説明

土木構築物用ユニット及び土木構築物用ユニットの積降ろし方法

【課題】 井桁状に組まれている場合であっても、搬送性を高めることができる土木構築物用ユニットを提供する。
【解決手段】 井桁状の木枠5における各交差部7の各加工丸太8を長ボルト12により回動可能に連結すると共に、各対向する一対の加工丸太8をそれぞれ平行に配置し、木枠5を、その開口を変化させることができる平行リンクとして構成する。これにより、木枠5が井桁状に組まれていても、当該土木構築物用ユニット4を、内部空間9が縮小するように折畳めるようにし、トラック等により搬送できる当該土木構築物用ユニット4の数を増やす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、土木構築物用ユニット及び土木構築物用ユニットの積降ろし方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土留壁体又は河川の護岸等を容易に築造すべく、特許文献1に示すように、土木施工用枠体が提案されている。この土木施工用枠体は、複数本の木材を柵状に揃えて形成した単位柵状部材を用意し、その単位柵状部材同士を間隔保持部材によって所定間隔をあけて連結することにより、枠体状態と折畳み状態とをとり得るようにしたものとなっている。このものを用いれば、当該土木施工用枠体の折畳み状態を利用して、容易に施工現場に搬送することができる一方、施工現場では、その折畳み状態を起こして枠体状態に簡単にすることができる。
【0003】
ところで、堤防や護岸工事等の基礎や根固めのために水中に沈めるものとして沈床構造物(土木構築物用ユニット)が知られている。その沈床構造物としては、近時、改良が進み、特許文献2に示すように、対向する一対の柱状部材を順次、互い違いに積み重ねることにより井桁状の木枠を形成し、その木枠に、その四隅の各交差部において、支持軸を上下方向にそれぞれ貫通させて、その各支持軸により各交差部における各柱状部材を連結したものが開発されている。
【特許文献1】特許2622076号
【特許文献2】特開2003−138543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記沈床構造物においては、強固な構造にする観点から、木枠が柱状部材を用いて井桁状に形成されていると共に、組立の容易化を図る観点から、木枠四隅における各交差部のいずれの柱状部材にも支持軸が上下方向に貫通されており、前記特許文献1(特許文献1図4参照)に示すように倒伏した状態に折畳むことはできない。このため、このような井桁状に組まれた沈床構造物(土木構築物用ユニット)に関しては、その井桁状のままトラック等を用いて施工現場に搬送しなければならず、トラックで同時に搬送できる数の観点から、搬送性は高くはない。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その第1の技術的課題は、井桁状に組まれている場合であっても、搬送性を高めることができる土木構築物用ユニットを提供することにある。
第2の技術的課題は、上記土木構築物用ユニットを積降ろしを行う土木構築物の積降ろし方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
対向する一対の柱状部材を順次、互い違いに積み重ねることにより井桁状の木枠が形成されていると共に、該木枠に、その四隅における柱状部材の各交差部において、支持軸が上下方向にそれぞれ貫通されて、該各交差部において各柱状部材が連結されている土木構築物用ユニットにおいて、
前記各交差部における各柱状部材が前記支持軸に該支持軸の軸心延び方向を中心として回動可能に連結され、
前記各対向する一対の柱状部材が、それぞれ平行に配置されている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2〜8の記載の通りとなる。
【0007】
前記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項9に係る発明)にあっては、
請求項1に係る土木構築物用ユニットと、長さの等しい2本の索条とを用意し、
前記土木構築物用ユニットにおける対角位置にある交差部に対して前記各索条の一端側をそれぞれ連結すると共に、その各索条の他端側を重機の持ち上げ具に連結し、
重機により前記土木構築物用ユニットを吊上げ搬送する、
ことを特徴とする土木構築物用ユニットの積降ろし方法とした構成としてある。
【0008】
