説明

固相配列決定法

末端リン酸を標識したヌクレオチドの核酸ポリメラーゼの基質としての利用に基づいて試料の核酸を配列決定する方法を記載する。提供される方法は、末端リン酸に比色用色素、化学ルミネセンス部分若しくは蛍光部分、又は質量タグ若しくは電気化学的タグを結合させたヌクレオシドポリリン酸、ジデオキシヌクレオシドポリリン酸、又はデオキシヌクレオシドポリリン酸類似体を用いる。核酸ポリメラーゼが基質としてこの類似体を用いると、リン酸転移の無機ポリリン酸副生物に酵素賦活型標識が存在することになる。ホスファターゼによるリン酸転移のポリリン酸生成物の開裂から、ここに結合した標識に検出可能な変化を生ずる。幾つかの例では、標識ポリリン酸を標識を介して直接検出して、核酸についての情報を提供することができる。ポリメラーゼ検定がホスファターゼの存在下で行われる場合には、DNA又はRNAの合成の実時間監視及び標的核酸の特性決定の簡便な方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、3以上のリン酸を含有する末端リン酸を標識したヌクレオチドの核酸ポリメラーゼの基質としての利用に基づいて試料のポリヌクレオチドを配列決定する方法に関する。用いられる標識は、酵素により賦活されるものであって、化学ルミネセンス部分、蛍光部分、電気化学的部分及び発色部分、並びに質量タグを含む。
【背景技術】
【0002】
高い特異性及び高い感度で試料の特定の核酸及び分析対象を検出する方法は公知である。かかる方法は一般的には、特定の標的配列又は分析対象の存在に基づいて核酸配列を先ず増幅することを必要とする。増幅に続いて、増幅された配列を検出して定量化する。従来の核酸検出系には、蛍光標識の検出、蛍光酵素結合型検出系、抗体媒介型標識検出、及び放射性標識の検出等がある。
【特許文献1】米国特許第4683195号
【特許文献2】米国特許第5854033号
【特許文献3】米国特許第5,558,91号
【特許文献4】米国特許第5582980号
【特許文献5】米国特許第5112960号
【特許文献6】米国特許第4978614号
【非特許文献1】DNA Structure Part A:Synthesis and Physical analysis of DNA, Lilley, D.M.J. and Dahlberg, J.E. (Eds.), Methods Enzymol., 211, Academic Press, Inc., New York (1992)
【非特許文献2】Saiki et al.、Science Vol. 239, page 487, 1988
【非特許文献3】Sambrook, J. et al. (Eds.), Molecular Cloning, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1980)
【非特許文献4】Ausubel, F.M. et al. (Eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY (1999)
【非特許文献5】Wu, R. (Ed.), Recombinant DNA Methodology II, Methods in Enzymology, Academic Press, Inc., NY, (1995)
【非特許文献6】Ferraro, M. and Gotor, V., Chem Rev. 2000, volume 100, 4319−48
【非特許文献7】Joeng, L.S. et al., J Med. Chem. 1993, vol. 356, 2627−38
【非特許文献8】Kim H.O. et al., J Med. Chem. 193, vol. 36, 30−7
【非特許文献9】Eschenmosser A., Science 1999, vol. 284, 2118−2124
【非特許文献10】Martinez, C.I., et al., Nucleic Acids Research 1999, vol. 27, 1271−1274
【非特許文献11】Martinez, C.I., et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 1997, vol. 7, 3013−3016
【非特許文献12】Arzumanov, A. et al.、J Biol Chem (1996) Oct 4; 271 (40): 24389−94
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
広く用いられている検出方法の一つの短所は、最終の標識生成物又は副生物から標識出発物質を分離する必要があることである。かかる分離は一般的には、ゲル電気泳動、又は標的配列の膜への固定を検出のために必要とする。さらに、しばしば多数の試薬及び/又はインキュベートステップが検出のために必要とされる。
【0004】
DNAポリメラーゼ及びRNAポリメラーゼが、三リン酸部分のγ位での変性又はこの位置に代えた変性を有するヌクレオシドを認識して利用し得ることは公知である。さらに、様々なポリメラーゼがγ変性型ヌクレオチド三リン酸(NTP)を認識して利用する能力は、γリン酸に結合した部分に依存して変化するらしいということも公知である。一般的には、RNAポリメラーゼはDNAポリメラーゼよりも不規則である。
【0005】
γ−リン酸変性型ヌクレオチドの存在下でRNAポリメラーゼからのRNA合成を監視する比色検定が従来技術で報告されている。この従来技術の報告では、γ変性型アルカリホスファターゼ耐性ヌクレオシド三リン酸の存在下でRNAポリメラーゼ反応を行っており、このγ変性型NTPは、γ−リン酸位がジニトロフェニル基で変性されている。RNAポリメラーゼ反応を、このγ変性型NTPを単独のヌクレオシド三リン酸として、且つ単独重合体型の鋳型の存在下で行うときに、RNAポリメラーゼはこの変性型NTPを認識して利用し得ることが判明している。さらに、発色性p−ニトロフェニレートへのリン酸転移のp−ニトロフェニルピロリン酸アルド生成物を消化したアルカリホスファターゼの存在下でこのポリメラーゼ反応を行うときに、吸収の増大が報告されている。この検出方法の短所は、アルカリホスファターゼの存在下で行われる実時間比色検定が、単独重合体型鋳型でのみ作用し、このためヘテロ重合体型鋳型の配列分析には利用できないことである。
【0006】
従って、ヘテロ重合体型鋳型の存在下でRNAを検出する方法であって、単一種の末端リン酸変性型ヌクレオチドをアルカリホスファターゼに対して実質的に非反応性である単独のヌクレオチドとして用いることに限定されない方法を提供できると有利である。これにより、ヘテロ重合体型鋳型を用いたRNA合成を実時間監視する単一試験管検定が可能になる。
【0007】
さらに、RNAポリメラーゼによる認識及び利用をより十分なものにするように末端リン酸位の標識の同一性(identity)を変化させたRNA用の同様の検定を提供できると有利である。さらに、単純で通常業務的な手段しか検出に必要とせず、化学ルミネセンス検出及び蛍光検出、質量又は還元電位による分析を可能にすると共に比色検出を改善するように、末端リン酸位の標識を変化させることができると望ましい。
【0008】
末端変性型ヌクレオチドの認識及び利用についてはDNAポリメラーゼはRNAポリメラーゼほど不規則でないことは当技術分野で公知であり、末端位の部分の同一性がDNAポリメラーゼのヌクレオチドに対する特異性に大きな影響を及ぼし得ることから、DNAポリメラーゼの活性を監視することによりDNAを検出する非放射性の方法を提供できると極めて望ましい。さらに、DNAの合成及び配列決定が実時間監視のために単一試験管検定で達成されて、ヌクレオチド基質の末端リン酸位の標識が化学ルミネセンス検出、蛍光検出及び比色検出を包含すると共に、質量又は還元電位による分析を包含し得ると望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、核酸配列の存在を検出する方法を提供し、この方法は、(a)末端リン酸を標識したヌクレオチドの反応を含んでおり、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる核酸ポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)検出可能種を生成するように、標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させるステップと、(c)検出可能種の存在を検出するステップと、を含んでいる。本発明でのホスファターゼの定義は、リン酸モノエステル、リン酸チオエステル、ホスホルアミデート、ポリリン酸及びヌクレオチドを開裂させて無機リン酸を放出する任意の酵素を含む。本発明の文脈では、この酵素は末端を標識したヌクレオシドリン酸を開裂させない(すなわち末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸はホスファターゼに対して実質的に非反応性である)。本書で特定的に掲げられているホスファターゼの定義は、特に限定されないが、アルカリホスファターゼ(EC3.1.3.1)及び酸ホスファターゼ(EC3.1.3.2)を含む。本発明でのヌクレオチドの定義は天然又は変性のヌクレオシドリン酸を含む。
【0010】
本発明はさらに、核酸配列を配列決定する方法を提供し、この方法は、(a)重合酵素、プライマー、鋳型又はこれらの成分の2以上を混合することにより形成される複合体のような配列決定反応の鍵成分の一つを固定するステップと、(b)ステップ(a)の前に既に行われていない限りにおいて交雑を進行させるステップと、(c)核酸重合酵素の存在下でホスファターゼ及び末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸をインキュベートするステップであって、この反応によって、存在するヌクレオチドが重合部位において標的配列に対して相補的である場合には標識ポリリン酸を生成する、インキュベートするステップと、によるものである。次いで、標識ポリリン酸はホスファターゼ、又はリン酸転移酵素若しくはポリリン酸転移酵素と反応して、リン酸を結合させた色素から容易に識別可能な信号を伴う遊離標識を生成する。加えられるヌクレオチドが重合部位において標的配列に対して相補的でない場合には、重合は生じず、また遊離標識も生成されない。このように、遊離標識の形成によって、加えられた塩基が同定され、故に標的配列が同定される。重合反応に数ミリ秒から数分間にわたる十分な時間を掛けて、信号の有無を検出した後に、固体支持体を、特に限定されないが、洗浄、濾過、遠心分離、デカンテーション等を含む当技術分野で公知の手段の任意のものによって溶液から分離することができ、次のヌクレオチドを新たなポリメラーゼ(必要ならば)及びホスファターゼの存在下で加えることができる。尚、ホスファターゼを、重合が既に進行してから加えてもよいことを特記しておく。
【0011】
以上の記載によれば、本発明は、核酸鋳型の標的領域を配列決定する方法を提供し、この方法は、
(a)反応混合物を形成することにより固体支持体上で核酸重合反応を行うステップであって、前記反応混合物は、核酸鋳型、プライマー、核酸重合酵素、及び天然塩基又は塩基類似体を有するヌクレオシドから選択される1種の末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸を含んでおり、
ここで、前記反応混合物の成分又は2以上の該成分の複合体が前記固体支持体に固定され、前記成分(1種以上)は前記核酸鋳型、前記プライマー及び前記核酸重合酵素からなる群から選択され、
当該反応は、前記末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸が重合部位において鋳型塩基に対して相補的な塩基を含有する場合には標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる、反応を行うステップと、
(b)前記反応混合物にホスファターゼ処理を施すステップであって、ステップ(a)において前記標識ポリリン酸が生成された場合には検出可能種が生成される、処理を施すステップと、
(c)前記検出可能種を検出するステップと、
(d)残りの天然塩基又は塩基類似体から選択される異なる末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸を前記反応混合物に加えることにより前記重合反応を続行すると共に、ステップ(b)及び(c)を繰り返すステップと、
(e)前記検出可能種の生成を結果として生ずる末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸の同一性及び添加順序から前記標的領域配列を同定するステップと、
を備える。
【0012】
本発明はさらに、連続フローシステム又はストップフローシステムにおいて上述の各ステップを用いて標的を配列決定する方法を提供し、ここで、固定された物質は、当技術分野で公知の手段の任意の一つによって所定位置に保持され、異なる試薬及び緩衝液を一端でシステムにポンプ供給し他端でシステムから排出する。試薬及び緩衝液は、重合反応及びホスファターゼ加水分解を進行させることができるように、連続的に流動してもよいし、所定の時間にわたって所定位置に保持されてもよい。
【0013】
本発明はさらに、DNA配列の存在を検出する方法を提供し、この方法は、(a)末端リン酸を標識したヌクレオチドの存在下で、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずるDNAポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)検出可能種を生成するように、標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させるステップと、(c)検出可能種の存在を検出するステップと、を含んでいる。
【0014】
また、核酸配列の存在を検出する方法が提供され、この方法は、(a)4以上のリン酸基をポリリン酸鎖として有する少なくとも1種の末端リン酸を標識したヌクレオチドの存在下で、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる核酸ポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)標識ポリリン酸を検出するステップと、を備える。
【0015】
以上の記載によれば、本発明は、核酸鋳型の標的領域を配列決定する方法を提供し、この方法は、
(a)反応混合物を形成することにより固体支持体上で核酸重合反応を行うステップであって、前記反応混合物は、核酸鋳型、プライマー、核酸重合酵素、及び天然塩基又は塩基類似体を有するヌクレオシドから選択され4以上のリン酸を有する1種の末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸を含んでおり、
ここで、前記反応混合物の成分又は2以上の該成分の複合体が前記固体支持体に固定され、前記成分(1種以上)は前記核酸鋳型、前記プライマー及び前記核酸重合酵素からなる群から選択され、
当該反応は、前記末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸が重合部位において鋳型塩基に対して相補的な塩基を含有する場合には標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる、反応を行うステップと、
(b)前記標識ポリリン酸を検出するステップと、
(c)残りの天然塩基又は塩基類似体から選択される異なる末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸を前記反応混合物に加えることにより前記重合反応を続行すると共に、ステップ(b)を繰り返すステップと、
(d)前記標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸の同一性及び添加順序から前記標的領域配列を同定するステップと、
を備える。
【0016】
加えて、本発明は、核酸配列の存在を検出する方法に関し、この方法は、(a)4以上のリン酸基をポリリン酸鎖として有する少なくとも1種の末端リン酸を標識したヌクレオチドの存在下で、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる核酸ポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)検出可能種を生成するように、標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させるステップと、(c)検出可能種の存在を検出するステップと、を備える。
【0017】
本発明のさらにもう一つの観点は、核酸を定量化する方法に関し、この方法は、(a)末端リン酸を標識したヌクレオチドの反応を含んでおり、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる核酸ポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)核酸の量に実質的に比例した量で検出可能な副生種を生成するように、標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させるステップと、(c)検出可能種を測定するステップと、(d)核酸の量を決定するように、既知の標準を用いて測定を比較するステップと、を含む。
【0018】
本発明はさらに、DNA配列を定量化する方法に関し、この方法は、(a)末端リン酸を標識したヌクレオチドの存在下で、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずるDNAポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)DNA配列の量に実質的に比例した量で検出可能な副生種を生成するように、標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させるステップと、(c)検出可能種を測定するステップと、(d)DNAの量を決定するように、既知の標準を用いて測定を比較するステップと、を含む。
【0019】
本発明のもう一つの観点は、核酸配列において単一のヌクレオチドの同一性を決定する方法に関し、この方法は、(a)少なくとも1種の末端リン酸を標識したヌクレオチドの存在下で、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる核酸ポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)検出可能種を生成するように、標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させるステップと、(c)検出可能種の存在を検出するステップと、(d)組み込まれたヌクレオシドを同定するステップと、を含む。
【0020】
また、核酸配列において単一のヌクレオチドの同一性を決定する方法が提供され、この方法は、(a)4以上のリン酸基をポリリン酸鎖として有する少なくとも1種の末端リン酸を標識したヌクレオチドの存在下で、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる核酸重合反応を行うステップと、(b)検出可能種を生成するように、標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させるステップと、(c)前記検出可能種の存在を検出するステップと、(d)組み込まれたヌクレオシドを同定するステップと、を含む。
【0021】
本発明はさらに、核酸検出キットを含んでおり、このキットは、
(a)下式の少なくとも1種又は複数の末端リン酸を標識したヌクレオチド
【0022】
【化1】

