説明

土壌殺菌装置

【課題】土壌殺菌の作業を手数を要することなく簡易に行うことができ、かつ、エネルギ効率がよく、処理コストが低廉な土壌殺菌装置を提供すること。
【解決手段】車両2に、土壌に向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振器4を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌殺菌装置に関し、特に、野菜栽培土壌に好適に使用できる土壌殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜栽培土壌においては、線虫を始めとする病虫害の発生を防止し、野菜の連作を可能にするために、土壌殺菌を行うようにしている。
この土壌殺菌方法としては、臭化メチルやクロロピクリンを代表とする土壌消毒剤(農薬)が普及しているが、農薬としての効果が最も優れている臭化メチルは、地球温暖化物質の一つとして今後使用が禁止される方向にある。
また、農薬の使用量の削減や農薬を使用しない無農薬農法の気運の高まりもあって、上記農薬を使用しない土壌殺菌方法の提供が要請されていた。
【0003】
ところで、土壌殺菌の対象となる土壌中に生息する害虫は、土壌を60℃〜80℃程度に加熱することによって死滅することが知られている。
そこで、図4に示すように、土壌殺菌を行う土壌Dの表面に、ホース12を敷設するとともに、ホース12の上に保温カバー13を被せ、ホース12内にボイラー等で加熱した温水又は蒸気を供給管11を介して供給し、土壌Dを加熱することによって、害虫を死滅させる土壌殺菌装置10が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
なお、この土壌殺菌装置10には、ホース12に多数の細孔を設け、温水又は蒸気を直接土壌Dに散布して土壌Dを加熱する方式と、ホース12内に通水した温水又は蒸気によって間接的に土壌Dを加熱する方式とがある。
しかしながら、この土壌殺菌装置10は、土壌殺菌を行う際に、ホース12を敷設するとともに、ホース12の上に保温カバー13を被せる必要があるため、作業に多大な手数を要し、また、土壌Dに散布した温水又は蒸気が十分届かない部分が発生し、殺菌効果の偏りが生じる場合があり、この場合ボイラーの加熱量を上げる必要があり、燃料消費量が増大することにより、エネルギ効率が劣り処理コストがかかるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−272347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の土壌殺菌方法や装置が有する問題点に鑑み、土壌殺菌の作業を手数を要することなく簡易に行うことができ、かつ、エネルギ効率がよく、処理コストが低廉な土壌殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の土壌殺菌装置は、車両に、土壌に向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振器を配設したことを特徴とする。
【0006】
この場合において、マイクロ波発振器を冷却する水冷式冷却機構と、マイクロ波発振器を冷却した後の冷却水を土壌に散布する散布機構とを配設することができる。
【0007】
また、土壌攪拌機構を配設することができる。
【0008】
さらに、土壌に向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振器を車両に配設した土壌殺菌装置と、土壌殺菌を行う土壌の表面にホースを敷設するとともに、ホースの上に保温カバーを被せ、ホース内に温水又は蒸気を供給する土壌殺菌装置とを併用することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の土壌殺菌装置によれば、車両に、土壌に向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振器を配設することにより、マイクロ波発振器を配設した車両を、土壌殺菌を行う土壌上を走行させながら、マイクロ波発振器から土壌に向けてマイクロ波を照射することによって、土壌を加熱し、害虫や病原菌を死滅させることができる。
そして、この土壌殺菌装置は、土壌殺菌の作業を行うに当たり、特に準備作業を必要としないことから、土壌殺菌の作業を手数を要することなく簡易に行うことができ、また、マイクロ波発振器から土壌に向けて照射したマイクロ波によって直接土壌を加熱できるためエネルギ効率がよく、処理コストを低廉にできる。
