説明

土圧管理装置

【課題】カッターヘッド背面の攪拌翼の影響を排除することが可能なシールド用土圧管理装置を提供すること。
【解決手段】カッターヘッド11の背面に攪拌翼12を備えたシールドマシン10に適用される土圧管理装置であって、チャンバ内の土圧を計測するための土圧センサ1と、攪拌翼12の位置を検出するための位置センサ2と、位置センサ2で取得された位置データに基づいて、土圧センサ1の近傍に攪拌翼12が位置しているか否かを判定する判定手段3と、表示手段5に表示すべき表示用土圧データを作成する表示用土圧データ作成手段4とを備えている。表示用土圧データ作成手段4は、土圧センサ1で取得された土圧データ群のうち、判定手段3の判定結果が肯定判定であるときに土圧センサ1で取得された土圧データを除外し、判定手段3の判定結果が否定判定であるときに土圧センサ1で取得された土圧データを使用して、表示用土圧データを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドマシン用の土圧管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉型土圧式(泥土圧式を含む)のシールドマシンを掘進させる際には、チャンバ内の土圧(泥土圧を含む)を計測し、得られた土圧データに基づいて掘削管理を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−255117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切羽の安定状態を的確に判断するためには、土圧変動を的確に把握する必要がある。切羽の安定状態に影響を及ぼすような土圧変動を的確に把握することができれば、トンネル掘削作業の安全性が高まることになる。
【0005】
このような観点から、本発明は、チャンバ内の土圧を管理するための土圧管理装置であって、切羽の安定状態に影響を及ぼすような土圧変動を的確に把握することが可能な土圧管理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
チャンバ内の土圧変動の原因を本願発明者が追求したところ、カッターヘッド背面の攪拌翼(練混ぜ翼)がチャンバ内の掘削土(加泥材が混練された掘削土を含む)を押し退けながら進行(旋回)することに伴い、攪拌翼の進行方向前側の領域では土圧が上昇し、攪拌翼の進行方向後側の領域では土圧が下降する傾向にあることが判明した。
【0007】
かかる知見に基づいて創案された本発明は、カッターヘッドの背面に攪拌翼を備えたシールドマシンに適用される土圧管理装置であって、チャンバ内の土圧を計測するための土圧センサと、前記攪拌翼の位置を検出するための位置センサと、前記位置センサで取得された位置データに基づいて、前記土圧センサの近傍に前記攪拌翼が位置しているか否かを判定する判定手段と、表示手段に表示すべき表示用土圧データを作成する表示用土圧データ作成手段とを備え、前記表示用土圧データ作成手段は、前記土圧センサで取得された土圧データ群のうち、前記判定手段の判定結果が肯定判定であるときに前記土圧センサで取得された土圧データを除外し、前記判定手段の判定結果が否定判定であるときに前記土圧センサで取得された土圧データを使用して、前記表示用土圧データを作成することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、判定手段の判定結果が肯定判定であるとき(攪拌翼が土圧センサの近傍を旋回しているとき)に土圧センサで取得された土圧データが表示用土圧データから除外されるようになる。すなわち、本発明によれば、攪拌翼の旋回に伴う土圧変動が表示されなくなる結果、攪拌翼以外の要因による土圧変動が相対的に顕在化するようになるので、例えば、切羽の安定状態に影響を及ぼすような土圧変動などを容易に把握することが可能となり、ひいては、精度の高い掘削管理を行うことが可能となる。なお、攪拌翼の旋回に起因した土圧変動は、攪拌翼の旋回に伴って周期的に発生するものであり、切羽の安定状態とは関連していないから、攪拌翼の旋回に伴う土圧変動を排除しても、特段の問題は生じない。
【0009】
なお、複数の土圧センサを設ける場合には、土圧センサごとに前記した判定処理を行う。また、複数の土圧センサが配置されている場合には、総ての土圧センサに係る土圧データが同時に除外されないように各土圧センサの設置位置を決定することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、攪拌翼に起因する土圧変動が排除された土圧データを提供することが可能となるので、切羽の安定状態に影響を及ぼすような土圧変動を的確に把握することができ、ひいては、トンネル掘削作業の安全性が高まるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る土圧管理装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る土圧管理装置が適用されるシールドマシンの概略断面図、(b)は攪拌翼の影響範囲を説明するための拡大断面図である。
