説明

土壌消毒機

【課題】手動により個々のダイヤフラムポンプを駆動させることができる土壌消毒機を提供する。
【解決手段】第一ダイヤフラムポンプ4の第一ダイヤフラム43と、第一ダイヤフラム43を往復駆動するためのモーター206との間に配置する第一連結ロッド44、第一レバー45、第一カムフォロワー46、第一カム47等により構成される動力伝達経路に、第一ハンドル402を設け、第二ダイヤフラムポンプ5の第二ダイヤフラム53と、第二ダイヤフラム53を往復駆動するためのモーター206との間に配置する第二連結ロッド54、第二レバー55、第二カムフォロワー56、第二カム57等により構成される動力伝達経路に、第二ハンドル502を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の牽引車両の後部に牽引して、園芸作物や野菜等を栽培する前の圃場に薬液を注入する土壌消毒機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラクタ等の牽引車両の後部に牽引されるマルチ同時土壌消毒機に、ダイヤフラムポンプを取り付けた技術は公知となっている。例えば、特許文献1および2に記載の如くである。
前記技術の土壌消毒機は、薬液注入爪の先端部と中途部に薬液注入ノズルを備え、それぞれの薬液注入ノズルは、個々のダイヤフラムポンプと接続されている。ダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムがカムにより上下動され、薬液を吸入・吐出し、薬液ノズルに薬液を圧送するように構成されている。一方のカムと、他方のカムとは、同一のカム軸に設けられ、カム軸の一端は駆動源に接続されている。
【特許文献1】特開2000−350548号公報
【特許文献2】特開平9−317647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、一方のダイヤフラムポンプのみがエアを吸入した場合であっても、両方のカムが、同一のカム軸に設けられているため、両方のダイヤフラムポンプを駆動させて、薬液を吐出させることとなり、薬液の無駄となる場合がある。
【0004】
本発明は以上の如き状況に鑑み、手動により個々のダイヤフラムポンプを駆動させることができる土壌消毒機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、牽引車両の後部に牽引され、薬液を土壌に注入するための溝を掘削する薬液注入爪と、該薬液注入爪に備えられ、土壌に薬液を注入する薬液注入ノズルと、該薬液注入ノズルに薬液を圧送するダイヤフラムポンプと、を備える土壌消毒機において、該ダイヤフラムポンプのダイヤフラムと、該ダイヤフラムを往復駆動するための駆動源との間に配置する動力伝達経路に、手動駆動操作手段を設けるものである。
【0007】
請求項2においては、前記手動駆動操作手段は、前記ダイヤフラムに垂設される連結部材と、駆動源により回転駆動されるカムとの間に介設するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、手動駆動操作手段を操作することにより、駆動源を作動することなくダイヤフラムポンプを作動させることが可能となり、作業前に手動でエア抜きが可能となる。特に、複数のダイヤフラムポンプを並列運転可能に構成した場合に、ホースの長さ等が異なることによりエア抜きの作動時間が異なるが、個々に作動できるので、無駄な薬液の消費をなくすことができる。
【0010】
請求項2においては、動力伝達経路を利用することにより、別の手動操作用の経路を設ける必要がなくなり、操作手段を安価に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、発明の実施の形態を説明する。
先ず、図1から図5を用いて、本発明における土壌消毒機の実施の一形態である土壌消毒機2の全体構成について説明する。なお、図1に示す矢印Aの方向を「前側」とする。
【0012】
土壌消毒機2は、トラクタ1等の牽引車両の後部に装着されて、牽引されるものであって、平面視略正方形に構成されたメインフレーム20の前部に、トラクタ1の後部に配置される作業機装着装置に連結する装着部3が配置され、メインフレーム20の前部の上部左右中央に、第一ダイヤフラムポンプ4と第二ダイヤフラムポンプ5が配置され、メインフレーム20の前部の左右中央下方に、薬液注入爪6と第一薬液注入ノズル8と第二薬液注入ノズル9が配置され、その前方に薬液注入爪レバー7が配置される。そして、メインフレーム20の前部の両側下方に、ゲージ輪21・21が配置されている。