前記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項10に係る発明)にあっては、
請求項1に係る土木構築物用ユニットと、長さの等しい4本の索条とを用意し、
前記土木構築物用ユニットにおける四隅の交差部に対して前記各索条の一端側をそれぞれ連結すると共に、その各索条の他端側を重機の持ち上げ具に連結し、
重機により前記土木構築物用ユニットを吊上げ搬送する、
ことを特徴とする土木構築物用ユニットの積降ろし方法とした構成としてある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、各交差部における各柱状部材が支持軸に回動可能に連結されていると共に、各対向する一対の柱状部材がそれぞれ平行に配置されていることから、木枠を、その開口を変化させることができる平行リンクとして構成できることになり、木枠が井桁状に組まれていても、当該土木構築物用ユニットを、開口が縮小するように折畳むことができることになる。このため、トラック等により搬送できる当該土木構築物用ユニットの数を増やすことができることになり、木枠が井桁状に組まれていても、搬送性を高めることができる。
尚、当該土木構築物用ユニットの使用においては、設置の際、木枠を井桁状に開いた状態で底壁部を付加すると共に詰め材を充填すれば、以後の木枠の変形が規制されることになり、本来の土木構築物用ユニットとしての機能(木工沈床等としての機能)を発揮する。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、木枠における四隅の各交差部上面に、吊上げのための引っ掛け具がそれぞれ設けられていることから、工場で組み立てられた当該土木構築物用ユニットをトラックの荷台に載せるときには、対角位置にある一の組の引っ掛け具に対して等しい長さの索条の一端側をそれぞれ連結する一方、その両索条の他端側を重機等の持ち上げ具(フック等)に連結して、当該土木構築物用ユニットを吊上げれば、木枠の形状が、索条の一端側が連結された引っ掛け具(交差部)が互いに近づくように変化することになり、木枠は折畳まれた状態となる。このため、その折畳まれた状態のままでトラックの荷台に当該土木構築物用ユニットを降ろすことができ、積荷数を増加させると共に積荷作業の向上を図ることができる。
しかも、トラックの荷台から当該土木構築物用ユニットを降ろすに際しては、等しい長さの4本の索条を用意し、その各索条の一端側を木枠四隅の各引っ掛け具にそれぞれ連結する一方、その各索条の他端側を重機等の持ち上げ具に連結して、当該土木構築物用ユニットを吊上げれば、折畳み状態で最も離れていた組の引っ掛け具(対角位置)が、その引っ掛け具に連結された索条の緊張力の分力に基づき互いに近づくように移動する。これに伴って、他の組の引っ掛け具(対角位置)に連結されている索条が次第に緊張することになり、正規の井桁状になった時点で各索状の緊張状態が等しくなり、木枠の開き状態は安定する。このため、この正規の安定した状態(井桁状態)で、そのまま施工面に降ろすことができ、当該土木構築物用ユニットを用いた施工、設置性の向上を図ることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、各交差部における上下方向に隣り合う柱状部材間にワッシャが介在されていることから、各交差部における上下方向に隣り合う柱状部材間の摩擦抵抗を、柱状部材同士が直接接触する場合に比べて減少させることができ、木枠を平行リンクとして円滑に拡縮変形させることができる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、木枠の下部に底壁部が設けられ、その底壁部が木枠の拡縮変形に伴って変形するように設定されていることから、底壁部を有していても、当該土木構築物用ユニットを、開口が縮小するように折畳むことができる。このため、底壁部を有する土木構築物用ユニットについても、折畳んだ状態での搬送を可能として、搬送性を高めることができる。また、当該土木構築物用ユニットの設置に際しては、木枠を井桁状に開いて詰め材を充填するだけでよくなり、設置作業性の向上も図ることができる。
【0013】