【0010】
また、マイクロ波発振器を冷却する水冷式冷却機構と、マイクロ波発振器を冷却した後の冷却水を土壌に散布する散布機構とを配設することにより、マイクロ波発振器を冷却することによって温度の上昇した冷却水(温水)を散布機構によって土壌に散布して、温度の上昇した冷却水(温水)による加温効果を得ることができるとともに、土壌の含水率を高めてマイクロ波の吸収効率を高めることができ、これによって、エネルギ効率を一層向上することができる。
【0011】
また、土壌攪拌機構を配設することにより、マイクロ波発振器から土壌に向けてマイクロ波を照射するに当たって、土壌を攪拌することにより、深部の土壌を地表面に持ってくるとともに、土壌に対するマイクロ波の浸透度を高め、土壌の深部に生息する害虫や病原菌に対しても効果的な殺虫作用や殺菌作用を及ぼすことができる。
【0012】
さらに、土壌に向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振器を車両に配設した土壌殺菌装置と、土壌殺菌を行う土壌の表面にホースを敷設するとともに、ホースの上に保温カバーを被せ、ホース内に温水又は蒸気を供給する土壌殺菌装置とを併用することにより、保温カバーの上からマイクロ波を照射することによって、土壌とホース内の水(温水)とを併せて加熱することができ、土壌の深部に生息する害虫や病原菌に対しても効果的な殺虫作用や殺菌作用を及ぼすことができる。
ただし、この場合には、前記既設の土壌殺菌装置には保温カバーが被せられているため、マイクロ波発振器を冷却することによって温度の上昇した冷却水(温水)を散布機構によって散布することや、土壌攪拌機で土壌を攪拌することは適当でない。なお、マイクロ波発振器には、必要に応じて、空冷式冷却機構や水冷式冷却機構を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の土壌殺菌装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1に、本発明の土壌殺菌装置の第1実施例を示す。
この土壌殺菌装置1は、移動用の車輪3を備えた車両2に、その底面に形成した開口部2aを介して土壌に向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振器4を配設するようにしている。
そして、マイクロ波発振器4には、必要に応じて、マイクロ波発振器4を冷却するために、水冷式や空冷式の冷却機構5aを設けることができる。
車両2は、図1(a)に示すように、エンジン等の駆動源を有するもののほか、駆動源を有しない牽引式等のものでもよい。
【0015】
そして、この土壌殺菌装置1は、マイクロ波発振器4を配設した車両2を、土壌殺菌を行う土壌上を走行させながら、マイクロ波発振器4から土壌に向けてマイクロ波を照射することによって、土壌を加熱し、害虫や病原菌を死滅させるものである。
この場合、土壌殺菌の作業を行うに当たって、特に準備作業を必要とせず、また、マイクロ波発振器4から土壌に向けて照射したマイクロ波によって直接土壌を加熱できるためエネルギ効率よく、土壌殺菌処理を行うことができる。
【0016】
また、この土壌殺菌装置1は、上記の温水を用いた土壌殺菌装置10と併用することができる。
この場合、ホース12上に敷設する保温カバー13にセラミック繊維製等の電磁波透過性シートを用いることによって、保温カバー13の上からマイクロ波を照射することによって、土壌とホース12内の水とを併せて加熱することができる。
この場合、土壌には保温カバー13が被せられているため、マイクロ波発振器の冷却機構5aは、水冷式冷却機構でもよいが、空冷式冷却機構であることが望ましい。
【実施例2】
【0017】
図2に、本発明の土壌殺菌装置の第2実施例を示す。
この土壌殺菌装置1は、第1実施例の土壌殺菌装置に、マイクロ波発振器4の発振部位を冷却する水冷式の冷却機構5bと、マイクロ波発振器4を冷却した後の冷却水を土壌に散布する散布機構6とを配設するようにしている。
【0018】
水冷式の冷却機構5bは、特にその構成を限定されるものではないが、例えば、冷却水タンク5b1から冷却水をマイクロ波発振器4の発振部位に供給し、発振部位との間で熱交換を行う熱交換部5b2を備えたものであればよく、冷却水タンク5b1を配設することに代えて、水道管(図示省略)からホースによって冷却水を供給するように構成することもできる。
【0019】
散布機構6は、マイクロ波発振器4のマイクロ波照射部の進行方向前方の車両2に配設するようにし、マイクロ波発振器4の発振部位を冷却した後の冷却水(温水)を配管Cによって導き、散布口6aから土壌に向けて散布するように構成する。