【図3】表示用土圧データを示す図であって、(a)は第一土圧センサで取得された土圧データに基づいて作成した土圧の時刻歴データを示す図、(b)は第二土圧センサおよび第三土圧センサで取得された土圧データに基づいて作成した土圧の時刻歴データを示す図、(c)は複数の土圧センサで取得された土圧に基づいて作成した平均土圧の時刻歴データである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る土圧管理装置は、密閉型泥土圧式のシールドマシン10(図2参照)の掘削管理に使用されるものである。
【0013】
シールドマシン10は、図2の(a)に示すように、カッターヘッド11、攪拌翼12,12,…、隔壁13、排土手段14、加泥材注入系統15などを備えている。カッターヘッド11で切削された掘削土は、加泥材注入口系統15から注入された加泥材とともにチャンバ(カッターヘッド11と隔壁13との間の空間)内に取り込まれ、攪拌翼12,12,…によって攪拌されつつ、排土手段14によってチャンバ内から排出される。攪拌翼12,12,…は、チャンバ内に取り込まれた掘削土の塑性流動化を促すとともに、掘削土の付着や堆積を防止する目的で配置されるものであり、カッターヘッド11の背面に取り付けられている。攪拌翼12の形状に制限はないが、本実施形態のものは円柱状である。
【0014】
図1に示すように、カッターヘッド11は、その回転軸から放射状に延出する複数本(本実施形態では四本)のカッタースポーク11a〜11dを具備している。カッタースポーク11a〜11dは、90度ピッチで十字状に配置されている。
【0015】
攪拌翼12,12,…は、カッターヘッド11の回転に伴って、カッターヘッド11の回転軸を中心にして旋回する。本実施形態では、1本のカッタースポークにつき内外二つの攪拌翼12,12が取り付けられている。
【0016】
内周側の攪拌翼12,12,…は、第一の移動ルートPに沿って旋回し、外周側の攪拌翼12,12,…は、第二の移動ルートQに沿って旋回する。移動ルートP,Qは、攪拌翼12の中心軸線の移動軌跡を隔壁13に投影したものであり、カッターヘッド11の回転軸を中心とした同心円となる。
【0017】
本実施形態の土圧管理装置は、シールドマシン10に装備される土圧センサ1,1,…および位置センサ2、コンピュータによって構成される判定手段3および表示用土圧データ作成手段4、ディスプレイによって構成される表示手段5を備えている。
【0018】
土圧センサ1は、チャンバ内の土圧を測定するためのセンサであり、図2の(a)に示すように、隔壁13に装着されている。土圧センサ1の受圧部は、隔壁13と面一となるように設けられていて、チャンバ内に露出している。本実施形態の土圧センサ1は、ひずみゲージ式の土圧センサであり、受圧部に作用する土圧に相関する電圧値を出力する。土圧センサ1から出力された電圧値(生データ)は、表示用土圧データ作成手段4の前段に設けられた測定手段(図示略)において土圧値(土圧データ)に変換される。測定手段は、土圧センサ1から出力された電圧値のアナログデータを所定の時間間隔ごとにサンプリングするとともに、サンプリングされた電圧値(デジタル化された電圧値)に校正係数を乗じることで、電圧値を土圧データに変換し、得られた土圧データを表示用土圧データ作成手段4に出力する。
【0019】
土圧センサ1の数に制限はないが、図1に示すように、本実施形態では三つである。土圧センサ1の設置位置にも制限はないが、本実施形態では、三つの土圧センサ1,1,1のうちの二つをスプリングライン上に設置し、残り一つをスプリングラインから外れた位置に設置している。三つの土圧センサ1,1,1は、いずれも移動ルートP,Qによって挟まれた円帯状領域に位置している。
【0020】
なお、以下の説明において、三つの土圧センサ1,1,1を区別する場合には、スプリングラインから外れた位置の土圧センサ1を「第一土圧センサ1a」と称し、スプリングライン上に位置する左右一対の土圧センサ1,1をそれぞれ「第二土圧センサ1b」および「第三土圧センサ1c」と称する。
【0021】
図1において、第一土圧センサ1aの近傍の移動ルートP上に描かれた実線の太線部分は、第一のデータ除外区間Raを示す仮想線であり、第二土圧センサ1bの近傍の移動ルートP上に描かれた実線の太線部分は、第二のデータ除外区間Rbを示す仮想線である。また、第三土圧センサ1cの近傍の移動ルートP上に描かれた実線の太線部分は、第三のデータ除外区間Rcを示す仮想線である。
