(Co2+)、カルシウム (Ca2+)、アルミニウム (Al3+)、マグネシウム(Mg2+)、およびマンガン(Mn2+)のうちから選択される金属イオンを含む。 特に好ましい態様において、金属キレートは、ニッケル(Ni2+)を含む。
【0035】
本発明の内容において使用可能な別の一般的精製技術は、免疫原性捕捉システムを使用するものである。このようなシステムでは、タンパク質またはペプチド上のエプトープタグにより、支持体上に固定化された対応リガンド(例えば抗体)に対するエピトープタグの親和性に基づいてそのタグが連結したタンパク質を精製することができる。このようなタグの一例は、配列 Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys、すなわちDYKDDDDK (配列番号1)であり、この配列に特異性を有する抗体は、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO)から、FLAG(登録商標)の商標のもと販売されている。このようなタグの別の例は、配列 Asp-Leu-Tyr-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys、すなわちDLYDDDDK(配列番号2)であり、この配列に特異性を有する抗体は、Invitrogen (Carlsbad, CA)から販売されている。このようなタグの別の例は、3 X FLAG(登録商標)配列 Met-Asp-Tyr-Lys-Asp-His-Asp-Gly-Asp-Tyr-Lys-Asp-His-Asp-Ile-Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys (配列番号3)であり、この配列に特異性を有する抗体は、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO)から販売されている。このように、ある態様において、容器は、配列番号1に特異性を有する抗体が固定化されており、別の態様において、容器は、配列番号2に特異性を有する抗体が固定化されている。別の態様において、容器は、配列番号3に特異性を有する抗体が固定化されている。例えば、ある態様において、ANTI-FLAG(登録商標)M1、M2、またはM5抗体(Sigma-Aldrich (St. Louis, MO)より販売)が、容器の内部表面もしくはその一部、および/または容器内のビーズその他の支持体の上に固定化されている。
【0036】
他のタグもまた、基質に結合した対応リガンドに対する親和性に基づき組換えタンパク質を精製するのに使用することができる。そのような他のタグの例には、とりわけ、c-myc、マルトース結合タンパク質 (MBP)、インフルエンザAウィルスヘマグルチニン (HA)、およびβ-ガラクトシダーゼが含まれる。対応リガンドを本発明の容器および/または固体支持体に結合することにより、これらアフィニティータグを含む組換えタンパク質を、本明細書に記載のように他のタンパク質および細胞片から精製することができる。非組換えタンパク質も、そのタンパク質もしくはペプチド配列またはその配列の一部に親和性を有するリガンドを本発明の容器および/または支持体に結合することにより、同様に精製することができる。適当なリガンドの選択は、当業者の能力範囲内である。
【0037】
別の態様において、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)を含むタンパク質は、そのタンパク質を固定化グルタチオンに接触させることによって精製可能である。タンパク質は、GSTのその基質に対する親和性の結果精製される。このようなシステムは、例えば、米国特許第5654176号(引用により本明細書に含まれる)により詳細に記載される。したがって、別の態様において、グルタチオンが、容器の内部表面もしくはその一部、および/または容器内のビーズその他の支持体の上に固定化される。
【0038】
タンパク質はまた、ビオチンまたはビオチンアナログを、アビジン、ストレプトアビジン、またはアビジンもしくはストレプトアビジンの誘導体と組み合わせて用いることにより、精製することもできる。例えば、ある態様において、ストレプトアビジンが本発明の容器および/または支持体上に固定化されている場合、ビオチン標識タンパク質がストレプトアビジンに対するビオチンの親和性に基づき精製可能である。同様に、米国特許第5506121号(引用により本明細書に含まれる)に記載のようなストレプトアビジンタグを含むタンパク質は、ストレプトアビジンに対する当該タグの親和性に基づいて精製することができる。別の態様において、ビオチンが本発明の容器および/または固体支持体に固定化されている場合、アビジンまたはストレプトアビジンタグを含むタンパク質がアビジンおよびストレプトアビジンに対するビオチンの親和性に基づき精製可能である。アビジン/ビオチンまたはビオチン/ストレプトアビジン親和性精製技術の使用は、当業界にて周知であり、例えば、Sambrook and Russell, Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 2001に記載される。
【0039】
タンパク質およびDNAまたはRNAはまた、イオン交換クロマトグラフィーまたは疎水性クロマトグラフィーを用いて精製することができる。イオン交換クロマトグラフィーでは、固体支持体に固定化された荷電粒子が、表面電荷を有するタンパク質またはDNAに可逆的に結合する。例えば、イオン交換捕捉リガンドは、窒素基、カルボキシル基、リン酸基、またはスルホン酸基を含んでよい。イオン交換捕捉リガンドの例には、ジエチルアミノエチル (DEAE)、ジエチル[2-ヒドロキシプロピル]アミノエチル (QAE)、カルボキシメチル (CM)、およびスルホプロピル (SP)、およびホスホリルが含まれる。疎水性クロマトグラフィーでは、表面に疎水基を有するタンパク質またはDNAが、固体支持体に固定化された不溶性疎水基との疎水性相互作用に基づき精製される。疎水性リガンドの例は、シリカ、フェニル基、ヘキシル基、オクチル基、およびC18基である。このように、ある態様において、本発明の容器および/または支持体の表面上に荷電粒子が固定化される。別の態様において、本発明の容器および/または支持体の表面上に不溶性疎水基が固定化される。
【0040】
他の好適な捕捉リガンドには、例えば、ホルモン、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、レクチン、酵素、酵素基質、酵素阻害物質、補助因子、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(例えばオリゴdT)、ポリヌクレオチド、炭水化物、糖、オリゴ糖、薬物、および色素が含まれる。
【0041】
他にも様々な精製技術が当業界で知られており、本発明の容器および方法とともに使用可能である。そのような技術の一部は、例えば、Kenney & Fowell, Methods in Molecular Biology, Vol. 11, Practical Protein Chromatography (1992);Hanson & Ryden, Protein Purification: Principles, High Resolution Methods, and Applications (1989);Dean, et al., Affinity Chromatography: A Practical Approach (1987);Hermanson, et al., Immobilized Affinity Ligand Techniques (1992);and Jakoby & Wilchek, Affinity Techniques, Enzyme Purification, Part B, in Methods in Enzymology, Vol. 34 (1974)に記載される。
【0042】
細胞成分が捕捉リガンドに結合したら、例えば水または緩衝液を用いて、細胞片を洗浄除去すればよい。洗浄後、結合した細胞成分は、特徴決定または定量のため、捕捉リガンドとの会合から解離させて取り除くことができる。目的細胞成分の解離は、pH変化または温度変化を含む各種溶出技術を用いて、あるい競合的結合により、達成することができる。特異的溶出技術は、どの捕捉システムを用いたかに依存して様々であろうが、当業者は容易に理解できるであろう。あるいは、捕捉成分は、固定化リガンドに結合したままで検出することができる。様々な分析技術が知られており、例えば、なかでも、ELISA、酵素学的分析、およびタンパク質検出が含まれる。
【0043】
3.ポリマー性コーティング
ある態様において、捕捉リガンドは、容器の内部表面に直接結合する。あるいは、捕捉リガンドは、容器表面を覆うポリマー性マトリックスに結合してもよい。別の言い方をすれば、捕捉リガンドがポリマー性マトリックスに直接結合し、そのポリマー性マトリックスが次に容器の内部表面に結合するか、または他の方法で固定化されてもよい。例えば、捕捉リガンドは、ポリスチレンまたは他のプラスチック基層を覆う誘導体化デキストランポリマーマトリックスに結合した金属キレート構成であってよい。このように、ポリマー性マトリックスは、(下の基層より大きな表面積を提示するマトリックスを有することにより)有効表面積を増大させるのに使用することができ、それによって捕捉リガンドの密度を増加させることができる。または、あるいは加えて、ポリマー性マトリックスは、容器壁より疎水性が高くても低くてもよく、それによって基層の自然表面より親水性が望ましく高い(あるいは低い)表面を提示しても良い。
【0044】
ポリマー性コーティングは、様々な方法により形成または適用することができる。例えば、ポリマー性コーティングは、インサイツ(in situ)重合により形成することができる。本方法では、モノマーの混合物を開始剤とともに溶媒に溶かし、活性化後、容器壁の表面上で重合を行う。あるいは、完全に成長したポリマーを、容器壁の表面に固定化してもよい。このような方法は、例えば、Sundberg et al.の米国特許第5624711号に記載される。
【0045】
ポリマー性コーティングが適用される好ましい態様において、ポリマー性コーティングは、容器壁に結合する2種類のポリマーの混合物に由来する。通常、そのようなポリマーの一方または両方が反応基を含み、反応基は、活性化されるとそのような反応基を含むポリマー分子を容器壁に化学的に結合させ、および/または当該分子同士または当該分子と他のポリマー分子とを架橋する。さらに、そのようなポリマーの一方または両方が、本明細書に記載の捕捉リガンドのための結合ポイントを提供する活性化可能基を含んでも良い。そのようなポリマー性コーティングおよびそれらの形成方法は、一般的には米国特許出願公開第2003/0032013号 A1に記載される。
【0046】
基質上のポリマーマトリックスの密度は、特に、用いる特定のポリマーおよび反応基の選択および量によって制御することができる。ポリマーの分子量、反応基の数およびタイプ、並びに捕捉リガンドの数および分子量は、以下に詳説するように選択し、調節することができる。ポリマーマトリックスは、基質全体に結合してもよく、基質の一部だけに結合してもよい。例えば、容器壁の一部だけ、またはマルチウェルプレートのウェルの一画分にだけ、ポリマーマトリックスが提供されてもよい。
【0047】
ポリマー混合物から形成されるポリマー性マトリックス
ポリマーマトリックスを含む容器は、繰り返し単位を有するポリマー分子を複数含むポリマー組成物を容器基質に接触させることによって製造することができ、ここでポリマー分子の少なくとも一部は少なくとも1つの反応基と共有結合しており、ポリマー分子の少なくとも一部は少なくとも1つの捕捉リガンド(または活性化可能基)と共有結合しており、ポリマー分子の平均分子量は少なくとも100 kDaであり、ポリマー分子の少なくとも25%は少なくとも1つの反応基および少なくとも1つの捕捉リガンドと共有結合している。反応基は活性化され、ポリマー分子の少なくとも一部を直接容器基質に共有結合させ、またポリマー分子同士の架橋を誘導して容器基質に結合したポリマーマトリックスを形成させる。
【0048】
通常、ポリマーマトリックスは、天然ポリマー(もしくはその誘導体)、合成ポリマー(もしくはその誘導体)、天然ポリマー(もしくはその誘導体)の混成物、合成ポリマー(もしくはその誘導体)の混成物、または1もしくはそれ以上の天然ポリマー(もしくはその誘導体)および1もしくはそれ以上の合成ポリマー(もしくはその誘導体)の混成物を含むことができる。通常、天然ポリマーは、生体系において産生された分岐または直鎖ポリマーである。天然ポリマーの例には、限定はされないが、オリゴ糖、多糖類、ペプチド、タンパク質、グリコーゲン、デキストラン、ヘパリン、アミロペクチン、アミロース、ペクチン、ペクチン多糖類、デンプン、DNA、RNA、およびセルロースが含まれる。使用可能な具体的な修飾天然ポリマーは、デキストラン分子に沿った直線上の様々な位置に過ヨウ素酸酸化および還元的アミノ化または当業者に知られる他の方法を用いてリジンを共有結合で挿入することによって製造されたデキストラン−リジン誘導体である。これに対して、合成ポリマーは、人工の分岐または直鎖ポリマーである。合成ポリマーの例には、プラスチック、エラストマー、および接着剤、付加、縮合、または触媒誘発重合化反応、すなわち縮重合、の結果製造されたオリゴマー、ホモポリマー、およびコポリマーが含まれる。天然であっても合成であっても、ポリマーは、酸化によって、あるいは光反応基、親和性リガンド、イオン交換リガンド、疎水性リガンド、他の天然もしくは合成ポリマー、またはスペーサー分子の共有結合によって、誘導体化または修飾することができる。
【0049】
このように、ポリマーマトリックスは、幾つかの相異なるポリマータイプを1またはそれ以上含むことができる。ポリマーの例には、限定はされないが、セルロースに基づくもの、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、および酪酸セルロース;アクリル系のもの、例えばヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、グリセリルアクリラート、グリセリルメタクリラート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、およびメタクリルアミドを重合したもの;ビニル、例えばポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコール;ナイロン、例えばポリカプロラクタム、ポリラウリルラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド(polyhexamethylene adipamide)、およびポリヘキサメチレンドデカンジアミド(polyhexamethylene dodecanediamide);ポリウレタン;ポリ乳酸;直鎖多糖類、例えばアミロース、デキストラン、キトサン、ヘパリン、およびヒアルロン酸;および分岐多糖類、例えばアミロペクチン、ヒアルロン酸、およびヘミセルロースが含まれる。2またはそれ以上の相異なるポリマー分子の混成物が使用可能である。例えば、ある態様において、ポリマー分子は、デキストランおよびヘパリンの混合物である。他の態様において、デキストランは、ポリLys-Gly(リジン1につきグリシン20)と混合される。
【0050】