また、メインフレーム20の前後中央部の左右両側に、第一薬液タンク22と第二薬液タンク23が配置され、メインフレーム20の前後中央部の左右中央下方に、鎮圧ローラー24が配置される。そして、メインフレーム20の後下部に、溝切器25・25が配置されている。さらに、メインフレーム20の後端から後方に、マルチフィルム26の取付具、張車27・27、覆土ディスク28・28が配置されている。
【0013】
このような構成において、土壌消毒機2は、装着部3を介してトラクタ1の後部に装着されて、牽引される。そして、第一ダイヤフラムポンプ4は駆動源としてモーター等により駆動されて、第一薬剤タンク22から薬液を吸入して、第一薬液注入ノズル8に薬液を圧送し、第二ダイヤフラムポンプ5がモーター等により駆動されて、第二薬剤タンク23から薬液を吸入して、第二薬液注入ノズル9に薬液を圧送する。また、薬液注入爪6により、土壌に薬液を注入するための溝を掘削し、第一薬液注入ノズル8および第二薬液注入ノズル9により、土壌に薬液を注入し、鎮圧ローラー24により、土壌表面を平坦化させるとともに、土壌を鎮圧させて薬液を封入する。さらに、溝切器25・25により、マルチフィルム26の両側を埋めるための溝を形成し、マルチフィルム26により、土壌表面を覆ってガス化した薬液を充満させるとともに、薬液の空気中への拡散を防止し、張車27・27により、マルチフィルム26の両端を溝に押し込んで、覆土ディスク28・28により、マルチフィルム26の両端に覆土する。
【0014】
なお、本実施例では、土壌消毒機2は、トラクタ1により牽引されるトラクタ牽引式としているが、テーラにより牽引されるテーラ牽引式とすることも可能であり、牽引車両は土壌消毒機2を牽引可能であればよく、牽引車両の種類は限定するものではない。
また、第一ダイヤフラムポンプ4は、第一薬剤タンク22から薬液を吸入し、第二ダイヤフラムポンプ5は、第二薬剤タンク23から薬液を吸入するように、個々のダイヤフラムポンプには、個々の薬剤タンクから薬剤が供給される構成としているが、1つの薬剤タンクで複数のダイヤフラムポンプに薬剤を供給する構成とすることもできる。
【0015】
次に、薬液注入に係わる構成について説明する。
【0016】
薬液注入爪6は、その後面に第一薬液注入ノズル8および第二薬液注入ノズル9を配置して、第一薬液注入ノズル8および第二薬液注入ノズル9の先端より土壌に薬液を注入するための溝を掘削するものである。薬液注入爪6の基部の側面には、長手方向に沿って所定間隔に固定孔が開口されている。一方、メインフレーム20の前部の左右中央には、取付部材60が上下回動自在に枢支して設けられ、取付部材60は角パイプ状に構成されて、薬液注入爪6の基部が挿入され、取付部材60の側面に開口した固定孔と薬液注入爪6の側面に設けた取付孔を一致させて、ピン等により位置調整可能に取付固定できるようにしている。つまり、固定孔の位置を変更することにより、掘削深さを調節することができる。
取付部材60の後部にはストッパー61が形成され、薬液注入爪6を下方へ回動した場合にメインフレーム20に当接するようにしている。薬液注入爪6を下方へ回動して斜め前下方に突出した状態とすることで、土壌の所定の深度に挿入された状態を保持することができる。
【0017】
また、取付部材60の前部上に、注入爪レバー係止孔73を形成して薬液注入爪レバー7の後先端が枢支され、薬液注入爪レバー7の前後中途部には、円筒部材74が固設され、前先端に注入爪レバーハンドル72を形成している。薬液注入爪レバー7の前後中途部は、装着部3より前下方に突出した注入爪レバー係止プレート70に開口した瓢箪孔状のガイド孔71に挿入されて支持されている。ガイド孔71は前後方向に孔の大きさが異なるように連続して設け、下側の孔の孔径が、上側の孔の孔径より小さく構成して、ガイド孔71の上側の孔の孔径が円筒部材74の外径より若干大きく、下側の孔の孔径が薬液注入爪レバー7の外径より若干大きく構成されている。
【0018】
このような構成において、消毒作業時には、注入爪レバーハンドル72を持ち、薬液注入爪レバー7の円筒部材74をガイド孔71の上側の孔に挿入して、薬液注入爪レバー7を押し下げて、薬液注入爪6をストッパー61に当接させるまで下方に回動させる。そして、円筒部材74の上端をガイド孔71の下面に位置させて、薬液注入爪レバー7をガイド孔71の下側の孔に挿入することにより、薬液注入爪6を土壌に挿入した状態に保持することができる。一方、トラクタ1の移動時や非作業時等には、注入爪レバーハンドル72を持ち、薬液注入爪レバー7をガイド孔71の上側の孔に位置させて、薬液注入爪レバー7を引き上げ、薬液注入爪6を上方に回動させて、円筒部材74の下端をガイド孔71の下側の孔に係止させることにより、薬液注入爪6を上方に持ち上げた状態に保持することができて、薬液注入爪6が地面に引っ掛かることなく容易に移動することができる。
