説明

土台

【課題】 木材の持つ異方性に着目し、最も強い方向を合理的に使用し、杉材の材質的な欠点を補う。
【解決手段】 図2に示す、厚さ30〜45mm、幅110〜135mm、長さ105mm〜900mmの杉材1bを幅方向に600mm、長さ方向に4000mmまで接着し厚さ30mmの構成層2b(図4で幅が3倍のもので長さ方向に連続するもの、以下同様)を作り、これを60mmずつ長さ方向に継ぎ手部分をづらし(図5参照)、構成層2bを複数枚(ここでは3枚)重ねに厚さ方向に接着することにより(図6参照)、厚さ110〜135mm、幅600mm、長さ4000mmの土台源材とし、長さ方向に複数(たとえば、5つ)に等分し、仕上げし、厚さ120mm、幅120mm、長さ4000mm(図では長さが省略されている)の土台とし、仕様面である上面は木口面11,16となり、圧縮荷重に対し、十分な強度を備え、めり込みに対して強くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物において、基礎上に敷設する木製の土台、特に、十分な強度を持ち安価な木造住宅用の土台に用いる杉による土台に関する。
【背景技術】
【0002】
集成材は、日本農林規格の第1条によれば、「ひき板、小角材等をその繊維方向を互いにほぼ平行にして、厚さ、幅及び長さの方向に集成接着をした一般材」と定義されている。
【0003】
これまでの集成材は接着剤を付けたラミナを重ね合わせ、無垢同等の形状を作ることを主眼としてきている。この作業では個々の無垢材が持つ性能差を吸収することが出来、安定した品質の材を供給できるという特徴を持っている。
【0004】
関連技術として以下の特許文献1〜4を掲載する。
【0005】
特許文献1(特許公開2006−218707)は、木質に金属等の素材を合わせ複合素材として集成材全体の強度を高めた複合木質構造材及び複合木質構造材の製造方法を例示してある。
【0006】
特許文献2(特許公開2005−188100)は、集成材を土台として木造家屋の床構造構築工法及び床構造を例示してある。
【0007】
特許文献3(特許公開2005−88228)は、集成材を使用した土台の接合方法について例示してある。
【0008】
特許文献4(特許公開平9−221833)は、出隅部分に使用する土台の一体化成型について例示してある。
【0009】
【特許文献1】特許公開2006−218707号公報
【特許文献2】特許公開2005−188100号公報
【特許文献3】特許公開2005−88228号公報
【特許文献4】特許公開平9−221833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、集成材は、無垢材の持つ欠点を除去し、品質を安定化するために開発され、無垢材の欠点を補うことを主としているため、無垢材を集成材に置き換えた用途を主としてきていた。従来の集成材は、あくまで無垢材の代用あるいは安定化のためであって、集成材にすることによって新たに今までの木材に無い性質を付加するということではなかった。したがって、集成材とは、板目方向部分に接着剤を付け、ラミナとして重ねて作り上げなければならないという固定概念から作られているため、木材の性質から考えた製品を作るまでに至っていなかった。
【0011】
すなわち、木材には異方性が存在し、木材の強さは、板目方向、柾目方向、木口方向でそれぞれ異なっている。板目方向の強さを1とすると、柾目方向では、約1.1倍、木口方向では約3.5倍程度の強さになる。一般に芯持ち材として使われる材料は、板目方向から荷重を受けるため、最も弱い部分で荷重を受けることになる。つまり、土台として使用する場合、板目方向もしくは柾目方向を用いることになるため、これまでの方法では限界があった。
【0012】