通常、ポリマー分子の平均分子量(共有結合した官能基を含むポリマー全体の分子量)は、好ましくは少なくとも100 kDaである。ある態様において、ポリマー分子の平均分子量は、300 kDa〜6,000 kDaである。ある態様において、ポリマー分子の平均分子量は、400 kDa〜3,000 kDaである。別の態様において、ポリマー分子の平均分子量は500 kDa〜2,000 kDaであり、この平均分子量はいずれも、多角光散乱および屈折率検出を用いてゲルろ過クロマトグラフィーによって測定されるポリマーの重量平均モル質量(Mw)の値である。存在する全ての鎖長のポリマー分布の平均Mwは、屈折率により測定されたピークの選択に基づき、屈折率値のピーク選択の開始および終了基準は屈折率ベースラインの3倍である。実施例に示すように、好ましいポリマーは、平均Mwが1,117 kDaであり、分子量範囲が112 kDaから19,220 kDaである。
【0051】
ある態様において、ポリマーマトリックスは、ポリマー混合物を固定化することで形成され、ここで当該混合物中のポリマー分子のあるサブセットは、捕捉リガンド、または後に捕捉リガンドと共有結合することができる活性化可能基を含み、ポリマー分子の別のサブセットは、(前述のように、ポリマーを容器壁に結合させるため、および架橋させるための)少なくとも1つの反応基と共有結合している。このポリマー分子間の反応基の相互作用は、三次元マトリックスの形成を可能とする。反応基は、熱化学的または光化学的に反応する(光反応基を含むポリマーは、光標識されている、と言われる)。
【0052】
ポリマー分子に捕捉リガンド(または活性化可能基)が共有結合している場合、捕捉リガンド(または活性化可能基)のポリマー繰り返し単位に対する比率は、それぞれ、好ましくは約1:1〜約1:100(捕捉リガンド:ポリマー繰り返し単位)である。例えば、ある態様において、捕捉リガンド(または活性化可能基)のポリマー繰り返し単位に対する比率は、それぞれ、好ましくは約1:1〜約1:20(捕捉リガンド:ポリマー繰り返し単位)である。ポリマー分子に反応基が共有結合している場合、それぞれ、反応基のポリマー繰り返し単位に対する比率は好ましくは約1:600未満であり、より好ましくは、反応基のポリマー繰り返し単位に対する比率は好ましくは約1:200未満である。
【0053】
反応基の例には、限定はされないが、クロマトグラフィー媒体の調製に使用される反応基が含まれ、それには以下のものが含まれる:エポキシド、オキシラン、N-ヒドロキシスクシンイミド、アルデヒド、ヒドラジン、マレイミド、メルカプタン、アミノ基、アルキルハライド、イソチオシアナート、カルボジイミド、ジアゾ化合物、トレシルクロライド、トシルクロライド、およびトリクロロ-S-トリアジン。好ましい反応基は、α, β不飽和ケトン光反応基である。光反応基の例には、アリルアジド、ジアザレン(diazarene)、β−カルボニルジアゾ、およびベンゾフェノンが含まれる。反応種は、ニトレン、カルベン、およびラジカルである。これら反応種は通常、共有結合形成能を有する。好ましい光反応基は、光活性化可能な不飽和ケトン、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、およびそれらの誘導体である。光反応基は、光に接すると活性化され、固体基質表面に共有結合することができる。例えば、光反応基は、光の強度および暴露持続時間に依存して、約3ジュール/cm2〜約6ジュール/cm2のUV光に暴露することより活性化することができる。暴露時間は、光源の強度に依存して、最低0.5秒/cm2〜約32分/cm2の範囲であってよい。好ましい態様において、光反応基は、0.5秒/cm2〜5秒/cm2にて、約1,000ミリワット/cm2〜約5,000ミリワット/cm2、または約1,000ミリワット/cm2〜約3,000ミリワット/cm2、または約1,500ミリワット/cm2〜約2,500ミリワット/cm2で光に暴露されることによって活性化される。
【0054】
ある態様において、捕捉リガンドおよび/または反応基は、スペーサーを介してポリマー分子に共有結合する。ポリマーマトリックスの形成に関して使用する場合、スペーサーは、ポリマー分子を1またはそれ以上の捕捉リガンドまたは反応基と接続する、分子または共有結合した分子の組み合わせである。スペーサーは、いずれかのポリマー、ポリマー組成物、またはポリマーマトリックスと同じであっても異なってもよい。当業者は、多くのタイプのスペーサーが利用可能であり、またその選択および使用は、ポリマーマトリックスの目的とする適用に依存し、例えばリジン分子またはアミノカプロン酸分子であることを理解しているであろう。
【0055】
スペーサーは、アミド形成を含む数多くの様々な化学反応によって、光反応基に共有結合することができる。例えば、炭化水素スペーサーを使用すると、ポリマーマトリックスの安定性が劇的に増強される。スペーサーを有する光反応基は、好ましいポリマーデキストランの第1アミンの部分に、全モノマーすなわち全グルコースに対して調節された比率にて、アミド結合により結合するとこができる。スペーサーを有する光反応基の例には、限定はされないが、ベンゾ安息香酸アミノカプロン酸(benzobenzoic aminocaprinic)、N-スクシニミジル-N’-(4-アジド-サリチル)-6-アミノカプロアート、N-スクシニミジル-(4-アジド-2-ニトロフェニル)-アミノブチラート、およびN-スクシニミジル-(4-アジド-2-ニトロフェニル)-6-アミノカプロアートが含まれる。これらのスペーサーを有する光反応基は、ポリマーと反応して、光反応基に結合した元のスペーサーに加えてさらにリジンを含むスペーサーを形成することができる。スペーサーはまた、リジンおよびアミノカプロン酸のように複数の分子を組み込んだ後に、さらなるスペーサーを含む、または含まない光反応基を結合して製造することができる。ポリマー分子に共有結合した反応基の例は、反応基の1またはそれ以上の化学成分に、アミノ基由来の反応性の水素の消失によって結合したリジン部分または残基を含むスペーサーである。ある態様において、リジンスペーサーによる第1アミンの密度は、所望の捕捉リガンドおよび反応基の密度を表す。1〜100個のポリマー繰り返し単位につき1部分の範囲で第1アミンまたはスペーサーのような他の部分を含む修飾ポリマーは、当業界で知られる方法によって製造することができる。所望量の反応基を選択的に組み込むためのこれら部分の修飾もまた知られている。例えば、リジンスペーサーによる第1アミンの密度は、デキストランポリマーの繰り返しグルコース単位12個につき平均1個である。この密度は、望ましい光反応基の組み込み、例えば繰り返しモノマー200個につき光反応基1個未満、と比較すると非常に高い。ポリマー製造中の溶液における第1アミンの濃度は4.5μmol/mLであっても、所望の光反応基の組み込みは0.09μmol/mL程度であろう。つまり、この例では、必要とされる反応性エステルを介する光反応基の組み込みの50倍を上回る第1アミンが存在するであろう。このアミン濃度で、反応性エステルを介する光反応基が所望の組み込みレベルにて添加されると、組み込み効率は90%を超える。反応性エステルを含む光反応基の量を変化させることによって、モノマー200個につき反応基1個未満のいずれの組み込みレベルも常に達成可能である。残りの各スペーサー部分またはアミンを捕捉リガンド結合ポイントに効率的に変換するために必要な方法は、当業界にて知られている。数倍過剰量のアミン反応性(例えば反応性エステル)誘導体化試薬が、1工程にて直接、あるいは複数工程を経て捕捉リガンドを結合するために使用される。ある場合には、誘導体化試薬は、その反応性に依存して、後の捕捉リガンド結合に関する化学量論を決定づけるであろうさらなる反応基を提示すると考えられる。低いリガンド密度が望まれる場合、それに応じてはじめのアミン反応性誘導体化試薬も少なくなるであろう。一部の例において、選択的修飾後に残存する遊離アミンは、通常アセチル化により誘導体化されるであろう。
【0056】
基質表面のコートにおける第1工程は、ポリマー組成物をコートすべき基質表面に接触させることである。ポリマー組成物を容器表面に接触させるのに用いられる方法は、接触すべき表面の寸法および形状に依存する。容器は、前述のように各種の天然および合成材料から製造することができる。容器表面は、コーティングの前に誘導体化することができる。事前の誘導体化は、当業者に知られるいずれかの方法、例えばシリカおよびガラスのシラン化、およびアミン、カルボキシル基、アルコール、アルデヒドその他の反応基を組み込むためのポリスチレンまたはポリプロピレンのプラズマ処理によって、あるいはその化学組成を変化させる表面の化学修飾によって、行うことができる。
【0057】
要すれば、基質表面を化学的に修飾し、ポリマー分子が有する反応基との共有結合を促進させることができる。このような修飾には、基質表面を炭化水素で処理すること、あるいは表面をプラズマ処理することが含まれる。化学修飾の代表例は、ガラスのシラン化である。好ましい態様において、クロロホルムに溶かしたパラフィルム溶液(1 mg/mL)にMALDIプレートを浸し、乾燥させる。
【0058】
マルチウェルプレート、チューブ、または表面もしくは0.1 mm2を超えるその一部をコートする場合、コートすべき容器またはプレートの一部、例えばウェル、にポリマー組成物を注ぐか、微量分注するか、または移動させることによって、そのポリマー組成物を容器表面に接触させればよい。あるいは、コートすべきプレート、チューブ、容器表面、または支持体の2 mm2を超える一部もまた、容器表面がポリマー組成物と接触するようにポリマー組成物溶液にその表面の一部を浸すことによって、コートすることができる。
【0059】
容器表面に結合するポリマーの量は、基質に添加するポリマー組成物の濃度および量を変化させることによって調節または制御することができる。ポリマー組成物を表面に接触させたら、その後反応基を活性化する前にポリマー組成物を容器表面上で乾燥させればよく、例えば暗所にて20〜50℃で通風しながらインキュベーションすることによって蒸発させ、乾燥させればよい。ポリマー組成物は、溶媒を除去するため、凍結乾燥によって、または風乾を含む他のいずれかの乾燥手段によって蒸発させればよい。反応基が乾燥工程を受けて早期に活性化されることがない限り、各種乾燥方法が使用可能である。基質は、目視にて水分が検出できない場合に、十分に乾燥しているとみなす。乾燥の間に、ポリマー組成物のポリマー分子は、基質表面に結合するのに、あるいはポリマー組成物の他のポリマーと互いに接触して分子間または分子内架橋を促進するのに適応するようになる。
【0060】
乾燥されたコート後の固体表面は、その後、反応基が基質と共有結合するように処理される。光反応基の場合は、照射によって活性化することができる。活性化とは、反応基の基質への結合を引き起こす外部刺激の適用である。具体的には、共有結合が基質と反応基との間に形成され、例えば炭素-炭素結合が形成される。
【0061】
光活性化ポリマーを炭化水素に富む基質に結合させるのに必要な全エネルギー(ジュールで測定された吸収量)を供給することができるUV照射系は、多数存在する。照射は、区別可能かつ既知の照射波長パターンを有する水銀ランプによって行うことができる。照射強度は、3-6 ジュール/cm2の範囲のジュールが必要である。ジュール測定には、時間因子(1ジュール=ワット×秒)が包含される。ある態様において、照射は、マイクロ派放射によって点灯する無電極水銀ランプによって行われる。ある6インチ・500ワット/インチのランプは、UVAの範囲でランプから基質の距離を2インチとして測定すると、定格出力が2,500ミリワット/cm2である。このランプは、出力80%または約2,000ミリワット/cm2でうまく作動することができる。測定した照射強度(UVA/UVB、約250〜350 nm)が約9.0ミリワット/cm2の標準的低密度UV照射箱を用いて試料プレートを調製すると、良好な結合を提供するために10ジュール/cm2(10,000 ミリジュール)を超える全エネルギーが必要である。この場合、試料プレートを照射箱中で20分以上インキュベートする必要がある。無電極水銀ランプ(2,000 ミリワット/cm2)照射系を用いて調製されたプレートは、3.5ジュール/cm2の全エネルギー量に対して必要なのはたった1.75秒/cm2である。より高い強度の照射なら、より効率的に光活性化基を活性化することができ、その結果全体として必要なエネルギー量が少なくなる。
【0062】
ある態様において、活性化は、UVA/UVB光を9.0ミリワット/cm2で約30分間照射して、全エネルギーを約15,000 ミリジュール/cm2とすることにより行うことができる。好ましい態様において、活性化は、UVA/UVB光を2,000ミリワット/cm2で照射して、全エネルギーを約3ジュール/cm2〜約4ジュール/cm2とすることにより行うことができる。使用するインキュベーション時間および全エネルギー量は、ポリマーに結合した光反応基に依存して変化しうる。最も好ましい態様において、活性化は、8フィート/分にセットされたコンベヤーベルトを有し、ランプ出力が400 ワット/インチである無電極水銀ランプを2,000ミリワット/cm2で照射するFusion UV Conveyor Systemによる光照射によって、行うことができる。放射計のIL290 Light Bugは、コンベヤーベルトによって作動し、3,000〜4,000ミリジュール/cm2の範囲で所望のエネルギーを確認する。例えば、マルチウェルプレートの場合、1時間につき800プレート、または4〜5秒につき1プレートにて光が照射される。
【0063】
ポリマー組成物の濃度は、溶媒1 mlあたりの全ポリマー量を変化させることによって調節可能である。1 cm2あたりのポリマー組成物またはポリマーマトリックスの濃度が高い方が好都合な場合、当該組成物のポリマー分子を溶媒和するために使用する溶媒は少なくて良い。1 cm2あたりのポリマー組成物またはポリマーマトリックスの濃度が低い方が好都合な場合、当該組成物のポリマー分子を溶媒和するのにより多くの溶媒を使用すればよい。言い換えれば、マルチウェルプレートのような固体表面をポリマー組成物の濃度を0.02〜1.0 mg/mL(溶媒)に調節してコートすることにより、表面に結合した全ポリマーマトリックスの範囲は選択可能であろう。ポリマー組成物は、完全に可溶性であっても、不溶性ポリマーが懸濁されていてもよい。ポリマー組成物を製造するために使用可能な溶媒には、水、アルコール、ケトン、およびこれらのいずれかまたは全ての混合物が含まれる。溶媒は、使用される基質に適合することが好ましい。組成物のポリマーは互いに架橋しうるので、流体状の組成物溶液がゲルに変化する場合がある。あるいは、溶液は、スラリーの形態で調製される場合もある。前記組成物に使用可能な溶媒の例には、水、アルコール、ケトン、およびこれらのいずれかまたは全ての混合物が含まれる。
【0064】
非結合ポリマーは、好適な溶媒中でインキュベートして非結合ポリマーを溶かして除去することにより、取り除くことができる。例えば、マルチウェルプレートを、MOPS緩衝液にて25℃で一晩インキュベートし、MPTS緩衝液および蒸留水でそれぞれ3回洗浄し、ヒビタン溶液で洗浄し、風乾し、包装し、そして常温より低温(2〜8℃)で保存すればよい。残りのポリマーが、ポリマーマトリックスを形成する。
【0065】
その結果得られるポリマーでコートされた基質は、好ましくは少なくとも2μg/cm2の密度、より好ましくは4μg/cm2〜30μg/cm2の密度、ある態様において6μg/cm2〜15μg/cm2の密度にてポリマーマトリックスを含む。したがって、ポリマーマトリックスにおける捕捉リガンド(または活性化可能基)の密度は、ポリマー分子に共有結合する捕捉リガンドの数および/または分子量を調節することによって制御することができる。通常、ポリマーマトリックスにおける捕捉リガンド(または活性化可能基)の密度は、好ましくは少なくとも1 nmol/cm2である。ある態様において、捕捉リガンド(または活性化可能基)の密度は、約1.2 nmol/cm2〜約185 nmol/cm2である。別の態様において、捕捉リガンド(または活性化可能基)の密度は、約1.5 nmol/cm2〜約90 nmol/cm2、または約1.8 nmol/cm2〜約15 nmol/cm2である。結果として、ポリマーマトリックスは、分子量が3.5 kDa未満の目的分子を少なくとも1 nmol/cm2で結合することができる。