なお、薬液注入爪レバー7を注入爪レバー係止プレート70に係止する構成は、上記構造に限定するものではなく、薬液注入爪レバー7にピン等の係止部材を固定して構成することも可能である。
【0019】
第一薬液注入ノズル8は、土壌の深い位置、第二薬液注入ノズル9は、土壌の浅い位置に薬液を注入するためのものであり、第一薬液注入ノズル8は、薬液注入爪6の先端部、第二薬液注入ノズル9は、薬液注入爪6の中途部に取り付けられている。第一薬液注入ノズル8は、第一吐出ホース80を介して、図4に示す、第一ダイヤフラムポンプ4の第一吐出弁40と接続されており、第一ダイヤフラムポンプ4により圧送された薬液を、第一薬液注入ノズル8の第一吐出口8aから吐出する。第二薬液注入ノズル9は、第二吐出ホース90を介して、第二ダイヤフラムポンプ5の第二吐出弁50と接続されており、第二ダイヤフラムポンプ5により圧送された薬液を、第二薬液注入ノズル9の第二吐出口9aから吐出する。
また、第一薬液注入ノズル8および第二薬液注入ノズル9は、第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5により、異なったタイミングで土壌に薬液を注入するように構成されている。すなわち、側面視において、薬液注入範囲が略円形であると想定すると、第一薬液注入ノズル8と第二薬液注入ノズル9との薬液注入のタイミングを同じとした場合は、第一薬液注入ノズル8の注入円と第二薬液注入ノズル9の注入円は、上下方向に略垂直に位置し、進行方向前後の注入円と注入円との間には、未注入範囲が比較的多く生じる。これに対して、第一薬液注入ノズル8と第二薬液注入ノズル9との薬液注入のタイミングを180度位相をずらした場合は、前後方向の第一薬液注入ノズル8の注入円の間に、第二薬液注入ノズル9の注入円が入り込む形で薬液が注入され、前述の方法より、未注入範囲が小さくなり、薬液注入による消毒範囲が広がり、消毒効果がより大きくなると想定される。
【0020】
なお、本実施例では、薬液注入爪6に第一薬液注入ノズル8および第二薬液注入ノズル9を配置するように、1本の薬液注入爪に2本の薬液注入ノズルを配置する構成としているが、1本の薬液注入爪に1本の薬液注入ノズルを配置する構成とすることもでき、薬液注入爪に配置する薬液注入ノズルの本数あるいは薬液注入ノズルの位置は限定するものではない。
【0021】
次に、薬液供給に係わる機構について説明する。
【0022】
第一ダイヤフラムポンプ4は、第一吸入弁41と第一吐出弁40とを上方に突設する第一弁取付部材42と、第一弁取付部材42の下部に取り付けられた第一ダイヤフラム43とからなり、第一ダイヤフラム43の下部中央に連結した第一連結ロッド44は、第一レバー45、第一カムフォロワー46、第一カム47等の動力伝達経路を介して、モーター206により昇降駆動される。第二ダイヤフラムポンプ5は、第二吸入弁51と第二吐出弁50とを上方に突設する第二弁取付部材52と、第二弁取付部材52の下部に取り付けられた第二ダイヤフラム53とからなり、第二ダイヤフラム53の下部中央に連結した第二連結ロッド54は、第二レバー55、第二カムフォロワー56、第二カム57等の動力伝達経路を介して、モーター206により昇降駆動される。
【0023】
第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5は、ポンプケース201に収納され左右に並設されている。ポンプケース201は、メインフレーム20に立設する正面視略T字型のT字プレート200の上部にボルト等により固定されている。ポンプケース201の上面には、第一吸入弁41と第一吐出弁40とを上方に突設する第一弁取付部材42と、第二吸入弁51と第二吐出弁50とを上方に突設する第二弁取付部材52と、が取り付けられ、第一弁取付部材42の下部には、第一ダイヤフラム43、第二弁取付部材52の下部には、第二ダイヤフラム53、が取り付けられている。
【0024】
第一吸入弁41には、第一吸入ホース81の一端が接続され、第一吸入ホース81の他端は、第一薬液タンク22に挿入されている。また、第一吐出弁40には、第一吐出ホース80の一端が接続され、第一吐出ホース80の他端は、第一薬液注入ノズル8と接続されている。第二吸入弁51には、第二吸入ホース91の一端が接続され、第二吸入ホース91の他端は、第二薬液タンク23に挿入されている。また、第二吐出弁50には、第二吐出ホース90の一端が接続され、第二吐出ホース90の他端は、第二薬液注入ノズル9と接続されている。