ところで、杉材は材質の特異性のため、大量に使用できる箇所が少ないばかりか、コスト的にも利用価値が少ないという現状となっている。杉の使用にあたっては、製品価値を高める商品の開発が望まれている。杉材は材質的な特徴のために必ずしも建築構造材として適しているわけではない。また、現行の集成材の製作は、厚さ30mm程度のラミナ(集成材用単板のことである。)を重ねて作られているが、作られた集成材の性質は、ラミナの持つ性質を集約したものとなっているため、杉などの柔らかい木などから出来た集成材は同様に柔らかい集成材となった。一般的に多く使われる桧材は、杉材の約1.3倍の強度を持っているとされている。土台などの用途には材質の柔らかい木材は向かないとされている。そのため、杉の集成材も、同様に土台に向かないとされている。杉材はしなりには強いが柔らかく「めり込み」が大きいという特徴を持っている。このため、梁・桁・土台など、材料を横にして使う場合は、特に強度のある材を用いるか、あらかじめ、「めり込み」を考慮した施工をするか、「めり込み」を防ぐ治具等の設置をするなど、施工に配慮をしなければならなかった。この様なことから、建築に使用する場合、杉等の柔らかい木は構造材としては不適切であるとされてきた。
【0013】
建築基準法施行令第42条に、「構造耐力上主要な部分である柱で最下層の部分に使用するものの下部には、土台を設けなければならない。(以下略)」、第2項では、「土台は基礎に緊結しなければならない。(以下略)」とあるが、土台は建物の荷重を受け、更にその荷重を基礎に伝える役目を持っていることを示している。土台には、柱が刺さっているが、土台に刺さる柱の数で上部の荷重は分散され、土台と柱との接触面にて分散された荷重が伝わり更に基礎へと伝わる。このため、土台に用いられる木材の材質が柔らかいものであると、柱の荷重で土台への「めり込み」が発生し、建物自体の安定性を損なうこともあり得る。
【0014】
一般的な強度を持った集成材を使用した土台であれば、上記の特許文献1〜4は有効であるが、杉などの強度の小さい材を用いた集成材では同等の使い方は出来ない。
【0015】
また一方、従来の問題の解決方法として圧縮木材など、基本的物性を向上させる各種の試みが行われてきている。しかしながら、圧縮木材とした場合は、当然のことながら木材の容積が小さくなる。2倍に圧縮すれば使用できる木材の量は1/2になるのは自明である。木材の単価が2倍になることを示している。如何に強度が上昇しても、単価も同様に上昇するのであれば、同等に市場価値も上昇しなければならないのであるが、現実としてはそのようにはなっていない点に困難性が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、木材の持つ異方性に着目し、最も強い方向を合理的に使用することによって、材質的な欠点を補うものである。すなわち、本発明者等は、従来の固定概念を破り、木口方向で上部の荷重を受けることに着目したものであり、請求項1の発明は、直方体形状の圧縮されていない杉材の上下面に木口面を含み、両側面および前後面を柾目面または板目面とし、杉材の繊維方向を前記上下面に対して垂直とするかまたは傾斜させ、該各杉材を厚さ方向または長さ方向に集合接着することにより構成層を形成し、該構成層を厚さ方向または長さ方向に集合接着させて集合材とし、該集合材の上面から荷重を加えることを特徴とする土台である。
請求項2の発明は、前記構成層の上面が、厚さ方向または長さ方向に、板目もしくは柾目、木口、板目もしくは柾目、
板目もしくは柾目、木口、木口、板目もしくは柾目、または、板目もしくは柾目、木口、板目もしくは柾目、木口、板目もしくは柾目、の組み合わせで構成することを特徴とする請求項1の杉材を用いた土台である。
請求項3の発明は、外層用の前記構成層が一般ラミナ材である請求項1の土台である。
請求項4の発明は、前記構成層と一般ラミナ材とが積層方向に対して互い違いに接着される請求項1の土台である。
【0017】
我が国の森林資源の70%以上は「杉」である。戦後造林した森林が伐採期になろうとしている。環境保全のためにも、森林の更新は重要な課題である。杉を多く利用しようとするならば、建築構造材の1つである土台としての使用が好適である。
【0018】
木材の持つ異方性を考えるとき、図1に示す通り、中心部からの放射線方向R、年輪の接線方向T、及び木材の繊維方向Lのそれぞれについての強度が異なっている。LT面を板目面、LR面を柾目面、RT面を木口面という。特に、土台部材としての使用時は、土台の上に柱が構築されるため、特に、めり込み強度が必要となる。上記の3方向の中では繊維方向のめり込み強度が最も強く、それぞれのめり込み強度を示すと、繊維に直角方向(めり込み・部分荷重):6.0N/mm2、繊維方向(全面荷重):17.7N/mm2(以上.杉材)となる。一方、桧材では、繊維に直角方向(めり込み・部分荷重):7.8N/mm2、繊維方向(全面荷重):20.7N/mm2である。(建築学会「木質構造設計基準同解説」・付表より)。桧はめり込みで杉の、7.8/6.0=1.3倍である。ここで部分荷重とは上面の一部に荷重を負荷することをいい、全面荷重とは上面の全部に荷重を負荷することをという。
