説明

土壌消毒機

【課題】 薬液ポンプの作動・停止と薬液吐出経路の開閉を薬液注入可能か否かに応じて自動切替可能にする。
【解決手段】 本土壌消毒機1は、薬液タンク4、薬液ポンプ5、ポンプ駆動機構6、及び薬液Bの土中への注入刀8が機体2に搭載されている。薬液ポンプ5の作動及び停止を切り替える作動スイッチ11と、薬液ポンプ5の吐出口から注入刀8の吐出口までの間に設けられ、薬液Bの吐出経路を開閉するバルブ12と、注入刀8の吐出口が土中にある注入可能状態か否かを検出する状態センサとを備え、前記状態センサが前記注入可能状態であることを検出しているときは、作動スイッチ11により薬液ポンプ5を作動させるとともに、バルブ12により前記吐出経路を開き、前記状態センサが前記注入可能状態でないことを検出しているときは、作動スイッチ11により薬液ポンプ5を停止させるとともに、バルブ12により前記吐出経路を閉じるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場内を走行しながら土中に薬液を注入する土壌消毒機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の土壌消毒機においては、畝替わり時や圃場から圃場への移動時に、機体を持ち上げると、薬液を土中に吐出する吐出手段の吐出口から薬液が滴下し、刺激臭が拡散するという課題がある。特に薬液がクロールピクリン等の異臭を発し殺菌力の強い場合は、薬液の少しの漏れでも、それが繰り返されると作業者の人体に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0003】
この課題の解決を目的とする従来技術としては、特許文献1記載の土壌消毒機を例示する。図4に示すように、この土壌消毒機の薬液注入爪109の後部には、ポンプ114に接続されているパイプ150が配置され、該パイプ150の吐出口152には、液漏れ防止部材としてフッ素ゴム等の樹脂製の回動部材151やチェック弁が配置されている。パイプ150の薬液注入爪109の上部位置には、コック154が配置されており、該コック154を閉じた場合にも、コック154から吐出口152までのパイプ150a内に滞留している薬液が垂れ流しとなる恐れがあるので、回動部材151やチェック弁が設けられているのである。このように回動部材151やチェック弁とコック154との二重の液漏れ防止機構を設けることにより、薬液が垂れ流し状態にならないようにしているのである。
【0004】
【特許文献1】特開平5−202859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の土壌消毒機はコック154の開閉が作業者に任されているため、例えば、畝替わり毎や圃場から圃場への移動毎に作業者が手作業でコック154を閉開しなければならず、手間が掛かるとともに、閉じ忘れや開け忘れが生じやすいという課題がある。
【0006】
そして、作業者がコック154を閉め忘れると、パイプ150内に滞留している薬液が回動部材151やチェック弁から漏れ出る可能性がある。その理由は次の通りである。
(1)回動部材151やチェック弁は、コック154から吐出口152までのパイプ150a内に滞留している、加圧されていない薬液を堰き止める程度の機能しか備えていない。このため、コック154が開いていると、パイプ150内に滞留した全ての薬液による圧力が回動部材151やチェック弁に掛かってしまう。また、機体を移動させる時の振動で薬液に慣性力が働くので該薬液の圧力がより増大する。特に複数の畝に対して同時に薬液を吐出するように構成された土壌消毒機の場合、パイプ150内に滞留する薬液の量が多くなるため、大きい問題となる。
(2)回動部材151は土壌に接触する場所に設けられているため、パイプ150の吐出口152と回動部材151の間に土壌が挟み込まれ隙間ができやすい。
(3)ポンプ114が駆動輪により駆動される方式となっている場合、該駆動輪の振動でポンプ114から薬液が圧送されてしまうことがある。
【0007】
また、作業者がコック154を開け忘れたまま、ポンプ114を作動させてしまうと、ポンプ114に過負荷が掛かり、ポンプ114が損傷する可能性があるとともに、ポンプ圧で薬液の吐出経路から薬液が漏洩してしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の土壌消毒機は、
圃場を走行自在に構成された機体に対し、
薬液が入れられた薬液タンクと、
該薬液タンクの薬液を吸引する薬液ポンプと、
該薬液ポンプを作動させるポンプ駆動機構と、
該薬液ポンプから吐出される薬液を土中に吐出する注入手段と
が搭載されてなる土壌消毒機であって、
前記薬液ポンプの作動及び停止を切り替える切替手段と、
前記薬液ポンプの吐出口から前記注入手段の吐出口までの間に設けられ、前記薬液の吐出経路を開閉するバルブと、
前記注入手段の吐出口が土中にある注入可能状態か否かを検出する状態センサとを備え、
前記状態センサが前記注入可能状態であることを検出しているときは、前記切替手段により前記薬液ポンプを作動させるとともに、前記バルブにより前記吐出経路を開き、