【0066】
好ましい態様において、容器基質と接触したポリマー分子は少なくとも1つの捕捉リガンド(または活性化可能基)と共有結合しており、またそのポリマー分子の少なくとも一部は反応基と共有結合していない。反応基と捕捉リガンドの両方が共有結合しているポリマー分子の割合は、25%〜80%ありうる。別の態様において、反応基と捕捉リガンドの両方が結合している割合は、40%〜75%であってよい。さらに別の態様において、反応基と捕捉リガンドの両方が結合している割合は、50%〜60%でありうる。好ましい態様において、反応基と捕捉リガンドの両方が共有結合しているポリマー分子の割合は、約50%である。反応基を有するポリマー分子と有さないポリマー分子の混合物を使用すると、三次元ポリマーマトリックスの機能的形成が非常に増強される。
【0067】
要すれば、形成されたポリマーマトリックスにおける捕捉リガンドは、例えば異なる捕捉リガンドの付加により、またはその既存の捕捉リガンドの化学修飾により、共有結合または非共有結合によって誘導体化することができ、それによりさらに多様な目的分子を高度に捕捉することが可能となる。
【0068】
ある態様において、容器はマルチウェルポリスチレンプレートであり、ポリマーコーティングはデキストランポリマー混合物に由来し、捕捉リガンドはニッケルキレートであり、ポリマーマトリックスの捕捉リガンド密度は1.5 nmol/cm2〜7.5 nmol/cm2である。 他の態様において、捕捉リガンドはガリウムまたは鉄キレートであるか、あるいは捕捉リガンドはグルタチオンである。
【0069】
別の態様において、容器はマルチウェルポリプロピレンプレートであり、ポリマーコーティングはデキストランポリマー混合物に由来し、捕捉リガンドはオリゴヌクレオチドである。
【0070】
さらなる態様において、容器はマルチウェルポリスチレンプレートであり、ポリマーコーティングはデキストランポリマー混合物に由来し、捕捉リガンドはストレプトアビジンであり、ポリマーマトリックスの捕捉リガンド密度は1.5μg/cm2〜7.5μg/cm2である。
【0071】
さらに別の態様において、容器はマルチウェルポリスチレンプレートであり、ポリマーコーティングはデキストランポリマー混合物に由来し、捕捉リガンドはタンパク質 A、タンパク質 G、タンパク質 L、またはそれらの混合物からなる群より選択され、ポリマーマトリックスの捕捉リガンド密度は1.5μg/cm2〜7.5μg/cm2である。
【0072】
別の態様において、容器はポリプロピレンカラムであり、ポリマーコーティングはデキストランポリマー混合物に由来し、捕捉リガンドはニッケルキレートである。
【0073】
ポリマーマトリックスを含む容器は、細胞を溶解し、得られた溶液から目的の細胞成分を単離するため、本明細書中で別途詳述される溶解試薬と組み合わせて使用することができる。溶解試薬は、例えば以下に記載するようないずれかの好適な方法で容器内に供されればよい。ある態様において、溶解試薬は、ポリマーマトリックスの少なくとも一部に吸着される。別の態様において、溶解試薬は、容器内でポリマーマトリックスの上に自由流動粉末として存在する。そして、宿主細胞を含む溶液を、ポリマーマトリックスおよび溶解試薬を含む容器に添加すればよい。溶解試薬により一部または全ての細胞成分が宿主細胞から放出されたら、ポリマーマトリックスに存在する捕捉リガンドによって目的の細胞成分を細胞溶液から単離することができる。
【0074】
ポリマーマトリックスは、分子量が3.5 kDa〜500 kDaの目的分子を0.5μg/cm2〜20μg/cm2にて、分子量が10 kDa〜500 kDaの目的分子を1μg/cm2〜20μg/cm2にて、分子量が10 kDa〜350 kDaの目的分子を2μg/cm2〜20μg/cm2にて、分子量が10 kDa〜350 kDaの目的分子を3 μg/cm2〜15 μg/cm2にて結合できるように構築することができる。ある態様において、ポリマーマトリックスは、分子量が10 kDa〜350 kDaの目的分子を4μg/cm2〜10μg/cm2にて結合することができる。ある態様において、ポリマーマトリックスは、分子量が350 kDaまでの目的ポリペプチド分子を少なくとも2μg/cm2(ポリマーマトリックス)にて結合することができる。
【0075】
4.溶解試薬
本発明の容器は、宿主細胞からのペプチド、タンパク質、または核酸のような細胞成分の抽出、または抽出および単離を補助するため、溶解試薬を含む。ある態様において、溶解試薬は組成物であり、宿主細胞の膜を崩壊させ、その内容物を溶解試薬を含む溶液中に放出させる濃度で存在する。別の態様において、溶解試薬は、細胞成分の一部を放出させるのに十分な程度に膜を透過性とするのみであり、全ての細胞成分を放出させる必要はない。
【0076】
溶解試薬は、各種方法によって容器内に供することができる。ある態様において、溶解試薬は、容器の内部表面(または、存在するならば、容器表面を覆うポリマーコーティング)に(乾燥組成物として)吸着される。そのような態様の1つにおいて、例えば、溶解試薬は、容器の側壁構造の少なくとも一部に吸着される。別の態様において、溶解試薬は、容器の底の少なくとも一部に吸着される。別の態様において、溶解試薬は、容器の底および側壁構造の各々の少なくとも一部に吸着される。所望により、容器がポリマーマトリックスを含む場合、溶解試薬は、ポリマーマトリックスの表面の少なくとも一部に吸着される。別の態様において、溶解試薬は、容器容量内にゆるい結びつきで含まれるか、または容器の内部表面に接着された別の物体、例えばビーズ、ロッド、メッシュ(例えばフィルター)、または他の多孔質体等の支持体に吸着される。このような支持体および容器本体は、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス、ナイロン、ポリアクリルアミド、セルロース、ニトロセルロース、他のプラスチックポリマー、金属、マグネタイト、または他の合成材料により構成されていてもよい。別の態様において、溶解試薬は、容器の内部表面の少なくとも一部、および容器容量内にゆるい結びつきで含まれるか、または容器の内部表面に接着された別の物体、例えばビーズ、ロッド、メッシュ(例えばフィルター)、または他の多孔質体等の支持体に吸着される。
【0077】
溶解試薬でコートされた表面の表面積の比率(すなわち、コートされた内部表面および/または容器容量内に含まれるコートされた物体の表面積の合計)は、本発明の一局面にしたがって調節することができる。ある態様において、表面積:容量の比率、すなわちSA: V(SAはコートされた容器内部表面および容器容量内に含まれるコートされた物体の表面の表面積であり、Vは容器容量である)は、約4 mm2/μl未満である。別の態様において、この表面積:容量の比率は、約3 mm2/μl以下である。別の態様において、この表面積:容量の比率は、約2 mm2/μl以下である。別の態様において、この表面積:容量の比率は、約1 mm2/μl以下である。
【0078】
容器内部表面上および/または容器容量内に含まれる物体上の溶解試薬のコーティングは、典型的には乾燥した材料、例えば水分含有量が約5重量%以下の組成物、として吸着される。あるいは、溶解試薬は、ゲルまたはペーストの形で、すなわち粘度が約10,000センチポイズを超える材料の形態で施して、内部表面または容器内部表面の一部、あるいは加えてそこに含まれる物体、をコートしてもよい。
【0079】
別の態様において、溶解試薬は、容器内部表面上または容器容量内に含まれる物体上の吸着層としてでなく、材料塊として、例えばマトリックス、顆粒、錠剤、または自由流動粉末として容器に供されて、容器内に存在してもよい。このように、例えば、溶解試薬は、捕捉リガンドと別に容器内に設置される凍結乾燥マトリックスまたは凍結乾燥粉末であってよい。ある態様において、凍結乾燥溶解試薬塊は、捕捉リガンドが結合した樹脂層上に配置される。通常、微細な粒子ほど大きな粒子よりも速く溶ける傾向がある。溶解試薬の消失および/または汚染の危険を最小限にとどめるため、容器の口にふたをつけることが好ましい。
【0080】
別の態様において、溶解試薬は、溶けた成分またはスラリー成分として容器中に存在してもよい。宿主細胞を含む溶液または懸濁液の望ましくない希釈を避けるため、この態様において、溶解試薬が溶けた、またはスラリー化された液体は、溶解試薬を高濃度で含むことが好ましく、例えば約10重量%を超える濃度である。別の態様において、溶解試薬の濃度は、約20重量%を超える濃度である。ここでも同様に、溶解試薬の消失および/または汚染の危険性を最小限にするため、容器をふたで覆うことが好ましい。
【0081】
通常、溶解試薬は、化学的または酵素的に宿主細胞から目的細胞成分を放出させるいずれの組成物または組成物の組み合わせであってもよい。加えて、溶解試薬は、所望によりその成分の保護、例えば分解からの保護を供するものであってもよい。したがって、溶解試薬には、界面活性剤、溶解酵素、カオトロピック試薬、またはそれらの組み合わせを含まれうる。溶解試薬にはさらに、緩衝液、消泡剤、充てん剤、処理酵素、酵素阻害剤、またはペプチド、タンパク質、または核酸のような細胞成分の抽出および単離を補助する他の添加剤が含まれうる。
【0082】
ある態様において、溶解試薬は、界面活性剤を含む。各種界面活性剤が本発明において使用可能であり、それには陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、および両性イオン性界面活性剤が含まれる。界面活性剤の例には、以下が含まれる:ケノデオキシコール酸;ケノデオキシコール酸ナトリウム塩;コール酸;デヒドロコール酸;デオキシコール酸;デオキシコール酸メチルエステル;ジギトニン;ジギトキシゲニン;N, N-ジメチルドデシルアミンオキシド;ドキュセートナトリウム塩;グリコケノデオキシコール酸ナトリウム塩;グリココール酸水和物;グリココール酸ナトリウム塩水和物;グリコデオキシコール酸一水和物;グリコデオキシコール酸ナトリウム塩;グリコリトコール酸 3-硫酸二ナトリウム塩(glycolithocholic acid 3-sulfate disodium salt);グリコリトコール酸エチルエステル;N-ラウロイルサルコシンナトリウム塩;N-ラウロイルサルコシン;ドデシル硫酸リチウム;ルゴール液;Niaproof 4, Type 4 (すなわち、7-エチル-2-メチル-4-ウンデシル硫酸ナトリウム塩; 7-エチル-2-メチル-4-ウンデシル硫酸ナトリウム);1-オクタンスルホン酸ナトリウム塩; 1-ブタンスルホン酸ナトリウム; 1-デカンスルホン酸ナトリウム; 1-ドデカンスルホン酸ナトリウム;1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム無水物;1-ノナンスルホン酸ナトリウム;1-プロパンスルホン酸ナトリウム一水和物; 2-ブロモエタンスルホン酸ナトリウム;コール酸ナトリウム水和物;コール酸ナトリウム;デオキシコール酸ナトリウム;デオキシコール酸ナトリウム一水和物;ドデシル硫酸ナトリウム;ヘキサンスルホン酸ナトリウム無水物;オクチル硫酸ナトリウム;ペンタンスルホン酸ナトリウム無水物;タウロコール酸ナトリウム;タウロデオキシコール酸ナトリウム;タウロケノデオキシコール酸ナトリウム塩;タウロデオキシコール酸ナトリウム塩一水和物;タウロヒオデオキシコール酸ナトリウム塩水和物;タウロリトコール酸 3-硫酸二ナトリウム塩;タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム塩;Trizma(登録商標)ドデシル硫酸塩(すなわち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンラウリル硫酸塩);ウルソデオキシコール酸;臭化アルキルトリメチルアンモニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム;塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム;臭化ベンジルドデシルジメチルアンモニウム;ベンジルトリメチルアンモニウムテトラクロロヨーデイト(benzyltrimethylammonium tetrachloroiodate);臭化セチルトリメチルアンモニウム ;臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム;臭化ドデシルエチルジメチルアンモニウム;臭化ドデシルトリメチルアンモニウム;臭化エチルヘキサデシルジメチルアンモニウム;Girard試薬 T;臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム;N, N', N'-ポリオキシエチレン (10)-N-タロウ(tallow)- 1, 3-ジアミノプロパン;臭化トンゾニウム;臭化トリメチル(テトラデシル)アンモニウム;BigCHAP(すなわち、N, N-ビス[3-(D-グルコンアミド)プロピル]コールアミド);ビス(ポリエチレングリコールビス[イミダゾイルカルボニル]);ポリオキシエチレンアルコール、例えばBrij(登録商標)30 (ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル)、Brij(登録商標)35 (ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル)、Bril(登録商標)35P、Brij(登録商標)52 (ポリオキシエチレン2セチルエーテル)、Brij(登録商標)56 (ポリオキシエチレン10セチルエーテル) 、Brij(登録商標)58 (ポリオキシエチレン20セチルエーテル)、Brij(登録商標)72 (ポリオキシエチレン2ステアリルエーテル)、Brij(登録商標)76 (ポリオキシエチレン10ステアリルエーテル)、Brij(登録商標)78 (ポリオキシエチレン20ステアリルエーテル)、Brij(登録商標)78P、Brij(登録商標)92 (ポリオキシエチレン2オレイルエーテル)、Brij(登録商標)92V (ポリオキシエチレン2オレイルエーテル) 、Brij(登録商標)96V、Brij(登録商標)97 (ポリオキシエチレン10オレイルエーテル) 、Brij(登録商標)98 (ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル) 、Brij(登録商標)58P、およびBrij(登録商標)700 (ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル);Cremophor(登録商標)EL(すなわち、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレアート35 (polyoxyethylenglyceroltriricinoleat 