請求項5に係る発明によれば、底壁部が、複数の掛け渡し材により構成され、その複数の掛け渡し材が、対向する一対の柱状部材のうち、下側から2段目の対向する一対の柱状部材に所定間隔毎に平行になるようにしつつ、下側から1段目の対向する一対の柱状部材間に掛け渡されていると共に、該1段目の各柱状部材に回動可能に支持されていることから、当該土木構築物用ユニットの使用に際して、底壁部として一般的な敷成木からなるものを構成できる一方で、その複数の掛け渡し材を含む木枠を、平行リンクとして拡縮変形できることになる。このため、底壁部として一般的な敷成木からなるものを有する当該土木構築物用ユニットであっても折畳むことができる。
【0014】
請求項6に係る発明によれば、1段目の対向する一対の柱状部材の上面間に各掛け渡し材が、該各掛け渡し材の端部を該1段目の柱状部材と該1段目の柱状部材に対向する下側から3段目の柱状部材との間に介在させるようにしつつ掛け渡され、各掛け渡し材又は1段目の柱状部材の一方の部材に、該各掛け渡し材と該1段目の柱状部材との対向領域において、該1段目の柱状部材又は該各掛け渡し材の他方の部材に向けて突出する突出部がそれぞれ備えられ、他方の部材に、各突出部が挿通される挿通孔がそれぞれ形成され、3段目の柱状部材の下面と各掛け渡し材上面との間に、各挿通孔に対する各突出部の進入量よりも短い隙間が形成されていることから、突出部を挿通孔に挿通するだけで、所定の位置決めを図りつつ、1段目の柱状部材と各掛け渡し材との回動構成を得ることができ、さらには、その回動構成に基づく回動を隙間(摩擦抵抗低減)により円滑にできると共に、突出部が挿通孔から抜け出ることを3段目の柱状部材により規制できる。これにより、底壁部(複数の掛け渡し材)を有する木枠が平行リンクとして円滑に拡縮する構成を、極めて簡単な構成をもって得ることができる。
【0015】
請求項7に係る発明によれば、各挿通孔が1段目の柱状部材にそれぞれ形成され、各掛け渡し材に、各挿通孔に臨むようにして貫通孔がそれぞれ形成され、各貫通孔の上側からピンがそれぞれ挿入されて、該各ピンの先端側が、突出部として、各貫通孔に臨む挿通孔にそれぞれ挿入されていることから、上記請求項6の作用効果をピンを利用して具体的に実現できる。勿論この場合には、3段目の柱状部材を利用してピンの抜け止めが図られる。
【0016】
請求項8に係る発明によれば、木枠内にシート体が内蔵されて、木枠が井桁状に開かれたときに、シート体が底壁部を構成するように設定されていることから、当該土木構築物用ユニットの使用に際して、シート体を用いて具体的に底壁部を構成できる一方、搬送時等の非使用時には、シート体は、木枠を折畳む平行リンク作用に支障を与えることはなく、木枠を的確に折畳むことができると共に、その折畳まれた木枠内にシート体を収納できる。特に、底壁部を構成するものとしてシート体を用いていることから、木枠の折畳み度合い(扁平度合い)を高めることができる。
【0017】
請求項9に係る発明によれば、請求項1に係る土木構築物用ユニットが平行リンクを構成することと、2本の長さの等しい索条を用いることを利用して、吊上げ搬送に伴って、その土木構築物用ユニットを縮小するように折り畳むことができ、その土木構築物用ユニットをその折り畳まれた状態のまま搬送車に降ろすことができる。このため、積荷作業の作業性を向上させることができる。
【0018】
請求項10に係る発明によれば、請求項1に係る土木構築物用ユニットが平行リンクを構成することと、4本の長さの等しい索条を用いることを利用して、吊上げ搬送に伴って、折り畳まれた土木構築物用ユニットを正規の状態に開くことができ、その土木構築物用ユニットをその正規の開かれた状態のまま設置位置に降ろすことができる。このため、設置作業の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1〜図11、図17は第1実施形態を示すものである。この第1実施形態において、符号1は、コンクリート壁内に各自然石を2/3程度埋め込んで構成した護岸壁で、その護岸壁1の前方における水面3下方の施工面2上には、護床、根固め等を主目的として、第1実施形態に係る土木構築物用ユニット4が複数敷設されている。各土木構築物用ユニット4は、図1〜図7に示すように、平面視において四角形状(本実施形態では一辺が2000mm前後の正方形)の内部空間9を区画する木枠(木材)5により構成されている。
【0021】