【0019】
杉材のめり込み強度の強い部分である木口面を用いれば、一般的に用いられている桧材の土台よりも約3.7倍程度強い土台とすることが出来るだけでなく、木材自体に圧縮加工などを必要とすることなく、十二分に強度のある材料として利用することができる。
【0020】
本発明の杉材の寸法は、図2(a)(b)に示す通り、たとえば、120mm(縦)×120mm(横)×30mm(厚)が挙げられる。この寸法は、出来上がる製品としての土台の寸法からすると、かなり小さい。また、多くの場合、製品を製作するとき定尺で切断するが、その切断片を用いることさえ出来る。つまり、これまで製品の材料とはならなかった杉材の木片でも使えるため、資源の有効活用となる。
【0021】
原料となる杉材の必要とする長さは120mm以上あれば良いため、これまで廃材となっていた日本農林規格外の長さの材木を有効に使うことが出来る。
【0022】
本発明は、建築用構造材である土台として使うために開発されたものである。建築基準法・施行令46条に「土台は基礎に緊結しなければならない」とあるため、土台は基礎と一体となって、建物の荷重を支えることが原則となっている。従って、梁や桁のように材そのものだけで、剪断力、曲げモーメントを受けない。基礎と一体で受けることとなる。基礎強度は木材よりも十分強いため、実質的に土台への影響はきわめて少なくなる。土台としての役割は、建物荷重を確実に基礎に伝えることにある。土台に要求される性能は、上部の荷重によるめり込みなどの変形を起こさない強さであるため、本発明の土台は、十分な機能を持っている。
【0023】
木材には異方性がありそれぞれの方向で性質が大きく異なっている。繊維方向の圧縮耐力は、直交方向の約3.5倍となり、本発明のよう繊維方向で荷重を支えることのできるような仕組みを構築すれば、同じ構成で、桧材よりも更に、約2.6倍強い土台を作ることができる。
【0024】
土台に要求される性能は、「めり込み」だけでない。(財)日本住宅・木材技術センター刊「木造軸組工法住宅の許容応力度計算」」5.5.2には、「土台及びアンカーボルトは、耐力壁より先行破壊させないという考えのもとに、以下の検定を行う。(以下略)」とある。耐力壁と土台、基礎はアンカーボルトにて緊結されているが、水平方向の外乱力の建物への入力により、耐力壁近傍でモーメントが発生する。
【0025】
このモーメントは、土台に直接影響を及ぼす。モーメントの力点は、耐力壁を構成する柱の部分、支点は、土台を基礎に緊結しているアンカーボルトの部分となる。モーメントは、次式により計算する。計算式は前段落に記載の刊行物の第112頁による。
M=a・T
M:モーメント
T:柱部分(力点)に加わる力
a:柱部分とアンカーボルトとの距離
となる。更に
土台の曲げ応力σ≦土台の短期許容曲げ応力度fbが成立する。
ここで、σ=M/Z=aT/Z
σは土台の曲げ応力、Zは断面係数である。このモーメントに、土台が耐えなければならない。
【0026】
モーメントは支点と力点との距離(a)の関数となっているため、この距離を短くすることで、一般的に使用されている桧材と同等以上に、モーメントに対抗できる構成を構築し得る。桧は、杉材の約1.3の強度を持つから、
L=1/1.3=0.77
ここで、Lは杉を用いた場合の係数であり、桧のアンカーボルト距離を1とした場合である。桧材を用いた土台に設置するアンカーボルトの距離を、耐力壁近傍では、0.77倍に設置すれば、桧の土台を使用する場合と同等以上の曲げ応力をもつ。この値は現実的に可能な値であり、実施時に問題は発生しない。
【0027】
図2(a)の杉材1a、または(b)の杉材1bを用いて、杉材1aまたは1bを幅方向に接合し、図3の構成層2aを構成するか、または、杉材1aまたは1bを長さ方向に接合し、図4の構成層2bを構成する。杉材の接合はフィンガージョイントまたは接着剤による接着とする。図2(a)に示す通り、杉材1aは、上面が木口面11、両側面を柾目面12、前後面を板目面13とし、杉材の繊維方向を前記上下面に対して垂直にしてある。杉材1bは、上面が木口面16、両側面を板目面17、前後面を柾目面18とし、杉材の繊維方向を前記上下面に対して垂直にしてある。図3および図4では、木口面はその年輪の放射方向を交互にしてある(180度反転)が、同一方向としてもよく、適宜変更できるものであり、図面に限定されるわけではない。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、使用面が木口方向であるため、柱などを建てた場合に発生する集中荷重に関して、十分な、めり込み強度を持つ土台にできる。