35);ポリオキシル35ヒマシ油;デカエチレングリコールモノドデシルエーテル;デカエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル;デカエチレングリコールモノトリデシルエーテル;N-デカノイル-N-メチルグルカミン;n-デシルα-D-グルコピラノシド;デシルβ-D-マルトピラノシド;ジギトニン;n-ドデカノイル-N-メチルグルカミド;n-ドデシルα-D-マルトシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタエチレングリコールモノデシルエーテル;ヘプタエチレングリコールモノドデシルエーテル;ヘプタエチレングリコールモノテトラデシルエーテル;n-ヘキサデシル-β-D-マルトシド;ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル;ヘキサエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル;ヘキサエチレングリコールモノオクタデシルエーテル;ヘキサエチレングリコールモノテトラデシルエーテル;lgepal(登録商標)CA-630(すなわち、ノニルフェニル-ポリエチレングリコール、(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール、オクチルフェニル-ポリエチレングリコール);メチル-6-O-(N-ヘプチルカルバモイル)-α-D-グルコピラノシド;ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル;N-ノナノイル-N-メチルグルカミン;オクタエチレングリコールモノデシルエーテル;オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル;オクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル;オクタエチレングリコールモノオクタデシルエーテル;オクタエチレングリコールモノテトラデシルエーテル;オクチル-β-D-グルコピラノシド;ペンタエチレングリコールモノデシルエーテル;ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル;ペンタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル;ペンタエチレングリコールモノヘキシル エーテル;ペンタエチレングリコール モノオクタデシルエーテル;ペンタエチレングリコールモノオクチルエーテル;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールエーテル W-1;ポリオキシエチレン10トリデシルエーテル;ポリオキシエチレン100ステアラート;ポリオキシエチレン20イソヘキサデシルエーテル;ポリオキシエチレン20オレイルエーテル;ポリオキシエチレン40ステアラート;ポリオキシエチレン50ステアラート;ポリオキシエチレン8ステアラート;ポリオキシエチレンビス(イミダゾリルカルボニル);ポリオキシエチレン25プロピレングリコールステアラート;キラヤ(quillaja)樹皮由来のサポニン;ソルビタン脂肪酸エステル、例えばSpan(登録商標)20 (ソルビタンモノラウラート)、Span(登録商標)40 (ソルビタンモノパルミタート) 、Span(登録商標)60 (ソルビタンモノステアラート) 、Span(登録商標)65 (ソルビタントリステアラート) 、Span(登録商標)80 (ソルビタン モノオレエート)、およびSpan(登録商標)85 (ソルビタントリオレアート);ポリエチレングリコールの各種アルキルエーテル、例えばTergitol(登録商標)Type 15-S-12、Tergitol(登録商標)Type 15-S-30、Tergitol(登録商標)Type 15-S-5、Tergitol(登録商標)Type 15-S-7、Tergitol(登録商標)Type 15-S-9、Tergitol(登録商標)Type NP-10 (ノニルフェニルエトキシラート) 、Tergitol(登録商標)Type NP-4、Tergitol(登録商標)Type NP-40、Tergitol(登録商標)Type NP-7、Tergitol(登録商標)Type NP-9 (ノニルフェニルポリエチレングリコールエーテル)、Tergitol(登録商標)MIN FOAM 1x、Tergitol(登録商標)MIN FOAM 2x、Tergitol(登録商標)Type TMN-10 (ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル) 、Tergitol(登録商標)Type TMN-6 (ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル)、Triton(登録商標)770、Triton(登録商標)CF-10 (ベンジル-ポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテル) 、Triton(登録商標)CF-21、Triton(登録商標)CF-32、Triton(登録商標)DF-12、Triton(登録商標)DF-16、Triton(登録商標)GR-5M、Triton(登録商標)N-42、Triton(登録商標)N-57、Triton(登録商標)N-60、Triton(登録商標)N-101(すなわち、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン分岐ノニルフェニルエーテル)、Triton(登録商標)QS-15、Triton(登録商標)QS-44、Triton(登録商標)RW-75(すなわち、ポリエチレングリコール260モノ(ヘキサデシル/オクタデシル)エーテルおよび1-オクタデカノール) 、Triton(登録商標)SP-135、Triton(登録商標)SP-190、Triton(登録商標)W-30、Triton(登録商標)X-15、Triton(登録商標)X-45(すなわち、ポリエチレングリコール4-tert-オクチルフェニルエーテル; 4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール) 、Triton(登録商標)X-100 (t-オクチルフォノキシポリエトキシエタノール;ポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテル;4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール) 、Triton(登録商標)X-102、Triton(登録商標)X-114 (ポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテル;(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール) 、Triton(登録商標)X-165、Triton(登録商標)X-305、Triton(登録商標)X-405 (すなわち、ポリオキシエチレン(40)イソオクチルシクロヘキシルエーテル;ポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテル) 、Triton(登録商標)X-705-70、Triton(登録商標)X-151、Triton(登録商標)X-200、Triton(登録商標)X-207、Triton(登録商標)X-301、Triton(登録商標)XL-80N、およびTriton(登録商標)XQS-20;テトラデシル-β-D-マルトシド;テトラエチレングリコールモノデシルエーテル;テトラエチレングリコールモノドデシルエーテル;テトラエチレングリコールモノテトラデシルエーテル;トリエチレングリコールモノデシルエーテル;トリエチレングリコールモノドデシルエーテル;トリエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル;トリエチレングリコールモノオクチルエーテル;トリエチレングリコールモノテトラデシルエーテル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、TWEEN(登録商標)20 (ポリエチレングリコールソルビタンモノラウラート)、TWEEN(登録商標)20 (ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウラート) 、TWEEN(登録商標)21 (ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウラート) 、TWEEN(登録商標)40 (ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミタート) 、TWEEN(登録商標)60 (ポリエチレングリコールソルビタンモノステアラート;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアラート)、TWEEN(登録商標)61 (ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアラート)、TWEEN(登録商標)65 (ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアラート)、TWEEN(登録商標)80 (ポリエチレングリコールソルビタンモノオレアート;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート) 、TWEEN(登録商標)81 (ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート) 、およびTWEEN(登録商標)85 (ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート);チロキサポール;n-ウンデシルβ-D-グルコピラノシド、CHAPS(すなわち、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート);CHAPSO(すなわち、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホナート);N-ドデシルマルトシド;α-ドデシル-マルトシド;β-ドデシル-マルトシド;3-(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩(すなわち、SB3-10);3-(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩(すなわち、SB3-12);3-(N, N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホナート(すなわち、SB3-14);3-(N, N-ジメチルオクタデシルアンモニオ)プロパンスルホナート
(すなわち、SB3-18);3-(N, N-ジメチルオクチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩(すなわち、SB3-8);3-(N, N-ジメチルパルミチルアンモニオ)プロパンスルホナート(すなわち、SB3-16);MEGA-8;MEGA-9;MEGA-10;メチルヘプチルカルバモイルグルコピラノシド;N-ノナノイル N-メチルグルカミン;オクチル-グルコピラノシド;オクチル-チオグルコピラノシド;オクチル-β-チオグルコピラノシド;3-(4-ヘプチル)フェニル3-ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニオプロパンスルホナート(すなわち、C7BzO);3-[N, N-ジメチル(3-ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホナート(すなわち、ASB-14);およびデオキシコラト酸(deoxycholatic acid)、並びにそれらの各種混合物。
【0083】
ある態様において、溶解試薬は、以下からなる群より選択される1またはそれ以上の界面活性剤であろう:CHAPS(3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート)、オクチル-β-チオグルコピラノシド、オクチル-グルコピラノシド、C7BzO (3-(4-ヘプチル)フェニル3-ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニオプロパンスルホナート)、ASB-14 (3-[N, N-ジメチル(3-ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホナート)、Triton(登録商標)X-100、α-ドデシル-マルトシド、β-ドデシル-マルトシド、デカエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、デカエチレングリコールモノトリデシルエーテル、デオキシコラト酸(deoxycholatic acid)、ドデシル硫酸ナトリウム、lgepal(登録商標)CA-630、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、SB3-10(3-(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩)、SB3-12 (3-(ドデシルジメチルアンモニオ) プロパンスルホナート分子内塩)、SB3-14(3-(N, N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホナート)、およびn-ドデシルα-D-マルトシド。
【0084】
別の態様において、溶解試薬は、以下からなる群より選択される1またはそれ以上の界面活性剤であろう:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、オクチル-β-チオグルコピラノシド、オクチル-グルコピラノシド、3-(4-ヘプチル)フェニル3-ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニオプロパンスルホナート、3-[N,N-ジメチル(3-ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホナート、3-(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩、3-(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩、3-(N, N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホナート、およびn-ドデシルα-D-マルトシド。
【0085】
別の態様において、溶解試薬は、溶解酵素を含む。多様な酵素が本発明において使用可能である。酵素の例には、β-グルクロニダーゼ;グルカナーゼ;グルスラーゼ(glusulase);リゾチーム;リチカーゼ(lyticase);マンナナーゼ;ムタノリシン(mutanolysin);ザイモリアーゼ(zymolyase)、セルラーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン(lysostaphin)、ペクトリアーゼ(pectolyse)、ストレプトリシン O、およびそれらの各種組み合わせ。例えば、以下を参照のこと:Wolska- Mitaszko, et al., Analytical Biochem. , 116: 241-47 (1981);Wiseman, Process Biochem., 63-65 (1969)、およびAndrews & Asenjo, Trends in Biotech. , 5: 273-77 (1987)。
【0086】