【0023】
であって、式中、
P=リン酸(PO)及びその誘導体であり、
nは2以上であり、
Yは酸素原子又はイオウ原子であり、
Bは含窒素複素環式塩基であり、
Sは非環式部分、炭素環式部分又は糖部分であり、
P−Lは、リン酸が除去されたときに、独立して検出可能になるリン酸化標識であり、
ここで、Lは、天然又は変性のヌクレオチドの末端リン酸位にリン酸エステル結合、チオエステル結合又はホスホルアミデート結合を形成するのに適したヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する酵素賦活型標識である、末端リン酸を標識したヌクレオチドと、
(b)DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ又はリバーストランスクリプターゼの少なくとも一つと、
(c)ホスファターゼと、
を含む。
【0024】
本発明はまた、もう一つの核酸検出キットを提供し、このキットは、
(a)下式の少なくとも1種の末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸
【0025】
【化2】

【0026】
であって、式中、
P=リン酸(PO)及びその誘導体であり、
nは3以上であり、
Yは酸素原子又はイオウ原子であり、
Bは含窒素複素環式塩基であり、
Sは非環式部分、炭素環式部分又は糖部分であり、
P−Lはリン酸化標識であり、
ここで、Lは、天然又は変性のヌクレオチドの末端リン酸位にリン酸エステル結合、ホスホネート結合、チオエステル結合又はホスホルアミデート結合を形成するのに適したヒドロキシル基、ハロアルキル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する標識である、末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸と、
(b)DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ及びリバーストランスクリプターゼからなる群から選択される少なくとも1種の酵素と、
を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本書で定義される「ヌクレオシド」との用語は、1′位又は等価位置において炭素環式部分又は非環式部分のような糖又は糖置換体に結合したプリン、デアザプリン、ピリミジン又は変性塩基を含む化合物であり、2′−デオキシ形態、2′−ヒドロキシル形態及び2′,3′−ジデオキシ形態、並びに他の置換形態を含む。
【0028】
本書で用いられる「ヌクレオチド」との用語は、ヌクレオシドのリン酸エステルを指し、ここで、エステル化部位は典型的には、五炭糖のC−5位に結合したヒドロキシル基に対応する。
【0029】
「オリゴヌクレオチド」との用語は、ヌクレオチド又はその誘導体の線状オリゴマーをを含んでおり、デオキシリボヌクレオシド及びリボヌクレオシド等を含む。本明細書全体を通じて、オリゴヌクレオチドが文字配列で表されている場合には常に、特に記載のない限りヌクレオチドが左から右に5′→3′の順序となっており、Aはデオキシアデノシン、Cはデオキシシチジン、Gはデオキシグアノシン、及びTはチミジンを示す。
【0030】
「プライマー」との用語は、特有の核酸配列に特定の方法でアニールして、この特有の配列の増幅を可能にする線状オリゴヌクレオチドを指す。
【0031】
「標的核酸配列」等の表現は、その配列同一性、又はヌクレオシドの順序若しくは位置が本発明の方法の1種以上によって決定される核酸を指す。
【0032】
本発明は、試料のポリヌクレオチドを配列決定する方法に関し、この方法では、簡便な検定を用いて、核酸ポリメラーゼの活性によってRNA又はDNAの合成を監視する。RNAポリメラーゼ及びDNAポリメラーゼは、ヌクレオシド三リン酸(NTP)又はデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)から、伸張しつつあるオリゴヌクレオチド鎖の3′ヒドロキシルへのヌクレオシド一リン酸の転移を介してオリゴヌクレオチドを合成する。この反応の推進力は、無水結合の開裂及び無機ピロリン酸の付随的な形成である。本発明は、ヌクレオチドの末端リン酸の構造的変性がヌクレオチドのポリメラーゼ反応での作用能力を破壊することはないとの知見を利用している。オリゴヌクレオチド合成反応は、ヌクレオチドのα−及びβ−リン酸基での直接的な変化にしか関わっておらず、末端リン酸位を変性させたヌクレオチドを核酸ポリメラーゼ反応の基質として有用なものとすることができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼI、II、III、若しくはDNAポリメラーゼα、β、γのようなDNAポリメラーゼ、又は末端デオキシヌクレオチジルトランファラーゼ又はテロメラーゼである。他の実施形態では、適当なポリメラーゼは、特に限定されないが、DNA依存型RNAポリメラーゼ、プライマーゼ、又はRNA依存型DNAポリメラーゼ(リバーストランスクリプターゼ)を含む。
【0034】
本発明によって提供される方法は、デオキシヌクレオシドポリリン酸、ジデオキシヌクレオシドポリリン酸、炭素環式ヌクレオシドポリリン酸、又は非環式ヌクレオシドポリリン酸類似体のようなヌクレオシドポリリン酸を用いて、末端リン酸に電気化学的標識、質量タグ、又は発色色素、化学ルミネセンス標識若しくは蛍光標識を結合させる。核酸ポリメラーゼがこの類似体を基質として用いると、酵素賦活型標識がリン酸転移の無機ポリリン酸副生物に存在することになる。ホスファターゼを介したリン酸転移のポリリン酸生成物の開裂は、ポリリン酸生成物に結合した標識の検出可能な変化を齎す。尚、RNAポリメラーゼ及びDNAポリメラーゼは変性した末端リン酸基を有するヌクレオチドを認識することができるが、本発明者等は、この出発物質はホスファターゼの鋳型ではないと決定したことを特記しておく。以下の式は、本発明の方法に最も適した分子すなわち末端リン酸を標識したヌクレオチド、標識ポリリン酸副生物及び酵素賦活型標識を示す。
【0035】
【化3】