前記各木枠5は、図1〜図8に示すように、平行に対向する一対の加工丸太(角材)8を互い違いに組み上げて平面視正方形の井桁状に形成されており、その四隅における各交差部7の各加工丸太8には、上下方向に延びる孔10がそれぞれ形成されて、それらにより上下方向に連続して延びる貫通孔11が構成されている(図8参照)。この貫通孔11には、支持軸としての長ボルト12がそれぞれ貫通されている。この長ボルト12は、頭部(図示略)が木枠5下側(下側から1段目の加工丸太8−1下面)に配置される一方、長ボルト12の先端部が、最上段の加工丸太8の上面から突出されており、この長ボルト12の先端部にナット13が螺合されている。これにより、各交差部7においては、各加工丸太8は、長ボルト12の頭部とその長ボルト12先端部に螺合されるナット13とにより挟持されつつも、長ボルト12に対して、その軸心延び方向(上下方向)を中心として回動可能に連結されている。このため、木枠5は、その内部空間9(開口)が拡縮する平行リンクを構成することになっている(図5の実線状態と仮想線状態とを参照)。この場合、各交差部7において、上下方向において隣り合う加工丸太8間、さらには、前記ナット13と最上段の加工丸太8との間に金属製ワッシャ14が、図8に示すように、それぞれ介在されている。この各ワッシャ14は、長ボルト12を中心とした各加工丸太8の回動抵抗(加工丸太8同士の直接接触に基づく抵抗等)を減らして、各加工丸太8を長ボルト12を中心として円滑に回動させることを目的としており、この各ワッシャ14により木枠5は平行リンクとして円滑に機能し、その内部空間9は拡縮変形することになる。
【0022】
また、各交差部7における長ボルト12の先端部には、図8に示すように、ナット13の上側において、引っ掛け具としての連結リング部15aを備えたナット15(通称アイナット)がそれぞれ螺合されている。この各連結リング部15aを備えたナット15は、木枠5を吊上げるために用いるものであり、その各連結リング部15aには、吊上げ時には、吊上げ用の索条としてのロープ、ワイヤ、チェーン等の一端側が連結されることになっている。尚、図8中、符号27は、ナット13等を最上段の加工丸太8の上面から突出させずにその加工丸太8の内部に収納させるための凹所であり、その凹所27の底部には前記孔10が開口されている。
【0023】
前記木枠5は、図1〜図7、図9に示すように、底壁部16を備えている。底壁部16は、下側から1段目の対向する一対の加工丸太8−1上面間に掛け渡される複数の掛け渡し材17(敷成木)からなっており、その各掛け渡し材17は、下側から2段目、4段目、6段目の対向する一対の加工丸太8−2,8−4,8−6に対して平行な配置を採りつつ、対向する一対の加工丸太8−1の一方から他方に向けて所定間隔毎に配設されて、その隣り合う掛け渡し材17間には所定間隔の隙間18が形成されている。この各掛け渡し材17の各端部は、1段目の加工丸太8−1の上面に載せられた状態をもって、その1段目の加工丸太8−1と3段目の加工丸太8−3の間に介在されるように配置されている。この各掛け渡し材17の端部には、該各掛け渡し材17と1段目の加工丸太8−1との対向領域(当接領域)において、貫通孔20がそれぞれ形成されていると共に、その各貫通孔20に臨むように1段目の加工丸太8−1に挿通孔21がそれぞれ形成されている。この各貫通孔20及び各挿通孔21には、貫通孔20の上側からピンが22が挿入されており、そのピン22は、各掛け渡し材の貫通孔20を貫通して、その先端側は1段目の挿通孔21内に進入されている。このような組付けは、3段目の加工丸太8−3を積み上げる前において、2段目の加工丸太8−2と共に行われる。
【0024】
この場合、ピン22を中心とした掛け渡し材17の回動を円滑にすべく(1段目の加工丸太8−1との摩擦抵抗を低減すべく)、図9に示すように、1段目の加工丸太8−1と各掛け渡し材17との間、各掛け渡し材17の上面とその貫通孔20に挿入されるピン22の頭部22aとの間に、金属製ワッシャ23がそれぞれ介在されている。また、各掛け渡し材17の上面と3段目の加工丸太8下面との間に、図9に示すように、隙間19が形成され、その隙間19は、基本的に、1段目の加工丸太8−1の挿通孔21内へのピン22の進入量(ピン進入量)L1よりも短くされている。隙間19を設けるのは、各掛け渡し材17と3段目の加工丸太8−3との直接接触を回避して、各掛け渡し材17の回動を円滑にするためであり、隙間19の長さをピン進入量L1以下に制限しているのは、仮に掛け渡し材17が1段目の加工丸太8−1から持ち上がっても、ピン22による保持を確保し、1段目の加工丸太8−1に対する各掛け渡し材17の保持関係が解除されないようにするためである。本実施形態においては、各掛け渡し材17の上面にピン22の頭部22aが位置することから、ピン進入量L1は、ピン頭部22aと3段目の加工丸太8−3下面との間の隙間19’よりも長ければ、3段目の加工丸太8−3によりピン22が抜け出ることが規制されることになり、1段目の加工丸太8−1に対する各掛け渡し材17の保持関係は常に維持されることになる。