前記状態センサが前記注入可能状態でないことを検出しているときは、前記切替手段により前記薬液ポンプを停止させるとともに、前記バルブにより前記吐出経路を閉じるように構成されている。
【0009】
この構成によれば、前記注入可能状態である時に、自動的に、前記薬液ポンプを作動させるとともに、バルブを開くようになっているので、該薬液ポンプの損傷を防止するとともに、薬液の吐出経路からの薬液の漏洩を防止することができる。また、前記注入可能状態ではない時に、自動的に、前記薬液ポンプを停止させるとともに前記薬液の吐出経路を閉じるようになっているので、前記注入手段からの薬液吐出を防止することができる。
【0010】
前記土壌消毒機においては、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(1)前記ポンプ駆動機構は、電動式であり、前記切替手段は、該ポンプ駆動機構に対する電力の供給及び停止を切り替えるように構成された態様。
(2)前記ポンプ駆動機構は、前記機体の走行に連動した動力を前記薬液ポンプに伝動するように構成されており、前記切替手段は、該ポンプ駆動機構の機械的動作の許容及び停止を切り替えるように構成された態様。前記「ポンプ駆動機構の機械的動作の許容及び停止を切り替える」態様としては、前記機械的動作に対するブレーキ機構により切り替える態様を例示する。
【0011】
これらの構成のように、前記土壌消毒機を種々の構成で適宜実現することができる。
【0012】
前記状態センサは、前記機体に対して相対的に略上下移動可能に設けられた接地手段を備え、該接地手段が前記機体に対して所定位置にあるか否かにより注入可能状態か否かを検出するように構成された態様を例示する。前記接地手段としては、地面を転動する接地輪又は鎮圧ローラや、地面を滑走するソリを例示する。
【0013】
この構成によれば、前記状態センサを低コストに実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る土壌消毒機によれば、薬液ポンプの作動及び停止と、薬液の吐出経路の開閉とを薬液の注入可能状態か否かに応じて自動的に切り替えることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜図3は本発明を具体化した一実施形態の土壌消毒機1を示している。この土壌消毒機1は、トラクタ10の後部に装着する牽引タイプであり、機体2の前端部がトラクタ10のトップリンク10a及びロアリンク10bに装着されるようになっている。機体2には、該機体2を地面Hに対して所定の高さに支持するためのゲージ輪3と、薬液Bが入れられた薬液タンク4と、該薬液タンク4の薬液Bを吸引する薬液ポンプ5と、該各薬液ポンプ5を作動させるポンプ駆動機構6と、薬液ポンプ5の吐出口に吐出パイプ7を介して接続され、薬液Bを土中に吐出する注入手段としての注入刀8と、該注入刀8により地面Hに形成された注入跡を鎮圧するための鎮圧ローラ9とが装備されている。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0016】
ポンプ駆動機構6は、本例では、電動モータ(図示略)により薬液ポンプ5を駆動するように構成されており、該電動モータに対する電力の供給及び停止を切り替える切替手段としての作動スイッチ11を備えている。そして、作動スイッチ11が押下されている間は作動し、該作動スイッチ11が押下されていない間は作動しないように構成されている。
【0017】
吐出パイプ7の途中には、その吐出経路を開閉するバルブ12が設けられている。本例のバルブ12は、その開閉を切り替えるための開閉レバー13を備え、該開閉レバー13を所定の閉位置に回動させると前記吐出経路が閉じ、該開閉レバー13を所定の開位置に回動させると前記吐出経路が開くようになっている。
【0018】
鎮圧ローラ9は、鎮圧ローラ支持体15を介して機体2に支持されている。鎮圧ローラ支持体15は、上端側が左右方向に延びる軸で機体2に軸支されることにより、機体2に対して回動自在に支持されており、下端側に鎮圧ローラ9が回転自在に軸支されている。鎮圧ローラ支持体15は、鎮圧ローラ9で地面Hを鎮圧するように、付勢手段16により下方に付勢されており、地面Hに対する機体2の相対的な上下動に応じて鎮圧ローラ支持体15が回動するようになっている。この鎮圧ローラ9が、機体2に対して相対的に略上下移動可能に設けられた接地手段である。また、この鎮圧ローラ9及び鎮圧ローラ支持体15が、前記接地手段としての鎮圧ローラ9が機体2に対して所定位置にあるか否かにより注入可能状態か否かを検出するように構成された状態センサである。本例における注入可能状態とは、地面Hに対する機体2の高さが、注入刀8が土中の所定深さに差し込まれる高さとなる状態(図2参照。)をいい、状態センサは、この状態における機体2に対する鎮圧ローラ9の位置を検出するようになっている。
【0019】
鎮圧ローラ支持体15及びバルブ12の開閉レバー13は、伝動機構としてのリンク装置20を介して接続されており、鎮圧ローラ支持体15の回動運動が開閉レバー13に伝動されるようになっている。本例のリンク装置20は、鎮圧ローラ支持体15の上端側に取り付けられた揺動レバー21と、該揺動レバー21の先端部及び開閉レバー13の先端部を連結する連接棒22とを備えている。このリンク装置20は、注入可能状態のときに(図2参照。)、開閉レバー13が開位置になり、注入可能状態でないときに(図3参照。)、開閉レバー13が閉位置になるように回動運動を伝動するようになっている。