【0022】
データ除外区間Ra,Rb,Rcは、攪拌翼12の旋回に伴う土圧変動が及ぶ範囲(以下「影響範囲」という。)を考慮して設定する。すなわち、攪拌翼12は、チャンバ内の掘削土を押し退けながら旋回(進行)するので、攪拌翼12の進行方向前側の領域では土圧が上昇し、攪拌翼12の進行方向後側の領域では土圧が下降する傾向にあるが、このような土圧変動は、攪拌翼12の近傍で顕著に現れ、攪拌翼12から離れるに従って小さくなる。攪拌翼12の影響範囲は、攪拌翼12の形状や寸法によって変化するが、図2の(b)に示すように、攪拌翼12の最大外径部の先端から45度の角度で広がる円錐台状の範囲に及ぶと仮定とし、攪拌翼12の最大外径をD、最大外径部の先端と隔壁13との離隔距離をxとすると、隔壁13の位置においては、直径(D+2x)の円の内側が攪拌翼12の影響範囲となる。例えば、D=200mm、x=80mmである場合、隔壁13の位置においては、直径360mm(=1.8D)の円の内側が攪拌翼12の影響範囲となり、D=150mm、x=100mmである場合、隔壁13の位置においては、直径350mm(≒2.3D)の円の内側が攪拌翼12の影響範囲となる。
【0023】
上記の影響範囲を考慮し、本実施形態では、移動ルートPから土圧センサ1a,1b,1cの受圧部までの距離が(D/2+x)となる区間をデータ除外区間Ra,Rb,Rcとしている。
【0024】
位置センサ2は、攪拌翼12の位置を検出するためのものである。位置センサ2で取得された位置データは、判定手段3で使用される。位置センサ2の種類に制限はないが、本実施形態の位置センサ2は、アブソリュート型のロータリーエンコーダからなり、カッタースポーク11a(以下「基準カッタースポーク11a」という。)の基準線Sからの回転角度を検出することができる。なお、本実施形態では、カッターヘッド11の回転軸とトンネル天端とを結ぶ線分を基準線Sとしている。
【0025】
判定手段3および表示用土圧データ作成手段4は、コンピュータによって実現される。このコンピュータは、CPU(中央演算処理装置)や記憶装置(RAM、ROM、ハードディスクなど)のほか、土圧センサ1、位置センサ2および表示手段5との間でデータのやり取りを行うためのインターフェースなどを備えている。記憶装置には、コンピュータを判定手段3および表示用土圧データ作成手段4として機能させるためのプログラムが格納されており、記憶装置から読み出したプログラムをCPUで実行すると、コンピュータが判定手段3および表示用土圧データ作成手段4として機能するようになる。
【0026】
表示手段5は、表示用土圧データ作成手段4から出力された表示用土圧データを表示するディスプレイである。
【0027】
判定手段3および表示用土圧データ作成手段4の構成をより詳細に説明する。
判定手段3は、位置センサ2から出力された位置データに基づいて、土圧センサ1の近傍に攪拌翼12が位置しているか否かを判定する。
【0028】
なお、以下では、基準カッタースポーク11aに固定された攪拌翼12に符号12aを付す場合があり、また、他のカッタースポーク11b,11c,11dに固定された攪拌翼12に、それぞれ、符号12b,12c,12dを付す場合がある。
【0029】
判定手段3は、まず、位置センサ2から出力された位置データ(基準線Sに対する基準カッタースポーク11aの回転角度θa)を読み込むとともに、読み込んだ位置データに基づいて攪拌翼12aの位置(回転角度)を算出する。攪拌翼12aの回転角度は、本実施形態では基準カッタースポーク11aの回転角度θaと同じである。なお、他の攪拌翼12b,12c,12dの回転角度θb,θc,θdは、(ア)〜(ウ)により算出すればよい。
(ア) θb=θa+90度 (0≦θa<270度の場合)
θb=θa−270度 (270度≦θa<360度の場合)
(イ) θc=θa+180度 (0≦θa<180度の場合)
θc=θa−180度 (180度≦θa<360度の場合)
(ウ) θd=θa+270度 (0≦θa<90度の場合)
θd=θa−90度 (90度≦θa<360度の場合)
【0030】
基準カッタースポーク11aの回転角度θaが得られると、判定手段3は、土圧センサ1の近傍に攪拌翼12が位置しているか否かを判定する処理を実行する。判定手段3は、判定結果が肯定判定となった場合には、肯定判定がなされたことを示す「肯定判定情報」を生成する(例えば、フラグを「1」に設定する)とともに、肯定判定がなされたときに土圧センサ1で取得された土圧データに対して肯定判定情報を付与する処理を実行する。また、判定手段3は、判定結果が否定判定となった場合には、否定判定がなされたことを示す否定判定情報を生成する(例えば、フラグを「0」に設定する)とともに、否定判定がなされたときに土圧センサ1で取得された土圧データに対して否定判定情報を付与する処理を実行する。