【0025】
このような土木構築物用ユニット4は、使用(護岸等の構築)に際して、図2に示すように、平面視正方形状の開き状態をもって横方向(図2中、左右方向)及び縦方向(図2中、上下方向)に配設されている。この各木枠5は、図2,図3に示すように、その周囲の隣り合う木枠5に対して、長ボルト24とナット25とを用いることにより連結されており、全ての木枠5は一体化されている。具体的には、横方向の連結については、図10に示すように、各木枠5における3段目の加工丸太8−3に横方向に貫通する貫通孔26がそれぞれ形成され、縦方向の連結については、各木枠5における4段目の加工丸太8−4に横方向に貫通する貫通孔26がそれぞれ形成されており、その隣り合う木枠5の加工丸太8−3(又は8−4)の貫通孔26に長ボルト24が通されて、その各長ボルト24にナット25が螺合されている。このような一体化された各木枠5内に、詰め材としての詰め石6が充填されており、詰め石6が充填されない状態の下では、平行リンクとして拡縮可能であった木枠5も、詰め石6の充填によりその変形が規制され、各木枠5は、平面視正方形状の井桁状に維持されることになる。これにより、施工面2全体に対して詰め石6が充填された多数の土木構築物用ユニット4が敷設され、それらにより、護床、根固め機能等が発揮される。尚、図2においては、充填された詰め石6の一部のみを図示している(以下、他の図においても同じ)。
【0026】
このような土木構築物用ユニット4は、折畳んだ状態をもって搬送車としてのトラックにより工場から施工現場に搬送される。この場合、トラックの荷台に土木構築物用ユニット4を載せるに際しては、長さが等しく両端部に連結具(例えばフック、シャックル等)を備える2本のワイヤW11,W12が用意される。その上で、その各ワイヤW11,W12の一端側連結具が、対角位置にある一の組の連結リング部15aにそれぞれ連結される一方、その各ワイヤW11,W12の他端側連結具が重機の持ち上げ具としてのフック29に連結され、土木構築物用ユニット4は、重機(符号29を用いる)により、図4に示すように、2本のワイヤW11,W12を介して上方に吊上げられる。これにより、土木構築物用ユニット4は、図5に示すように、2本のワイヤの一端側が連結された一の組における交差部7が互いに近づく一方、対角位置にある他の組における交差部7が遠のくように変形することになり、その土木構築物用ユニット4は、折畳まれた状態となる(図5中、仮想線状態)。このとき、ワイヤW11,W12としては、土木構築物用ユニット4の平面視上の一辺が2000mm前後のものについては、1.27m〜1.5mの範囲のものを用いることが好ましい。土木構築物用ユニット4の折畳みが円滑に行われるからである。この折畳まれた土木構築物用ユニット4は、図11に示すように、トラックの荷台(簡易的に記載)28にそのまま降ろされる。この後、別の土木構築物用ユニット4が加えられて、トラック(例えば10ton車)の荷台28には、図11に示すように、4つの土木構築物用ユニット4が積載される。この4つの土木構築物用ユニット4は、トラックにしっかりと保持された上で、施工現場に搬送される。
【0027】
トラックが施工現場に到着すると、長さが等しく両端部に連結具を備えるワイヤW21,W22,W23,W24が4本用意される。その上で、図6に示すように、その各ワイヤW21,W22,W23,W24の一端側連結具が土木構築物用ユニット4における四隅の連結リング部15aにそれぞれ連結される一方、各ワイヤW21,W22,W23,W24の他端側連結具が重機のフック29に連結され、重機(符号29を用いる)により、当該土木構築物用ユニット4は、ワイヤW21,W22,W23,W24を介して上方に吊上げられる。これにより、その土木構築物用ユニットの吊上げにより、最も離れていた一の組における連結リング部15a(交差部7)が、その連結リング部15aに連結されたワイヤW23,W24の緊張力の分力に基づき互いに近づくように移動し、これに伴って、対角位置にある他の組における連結リング部15aに連結されていたワイヤW21,W22が次第に緊張することになり、正規の井桁状になった時点で、図17に示すように、木枠5の状態は安定する。この場合、ワイヤW21,W22,W23,W24としては、土木構築物用ユニット4の平面視上の一辺が2000mm前後のものについては、1.75m〜2.0mの範囲のものを用いることが好ましい。土木構築物用ユニット4を円滑に井桁状に開くことができるからである。この土木構築物用ユニット4は、その正規の安定した状態で、そのまま施工面2に降ろされ、前述の如く、隣り合う土木構築物用ユニット4と互いに連結した上で、その木枠5内に詰め石6が充填される。この場合、施工面2に土木構築物用ユニット4を降ろした後において、長ボルト12に連結リング部15aを備えたナット15を取付けたままにしてもよいが、長ボルト12から連結リング部15aを備えたナット15を外して、その代りに通常のナットを長ボルト12に螺合させて、ナット13と共にダブルナットとして締め込むことが好ましい。緩みなく留めることができるからである。