【0020】
また、開閉レバー13(又は連接棒22でもよい。)には、突片23が取り付けられており、該突片23は、前記注入可能状態において、作動スイッチ11上に移動して該作動スイッチ11を押下し、前記注入可能状態でないときに作動スイッチ11上から退避するようになっている。
【0021】
このように、本例の鎮圧ローラ9及び鎮圧ローラ支持体15は、注入刀8の吐出口が土中にある注入可能状態か否かを検出する状態センサとなっており、該状態センサが前記注入可能状態であることを検出しているときは、作動スイッチ11により薬液ポンプ5を作動させるとともに、バルブ12により前記吐出経路を開き、鎮圧ローラ9が前記注入可能状態でないことを検出しているときは、作動スイッチ11により薬液ポンプ5を停止させるとともに、バルブ12により前記吐出経路を閉じるように構成されている。
【0022】
以上のように構成された本例の土壌消毒機1によれば、前記注入可能状態である時に、自動的に、薬液ポンプ5を作動させるとともに、バルブ12を開くようになっているので、該薬液ポンプ5の損傷を防止するとともに、薬液Bの吐出経路からの薬液Bの漏洩を防止することができる。また、前記注入可能状態ではない時に、自動的に、薬液ポンプ5を停止させるとともに薬液Bの吐出経路を閉じるようになっているので、注入刀8からの薬液吐出を防止することができる。
【0023】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)バルブ12を電磁弁にすること。
(2)注入手段の吐出口又はその近傍にチェック弁(薬液ポンプ5から吐出される薬液Bの圧力で吐出経路が開くように構成された逆止弁)や、液漏れ防止手段(例えば、フッ素ゴム等の樹脂製の蓋を、前記吐出口に対して回動自在に枢支するとともに、バネ等の付勢手段により該蓋を吐出口を閉じるように付勢してなり、薬液ポンプ5から吐出される薬液Bの圧力で該蓋が開くように構成された手段)を設けること。
(3)接地手段として、鎮圧ローラ9に代えて、ソリを使用すること。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る土壌消毒機をトラクタに装着した状態を示す側面図である。
【図2】注入可能状態となっているときの同土壌消毒機の側面図である。
【図3】注入可能状態となっていないときの同土壌消毒機の側面図である。
【図4】従来の土壌消毒機の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
1 土壌消毒機
2 機体
3 ゲージ輪
4 薬液タンク
5 薬液ポンプ
6 ポンプ駆動機構
7 吐出パイプ
8 注入刀
9 鎮圧ローラ
10 トラクタ
11 作動スイッチ
12 バルブ
13 開閉レバー
15 鎮圧ローラ支持体
16 付勢手段
20 リンク装置
21 揺動レバー
22 連接棒
23 突片
B 薬液
H 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行自在に構成された機体に対し、
薬液が入れられた薬液タンクと、
該薬液タンクの薬液を吸引する薬液ポンプと、
該薬液ポンプを作動させるポンプ駆動機構と、
該薬液ポンプから吐出される薬液を土中に吐出する注入手段と
が搭載されてなる土壌消毒機であって、
前記薬液ポンプの作動及び停止を切り替える切替手段と、
前記薬液ポンプの吐出口から前記注入手段の吐出口までの間に設けられ、前記薬液の吐出経路を開閉するバルブと、
前記注入手段の吐出口が土中にある注入可能状態か否かを検出する状態センサとを備え、
前記状態センサが前記注入可能状態であることを検出しているときは、前記切替手段により前記薬液ポンプを作動させるとともに、前記バルブにより前記吐出経路を開き、
前記状態センサが前記注入可能状態でないことを検出しているときは、前記切替手段により前記薬液ポンプを停止させるとともに、前記バルブにより前記吐出経路を閉じるように構成された土壌消毒機。
【請求項2】
前記ポンプ駆動機構は、電動式であり、
前記切替手段は、該ポンプ駆動機構に対する電力の供給及び停止を切り替えるように構成された請求項1記載の土壌消毒機。
【請求項3】
前記ポンプ駆動機構は、前記機体の走行に連動した動力を前記薬液ポンプに伝動するように構成されており、
前記切替手段は、該ポンプ駆動機構の機械的動作の許容及び停止を切り替えるように構成された請求項1記載の土壌消毒機。
【請求項4】
前記状態センサは、前記機体に対して相対的に略上下移動可能に設けられた接地手段を備え、該接地手段が前記機体に対して所定位置にあるか否かにより注入可能状態か否かを検出するように構成された請求項1〜3のいずれか一項に記載の土壌消毒機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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