【0036】
上の式において、nは1以上であり、R及びRは独立にH、OH、SH、SR、OR、F、Br、Cl、I、N、NHR又はNHであり、Bはヌクレオシド塩基又は変性複素環式塩基であり、XはO、S又はNHであり、YはO、S、又はBHであり、Lはホスファターゼ賦活可能な標識であって、発色性分子、蛍光発光性分子、化学ルミネセンス分子、質量タグ又は電気化学的タグのいずれであってもよい。質量タグは質量分析法に適した低分子量部分であって、質量差によって他の成分から容易に識別可能な部分である。電気化学的タグは、酸化又は還元が容易な種である。nが2以上であると、nが1であるときよりもヌクレオチドは遥かに良好なポリメラーゼの基質となることが発見された。従って、好適実施形態では、nは2、3又は4であり、R及びRは独立にH又はOHであり、X及びYはOであり、Bはヌクレオチド塩基であり、Lは標識であって、発色性分子、蛍光発光性分子又は化学ルミネセンス分子であってよい。
【0037】
核酸配列の存在を検出する方法の本書に掲げた一実施形態では、(a)末端リン酸を標識したヌクレオチドの反応を含んでおり、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる核酸ポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)標識ポリリン酸を、リン酸エステルを加水分解して検出可能種を生成するのに適したホスファターゼと反応させるステップと、(c)適当な手段によって検出可能種の存在を検出するステップと、を含む。本実施形態では、核酸ポリメラーゼ反応に用いられる鋳型はヘテロ重合体型鋳型であっても単独重合体型鋳型であってもよい。末端リン酸を標識したヌクレオチドとの表現によって、本明細書の全体を通じて、伸長しつつあるヌクレオチド鎖へのヌクレオシド一リン酸の組み込みに続いて付随して放出される標識ポリリン酸がホスファターゼと反応して検出可能種を生成し得ることを意味する。ホスファターゼに対して実質的に非反応性であるヌクレオチドであって反応に含まれる他のヌクレオチドは、例えば検出可能種の生成を齎さない部分によって末端リン酸位でブロックされていてよい。この特定の実施形態での検出される核酸としては、RNA、天然若しくは合成のオリゴヌクレオチド、又はミトコンドリアDNA若しくは染色体DNAがある。
【0038】
本発明はさらに、DNA配列の存在を検出する方法を提供し、この方法は、(a)末端リン酸を標識したヌクレオチドの存在下で、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずるDNAポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)検出可能種を生成するように、標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させるステップと、(c)前記検出可能種の存在を検出するステップと、を含む。検出されるDNA配列としては、細胞から単離されたDNA、重亜硫酸処理されたメチル化DNAのような化学処理されたDNA、又は当技術分野で公知の方法に従って化学合成若しくは酵素合成されたDNA等がある。かかる方法としては、PCR、及びDNA Structure Part A:Synthesis and Physical analysis of DNA, Lilley, D.M.J. and Dahlberg, J.E. (Eds.), Methods Enzymol., 211, Academic Press, Inc., New York (1992)に記載されたものがある。尚、この文献を参照により本出願に援用する。DNA配列はさらに、染色体DNA及び天然又は合成のオリゴヌクレオチドを含んでいてよい。DNAは二重螺旋型であっても一重螺旋型であってもよい。
【0039】
本発明の方法はさらに、ポリメラーゼ反応において1種以上の追加の検出試薬を含めるステップを含んでいてよい。1種以上の追加の検出試薬は、互いに異なり且つ検出可能種とも異なるように検出可能な応答を各々独立に生成することが可能である。例えば、1種以上の追加の検出試薬の1種以上が抗体であってもよい。
【0040】
ポリメラーゼ反応における基質としての添加に適したヌクレオチドとしては、特に限定されないが、デオキシリボヌクレオシドポリリン酸、リボヌクレオシドポリリン酸、ジデオキシヌクレオシドポリリン酸、炭素環式ヌクレオシドポリリン酸及び非環式ヌクレオシドポリリン酸、並びにこれらの類似体等を含めたようなヌクレオシドポリリン酸がある。特に、ポリリン酸鎖において3、4、5又は6リン酸基を含有するヌクレオチドであって、末端リン酸が標識されているものが望ましい。
【0041】
4以上のリン酸基をポリリン酸鎖として有する末端リン酸を標識したヌクレオチドを含む実施形態では、ホスファターゼ処理を用いずにリン酸転移の標識ポリリン酸副生物を検出し得ることは本発明の思量の範囲内にあることを特記しておく。例えば、天然又は変性のヌクレオシド塩基、特にグアニンは、蛍光マーカーの消光を生じ得ることが公知である。従って、末端リン酸を標識したヌクレオチドでは、標識が塩基によって部分的に消光される場合がある。ヌクレオシド一リン酸を組み込むと、その蛍光が強化されるため標識ポリリン酸副生物を検出することができる。代替的には、蛍光、発色、化学ルミネセンス、又は電気化学的検出による同定の前にクロマトグラフィ分離法によって標識ポリリン酸生成物を物理的に分離することも可能である。加えて、質量分析を用いて質量差によって生成物を検出することもできる。
【0042】
本発明の方法は、DNAポリメラーゼ又はRNAポリメラーゼの少なくとも一方の存在下でポリメラーゼ反応を行うことを含み得る。適当な核酸ポリメラーゼとしてはまた、プライマーゼ、テロメラーゼ、末端デオキシヌクレオチジルトランファラーゼ及びリバーストランスクリプターゼ等がある。ポリメラーゼ反応を生じさせるために核酸鋳型が必要とされる場合があり、ポリメラーゼ反応溶液に加えることができる。本発明の検出方法のステップ(a)、(b)及び(c)の全てが、相次いで実行されるばかりでなく単一の均一な反応混合物を用いて同時に実行され得るものと期待される。
【0043】
核酸ポリメラーゼ反応が、ポリメラーゼを利用する増幅方法を含み得ることは、十分に本発明の思量の範囲内にある。かかる方法の実例としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、回転円型増幅(RCA)、及び核酸配列式増幅(NASBA)等がある。例えば、標的分子がDNAのような核酸重合体である場合に、アデニン、チミン、シトシン、グアニン又は他の窒素複素環式塩基のようなγ−リン酸を標識したヌクレオチド塩基のDNA分子へのPCR組み込みによって標的分子を検出することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法は、Saiki et al.によるScience Vol. 239, page 487, 1988、Mullis et al.による米国特許第4683195号、Sambrook, J. et al. (Eds.)によるMolecular Cloning, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1980)、Ausubel, F.M. et al. (Eds.)によるCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY (1999)、及びWu, R. (Ed.)によるRecombinant DNA Methodology II, Methods in Enzymology, Academic Press, Inc., NY, (1995)に記載されている。PCRを用いると、DNAのような検出対象の標的核酸が、PCR試薬及び適当なプライマーを収容した反応容器に標的核酸を直接投入することにより増幅される。典型的には、標的核酸の少なくとも一部に対して相補的な配列を成すプライマーが選択される。
【0044】
本発明の方法のステップ(a)を実行するのに適した核酸ポリメラーゼ反応はさらに、核酸配列を増幅する様々なRCA方法を含んでいてよいことを特記しておく。例えば、Lizardi, Paul M.への米国特許第5854033号は有用であり、この特許を本出願に援用する。ポリメラーゼ反応はさらに、核酸配列式増幅(NASBA)を含んでいてよく、ここで、系はDNAではなくRNAの増幅を行うものであり、増幅は等温であって一つの温度(41°C)で生ずる。NASBAによる標的RNAの増幅は、リバーストランスクリプターゼ、Rnase H及びT7 RNAポリメラーゼの3種の酵素と、試料である標的RNAに指示するオリゴヌクレオチドプライマーとの協調型活性を含む。これらの酵素は、伸張、減成、DNA合成及び環式RNA増幅の4段階での標的とする一重螺旋RNAの指数関数的な増幅を触媒する。
【0045】
RT−PCR、RCA及びNASBAの各方法は一般的には、標的核酸の本来の量が増幅産物の定量化によって間接的に測定されることを必要とする。増幅産物は典型的には、先ずアガロースゲルでの電気泳動を介して出発物質から分離されて、増幅に成功したことを確認し、次いで、蛍光標識の検出、酵素結合型検出系、抗体媒介型標識検出及び放射性標識の検出のような従来の核酸検出系の任意のものを用いて定量化される。対照的に、本発明の方法は、ポリメラーゼ反応の生成物を検出し得るようになる前に出発物質からかかる生成物を分離する必要をなくす。例えば、本発明では、レポーター分子(蛍光、化学ルミネセンス若しくは発色団)又は他の有用な分子を、リン酸結合によって隠蔽されたときに幾つかの条件下で検出不能になるような方法でヌクレオチドに結合させる。しかしながら、伸張しつつあるオリゴヌクレオチド鎖へのヌクレオチドの組み込み及び反応のホスファターゼ処理の後にはこれらの条件下で標識は検出可能になる。例えば、1,3−ジクロロ−9,9−ジメチル−アクリジン−2−オン(DDAO)の三重環構造の側のヒドロキシル基がヌクレオチドの末端リン酸位に結合した場合には、DDAOは659nmにおいては蛍光を発しない。一旦、ヌクレオシド一リン酸がDNAに組み込まれたら、他方の生成物であるDDAOポリリン酸(やはり659nmにおいては蛍光を発しない)がホスファターゼの基質となる。一旦、脱リン酸化されてDDAOを形成すると、色素部分は659nmにおいて蛍光性となり、故に検出可能になる。ポリリン酸生成物の特異的分析をポリメラーゼ反応溶液において行って、出発物質から反応生成物を分離する必要をなくす。この方式によって、分光光度計のような日常業務的な手段を用いたポリメラーゼ反応時に形成される核酸の検出、及び選択随意で定量化が可能になる。
【0046】
上述の方法において、ポリメラーゼ反応のステップが、標識ポリリン酸副生物を検出可能な標識に転化するホスファターゼの存在下でポリメラーゼ反応を実行するステップをさらに含んでいてよい。このようなものとして、核酸配列の存在を検出するために検出可能種の形成の連続的な監視を可能にする簡便な検定法を確立する。この方法は、単一試験管で行うことができるため均一な検定方式に相当する。
【0047】
上述の検定方法の一方式としては、特に限定されないが、検出可能種、例えば末端リン酸を変性させたATPを生成することが可能な単一の形式の末端リン酸を標識したヌクレオチドの存在下でポリメラーゼ反応を実行するものがあり、この場合には、他の全てのヌクレオチドはホスファターゼに対して実質的に非反応性であるが、検出不能な種を生ずる。
【0048】
もう一つの検定方式では、各々が固有の検出可能種を生成することが可能な1よりも多い形式の末端リン酸を標識したヌクレオチドの存在下でポリメラーゼ反応を実行してもよい。例えば、この検定は、リン酸転移の無機ポリリン酸副生物から酵素反応によって放出されたときに第一の波長で発光する第一の標識を関連させた第一のヌクレオチド(例えばアデノシンポリリン酸)と、第二の波長で発光する第二の標識を関連させた第二のヌクレオチド(例えばグアノシンポリリン酸)とを含んでいてよい。望ましくは、第一及び第二の波長の発光は実質的に殆ど又は全く重ならない。この後に、ポリリン酸から放出された特定の標識に基づいてヌクレオチド配列情報に基づく多数回の同時検定を導出し得ることは本発明の思量の範囲内にある。
【0049】
上述の核酸配列の存在を検出する方法の一観点では、末端リン酸を標識したヌクレオチドを次の式で表すことができる。
【0050】
【化4】

【0051】
式中、
P=リン酸(PO)及びその誘導体であり、
nは2以上であり、
Yは酸素原子又はイオウ原子であり、
Bは含窒素複素環式塩基であり、
Sは非環式部分、炭素環式部分又は糖部分であり、
P−Lは、リン酸が除去されたときに、独立して検出可能になるリン酸化標識であり、
ここで、Lは、天然又は変性のヌクレオチドの末端リン酸位にリン酸エステル結合、チオエステル結合又はホスホルアミデート結合を形成するのに適したヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する酵素賦活型標識である。
【0052】
検出可能種が標識ポリリン酸であるような上述の核酸配列の存在を検出する方法のもう一つの観点では、末端リン酸を標識したヌクレオチドを次の式で表すことができる。
【0053】
【化5】