【0028】
したがって、井桁状に組まれていても、当該土木構築物用ユニット4を施工現場に搬送するに際しては、土木構築物用ユニット4を折畳んだ状態でトラックにより搬送できることになり、搬送性を高めることができる。また、土木構築物用ユニット4をトラックから降ろすに際して、4本のワイヤW21,W22,W23,W24を用いて吊上げることにより、土木構築物用ユニット4を正規の開いた状態にすることができ、土木構築物用ユニット4をそのまま設置位置に降ろして、直ちに、次の作業(各土木構築物用ユニット4の一体化作業、詰め石6の充填作業等)に移ることができる。このため、当該土木構築物用ユニット4の設置作業性を向上させることができる。
【0029】
図12,図13は第2実施形態、図14は第3実施形態、図15,図16は第4実施形態を示す。この各実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図12,図13に示す第2実施形態は、第1実施形態に係る土木構築物用ユニット4よりも大型化した土木構築物用ユニット4を示している。この第2実施形態に係る土木構築物用ユニット4においては、平面視長方形状の木枠5が形成されており、それに用いられる長い加工丸太8Lの長さ(例えば4000mm前後)は、短い加工丸太8Sの長さ(2000mm前後)の2倍の長さに設定されている。この場合、強度を確保する観点等から、木枠4には、その長手方向中央においても、加工丸太8Sが、他の加工丸太8Sに対して平行になるように配置しつつ、積み上げられている。この土木構築物用ユニット4においても、前述した如く、長さの等しい2本又は4本のワイヤ等を用いて吊り上げることにより、平行リンクのように拡縮させることができる。その場合、具体的には、土木構築物用ユニット4を折畳むときに用いるワイヤW11,W12としては、土木構築物用ユニット4が平面視上の短辺が2000mm前後、長辺が4000mm前後であるときには、2.10m〜2.4mの範囲のものが用いられ、また、その折畳まれた土木構築物用ユニット4を開くに際しては、ワイヤW21,W22,W23,W24として、3.47m〜3.8mの範囲のものが用いられることが好ましい。
【0031】
図14に示す第3実施形態も、第1実施形態に係る土木構築物用ユニット4よりも大型化した土木構築物用ユニット4を示している。この第3実施形態に係る土木構築物用ユニット4においては、平面視正方形状の木枠5が形成されており、その木枠5は、前記第2実施形態において用いた長い加工丸太8L(例えば4000mm前後)を用いて組まれている。このため、この場合も、強度を確保する観点等から、木枠5内部において、各対向する加工丸太(外枠を構成するもの)8L間に、掛け渡すようにして加工丸太8Lが順次、組まれている(保持、連結構成は前記各実施形態と同一構成)。勿論この場合も、土木構築物用ユニット4を、長さの等しい2本又は4本のワイヤ等を用いて吊り上げることにより、平行リンクのように拡縮することができる。その場合、具体的には、土木構築物用ユニット4を折畳むときに用いるワイヤW11,W12としては、土木構築物用ユニット4が平面視上の一辺が4000mm前後であるときには、2.69m〜3.0mの範囲のものが用いられ、また、その折畳まれた土木構築物用ユニット4を開くに際しては、ワイヤW21,W22,W23,W24として、3.65m〜4.0mの範囲のものが用いられることが好ましい。
【0032】