溶解される細胞のタイプは、酵素の選択に影響しうる。Coakley, et al., Adv. Microb. Physio, 16: 279-341 (1977)を参照のこと。例えば、宿主細胞が植物細胞の場合、タンパク質またはペプチドについては、キチナーゼ、β-グルクロニダーゼ、マンナナーゼ、およびペクトリアーゼがいずれも有用である。酵母細胞は、細胞壁が莢膜または抵抗性の胞子を形成しうるので、分解するのが難しい。酵母からのDNAは、溶解酵素、例えばリチカーゼ、キチナーゼ、ザイモリアーゼ(zymolase)、およびグルスラーゼ(gluculase)を用いて部分的なスフェロプラスト形成を誘導することによって抽出可能である。スフェロプラストはついで溶解に供されてDNAを放出する。リチカーゼは、形質転換のため酵母の細胞壁を消化して菌からスフェロプラストを生じさせるのに好ましい。リチカーゼはポリ(β-1, 3-グルコース)、例えば酵母細胞壁のグルカンを加水分解する。
【0087】
リゾチームおよびムタノリシンは、宿主細胞が細菌細胞の場合に有用である。リゾチームは、ペプチドグリカンの多糖類骨格において、N-アセチルグルコサミドとN-アセチルムラミン酸の間のβ 1-4 グリコシド結合を加水分解する。それは、細菌細胞壁に存在するペプチドグリカンを加水分解することによって細菌を溶解するのに効果的である。
【0088】
別の態様において、溶解試薬は、カオトロープを含む。場合によっては、カオトロープのみで十分に宿主細胞を溶解できる。具体的には、カオトロープは、細胞成分がRNAの場合に用いられる。本発明で使用可能なカオトロープの例には、尿素、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、チオ硫酸グアニジウム、およびチオ尿素が含まれる。カオトロープはまた、界面活性剤、緩衝液、消泡剤、および本明細書に記載の他の添加剤と組み合わせて使用してもよい。
【0089】
宿主細胞の溶解に第一に関与する界面活性剤、溶解酵素、またはカオトロープに加えて、溶解試薬は、pHを調節するための緩衝液、過剰な泡立ちを防ぐための消泡剤、充てん剤、酵素阻害剤、および細胞成分の精製を助ける他の処理酵素を1またはそれ以上含んでもよい。緩衝液の例には、TRIS、TRIS-HCI、HEPES、およびリン酸塩が含まれる。消泡剤の例には、Antifoam 204;Antifoam A 濃縮物;Antifoam A エマルジョン;Antifoam B エマルジョン;、およびAntifoam C エマルジョンが含まれる。充てん剤の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびポリビニルピロリドン(PVP)が含まれる。処理酵素および酵素阻害剤には、とりわけ、ヌクレアーゼ、例えばBenzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ;DNA分解酵素(例えば、DNaseI);RNA分解酵素(例えば、RNase A);プロテアーゼ、例えばプロテイナーゼ K;ヌクレアーゼ阻害剤;プロテアーゼ阻害剤、例えばホスホラミドン、ペプスタチン A、ベスタチン、E-64、アプロチニン、ロイペプチン、1,10-フェナントロリン、アンチパイン、ベンズアミジン塩酸塩、キモスタチン、EDTA、e-アミノカプロン酸、トリプシン阻害剤、および4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオライド塩酸塩;およびホスファターゼ阻害剤、例えばカンタリジン、ブロモテトラミソール(bromotetramisole)、ミクロシスチン LR、オルトバナジウム酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、およびイミダゾールが含まれる。溶解酵素のように、処理酵素および酵素阻害剤の選択も、抽出しようとする物質のタイプ(例えば、ペプチド、タンパク質、核酸等)および溶解しようとする細胞のタイプ(例えば、植物、酵母、細菌、真菌、哺乳類、昆虫等)を含む幾つかの因子に依存して変化するであろう。例えば、ヌクレアーゼは、核酸を加水分解または分解する。したがって、細胞成分がタンパク質またはペプチドの場合は溶解試薬がヌクレアーゼを含むことが望ましいが、細胞成分が核酸の場合は望ましくない。同様に、プロテアーゼは、タンパク質を破壊または分解する。それゆえ、細胞成分が核酸の場合は溶解試薬がプロテアーゼを含むことが望ましいが、細胞成分がタンパク質の場合は望ましくない。同様の理由は、他の酵素または阻害剤を選択する際にも適用されうる。したがって、通常、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ阻害剤、およびリゾチームのような酵素または阻害剤は、細胞成分が核酸の場合に有用である。他の酵素または阻害剤、例えばBenzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、DNase、RNase、または他のヌクレアーゼは、細胞成分がタンパク質またはペプチドの場合に有用である。核酸について、RNase Aは、細菌および哺乳類DNAの抽出に使用されうる。DNase Iは、細菌RNA、酵母RNA、動物細胞および組織由来のRNA、および体液由来のRNAの抽出に使用されうる。プロテイナーゼ Kのようなプロテアーゼは、いずれの細胞タイプからDNAを抽出するのにも使用することができる。
【0090】
宿主細胞が細菌または動物細胞の場合、あるいは細胞成分がタンパク質またはDNAの場合、溶解試薬は典型的には界面活性剤を含むであろう。宿主細胞が酵母細胞の場合、溶解試薬は、典型的には、界面活性剤、または酵母細胞を溶解できる酵素、例えばリチカーゼ、ザイモリアーゼ、または前述の他の溶解酵素を含むであろう。
【0091】
さらなる例として、細胞成分がタンパク質またはペプチドの場合、溶解試薬は、1またはそれ以上の界面活性剤、リゾチーム、ヌクレアーゼ、Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ、緩衝液、プロテアーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、もしくはカオトロピック試薬、またはそれらの各種組み合わせを含むことが好ましい。別の態様において、細胞成分がDNAの場合、溶解試薬は、1またはそれ以上の界面活性剤、リゾチーム、ヌクレアーゼ阻害剤、RNase、緩衝液、もしくはプロテアーゼ、またはそれらの各種組み合わせを含むことが好ましい。
【0092】
別の態様において、細胞成分がRNAの場合、溶解試薬は、1またはそれ以上の界面活性剤、カオトロピック試薬、もしくは緩衝液またはそれらの各種組み合わせを含むことが好ましい。本適用では、カオトロープが酵素を不活化するため、典型的には酵素は用いられない。
【0093】
ある態様において、溶解試薬は、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、リゾチーム、Tris-HCl、およびDNase Iを含む。
【0094】
別の態様において、溶解試薬は、オクチル-チオグルコピラノシド、プロテアーゼ阻害剤、リゾチーム、およびBenzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼを含む。
【0095】
このように、溶解試薬は、界面活性剤、酵素、阻害剤、カオトロープ、緩衝液、消泡剤、充てん剤、および/または細胞成分の抽出および単離を助けるであろう他の添加剤の様々な組み合わせを含むことができる。これらの溶解試薬および/または成分は、天然または組換え型であっても、修飾型または活性型であってもよい。当業者は、好ましい溶解試薬が何を含むかを、細胞成分および宿主細胞のタイプに基づき容易に決定することができる。
【0096】
溶解試薬の量およびその各成分の相対的割合は、宿主細胞のタイプ、選択した溶解試薬の種類、および一定時間内に所望される細胞透過の程度に依存して変化するであろう。したがって、ある態様において、いずれかの単一の界面活性剤の濃度は約0.01%〜約5%(w/v)、より好ましくは約0.1%〜約2%である。別の態様において、各溶解酵素の濃度は、約0.01 mg/ml〜約0.2 mg/mlである。さらに別の態様において、緩衝液の濃度は、抽出中、または抽出および単離中に、細胞液のpHが約pH3〜約pH12に維持される濃度である。別の態様において、プロテアーゼ阻害剤の濃度は、約10 nM〜約10 mMである。別の態様において、ホスファターゼ阻害剤の濃度は、約0.01 nM〜約10 mMである。
【0097】
溶解試薬は、その溶解試薬が容器内に吸着成分、自由流動成分、溶けた成分、またはスラリー状成分のいずれとして存在するかによらず、宿主細胞を含む溶液または懸濁液が容器に添加された時に溶け、または宿主細胞を含む懸濁液によって希釈され、そしてその宿主細胞が溶解される。溶解試薬が溶解に必要な全ての試薬を含む場合、全ての必要な溶解試薬を確実に存在させるために複数のピペッティング工程を行う必要がない。さらに、前述のように、溶解試薬は、宿主細胞を完全に可溶化する効果を有する必要はない。むしろ、宿主細胞は、溶液中に目的物の一部または全てを放出するのに必要な程度まで溶解されればよい。さらに、溶解試薬は、宿主細胞の一部が溶解される限り、ある細胞懸濁液中の全ての宿主細胞を溶解する効果を有する必要はない。
【0098】
5.キット
好都合なことに、本発明の容器は、使用説明書、および宿主細胞から細胞成分を抽出および/または単離するための試薬、および/または捕捉された細胞成分を分析または検出するための試薬、および/または処理緩衝液または対照と組み合わせることができ、これらはすべて1つのパッケージとされ、キットとして頒布される。ある態様において、キットは、単一の容器、またはそのかわりに複数の容器を含むマルチウェルプレートを含む;キットは、典型的には密閉されるであろう。いずれにせよ、溶解試薬を含み、また所望により捕捉リガンドも含んでよい。
【0099】
本明細書に記載のように、溶解試薬および/または捕捉リガンドは、各種の異なる方法によって本発明の容器に供することができる。例えば、溶解試薬は、容器の一部、容器の底、側壁構造、容器の底および側壁構造の両方の上にコートされてもよく、あるいは自由流動粉末の形態で存在してもよい。同様に、支持捕捉リガンドは、容器の一部、容器の底、側壁構造、容器の底および側壁構造の両方の上に配置されうる。ある態様において、容器はさらに、さらなる支持体、例えばビーズまたはメッシュ、を含み、その上には溶解試薬がコートされ、および/または支持捕捉リガンドが配置されうる。あるいは、容器は、三次元ポリマーマトリックス、捕捉リガンドまたは活性化可能基、および溶解試薬を含む高性能プラットフォームでありうる。
【0100】
ある態様において、容器は、細胞成分(例えば、ポリペプチド、タンパク質、RNA、またはDNA産物)の抽出または抽出および単離に必要な全ての試薬を含むであろう。キットはまた、捕捉物を支持捕捉リガンドまたは三次元マトリックスから解離または溶出するのに有用な他の試薬および備品、並びに各種処理緩衝液を含んでもよい。
【0101】
6.方法
一般的に、本発明の方法は、細胞成分、例えばペプチド、タンパク質、核酸その他の細胞成分、の宿主細胞からの抽出または抽出および単離に関する。したがってある局面において、本発明は、以下を含む、宿主細胞から細胞成分を抽出するための方法に関する:
(a) 宿主細胞を含む液状懸濁液を容器に導入すること(該容器は、口、内部表面、容量V、および内部表面の少なくとも一部の上に溶解試薬のコーティングを含み、内部表面は側壁構造および底を含み、コートされた内部表面の面積の容量Vに対する比率は約4 mm2/μl未満である)、および
(b) 容器中で宿主細胞を溶解して、細胞成分を放出させ、かつ細胞片を形成させること。
溶解試薬は、宿主細胞からその成分を放出させる。溶解は、完全、すなわち全ての細胞成分(例えば、ペプチド、タンパク質、または核酸)が宿主細胞から放出されるものであってもよく、あるいは部分的、すなわち細胞成分の一部が宿主細胞から放出されるものであってもよい。
【0102】
別の局面において、本発明は、宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するための方法に関する。ある局面において、本方法は以下を含む:
(a) 宿主細胞を含む液状懸濁液を容器に導入すること(該容器は、口、内部表面、容量V、溶解試薬、および支持捕捉リガンドを含み、内部表面は側壁構造および底を含み、側壁構造は底と口の間に存在し、口は液体を容器に導入するための入口および容器から液体を除去するための出口として機能する)、
(b) 容器中で宿主細胞を溶解して、細胞成分を放出させ、かつ固体細胞片を形成させること、および
(c) 固体細胞片の存在下に細胞成分を捕捉リガンドで捕捉すること。
ある態様において、捕捉リガンドは、容器内部表面によって支持されている。別の態様において、捕捉リガンドは、容器内部表面上にコートされたポリマー性マトリックスに結合している。
【0103】
別の局面において、本方法は以下を含む:
(a) 宿主細胞を含む液状懸濁液を容器に導入すること(該容器は、口、内部表面、容量V、溶解試薬、および支持捕捉リガンドを有し、内部表面は側壁構造および底を含み、側壁構造は底と口の間に存在し、口は液体を容器に導入するための入口として機能する)
(b) 容器内で宿主細胞を溶解して、細胞成分を放出させ、かつ固体細胞片を形成させること、
(c) 固体細胞片の存在下に細胞成分を捕捉リガンドで捕捉すること、
(d) 細胞成分を捕捉リガンドから解離させること、および
(e) 解離された細胞成分を回収すること。
ある態様において、捕捉リガンドは、容器内部表面に支持されている。別の態様において、捕捉リガンドは、容器内部表面上にコートされたポリマー性マトリックスに結合している。
【0104】
溶解は、完全、すなわち全ての細胞成分が宿主細胞から放出されるものであってもよく、あるいは部分的、すなわち細胞成分の一部が宿主細胞から放出されるものであってもよい。ある態様において、細胞片および他の非結合細胞成分はその後洗浄除去され、捕捉リガンドに結合した細胞成分が残る。捕捉物は、その後、捕捉リガンドに結合したままの状態で検出することができる。このような検出方法は当業界で周知であり、とりわけ、ELISA、タンパク質検出、および酵素学的分析が含まれる。別の態様において、捕捉された成分は、塩のような試薬を用いて、あるいは他の試薬の捕捉リガンドへの競合的結合によって、その捕捉された細胞成分を捕捉リガンドから解離または溶出することにより回収される。
【0105】
ここで図7を参照すると、本発明の方法は、溶解試薬および捕捉リガンドを含む容器との関連で説明される。一般的に10で示される容器は、内部チャンバーを規定する円筒型が一般的なシャフト12、口13(上部キャップ14によって覆われうる)、出口15(下部キャップ16によって覆われうる)を有するカラムまたはチューブである。円筒型が一般的なシャフト12に規定されるチャンバー内には、捕捉リガンドが結合した樹脂ベッド18、および樹脂ベッド18を覆う溶解試薬塊20が存在する。チャンバー内で樹脂ベッドを支持するため、容器10はさらに、多孔性のポリエチレンフリット(flit)(孔径約20μm)を含んでもよい。操作においては、上部キャップ14が取り除かれ、宿主細胞を含む液状懸濁液が口13を介してカラムに注がれる。溶解試薬20は液状懸濁液によって溶かされ、それにより宿主細胞の細胞成分の全てまたは一部が放出され、それらが樹脂ベッド18に結合した捕捉リガンドにより捕捉されうる。細胞成分を捕捉した後、細胞片および液状懸濁液の他の成分は、出口15を通して容器から排出される;好都合なことに、フリットまたは他の支持手段は、樹脂18がチャンバーから出てしまうのを防ぎ、その一方で細胞片および懸濁液の他の成分はカラムから出せるようにする。好ましい態様において、カラムは、内部カラムの長さが9.1 cm(または底と口とがふたされる場合は12.3 cm )、底開口部の直径約1 cm、口開口部の直径約 1.7 cm、および全容量約7.5 ml、である。ある態様において、捕捉リガンドはアガロース樹脂のベッドに共有結合したニッケルキレートであり、溶解試薬はCHAPS(すなわち、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート)の自由流動粉末、リゾチーム、Tris-HCl、およびDNaseIを含む。