【0025】
第一吐出ホース80の中途部および第二吐出ホース90の中途部には、それぞれ、第一流出確認計82および第二流出確認計92が取り付けられている。第一流出確認計82および第二流出確認計92は、浮きがバネに挟まれたガラス管を備えている。作業者等は、薬液が流れて、浮きが脈動することにより、薬液が流れていることを目視により確認できる。第一流出確認計82および第二流出確認計92は、メインフレーム20の後部に立設されたポール202の先端に設けられた遮光板203に取り付けられている。作業者等は、トラクタ1の運転席から確認できるとともに、遮光板203により、逆光の場合の目視による確認が容易となる。
第一流出確認計82と、第一吐出弁40との間の第一吐出ホース80には、第一コック83、第二流出確認計92と、第二吐出弁50との間の第二吐出ホース90には、第二コック93が取り付けられている。第一コック83の開閉操作により、第一薬液注入ノズル8による薬液の注入・停止、第二コック93の開閉操作により、第二薬液注入ノズル9による薬液の注入・停止、を操作できる。
【0026】
第一ダイヤフラム43の下部には、第一連結ロッド44が垂設されており、第一連結ロッド44の下端は、第一ピン48により、第一レバー45の中途部と回動自在に連結されている。第二ダイヤフラム53の下部には、第二連結ロッド54が垂設されており、第二連結ロッド54の下端は、第二ピン58により、第二レバー55の中途部と回動自在に連結されている。
第一レバー45および第二レバー55の前部は、ポンプケース201内の両側に横架されたレバー軸204に軸支されており、第一レバー45および第二レバー55は、レバー軸204を支点として、上下方向に回動される。
第一レバー45および第二レバー55の下方のポンプケース201内の両側には、カム軸205が横架され、カム軸205には、第一カムおよび第二カム57の中心が固設されている。カム軸205の一端は、第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5専用の駆動源であるモーター206の出力軸に連結され、モーター206の駆動により第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5を駆動するように構成されている。
【0027】
ポンプケース201の後面には開口部が形成され、開口部からは、第一レバー45および第二レバー55が延設されている。
第一レバー45の中途部には、第一レバー部孔45aが設けられ、第一レバー部孔45aには、第一バネ400の上端が係止され、第一バネ400の下端は、ポンプケース201の後面の下部に設けられた第一ケース部孔401に係止されている。第一レバー45は、第一バネ400の付勢力により下方に付勢されており、第一レバー45に設けられた第一カムフォロワー46が、第一カムに当接するようにされている。第二レバー55の中途部には、第二レバー部孔55aが設けられ、第二レバー部孔55aには、第二バネ500の上端が係止され、第二バネ500の下端は、ポンプケース201の後面の下部に設けられた第二ケース部孔501に係止されている。第二レバー55は、第二バネ500の付勢力により下方に付勢されており、第二レバー55に設けられた第二カムフォロワー56が、第二カムに当接するようにされている。
【0028】
第一ダイヤフラムポンプ4の動力伝達経路を構成する第一レバー45の後端には、第一ハンドル402が形成され、ポンプケース201より後方に突出して配置されている。作業者等は、第一ハンドル402を握り、第一レバー45を上下方向に回動させることにより、第一ダイヤフラムポンプ4を手動で駆動することができる。また、第二ダイヤフラムポンプ5の動力伝達経路を構成する第二レバー55の後端には、第二ハンドル502が形成され、ポンプケース201より後方に突出して配置されている。作業者等は、第二ハンドル502を握り、第二レバー55を上下方向に回動させることにより、第二ダイヤフラムポンプ5を手動で駆動することができる。
【0029】
なお、本実施例では、第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5は、モーター206により駆動されるモーター駆動式としているが、カム軸205を接地輪に連結し、接地輪により駆動される接地輪駆動式とすることもできる。