図15,図16に示す第4実施形態は、底壁部16として、第1実施形態に係る掛け渡し材17に代えて、可撓性シート製型枠としての布製型枠(例えば不織布製型枠)12を用いたものを示している。すなわち、土木構築物用ユニット4においては、平行リンクを構成する井桁状の木枠5内に、図15,図16に示すように、折り畳んで箱形状とされた布製型枠12が内蔵されている。布製型枠12は、化学繊維等の布を用いて、袋状に形成されており、その布製型枠12の側面は木枠5の内面に沿うようにして収容され、その上部開口部は、その各辺部(4辺部)において、長尺の留め板35を釘等で打ち付けることにより、木枠5を構成する加工丸太8内面に留められる(図15においては1個所のみ図示)。この場合、布製型枠12における上部開口部の各辺部(4辺部)を加工丸太8内面に使用前から長尺の留め板35を用いて留めておいてもよいが、使用前は、布製型枠12の上部開口部の対向する一対の辺部だけを留め板35により加工丸太8内面に留めて、布製型枠12の折り畳み性、収納性を高め、木枠5を開いて使用するときに、上部開口部における残りの辺部をも留め板35により加工丸太8内面に留めるようにしてもよい。これにより、布製型枠12は、土木構築物用ユニット4が折畳まれているときには、その狭くなった内部空間に収納され、土木構築物用ユニット4が井桁状に開かれたときには、それに伴って拡げられて底壁部16を構成することになる。
【0033】
この土木構築物用ユニット4は、使用に際して、施工面2に井桁状に開かれた状態で設置され、その井桁状に開かれた木枠5内における布製型枠31内に、図16に示すように、詰め材として、コンクリートが注入される。これにより、木枠5内に、そのコンクリートの硬化後、台座33が形成され、その台座33側面は、木枠5(上下間の加工丸太8間)の隙間32が存在する個所において、多少膨らんで、その膨らみ部34は、布製型枠31と共にその隙間32に入り込むことになる。この結果、台座33の側面と木枠5とが係合して、木枠5が台座33から抜けないことになり、沈床構造物として的確に機能することになる。
【0034】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次のような態様を包含する。
(1)下側から1段目の加工丸太8−1の下面に各掛け渡し材を回動可能に支持すること。
(2)下側から1段目の加工丸太8−1の上面に各掛け渡し材を回動可能に支持するに際して、1段目の加工丸太8−1の上面に突出部としてピン等を突出させ、そのピン等に各掛け渡し材17端部の挿通孔を挿通させること。
(3)角材としての加工丸太8だけでなく、丸材としての木材を用いること。
(4)加工丸太8等の木材に代えて、擬木(樹脂製、コンクリート製、鉄製等)を用いること。
(5)開いた状態の木枠5の下面に対応した伸縮可能なシートを用意し、それを、底壁部として、木枠5下面(加工丸太8)に取付けること。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係る土木構築物用ユニットを用いて護床、根固めを図る状態を示す説明図。
【図2】第1実施形態に係る土木構築物用ユニットの使用時における配置を説明する平面図。
【図3】図2の正面図。
【図4】第1実施形態に係る土木構築物用ユニットをトラックに載せる際の吊上げ状態を示す斜視図。
【図5】第1実施形態に係る土木構築物用ユニットが2本のワイヤにより吊上げられたときに縮小変形することを説明する平面図。
【図6】第1実施形態に係る土木構築物用ユニットが4本のワイヤにより吊上げられたときに縮小状態から拡大変形することを説明する平面図。
【図7】第1実施形態に係る土木構築物用ユニットの構造を説明する説明図。
【図8】第1実施形態に係る土木構築物用ユニットにおける交差部の構造を説明する拡大断面図。
【図9】下側から1段目の加工丸太と掛け渡し材との保持関係を説明する拡大断面図。
【図10】第1実施形態に係る土木構築物用ユニット同士の連結構成を説明する説明図。
【図11】トラックの荷台に載せられた第1実施形態に係る土木構築物用ユニットの状態を示す平面図。
【図12】第2実施形態に係る土木構築物用ユニット及びその使用配置状態を示す平面図。
【図13】図12の正面図。
【図14】第3実施形態に係る土木構築物用ユニットを示す平面図。
【図15】第4実施形態に係る土木構築物用ユニットの組付け状態を説明する説明図。
【図16】第4実施形態に係る土木構築物用ユニットにおける布製型枠内にコンクリートを充填している状態を示す縦断面図。
【図17】第1実施形態に係る土木構築物用ユニットをトラックから降ろす際の吊上げ状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0036】
4 土木構築物用ユニット
5 木枠
7 交差部
8 加工丸太(柱状部材)
8−1 下側から1段目の加工丸太
8−2 下側から2段目の加工丸太
8−3 下側から3段目の加工丸太