【0031】
例えば、第一のデータ除外区間Raの始点が基準線Sに対して角度αaだけ回転した位置に設定されており、第一のデータ除外区間Raの終点が基準線Sに対して角度βa(>αa)だけ回転した位置に設定されている場合であれば、判定手段3は、(1)〜(4)に示す条件のいずれか一つが成立したときに、第一土圧センサ1aの近傍に攪拌翼12が位置していることを示す肯定判定情報を生成し、第一土圧センサ1aで取得された土圧データに対して肯定判定情報を付与する(例えば、第一土圧センサ1aで取得された土圧データにフラグ「1」を関連付ける)。
(1) αa<θa<βa
(2) αa+90度<θa<βa+90度
(3) αa+180度<θa<βa+180度
(4) αa+270度<θa<βa+270度
【0032】
また、判定手段3は、(1)〜(4)に示す条件がいずれも成立しないときには、第一土圧センサ1aの近傍に攪拌翼12が位置していないことを示す否定判定情報を生成し、第一土圧センサ1aで取得された土圧データに対して否定判定情報を付与する(例えば、第一土圧センサ1aで取得された土圧データにフラグ「0」を関連付ける)。
【0033】
なお、(1)の条件が成立したときには、基準カッタースポーク11aが第一のデータ除外区間Raに位置することになるが、(2)〜(4)の条件が成立したときには、カッタースポーク11b〜11dが第一のデータ除外区間Raに位置することになる。
【0034】
また、第二のデータ除外区間Rbの始点が基準線Sに対して角度αbだけ回転した位置に設定されており、第二のデータ除外区間Rbの終点が基準線Sに対して角度βb(>αb)だけ回転した位置に設定されている場合であれば、判定手段3は、(5)〜(8)に示す条件のいずれか一つが成立したときに、第二土圧センサ1bの近傍および第三土圧センサ1cの近傍に攪拌翼12が位置していることを示す肯定判定情報を生成し、第二土圧センサ1bおよび第三土圧センサ1cで取得された土圧データに対して肯定判定情報を付与する(例えば、第二土圧センサ1bおよび第三土圧センサ1cで取得された土圧データにフラグ「1」を関連付ける)。
(5) αb<θa<βb
(6) αb+90度<θa<βb+90度
(7) αb+180度<θa<βb+180度
(8) αb+270度<θa<360度、又は0≦θa<βb−90度
【0035】
また、判定手段3は、(5)〜(8)に示す条件がいずれも成立しないときには、第二土圧センサ1bの近傍および第三土圧センサ1cの近傍のいずれにも攪拌翼12が位置していないことを示す否定判定情報を生成し、第二土圧センサ1bおよび第三土圧センサ1cで取得された土圧データに対して否定判定情報を付与する(例えば、第二土圧センサ1bおよび第三土圧センサ1cで取得された土圧データにフラグ「0」を関連付ける)。
【0036】
なお、(5)の条件が成立したときには、基準カッタースポーク11aが第二のデータ除外区間Rbに位置し、カッタースポーク11cが第三のデータ除外区間Rcに位置することになり、(6)の条件が成立したときには、カッタースポーク11dが第二のデータ除外区間Rbに位置し、カッタースポーク11bが第三のデータ除外区間Rcに位置することになる。同様に、(7)の条件が成立したときには、カッタースポーク11cが第二のデータ除外区間Rbに位置し、カッタースポーク11aが第三のデータ除外区間Rcに位置することになり、(8)の条件が成立したときには、カッタースポーク11dが第二のデータ除外区間Rbに位置し、カッタースポーク11bが第三のデータ除外区間Rcに位置することになる。
【0037】
表示用土圧データ作成手段4は、表示手段5に表示すべき表示用土圧データを作成する。表示用土圧データ作成手段4は、土圧センサ1によって取得された土圧データ群のうち、判定手段3の判定結果が肯定判定であるときに取得された土圧データ(すなわち、肯定判定情報が付与された土圧データ)を除外し、判定手段3の判定結果が否定判定であるときに取得された土圧データ(すなわち、否定判定情報が付与された土圧データ)を使用して、表示用土圧データを作成する。
【0038】