【0054】
式中、
P=リン酸(PO)及びその誘導体であり、
nは3以上であり、
Yは酸素原子又はイオウ原子であり、
Bは含窒素複素環式塩基であり、
Sは非環式部分、炭素環式部分又は糖部分であり、
P−Lはリン酸化標識であり、
ここで、Lは、天然又は変性のヌクレオチドの末端リン酸位にリン酸エステル結合、ホスホネート結合、チオエステル結合又はホスホルアミデート結合を形成するのに適したヒドロキシル基、ハロアルキル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する標識である。
【0055】
本発明の方法の目的のために有用な炭素環式部分は、Ferraro, M. and Gotor, V.によるChem Rev. 2000, volume 100, 4319−48に記載されている。適当な糖部分は、Joeng, L.S. et al.によるJ Med. Chem. 1993, vol. 356, 2627−38、Kim H.O. et al.によるJ Med. Chem. 193, vol. 36, 30−7、及びEschenmosser A.によるScience 1999, vol. 284, 2118−2124に記載されている。さらに、有用な非環式部分は、Martinez, C.I., et al.によるNucleic Acids Research 1999, vol. 27, 1271−1274、Martinez, C.I., et al.によるBioorganic & Medicinal Chemistry Letters 1997, vol. 7, 3013−3016、及びTrainer, G.L.への米国特許第555891号に記載されている。これらの部分についての構造を下記に示す。全ての部分について、RはH、OH、NHR、F、N、SH、SR、OR、低級アルキル及びアリールであり、糖部分についてX及びYは独立にO、S又はNHであり、非環式部分について、X=O、S、NH、NRである。
【0056】
【化6】

【0057】
幾つかの実施形態では、下式の糖部分
【0058】
【化7】

【0059】
は、リボシル、2′−デオキシリボシル、3′−デオキシリボシル、2′,3′−ジデヒドロジデオキシリボシル、2′,3′−ジデオキシリボシル、2′−又は3′−アルコキシリボシル、2′−又は3′−アミノリボシル、2′−又は3′−フルオロリボシル、2′−又は3′−メルカプトリボシル、2′−又は3′−アルキルチオリボシルの各糖、非環式糖、炭素環式糖及び他の変性糖から選択することができる。
【0060】
さらに、上の式において、塩基はウラシル、チミン、シトシン、5−メチルシトシン、グアニン、7−デアザグアニン、ヒポキサンチン、7−デアザヒポキサンチン、アデニン、7−デアザアデニン、2、6−ジアミノプリン又はこれらの類似体を包含し得る。
【0061】
ホスファターゼ処理の後に標識が賦活される本発明の好適実施形態のためには、末端リン酸を標識したヌクレオチドの末端リン酸位に結合する標識は、1,2−ジオキセタン化学ルミネセンス化合物、蛍光色素、発色色素、質量タグ及び電気化学的タグからなる群から選択され得る。これにより、検出可能種を着色、蛍光発光、化学ルミネセンス、質量変化、電気化学的検出又はこれらの組合せの任意の一つの存在によって検出可能にすることができる。本発明において有用な色素の幾つかを表1に示す。これらの色素の誘導体であるその他色素、及びリン酸基の除去の後に物理的特性又は化学的特性の検出可能な変化を経るその他色素を用いることも本発明の範囲内にある。
【0062】
【表1】

下式のリン酸化標識
【0063】
【化8】

【0064】
が蛍光発光部分である場合には、以下の一つから選択すると望ましい(全てホスホモノエステルとして示す)。商標名ELF97(Molecular Probes,Inc.)として販売されている2−(5′−クロロ−2′−ホスホリルオキシフェニル)−6−クロロ−4−(3H)−キナゾリノン、フルオレセインジホスフェート(テトラアンモニウム塩)、フルオレセイン3′(6′)−O−アルキル−6′(3′)−ホスフェート、9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)ホスフェート(ジアンモニウム塩)、4−メチルウンベリフェリルホスフェート(遊離酸)、レゾルフィンホスフェート、4−トリフルオロメチルウンベリフェリルホスフェート、ウンベリフェリルホスフェート、3−シアノウンベリフェリルホスフェート、9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イルホスフェート、6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリルホスフェート及びこれらの誘導体。これらの色素の構造を以下に示す。
【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
【化11】

【0068】
次の式のリン酸化標識部分
【0069】
【化12】

【0070】
が発色部分である場合には、以下から選択することができる。5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート、3−インドキシルホスフェート、p−ニトロフェニルホスフェート及びこれらの誘導体。これらの発色色素の構造をホスホモノエステルとして以下に示す。
【0071】
【化13】

【0072】
末端リン酸位に位置する部分はさらに化学ルミネセンス化合物であってよく、この場合にはホスファターゼ賦活型1,2−ジオキセタン化合物であると望ましい。1,2−ジオキセタン化合物としては、特に限定されないが、商標名CDP−Star(Tropix,Inc.、米国マサチューセッツ州Bedford)として販売されている2−クロロ−5−(4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2′−(5−クロロ−)トリシクロ[3,3,1−13,7]−デカン]−1−イル)−1−フェニルホスフェートの二ナトリウム塩、商標名CSPD(Tropix)として販売されているクロロアダマント−2′−イリデンメトキシフェノキシリン酸化ジオキセタン、及び商標名AMPPD(Tropix)として販売されている3−(2′−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3″−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタンがある。これらの市販ジオキセタン化合物の構造は、米国特許第5582980号、同第5112960号、及び同第4978614号にそれぞれ開示されており、これらの特許を本明細書に援用する。
【0073】
標識ポリリン酸の検出に関わる本発明の実施形態では、リン酸に結合するように適当に官能化された蛍光色素及び着色色素の公知の種別からの任意の蛍光色素又は着色色素を用いることができ、例えばキサンテン、シアニン、ポルフィリン、クマリン、BODIPY色素、メロシアニン、ピレン及びアゾ色素等を用いることができる。これらの色素は周知であり、幾つかの商業供給元から入手することができる。標識ポリリン酸として容易に検出可能な色素の幾つかの例を表2に掲げる。
【0074】
【表2】

以上に記載した方法はさらに、核酸配列を定量化するステップを含んでいてもよい。関連する観点では、検出可能種を、増幅された核酸配列の量に実質的に比例した量で生成することができる。核酸配列を定量化するステップは、検出可能種によって生じるスペクトルと既知のスペクトルとの比較によって行われると望ましい。
【0075】
本発明はさらに、(a)重合酵素、プライマー、鋳型又はこれらの成分の2以上を混合することにより形成される複合体のような配列決定反応の鍵成分の一つを固定するステップと、(b)ステップ(a)の前に既に行われていない限りにおいて交雑を進行させるステップと、(c)核酸重合酵素の存在下でホスファターゼ及び末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸をインキュベートするステップであって、この反応によって、存在するヌクレオチドが重合部位において標的配列に対して相補的である場合には標識ポリリン酸を生成するステップと、によって核酸配列を配列決定する方法を提供する。次いで、標識ポリリン酸はホスファターゼ又はリン酸転移酵素若しくはポリリン酸転移酵素と反応して、リン酸を結合させた色素から容易に識別可能な信号を伴う遊離標識を生成する。加えられるヌクレオチドが重合部位において標的配列に対して相補的でない場合には、重合は生じず、また遊離標識も生成されない。このように、遊離標識の形成によって、加えられた塩基が同定され、故に標的配列が同定される。重合反応に数ミリ秒から数分間にわたる十分な時間を掛けて、信号の有無を検出した後に、固体支持体を、特に限定されないが、洗浄、濾過、遠心分離、デカンテーション等を含む当技術分野で公知の手段の任意のものによって溶液から分離することができ、次のヌクレオチドを新たなポリメラーゼ(必要ならば)及びホスファターゼの存在下で加えることができる。検出可能種の形成を実際に結果として生ずる末端リン酸を標識したヌクレオチドの添加順序によって、標的核酸の配列が決まる。この配列は、加えられた塩基に相補的なものとなる。尚、ホスファターゼを、重合が既に進行してから加えてもよいことを特記しておく。
【0076】
本発明の一観点では、上述の方法に従って既知配列の存在について標的核酸を調べることができる。この場合には、相補的塩基の組み込みを結果として生ずると考えられる厳密な順序で末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸を添加するように選択することができる。換言すると、標的配列がACGGTAであると予測される場合には、末端標識ヌクレオシドポリリン酸をTGCCATの順序で添加することができる。
【0077】
他の観点では、予め設定されている順序で末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸を添加するように選択し、この順序を循環的な態様で繰り返すことができる。このことは、標的核酸が既知配列について調べられているのか又は未知配列について調べられているのかを問わず行うことができる。例えば、末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸をAGCTの順序で添加して、この順序を任意の回数だけ繰り返すことができる。
【0078】
後にあらためて詳述するように、これらの末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸は、相補性が保存される限りにおいて天然塩基又はこれらの類似体を含有していてよい。
【0079】
本発明はさらに、連続フローシステム又はストップフローシステムにおいて上述の各ステップを用いて標的配列を配列決定する方法を提供し、ここで、固定された物質は、当技術分野で公知の手段の任意のものによって所定位置に保持され、異なる試薬及び緩衝液を一端でシステムにポンプ供給し他端でシステムから排出する。試薬及び緩衝液は、重合反応及びホスファターゼ加水分解を進行させることができるように、連続的に流動してもよいし、所定の時間にわたって所定位置に保持されてもよい。この工程図を図4に示す。
【0080】
一実施形態では、本発明は、核酸を定量化する方法に関し、この方法は、(a)末端リン酸を標識したヌクレオチドの反応を含んでおり、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる核酸ポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)定量化したい核酸の量に実質的に比例した量で検出可能な副生種を生成するように、標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させるステップと、(c)検出可能種を測定するステップと、(d)核酸の量を決定するように、既知の標準を用いて測定を比較するステップと、を含む。核酸を定量化する方法のこの実施形態では、定量化される核酸はRNAであってよい。核酸はさらに、天然若しくは合成のオリゴヌクレオチド、染色体DNA、又はDNAであってもよい。
【0081】
本発明はさらに、DNA配列を定量化する方法を提供し、この方法は、(a)末端リン酸を標識したヌクレオチドの存在下で、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずるDNAポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)定量化したいDNA配列の量に実質的に比例した量で検出可能な副生種を生成するように、標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させるステップと、(c)検出可能種を測定するステップと、(d)DNAの量を決定するように、既知の標準を用いて測定を比較するステップと、を含む。この実施形態では、定量化対象のDNA配列としては、天然若しくは合成のオリゴヌクレオチド、又は染色体DNAを含めた細胞から単離されたDNA等がある。
【0082】
上述の核酸配列を定量化する方法の各々において、ポリメラーゼ反応ステップはさらに、ホスファターゼの存在下でポリメラーゼ反応を実行するステップを含んでいてよい。本明細書の上で述べたように、このことによって、核酸ポリメラーゼ活性の実時間監視が可能になり、故に、定量化のための標的核酸配列の実時間検出が可能になる。
【0083】
本書に掲げた核酸配列を定量化する方法に有用な末端リン酸を標識したヌクレオチドは次の式で表すことができる。
【0084】
【化14】