12 長ボルト(支持軸)
14 金属製ワッシャ
15 ナット(引っ掛け具)
15a 連結リング部(引っ掛け具)
16 底壁部
17 掛け渡し材
19 隙間
20 貫通孔(挿通孔)
21 挿通孔
22 ピン
29 重機のフック(持ち上げ具)
L1 ピン進入量
W11,W12,W21,W22,W23,W24 ワイヤ(索条)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の柱状部材を順次、互い違いに積み重ねることにより井桁状の木枠が形成されていると共に、該木枠に、その四隅における柱状部材の各交差部において、支持軸が上下方向にそれぞれ貫通されて、該各交差部において各柱状部材が連結されている土木構築物用ユニットにおいて、
前記各交差部における各柱状部材が前記支持軸に該支持軸の軸心延び方向を中心として回動可能に連結され、
前記各対向する一対の柱状部材が、それぞれ平行に配置されている、
ことを特徴とする土木構築物用ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記木枠における各交差部上面に、吊上げのための引っ掛け具がそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする土木構築物用ユニット。
【請求項3】
請求項1において、
前記各交差部における上下方向に隣り合う柱状部材間にワッシャが介在されている、
ことを特徴とする土木構築物用ユニット。
【請求項4】
請求項1において、
前記木枠の下部に、底壁部が設けられ、
前記底壁部が、前記木枠の拡縮変形に伴って変形するように設定されている、
ことを特徴とする土木構築物用ユニット。
【請求項5】
請求項4において、
前記底壁部が、複数の掛け渡し材により構成され、
前記複数の掛け渡し材が、前記対向する一対の柱状部材のうち、下側から2段目の対向する一対の柱状部材に所定間隔毎に平行になるようにしつつ、下側から1段目の対向する一対の柱状部材間に掛け渡されていると共に、該1段目の各柱状部材に回動可能に支持されている、
ことを特徴とする土木構築物用ユニット。
【請求項6】
請求項5において、
前記1段目の対向する一対の柱状部材の上面間に前記各掛け渡し材が、該各掛け渡し材の端部を該1段目の柱状部材と該1段目の柱状部材に対向する下側から3段目の柱状部材との間に介在させるようにしつつ掛け渡され、
前記各掛け渡し材又は前記1段目の柱状部材の一方の部材に、該各掛け渡し材と該1段目の柱状部材との対向領域において、該1段目の柱状部材又は該各掛け渡し材の他方の部材に向けて突出する突出部がそれぞれ備えられ、
前記他方の部材に、前記各突出部が挿通される挿通孔がそれぞれ形成され、
前記3段目の柱状部材の下面と前記各掛け渡し材上面との間に、前記挿通孔に対する前記各突出部の進入量よりも短い隙間が形成されている、
ことを特徴とする土木構築物用ユニット。
【請求項7】
請求項6において、
前記各挿通孔が、前記1段目の柱状部材にそれぞれ形成され、
前記各掛け渡し材に、前記各挿通孔に臨むようにして貫通孔がそれぞれ形成され、
前記各貫通孔の上側からピンがそれぞれ挿入されて、該各ピンの先端側が、前記突出部として、該各貫通孔に臨む挿通孔にそれぞれ挿入されている、
ことを特徴とする土木構築物用ユニット。
【請求項8】
請求項4において、
前記木枠内にシート体が内蔵されて、該木枠が井桁状に開かれたときに、該シート体が前記底壁部を構成するように設定されている、
ことを特徴とする土木構築物用ユニット。
【請求項9】
請求項1に係る土木構築物用ユニットと、長さの等しい2本の索条とを用意し、
前記土木構築物用ユニットにおける対角位置にある交差部に対して前記各索条の一端側をそれぞれ連結すると共に、その各索条の他端側を重機の持ち上げ具に連結し、
重機により前記土木構築物用ユニットを吊上げ搬送する、
ことを特徴とする土木構築物用ユニットの積降ろし方法。
【請求項10】
請求項1に係る土木構築物用ユニットと、長さの等しい4本の索条とを用意し、
前記土木構築物用ユニットにおける四隅の交差部に対して前記各索条の一端側をそれぞれ連結すると共に、その各索条の他端側を重機の持ち上げ具に連結し、
重機により前記土木構築物用ユニットを吊上げ搬送する、
ことを特徴とする土木構築物用ユニットの積降ろし方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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