また、第一ハンドル402は、第一レバー45の後端、第二ハンドル502は、第二レバー55の後端に形成されているが、第一ハンドル402は、第一レバー45を上下方向に回動させることにより、第一ダイヤフラムポンプ4を手動で駆動することができ、第二ハンドル502は、第二レバー55を上下方向に回動させることにより、第二ダイヤフラムポンプ5を手動で駆動することができればよく、第一ハンドル402および第二ハンドル502の位置は、第一レバー45および第二レバー55の後端に限定するものではない。
【0030】
このような構成において、モーター206の駆動力がカム軸205に伝達されて、第一カム47が回転駆動され、第一カム47の外周に当接した第一カムフォロワー46が上下動することにより、第一レバー45および第一連結ロッド44を介して、第一ダイヤフラム43を上下動させることができる。この第一ダイヤフラム43の往復駆動により、第一薬液タンク22から薬液を吸入して、第一薬液注入ノズル8に薬液を圧送することができる。そして、同時にモーター206の駆動力がカム軸205に伝達されて、第二カム57が回転駆動され、第二カムフォロワー56が上下動することにより、第二レバー55および第二連結ロッド54を介して、第二ダイヤフラム53を上下動させ、第二薬液タンク23から薬液を吸入して、第二薬液注入ノズル9に薬液を圧送することができる。
なお、第一カムフォロワー46が第一カム47の頂部(上死点)と当接した位置、および、第二カムフォロワー56が第二カム57の頂部(上死点)と当接した位置から、第一レバー45および第二レバー55は更に上方に回動できるように余裕が設けられており、第一カム47および第二カム57がどの位置で停止しても、第一ハンドル402または第二ハンドル502を手動で上下に回動でき、第一レバー45または第二レバー55を上下に回動することにより、第一ダイヤフラムポンプ4または第二ダイヤフラムポンプ5を駆動することを可能としている。このため、作業開始時や薬液切れ後等において、ホース内等にエアがある場合には、第一レバー45または第二レバー55を個々に作動させてエア抜きができ、同時に駆動して片方のみエア抜きするような薬液の無駄な排出を防止することができる。
【0031】
また、第一レバー45および第二レバー55の後方には、制限板207が設けられている。制限板207は、制限板207を上下動させることにより、第一ダイヤフラム43および第二ダイヤフラム53のストロークを調節し、第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5の薬液注入量を調節するためのものである。
【0032】
制限板207は、略中央部に調節ロッド208が螺挿され、調節ロッド208は、ポンプケース201の後部に設けられた側面視コ字状の制限板取付プレート209の上下面を貫通するように取り付けられている。
調節ロッド208は、制限板取付プレート209の上面に係止され、調節ロッド208の下端には、ロックナット210および締付ナット211が螺嵌されている。調節ロッド208の上端には、把手212が設けられ、把手212の下部には、バネ213が外嵌されており、調節ロッド208は、上方に付勢されている。
第一レバー45および第二レバー55には、制限板207に当接する第一突起部403および第二突起部503が形成されており、制限板207の両側には、第一突起部403および第二突起部503が当接し、第一レバー45および第二レバー55の上下位置を調整するための第一調整ボルト404および第二調整ボルト504が螺挿され、第一調整ボルト404および第二調整ボルト504には、それぞれ、第一ロックナット405および第二ロックナット505が螺挿されている。
制限板取付プレート209の後面には目盛板214が取り付けられており、目盛板214の後面視略中央部には、目盛板214の目盛に沿って、上下方向に開口部が形成されている。制限板207の後面視略中央には、目盛板214の目盛に一致させるための刻印が形成されている。
【0033】
このような構成において、把手212を握り、調節ロッド208を回転させることにより、制限板207の上下位置を調節する。すなわち、調節ロッド208を一方向に回転させることにより、制限板207は、上方に移動し、第一レバー45および第二レバー55が、レバー軸204を支点とし、上方向に回動されて、第一ダイヤフラム43および第二ダイヤフラム53の下死点が上方に移動し、ストロークが短くなり、第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5の薬液注入量を低減させることができる。反対に、調節ロッド208を他方向に回転させることにより、制限板207は、下方に移動し、第一レバー45および第二レバー55が、レバー軸204を支点とし、下方向に回動されて、第一ダイヤフラム43および第二ダイヤフラム53の下死点が下方に移動し、ストロークが長くなり、第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5の薬液注入量を増加させることができる。