【0029】
本発明によれば、木材資源の有効利用を高めるだけでなく、従来の集成材の概念を超えた新たな用途を創出することが出来る。
【0030】
また、材質によって使用が限定されてきている木材である杉材を広い範囲に使うことが出来るようになる。
【0031】
本発明によれば、これまでにない集成材の作り方を提案し、今まで「材質が弱いから使えない」とされてきた樹種である杉を用いることが出来るようになった。
【0032】
また、集成材の概念を超えたものを製作することによって、これまでにない木材の可能性を広げることが出来るだけでなく、資源の有効活用が可能となる。
【0033】
本発明は、既存の集成材製作工程を生かし、工数の増加を極力抑えることが出来るため、製造経費的にはこれまでの経費と大きく変わることはない。それにもかかわらず、これまでの集成材にはない特徴を創造したものである。
【0034】
この土台はいわば直交構成材であり、繊維方向がJAS規格で定義される一般集成材の繊維方向と直交していることを意味し、JAS規格の定義には入らないものであって、木材の異方性の内、最も強度の高い木口方向を用いて、材全体の耐力を用途に合わせて強化することで上部荷重のめり込みを減少させることが出来る。また、本実施形態の土台の土台用として製作した杉の直交構成材の試作品にて、めり込み強度を測定した。その結果、板目方向および柾目方向からの荷重の、6.94倍の強度を示した実験例がある。これは、土台用途として十分な性能を持っている。めり込み性能は、十分、建築用材として用いることが出来る強度を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採り得ることは無論である。
【0036】
[実施形態1]
実施形態1の図5および図6に示す土台3は、図2に示す、厚さ30〜45mm、幅110〜135mm、長さ105mm〜900mmの杉材1bを幅方向に600mm、長さ方向に4000mmまで接着し厚さ30mmの構成層2b(図4で幅が3倍のもので長さ方向に連続するもの、以下同様)を作り、これを60mmずつ長さ方向に継ぎ手部分をづらし(図5参照)、構成層2bを複数枚(ここでは3枚)重ねに厚さ方向に接着することにより(図6参照)、厚さ110〜135mm、幅600mm、長さ4000mmの土台源材とする。これを、長さ方向に複数(たとえば、5つ)に等分し、プレーナー仕上げ(粗かんな仕上げ)をし、図5に示す、厚さ120mm、幅120mm、長さ4000mm(図では長さが省略されている)の土台3とする。仕様面である上面は木口面11,16となっているため、圧縮荷重に対し、十分な強度を備え、めり込みに対して強くなっている。杉材1bを用いたが、これにかえて杉材1aを採用してもよい。図3に示すものをそのまま、厚さ方向若しくは長さ方向に積層して用いてもよい(以下、同様)。
【0037】
[実施形態2]
実施形態2の図7に示す土台13は、図1および図2に示す、厚さ30〜45mm、幅110〜135mm、長さ105mm〜900mmの杉材1bを幅方向に600mm、長さ方向に4000mmまで接着し厚さ30mmの構成層2bを作り、これを適宜長さに長さ方向に継ぎ手部分をづらし、構成層2bを複数枚(ここでは2枚)重ねて厚さ方向に接着し、さらにその外側に、幅方向に厚さ30mm×幅600mm×長さ4000mmの板14を接着することにより、厚さ110〜135mm、幅600mm、長さ4000mmの構成材としたものである。これを、長さ方向に複数(たとえば、5つ)に等分し、図7に示す通り、厚さ120mm、幅120mm、長さ4000mmの土台源材とする。これにプレーナー仕上げ(粗かんな仕上げ)をし、図7に示す土台13とする。板14は上面が柾目面、前後面が木口面、両側面が板目面となっている。構成層2bと板14の繊維方向が直交している。仕様面である上面は木口面11,16となっているため、圧縮荷重に対し、十分な強度を備え、めり込みに対して強くなっている。上面の木口面積の比率は、約1/2になるが、木口面は、板目面の10倍以上強いため木口の面積が減少した材となっていても、十分な強度を持つ。