【0106】
別の態様において、上記方法は、マルチウェルプレート、例えば96ウェルマルチウェルプレート、の1または複数のウェルにおいて行うことができ、ここでウェルが溶解試薬およびポリマーマトリックスコーテイングを含む。例えば、ある態様において、ウェルは、前述のデキストランポリマー由来のポリマーマトリックスでコートされ、そこに捕捉リガンドが結合する。好ましい態様において、ポリマーマトリックスはデキストランポリマーの混合物に由来し、捕捉リガンドはニッケルキレートである。ある態様において、溶解試薬は、オクチル-チオグルコピラノシド(OTG)、プロテアーゼ阻害剤、リゾチーム、およびBenzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼを含む。より具体的には、溶解試薬は、2% OTG、1 % プロテアーゼ阻害剤、2% リゾチーム、および0.02% Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼを含みうる。ある態様において、溶解試薬は、ポリマーマトリックスの表面の少なくとも一部の上に、および/またはウェルの側壁上にコートされる。あるいは、またはさらに、溶解試薬は、ウェル中に凍結乾燥マトリックスまたは他の塊(例えば、自由流動粉末)の形態で存在することができる。前述のように、宿主細胞を含む液状懸濁液をウェルに添加すると溶解試薬が溶け、宿主細胞が溶解される。目的細胞成分はその後捕捉リガンドに結合する。捕捉された目的細胞成分は、その後、所望により解離され、前述の当業界で周知の技術により回収される。
【0107】
別の局面において、本発明は、宿主細胞から細胞成分を抽出するためのマルチウェルプレートを調製する方法に関する。本方法は、マルチウェルプレートの複数のウェルの内部表面に溶解試薬を含む液体を接触させること、およびこの液体を乾燥させてウェルの内部表面上に溶解試薬の吸着層を形成すること、を含む。前述の溶解試薬は、いずれも本方法に使用可能である。先に説明したように、溶解試薬の量は様々であるが、吸着された溶解試薬の量が所望の抽出レベルを与えるのに十分な量とならなければならない。乾燥は、風乾により、インキューベーターを使用することにより、あるいは当業界で知られる他の技術により達成することができる。
【0108】
宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するための容器は、同様にして調製することができる。例えば、ある態様において、支持捕捉リガンドを含むウェルの内部表面に溶解試薬を含む液体を接触させ、そしてその液体を乾燥させてウェルの内部表面に溶解試薬の吸着層を形成させればよい。別の態様において、ポリマーマトリックスが結合したウェル(例えば前述のようにマルチウェルプレートの1または複数のウェル)の内部表面に溶解試薬を含む液体を接触させ、そしてその液体を乾燥させてポリマーマトリックスの表面上および/またはウェルの側壁上に溶解試薬の吸着層を形成させればよい。別の態様において、カラム、例えば前述のように捕捉リガンドが結合した樹脂を含むカラム、の内部表面に溶解試薬を含む液体を接触させ、そしてその液体を乾燥させて樹脂表面および/またはカラムの側壁上に溶解試薬の吸着層を形成させればよい。
【0109】
本出願に引用されるすべての出版物、特許、特許出願その他の文献は、各々の出版物、特許、特許出願その他の文献が具体的かつ個別に引用により含まれることが示される場合と同じように、引用により全体として本明細書に含まれる。
【0110】
7.定義
「捕捉リガンド」なる用語は、容器または支持体上に固定化または支持された、またはされうる、細胞片から細胞成分を単離するのに使用される部分、分子、受容体、または層のいずれをも意味する。本発明に関して使用可能な捕捉リガンドの非限定的な例には、以下が含まれる:ビオチン、ストレプトアビジン、各種金属キレートイオン、抗体、各種荷電粒子、例えばイオン交換クロマトグラフィーに使用されるもの、色素、各種アフィニティークロマトグラフィー支持体、および疎水性クロマトグラフィーに使用される各種疎水基。
【0111】
「細胞片」または「セルデブリス」なる用語は、本明細書において互換的に使用され、細胞溶解の結果宿主細胞から放出される膜断片、細胞小器官、または目的物以外の他の可溶性または不溶性細胞成分を意味する。
【0112】
「抽出」は、細胞溶解の結果としての、目的物が発現する宿主細胞からのその目的物の少なくとも一部の放出を意味する。
【0113】
「宿主細胞」は、目的物を発現する、または含む、真核または原核細胞を意味する。宿主細胞には、例えば、細菌細胞、例えば大腸菌;真菌細胞、例えば酵母細胞;植物細胞;動物細胞、例えば哺乳類細胞;および昆虫細胞、が含まれる。
【0114】
「単離」または「精製」なる用語は、目的物の少なくとも一部の、細胞片の少なくとも一部からの除去または分離を意味する。
【0115】
「溶解」または「溶解する」なる用語は、目的物が放出されるように細胞の細胞壁および/または細胞膜を破裂させることを意味する。溶解は、完全であっても、部分的であってもよい(すなわち、細胞壁および/または細胞膜が細胞成分の一部を放出するのに十分な透過性となればよく、その細胞成分の全てを放出する必要はない)。
【0116】
「目的物」は、細胞成分、例えばポリペプチド、タンパク質、タンパク質断片、DNA、RNA、他のヌクレオチド配列、炭水化物、脂質、コレステロール、キナーゼ、または他の細胞成分、であって、それが発現するか、または含まれる宿主細胞から抽出されるべき細胞成分、または抽出および単離されるべき細胞成分を意味する(例えば「目的タンパク質」、「目的DNA」、「目的RNA」、「目的細胞成分」等)。目的物は、宿主細胞内に天然に存在するものであっても、あるいは非天然のもの、例えば組換えタンパク質であってもよい。
【0117】
本発明の範囲から逸脱することなく上記のものおよび方法に各種変更を施すことができるので、上記記載および以下の実施例に含まれる全ての事柄は例示であり、限定を意味するものではない。
【実施例】
【0118】
実施例1
HIS-Select(商標)高結合量プレートによる、ヒスタグ化組換えタンパク質を用いた界面活性剤性溶解および精製
本実施例では、組換えヒスタグを有するタンパク質を含む細菌を溶解し、1工程にて目的タンパク質を精製した。組換えタンパク質は、細胞が溶解されたときにそのタンパク質が捕捉されうるかを確認するため、様々な量にて大腸菌細胞にスパイクした。特記なき限り、すべての材料はSigma-Aldrich Corporation, St. Louis, MOより入手した。
【0119】
乾燥溶解支持体
目的タンパク質の精製は、HIS-Select(商標)高結合量(high capacity, HC)プレート (Sigma S5563)を用いて行った。これらの96ウェルマルチウェルプレートは、前述のように、高密度ニッケルキレートポリマーマトリックスでコートされている。これらプレートは、ヒスタグ化組換えタンパク質を精製するために使用され、1ウェルにつき4μgを超えるタンパク質を結合することができる。主な溶解成分は、1 %オクチル-チオグルコピラノシド(OTG)(20mM Tris-Cl、pH 7.5中)である。この緩衝化界面活性剤に、各種処理試薬および酵素もまた添加した: i) 1% (v/v) プロテアーゼ阻害剤 (SigmaP8849)、2% リゾチーム (Sigma 10 mg/ml溶液L3790)、および0.02% Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ (Sigma E1014);ii) 1% プロテアーゼ阻害剤および2% リゾチーム;およびiii) 1% プロテアーゼ阻害剤および0.02% Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ。本溶液を96ウェルHIS-Select(商標)HCプレートの個々のウェルに分注し、各ウェルが前記緩衝化界面活性剤の溶液0.1 ml、および(i)、(ii)、または(iii)のいずれかを含んだ。インキュベーター中で47℃で一晩プレート上に乾燥した空気を流し、プレートのウェル上で溶液を乾燥させた。乾燥後、界面活性剤と(i)、(ii)、または(iii)のいずれかでコートされた各ウェルの表面積は、約134.7 mm2であった。
【0120】
細胞増殖
5 mlの滅菌Terrific broth(TB)培地を、3本の15 ml丸底チューブの各々に添加した。アンピシリンを終濃度0.1 mg/mlとなるよう各チューブに添加した。非発現大腸菌のコロニー1つを各チューブに添加した。培養液を250 rpmで振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。
【0121】
大腸菌試料
ヒスチジンタグ(配列 His-Asn-His-Arg-His-Lys-His (配列番号4))を含む28 kDaの精製組換えタンパク質を、滅菌TB培地にて1 mg/mlに希釈した。タンパク質試料は、目的タンパク質を特定量にて非発現大腸菌培養液にスパイクすることによって作成した。100μlのアリコートを、乾燥溶解試薬を含む各ウェルに添加した。非発現大腸菌培養液を対照として使用した。これら試料を室温で2時間穏やかに振盪しながらインキュベートした。
【0122】
SDS-PAGE分析
BioMekプレート洗浄機を用いて、0.05% Tween 20含有Tris緩衝化生理食塩水(TBST)(pH 8.0)によりプレートを4回洗浄した。選択したウェルを、室温にて50 mMリン酸ナトリウム(pH 8)、300 mM 塩化ナトリウム、および250 mM イミダゾールを含有する溶液50μlで溶出した。これら試料をLaemmli試料緩衝液と1:1で混合し、20μlの試料を4-20% Tris -グリシンゲル(Invitrogen)において1xTris-グリシン-SDS緩衝液中で電気泳動した。ゲルをEZBlue染色試薬(Sigma G1041)により染色し、続いて銀染色した(Sigma #Prot-sil1)。結果を図1に示す。
【0123】
結果および考察
表1は、図1の各レーンに用いた溶解試薬および試料組成を示す。目的タンパク質が添加された各ウェルにおいて、そのタンパク質が捕捉され溶出された。タンパク質が大量の場合、大量の目的タンパク質が捕捉された。処理補助物は、目的タンパク質の結合量に有利に働き、特に、界面活性剤に加えてリゾチームが存在するとよかった。
【表1−1】

【表1−2】

【0124】
実施例2
HIS-Select(商標)高結合量プレートによる、組換え大腸菌細胞を用いた界面活性剤性溶解、捕捉、および精製
本方法においては、組換えヒスタグを有するタンパク質を含む細菌を、各種界面活性剤と処理補助物とを組み合わせて溶解し、その目的タンパク質を1工程において精製した。
特記なき限り、材料はすべてSigma-Aldrich Corporation, St. Louis, MOより入手した。
【0125】
乾燥溶解支持体
界面活性剤および処理試薬および酵素の各種組み合わせを用いて、一連の溶解試薬について調べた。2% OTG、2% CHAPS、4% CHAPS、2%C7BzO、または2% ASB-14の100μlを96ウェルHIS-Select(商標)高結合量プレート (Sigma S5563)上で乾燥させた。これらの界面活性剤と他の処理試薬および酵素を含む溶液も調製した。各界面活性剤は、以下と組み合わせた:i)2% (v/v) プロテアーゼ阻害剤カクテル (Sigma P8849);ii) 2% プロテアーゼ阻害剤カクテル (Sigma P8849)および0.01% Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ (Sigma E1014);iii) 2% プロテアーゼ阻害剤カクテル (SigmaP8849)および0.04% リゾチーム;およびiv) 2% プロテアーゼ阻害剤カクテル (Sigma P8849)、0.01 % Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ (SigmaE1014)および 0. 04% リゾチーム。さらに、i) 2% OTGまたは2% CHAPSおよび0.04% リゾチーム;ii) 2% OTGまたは2% CHAPSおよび0. 01%Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ (Sigma E1014);およびiii) 2% OTGまたは2% CHAPSおよび0.01%Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ (SigmaE1014)および0.04% リゾチーム、を含む溶液も調製した。これら各溶液を、HIS-Select(商標)高結合量プレート (SigmaS5563)の2-3個のウェルに、各ウェルが100μl含むよう分注した。本溶解試薬は、47℃のオーブン中で一晩プレート上に乾燥した空気を流して乾燥させた。
【0126】
細胞増殖
15 mlの丸底チューブに、5 mlの滅菌TB培地を添加した。そのチューブにアンピシリンを終濃度0.1 mg/mlにて添加した。ヒスタグ化目的タンパク質を発現する大腸菌BL21Gのコロニー1つをそのチューブに添加した。培養液は、250 rpmで振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。始めの培養液の細胞1 mlを500 mlのオートクレーブしたTerrific Broth (TB)に植菌するのに使用した。そのチューブにアンピシリンを終濃度0.1 mg/mlにて添加した。培養液を250 rpmで振盪しながら37℃で3時間半インキュベートした。3時間半後、600 nmでのODは0.5であった。培養液にイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド (IPTG)を終濃度1 mMにて添加して、目的タンパク質の発現を誘導した。その培養液を250 rpmで振盪しながら37℃でさらに1時間半インキュベートした。
【0127】
大腸菌試料
ヒスタグ化タンパク質(実施例1で用いたもの)を発現する大腸菌を、乾燥溶解試薬を含むウェルの半分に200μlずつ添加した。空のウェルを対照として使用した。この試料を穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベートした。
【0128】
ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ
BioMekプレート洗浄機を用いてウェルをTBST(pH 8.0)にて4回洗浄した。1 mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)を検量線に使用した。200μlのBCAワーキング試薬を各ウェルに添加した。このプレートを37℃で30分間インキュベートし、プレートリーダーで562 nmにて測定した。結果は表2に示す。
【0129】
結果および考察