そして、第一調整ボルト404および第二調整ボルト504により、調節ロッド208により設定された第一レバー45および第二レバー55の上下位置を調整することにより、第一ダイヤフラム43および第二ダイヤフラム53個々の特性による第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5の薬液注入量の差違を調整することができる。
また、ロックナット210および締付ナット211を締結することにより、制限板207を所定の上下位置に移動させた状態で、調節ロッド208が回転しないように固定し、第一ロックナット405および第二ロックナット505を締結することにより、第一レバー45および第二レバー55の上下位置を調整した状態で、第一調整ボルト404および第二調整ボルト504が回転しないように固定し、設定した第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5の薬液注入量が変動しないようにすることができる。
さらに、バネ213の付勢力により、消毒作業中の振動等により調節ロッド208の緩みが生じた場合の制限板207の上下動を軽減し、第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5の薬液注入量の変動を軽減することができる。
そして、目盛板214の目盛と、制限板207の刻印とを一致させることにより、第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5の薬液注入量を正確に設定することができる。
【0034】
次に、第一カム47および第二カム57の構成について説明する。
【0035】
第一カム47は、第一基礎円47aの円周に三日月状に構成した第一カム凸部47b・47b・47b・47bが等間隔に配置され、第一カム凸部47b・47b・47b・47bが第一基礎円47aに接する長さの全長は、第一基礎円47aの円周の半分以下となるように構成されている。第一カム47が、モーター206により駆動され、第一カム凸部47b・47b・47b・47bの外周と第一基礎円47aの外周とが、第一カムフォロワー46に繰り返し当接することにより、第一レバー45および第一連結ロッド44を介して、第一ダイヤフラム43が上下動される。
【0036】
第二カム57は、第二基礎円57aの円周に三日月状に構成した第二カム凸部57b・57b・57b・57bが等間隔に配置され、第二カム凸部57b・57b・57b・57bが第二基礎円57aに接する長さの全長は、第二基礎円57aの円周の半分以下となるように構成されている。第二カム57が、モーター206により駆動され、第二カム凸部57b・57b・57b・57bの外周と第二基礎円57aの外周とが、第二カムフォロワー56に繰り返し当接することにより、第二レバー55および第二連結ロッド54を介して、第二ダイヤフラム53が上下動される。
【0037】
第一カム47と第二カム57の中心は、カム軸205の軸心に一致させて、第一基礎円47aと第二基礎円57aは軸心方向視において重複させているが、第一カム凸部47b・47b・47b・47bと、第二カム凸部57b・57b・57b・57bとは、カム軸205に対して、軸心方向視において重複しないように配設されている。
【0038】
このような構成により、第一カム47と第二カム57は、上死点の位置が異なるため、第一ダイヤフラムポンプ4および第二ダイヤフラムポンプ5により吐出されるタイミングが同期しなくなり、第一薬液注入ノズル8および第二薬液注入ノズル9から異なったタイミングで土壌に薬液を注入することができる。
また、第一カム47と第二カム57の下死点は、一部一致して配設されているため、第一ダイヤフラム43および第二ダイヤフラム53が、同時に下がった状態となるタイミングを生じさせることができる。つまり、第一カム47と第二カム57が45度回転する毎に下死点が一致し、この位置でモーターを停止させることにより、第一ダイヤフラム43および第二ダイヤフラム53は、同時に下がった状態となり、この状態で長期間格納しても、第一ダイヤフラム43および第二ダイヤフラム53はストレスで変形することがなく、寿命を長く保持することができ、性能も維持できる。そして、停止時に第一ダイヤフラム43および第二ダイヤフラム53は常に下方に膨らんだ初期状態の位置にあるので、第一ダイヤフラム43および第二ダイヤフラム53が圧縮できて吐出量が多いので、エア抜きが容易にできる。
【0039】