【0085】
本書に掲げた核酸配列を定量化する方法についてこの式を有する最も好ましい末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸は、酵素賦活型標識を備えたものである。酵素賦活型標識は、標識と天然又は変性のヌクレオチドの末端リン酸との間のリン酸エステル結合を検出可能種を生成するような方法で変化させるホスファターゼの酵素活性を介して検出可能となる。検出可能種は、着色、蛍光発光、化学ルミネセンス、質量差又は電気化学的ポテンシャルの任意の一つ又は組合せの存在によって検出可能となる。上で既に述べたように、酵素賦活型標識は、1,2−ジオキセタン化学ルミネセンス化合物、蛍光色素、発色色素、質量タグ若しくは電気化学的タグ、又はこれらの組合せであってよい。適当な標識は上述したものと同じである。
【0086】
実施例の章でさらに詳細に述べるように、本発明は、標的核酸配列の単一のヌクレオチドの同一性を決定する方法を提供する。これらの方法は、(a)少なくとも1種の末端リン酸を標識したヌクレオチドの存在下で、標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる核酸ポリメラーゼ反応を行うステップと、(b)検出可能種を生成するように、標識ポリリン酸をホスファターゼと反応させるステップと、(c)検出可能種の存在を検出するステップと、(d)組み込まれたヌクレオシドを同定するステップと、を含む。望ましい実施形態では、末端リン酸を標識したヌクレオチドは4以上のホスフェートをポリリン酸鎖として含む。
【0087】
本発明のもう一つの観点は、核酸検出キットに関し、このキットは、
(a)下式の少なくとも1種又は複数の末端リン酸を標識したヌクレオチド
【0088】
【化15】

【0089】
であって、式中、
P=リン酸(PO3)及びその誘導体であり、
nは2以上であり、
Yは酸素原子又はイオウ原子であり、
Bは含窒素複素環式塩基であり、
Sは非環式部分、炭素環式部分又は糖部分であり、
P−Lは、リン酸が除去されたときに、好ましくは独立して検出可能になるリン酸化標識であり、
ここで、Lは、天然又は変性のヌクレオチドの末端リン酸位にリン酸エステル結合、チオエステル結合又はホスホルアミデート結合を形成するのに適したヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する酵素賦活型標識である、末端リン酸を標識したヌクレオチドと、
(b)DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ又はリバーストランスクリプターゼの少なくとも一つと、
(c)ホスファターゼと、
を含む。
【0090】
本発明のさらにもう一つの観点は、核酸検出キットに関し、このキットは、
(a)下式の少なくとも1種の末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸
【0091】
【化16】

【0092】
であって、式中、
P=リン酸(PO)及びその誘導体であり、
nは3以上であり、
Yは酸素原子又はイオウ原子であり、
Bは含窒素複素環式塩基であり、
Sは非環式部分、炭素環式部分又は糖部分であり、
P−Lはリン酸化標識であり、
ここで、Lは、天然又は変性のヌクレオチドの末端リン酸位にリン酸エステル結合、ホスホネート結合、チオエステル結合又はホスホルアミデート結合を形成するのに適したヒドロキシル基、ハロアルキル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する標識である、末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸と、
(b)DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ及びリバーストランスクリプターゼからなる群から選択される少なくとも1種の酵素と、
を含む。
【0093】
これらのキットに含まれる末端リン酸を標識したヌクレオチドの糖部分としては、特に限定されないが、リボシル、2′−デオキシリボシル、3′−デオキシリボシル、2′,3′−ジデオキシリボシル、2′,3′−ジデヒドロジデオキシリボシル、2′−又は3′−アルコキシリボシル、2′−又は3′−アミノリボシル、2′−又は3′−フルオロリボシル、2′−又は3′−メルカプトリボシル、2′−又は3′−アルキルチオリボシルの各糖、非環式糖、炭素環式糖及び他の変性糖等がある。
【0094】
塩基は、特に限定されないが、ウラシル、チミン、シトシン、5−メチルシトシン、グアニン、7−デアザグアニン、ヒポキサンチン、7−デアザヒポキサンチン、アデニン、7−デアザアデニン及び2,6−ジアミノプリン、並びにこれらの類似体等であってよい。
【0095】
さらに、上述のように、酵素賦活型標識は、1,2−ジオキセタン化学ルミネセンス化合物、蛍光色素、発色色素、質量タグ、電気化学的タグ又はこれらの組合せであってよい。ヌクレオチドの末端リン酸位での共役に適した化合物は、上述のものと同じである。
【0096】
以下の実施例は説明の目的のみのためのものであって、如何なる意味でも特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0097】
〔γ−(4−トリフルオロメチルクマリニル)ddGTP(γCFクマリン−ddGTP)の製造〕
ddGTP(46.4mM溶液の200μL、純度>96%)を無水ジメチルホルムアミド(DMF、2×0.5mL)と共に同時蒸発させた。ここにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、9.6mg、5当量)を加えて混合物を再び無水DMF(0.5mL)と共に同時蒸発させた。残留物を無水DMF(0.5mL)に採取して、混合物を一晩攪拌した。依然として約20%環化していない三リン酸が存在していた(カラムでの環式三メタリン酸の加水分解から生じたものと考えられる)。この混合物に、さらに2当量のDCCを加えて2時間にわたって攪拌した後に、7−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチルクマリン(4−トリフルオロメチルウンベリフェロン、42.7mg、20当量)及びトリエチルアミン(26μL、20当量)を加えて、混合物を室温で攪拌した。2日後に、HPLC(0.1M酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)内0〜30%アセトニトリルで15分間、30〜50%アセトニトリルで5分間、及び50〜100%アセトニトリルで10分間、C18 3.9×150mmカラム、流量1mL/分)は、9.7分に新たな生成物を、また出発物質の環式三リン酸を示した(比は254nmにおいて77対5)。混合物をさらにもう1日攪拌した。P−31NMRは、γ標識ヌクレオシド三リン酸を反応混合物の主成分と示した。反応混合物をロータリーエバポレータで濃縮した。残留物を水(5×1mL)で抽出した。HPLCは、254nmにおいて82%及び335nmにおいて81%の純度を示した。水溶液を合わせてロータリーエバポレータで濃縮し、水(1mL)に再び溶解させた。これを1インチ×300cmのC18カラムで、0.1M重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB、pH8.3)内0〜30%アセトニトリルで30分間、及び30〜50%アセトニトリルで10分間にわたり、流量を15mL/分として精製した。生成物ピークは3個の画分で収集した。画分1は、上述と同じ分取HPLC法を用いて再精製されたが、但し、COを発泡させることによりTEAB緩衝液のpHを6.7まで低下させた点が異なる。生成物ピークを濃縮して、MeOH(2回)及び水(1回)と共に同時蒸発させた。試料を水1mLに溶かした。HPLCは、254nm及び335nmにおいて>99%の純度を示した。UVは、322nmでの消散係数が11,000であると仮定(Molecular Probesのカタログより7−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチルクマリンのβガラクトシド誘導体について報告された値)すると、2.2mMの濃度を示した。MS:M−=702.18(計算値702.31)、UVλA= 253nm、276nm及び322nm。ddGTPのγリン酸に結合したトリフルオロクマリン色素は、励起極大が322nmにあり発光極大が約415nmにある蛍光性である。遊離クマリン色素を放出するリン酸エステルの加水分解時に、スペクトルが変化して励起極大が約385nmとなり発光極大が約502nmとなる。この変化は、単純な蛍光測定又は色変化によって容易に検出される。γヌクレオチドの合成は、Arzumanov, A. et al.によるJ Biol Chem (1996) Oct 4; 271 (40): 24389-94に一般的に記載されている。
【0098】
【化17】

【実施例2】
【0099】
〔γ−(3−シアノクマリニル)ddATP(γCNクマリン−ddATP)の製造〕
ddATP(89mM溶液の100μL、>96%)を無水DMF(2×1mL)と共に同時蒸発させた。ここにDCC(9.2mg、5当量)を加えて、混合物を再び無水DMF(1mL)と共に同時蒸発させた。残留物を無水DMF(0.5mL)に採取して、反応物を室温で攪拌した。一晩の後に、7−ヒドロキシ−3−シアノクマリン(33.3mg、20当量)及びTEA(25μL、20当量)を加えて、混合物を室温で攪拌した。1日後に、8.1分で主要生成物(254nmにおいて55%)が観察され、10分でもう一つの副次的生成物が観察された(〜10%)。さらに1日を経ても大きな変化は起こらなかった。反応混合物をロータリーエバポレータで濃縮して、残留物を3×2mLの水で抽出して濾過した。水溶液を濃縮して、C−18上で0.1MのTEAB(pH6.7)内0〜30%アセトニトリルを用いて30分間、及び30〜50%アセトニトリルを用いて10分間にわたり、流量を15mL/分として精製した。主ピークを3個の画分で収集した。主ピーク(画分2)のHPLCは、254nmにおいて95.6%、及び335nmにおいて98.1%の純度を示した。この画分をロータリーエバポレータ(室温)で濃縮し、MeOH(2回)及び水(1回)と共に同時蒸発させた。残留物を0.5mLの水に溶かした。UV分析のために5μLの試料を希釈して1mLとした。A346nm=0.784。消散係数を20,000と仮定(Molecular Probesのカタログより7−エトキシ−3−シアノクマリンについて報告された値)すると、濃度=7.84mMであった。収量=3.92μmol、44%。試料をC−18カラムで上述と同じ方法を用いて再度精製した。試料ピークを3個の画分で収集した。画分2及び画分3は、純度が254nmにおいて>98%及び340nmにおいて>99.5%であり、これらの画分を合わせた。濃縮の後に、残留物をMeOH(2回)及び水(1回)と共に同時蒸発させた。試料を水(1mL)に溶かして2.77mM溶液を作製した。MS:M−=642.98au(計算値643.00au)、UVλA=263nm及び346nmであった。ddATPのγリン酸に結合したシアノクマリン色素は、励起極大が346nmにあり、発光極大が約411nmにある蛍光性であった。遊離クマリン色素を放出するリン酸エステルの加水分解時に、スペクトルが変化して励起極大が約408nmとなり発光極大が約450nmとなる。この変化は、単純な蛍光測定又は色変化によって容易に検出される。γヌクレオチドの合成は、Arzumanov, A. et al.、J Biol Chem (1996) Oct 4; 271 (40): 24389-94に一般的に記載されている。
【0100】
【化18】