BCAタンパク質アッセイにより、目的タンパク質がうまくHIS-Select(商標)高結合量プレート上に捕捉されたことが示された。各種界面活性剤製剤処方は、細胞を溶解し、タンパク質を捕捉させることができた。非イオン性界面活性剤OTGおよび両性イオン性界面活性剤CHAPS、C7BzO、およびASB-14が良好に機能した。処理補助物、特にリゾチームの添加により、プレートに結合するタンパク質の量が増加した。
【表2】

【0130】
表2は、BCAタンパク質アッセイにて試験した各溶解試薬についての1ウェルあたりのタンパク質の平均量(μg)を示す。列1は、使用した界面活性剤を示す。列2には、界面活性剤のみを使用した場合の結果をまとめる。列3〜9には、界面活性剤に加えて、リゾチーム(Lys.)、Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ(Benz.)、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Pr. Inh.)、またはそれらの各種組み合わせを使用した場合の結果をまとめる。
【0131】
実施例3
2% OTGおよびHIS-Select(商標)高結合量プレートによる、大腸菌および組換えヒスタグ化タンパク質を用いた溶解、捕捉、および精製
本実施例では、組換えヒスタグを有するタンパク質を含む細菌を2% OTGにて溶解し、目的タンパク質を1工程にて精製した。
【0132】
特記なき限り、材料はすべてSigma-Aldrich Corporation, St. Louis, MOより入手した。
【0133】
乾燥溶解支持体
目的タンパク質は、HIS-Select(商標)高結合量プレート (Sigma 85563)を用いて精製した。これらの96ウェルマルチウェルプレートはヒスタグ化組換えタンパク質の精製に使用され、1ウェルにつき4μgを超えるタンパク質を結合することができる。2% オクチル-チオグルコピラノシド (OTG)を20 mM Tris-Cl(pH 7.5)、1 % (v/v) プロテアーゼ阻害剤 (Sigma P8849)、2% リゾチーム (Sigma 10mg/ml 溶液 L3790)、および0.02% Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ (Sigma E1014)中に含む溶解溶液を調製した。この溶液を50 μlまたは100 μlのいずれかにて96 ウェルHIS-Select(商標)HCプレートのウェルに分注した。インキュベーターにて47℃で一晩プレート上に乾燥した空気を流して、溶液をプレートのウェル上に乾燥させた。
【0134】
細胞増殖
15 mlの丸底チューブに、5 mlの滅菌TB培地を添加した。このチューブに、ヒスタグ化目的タンパク質を発現する非アンピシリン抵抗性大腸菌のコロニーを1つ添加した。この培養液を、250 rpmにて振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。
【0135】
大腸菌試料
ヒスチジンタグを有する28 kDaの精製組換えタンパク質(実施例1に記載)を、滅菌TB培地で1 mg/mlに希釈した。タンパク質試料は、特定量の目的タンパク質を非発現大腸菌培養液にスパイクすることによって調製した。対照試料は、精製目的タンパク質または非発現大腸菌培養液のみを含んだ。100 μlのアリコートを乾燥溶解試薬を含む各ウェルに添加した。本試料を穏やかに振盪しながら室温で2時間インキュベートした。
【0136】
SDS-PAGE分析
インキュベーション後、BioMekプレート洗浄機を用いてプレートをTBST(pH 8.0)で4回洗浄した。ウェルの一部を室温にて50 mM リン酸ナトリウム(pH 8)、300 mM 塩化ナトリウム、および250 mM イミダゾールを含有する溶液50μlで溶出した。その試料をLaemmli試料緩衝液と1:1で混合し、20μlを4-20% Tris-グリシンゲル(Invitrogen)にて1x Tris-グリシン-SDS緩衝液中で電気泳動した。このゲルをEZBlue染色試薬で染色し、その後銀染色した。結果は図2、3、および表3に示す。
【0137】
Bradfordタンパク質アッセイ
1 mg/mlBSAを検量線に使用した。250μlのBradford試薬を各ウェルに添加した。そのプレートを室温で15分間インキュベートし、プレートリーダーで595 nmにて測定した。結果は表5に示す。
【0138】
光散乱
細胞培養液の100μlのアリコートを滅菌培地で1:10に希釈し、溶解前に550 nmでODを測定した。溶解後、8μgの目的タンパク質がスパイクされた細胞試料について、550 nmで二連のアリコートを測定した。結果は表4に示す。
【0139】
結果および考察
SDS-PAGE試料から、細胞が溶解され、かつ目的タンパク質が捕捉されてうまく溶出されたことが示された。捕捉された目的タンパク質の量は、細胞に添加された目的タンパク質の量が増えるのにしたがい増加した。光散乱データから溶解後試料について550 nmでの吸収が減少したことがわかり、これは細胞が溶解されたことを示している。これら試料について行ったBradfordタンパク質アッセイデータは、目的タンパク質がプレートに結合したことを示した。非発現細胞の溶解によりバックグラウンドのタンパク質レベルが示されたが、目的タンパク質の量が増加するとこのバックグラウンドレベルよりタンパク質量が大きくなった。
【0140】
【表3】

表3は、図2および3の各レーンの試料の組成を示す。試料はすべてHIS-Select(商標)HCプレート (Sigma S5563)にアプライし、このプレートは2% OTG、20 mM Tris-Cl(pH 7.5)、2% 10mg/ml リゾチーム、1% v/v プロテアーゼ阻害剤カクテル (Sigma,P8849)および0.02% Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ (SigmaE1014)の乾燥溶液を50μl(図2)または100μl(図3)含んでいた。
【0141】
【表4】

【表5】

【0142】
実施例4
高結合量および高感度HIS-Select(商標)プレートおよびANTI-FLAG(登録商標)M2プレートを用いた、組換えタンパク質の界面活性剤溶解、捕捉、および精製
本実施例では、各種界面活性剤を処理補助物と組み合わせて用いてDYKDDDDK (配列番号1)および/またはヒスタグを有する目的タンパク質を発現する細菌細胞を溶解し、目的タンパク質を1工程にて精製した。
【0143】
特記なき限り、材料はすべてSigma-Aldrich Corporation, St. Louis, MOより入手した。
【0144】
乾燥溶解支持体
界面活性剤、処理試薬および酵素の各種組み合わせを使用して、一連の溶解条件について調べた。以下を含有する界面活性剤溶解溶液を調製した:
a) 2% SB3-10、0.2% C7BzO、0.2% n-ドデシルα-D-マルトシド、0.2% Triton X-100
b) 2% CHAPS、1% ASB-14
c) 2% SB3-14、0.2% C7BzO
d) 2% CHAPS、1% n-オクチルグルコシド
e) 2% SB3-12、0.2% C7BzO
f) 2% SB3-14、0.2% ASB-14
g) 1% n-オクチルグルコシド、1 % CHAPS、0.2% n-ドデシルα-D-マルトシド
h) 8% CHAPS。
【0145】
界面活性剤CHAPSは、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナートである;SB3-10は、3-(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩である;SB3-12は、3-(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩である;SB3-14は、3-(N, N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホナートである;C7BzOは、3-(4-ヘプチル)フェニル3-ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニオプロパンスルホナートである;そしてASB-14は、3-[N, N-ジメチル(3-ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホナートである。はじめの7つの界面活性剤溶液(a-g)は、40 mM Tris-HCl(pH 7.4)、0.04% リゾチーム (Sigma L3790)、および0.01% Benzonase(登録商標)エンドヌクレアーゼ (Sigma E1014)も含んでいた。8% CHAPS溶液 (h) は、80 mM Tris-HCI(pH 8.0)、0.04% リゾチーム (Sigma L6876)、および0. 01% DNase I (Sigma D4527)も含んでいた。これら各界面活性剤溶液を100μlずつ、HIS-Select(商標)高結合量プレート (Sigma M5563) HIS-Select(商標)高感度プレート (Sigma S5688)、ANTI-FLAG(登録商標)M2高結合量プレート、およびANTI-FLAG(登録商標)M2高感度プレート (Sigma P2983)の6ウェル(列の半分)に分注した。インキュベーター中で一晩プレート上に外気を通しながらこれら溶解試薬を乾燥させた。
【0146】
細胞増殖
5 mlの滅菌Terrific Broth (TB)を15 mlの丸底チューブ3本それぞれに添加した。アンピシリンを終濃度0.1 mg/mlにて各チューブに添加した。第1のチューブに、DYKDDDDK (配列番号1)タグを有する目的タンパク質を発現するBL21大腸菌のグリセロールストック溶液のアリコート20μlを添加した。第2のチューブに、DYKDDDDK (配列番号1)/ヒスタグを有する目的タンパク質を発現するBL21大腸菌のグリセロールストック溶液のアリコート20μlを添加した。第3のチューブに、ヒスタグを有する目的タンパク質(実施例1に記載)を発現するBL21大腸菌のグリセロールストック溶液のアリコート20μlを添加した。この培養液を275 rpmで振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。
【0147】
一晩培養したはじめの培養液を、500 mlのオートクレーブ済Terrific Broth試料3つに植菌するのに使用した。アンピシリンを終濃度0.1 mg/mlにて各フラスコに添加した。この培養液を、275 rpmで振盪しながら37℃で4時間インキュベートした。培養液に、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度1 mMで添加し、目的タンパク質の発現を誘導した。その培養液をさらに275 rpmで振盪しながら37℃で3時間インキュベートした。
【0148】
大腸菌試料
500 ml振盪フラスコにおいて培養した組換えタンパク質を発現する大腸菌の200μlのアリコートを、溶解試薬でコートした各プレートの2本のカラムに添加した。空のウェルを対照として使用した。これら試料を、穏やかに振盪しながら室温で2時間インキュベートした。
【0149】
高感度プレートのための酵素免疫検出アッセイ
BioTekプレート洗浄機を用いてウェルをTBS-T(pH 8.0)で4回洗浄し、続いて脱イオン水で4回洗浄した。目的タンパク質に特異的なホースラディッシュペルオキシダーゼ (HRP)結合抗体200μlを各ウェルに添加した。ブランクとして、タンパク質を含まない他の4つのウェルにもこれら結合体を添加した。このプレートを抗体とともに室温で45分間インキュベートし、その後TBS-T(pH 8.0)で4回洗浄した。100μlのTMB基質 (Sigma T0440)を各ウェルに添加し、色が明瞭になるまで(約3〜5分)発色させた。この時点で、100μlの1M HClを各ウェルに添加し反応を停止させた。吸光度測定値は450 nmで得て、ブランクを差し引き補正後のA450を決めた。
【0150】
高結合量プレートのためのTCA沈殿
BioTekプレート洗浄機を用いて、ウェルをTBS-T(pH 8.0)で4回洗浄し、その後脱イオン水で4回洗浄した。50 mM リン酸ナトリウム(pH 8.0)、300 mM NaCI、および250 mM イミダゾールを100 μlずつHIS-Select(商標)高結合量プレートの各ウェルに等分した。0.1 M グリシン(pH 3.0)を100 μlずつANTI-FLAG(登録商標)M2高結合量プレートの各ウェルに等分した。これらプレートを37℃で20分間インキュベートして目的タンパク質を溶出した。溶出した試料をプレートから取り、きれいなチューブに入れた。各試料を0.2% デオキシコール酸ナトリウム溶液 (Sigma D3691)で希釈し、最終容量を500μlとした。試料を簡単にボルテックスし、室温で10分間インキュベートした。50 μlの100% トリクロロ酢酸溶液 (TCA) (Sigma T6323)を各試料に添加し、それらを簡単にボルテックスし、氷上で15分間インキュベートした。その試料を室温で15,000 x gにて10分間遠心分離し、上清をデカントして除いた。500μlの25% アセトン溶液 (Sigma A5351)を各チューブに添加した。試料を簡単にボルテックスし、15,000 x gで5分間遠心分離した。上清をデカントして除き、タンパク質のペレットをSpeedVacにて30℃で20分間乾燥させた。
【0151】
SDS-PAGE分析
各タンパク質ペレットを10μlのLaemmli試料緩衝液 (Sigma S3401)に再懸濁し、1 M NaOHで塩基性pHとした。試料全量を10-20% Tris-グリシンゲル (BioRad Cat. #345-0044) により電気泳動した。ゲルをEZ Blue(商標) (Sigma G1041)ゲル染色試薬で 1時間染色し、脱イオン水で一晩脱色した。
【0152】
結果および考察
酵素免疫検出アッセイにより得られた補正後のA450測定値は、HIS-Select(商標)およびANTI-FLAG(登録商標)M2高感度プレート上に目的タンパク質がうまく捕捉されたことを示した。各種の界面活性剤処方にて細胞を溶解し、タンパク質を捕捉することができた。図4はANTI-FLAG(登録商標)M2高感度プレートアッセイより得られた補正後の吸光度の値を示し、これは、DYKDDDDK (配列番号1)タグを有するタンパク質は捕捉されたがDYKDDDDK (配列番号1)タグを有さないタンパク質は捕捉されなかったことを示す。図5はHIS-Select(商標)高感度プレート免疫検出アッセイより得られた補正後の吸光度の値を含み、これは、このプレートがヒスタグ化目的タンパク質は選択的に捕捉できるが、ヒスタグを有さないタンパク質は捕捉できないことを示す。同様に、図6のSDS-PAGEの結果は、目的タンパク質がうまく捕捉され、HIS-Select(商標)高結合量プレートから溶出されたことを示す。同様の結果がANTI-FLAG(登録商標)M2高結合量プレートから得られた。表6は、図6の各レーンで用いた溶解試薬および試料組成を示す。
【表6−1】

【表6−2】

【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、HIS-Select(商標)高結合量プレートから溶出された物質のSDS-PAGEゲルのイメージを示す。溶解試薬をプレート表面上で乾燥させ、細胞0.1 mlを添加した。各レーンの内容は表1に記載する。この図は、タンパク質が未精製の溶解細胞の存在下でプレートに結合できることを示す。これらの条件下、より大量のタンパク質も結合可能であり、各種試薬により溶出可能である。