より具体的に説明すると、表示用土圧データ作成手段4は、例えば、第一土圧センサ1aの設置位置における土圧の時刻歴データを作成する際には、第一土圧センサ1aで取得された土圧データ群の中から肯定判定情報が付与された土圧データ群を除外し、否定判定情報が付与された土圧データ群を使用して、土圧の時刻歴データ(表示用土圧データ)を作成する。このようにすると、図3の(a)に示すように、第一土圧センサ1aの近傍に攪拌翼12a〜12dが位置している間(時刻ta1〜ta2、ta3〜ta4、ta5〜ta6、ta7〜ta8)の土圧データが表示されないようになる。第二土圧センサ1bおよび第三土圧センサ1cの設置位置における土圧の時刻歴データを作成する場合も同様であり、図3の(b)に示すように、第二土圧センサ1b(第三土圧センサ1c)の近傍に攪拌翼12a〜12dが位置している間(時刻tb1〜tb2、tb3〜tb4、tb5〜tb6、tb7〜tb8)の土圧データが表示されないようになる。
【0039】
また、表示用土圧データ作成手段4は、例えば、或る期間中(例えば、カッターヘッド11が1回転する間)の第一土圧センサ1aの設置位置における最大土圧データ・最小土圧データを作成する際には、第一土圧センサ1aで取得された土圧データ群のうち、否定判定情報が付与された土圧データ群を検索することで、土圧の最大値データ・最小値データを作成する。
【0040】
また、表示用土圧データ作成手段4は、例えば、チャンバ内の平均土圧データを作成する際には、土圧センサ1a,1b,1cから同時刻に取得された三つの土圧データの中から、肯定判定情報が付与された土圧データを除外し、否定判定情報が付与された土圧データを用いて平均土圧データを作成する。すなわち、表示用土圧データ作成手段4は、例えば、第一土圧センサ1aで取得された土圧データに肯定判定情報が付与され、第二土圧センサ1bおよび第三土圧センサ1cで取得された土圧データに否定判定情報が付与されている場合には、第二土圧センサ1bおよび第三土圧センサ1cで取得された二つの土圧データを相加平均したもの平均土圧データとし、第一土圧センサ1aで取得された土圧データに否定判定情報が付与され、第二土圧センサ1bおよび第三土圧センサ1cで取得された土圧データに肯定判定情報が付与されている場合には、第一土圧センサ1aで取得された土圧データを平均土圧データとして表示手段5に出力する。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る土圧管理装置によれば、判定手段3の判定結果が肯定判定であるとき(攪拌翼12が土圧センサ1の近傍を旋回しているとき)に土圧センサ1で取得された土圧データが表示用土圧データから除外されるようになる。すなわち、本実施形態に係る土圧管理装置によれば、攪拌翼12の旋回に伴う土圧変動が表示されなくなる結果、攪拌翼12以外の要因による土圧変動が相対的に顕在化するようになるので、例えば、切羽の安定状態に影響を及ぼすような土圧変動などを容易に把握することが可能となり、ひいては、精度の高い掘削管理を行うことが可能となる。
【0042】
本実施形態では、第一土圧センサ1aの近傍に攪拌翼12が位置している間に第二土圧センサ1bおよび第三土圧センサ1cの近傍に攪拌翼12が位置せず、かつ、第二土圧センサ1bおよび第三土圧センサ1cの近傍に攪拌翼12が位置している間に第一土圧センサ1aの近傍に攪拌翼12が位置しないように、土圧センサ1a〜1cを配置しているので、切羽の安定状態に影響を及ぼすような土圧変動を切れ目無く監視することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 土圧センサ
2 位置センサ
3 判定手段
4 表示用土圧データ作成手段
5 表示手段
10 シールドマシン
11 カッターヘッド
12 攪拌翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターヘッドの背面に攪拌翼を備えたシールドマシンに適用される土圧管理装置であって、
チャンバ内の土圧を計測するための土圧センサと、
前記攪拌翼の位置を検出するための位置センサと、
前記位置センサで取得された位置データに基づいて、前記土圧センサの近傍に前記攪拌翼が位置しているか否かを判定する判定手段と、
表示手段に表示すべき表示用土圧データを作成する表示用土圧データ作成手段と、を備え、
前記表示用土圧データ作成手段は、前記土圧センサで取得された土圧データ群のうち、前記判定手段の判定結果が肯定判定であるときに前記土圧センサで取得された土圧データを除外し、前記判定手段の判定結果が否定判定であるときに前記土圧センサで取得された土圧データを使用して、前記表示用土圧データを作成することを特徴とする土圧管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−225131(P2012−225131A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96460(P2011−96460)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】