【実施例3】
【0101】
〔δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−ジデオキシチミジン−5′−四リン酸(ddT4P−DDAO)の製造〕
ddTTP(80mM溶液の100μL)を無水ジメチルホルムアミド(DMF、2×1mL)と共に同時蒸発させた。ここにジシクロヘキシルカルボジイミド(8.3mg、5当量)を加えて、混合物を再び無水DMF(1mL)と共に同時蒸発させた。残留物を無水DMF(1mL)に採取して、反応物を室温で一晩攪拌した。HPLCは、殆ど環化した三リン酸を示した(〜82%)。反応混合物を濃縮して、残留物を無水ジエチルエーテルで3回洗浄した。これを再び無水DMFに溶かして、ロータリーエバポレータでして濃縮して乾燥させた。残留物をDDAOモノリン酸アンモニウム塩(5mg、1.5当量)と共に200μLの無水DMFに採取して、1週間にわたって40oCで攪拌した。HPLCは、11.96分に所望のUV特性を有する新たな生成物の形成を示した。(HPLC方法:0.1M酢酸トリエチルアンモニウム(pH7)内0.30%アセトニトリルで15分間、及び30〜50%アセトニトリルで5分間とし、Novapak C−18の3.9×150mmカラムで、1mL/分とした)。LCMS(ES−)も、M−1ピークについて主要な質量ピーク834を示した。反応混合物を濃縮して、0.1MのTEAB(pH6.7)及びアセトニトリルを用いてDeltapak C18、19×300mmカラムで精製した。生成物を有する画分を上述と同じ方法を用いてHPLCによって再精製した。純粋な生成物を有する画分を濃縮して、MeOH(2回)及び水(1回)と共に同時蒸発させた。残留物を水(1.2mL)に溶かして、1.23mM溶液を得た。254nmでのHPLC純度は>97.5%であり、455nmでは>96%であり、UVλA=267nm及び455nm、MS:M−1=834.04(計算値833.95)であった。
【0102】
δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−ジデオキシシチジン−5′−四リン酸(ddC4P−DDAO)、δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−ジデオキシアデノシン−5′−四リン酸(ddA4P−DDAO)及びδ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−y−イル)−ジデオキシグアノシン−5′−四リン酸(ddG4P−DDAO)を類似の態様で合成して精製した。これらの精製化合物の分析から次のデータが得られた。ddC4P−DDAO:UVλA=268nm及び454nm、MS:M−1=819.32(計算値818.96)、ddA4P−DDAO:UVλA=263nm及び457nm、MS:M−1=843.30(計算値842.97)、ddG4P−DDAO:UVλA=257nm及び457nm、MS:M−1=859.40(計算値858.97)。
【0103】
【化19】

【0104】
【化20】

【実施例4】
【0105】
〔ε−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−ジデオキシチミジン−5′−五リン酸DDAO−ddT−五リン酸(ddT5P−DDAO)の製造〕
(A.DDAOピロリン酸の製造)
DDAO−リン酸ジアンモニウム塩(11.8μmol)を無水DMF(3×0.25mL)と共に同時蒸発させて、DMF(0.5mL)に溶かした。ここにカルボニルジイミダゾール(CDI、9.6mg、5当量)を加えて、混合物を室温で一晩攪拌した。過剰のCDIをMeOH(5μL)の添加及び30分間にわたる攪拌によって破壊した。この混合物にリン酸二水素トリブチルアンモニウム(10当量、DMF内0.5Mの溶液の236mL)を加えて、混合物を室温で4日間にわたって攪拌した。反応混合物をロータリーエバポレータで濃縮した。残留物を0.1MのTEAB/アセトニトリル(3:1)を緩衝液Aとし、1MのTEAB/アセトニトリル(3:1)を緩衝液Bとして用い、0〜100%Bを用いてHiPrep16.10 Q XLカラムで精製した。主ピーク(HPLC純度98%)を収集し、濃縮して、メタノール(2回)と共に同時蒸発させた。残留物を1mLの水に溶かして5.9mM溶液を得た。UV/VIS λmax=456nmであった。
(B.ddT5P−DDAOの製造)
ddTTP(47.5mM水溶液の100μL)を無水DMF(2×1mL)と共に同時蒸発させた。ここにDCC(5当量、4.9mg)を加えて、混合物をDMF(1×1mL)と共に同時蒸発させた。残留物を無水DMF(0.5mL)に採取して、室温で3時間にわたって攪拌した。ここに、別個に無水DMF(2×1mL)と共に同時蒸発させた1.03当量のDDAOピロリン酸をDMF溶液として加えた。混合物を濃縮して乾燥させ、次いで無水DMF200μLに採取した。混合物を2日間にわたって38oCに加熱した。反応混合物を濃縮し、水で希釈し、濾過して、2段勾配を用いて0〜100%A−Bを用いたHiTrap 5mLイオン交換カラムで精製した。溶媒A=0.1MのTEAB/アセトニトリル(3:1)及び溶媒B=1MのTEAB/アセトニトリル(3:1)とした。生成物の大半を含有する画分12×13を合わせ、濃縮して、メタノールと共に同時蒸発させた(2回)。残留物をXterra RPC−18の30〜100mmカラムで、0.1MのTEAB内0.30%アセトニトリルをカラム5本分容積、及び30〜50%アセトニトリルをカラム2本分容積で用いて、流量を10mL/分として再精製した。純粋な生成物を含有する画分を濃縮して、メタノール(2×)及び水(1回)と共に同時蒸発させた。HPLC純度は455nmにおいて>99%であった。UV/VIS=268nm及び455nm。MS:M−1=914.03(計算値913.93)であった。
【0106】
これらのポリリン酸のγリン酸に結合したDDAO色素は、励起極大が455nmにあり、発光極大が約608nmにある蛍光性である。遊離色素を放出するリン酸エステルの加水分解時に、スペクトルが変化して励起極大が約645nmとなり発光極大が約659nmとなる。この変化は、単純な蛍光測定又は色変化によって容易に検出されるe。
【0107】
【化21】

【0108】
色素又は他の検出可能な部分を末端リン酸に結合させた類似のヌクレオチド化合物も、上述の実施例1〜4に記載したものと同様の方法を用いて製造し得ることを特記しておく。これには、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオシド四リン酸、並びに天然由来の塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ヒポキサンチン及びウラシル)及び変性塩基又は変性糖の任意のものを有するヌクレオチドがある。
【実施例5】
【0109】
〔δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシチミジン−5′−四リン酸(dT4P−DDAO)の製造〕
TTP TEA塩10μmolを蒸発させて乾燥させた。この残留物にトリブチルアミン40μmol及び乾燥ピリジン5mLを加えた。溶液を再蒸発させて乾燥させた。乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)3mLとの2回の同時蒸発の後に、残留物を乾燥DMF200μLに再び溶かして、アルゴンでフラッシングして栓をした。シリンジを用いて、カルボニルジイミダゾール(CDI)50μmol(8mg)を乾燥DMF100μLに溶かしたものを加えた。フラスコを周囲温度で4時間にわたって攪拌した。
【0110】
上述の反応が進行している間に、DDAOリン酸35mg(83μmol)及びトリブチルアミン166μmolを乾燥DMFに溶かした。DDAOリン酸を蒸発させて乾燥させ、続いて乾燥DMFと共に3回同時蒸発させた。残留物を乾燥DMF300μLに溶かした。
【0111】
4時間の反応時間の後に、無水メタノール3.2μLをTTP−CDI反応に加えた。反応物を30分間にわたって攪拌した。この混合物に、DDAOリン酸溶液を加えて、混合物を周囲温度で18時間にわたって攪拌した。反応は、逆相HPLC(Xterra4.6×100カラム、0.1M TEAA/アセトニトリル)によって検査した。反応容積を蒸発によって200μLまで減少させて、反応を80時間にわたって進行するに任せた。
【0112】
80時間後に、0.1MのTEAB15mLを加えることにより反応を停止させた。希釈した混合物を19×100Xterra RPカラムに通して、0.1MのTEAB内のアセトニトリル勾配で溶出させた。純粋なDDAO T4Pを含有する画分を蒸発させて乾燥させ、エタノールと共に2回同時蒸発させた。残留物をMilliQ水で戻した。収量:1.10μmol、11%、455nmでのHPLC純度>98%、MS:M−1=850.07(計算値849.95)であった。
【0113】
δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシグアノシン−5′−四リン酸(dG4P−DDAO)、δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシシチジン−5′−四リン酸(dC4P−DDAO)及びδ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシアデノシン−5′−四リン酸(dA4P−DDAO)を上述と類似した態様で製造したが、但し8.3当量ではなく3.5当量のDDAOリン酸を用いた点が異なる。C18精製の後に、試料をMono Q10/10カラムを用いてイオン交換で精製した。
【0114】
δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシグアノシン−5′−四リン酸(dG4P−DDAO):収量0.57μmol、5.7%、455nmでのHPLC純度99%、MS:M−1=875.03(計算値874.96)。
【0115】
δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシシチジン−5′−四リン酸(dC4P−DDAO):収量0.24μmol、2.4%、455nmでのHPLC純度99%、MS:M−1=835.03(計算値834.95)。
【0116】
δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシアデノシン−5′−四リン酸(dA4P−DDAO):収量0.38μmol、3.8%、455nmでのHPLC純度99%、MS:M−1=859.07(計算値858.97)。
【0117】
【化22】

【0118】
以下の実施例6、7及び8は、色素誘導体を末端リン酸に結合させたヌクレオチドが鋳型指示型の核酸配列の検出工程において核酸ポリメラーゼによって伸長しつつある核酸鎖に基質として実効的に組み込まれ得ることを示すものである。
【実施例6】
【0119】
〔γリン酸を標識したddGTPのポリメラーゼ組込みを用いた核酸配列検出〕
実施例1のジデオキシヌクレオチドを用いて反応物を室温(23oC)で組み立てた。反応物は、単一のオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号1で表す)を、プライマーの3′末端に隣接した次の鋳型ヌクレオチドとしてdC又はdTのいずれかを有する2種の異なるオリゴヌクレオチド鋳型の一方にアニールさせたプライマー:鋳型の組合せを含んでいた。これらを配列番号2及び配列番号3にそれぞれ対応する。
【0120】
【化23】

【0121】
ここで図1を参照して述べると、本実施例の鋳型1(配列番号2)について、DNAポリメラーゼは標識ddGTPによってプライマーを伸長させるものと期待される。同様に、図1の鋳型2(配列番号3)については、DNAポリメラーゼは標識ddGTPではなくddATPによってプライマーを伸長させるものと期待される。
【0122】
【化24】