【0038】
[実施形態3]
実施形態3の図8および図9に示す土台23は、図1および図2に示す、厚さ30〜45mm、幅110〜135mm、長さ105mm〜900mmの杉材1bを幅方向に600mm、長さ方向に4000mmまで接着し厚さ30mmの構成層2bを作り、複数枚(ここでは3枚)の構成層2bと、複数枚(ここでは2枚)の同一サイズの板24を交互に厚さ方向に接着することにより、厚さ110〜135mm、幅600mm、長さ4000mmの土台源材としたものである。これを、長さ方向に複数(たとえば、5つ)に等分し、厚さ120mm、幅120mm、長さ4000mmとし、プレーナー仕上げ(粗かんな仕上げ)をし、土台23とする。板24は上面が柾目面、前後面が木口面、両側面が板目面となっている。構成層2bと板24の繊維方向が直交している。仕様面である上面は半分以上が木口面11,16となっているため、圧縮荷重に対し、十分な強度を備え、めり込みに対して強くなっている。上面の木口面積の比率は、約3/5になるが、木口面は、板目面の10倍以上強いため木口の面積が減少した材となっていても、十分な強度を持つ。
【0039】
[実施形態4]
実施形態4の図10および図11に示す土台33は、実施形態3の接合枚数を減数し、構成層2bを2枚、板34(板24に相当するもの)を1枚とし、構成層2bに対して板34を厚さ方向に接着したものであり、説明は実施形態3の説明を援用する。上面の木口面積の比率は、約2/3になるが、木口面は、板目面の10倍以上強いため木口の面積が減少した材となっていても、十分な強度を持つ。
【0040】
[実施形態5]
実施形態5の図12および図13に示す土台43は、実施形態3の土台23の構成層2bと板24の位置を交換したものであり、説明は実施形態3の説明を援用する。上面の木口面積の比率は、約2/5になるが、木口面は、板目面の10倍以上強いため木口の面積が減少した材となっていても、十分な強度を持つ。
【0041】
[実施形態6]
実施形態6の図14に示す土台53は、実施形態4の土台33の構成層2bと板34の位置を交換したものであり、説明は実施形態3の説明を援用する。上面の木口面積の比率は、約1/3になるが、木口面は、板目面の10倍以上強いため木口の面積が減少した材となっていても、十分な強度を持つ。
【0042】
次に、土台のサンプルを作成し、実際に部分圧縮実験(めり込み実験)を行った。この実験は「針葉樹の構造用製材の日本農林規格」目視等級製材及び機械等級製材、「日本建築学会木質構造設計規準」の普通構造材の上面に直角方向の部分圧縮試験に準拠して行ったものであり、加圧状態は、材中間部におけるめり込みである。
用いた検体は、以下の6点である。
それぞれの材幅は105mmとしている。
荷重実験に用いた鉄製プレートの接触面の幅は105mmである。
従って、部分圧縮部分の面積は、105mm×105mm=11,025mm2となっている。
比較例1は、4プライ(プライは構成層の数を示す、以下Pと表記)からなる縦積層の土台で、貼り合わせの柾目面から荷重するものである。
比較例2は、4Pからなる横積層の土台で、貼り合わせの板目面から荷重するものである。
実験例1は、構成層2bが5Pからなる土台で、上面が木口面+柾目面+木口面+柾目面+木口面の縦積層としたものである。
実験例2は、構成層2bが3Pからなる土台で、上面が木口面+桧板面(柾目または板目)+木口面とした縦積層したものである。
【0043】
比較例1、2、実験1、2は、全て杉材にて製作した。実験例2は、中心部に桧材を使用した。
比較例1の最大値は、約71kNとなった。
比較例2の最大値は、約70kNとなった。
実験例1の最大値は、約226kNとなった。
実験例2の最大値は、約181kNとなった。
比較例1、2は、一般的な集成材である。木口面を使用した実験例1,2の構成材では、弾性変形領域(線形領域)では直線の傾斜が大きくなっていて、めり込み量が少ないので、比較例1、2と明らかに異なる強度が出現している。
さらに、この結果から、5P構成で上面が柾目面+木口面+柾目面+木口面+柾目面で作成された場合の耐力出現を線形領域で検討した。
変位が1mmまでの荷重での領域は、土台として利用される場合の安全領域であるため、その領域内の木口構成材線形量を計算し、上記の構成の場合の応力を算定した。