【図2】図2は、HIS-Select(商標)高結合量プレートから溶出された物質のSDS-PAGEゲルのイメージを示す。溶解試薬(0.05 ml)をプレート表面上で乾燥させ、細胞0.1 mlまたは純粋なタンパク質を各ウェルに添加した。各レーンの内容は表3に記載する。この図は、タンパク質が未精製の溶解細胞の存在または非存在下でプレートに結合できることを示す。これらの条件下、より大量のタンパク質も結合可能であり、各種試薬により溶出可能である。
【図3】図3は、HIS-Select(商標)高結合量プレートから溶出された物質のSDS-PAGEゲルのイメージを示す。溶解試薬(0.1 ml)をプレート表面上で乾燥させ、細胞0.1 mlまたは精製タンパク質を各ウェルに添加した。各レーンの内容は表3に記載する。この図は、タンパク質が未精製の溶解細胞の存在または非存在下でプレートに結合できることを説明する。これらの条件下、より大量のタンパク質も結合可能であり、各種試薬により溶出可能である。
【図4】図4は、ANTI-FLAG(登録商標)M2高感度プレートを用いて酵素免疫検出アッセイにより得られた補正後の吸光度(A450)の値を示す。グラフ上の斜線のバーはDYKDDDDK(配列番号1)タグを有するタンパク質の結果を表し、平行線のバーはDYKDDDDK(配列番号1)/ヒスタグを有するタンパク質の結果を表し、白色のバーは、ヒスタグを有するタンパク質の結果を表す。用いた溶解試薬は実施例4に記載され、グラフ上で文字A〜Hにより表される。
【図5】図5は、HIS-Select(商標)高感度プレートを用いて酵素免疫検出アッセイにより得られた補正吸光度(A450)値を示す。グラフ上の斜線のバーはDYKDDDDK(配列番号1)タグを有するタンパク質の結果を表し、平行線のバーはDYKDDDDK(配列番号1)/ヒスタグを有するタンパク質の結果を表し、白色のバーは、ヒスタグを有するタンパク質の結果を表す。用いた溶解試薬は実施例4に記載され、グラフ上で文字A-Hにより表される。
【図6】図6は、HIS-Select(商標)高結合量プレートから溶出された物質のSDS-PAGEゲルのイメージを示す。溶解試薬、処理試薬、および酵素の各種組み合わせをHIS-Select(商標)高結合量プレート表面上で乾燥させ、目的タンパク質を含む細胞を添加した。各レーンの内容は表6に記載する。この図は、前記各種溶解試薬が細胞溶解能を有していたこと、および目的タンパク質がうまく捕捉され、HIS-Select(商標)高結合量プレートから溶出されたことを示す。
【図7】図7は、本発明の容器を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞から細胞成分を抽出するための容器であって、
口、内部表面、容量V、および内部表面の少なくとも一部の上に溶解試薬のコーティングを有し、
内部表面が側壁構造および底を含み、
コーティング中の溶解試薬の量が宿主細胞を含む液状懸濁液が容器に導入された場合に該宿主細胞を溶解することができる溶解溶液を形成するのに十分な量であり、
コートされた内部表面の面積SAの容量Vに対する比率が約4 mm2/μl未満である容器。
【請求項2】
宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するための容器であって、
口、内部表面、容量V、溶解試薬、および支持捕捉リガンドを有し、
側壁構造が底と口の間に存在し、
口が液体を容器に導入するための入口および容器から液体を除去するための出口として機能し、
内部表面が側壁構造および底を含み、
捕捉リガンドが無傷の宿主細胞または固体細胞成分を含有する液状懸濁液が口を介して容器に導入された場合に無傷の宿主細胞またはそれに由来する固体細胞成分と接触できる容器内の位置に支持される容器。
【請求項3】
宿主細胞から細胞成分を抽出するためのマルチウェルプレートであって、少なくとも1つのウェルが溶解試薬を含み、該溶解試薬が(i)ウェルの内部表面の少なくとも一部の上にコートされているか、または(ii)材料塊の形態でウェルに含まれるマルチウェルプレート。
【請求項4】
ウェルがさらに細胞成分のための捕捉リガンドを含む、請求項3に記載のマルチウェルプレート。
【請求項5】
溶解試薬が界面活性剤、溶解酵素、カオトロープ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1または2に記載の容器または請求項3に記載のマルチウェルプレート。
【請求項6】
溶解試薬が界面活性剤であり、該界面活性剤が以下からなる群より選択される、請求項5記載の容器またはマルチウェルプレート:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、オクチル-β-チオグルコピラノシド、オクチル-グルコピラノシド、3-(4-ヘプチル)フェニル 3-ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニオプロパンスルホナート、3-[N,N-ジメチル(3-ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホナート、3-(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩、3-(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩、3-(N,N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホナート、n-ドデシルα-D-マルトシド、およびそれらの組み合わせ。
【請求項7】
溶解試薬が溶解酵素であり、該溶解酵素が以下からなる群より選択される、請求項5記載の容器またはマルチウェルプレート:β-グルクロニダーゼ、グルカナーゼ、グルスラーゼ、リゾチーム、リチカーゼ、マンナナーゼ、ムタノリシン、ザイモリアーゼ、セルラーゼ、リソスタフィン、ペクトリアーゼ、ストレプトリシン O、およびそれらの各種組み合わせ。
【請求項8】
溶解試薬がカオトロープであり、該カオトロープが以下からなる群より選択される、請求項5記載の容器またはマルチウェルプレート:尿素、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン 、チオ硫酸グアニジン、およびチオ尿素、またはそれらのいずれかの組み合わせ。
【請求項9】
溶解試薬がさらに緩衝液、消泡剤、充填剤、処理酵素、または酵素阻害剤、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項5記載の容器またはマルチウェルプレート。
【請求項10】
捕捉リガンドが金属キレート、グルタチオン、ビオチン、ストレプトアビジン、抗体、荷電粒子、または不溶性疎水基である、請求項2記載の容器または請求項4記載のマルチウェルプレート。
【請求項11】
捕捉リガンドが配列番号1、配列番号2、または配列番号3に対する特異性を有する抗体である、請求項10記載の容器またはマルチウェルプレート。
【請求項12】
捕捉リガンドが以下の式の構成に由来する金属キレートである、請求項10記載の容器またはマルチウェルプレート:
【化1】

(式中、Qは担体;
S1はスペーサー;
Lは-A-T-CH(X)-または-C(=O)-;
Aはエーテル、チオエーテル、セレノエーテル、またはアミド結合;
Tは結合または置換もしくは非置換アルキルもしくはアルケニル;
Xは-(CH2)kCH3、-(CH2)kCOOH、-(CH2)kSO3H、-(CH2)kPO3H2、-(CH2)kN(J)2、または-(CH2)kP(J)2、好ましくは-(CH2)kCOOHまたは-(CH2)kSO3H;
kは0〜2の整数;
Jはヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル;
Yは-COOH、-H、-SO3H、-PO3H2、-N(J)2、または-P(J)2、好ましくは-COOH;
Zは-COOH、-H、-SO3H、-PO3H2、-N(J)2、または-P(J)2、好ましくは-COOH;および
iは0〜4の整数、好ましくは1または2、である)。
【請求項13】
金属キレートが以下からなる群より選択される構成に由来する、請求項12記載の容器またはマルチウェルプレート:
【化2】

【化3】

【化4】

および
【化5】

(式中、Qは担体である)。
【請求項14】
以下を含む、宿主細胞から細胞成分を抽出するための方法:
(a) 宿主細胞を含む液状懸濁液を容器に導入すること、ここで該容器が口、内部表面、容量V、および内部表面の少なくとも一部の上に溶解試薬のコーティングを有し、内部表面が側壁構造および底を含み、コートされた内部表面の面積SAの容量Vに対する比率が約4 mm2/μl未満である、および
(b) 該容器内で宿主細胞を溶解して、細胞成分を放出させ、かつ細胞片を形成させること。
【請求項15】
以下を含む、宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するための方法:
(a) 宿主細胞を含む液状懸濁液を容器に導入すること、ここで該容器が口、内部表面、容量V、溶解試薬、および支持捕捉リガンドを有し、内部表面が側壁構造および底を含み、側壁構造が底と口の間に存在し、口が液体を容器に導入するための入口および容器から液体を除去するための出口として機能する、
(b) 該容器内で宿主細胞を溶解して、細胞成分を放出させ、かつ固体細胞片を形成させること、および
(c) 該固体細胞片の存在下で細胞成分を捕捉リガンドにより捕捉すること。
【請求項16】
宿主細胞から細胞成分を抽出するための容器またはマルチウェルプレートを製造する方法であって、容器またはマルチウェルプレートの複数のウェルの内部表面に溶解試薬を含む液体を接触させること、および該液体を乾燥させて容器またはウェルの内部表面上に溶解試薬の吸着層を形成させることを含む方法。
【請求項17】
溶解試薬が界面活性剤、溶解酵素、カオトロープ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14、15、または16記載の方法。
【請求項18】
溶解試薬が界面活性剤であり、該界面活性剤が以下からなる群より選択される、請求項17記載の方法:3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、オクチル-β-チオグルコピラノシド、オクチル-グルコピラノシド、3-(4-ヘプチル) フェニル 3-ヒドロキシプロピル) ジメチルアンモニオプロパンスルホナート、3-[N,N-ジメチル(3-ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]プロパンスルホナート、3-(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩、3-(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホナート分子内塩、3-(N,N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホナート、n-ドデシルα-D-マルトシド、またはそれらの組み合わせ。
【請求項19】
溶解試薬が溶解酵素であり、該溶解酵素が以下からなる群より選択される、請求項17記載の方法:β-グルクロニダーゼ、グルカナーゼ、グルスラーゼ、リゾチーム、リチカーゼ、マンナナーゼ、ムタノリシン、ザイモリアーゼ、セルラーゼ、リソスタフィン、ペクトリアーゼ、ストレプトリシン O、およびそれらの各種組み合わせ。
【請求項20】
溶解試薬がカオトロープであり、該カオトロープが以下からなる群より選択される、請求項17記載の方法:尿素、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、チオ硫酸グアニジン、およびチオ尿素、またはそれらのいずれかの組み合わせ。
【請求項21】
溶解試薬がさらに緩衝液、消泡剤、充填剤、処理酵素、酵素阻害剤、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項17記載の方法。
【請求項22】
捕捉リガンドが金属キレート、グルタチオン、ビオチン、ストレプトアビジン、抗体、荷電粒子、または不溶性疎水基である、請求項15記載の方法。
【請求項23】
捕捉リガンドが配列番号1、配列番号2、または配列番号3に対して特異性を有する抗体である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
捕捉リガンドが以下の式の構成に由来する金属キレートである、請求項22記載の方法:
【化6】

(式中、Qは担体;
S1はスペーサー;
Lは-A-T-CH(X)-または-C(=O)-;
Aはエーテル、チオエーテル、セレノエーテル、またはアミド結合;
Tは結合または置換もしくは非置換アルキルもしくはアルケニル;
Xは-(CH2)kCH3、-(CH2)kCOOH、-(CH2)kSO3H、-(CH2)kPO3H2、-(CH2)kN(J)2、または-(CH2)kP(J)2、好ましくは-(CH2)kCOOHまたは-(CH2)kSO3H;
kは0〜2の整数;
Jはヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル;
Yは-COOH、-H、-SO3H、-PO3H2、-N(J)2、または-P(J)2、好ましくは-COOH;
Zは-COOH、-H、-SO3H、-PO3H2、-N(J)2、または-P(J)2、好ましくは-COOH;および
iは0〜4の整数、好ましくは1または2、である)
【請求項25】
以下を含む、宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するための方法:
(a) 宿主細胞を含む液状懸濁液を容器に導入すること、ここで該容器が口、内部表面、容量V、溶解試薬、および支持捕捉リガンドを有し、内部表面が側壁構造および底を含み、側壁構造が底と口の間に存在し、口が液体を容器に導入するための入口として機能する、
(b) 該容器内で宿主細胞を溶解して、細胞成分を放出させ、かつ固体細胞片を形成させること、
(c) 該固体細胞片の存在下で細胞成分を捕捉リガンドにより捕捉すること、
(d) 該細胞成分を捕捉リガンドから解離すること、および
(e) 解離した細胞成分を回収すること。
【請求項26】
請求項1もしくは2に記載の容器または請求項3に記載のマルチウェルプレートおよび宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するための説明書を含む、宿主細胞から細胞成分を抽出および単離するためのキット。
【請求項27】
捕捉された細胞成分を分析または検出するための試薬をさらに含む、請求項26記載のキット。
【請求項28】
内部チャンバーを有するカラムを含み、該チャンバーが捕捉リガンドが結合した樹脂ベッドおよび溶解試薬を含む凍結乾燥塊を含む、請求項2に記載の容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2006−525807(P2006−525807A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514258(P2006−514258)
【出願日】平成16年5月3日(2004.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/013767
【国際公開番号】WO2004/099384
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(598169572)シグマ−アルドリッチ・カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】Sigma−Aldrich Co.
【Fターム(参考)】