【0123】
反応条件:25mMトリス、pH8.0、5%のグリセロール5mM MgCl、0.5mMβ−メルカプトエタノール、0.01%Tween−20、0.25単位のエビ由来アルカリホスファターゼ、鋳型(次の鋳型ヌクレオチドは指示の通りdCMP又はdTMPのいずれか)にアニールした100nMプライマー、及び2μM ddGTP−CF−クマリンを含有する反応物70μLを、時間駆動モードで動作するLS−55ルミネセンス分光計(Perkin Elmer)の石英蛍光ウルトラマイクロキュベットにおいて組み立てた。励起波長及び発光波長はそれぞれ390nm及び500nmである。スリット幅は、励起スリットについては5nm、発光スリットについては15nmとした。3′−5′エキソヌクレアーゼ活性、5′−3′エキソヌクレアーゼ活性、並びにジデオキシヌクレオチド及び0.25mMのMnClに対する識別を消滅させるように遺伝子工学的に生成された0.35μL(11単位)のクローンされたDNAポリメラーゼIの添加によって反応を開始した。
【0124】
図1に示すように、γ標識ddGTPを含有する反応について、色素放出はプライマー:鋳型1でのみ検出され、ここでは鋳型の次のヌクレオチドはdCであった。エビ由来アルカリホスファターゼによるリン酸転移のピロリン酸生成物の開裂は、CF−クマリン標識の検出可能な変化を生じ、これにより核酸の検出が可能になる。プライマー:鋳型2では検出可能な色素放出は得られなかった。
【実施例7】
【0125】
〔γリン酸を標識したddATPのポリメラーゼ組み込みを用いた核酸配列検出〕
実施例2のジデオキシヌクレオチドを用いて室温(23oC)で反応物を組み立てた。反応物は、単一のオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号1)を、プライマーの3′末端に隣接した鋳型ヌクレオチドとしてdC又はdTのいずれかを有する2種の異なるオリゴヌクレオチド鋳型の一方にアニールさせたプライマー:鋳型の組合せを含んでいた。これらを配列番号2及び配列番号3にそれぞれ対応する。
【0126】
ここで図2を参照して述べると、本実施例の鋳型2(配列番号3)について、DNAポリメラーゼは標識ddATPによってプライマーを伸長させるものと期待される。同様に、図2の鋳型1(配列番号2)については、DNAポリメラーゼは標識ddATPではなくddGTPによってプライマーを伸長させるものと期待される。
【0127】
反応条件:25mMトリス、pH8.0、5%グリセロール5mM MgCl、0.5mMβ−メルカプトエタノール、0.01%Tween−20、0.25単位のエビ由来アルカリホスファターゼ、鋳型にアニールされた100nMプライマー、及び2μM ddATP−CN−クマリンを含有する反応物70μLを、時間駆動モードで動作するLS−55ルミネセンス分光計(Perkin Elmer)の石英蛍光ウルトラマイクロキュベットにおいて組み立てた。励起波長及び発光波長はそれぞれ410nm及び450nmである。スリット幅は、励起スリットについては5nm、発光スリットについては15nmとした。3′−5′エキソヌクレアーゼ活性、5′−3′エキソヌクレアーゼ活性、並びにジデオキシヌクレオチド及び0.25mMのMnClに対する識別を消滅させるように遺伝子工学的に生成された0.35μL(11単位)のクローンされたDNAポリメラーゼIの添加によって反応を開始した。
【0128】
図2に示すように、γ標識ddATPを含有する反応について、色素放出はプライマー:鋳型2でのみ検出され、ここでは鋳型の次のヌクレオチドはdTであった。エビ由来アルカリホスファターゼによるリン酸転移のピロリン酸生成物の開裂は、CN−クマリン標識の検出可能な変化を生じ、これにより核酸の検出が可能になる。プライマー:鋳型1では検出可能な色素放出は得られなかった。
【実施例8】
【0129】
〔固体支持体での合成標的の配列決定法〕
(A.プライマー−標的複合体の固定)
ダイナビーズの懸濁液(M−270ストレプトアビジン皮膜付き磁性ビーズ、10mg/mLを200μL)をエッペンドルフに採取して、磁性ホルダーに配置した。上清をピペットで除去して試験管を磁性ホルダーから取り出した。ビーズを0.01%Tween−20(450μL)を含有する1×PBSに再懸濁させて、試験管をホルダーに再度配置した。上清の除去の後に、この工程を1×PBS(450μL)で繰り返した。ビーズを1×PBS−Tween緩衝液(190μL)及び標識オリゴヌクレオチド(例えば配列番号4として下記に示す配列のビオチン化鋳型−プライマーであって、5′末端をフルオレセインで標識したもの。50μM水溶液の10μL)に再懸濁させた。混合物を震盪しながら加熱ブロックで37℃で30分間にわたってインキュベートした。上清を除去して、ビーズを1×PBS−Tween(1mL)及び1×PBS(1mL)で洗浄した。ビーズを1mLPBSに再懸濁させて、冷凍室に貯蔵した。オリゴ装填量分析のために、ビーズ懸濁液の100μLをエッペンドルフに採取して磁性ホルダーに配置した。上清の除去の後に、濃水酸化アンモニウム(100μL)を添加した。試験管を密閉して、懸濁液を震盪しながら加熱ブロックで65℃で10分間にわたってインキュベートして、オリゴを解放した。試験管を磁性ホルダーに配置して上清を除去した。これを1×PBSで100μLに調節して、マイクロタイタープレートに配置した。別々のウェルに、1×PBS緩衝液100μL当たり25.000pmol、12.500μmol、6.250μmol、3.125μmol及び1.562μmolの標識オリゴヌクレオチドを含有する標準液を配置して、プレートをTECAN Ultraスキャナで蛍光発光について走査した。装填量はデータを直線にフィッティングさせることにより決定され、最終的なビーズ懸濁液の100μL当たり13.94pmolであることが判明した。この量は元のビーズ懸濁液の20μLに対応する。
【0130】
【化25】

【0131】
(B.配列決定)
以下の緩衝液及びヌクレオチド溶液を製造した。25mM Hepes5mL、pH8.2、5mM MgCl、0.5mM MnCl、0.01%Tween、0.125u/μL TSIポリメラーゼ及び0.0026u/μLのエビ由来アルカリホスファターゼ(SAP)。各々のdN4P−(4−Me−クマリン)の100μM溶液の25μL(N=G、T又はC)を上述の緩衝液の475μLと別個に混合した。dA4P−(4−Me−クマリン)の100μM溶液50μLを上述の緩衝液950μLと混合した。
【0132】
オリゴを予め装填した磁性ビーズ(1.39pmolのオリゴを有する装填済みビーズ懸濁液10μL)を、磁気分離器を用いて上述の緩衝液で洗浄した(2×50μL)。ビーズに、GCTA−GATC−GCTA−GCAT−GTA−AG−GA−A−C−Gの順序に従って単一ヌクレオチドの溶液50μLを添加した。このようにして、1回目のサイクルではdG4P−(4−Me−クマリン)を加え、2回目のサイクルでdC4P−(4−メチル−クマリン)を加え、以下同様とした。各々のヌクレオチドの添加の後に、ビーズを、震盪器速度を1400として37℃で5分間にわたってインキュベートし、分離器で分離して、上清を標識ウェルに配置した。また、次のヌクレオチドを添加する前に、ビーズを水(2×50μL)及び上述の緩衝液(1×50μL)で洗浄した。各回の洗浄は、読み取りのために別個に標識されたウェルに配置された。別々のウェルにおいて、上述のヌクレオチド溶液の各々の50μLを配置して背景蛍光を決定した。さらにもう一組のウェルにおいて、ヘビ毒ホスホジエステラーゼ(これらのヌクレオチドを開裂させてリン酸色素を生成することが知られている)で処理してホスファターゼを含有する上述の緩衝液で10倍に希釈したヌクレオチド溶液を標準液として配置して可能な全信号を決定した。ヌクレオチド添加によって発生される信号の可能な全信号に対する比を定量化の目的で用いることができる。プレートを様々な間隔で読み取り、且つTECAN Ultraスキャナでの実験の最後に読み取った。試料を360nmで励起させて465nmで読み取った。各々のヌクレオチド混合物の添加の後の生の蛍光カウント(上清及び洗浄液によるもの)を、当該ヌクレオチド溶液に存在する背景を減ずることにより補正した。各回の添加において予測される値は、鋳型の配列に基づいて組み込まれると予測される塩基数に、前回の組み込み事象で組み込まれたヌクレオチド当たりの蛍光カウントを乗ずることにより算出された。
【0133】
当業者は、以上に述べたような本発明の教示の利点を得てこれに多くの改変を施すことができる。これらの改変は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】ホスファターゼの存在下での鋳型指示型工程においてγ−リン酸を標識したddGTPのポリメラーゼ利用によって得られる蛍光を示すグラフである。
【図2】ホスファターゼの存在下での鋳型指示型工程においてγ−リン酸を標識したddATPのポリメラーゼ利用によって得られる蛍光を示すグラフである。
【図3】ホスファターゼの存在下での末端リン酸を標識したヌクレオチドの逐次的添加時に得られる相対的な蛍光のグラフである。
【図4】フロースルーシステム又はストップフローシステムでの末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸による配列決定法の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸鋳型の標的領域を配列決定する方法であって、
(a)反応混合物を形成することにより固体支持体上で核酸重合反応を行うステップであって、前記反応混合物は、核酸鋳型、プライマー、核酸重合酵素、及び天然塩基又は塩基類似体を有するヌクレオシドから選択される1種の末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸を含んでおり、
ここで、前記反応混合物の成分又は2以上の該成分の複合体が前記固体支持体に固定され、前記成分(1種以上)は前記核酸鋳型、前記プライマー及び前記核酸重合酵素からなる群から選択され、
当該反応は、前記末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸が重合部位において鋳型塩基に対して相補的な塩基を含有する場合には標識ポリリン酸の生成を結果として生じる、反応を行うステップと、
(b)前記反応混合物にホスファターゼ処理を施すステップであって、ステップ(a)において前記標識ポリリン酸が生成された場合には検出可能種が生成される、処理を施すステップと、
(c)前記検出可能種を検出するステップと、
(d)残りの天然塩基又は塩基類似体から選択される異なる末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸を前記反応混合物に添加することにより前記重合反応を続行すると共に、ステップ(b)及び(c)を繰り返すステップと、
(e)前記検出可能種の生成を結果として生ずる末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸の同一性及び添加順序から前記標的領域配列を同定するステップと、
を備えた方法。
【請求項2】
前記反応を行うステップにおいて、前記核酸鋳型が前記固体支持体に固定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記反応を行うステップにおいて、前記プライマーが前記固体支持体に固定される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記反応を行うステップにおいて、前記核酸鋳型及び前記プライマーが先ず交雑され、次いで、前記固体支持体に固定される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記反応を行うステップにおいて、前記核酸重合酵素が前記固体支持体に固定される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記各ステップは、フロースルーシステム又はストップフローシステムにおいて逐次的態様で実行される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記核酸配列を定量化するステップをさらに含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記検出可能種により生成されるスペクトルを既知の標準から生成されるスペクトルと比較することにより、前記核酸配列を定量化するステップをさらに含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記核酸重合酵素はポリメラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記核酸鋳型はRNA鋳型である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記核酸鋳型はDNA鋳型である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記核酸鋳型は天然又は合成のオリゴヌクレオチドである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記反応を行うステップ及び前記処理を施すステップは同時に実行される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸は、4以上のリン酸基をポリリン酸鎖として含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記検出可能種は、核酸配列の量に実質的に比例した量で生成される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記ホスファターゼは、酸ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ又は他のリン酸転移酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記重合反応において1種以上の追加の検出試薬を含めるステップをさらに含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記1種以上の追加の検出試薬は、互いに異なり且つ前記検出可能種とも異なるように検出可能な応答を各々独立に生成することが可能である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記1種以上の追加の検出試薬の1種以上は抗体である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記検出可能種は、着色、蛍光発光、化学ルミネセンス、質量変化、還元/酸化電位及びこれらの組合せからなる群から選択される特性により検出可能である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸は、次式
【化1】