なお、本実施例では、第一ダイヤフラム43と第二ダイヤフラム53の上下動の位相が180度ずれるように、カム凸部の数は4つずつ設けているが、その数は限定するものではなく、3つ以下でも5つ以上でもよい。ただし、カムの半径を大きくして凸部の数を多く配置し、凸部を小さな形状とするほうが脈動を小さくすることができる。第一薬液注入ノズル8と第二薬液注入ノズル9からの薬液の吐出タイミング(進行方向の吐出間隔)は、モーターの回転数を変更することにより調節することができる。また、薬液注入ノズルを上下二段に配置する構成としているが、左右方向に近づけて配置したり、三段以上配置する場合にも位相をずらすように構成することもできる。
【0040】
以上の如く、本実施例の土壌消毒機2は、トラクタ1の後部に牽引され、薬液を土壌に注入するための溝を掘削する薬液注入爪6と、薬液注入爪6に備えられ、土壌に薬液を注入する第一薬液注入ノズル8と、第二薬液注入ノズル9と、第一薬液注入ノズル8に薬液を圧送する第一ダイヤフラムポンプ4と、第二薬液注入ノズル9に薬液を圧送する第二ダイヤフラムポンプ5と、を備える土壌消毒機2において、第一ダイヤフラムポンプ4の第一ダイヤフラム43と、第一ダイヤフラム43を往復駆動するためのモーター206との間に配置する第一連結ロッド44、第一レバー45、第一カムフォロワー46、第一カム47等により構成される動力伝達経路に、第一ハンドル402を設け、第二ダイヤフラムポンプ5の第二ダイヤフラム53と、第二ダイヤフラム53を往復駆動するためのモーター206との間に配置する第二連結ロッド54、第二レバー55、第二カムフォロワー56、第二カム57等により構成される動力伝達経路に、第二ハンドル502を設けるものである。
このように構成することにより、手動駆動操作手段を操作することにより、駆動源を作動することなくダイヤフラムポンプを作動させることが可能となり、作業前に手動でエア抜きが可能となる。特に、複数のダイヤフラムポンプを並列運転可能に構成した場合に、ホースの長さ等が異なることによりエア抜きの作動時間が異なるが、個々に作動できるので、無駄な薬液の消費をなくすことができる。
そして、前記第一ハンドル402は、第一ダイヤフラム43に垂設される第一連結ロッド44と、モーター206により回転駆動される第一カム47との間に介設し、前記第二ハンドル502は、第二ダイヤフラム53に垂設される第二連結ロッド54と、モーター206により回転駆動される第二カム57との間に介設するものである。
このように構成することにより、動力伝達経路を利用することにより、別の手動操作用の経路を設ける必要がなくなり、操作手段を安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】土壌消毒機の左側面図。
【図2】薬液注入爪レバーの斜視図。
【図3】流出確認計を遮光板に取り付けた状態を示した図。
【図4】ダイヤフラムポンプの左側面図。
【図5】ダイヤフラムポンプの斜視図。
【符号の説明】
【0042】
1 トラクタ
2 土壌消毒機
4 第一ダイヤフラムポンプ
5 第二ダイヤフラムポンプ
6 薬液注入爪
8 第一薬液注入ノズル
9 第二薬液注入ノズル
43 第一ダイヤフラム
44 第一連結ロッド
45 第一レバー
46 第一カムフォロワー
47 第一カム
53 第二ダイヤフラム
54 第二連結ロッド
55 第二レバー
56 第二カムフォロワー
57 第二カム
206 モーター
402 第一ハンドル
502 第二ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車両の後部に牽引され、薬液を土壌に注入するための溝を掘削する薬液注入爪と、
該薬液注入爪に備えられ、土壌に薬液を注入する薬液注入ノズルと、
該薬液注入ノズルに薬液を圧送するダイヤフラムポンプと、
を備える土壌消毒機において、
該ダイヤフラムポンプのダイヤフラムと、該ダイヤフラムを往復駆動するための駆動源との間に配置する動力伝達経路に、手動駆動操作手段を設ける
ことを特徴とする土壌消毒機。
【請求項2】
前記手動駆動操作手段は、
前記ダイヤフラムに垂設される連結部材と、駆動源により回転駆動されるカムとの間に介設する
ことを特徴とする請求項1に記載の土壌消毒機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−28961(P2007−28961A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215137(P2005−215137)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】