【0020】
そして、この土壌殺菌装置1は、マイクロ波発振器4の発振部位を冷却することによって温度の上昇した冷却水(温水)を散布機構6によって土壌に散布して、温度の上昇した冷却水(温水)による加温効果を得ることができるとともに、冷却水(温水)を散布することによって含水率を高めた土壌にマイクロ波を照射することによって、マイクロ波の吸収効率を高めることができ、これによって、エネルギ効率を一層向上することができるようにしたものである。
なお、本実施例の土壌殺菌装置1のその他の構成及び作用は、第1実施例の土壌殺菌装置のマイクロ波発振器4の冷却機構を空冷式とする点を除いて、第1実施例のものと同様である。
【実施例3】
【0021】
図3に、本発明の土壌殺菌装置の第3実施例を示す。
この土壌殺菌装置1は、第2実施例の土壌殺菌装置に、土壌攪拌機構7を配設するようにしている。
【0022】
土壌攪拌機構7は、マイクロ波発振器4のマイクロ波照射部の進行方向前方、本実施例においては、散布機構6の進行方向前方の車両2に配設するようにする。
この土壌攪拌機構7は、特にその構成を限定されるものではないが、例えば、周面に多数の攪拌爪7bを有する耕耘ロータ7aを、車両2の前端に配設したフランジ7cに揺動可能に取り付けた揺動アーム7dに軸支して構成する。そして、耕耘ロータ7aは、モータ等の適宜回動手段によって、図3(a)に示す矢符方向に回動駆動されるようにしている。
【0023】
そして、この土壌殺菌装置1は、マイクロ波発振器4から土壌に向けてマイクロ波を照射するに当たって、土壌攪拌機構7によって土壌を攪拌することにより、深部の土壌を地表面に持ってくるとともに、昇温した冷却水の土壌への浸透度と土壌に対するマイクロ波の浸透度を高め、土壌の深部に生息する害虫や病原菌に対しても効果的な殺虫作用や殺菌作用を及ぼすことができるようにしたものである。
なお、本実施例の土壌殺菌装置1のその他の構成及び作用は、第1実施例及び第2実施例の土壌殺菌装置と同様である。
【0024】
以上、本発明の土壌殺菌装置について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の土壌殺菌装置は、土壌殺菌の作業を手数を要することなく簡易に行うことができ、かつ、エネルギ効率がよく、処理コストを低廉にできることから、野菜栽培土壌の殺虫、殺菌の用途に好適に用いることができるほか、それ以外用途の農地の土壌の殺虫、殺菌の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の土壌殺菌装置の第1実施例を示し、(a)は側面図を、(b)は底面図である。
【図2】本発明の土壌殺菌装置の第2実施例を示し、(a)は側面図を、(b)は底面図である。
【図3】本発明の土壌殺菌装置の第3実施例を示し、(a)は側面図を、(b)は底面図である。
【図4】従来の土壌殺菌装置の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 土壌殺菌装置
2 車両
3 車輪
4 マイクロ波発振器
5a 冷却機構
5b 冷却機構
6 散布機構
7 土壌攪拌機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に、土壌に向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振器を配設したことを特徴とする土壌殺菌装置。
【請求項2】
マイクロ波発振器を冷却する水冷式冷却機構と、マイクロ波発振器を冷却した後の冷却水を土壌に散布する散布機構とを配設したことを特徴とする請求項1記載の土壌殺菌装置。
【請求項3】
土壌攪拌機構を配設したことを特徴とする請求項1又は2記載の土壌殺菌装置。
【請求項4】
土壌に向けてマイクロ波を照射するマイクロ波発振器を車両に配設した土壌殺菌装置と、土壌殺菌を行う土壌の表面にホースを敷設するとともに、ホースの上に保温カバーを被せ、ホース内に温水又は蒸気を供給する土壌殺菌装置とを併用してなることを特徴とする土壌殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−72964(P2008−72964A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256130(P2006−256130)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】