で表され、式中、
Pはリン酸(PO)及びその誘導体であり、
nは2以上であり、
Yは酸素原子又はイオウ原子であり、
Bは含窒素複素環式塩基であり、
Sは非環式部分、炭素環式部分又は糖部分であり、
P−Lは、リン酸が除去されたときに、独立して検出可能になるリン酸化標識であり、
ここで、Lは、前記天然又は変性のヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル結合、チオエステル結合又はホスホルアミデート結合を形成するのに適したヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する酵素賦活型標識である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記酵素賦活型標識は、化学ルミネセンス化合物、蛍光発光性色素、発色色素、質量タグ、電気化学的タグ及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記蛍光発光性色素は、2−(5′−クロロ−2′−ホスホリルオキシフェニル)−6−クロロ−4−(3H)−キナゾリノン、フルオレセインジホスフェート、フルオレセイン3′(6′)−O−アルキル−6′(3′)−ホスフェート、9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)ホスフェート、4−メチルウンベリフェリルホスフェート、レゾルフィンホスフェート、4−トリフルオロメチルウンベリフェリルホスフェート、ウンベリフェリルホスフェート、3−シアノウンベリフェリルホスフェート、9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イルホスフェート、6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリルホスフェート及びこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記発色色素は、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート、3−インドキシルホスフェート、p−ニトロフェニルホスフェート及びこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記化学ルミネセンス化合物はホスファターゼ賦活型1,2−ジオキセタン化合物である、請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記1,2−ジオキセタン化合物は、2−クロロ−5−(4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2′−(5−クロロ−)トリシクロ[3,3,1−13,7]−デカン]−1−イル)−1−フェニルホスフェート、クロロアダマント−2′−イリデンメトキシフェノキシリン酸化ジオキセタン、3−(2′−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3″−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン及びこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記糖部分は、リボシル、2′−デオキシリボシル、3′−デオキシリボシル、2′,3′−ジデオキシリボシル、2′,3′−ジデヒドロジデオキシリボシル、2′−アルコキシリボシル、2′−アジドリボシル、2′−アミノリボシル、2′−フルオロリボシル、2′−メルカプトリボキシル、2′−アルキルチオリボシルの各糖、炭素環式糖、非環式糖及び他の変性糖からなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項28】
前記糖部分は、リボシル糖又は2′−デオキシリボシル糖から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項29】
前記含窒素複素環式塩基は、ウラシル、チミン、シトシン、5−メチルシトシン、グアニン、7−デアザグアニン、ヒポキサンチン、7−デアザヒポキサンチン、アデニン、7−デアザアデニン、2,6−ジアミノプリン及びこれらの類似体からなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項30】
核酸鋳型の前記標的領域は既知の配列を有しており、末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸の添加の順序は前記標的領域の配列に基づいている、請求項1記載の方法。
【請求項31】
核酸鋳型の前記標的領域は未知の配列を有しており、末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸の添加の順序は予め設定されているサイクルで生じ、該予め設定されているサイクルは、所与のサイクルに組み入れられている前記末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸の同一性を問わず繰り返される、請求項1記載の方法。
【請求項32】
核酸鋳型の標的領域を配列決定する方法であって、
(a)反応混合物を形成することにより固体支持体上で核酸重合反応を行うステップであって、前記反応混合物は、核酸鋳型、プライマー、核酸重合酵素、及び天然塩基又は塩基類似体を有するヌクレオシドから選択され4以上のリン酸を有する1種の末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸を含んでおり、
ここで、前記反応混合物の成分又は2以上の該成分の複合体が前記固体支持体に固定され、前記成分(1種以上)は前記核酸鋳型、前記プライマー及び前記核酸重合酵素からなる群から選択され、
当該反応は、前記末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸が重合部位において鋳型塩基に対して相補的な塩基を含有する場合には標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる、反応を行うステップと、
(b)前記標識ポリリン酸を検出するステップと、
(c)残りの天然塩基又は塩基類似体から選択される異なる末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸を前記反応混合物に加えることにより前記重合反応を続行すると共に、ステップ(b)を繰り返すステップと、
(d)前記標識ポリリン酸の生成を結果として生ずる末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸の同一性及び添加順序から前記標的領域配列を同定するステップと、
を備えた方法。
【請求項33】
前記反応を行うステップにおいて、前記核酸鋳型が前記固体支持体に固定される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記反応を行うステップにおいて、前記プライマーが前記固体支持体に固定される、請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記反応を行うステップにおいて、前記核酸鋳型及び前記プライマーが先ず交雑され、次いで、前記固体支持体に固定される、請求項32記載の方法。
【請求項36】
前記反応を行うステップにおいて、前記核酸重合酵素が前記固体支持体に固定される、請求項32記載の方法。
【請求項37】
前記各ステップは、フロースルーシステム又はストップフローシステムにおいて逐次的態様で実行される、請求項32記載の方法。
【請求項38】
前記核酸配列を定量化するステップをさらに含んでいる請求項32記載の方法。
【請求項39】
前記検出可能種により生成されるスペクトルを既知の標準から生成されるスペクトルと比較することにより、前記核酸配列を定量化するステップをさらに含んでいる請求項32記載の方法。
【請求項40】
前記核酸重合酵素はポリメラーゼである、請求項32記載の方法。
【請求項41】
前記核酸鋳型はRNA鋳型である、請求項32記載の方法。
【請求項42】
前記核酸鋳型はDNA鋳型である、請求項32記載の方法。
【請求項43】
前記核酸鋳型は天然又は合成のオリゴヌクレオチドである、請求項32記載の方法。
【請求項44】
前記重合反応において1種以上の追加の検出試薬を含めるステップをさらに含んでいる請求項32記載の方法。
【請求項45】
前記1種以上の追加の検出試薬は、互いに異なり且つ前記標識ポリリン酸とも異なるように検出可能な応答を各々独立に生成することが可能である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記1種以上の追加の検出試薬の1種以上は抗体である、請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記標識ポリリン酸は、着色、蛍光発光、質量変化、還元/酸化電位及びこれらの組合せからなる群から選択される特性により検出可能である、請求項32記載の方法。
【請求項48】
前記末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸は、次式
【化2】

で表され、式中、
Pはリン酸(PO)及びその誘導体であり、
nは3以上であり、
Yは酸素原子又はイオウ原子であり、
Bは含窒素複素環式塩基であり、
Sは非環式部分、炭素環式部分又は糖部分であり、
P−Lはリン酸化標識であり、
ここで、Lは、天然又は変性のヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル結合、ホスホネート結合、チオエステル結合又はホスホルアミデート結合を形成するのに適したヒドロキシル基、ハロアルキル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する標識である、請求項32記載の方法。
【請求項49】
前記標識は、蛍光色素、着色色素、質量タグ、電気化学的タグ及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記蛍光色素は、キサンテン色素、シアニン色素、メロシアニン色素、アゾ色素、ポルフィリン色素、クマリン色素、BODIPY色素及びこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記着色色素は、アゾ色素、メロシアニン、シアニン色素、キサンテン色素、ポルフィリン色素、クマリン色素、BODIPY色素及びこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項49記載の方法。
【請求項52】
前記糖部分は、リボシル、2′−デオキシリボシル、3′−デオキシリボシル、2′,3′−ジデオキシリボシル、2′,3′−ジデヒドロジデオキシリボシル、2′−アルコキシリボシル、2′−アジドリボシル、2′−アミノリボシル、2′−フルオロリボシル、2′−メルカプトリボキシル、2′−アルキルチオリボシルの各糖、炭素環式糖、非環式糖及び他の変性糖からなる群から選択される、請求項48記載の方法。
【請求項53】
前記糖部分はリボシル糖又は2′−デオキシリボシル糖から選択される、請求項48記載の方法。
【請求項54】
前記含窒素複素環式塩基は、ウラシル、チミン、シトシン、5−メチルシトシン、グアニン、7−デアザグアニン、ヒポキサンチン、7−デアザヒポキサンチン、アデニン、7−デアザアデニン、2,6−ジアミノプリン及びこれらの類似体からなる群から選択される、請求項48記載の方法。
【請求項55】
核酸鋳型の前記標的領域は既知の配列を有しており、末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸の添加の順序は前記標的領域の配列に基づいている、請求項32記載の方法。
【請求項56】
核酸鋳型の前記標的領域は未知の配列を有しており、末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸の添加の順序は予め設定されているサイクルで生じ、該予め設定されているサイクルは、所与のサイクルに組み入れられている前記末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸の同一性を問わず繰り返される、請求項32記載の方法。
【請求項57】
(a)下式の少なくとも1種の末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸
【化3】

であって、式中、
P=リン酸(PO)及びその誘導体であり、
nは2以上であり、
Yは酸素原子又はイオウ原子であり、
Bは含窒素複素環式塩基であり、
Sは非環式部分、炭素環式部分又は糖部分であり、
P−Lは、リン酸が除去されたときに、独立して検出可能になるリン酸化標識であり、
ここで、Lは、天然又は変性のヌクレオチドの末端リン酸位にリン酸エステル結合、チオエステル結合又はホスホルアミデート結合を形成するのに適したヒドロキシル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する酵素賦活型標識である、末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸と、
(b)DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ及びリバーストランスクリプターゼからなる群から選択される少なくとも1種の酵素と、
(c)ホスファターゼと、
を備えた核酸検出キット。
【請求項58】
前記末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸は、4以上のリン酸基をポリリン酸鎖として含んでいる、請求項57記載のキット。
【請求項59】
前記糖部分はリボシル糖又は2′−デオキシリボシル糖から選択される、請求項57記載のキット。
【請求項60】
前記含窒素複素環式塩基は、ウラシル、チミン、シトシン、5−メチルシトシン、グアニン、7−デアザグアニン、ヒポキサンチン、7−デアザヒポキサンチン、アデニン、7−デアザアデニン、2,6−ジアミノプリン及びこれらの類似体からなる群から選択される、請求項57記載のキット。
【請求項61】
前記酵素賦活型標識は、化学ルミネセンス化合物、蛍光発光性色素、発色色素、質量タグ、電気化学的タグ及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項57記載のキット。
【請求項62】
(a)下式の少なくとも1種の末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸
【化4】

であって、式中、
P=リン酸(PO)及びその誘導体であり、
nは3以上であり、
Yは酸素原子又はイオウ原子であり、
Bは含窒素複素環式塩基であり、
Sは非環式部分、炭素環式部分又は糖部分であり、
P−Lはリン酸化標識であり、
ここで、Lは、天然又は変性のヌクレオチドの末端リン酸位にリン酸エステル結合、ホスホネート結合、チオエステル結合又はホスホルアミデート結合を形成するのに適したヒドロキシル基、ハロアルキル基、スルフヒドリル基又はアミノ基を含有する標識である、末端リン酸を標識したヌクレオシドポリリン酸と、
(b)DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ及びリバーストランスクリプターゼからなる群から選択される少なくとも1種の酵素と、
を備えた核酸検出キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−524359(P2007−524359A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503341(P2006−503341)
【出願日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/003283
【国際公開番号】WO2004/071155
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(598041463)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】