上記の構成で桧の土台よりも、約3.5倍の強度を持つことが解った。
よって、この構成層は、材質の柔らかい杉を用いても土台として十分な強度をもつ。
【0044】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることが出来るものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれることは無論である。たとえば、実施形態では木口面が露出していたが、木口面を含む上下面に一般ラミナ材を接着し、被覆したものでもよい。また、実施形態では杉材1a、1bの繊維方向が上面と垂直の場合を例示したが、適宜角度に傾斜させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】木材の各部分の呼称について示した図である。
【図2】(a)(b)は本発明実施形態の土台を構成する杉材の斜視図である。
【図3】本発明実施形態の土台を構成する構成層の斜視図である。
【図4】同じく土台の別の構成層の斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態の土台の斜視図である。
【図6】同土台の分解斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態の土台の斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態の土台の斜視図である。
【図9】同土台の分解斜視図である。
【図10】本発明の第4実施形態の土台の斜視図である。
【図11】同土台の分解斜視図である。
【図12】本発明の第5実施形態の土台の斜視図である。
【図13】同土台の分解斜視図である。
【図14】本発明の第6実施形態の土台の斜視図である。
【図15】比較例1の土台を示す斜視図である。
【図16】比較例2の土台を示す斜視図である。
【図17】本発明の第1実験例の土台を示す斜視図である。
【図18】本発明の第2実験例の土台を示す斜視図である。
【図19】比較例1のめり込み試験を示すグラフである。
【図20】比較例2のめり込み試験を示すグラフである。
【図21】本発明の第1実験例のめり込み試験を示すグラフである。
【図22】本発明の第2実験例のめり込み試験を示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
1a,1b…杉材 2a,2b…構成層 11…木口面 12…柾目面
13…板目面 16…木口面 17…板目面 18…柾目面
3,13,23,33,43,53…土台 14,24,34…板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の圧縮されていない杉材の上下面に木口面を含み、両側面および前後面を柾目面または板目面とし、杉材の繊維方向を前記上下面に対して垂直とするかまたは傾斜させ、
該各杉材を厚さ方向または長さ方向に集合接着することにより構成層を形成し、
該構成層を厚さ方向または長さ方向に集合接着させて集合材とし、該集合材の上面から荷重を加えることを特徴とする土台。
【請求項2】
前記構成層の上面が、厚さ方向または長さ方向に、
板目もしくは柾目、木口、板目もしくは柾目、
板目もしくは柾目、木口、木口、板目もしくは柾目、または、
板目もしくは柾目、木口、板目もしくは柾目、木口、板目もしくは柾目、
の組み合わせで構成することを特徴とする請求項1の杉材を用いた土台。
【請求項3】
外層用の前記構成層が一般ラミナ材である請求項1の集成材による土台。
【請求項4】
前記構成層と一般ラミナ材とが積層方向に対して互い違いに接着される請求項1の土台。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図1】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−125844(P2010−125844A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306641(P2008−306641)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(506393547)江間忠ウッドベース株式会社 (3)
【Fターム(参考)】